説明

航空管制システムのレーダ表示画面表示制御方法および表示制御装置

【課題】管制官に対しターゲット情報を隠蔽することなく表示し、また膨大な情報の中から優先度の高い情報を管制官が選択的に効率よく把握することを可能にする。
【解決手段】表示制御装置1は表示部11と入力制御操作部12と更新検出部13とを含む。表示部11は、表示画面を、予め設定された画面レイアウトに基づきメイン領域とサブ領域に分割し、メイン領域にはターゲット情報を表示するメインウインドウを、サブ領域には例えば5つのサブウイドウを、1つのウインドウを平面2次元ウインドウとし、他の4つのウインドウを積重ね3次元ウインドウとして出力装置3に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空管制システムのレーダ表示画面表示制御方法および表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制システムに使用されるレーダ表示装置は、表示制御装置、入出力装置、および表示装置等から構成され、接続された外部装置とのデータのやり取りにより、航空機のターゲットおよび管制に必要な各種情報を画面に表示する。
【0003】
このようなレーダ表示装置では、1つの画面にレーダ画面および複数のウインドウを配置し、レーダ画面にはターゲット情報を、複数のウインドウには管制に必要な各種情報を表示する(例えば非特許文献1、特許文献1)。
【0004】
図7の従来のレーダ表示画面例では、レーダ画面のターゲット表示ウインドウ300に複数のターゲット情報320〜32nを表示し、また航空機の出発・通過・到着および滑走路等の数多くの情報を表示する各種ウインドウ310〜314を重畳表示している。そのためターゲット情報が各種情報の影に隠れるという情報隠蔽が起こる可能性が想定される。また、各種情報は均一に全て画面上に表示されており、各種情報に対し明確に優先度をつけることが困難である。しかしながら各種情報は必ずしも全てを常時表示しなければならないわけではない。各種情報は、優先度に応じて確認頻度が異なり、常に詳細を把握する必要がある情報、常に詳細を把握する必要はないが、時々確認を必要とする情報、状況に応じて確認が必要な情報とに分けることができる。情報を効率よく把握する観点からは、管制官が状況に応じ必要な情報を選択的に表示することが必要である。
【0005】
図7のレーダ表示画面からの派生として、図8に示す、各種情報ウインドウを別領域に並べて表示する画面表示例、図9に示す、各種情報ウインドウを別領域としウインドウに対応したボタンによりウインドウを表示する画面表示例が考えられる。しかしながら、図8の画面表示例では、ウインドウへ優先度を付加することが不可能であり、また各種情報ウインドウ内の情報は管制官が認識可能な大きさが必要なため、画面分解能により、表示するウインドウ数が制限されてしまう。図9の画面表示例においても同様にウインドウに優先度を付加することが不可能である。
【非特許文献1】青山 幹雄・猪塚 貞行・菅野 照美・斎藤 謙一郎 編著「航空とIT技術」93頁〜94頁、共立出版株式会社 2001年3月25日発行
【特許文献1】特開2001−167400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術には以下のような問題点があった。
【0007】
第1に、ターゲット情報が各種情報の影に隠れるという情報隠蔽起こる可能性が想定される。その理由は、レーダ画面および各種情報のウインドウを重畳表示しているためである。
【0008】
第2に、膨大な情報の中から効率よく情報を把握すること困難で、管制官に負荷がかかる。その理由は、各種情報は均一に全て画面上に表示されており、各種情報に対し明確に優先度をつけることが困難なためである。
【0009】
本発明の目的は、管制官に対しターゲット情報を隠蔽することなく表示し、また膨大な情報の中から優先度の高い情報を管制官が選択的に効率よく把握することを可能にする、航空管制システムのレーダ表示画面表示制御方法および表示制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、表示画面をメイン領域とサブ領域とに分割し、メイン領域にはメインウインドウを、サブ領域には平面2次元ウインドウおよび積重ね3次元ウインドウを含むサブウインドウを表示し、メインウインドウにターゲット情報を、サブウインドウには各種情報を表示する。ここで、平面2次元ウインドウとは平面で表示される一般的なウインドウであり、積重ね3次元ウインドウとは平面ウインドウの上部を擬似的に後方に傾け重ねたものである。
【発明の効果】
【0011】
第1に、ターゲットデータの情報隠蔽をなくすことができる。この結果、レーダ情報の全てを把握することが可能となり、管制官の把握ミスを抑制することが可能となる。その理由は、画面をメインウインドウおよびサブウインドウに分割し、ターゲット情報を固有の画面表示としたためである。
【0012】
第2に、管制官が状況に応じて各種の必要な情報を選択的に表示することができる。常に必要な情報を平面2次元ウインドウに、時々確認を必要とする情報を積重ね3次元ウインドウの最上部に表示することで管制官が常時確認することができる。また、状況に応じて確認が必要な情報を積重ね3次元ウインドウの最上部以降に表示することにより全ての情報に優先順位を付加することが可能となる。この結果、膨大な情報の中から効率のよく情報を把握することができ、管制官の負荷を軽減できる。その理由は、サブ領域の各種ウインドウを平面2次元ウインドウおよび積重ね3次元ウインドウを組み合わせて表示するためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態の、航空管制システムのレーダ画面表示装置は、プログラム制御により動作する表示制御装置1と、マウス等の入力装置2と、ディスプレイ等の出力装置3とを含む。
【0015】
表示制御装置1は表示部11と入力制御操作部12と更新検出部13とを含む。
【0016】
表示部11は、表示画面を、予め設定された画面レイアウトに基づきメイン領域とサブ領域に分割し、メイン領域にはターゲット情報を表示するメインウインドウを、サブ領域には例えば5つのサブウイドウを、1つのウインドウを平面2次元ウインドウとし、他の4つのウインドウを積重ね3次元ウインドウとして出力装置3に表示する。また、表示部11は、外部装置(不図示)から伝送されるターゲット情報4を出力装置3に表示する。
【0017】
入力制御操作部12は、管制官から入力装置2を使用して行なわれる、サブウインドウの平面2次元ウインドウと積重ね3次元ウインドウの変更操作、および積重ね3次元ウインドウの表示順序の変更操作に基づき、表示する画面を入れ替える制御を行う。変更された画面データは表示部11を経由して表示装置3に表示される。
【0018】
更新検出部13は、外部装置から伝送された、管制に必要な更新情報6にブリンク情報を付与し、更新情報データを作成する。作成された更新情報データは表示部11を経由し、当該ウインドウを更新し、当該ウインドウを規定回数ブリンクして出力装置3に表示される。
【0019】
次に、本実施形態の動作を、図1、図2、および図3を参照して詳細に説明する。
【0020】
まず、OSおよびアプリケーションプログラムが起動されると、表示部11は、表示画面200のメイン領域210にメインウインドウ220を、表示画面200のサブ領域211に予め設定された5つのサブウインドウ221〜225(うち1つ221は平面2次元ウインドウ、4つ222〜225は積重ね3次元ウインドウ)を表示する(ステップ101)。
【0021】
次に、外部装置から伝送されたターゲットデータ4が表示部11に入力され、表示部11はメインウインドウ220にターゲットデータ4を表示する。なお、サブウインドウ221〜225に表示する各種情報5は更新検出部13を経て表示部11に供給され表示されるが、初期表示においてはブリンク情報を付与することなく表示される(ステップ102)
ここで、入力装置2による、管制官からのサブウインドウ操作もしくはサブウインドウに表示されている各種表示情報の更新が発生したかどうか判定する(ステップ103)。
【0022】
管制官のサブウインドウ操作が行われた場合、入力制御操作部12は操作データを作成し、表示部11を経由し、出力装置3に表示する(ステップ104、105)。図3の表示画面レイアウトを例にとる。今、サブウインドウ221〜225には順に情報A,B,C,D,E,Fが表示されているもの(これを初期表示Xとする)とする。ここで、管制官はサブウインドウ223の情報Cを1番上に表示する必要があったため、サブウインドウ223をクリックしたものとする。入力装置2を用いた管制官の入力により、入力制御操作部12はサブウインドウ221と223を入れ替える操作データを作成する。作成された操作データを基に表示部11によって、サブウインドウ221と223が入れ替えられた画面が表示される。この結果、図3の表示画面レイアウトのサブウインドウ221〜225には順に情報C,B,A,D,Eが表示される。また、今、初期表示Xとし、ここで管制官は優先順位に基づいてサブウインドウ223の情報Cとサブウインドウ224の情報Dを入れ替える必要があったため、サブウインドウ223をサブウインドウ224と225の間にドラック&ドロップしたものとする。入力制御操作部12はサブウインドウ223をサブウインドウ224と225の間に挿入する操作データを作成し、以下同様にして出力装置3に表示する。この結果、図3の表示画面レイアウトのサブウインドウ221〜225には順に情報A,B,D,C,Eが表示される。
【0023】
また、外部装置からサブウインドウ221〜225の更新情報6が伝送された場合、更新検出部13は更新情報6にブリンク情報を付与した更新データを作成し、表示部11を経由し、当該ウインドウを更新し、規定回数ブリンクしたものが出力装置3に表示される(ステップ106、107)。図3の表示画面レイアウトを例にとる。今、初期表示Xとし、外部装置から情報Cの更新情報℃´が伝送されたものとする。更新検出部13は更新情報C´にブリンク情報を付与し、更新データを作成する。作成された更新データを基に表示部11によって、サブウインドウ223に情報C´が、ウインドウが規定回数ブリンクして表示される。
【0024】
最後に、管制官の終了要求が行われた場合(ステップ108)、OSおよびアプリケーションプログラムは動作を停止する。
【0025】
[第2の実施形態]
図4を参照すると、本実施形態の航空管制システムのレーダ画面表示制御装置1は、表示レイアウトパラメータ14をさらに有する点で、図1に示された第1の実施形態の表示制御装置と異なる。
【0026】
第1の実施形態では、サブウインドウ数、サブウインドウの平面2次元ウインドウ数と積み重ね3次元ウインドウ数は予め設定され、該設定に基づいて画面レイアウトが構成されていた。本実施形態では、表示レイアウトパラメータ14はサブウインドウの数と、サブウインドウの平面2次元ウインドウの数と、積重ね3次元ウインドウの数をパラメータとして保持し、OSおよびアプリケーション起動時、表示画面レイアウトに反映される。
【0027】
次に、本実施例の動作を、図4、図5、図6を参照して詳細に説明する。
【0028】
表示制御装置1のOSおよびアプリケーションの起動前に、表示レイアウトパラメータ14が保持している、サブウインドウ数と、サブウインドウの平面2次元ウインドウ数と、積重ね3次元ウインドウ数を、管制官が任意に変更する(ステップ110)。表示制御装置1のOSおよびアプリケーション起動時、表示部11は表示レイアウトパラメータ14を読み込む(ステップ109)。表示部11は読み込まれたパラメータに基づいて画面表示レイアウトを作成する(ステップ101)。以降、第1の実施形態と同じ処理が行われる(ステップ102〜109)。
【0029】
次に、本実施形態の動作を、表示画面レイアウトを用いて説明する。表示レイアウトパラメータ14のサブウインドウ数をn、サブウインドウの平面2次元表示ウインドウ数を2、積重ね3次元ウインドウ数をn-2とする。この表示レイアウトパラメータ14を用いて、ステップ109、101〜108によって出力装置3に表示される表示画面レイアウトは図6のようになる。
【0030】
本実施形態では、表示レイアウトパラメータ14により、サブウインドウ数、サブウインドウの平面2次元ウインドウ数、および積重ね3次元ウインドウ数が変更される。このため管制席、ひいては空港による必要情報量に応じて管制官がサブウインドウ数、サブウインドウの平面2次元ウインドウ数、および積重ね3次元ウインドウ数任意に変更することができる。この結果、用途もしくは場所等にとらわれることのない可搬性および拡張性をもったレーダ表示を管制官に提供できる。
【0031】
なお、表示制御装置1の機能は、その機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行するものであってもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM等の記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク装置等の記憶装置を指す。さらに、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、インターネットを介してプログラムを送信する場合のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの(伝送媒体もしくは伝送波)、その場合のサーバとなるコンピュータ内の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、航空管制の用途の他、道路交通管制や海上管制といった用途にも適用可能である。さらにテレビ会議等のディスプレイに複数画面表示するシステムにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態の航空管制システムの表示制御装置のブロック図である。
【図2】図2は図1の表示制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図3は第1の実施形態における表示画面レイアウト例を示す図である。
【図4】図4は本発明の第2の実施形態の航空管制システムの表示制御装置のブロック図である。
【図5】図5は図4の表示制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は第2の実施形態における表示画面レイアウト例を示す図である。
【図7】図7は従来のレーダ表示画例を示す図である。
【図8】図8は従来のレーダ表示画例を示す図である。
【図9】図9は従来のレーダ表示画例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 表示制御装置
2 入力装置
3 出力装置
4 ターゲットデータ
5 各種情報
6 更新情報
11 表示部
12 入力制御操作部
13 更新検出部
14 表示レイアウトパラメータ
101〜110 ステップ
200 表示画面
210 メイン領域
211 サブ領域
220 メインウインドウ
221〜225、22n サブウインドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空管制システムのレーダ表示画面表示制御方法において、表示画面をメイン領域とサブ領域とに分割し、前記メイン領域にはメインウインドウを、前記サブ領域には平面2次元ウインドウおよび積重ね3次元ウインドウを含むサブウインドウを表示し、前記メインウインドウにターゲット情報を、前記サブウインドウには各種情報を表示することを特徴とする、航空管制システムのレーダ表示画面表示制御方法。
【請求項2】
管制官の、前記平面2次元ウインドウの数、前記積重ね3次元ウインドウの数、前記積重ね3次元ウインドウの表示順序の少なくとも1つの変更操作に基づき画面を変更する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サブウインドウの更新情報にブリンク情報を付加した更新データを作成し、当該ウインドウに前記更新情報を表示するとともに当該ウインドウを規定回数ブリンクする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記サブウインドウの数、前記平面2次元ウインドウの数、および前記積重ね3次元ウインドウ数を、管制官が任意に設定可能なパラメータとして保持する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
航空管制システムのレーダ表示画面表示制御装置において、
画面を、予め設定された画面レイアウトに基づきメイン領域とサブ領域に分割し、前記メイン領域にはメインウインドウを、前記サブ領域には平面2次元ウインドウと積重ね3次元ウインドウを含むサブウインドウを表示し、外部装置から伝送されたターゲット情報を前記メインウインドウに、各種情報を前記サブウインドウに表示する表示部を有することを特徴とする、航空管制システムのレーダ表示画面表示制御装置。
【請求項6】
管制官の、前記平面2次元ウインドウの数、前記積重ね3次元ウインドウの数、前記積重ね3次元ウインドウの表示順序の少なくとも1つの変更操作に基づき画面を変更し、変更画面データを、前記表示部を経由して前記表示装置に表示する入力制御操作部をさらに有する、請求項5に記載の、航空管制システムのレーダ表示画面表示制御装置。
【請求項7】
前記サブウインドウの更新情報にブリンク情報を付加した更新データを作成し、作成された更新データを、前記表示部を経由し、当該ウインドウを規定回数ブリンクして当該サブウインドウに表示する更新検出部をさらに有する、請求項5または6に記載の、航空管制システムのレーダ表示画面表示制御装置。
【請求項8】
前記平面2次元ウインドウの数、および前記積重ね3次元ウインドウ数を、管制官が任意に設定可能なパラメータとして保持する手段をさらに有する、請求項5から7のいずれか1項に記載の、航空管制システムのレーダ表示画面表示制御装置。
【請求項9】
航空管制システムのレーダ表示画面表示制御をコンピュータに行わせるプログラムであって、
ディスプレイをメイン領域とサブ領域とに分割し、前記メイン領域にはメインウインドウを、前記サブ領域には平面2次元ウインドウおよび積重ね3次元ウインドウを含むサブウインドウを表示する手順と、
前記メインウインドウにターゲット情報を、前記サブウインドウに各種情報を表示する手順と、
管制官の、前記平面2次元ウインドウの数、前記積重ね3次元ウインドウの数、前記積重ね3次元ウインドウの表示順序の少なくとも1つの変更操作に基づき画面を変更する手順と、
前記サブウインドウの更新情報にブリンク情報を付加した更新データを作成し、当該ウインドウに前記更新情報を表示するとともに当該ウインドウを規定回数ブリンクする手順と、
をコンピュータに実行させるための、航空管制システムのレーダ表示画面表示制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−102432(P2010−102432A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271912(P2008−271912)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】