説明

船舶の発電装置及び推進装置

【課題】船舶の発電機の回転制御および主機の出力軸へのアシスト力制御を油圧ポンプおよび油圧モータを用いた油圧回路によって構成して低コストでかつ信頼性が高い発電装置および推進装置を提供することを目的とする。
【解決手段】船舶のエンジン3によって駆動される第1油圧ポンプ9と、発電機11に接続される第1油圧モータ13と、第1油圧ポンプ9と第1油圧モータ13とを連結する第1油圧回路15と、第1油圧ポンプ9の押しのけ容積を制御する第1油圧ポンプ制御器17と、第1油圧モータ13の押しのけ容積を制御する第1油圧モータ制御器19と、第1油圧ポンプ制御器17および第1油圧モータ制御器19を制御して第1油圧モータ13の回転数を制御する発電機制御装置21を備えて発電機の回転数を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の発電装置および推進装置に関するものであり、特に、油圧ポンプおよび油圧モータからなる油圧回路を用いて発電機に駆動力を、また主機出力軸へ回転アシスト力を供給する発電装置および推進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶においては、船舶内の各種電気機器への給電は、通常、主機とは別に設けられた発電用エンジンと発電機によって供給される。また、軸発電機と称する発電機が併設されることがある。この軸発電機は、主軸から増速機を介して発電機を駆動し、その出力電圧(周波数は不変)を直流に整流し、インバータを介して交流に変換するものである。
【0003】
小容量の発電機用エンジンを設けるよりも大容量の主機エンジンの方が、効率が良いため軸発電機を使用することでエネルギー消費を抑えるようにしている。
【0004】
船舶用発電装置、特に、油圧ポンプおよび油圧モータからなる油圧回路を用いて発電機を回転駆動する装置の先行技術として、特開平10−82325号公報(特許文献1)が知られている。
この特許文献1には、エンジンの出力軸が電磁クラッチを介して油圧ポンプと接続し、油圧ポンプの作動油が供給されることによって作動する油圧モータの出力軸を、発電機に接続する構成が開示されており、さらに、該発電機の電力で作動させられる冷却水ポンプによって油路を循環する作動油を冷却するオイルクーラに冷却水が循環されることが示されている。
【0005】
一方、船舶においては、省エネルギーを目的として、ディーゼル機関から排出される排ガスを排ガスエコノマイザに導いて蒸気を発生させて、その蒸気によって駆動される蒸気タービンとディーゼル機関から排出される排ガスによって駆動されるガスタービンとを同軸上に配し、その軸に接続された発電機によって発電するコンバインドサイクル発電方式が用いられている。また、コンバインドサイクル発電方式により得られた電気エネルギーが余剰の場合には、推進軸に設置されている軸発電機を電動機として用いることにより、電気エネルギーを回転エネルギーに変換して推進軸を加勢する推進装置が用いられている。
推進軸を加勢する推進装置として特公昭62−34598号公報(特許文献2)、特開2010−264867号公報(特許文献3)が知られている。
【0006】
特許文献2には、蒸気タービンで発電機を駆動し余剰回転力を推進機側に伝達することが示され、また、特許文献3には、ディーゼル機関から排出される排ガスを排ガスエコノマイザに導いて蒸気を発生させて、その蒸気によって駆動される蒸気タービンとディーゼル機関から排出される排ガスによって駆動されるガスタービンとを同軸上に配して、蒸気タービンとガスタービンとの回転エネルギーをクラッチと変速機とを介して推進軸に伝達する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−82325号公報
【特許文献2】特公昭62−34598号公報
【特許文献3】特開2010−264867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1によると、エンジンの出力軸が電磁クラッチを介して油圧ポンプと接続し、該油圧ポンプによって発生した作動油を油圧モータに供給して、該油圧モータで発電機を駆動する構成が開示されているが、油圧ポンプおよび油圧モータの回転速度を制御して発電機の発電電圧および周波数を安定化するように油圧ポンプ側および油圧モータ側での制御についてまでは開示されていない。
また、特許文献1においては、発電機によって発電される電圧、周波数はエンジンの出力軸の回転変動に伴って変動するため、電気機器への供給のためにコントローラによって一定電圧、一定周波数への変換のために整流器やインバータ等の部品が必要になり発電装置全体が複雑化、大型化する。
【0009】
また、特許文献2、3に開示されている技術によれば、推進軸を加勢する手段が示されているが、何れの文献においてもクラッチと変速機とを介して推進軸に駆動力を伝達する構成であるため、クラッチおよび主機によって推進軸の周囲の構造が複雑化、大型化する問題がある。
【0010】
そこで、本発明はこのような不具合に鑑みてなされたものであり、船舶の発電機の回転制御および主機の出力軸へのアシスト力制御を油圧ポンプおよび油圧モータを用いた油圧回路によって構成して小型、低コストでかつ信頼性が高い発電装置および推進装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はかかる目的を達成するもので、第1の発明は船舶の発電装置にかかるものであり、船舶の主機によって駆動される可変容量型の第1油圧ポンプと、発電機に接続される可変容量型の第1油圧モータと、前記第1油圧ポンプと第1油圧モータとを連結する第1油圧回路と、前記第1油圧回路若しくは第1油圧ポンプの本体内に設けられ前記第1油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第1油圧ポンプ制御器と、前記第1油圧回路若しくは第1油圧モータの本体内に設けられ前記第1油圧モータの押しのけ容積を制御する第1油圧モータ制御器と、前記第1油圧ポンプ制御器および前記第1油圧モータ制御器を制御して前記第1油圧モータの回転数を制御する発電機制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本第1の発明によれば、主機により駆動される可変容量型の第1油圧ポンプによって発生した高圧作動油を、発電機に接続される可変容量型の第1油圧モータへ供給して発電機を作動させて発電を行うとともに、第1油圧ポンプおよび第1油圧モータには、それぞれ第1ポンプ制御器、第1モータ制御器が設けられて、発電機の回転数が制御可能になっているため、主機の回転変動および発電機の負荷変動に対して、発電機の回転数を最適に制御できる。
前記第1油圧ポンプの押しのけ容積と、第1油圧モータの押しのけ容積との比を調整することで増減速比が調整されて発電機の回転数を最適に制御できる。
【0013】
具体的には、発電機制御装置によって、主機の回転変動および発電機の発電負荷の変動に対して第1油圧モータを一定の回転数で回転するように第1油圧ポンプ制御器および第1油圧モータ制御器を制御する。これによって、発電機を駆動するための歯車機構の増速機や、整流器や、インバータ等の電圧、周波数の調整機器を介さずに一定電圧で一定周波数の電力を船舶内の電気機器に供給できるようになるため、低コストで且つ信頼性の高い電力供給の発電装置が得られる。
【0014】
また、第1の発明において好ましくは、前記主機を構成するエンジンから排出される排ガスエネルギーを用いて駆動される可変容量型の第3油圧ポンプと、
該第3油圧ポンプと前記第1油圧モータとを連結する第3油圧回路と、
該第3油圧回路若しくは前記第3油圧ポンプの本体内に設けられ前記第3油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第3油圧ポンプ制御器と、を備え、
前記発電機制御装置はさらに前記第3油圧ポンプ制御器を制御して前記第1油圧モータの回転数を制御するとよい。
【0015】
このように、発電機を駆動する第1油圧モータの回転駆動を、ディーゼルエンジンの出力軸によって駆動される第1油圧ポンプだけでなく、第3油圧ポンプによっても回転駆動されるようになっている。
すなわち、ディーゼルエンジンの出力軸ではなく、ディーゼルエンジンから排出される排ガスエネルギー、つまりディーゼルエンジンから排出される排ガスを排ガスエコノマイザに導いて蒸気を発生させて、その蒸気によって駆動される蒸気タービン、およびディーゼルエンジンから排出される排ガスによって駆動されるガスタービンの少なくとも一方によって駆動されるようになっている。
【0016】
従って、発電機をディーゼルエンジンの動力と、排ガスエネルギーの動力との何れによっても駆動可能となるとともに、これらの動力を船舶内の電力供給状態に応じて切り替えることが可能となるため、船舶の推進力と電力供給バランスを調整することができる。また、ディーゼルエンジンからの排ガスエネルギーと主機からのエネルギーを総合的に利用するため、船舶の持つエネルギー源を有効活用でき、船舶トータルとしての運転効率を向上できる。
【0017】
また、第1の発明において好ましくは、前記主機に接続される可変容量型の第2油圧モータと、該第2油圧モータと前記第3油圧ポンプとを連結する第4油圧回路と、該第4油圧回路若しくは前記第2油圧モータの本体内に設けられ第2油圧モータの押しのけ容積を制御する第2油圧モータ制御器と、
前記第3油圧ポンプ制御器および前記第2油圧モータ制御器を制御して前記主機の出力軸へアシスト力を付与する推進力制御装置と、を備えているとよい。
【0018】
このように第3油圧ポンプによって主機の推進力がアシストされる。すなわち、ディーゼルエンジンから排出される排ガスエネルギーによって駆動される第3油圧ポンプからの作動油によって第2油圧モータが作動して、アシスト力を発生するようになっている。
従って、船舶の持つエネルギー源を有効活用でき、船舶トータルとしての運転効率を向上できる。
【0019】
また、第1の発明において好ましくは、前記各油圧ポンプは、シリンダと、該シリンダ内を摺動するピストンにより囲まれる複数の油圧室と、前記ピストンに係合するカム曲面を有するカムと、各油圧室に接続する前記各油圧回路の高圧油流路を開閉する高圧弁と、各油圧室に接続する前記各油圧回路の低圧油流路を開閉する低圧弁とを有し、前記高圧弁および低圧弁の開閉を前記各油圧ポンプ制御器で制御するように構成されるとともに、前記シリンダは油圧ポンプの回転軸の周りに環状に複数連続して配設され、前記カムは複数の凹凸が交互に並んだ波状のカム曲面を有する環状のリングカムからなるとよい。
【0020】
このように各油圧ポンプ、および各油圧ポンプ制御器を構成することによって、油圧ポンプの回転軸の周りに環状に複数連続して配設されシリンダの油圧室の作動と非作動状態とを高圧弁および低圧弁の開閉によって制御して、油圧ポンプの押しのけ容積を制御でき増減速比を簡単かつ正確に制御できる。
【0021】
また、第1の発明において好ましくは、前記各油圧モータは、シリンダと、該シリンダ内を摺動するピストンにより囲まれる複数の油圧室と、前記ピストンに係合するカム曲面を有するカムと、各油圧室に接続する前記各油圧回路の高圧油流路を開閉する高圧弁と、各油圧室に接続する前記各油圧回路の低圧油流路を開閉する低圧弁とを有し、前記高圧弁および低圧弁の開閉を前記油圧モータ制御器で制御するように構成されるとともに、前記シリンダは油圧ポンプの回転軸の周りに環状に複数連続して配設され、前記カムはモータ回転軸中心から偏心して設けられる偏心カムからなるとよい。
【0022】
このように各油圧モータ、および各油圧モータ制御器を構成することによって、油圧モータの回転軸の周りに環状に複数連続して配設されたシリンダの油圧室の作動と被作動とを高圧弁および低圧弁の開閉によって制御して、油圧モータの押しのけ容積を制御でき増減速比を簡単かつ正確に制御できる。
【0023】
以上のように油圧ポンプ、油圧モータを、複数の油圧室の作動状態(作動油圧室の個数、または油圧室内の作動ストローク範囲)を高圧弁と低圧弁とで制御することで、絞りを入れることなく流量を調整できるため、低損失で応答性の高いかつ広範囲にわたる増減速比に調整できるため、発電機へ効率よくエンジンからの動力と蒸気タービン側からの動力の使い分けをするともに、エンジンへのアシスト力を加えることが可能になり、船舶の持つエネルギー源を有効活用できる。
【0024】
次に、第2の発明は、船舶の推進装置にかかるものであり、主機のエンジンから排出される排ガスエネルギーを用いて駆動される発電機と、該発電機の駆動軸に配設される可変容量型の第2油圧ポンプと、前記主機に接続される可変容量型の第2油圧モータと、前記第2油圧ポンプと前記第2油圧モータとを連結する第2油圧回路と、
前記第2油圧回路若しくは第2油圧ポンプ本体内に設けられ前記第2油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第2油圧ポンプ制御器と、前記第2油圧回路若しくは第2油圧モータ本体内に設けられ前記第2油圧モータの押しのけ容積を御する第2油圧モータ制御器と、前記第2油圧ポンプ制御器および前記第2油圧モータ制御器を制御して前記第2油圧モータの回転数を制御する推進力制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
本第2の発明によれば、前記第1の発明とは逆に、発電機を駆動する動力、ここでは主機のエンジンから排出される排ガスエネルギーであり、この排ガスエネルギーのよって駆動された第2油圧ポンプから一部をエンジンの出力に戻すようにしてエンジンの推進力をアシストするものである。
すなわち、発電機の駆動軸に配設される可変容量型の第2油圧ポンプによって発生した高圧作動油の一部を、エンジンに接続される可変容量型の油圧モータへ供給して推進力をアシストする。
【0026】
好ましくは、前記推進力制御装置は、電力負荷に対する前記発電機の余剰電力に相当する動力分を前記主機の推進力のアシスト力として付与するように前記油圧ポンプ制御器および前記圧モータ制御器を制御する。
これによって、船舶の持つエネルギー源を有効活用でき、船舶トータルとしての運転効率を向上できる。また、主機の推進力のアシスト力の付与として、電動機によってアシスト力を付与するものに比べて(電気エネルギーによるものに比べて)、油圧ポンプおよび油圧モータによって推進軸に駆動力を付与する方がエネルギー変換による損失を生じにくく、効率よいエネギーの有効活用ができる。
【0027】
また、第2の発明においても第2油圧ポンプ、および第2油圧ポンプ制御器の構成は前記第1の発明と同様であり、油圧ポンプの回転軸の周りに環状に複数連続して配設されシリンダの油圧室の作動と被作動とを高圧弁および低圧弁の開閉によって制御して、油圧ポンプ全体としての押しのけ容積を制御して増減速比を簡単かつ正確に制御できる。
また、第2の発明の第2油圧モータ、および第2油圧モータ制御器の構成も、前記第1の発明と同様であり、油圧モータの回転軸の周りに環状に複数連続して配設されたシリンダの油圧室の作動と被作動とを高圧弁および低圧弁の開閉によって制御して、油圧モータの押しのけ容積を制御して増減速比を簡単かつ正確に制御できる。
【発明の効果】
【0028】
第1、第2の発明によれば、船舶の発電機の回転制御および主機の出力軸へのアシスト力制御を油圧ポンプおよび油圧モータを用いた油圧回路によって構成するとともに、油圧ポンプ制御器および油圧モータの制御器によって油圧ポンプおよび油圧モータの押しのけ容積を調整して回転数を制御することによって、低コストでかつ信頼性が高い船舶の発電装置および推進装置が得られる。さらに、船舶の持つエネルギー源を有効活用でき、船舶トータルとしての運転効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態を示す概略全体構成図である。
【図2】油圧モータの一定回転制御を示すフローチャートである。
【図3】油圧ポンプの構造を示す説明図である。
【図4】油圧モータの構造を示す説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す概略全体構成図である。
【図6】第2実施形態の推進力制御装置の制御を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3実施形態を示す概略全体構成図である。
【図8】第3実施形態の発電機主機制御装置の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。
但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0031】
(第1実施形態)
図1に示すように、船舶の発電機装置1は、主として船舶の推進力を発生するディーゼルエンジン(主機)(以下エンジンという)3と、先端にプロペラ5が取り付けられたエンジン3の出力軸7と、該出力軸7に取り付けられた第1油圧ポンプ9と、発電機11に接続された第1油圧モータ13と、第1油圧ポンプ9と第1油圧モータ13とを接続して形成される第1油圧回路15とを備える。
【0032】
また、第1油圧ポンプ9には、出力軸7の回転によって吐出される吐出油量、すなわち1回転あたりの吐出油量としての押しのけ容積を制御する第1油圧ポンプ制御器17が設けられている。第1油圧モータ13にも、1回転あたりの押しのけ容積を制御する第1油圧モータ制御器19が設けられている。
【0033】
そして、この第1油圧ポンプ制御器17および第1油圧モータ制御器19を制御する発電機制御装置21が設けられ、該発電機制御装置21によって、油圧ポンプおよび油圧モータのそれぞれの押しのけ容積を制御して、押しのけ容積比を調整して、増速比(減速比)を調整するようになっている。
その結果、増速比を調整して第1油圧モータ13を一定の回転数で回転させて、発電機11が常時一定電圧、一定周波数で発電可能になっている。この発電機11は、船舶内の電気機器への電力供給を行うものであり、公知の同期発電機又は誘導発電機を用いることができる
【0034】
第1油圧ポンプ9と第1油圧モータ13と第1油圧回路15とによって油圧トランスミッション23を構成しており、第1油圧回路15は、第1油圧ポンプ9と第1油圧モータ13との間に設けられた高圧油流路15aと低圧油流路15bとで構成される。
【0035】
高圧油流路15aは、第1油圧ポンプ9の吐出側を第1油圧モータ13の吸込側に接続しており、低圧油流路15bは、第1油圧モータ13の吐出側を第1油圧ポンプ9の吸込側に接続している。これにより、エンジン3の出力軸7の回転に伴って第1油圧ポンプ9が駆動されると、高圧油流路15aと低圧油流路15bとの間に圧力差が発生し、この差圧によって第1油圧モータ13が駆動される。
【0036】
また、油圧トランスミッション23は、エンジン3の出力軸7の回転数に応じて増速比(第1油圧ポンプ9の押しのけ容積と第1油圧モータ13への押しのけ容積との比)を調整して、第1油圧モータ13の回転数を調整可能になっている。
例えば、第1油圧ポンプ9の押しのけ容積Vと、該第1油圧ポンプ9の回転数Nとの積Vが、吐出油量となり、第1油圧モータ13の押しのけ容積Vと、該第1油圧モータ13の回転数Nとの積Vが、流入油量となり、V=Vの関係より押しのけ容積比(V、V)を調整することで増減速比(N、N)を調整できる。
【0037】
発電機制御装置21による発電機11の一定回転制御について、図2のフローチャートを参照して説明する。なお、発電機制御装置21には、図1に示すように第1油圧ポンプ制御器17を制御する油圧ポンプ制御部25と、第1油圧モータ制御器19を制御する油圧モータ制御部27とを備えている。
【0038】
ステップS1で、第1油圧モータ13の出力軸が連結する発電機11の回転数を検出する発電機回転センサ29からの信号を入力し、ステップS2で、該信号に基づいて検出回転数が目標とする一定回転数と略一致しているか判定し、一致していない場合にはステップと3で、第1油圧ポンプ9に対する第1油圧モータ13の増減速比を、それぞれの押しのけ容積を調整することで制御する。このように、目標の一定回転数になるようにフィードバック制御によって第1油圧ポンプ制御器17および第1油圧モータ制御器19が制御される。
【0039】
なお、この押しのけ容積の制御は、後述する油圧トランスミッションの構造において、第1油圧ポンプ9では、高圧弁36と低圧弁38の開閉タイミングを制御して油圧室33がポンプとして機能する数を制御することで、または油圧室33がポンプとして機能する範囲(ピストン32のストローク範囲)を制御することで調整することができる。また、第1油圧モータ13においても、高圧弁46と低圧弁48の開閉タイミングを制御して油圧室43がモータとして機能する数を制御することで、また油圧室43がモータとして機能する範囲(ピストン42のストローク範囲)を制御することで調整することができる。
【0040】
また、発電機制御装置21は、図示しない発電負荷を検出する発電負荷センサからの信号、およびエンジン3の回転数センサからの信号を基に、予めエンジンの回転数と発電負荷とに対する増速比についてマップに設定しておき、このマップデータを基にエンジンの回転数と発電負荷とに対する増速比になるように、第1油圧ポンプ制御器17および第1油圧モータ制御器19を制御するようにしてもよい。
【0041】
(油圧トランスミッションの構造)
まず、第1油圧ポンプ9の構造について説明する。
図3に示すように、第1油圧ポンプ9は、シリンダ30及びピストン32により形成される複数の油圧室33と、ピストン32に係合するカム曲面を有するカム34と、各油圧室33に対して設けられる高圧弁36および低圧弁38とにより構成される。
【0042】
シリンダ30は、シリンダブロックに設けられた円筒である。シリンダ30の内部には、シリンダ30とピストン32とに囲まれる油圧室33が形成されている。
【0043】
ピストン32は、カム34のカム曲線に合わせてピストン32をスムーズに作動させる観点から、シリンダ30内を摺動するピストン本体部32Aと、該ピストン本体部32Aに取り付けられ、カム34のカム曲面に係合するピストンローラー又はピストンシューとで構成することが好ましい。ここで、「ピストンローラー」は、カム34のカム曲面に当接して回転する部材であり、「ピストンシュー」とは、カム34のカム曲面に当接して摺動する部材である。
なお図3には、ピストン32がピストン本体部32Aとピストンローラー32Bとからなる例を示したが、ピストンローラー32Bを介在させなくてもよい。
【0044】
カム34は、カム取付台35を介して、エンジン3の出力軸7に接続するメインシャフト8の外周面に取り付けられている。カム34は、メインシャフト8が一回転する間に、油圧ポンプ12の各ピストン32を何度も上下動させて第1油圧ポンプ9のトルクを大きくする観点から、複数の凹部34A及び凸部34Bがメインシャフト8の周りに交互に並んだ波状のカム曲面を有するリングカムであることが好ましい。
なお、カム34のカム取付台35への固定は、ボルト、キー、ピン等の任意の固定部材31を用いて行われる。
【0045】
高圧弁36は、各油圧室33と高圧油流路15aとの間の高圧連通路37に設けられる。一方、低圧弁38は、各油圧室33と低圧油流路15bとの間の低圧連通路39に設けられる。これら高圧弁36及び低圧弁38を開閉することで、各油圧室33と高圧油流路15a及び低圧油流路15bとの連通状態を切り替えることができる。なお、高圧弁36及び低圧弁38の開閉は、ピストン32の上下動の周期にタイミングを合わせて行われる。
この高圧弁36及び低圧弁38によって、第1油圧ポンプ制御器17が構成されている。
【0046】
第1油圧ポンプ9では、メインシャフト8とともにカム34が回転すると、ピストン32のピストン本体部32Aが周期的に上下動し、ピストン32が下死点から上死点に向かうポンプ工程と、ピストン32が上死点から下死点に向かう吸入工程とが繰り返される。ポンプ工程では、高圧弁36が開かれ、低圧弁38が閉じられることで、油圧室33内の高圧油が高圧連通路37を介して高圧油流路15aに送られる。一方、吸入工程では、高圧弁36が閉じられ、低圧弁38が開かれることで、低圧連通路39を介して低圧油流路15bから油圧室33に低圧油が供給される。
これにより、メインシャフト8の回転に伴って第1油圧ポンプ9が駆動されると、高圧油流路15aと低圧油流路15bとの間に差圧が発生するようになっている。
【0047】
次に、第1油圧モータ13の構造について説明する。
第1油圧モータ13は、図4に示すように、シリンダ40及びピストン42により形成される複数の油圧室43と、ピストン42に係合するカム曲面を有するカム44と、各油圧室43に対して設けられた高圧弁46および低圧弁48とにより構成される。
【0048】
シリンダ40は、シリンダブロックに設けられた円筒である。シリンダ40の内部には、シリンダ40とピストン42とに囲まれる油圧室43が形成されている。
【0049】
ピストン42は、ピストン42の上下動をカム44の回転運動にスムーズに変換する観点から、シリンダ40内を摺動するピストン本体部42Aと、該ピストン本体部42Aに取り付けられ、カム44のカム曲面に係合するピストンローラー又はピストンシューとで構成することが好ましい。ここで、「ピストンローラー」は、カム44のカム曲面に当接して回転する部材であり、「ピストンシュー」とは、カム44のカム曲面に当接して摺動する部材である。
なお図4には、ピストン42がピストン本体部42Aとピストンローラー42Bとからなる例を示したが、ピストンローラー42Bを介在させなくてもよい。
【0050】
カム44は、発電機11に接続されるクランクシャフト45の軸中心Oから偏心して設けられた偏心カムである。ピストン42が上下動を一回行う間に、カム44及びカム44が取り付けられたクランクシャフト45は一回転するようになっている。
【0051】
高圧弁46は、各油圧室43と高圧油流路15aとの間の高圧連通路47に設けられる。一方、低圧弁48は、各油圧室43と低圧油流路15bとの間の低圧連通路49に設けられる。これら高圧弁46及び低圧弁48を開閉することで、各油圧室43と高圧油流路15a及び低圧油流路15bとの連通状態を切り替えることができる。なお、高圧弁46及び低圧弁48の開閉は、ピストン42の上下動の周期にタイミングを合わせて行われる。
この高圧弁46及び低圧弁48によって、第1油圧モータ制御器19が構成されている。
【0052】
第1油圧モータ13では、高圧油流路15aと低圧油流路15bとの差圧を利用してピストン42を上下動させて、ピストン42が上死点から下死点に向かうモータ工程と、ピストン42が下死点から上死点に向かう排出工程とが繰り返される。モータ工程では、高圧弁46が開かれ、低圧弁48が閉じられることで、高圧連通路47を介して高圧油流路15aから油圧室43に高圧油が供給される。一方、排出工程では、高圧弁46が閉じられ、低圧弁48が開かれることで、油圧室43内の作動油が低圧連通路49を介して低圧油流路15bに排出される。
これにより、モータ工程で油圧室43に流入した高圧油がピストン42を下死点に向けて押し下げると、カム44とともにクランクシャフト45が回転するようになっている。
発電機11は、第1油圧モータ13に接続されており、公知の同期発電機又は誘導発電機を用いることができる。発電機11は、前述のように第1油圧モータ13から略一定の回転数のトルクが入力され、略一定の周波数の交流電流を発生するようになっている。
【0053】
以上のように第1実施形態によれば、油圧ポンプと油圧モータとを油圧回路を介して動力伝達するとともに増減速比を調整して、常に一定回転数で発電機11を駆動できるようになるため、歯車式による増速機や、整流器や、インバータ等を介さずに一定電圧で一定周波数の電力を船舶内の電気機器に供給できるようになり、低コストで且つ信頼性の高い電力供給の発電装置が得られる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、図5、6を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態にて説明した油圧ポンプおよび油圧モータの配置関係を逆にしたものであり、第2油圧ポンプ60を、発電機11を駆動する回転エネルギーによって駆動し、該第2油圧ポンプ60によって発生した作動油を利用してエンジン3の出力軸7に接続した第2油圧モータ62を作動してエンジン3の出力をアシストするものである。発電機11の回転を制御するとともにエンジン3の推進力を制御するものである。
【0055】
発電機11の駆動は、図5に示すように、エンジン3から排出される排ガスエネルギーの有効活用のための排熱回収装置を用いて駆動されるようになっている。この排熱回収装置による発電機11の駆動について概要を次に説明する。
【0056】
エンジン3が排出する高温の排ガスによって蒸気を発生する蒸気発生装置64と、その蒸気によって駆動される蒸気タービン66と、エンジン3から排出される排ガスによって駆動されるガスタービン68と、減速機(変速機)70と、自動嵌脱クラッチ(クラッチ)71とを主に備えている。
【0057】
また、エンジン3の給気通路72には空気冷却器74が設けられ、過給機76のコンプレッサによって圧縮された空気が冷却されるようになっており、排気通路78には過給機76が設けられてそのタービンに排ガスが導かれて回転駆動されるようになっている。
この過給機76を通過後の排ガスは、ガスタービン68に導入されてガスタービン68を回転駆動する。そしてガスタービン68の回転は減速機(変速機)70と自動嵌脱クラッチ(クラッチ)71とを介して蒸気タービン66の回転軸79に連結されるようになっている。
【0058】
ガスタービン68を通過後の排ガス、およびガスタービン68をバイパスした排ガスは、蒸気発生装置64に導かれる。この蒸気発生装置64は排ガスエコノマイザ80と汽水分離器(高圧用、低圧用)82、84とを備えており、排ガスエコノマイザ80は、その排ガス通路内に過熱器80Aと蒸発器80Bとを有している。過熱器80Aと蒸発器80Bとは、排ガスエコノマイザ80内を下から上に向かって順番に平行に据え付けられている。
そして、高圧汽水分離器82には高圧蒸気が貯留され、低圧汽水分離器84には低圧蒸気が貯留され、高圧蒸気および低圧蒸気がそれぞれ蒸気タービン66に導かれるようになっている。また、高圧汽水分離器82内の蒸気は、船舶内の蒸気使用機器86へと供給されて利用される。
【0059】
また、エンジン3を冷却する冷却水循環経路88が形成され、給気通路72に設けられた空気冷却器74へ供給されるとともに、さらに、高圧汽水分離器82、低圧汽水分離器84のボイラ水としても供給される。
なお、排ガスエコノマイザ80を通過後の排ガスは、排ガスエコノマイザ80をバイパスした排ガスとともに排出されるようになっている。
【0060】
以上のような発電機11の駆動システムにおいて、図5に示すように、蒸気タービン66の回転軸79は変速機90を介して発電機11の駆動軸92に連結し、この駆動軸92の中間部に第2油圧ポンプ60が設けられている。
そして、第2油圧ポンプ60とエンジン3の出力軸7に接続した第2油圧モータ62とを、第2油圧回路94を介して接続して、油圧トランスミッション96を形成している。
【0061】
この油圧トランスミッション96の構造は、第1実施形態で説明したものと同様であり、第2油圧ポンプ60の押しのけ容積を制御する第2油圧ポンプ制御器61、および第2油圧モータ62の押しのけ容積を制御する第2油圧モータ制御器63を有している。
また、図5に示すように、第2油圧ポンプ制御器61を制御する油圧ポンプ制御部98と、第2油圧モータ制御器63を制御する油圧モータ制御部100とを有した推進力制御装置102を備えている。該推進力制御装置102によって第2油圧ポンプ60および第2油圧モータ62それぞれの押しのけ容積が調整されて、発電機11の駆動軸92の駆動動力の一部がエンジン3側に伝達されてエンジン3の動力をアシストするようになっている。
【0062】
この推進力制御装置102について図6のフローチャートを参照して説明する。
第2油圧ポンプ60のメインシャフトは発電機11の駆動軸92となっており、常時蒸気タービン66から回転されて、常時発電機11による発電が行われている。
しかし発電負荷、すなわち船舶内の電気機器の使用量が低下して負荷が低下した際に、発電機11の駆動軸92を目標とする一定回転数に保持するように、第2油圧ポンプ60のポンプ機能を発揮させるようになっている。
【0063】
ステップS11で、発電機11の駆動軸92の回転数を発電機回転センサ29で検出する。ステップS12で、検出値の回転数が目標値である一定回転数(電力供給が過剰状態にある時の回転数)を超えるか否かを判定する。Noの場合にはステップS13で、第2油圧ポンプ60を非作動で無効にしておきステップS11に戻り、Yes場合にはステップS14で、第2油圧ポンプ60を作動させてポンプ機能を発揮させる。すなわち、発電負荷が低下した場合には蒸気タービン66からの駆動力に余裕が出るため発電機11の回転数が上昇することによって判定している。なお、ステップS12において船舶内の電力供給が過剰状態かを判定するために電力負荷センサを別途設けて船舶内の電力負荷が目標負荷より低下して供給過剰状態にあることを検知して第2油圧ポンプ60を作動させるようにしてもよい。
また、第2油圧ポンプ60のポンプ機能の発揮は、図3において低圧弁38と高圧弁36との開閉タイミングを制御することで行う。
【0064】
次に、ステップS15で、第2油圧モータ62の回転数を設定する。この設定は、エンジン3の回転数センサ106からの信号を検出して、出力軸7に対してアシスト力を生じさせることができる回転数が設定される。
そして、ステップS16において、第2油圧ポンプ60の回転数と設定した第2油圧モータ62の回転数から増速比または減速機を算出して、その増速比または減速比に応じた押しのけ容積比になるように、油圧ポンプ制御部98が第2油圧ポンプ60の複数の油圧室33の作動状態と非作動状態または作動タイミングを制御し、さらに油圧モータ制御部100が第2油圧モータ62の複数の油圧室43の作動状態と非作動状態または作動タイミングを制御する。そして、ステップS17で第2油圧モータ62を作動させ。
【0065】
このように第2実施形態によれば、推進力制御装置102によって、発電機11の駆動軸92に配設される第2油圧ポンプ60によって発生した高圧作動油を、第2油圧モータ62へ供給して、エンジン3の推進力をアシストするように作動することができる。
電力負荷に対する発電機11の余剰電力に相当する動力分をエンジン3の推進力のアシスト力として付与するように制御することによって、船舶の持つエネルギー源を有効活用でき、船舶トータルとしての運転効率を向上できる。
また、エンジンへの推進力のアシスト力の付与として、電動機によって付与するものに比べて(電気エネルギーによるものに比べて)、油圧ポンプおよび油圧モータによって付与する方がエネルギー変換による損失を生じにくく、効率よい船舶のエネルギー活用ができる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、図7、8を参照して第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1実施形態のシステムと第2実施形態のシステムを合わせたものである。
発電機11への動力を、エンジン3からの動力と、蒸気タービン側からの動力と、電力供給過剰状態に応じて使い分けるようするとともに、その電力供給過剰状態時には蒸気タービン側からの動力でエンジンの動力をアシストするようにしたものである。
【0067】
エンジン3から排出される排ガスエネルギーによる排熱回収装置については、第2実施形態で説明したものと同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
図7に示すように、第3実施形態は、蒸気タービン66の回転軸79から変速機90を介して出力された駆動軸110に第3油圧ポンプ112が接続され、該第3油圧ポンプ112は第3油圧回路114を介して発電機11に取り付けられた第1油圧モータ13に接続されている。また、該第3油圧ポンプ112は第4油圧回路115を介してエンジン3に取り付けられた第2油圧モータ62に接続されている。
また、エンジン3の出力軸7には第1油圧ポンプ9と、第2油圧モータ62がそれぞれ取り付けられている。
これら第1油圧モータ13、第1油圧ポンプ9、第2油圧モータ62はそれぞれ前述した第1実施形態および第2実施形態で説明したもの同様である。
【0068】
本第3実施形態では、第1油圧モータ13、第1油圧ポンプ9、第2油圧モータ62、第3油圧ポンプ112のそれぞれは、発電機主機制御装置120の油圧ポンプ制御部122と、油圧モータ制御部124とによって制御されるようになっている。
また、船舶内の電気機器126の発電負荷を発電負荷センサ130で検出して、発電機11が余裕状態か否かに応じて発電機駆動モードと、エンジンをアシストする推進力アシストモードとに切り替えて、それぞれのモードにおいて、油圧モータと油圧ポンプとの押しのけ容積が制御され増減速比が制御される。
【0069】
発電機主機制御装置120での制御について、図8のフローチャートを参照して説明する。
ステップS21で、船内の電力負荷を電力負荷センサ130によって検出し、ステップS22で、検出した電力負荷に対して発電機11の発電能力(駆動トルク)に余裕があるか否かを判定する。余裕がある場合には、推進力アシストモードに切り替わり、余裕がない場合には、発電モードに切り替わる。
【0070】
次に、推進力アシストモードについて説明する。
まず、ステップS23で、第1油圧ポンプ9を非作動状態とする。この非作動状態は、前述した高圧弁36、低圧弁38を開閉制御して非作動状態にすることができる。
次にステップS24で、第3油圧モータ112を作動状態とする。その後ステップS25で、第4油圧回路115を介してエンジン3に取り付けられた第2油圧モータ62に作動油が供給されて、第2油圧モータ62を駆動するとともに、エンジン3をアシストできる回転数に調整されて駆動される。
ステップS26では、第3油圧回路114を介して発電機11に取り付けられた第1油圧モータ13に作動油が供給されて、第1油圧モータ13を駆動して発電を行う。
【0071】
次に、発電モードについて説明する。
ステップS27で、第3油圧ポンプ112および第2油圧モータ62をそれぞれ非作動状態とする。ステップS28で、エンジン3の駆動力(出力)が、十分か否か、つまり余裕がある状態か判定される。
余裕状状態であれば、ステップS29に進んで第1油圧ポンプ9と第1油圧モータ13とを作動状態として、発電機11をエンジン3の出力で発電機させる。余裕状態に無い場合には、ステップS30に進んで第1油圧ポンプ9と第1油圧モータ13とを非作動状態としてエンジン負荷を極力低減させるようにする。
【0072】
第3実施形態によれば、船内電力負荷に対して供給過剰状態にあるときには、蒸気タービン側(蒸気タービン66およびガスタービン68による駆動)の駆動力をエンジン3の動力のアシスト力として使用し、また、発電電力が不足の時には発電効率のよい主機であるエンジン3によって発電することで、船舶の持つエネルギー源を効率よく用いることができ、船舶のトータルとしてのエネルギーの運用効率を上げることができる。
【0073】
また、第1〜3実施形態において、油圧ポンプ部分と油圧モータ部分とを単に油圧配管で結ぶことでシステムを構成することができるため、装置の大型化、重量増大化を防止できる。
さらに、油圧ポンプおよび油圧モータを第1実施形態で説明したような構造を有することによって、複数の油圧室の作動状態(作動油圧室の個数、または油圧室内の作動ストローク範囲)を高圧弁と低圧弁とで制御することで、絞りを入れることなく流量を調整できるため、低損失で応答性の高いかつ広範囲にわたる増減速比に調整できるため、発電機11へ効率よくエンジン3からの動力と蒸気タービン側からの動力の使い分けをするともに、エンジン3へのアシスト力を加えることが可能になり、船舶の持つエネルギー源を有効活用できる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、船舶の発電機の回転制御および主機の出力軸へのアシスト力制御を油圧ポンプおよび油圧モータを用いた油圧回路によって構成するとともに、油圧ポンプ制御器および油圧モータの制御器によって油圧ポンプおよび油圧モータの押しのけ容積を調整して回転数を制御することによって、低コストでかつ信頼性が高い船舶の発電装置および推進装置が得られるため、船舶の持つエネルギー源を有効活用でき、船舶トータルとしての運転効率を向上できるので、船舶の発電装置および推進装置への用いることに適している。
【符号の説明】
【0075】
3 ディーゼルエンジン(主機)
5 プロペラ
9 第1油圧ポンプ
11 発電機
13 第1油圧モータ
15 第1油圧回路
17 第1油圧ポンプ制御器
19 第1油圧モータ制御器
21 発電機制御装置
25、98、122 油圧ポンプ制御部
27、100、124 油圧モータ制御部
60 第2油圧ポンプ
61 第2油圧ポンプ制御器
62 第2油圧モータ
63 第2油圧モータ制御器
64 蒸気発生装置
66 蒸気タービン
68 ガスタービン
76 過給機
80 排ガスエコノマイザ
94 第2油圧回路
102 推進力制御装置
112 第3油圧ポンプ
114 第3油圧回路
115 第4油圧回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の主機によって駆動される可変容量型の第1油圧ポンプと、
発電機に接続される可変容量型の第1油圧モータと、
前記第1油圧ポンプと第1油圧モータとを連結する第1油圧回路と、
前記第1油圧回路若しくは第1油圧ポンプの本体内に設けられ前記第1油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第1油圧ポンプ制御器と、
前記第1油圧回路若しくは第1油圧モータの本体内に設けられ前記第1油圧モータの押しのけ容積を制御する第1油圧モータ制御器と、
前記第1油圧ポンプ制御器および前記第1油圧モータ制御器を制御して前記第1油圧モータの回転数を制御する発電機制御装置と、を備えたことを特徴とする船舶の発電装置。
【請求項2】
前記発電機制御装置は、前記主機の回転変動および前記発電機の発電負荷の変動に対して前記第1油圧モータを一定の回転数で回転するように制御することを特徴とする請求項1記載の船舶の発電装置。
【請求項3】
前記主機を構成するエンジンから排出される排ガスエネルギーを用いて駆動される可変容量型の第3油圧ポンプと、
該第3油圧ポンプと前記第1油圧モータとを連結する第3油圧回路と、
該第3油圧回路若しくは前記第3油圧ポンプの本体内に設けられ前記第3油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第3油圧ポンプ制御器と、を備え、
前記発電機制御装置はさらに前記第3油圧ポンプ制御器を制御して前記第1油圧モータの回転数を制御することを特徴とする請求項1また2記載の船舶の発電装置。
【請求項4】
前記主機に接続される可変容量型の第2油圧モータと、
該第2油圧モータと前記第3油圧ポンプとを連結する第4油圧回路と、
該第4油圧回路若しくは前記第2油圧モータの本体内に設けられ第2油圧モータの押しのけ容積を制御する第2油圧モータ制御器と、
前記第3油圧ポンプ制御器および前記第2油圧モータ制御器を制御して前記主機の出力軸へアシスト力を付与する推進力制御装置と、を備えていることを特徴とする請求項3記載の船舶の発電装置。
【請求項5】
前記各油圧ポンプは、シリンダと、該シリンダ内を摺動するピストンにより囲まれる複数の油圧室と、前記ピストンに係合するカム曲面を有するカムと、各油圧室に接続する前記各油圧回路の高圧油流路を開閉する高圧弁と、各油圧室に接続する前記各油圧回路の低圧油流路を開閉する低圧弁とを有し、前記高圧弁および低圧弁の開閉を前記各油圧ポンプ制御器で制御するように構成されるとともに、前記シリンダは油圧ポンプの回転軸の周りに環状に複数連続して配設され、前記カムは複数の凹凸が交互に並んだ波状のカム曲面を有する環状のリングカムからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の船舶の発電装置。
【請求項6】
各油圧モータは、前記各油圧モータは、シリンダと、該シリンダ内を摺動するピストンにより囲まれる複数の油圧室と、前記ピストンに係合するカム曲面を有するカムと、各油圧室に接続する前記各油圧回路の高圧油流路を開閉する高圧弁と、各油圧室に接続する前記各油圧回路の低圧油流路を開閉する低圧弁とを有し、前記高圧弁および低圧弁の開閉を前記油圧モータ制御器で制御するように構成されるとともに、前記シリンダは油圧ポンプの回転軸の周りに環状に複数連続して配設され、前記カムはモータ回転軸中心から偏心して設けられる偏心カムからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の船舶の発電装置。
【請求項7】
主機のエンジンから排出される排ガスエネルギーを用いて駆動される発電機と、
該発電機の駆動軸に配設される可変容量型の第2油圧ポンプと、
前記主機に接続される可変容量型の第2油圧モータと、
前記第2油圧ポンプと前記第2油圧モータとを連結する第2油圧回路と、
前記第2油圧回路若しくは第2油圧ポンプ本体内に設けられ前記第2油圧ポンプの押しのけ容積を制御する第2油圧ポンプ制御器と、
前記第2油圧回路若しくは第2油圧モータ本体内に設けられ前記第2油圧モータの押しのけ容積を御する第2油圧モータ制御器と、
前記第2油圧ポンプ制御器および前記第2油圧モータ制御器を制御して前記第2油圧モータの回転数を制御する推進力制御装置と、を備えたことを特徴とする船舶の推進装置。
【請求項8】
前記推進力制御装置は、前記発電機の余剰電力に相当する動力を前記主機の出力軸へアシスト力として付与するように制御することを特徴とする請求項7記載の船舶の推進装置。
【請求項9】
前記油圧ポンプは、シリンダと、該シリンダ内を摺動するピストンにより囲まれる複数の油圧室と、前記ピストンに係合するカム曲面を有するカムと、各油圧室に接続する前記各油圧回路の高圧油流路を開閉する高圧弁と、各油圧室に接続する前記各油圧回路の低圧油流路を開閉する低圧弁とを有し、前記高圧弁および低圧弁の開閉を前記各油圧ポンプ制御器で制御するように構成されるとともに、前記シリンダは油圧ポンプの回転軸の周りに環状に複数連続して配設され、前記カムは複数の凹凸が交互に並んだ波状のカム曲面を有する環状のリングカムからなることを特徴とする請求項7または8記載の船舶の推進装置。
【請求項10】
前記油圧モータは、前記各油圧モータは、シリンダと、該シリンダ内を摺動するピストンにより囲まれる複数の油圧室と、前記ピストンに係合するカム曲面を有するカムと、各油圧室に接続する前記各油圧回路の高圧油流路を開閉する高圧弁と、各油圧室に接続する前記各油圧回路の低圧油流路を開閉する低圧弁とを有し、前記高圧弁および低圧弁の開閉を前記油圧モータ制御器で制御するように構成されるとともに、前記シリンダは油圧ポンプの回転軸の周りに環状に複数連続して配設され、前記カムはモータ回転軸中心から偏心して設けられる偏心カムからなることを特徴とする請求項7または8記載の船舶の推進装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−112088(P2013−112088A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258455(P2011−258455)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】