説明

船舶

【課題】内燃機関に関連する既存の構造を大幅に変更することなく、内燃機関および電動モータの二種類の駆動源によって推進する船舶を提供する。
【解決手段】船舶1は、第1推進機構4と、少なくとも1つの第2推進機構5と、ハル2とを含む。第1推進機構4は、内燃機関によって推力を発生するように構成されている。第2推進機構5は、電動モータによって推力を発生するように構成されている。第1推進機構4および第2推進機構5は、ハル2に設けられている。第1推進機構4および第2推進機構5は、互いに独立している。第1推進機構4が発生する推力の方向と、少なくとも1つの第2推進機構5が発生する推力の方向とは、一致している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関から排出される排ガスに含まれる有害物質の低減や、燃費の向上、騒音の抑制のために、内燃機関だけでなく、電動モータを駆動源として用いる船舶が提案されている。
たとえば特許文献1記載の従来の船舶は、エンジン(内燃機関)および電動モータと、エンジンおよび電動モータによって駆動されるジェットポンプとを備えている。電動モータは、ジェットポンプとエンジンとの間に配置されている。電動モータの出力軸の一端部は、ジェットポンプ側に突出しており、電動モータの出力軸の他端部は、エンジン側に突出している。出力軸の一端部は、ジェットポンプのドライブシャフトに接続されており、出力軸の他端部は、クラッチに接続されている。エンジンのクランクシャフトは、クラッチに接続されている。電動モータの回転は、出力軸からドライブシャフトに伝達される。エンジンの回転は、クラッチによって出力軸とクランクシャフトとが接続されることにより、出力軸を介してドライブシャフトに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6857918号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
たとえば、従来の内燃機関を備える船舶に電動モータを追加して、内燃機関および電動モータを併用することが考えられる。この場合に特許文献1記載の構造を採用すると、電動モータだけでなく、クラッチや、クラッチの切替を行う構成を新たに設ける必要がある。したがって、船舶の構造が複雑になってしまう上に、内燃機関に関連する既存の構造を大幅に変更する必要がある。
【0005】
そこで、この発明の目的は、内燃機関に関連する既存の構造を大幅に変更することなく、内燃機関および電動モータの二種類の駆動源によって推進する船舶を提供することである。
前記目的を達成するための本発明の一実施形態は、第1推進機構と、少なくとも1つの第2推進機構と、ハルと、を含む、船舶を提供する。前記第1推進機構は、内燃機関を含み、前記内燃機関によって推力を発生するように構成されている。前記少なくとも1つの第2推進機構は、電動モータと、前記電動モータによって駆動される第2ジェットポンプとを含み、前記電動モータによって前記第2ジェットポンプを駆動させることにより推力を発生するように構成されている。前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とは、互いに独立している。さらに、前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とは、前記第1推進機構が発生する推力の方向と、前記少なくとも1つの第2推進機構が発生する推力の方向とが一致するように、前記ハルに設けられている。
【0006】
前記船舶は、前記船舶を操舵するステアリングハンドルをさらに含んでいてもよい。この場合、前記第1推進機構が発生する推力の方向と、前記少なくとも1つの第2推進機構が発生する推力の方向とは、前記船舶が直進する(真っすぐに前進または後進する)直進位置に前記ステアリングハンドルが配置されている状態で一致していてもよい。すなわち、前記ステアリングハンドルが前記直進位置のときに前記第1推進機構が前記ハルを推進する方向と、前記ステアリングハンドルが前記直進位置のときに前記少なくとも1つの第2推進機構が前記ハルを推進する方向とが一致していてもよい。
【0007】
この構成によれば、第1推進機構が内燃機関によって推力を発生し、第2推進機構が電動モータによって推力を発生する。これにより、船舶が推進される。第1推進機構が発生する推力の方向と、少なくとも1つの第2推進機構が発生する推力の方向とは、一致している。したがって、第1推進機構および第2推進機構のいずれによっても船舶を同じ方向に推進させることができる。さらに、第1推進機構および第2推進機構は、互いに独立している。したがって、内燃機関を備える従来の船舶に第2推進機構を追加することにより、内燃機関に関連する既存の構造を大幅に変更することなく、内燃機関および電動モータの二種類の駆動源によって船舶を推進させることができる。
【0008】
前記第1推進機構は、複数の第1の羽根(blade)と、前記複数の第1の羽根と共に前記内燃機関によって回転駆動される第1回転軸とを含んでいてもよい。前記少なくとも1つの第2推進機構は、複数の第2の羽根(blade)と、前記複数の第2の羽根と共に前記電動モータによって回転駆動される、前記第1回転軸とは独立した第2回転軸とを含んでいてもよい。前記第1の羽根は、インペラの羽根であってもよいし、プロペラの羽根であってもよい。
【0009】
また、前記第1回転軸および第2回転軸は、平行または略平行に配置されていてもよい。
また、前記第1推進機構は、前記内燃機関によって駆動される第1ジェットポンプをさらに含み、前記内燃機関によって前記第1ジェットポンプを駆動させることにより推力を発生するように構成されていてもよい。
【0010】
また、前記少なくとも1つの第2推進機構は、前記ハルの幅方向に関して前記ハルの中央部の両側に配置された一対の第2推進機構を含んでいてもよい。この場合、前記船舶は、前記一対の第2推進機構の一方からの推力の大きさと、前記一対の第2推進機構の他方からの推力の大きさとが異なるように、前記一対の第2推進機構を制御するようにプログラムされた推力制御装置をさらに含んでいてもよい。
【0011】
また、前記少なくとも1つの第2推進機構は、前記ハルの幅方向に関して前記ハルの中央部の両側に配置された一対の第2推進機構を含んでいてもよい。この場合、前記第1推進機構は、前記ハルの幅方向に関して前記ハルの中央部に配置されていてもよい。
また、前記第1推進機構は、前記ハルの幅方向に関して前記ハルの中央部に配置されており、前記少なくとも1つの第2推進機構は、前記第1推進機構に隣接していてもよい。
【0012】
また、前記少なくとも1つの第2推進機構は、前記ハルの幅方向に関して前記ハルの中央部に配置されていてもよい。
また、前記電動モータは、正転および逆転可能に構成されていてもよい。この場合、前記第2ジェットポンプは、噴射口を含み、前記電動モータの正転に伴って前記噴射口から水を噴射し、前記電動モータの逆転に伴って前記噴射口から水を吸い込むように構成されていてもよい。
【0013】
また、前記船舶は、前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とを制御するようにプログラムされた切替制御装置をさらに含んでいてもよい。この場合、前記切替制御装置は、前記船舶の速度領域に応じて前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とを切り替えるようにプログラムされていてもよい。
具体的には、前記切替制御装置は、前記船舶の速度が所定の第1速度未満である低速領域では、前記少なくとも1つの第2推進機構によって前記船舶を推進させるようにプログラムされていてもよい。
【0014】
また、前記切替制御装置は、前記船舶の速度が、前記第1速度以上の所定の第2速度以上である高速領域では、前記第1推進機構によって前記船舶を推進させるようにプログラムされていてもよい。
また、前記切替制御装置は、前記船舶の速度が前記第1速度以上で前記第2速度未満である中速領域では、前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とによって前記船舶を推進させるようにプログラムされていてもよい。
【0015】
また、前記切替制御装置は、前記中速領域では、前記船舶の速度の増加に伴って前記第1推進機構の推力が増加するように前記第1推進機構を制御するようにプログラムされていてもよい。この場合、前記切替制御装置は、前記中速領域では、前記船舶の速度の増加に伴って前記少なくとも1つの第2推進機構の推力が減少するように前記少なくとも1つの第2推進機構を制御するようにプログラムされていてもよい。
【0016】
また、前記ハルは、後方視V字状の底部を含んでいてもよい。前記底部は、前記ハルを後方から見たときに最も下に位置する中央部を有していてもよい。この場合、前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とは、前記底部に配置されていてもよい。さらに、前記中央部から前記少なくとも1つの第2推進機構までの前記ハルの幅方向への距離は、前記中央部から前記第1推進機構までの前記ハルの幅方向への距離よりも大きくてもよい。
【0017】
また、前記電動モータは、前記第1推進機構だけで前記船舶が推進されているときに、前記少なくとも1つの第2推進機構に流入する水流によって回転駆動されることにより電力を発生するように構成されていてもよい。この場合、前記船舶は、前記電動モータに接続されており、前記電動モータが発生した電力によって充電されるように構成されたバッテリをさらに含んでいてもよい。
【0018】
また、前記目的を達成するための本発明の他の実施形態は、第1推進機構と、少なくとも1つの第2推進機構と、ハルと、を含む、船舶を提供する。前記第1推進機構は、内燃機関と、前記内燃機関によって駆動される第1ジェットポンプとを含み、前記内燃機関によって前記第1ジェットポンプを駆動させることにより推力を発生するように構成されている。前記少なくとも1つの第2推進機構は、電動モータを含み、前記電動モータによって推力を発生するように構成されている。前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とは、互いに独立している。さらに、前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とは、前記第1推進機構が発生する推力の方向と、前記少なくとも1つの第2推進機構が発生する推力の方向とが一致するように、前記ハルに設けられている。この構成によれば、第1推進機構および第2推進機構が互いに独立しているから、内燃機関に関連する既存の構造を大幅に変更することなく、内燃機関および電動モータの二種類の駆動源によって船舶を推進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る船舶の概略構成を説明するための側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る船舶の概略構成を説明するための平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る第1推進機構の概略構成を説明するための部分断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る第2推進機構の概略構成を説明するための部分断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る船舶の概略構成を説明するための背面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る船舶の電気的構成について説明するための図である。
【図7】一対の第1推進機構が船舶を前進させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【図8】一対の第1推進機構が船舶を前進させながら旋回させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【図9】一対の第1推進機構が船舶を後進させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【図10】一対の第1推進機構が船舶を後進させながら旋回させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【図11】一対の第2推進機構が船舶を前進させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【図12】一対の第2推進機構が船舶を前進させながら旋回させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【図13】一対の第2推進機構が船舶を後進させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【図14】一対の第2推進機構が船舶を後進させながら旋回させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【図15】一対の第1推進機構と一対の第2推進機構とが船舶を前進させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【図16】一対の第1推進機構と一対の第2推進機構とが船舶を前進させながら旋回させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【図17】一対の第1推進機構と一対の第2推進機構とが船舶を後進させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【図18】一対の第1推進機構と一対の第2推進機構とが船舶を後進させながら旋回させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【図19】前進方向への推力と船舶の速度との関係の一例を示すグラフである。
【図20】本発明の第1実施形態に係る船舶の制御について説明するためのフローチャートである。
【図21】本発明の第2実施形態に係る船舶の概略構成を説明するための背面図である。
【図22】本発明の第3実施形態に係る船舶の概略構成を説明するための背面図である。
【図23】本発明の第4実施形態に係る船舶の概略構成を説明するための背面図である。
【図24】本発明の第5実施形態に係る船舶の概略構成を説明するための背面図である。
【図25】本発明の第6実施形態に係る船舶の概略構成を説明するための背面図である。
【図26】本発明の第7実施形態に係る第2推進機構の概略構成を説明するための部分断面図である。
【図27】本発明の第8実施形態に係る船舶の概略構成を説明するための平面図である。
【図28】本発明の第9実施形態に係る船舶の概略構成を説明するための平面図である。
【図29】本発明の第9実施形態に係る船舶の概略構成を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。各図では、船舶1が水上で静止している静止状態の船舶1が示されている。以下の説明における「前後方向」「左右方向(幅方向)」および「上下方向」は、静止状態のハル2を基準とする方向である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る船舶1の概略構成を説明するための側面図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る船舶1の概略構成を説明するための平面図である。図2では、船舶1の一部が破断されており、船舶1の内部が示されている。
【0021】
図1に示すように、船舶1は、ハル2と、ハル2の上方に配置されたデッキ3とを含む。図2に示すように、船舶1は、推力を発生する複数の推進機構4、5と、船舶1を操舵するために操船者によって操作されるステアリングハンドル6と、船舶1の速度調整や進行方向の切替を行うために操船者によって操作されるレバー7とをさらに含む。ステアリングハンドル6およびレバー7は、デッキ3に設けられた操船席8に配置されている。複数の推進機構4、5は、ハル2の後部に取り付けられている。各推進機構4、5は、船舶1を前方および後方に推進するように構成されている。複数の推進機構4、5は、駆動源としてのエンジン10(図3参照)によって推力を発生する一対の第1推進機構4と、駆動源としての電動モータ27(図4参照)によって推力を発生する一対の第2推進機構5とを含む。第1推進機構4および第2推進機構5は、互いに独立している。
【0022】
図2に示すように、一対の第1推進機構4は、ハル2の幅方向に関してハル2の中央部9に配置されている。具体的には、第1推進機構4は、ハル2の後方に水を噴射する第1ノズル20を含む。2つの第1ノズル20は、ハル2の中央部9で左右対称に配置されている。すなわち、2つの第1ノズル20は、船首と船尾中央とを通る鉛直な平面(船体中心C1)に対して対称に配置されている。したがって、一対の第1推進機構4は、ハル2の中央部9で左右対称に配置されている。また、第2推進機構5は、ハル2の後方に水を噴射する第2ノズル36を含む。2つの第2ノズル36は、2つの第1ノズル20の両側で左右対称に配置されている。したがって、一対の第2推進機構5は、ハル2の幅方向に関してハル2の中央部9の両側で左右対称に配置されている。言い換えると、一対の第2推進機構5は、一対の第1推進機構4よりも側方に配置されている。
【0023】
図3は、本発明の第1実施形態に係る第1推進機構4の概略構成を説明するための部分断面図である。
第1推進機構4は、エンジン10と、第1ジェットポンプ11と、第1バケット12とを含む。エンジン10は、内燃機関である。エンジン10は、ハル2の内部に配置されている。第1ジェットポンプ11は、エンジン10の後方に配置されている。第1バケット12は、第1ジェットポンプ11の後端部に取り付けられている。第1ジェットポンプ11は、エンジン10によって駆動される。第1ジェットポンプ11は、エンジン10によって駆動されることにより、船底から水を吸い込んで、この吸い込んだ水を後方に噴射するように構成されている。第1バケット12は、第1ジェットポンプ11から噴射される水の方向を前向きに変換するように構成されている。
【0024】
第1ジェットポンプ11は、船底で開口する第1吸水口13と、第1吸水口13よりも後方で後向きに開口する第1噴射口14と、第1吸水口13と第1噴射口14とを接続する第1流路15とを形成している。第1ジェットポンプ11は、第1吸水口13と第1流路15の一部とを形成する第1ダクト16と、第1流路15に配置された第1インペラ17および第1静翼18と、第1インペラ17に連結された第1ドライブシャフト19とを含む。さらに、第1ジェットポンプ11は、第1噴射口14を形成する第1ノズル20と、第1ノズル20から噴射された水の方向を左右に変更する第1デフレクタ21と、第1ダクト16に取り付けられた第1格子(図示せず)とを含む。第1吸水口13への異物の進入は、第1格子によって防止される。
【0025】
第1ドライブシャフト19は、前後方向に延びている。第1ドライブシャフト19の前端部は、カップリング22を介してエンジン10に連結されており、第1ドライブシャフト19の後端部は、複数の軸受23を介して回転可能に支持されている。第1インペラ17は、第1ドライブシャフト19の後端部よりも前方で第1ドライブシャフト19に連結されている。第1静翼18は、第1インペラ17の後方に配置されており、第1ノズル20は、第1静翼18の後方に配置されている。第1インペラ17は、第1回転軸線L1(第1ドライブシャフト19の中心軸線)を取り囲むように配置された複数の第1の羽根24(動翼)を含む。同様に、第1静翼18は、第1回転軸線L1を取り囲むように配置された複数の羽根を含む。第1インペラ17は、第1流路15に対して第1回転軸線L1まわりに回転可能であり、第1静翼18は、第1流路15に対して固定されている。
【0026】
第1インペラ17は、エンジン10によって、第1ドライブシャフト19と共に第1回転軸線L1まわりに駆動される。第1インペラ17が回転駆動されると、第1吸水口13から第1流路15内に水が吸い込まれ、第1流路15内に吸い込まれた水が、第1インペラ17から第1静翼18に送られる。第1インペラ17によって送られた水が第1静翼18を通過することにより、第1インペラ17の回転によって生じた水流のねじれが低減され、水流が整えられる。したがって、整流された水が、第1静翼18から第1噴射口14に送られる。第1ノズル20は、前後方向に延びる筒状であり、前端部の内径よりも後端部の内径の方が小さくなるように構成されている。第1噴射口14は、第1ノズル20の後端部によって形成されている。したがって、第1ノズル20に送られた水は、第1ノズル20によって加速された後、第1噴射口14から後方に噴射される。
【0027】
第1デフレクタ21は、第1ノズル20に連結されている。第1デフレクタ21は、中空である。第1噴射口14は、第1デフレクタ21内に配置されている。第1デフレクタ21は、後向きに開口した前進噴射口25と、斜め前向きに開口した後進噴射口26とを形成している。前進噴射口25は、第1噴射口14の後方に配置されており、後進噴射口26は、前進噴射口25よりも下方に配置されている。第1バケット12は、左右方向に延びるバケット回転軸線BL1まわりに回転可能に第1デフレクタ21に連結されている。第1バケット12は、前進噴射口25を後方から見た時に前進噴射口25が第1バケット12によって覆われる後進位置(二点鎖線で示す位置)と、前進噴射口25を後方から見た時に前進噴射口25が第1バケット12によって覆われていない前進位置(実線で示す位置)と、の間で移動可能である。第1バケット12は、操船者によるレバー7の操作によって前進位置または後進位置に配置される。
【0028】
第1バケット12が前進位置に配置されている状態では、前進噴射口25が覆われていないので、第1噴射口14から噴射された水は、第1デフレクタ21内を通って、前進噴射口25から後方に噴射される。これにより、前進方向への推力が発生する。一方、第1バケット12が後進位置に配置されている状態では、前進噴射口25が覆われているので、第1噴射口14から噴射された水は、前進噴射口25から噴射されずに、後進噴射口26から前方に噴射される。これにより、後進方向への推力が発生する。したがって、第1バケット12が前進位置に配置されている状態では、船舶1が前方に推進され、第1バケット12が後進位置に配置されている状態では、船舶1が後方に推進される。
【0029】
第1デフレクタ21は、上下方向に延びるデフレクタ回転軸線DL1まわりに左右に回転可能に第1ノズル20に連結されている。第1デフレクタ21は、操船者によるステアリングハンドル6の操作に伴って、第1バケット12と共にデフレクタ回転軸線DL1まわりに左右に回動する。第1バケット12が前進位置に配置されている状態で、第1デフレクタ21がデフレクタ回転軸線DL1まわりに左右に回動すると、前進噴射口25から噴射される水の噴射方向が左右に変更される。同様に、第1バケット12が後進位置に配置されている状態で、第1デフレクタ21がデフレクタ回転軸線DL1まわりに左右に回動すると、後進噴射口26から噴射される水の噴射方向が左右に変更される。したがって、第1デフレクタ21は、ステアリングハンドル6の操作に伴って、水の噴射方向を左右に変更するように構成されている。第1デフレクタ21からの水の噴射方向が前後方向に対して左右に傾けられることにより、船舶1が旋回する。
【0030】
図4は、本発明の第1実施形態に係る第2推進機構5の概略構成を説明するための部分断面図である。
第2推進機構5は、電動モータ27と、第2ジェットポンプ28とを含む。電動モータ27は、たとえば、ブラシレスモータである。第2ジェットポンプ28は、電動モータ27によって駆動される。第2ジェットポンプ28は、電動モータ27によって駆動されることにより、船底から水を吸い込んで、この吸い込んだ水を後方に噴射する。第2ジェットポンプ28は、船底で開口する第2吸水口29と、第2吸水口29よりも後方で後向きに開口する第2噴射口30と、第2吸水口29と第2噴射口30とを接続する第2流路31とを形成している。第2ジェットポンプ28は、第2吸水口29と第2流路31の一部とを形成する第2ダクト32と、第2流路31に配置された第2インペラ33および第2静翼34と、第1インペラ17に連結された第2ドライブシャフト35とを含む。さらに、第2ジェットポンプ28は、第2噴射口30を形成する第2ノズル36と、第2ダクト32に取り付けられた第2格子37と、第2流路31に配置された第2ハウジング38とを含む。第2吸水口29への異物の進入は、第2格子37によって防止される。
【0031】
第2ジェットポンプ28は、たとえばボルト39によって、ハル2に取り付けられている。電動モータ27は、第2ジェットポンプ28によって保持されている。具体的には、電動モータ27は、第2ハウジング38によってその内部で保持されている。第2ハウジング38は、第2インペラ33の後方に配置されている。第2静翼34は、第2ハウジング38の周囲に配置されており、第2ノズル36は、第2静翼34の後方で第2ハウジング38を取り囲んでいる。第2インペラ33は、第2回転軸線L2(第2ドライブシャフト35の中心軸線)を取り囲むように配置された複数の第2の羽根40(動翼)を含む。同様に、第2静翼34は、第2回転軸線L2を取り囲むように配置された複数の羽根を含む。第2インペラ33は、第2流路31に対して第2回転軸線L2まわりに回転可能であり、第2静翼34は、第2流路31に対して固定されている。
【0032】
ハル2の内部からハル2の外部に延びる配線41は、第2静翼34および第2ハウジング38内を通って、電動モータ27に接続されている。後述するバッテリ52の電力は、この配線41を介して電動モータ27に供給される。電動モータ27は、電気エネルギを機械エネルギに変換することにより動力を発生し、機械エネルギを電気エネルギに変換することにより発電する。第2ドライブシャフト35は、電動モータ27の前方で前後方向に延びている。第2ドライブシャフト35は、電動モータ27の回転軸であってもよいし、電動モータ27の回転軸に同軸的に連結されたシャフトであってもよい。第2ドライブシャフト35は、第1推進機構4の第1ドライブシャフト19とは独立しており、第1ドライブシャフト19および第2ドライブシャフト35は、平行または略平行に配置されている(図1参照)。第2ドライブシャフト35は、第2インペラ33を前後方向に貫通している。第2ドライブシャフト35の前端部は、第2インペラ33から前方に突出している。第2ドライブシャフト35の前端部には、ナット42が取り付けられている。第2ドライブシャフト35の前端部とナット42とは、キャップ43によって覆われている。第2インペラ33は、ナット42によって第2ドライブシャフト35に連結されている。
【0033】
第2インペラ33は、電動モータ27によって、第2ドライブシャフト35と共に第2回転軸線L2まわりに駆動される。電動モータ27は、正転および逆転可能に構成されている。電動モータ27が正転すると、第2インペラ33は、正転方向に回転駆動される。これにより、第2吸水口29から第2流路31内に水が吸い込まれ、第2流路31内に吸い込まれた水が、第2インペラ33から第2静翼34に送られる。第2インペラ33によって送られた水が第2静翼34を通過することにより、第2インペラ33の回転によって生じた水流のねじれが低減され、水流が整えられる。したがって、整流された水が、第2静翼34から第2噴射口30に送られる。第2ノズル36は、前後方向に延びる筒状であり、第2ノズル36の後端部は、第2噴射口30を形成している。したがって、第2ノズル36に送られた水は、第2噴射口30から後方に噴射される。すなわち、電動モータ27の正転に伴って、第2噴射口30から後方に水が噴射される。
【0034】
一方、電動モータ27が逆転すると、第2インペラ33は、正転方向とは反対の逆転方向に回転駆動される。これにより、第2噴射口30から第2流路31内に水が吸い込まれ、第2流路31内に吸い込まれた水が、第2吸水口29に向かって流れる。すなわち、電動モータ27の逆転に伴って、第2噴射口30に水が吸い込まれる。第2ダクト32は、第2吸水口29に向かって流れる水が第2吸水口29から斜め下方に向けて前方に噴射されるように構成されている。したがって、第2噴射口30から吸い込まれた水は、第2吸水口29から斜め下方に向けて前方に噴射される。これにより、後進方向の推力が発生する。すなわち、第2インペラ33が正転方向に回転駆動されると、前進方向の推力が発生し、第2インペラ33が逆転方向に回転駆動されると、後進方向の推力が発生する。このように、第2推進機構5は、第2インペラ33の回転方向を切り替えることにより、推力の方向を変更できるように構成されている。
【0035】
図5は、本発明の第1実施形態に係る船舶1の概略構成を説明するための背面図である。
ハル2は、底部44と、底部44の右端部および左端部から上方に延びる左右一対の側部45とを含む。底部44は、たとえば、後方から見て左右対称なV字状である。したがって、底部44は、ハル2を後方から見たときに最も下に位置している中央部46(キール:keel)と、中央部46から側部45に向かって延びる左右一対の傾斜部47とを含む。傾斜部47は、側部45側の端部(チャイン:chine)が中央部46側の端部よりも上方に位置するように傾斜している。したがって、底部44の中央部46は、側部45側の傾斜部47の端部よりも下方に配置されている。船舶1が前方に滑走している滑走状態では、喫水線WL1がチャインとほぼ同じ高さに位置する。したがって、滑走状態では、中央部46までの水深が、チャインまでの水深よりも大きい。
【0036】
第1推進機構4および第2推進機構5は、底部44に配置されている。一対の第1推進機構4は、船体中心C1の両側に配置されており、一対の第2推進機構5は、一対の第1推進機構4よりも側方において船体中心C1の両側に配置されている。したがって、船体中心C1から第2推進機構5までの幅方向への距離D2は、船体中心C1から第1推進機構4までの幅方向への距離D1よりも大きい。底部44が後方視V字状であり、第1推進機構4および第2推進機構5が底部44に配置されているから、船体中心C1からの距離(幅方向への距離)が大きいほど、吸水口13、29は上方に位置している。したがって、第2推進機構5の第2吸水口29に加わる水圧は、第1推進機構4の第1吸水口13に加わる水圧よりも小さい。
【0037】
図6は、本発明の第1実施形態に係る船舶1の電気的構成について説明するための図である。
船舶1は、船舶1の航走を制御するメインECU48(Electronic control unit)をさらに含む。また、各第1推進機構4は、エンジンECU49をさらに含み、各第2推進機構5は、モータECU50をさらに含む。メインECU48は、本発明の第1実施形態に係る推力制御装置および切替制御装置の一例である。エンジンECU49およびモータECU50は、メインECU48に電気的に接続されている。メインECU48は、エンジンECU49およびモータECU50を制御するようにプログラムされている。2つのエンジンECU49は、それぞれ、2つのエンジン10を制御するようにプログラムされており、2つのモータECU50は、それぞれ、2つの電動モータ27を制御するようにプログラムされている。
【0038】
船舶1は、さらに、船舶1の速度を検出する速度検出装置51と、船舶1に電力を供給するバッテリ52と、バッテリ52の電力の残量を検出する残量検出装置53と、船舶1を起動させるために操船者によって操作されるメインスイッチ54とを含む。メインスイッチ54がオンにされると、バッテリ52の電力が、メインECU48やモータECU50などの船舶1に備えられた電気機器に供給され、メインスイッチ54がオフにされると、電気機器への電力供給が停止される。船舶1は、さらに、ステアリングハンドル6の操舵位置を検出するハンドル位置検出装置55と、レバー7のシフト位置を検出するレバー位置検出装置56とをさらに含む。ハンドル位置検出装置55およびレバー位置検出装置56は、メインECU48に電気的に接続されている。
【0039】
ステアリングハンドル6は、左最大操舵位置と右最大操作位置との間で移動可能である。ステアリングハンドル6は、操船者の操作によって、左最大操舵位置と右最大操作位置との間の任意の位置に配置される。直進位置(図6に示す位置)は、左最大操舵位置と右最大操作位置との間に設けられている。直進位置は、船舶1を真っすぐに前進または後進させるときに配置される位置である。第1デフレクタ21(図3参照)は、ステアリングハンドル6に連動して左右に回動する。ステアリングハンドル6が直進位置よりも左最大操舵位置側の領域に配置されている状態では、第1デフレクタ21は、左に傾けられている。一方、ステアリングハンドル6が直進位置よりも右最大操舵位置側の領域に配置されている状態では、第1デフレクタ21は、右に傾けられている。
【0040】
また、レバー7は、F領域、N領域、およびR領域で移動可能である。N領域は、F領域とR領域の間に設けられている。レバー7は、操船者の操作によって、F領域、N領域、およびR領域内の任意の位置に配置される。F領域は、船舶1を前進させるときに配置される領域であり、R領域は、船舶1を後進させるときに配置される領域である。レバー7がF領域に配置されている状態では、第1バケット12(図3参照)は、前進位置に配置されており、レバー7がR領域に配置されている状態では、第1バケット12は、後進位置に配置されている。たとえば、操船者がレバー7をF領域からR領域に移動させると、第1デフレクタ21は、前進位置から後進位置に移動する。
【0041】
次に、第1推進機構4および第2推進機構5が発生する推力の方向について説明する。最初に、一対の第1推進機構4が船舶1を推進させるときの推力の方向について説明する。一対の第1推進機構4による船舶1の推進は、船舶1がどの速度領域で航走するときに行われてもよい。
[一対の第1推進機構4による船舶1の推進]
図7は、一対の第1推進機構4が船舶1を前進させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【0042】
操船者が船舶1を真っすぐに前進させるときには、ステアリングハンドル6が直進位置に配置され、レバー7がF領域に配置される。したがって、2つの第1デフレクタ21は、前進噴射口25からの水の噴射方向が平面視において前後方向に沿うように配置され、2つの第1バケット12は、前進位置(前進噴射口25が覆われていない位置)に配置される。さらに、メインECU48から2つのエンジンECU49に指令が入力され、2つのエンジン10の出力の大きさが一致するように、2つのエンジンECU49がそれぞれ2つのエンジン10を制御する。これにより、2つの前進噴射口25から平面視において前後方向に沿う方向に水が噴射される。また、2つの前進噴射口25から後方に水が噴射されることにより、水流X1が形成される。2つのエンジン10の出力の大きさが一致しているから、各第1推進機構4が発生する推力の大きさも一致している。さらに、一対の第1推進機構4は、左右対称に配置されている。したがって、2つの前進噴射口25から後方に水が噴射されることにより、前方向(船体中心C1に平行な方向)への力(一対の第1推進機構4が発生する推力)がハル2に加わり、船舶1は、左右に旋回せずに、真っすぐに前進する。
【0043】
第1推進機構4だけで船舶1が推進されている状態では、第2インペラ33の回転による吸引力が発生していないので、吸引力によって第2吸水口29から第2流路31に水が吸い込まれない。しかし、船舶1の航走によって第2吸水口29に水圧が加わるので、この水圧によって、第2吸水口29から第2流路31に水が進入する。すなわち、船舶1の航走によって第2吸水口29から第2流路31に進入する水流X2が形成される。第2流路31に進入した水は、第2噴射口30に向かって流れる。そして、この第2噴射口30に向かって流れる水は、第2インペラ33に圧力(水圧)を加え、第2インペラ33を回転駆動させる。第2インペラ33の回転は、第2ドライブシャフト35を介して電動モータ27に伝達される。これにより、電動モータ27が回転駆動され、電動モータ27が電力を発生する。バッテリ52は、配線41を介して電動モータ27に接続されている。したがって、電動モータ27が発生した電力は、バッテリ52に供給され、バッテリ52が充電される。このように、一対の第2推進機構5が推力を発生していない状態で、船舶1が一対の第1推進機構4によって推進されているときには、電動モータ27が発電し、バッテリ52が充電される。
【0044】
図8は、一対の第1推進機構4が船舶1を前進させながら旋回させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
操船者が船舶1を前進させながら旋回させるときには、ステアリングハンドル6が操舵され(直進位置よりも右最大操舵位置側または左最大操舵位置側に配置され)、レバー7がF領域に配置される。したがって、2つの第1デフレクタ21は、前進噴射口25からの水の噴射方向が平面視において前後方向に対して左右に傾くように配置され、2つの第1バケット12は、前進位置に配置される。さらに、メインECU48から2つのエンジンECU49に指令が入力され、2つのエンジン10の出力の大きさが一致するように、2つのエンジンECU49がそれぞれ2つのエンジン10を制御する。これにより、2つの前進噴射口25から平面視において前後方向に対して傾いた方向に水が噴射される。すなわち、2つの前進噴射口25から後方に水が噴射されることにより、ハル2を旋回させる前進方向への力(一対の第1推進機構4が発生する推力)がハル2に加わる。したがって、船舶1は、ステアリングハンドル6の位置に応じた角度で旋回しながら前進する。
【0045】
図9は、一対の第1推進機構4が船舶1を後進させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
操船者が船舶1を真っすぐに後進させるときには、ステアリングハンドル6が直進位置に配置され、レバー7がR領域に配置される。したがって、2つの第1デフレクタ21は、後進噴射口26からの水の噴射方向が平面視において前後方向に沿うように配置され、2つの第1バケット12は、後進位置(前進噴射口25が覆われている位置)に配置される。さらに、メインECU48から2つのエンジンECU49に指令が入力され、2つのエンジン10の出力の大きさが一致するように、2つのエンジンECU49がそれぞれ2つのエンジン10を制御する。これにより、2つの後進噴射口26から平面視において前後方向に沿う方向に水が噴射される。2つのエンジン10の出力の大きさが一致しているから、各第1推進機構4が発生する推力の大きさも一致している。さらに、一対の第1推進機構4は、左右対称に配置されている。したがって、2つの後進噴射口26から前方に水が噴射されることにより、後方向(船体中心C1に平行な方向)への力(一対の第1推進機構4が発生する推力)がハル2に加わり、船舶1は、左右に旋回せずに、真っすぐに後進する。
【0046】
図10は、一対の第1推進機構4が船舶1を後進させながら旋回させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
操船者が船舶1を後進させながら旋回させるときには、ステアリングハンドル6が操舵され、レバー7がR領域に配置される。したがって、2つの第1デフレクタ21は、後進噴射口26からの水の噴射方向が平面視において前後方向に対して左右に傾くように配置され、2つの第1バケット12は、後進位置に配置される。さらに、メインECU48から2つのエンジンECU49に指令が入力され、2つのエンジン10の出力の大きさが一致するように、2つのエンジンECU49がそれぞれ2つのエンジン10を制御する。これにより、2つの後進噴射口26から平面視において前後方向に対して傾いた方向に水が噴射される。すなわち、2つの後進噴射口26から前方に水が噴射されることにより、ハル2を旋回させる後進方向への力(一対の第1推進機構4が発生する推力)がハル2に加わる。したがって、船舶1は、ステアリングハンドル6の位置に応じた角度で旋回しながら後進する。
【0047】
[一対の第2推進機構5による船舶1の推進]
次に、一対の第2推進機構5が船舶1を推進させるときの推力の方向について説明する。一対の第2推進機構5による船舶1の推進は、船舶1がどの速度領域で航走するときに行われてもよい。
図11は、一対の第2推進機構5が船舶1を前進させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【0048】
操船者が船舶1を真っすぐに前進させるときには、ステアリングハンドル6が直進位置に配置され、レバー7がF領域に配置される。ステアリングハンドル6が直進位置に配置されており、レバー7がF領域に配置されている状態では、メインECU48から2つのモータECU50に指令が入力され、2つの電動モータ27の出力の大きさが一致するように、2つのモータECU50がそれぞれ2つの電動モータ27を制御する。これにより、2つの第2インペラ33が正転方向に回転駆動され、2つの第2噴射口30から平面視において前後方向に沿う方向に水が噴射される。2つの電動モータ27の出力の大きさが一致しているから、各第2推進機構5が発生する推力の大きさも一致している。さらに、一対の第2推進機構5は、左右対称に配置されている。したがって、2つの第2噴射口30から後方に水が噴射されることにより、前方向への力(一対の第2推進機構5が発生する推力)がハル2に加わり、船舶1は、左右に旋回せずに、真っすぐに前進する。
【0049】
図12は、一対の第2推進機構5が船舶1を前進させながら旋回させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
操船者が船舶1を前進させながら旋回させるときには、ステアリングハンドル6が操舵され、レバー7がF領域に配置される。ステアリングハンドル6が操舵されており、レバー7がF領域に配置されている状態では、メインECU48から2つのモータECU50に指令が入力され、2つの電動モータ27の出力の大きさが異なるように、2つのモータECU50がそれぞれ2つの電動モータ27を制御する。これにより、2つの第2インペラ33が正転方向に回転駆動され、2つの第2噴射口30から平面視において前後方向に沿う方向に水が噴射される。2つの電動モータ27の出力の大きさが異なっているので、一方の第2推進機構5からの推力の大きさと、他方の第2推進機構5からの推力の大きさとが異なっている。さらに、一対の第2推進機構5は、左右対称に配置されている。そのため、2つの第2噴射口30から後方に水が噴射されることにより、ハル2を旋回させる前進方向への力(一対の第2推進機構5が発生する推力)がハル2に加わり、船舶1は、ステアリングハンドル6の位置に応じた角度で旋回しながら前進する。すなわち、メインECU48は、一対の第2推進機構5からの推力に差が生じるように2つのモータECU50を制御して、船舶1を旋回させる。
【0050】
図13は、一対の第2推進機構5が船舶1を後進させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
操船者が船舶1を真っすぐに後進させるときには、ステアリングハンドル6が直進位置に配置され、レバー7がR領域に配置される。ステアリングハンドル6が直進位置に配置されており、レバー7がR領域に配置されている状態では、メインECU48から2つのモータECU50に指令が入力され、2つの電動モータ27の出力の大きさが一致するように、2つのモータECU50がそれぞれ2つの電動モータ27を制御する。これにより、2つの第2インペラ33が逆転方向に回転駆動され、平面視において前後方向に沿う方向に2つの第2吸水口29から水が噴射される。2つの電動モータ27の出力の大きさが一致しているから、各第2推進機構5が発生する推力の大きさも一致している。さらに、一対の第2推進機構5は、左右対称に配置されている。したがって、2つの第2吸水口29から前方に水が噴射されることにより、後方向への力(一対の第2推進機構5が発生する推力)がハル2に加わり、船舶1は、左右に旋回せずに、真っすぐに後進する。
【0051】
図14は、一対の第2推進機構5が船舶1を後進させながら旋回させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
操船者が船舶1を後進させながら旋回させるときには、ステアリングハンドル6が操舵され、レバー7がR領域に配置される。ステアリングハンドル6が操舵されており、レバー7がR領域に配置されている状態では、メインECU48から2つのモータECU50に指令が入力され、2つの電動モータ27の出力の大きさが異なるように、2つのモータECU50がそれぞれ2つの電動モータ27を制御する。これにより、2つの第2インペラ33が逆転方向に回転駆動され、平面視において前後方向に沿う方向に2つの第2吸水口29から水が噴射される。2つの電動モータ27の出力の大きさが異なっているので、一方の第2推進機構5からの推力の大きさと、一方の第2推進機構5からの推力の大きさとが異なっている。さらに、一対の第2推進機構5は、左右対称に配置されている。そのため、2つの第2吸水口29から前方に水が噴射されることにより、ハル2を旋回させる後進方向への力(一対の第2推進機構5が発生する推力)がハル2に加わり、船舶1は、ステアリングハンドル6の位置に応じた角度で旋回しながら後進する。
【0052】
[一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とによる船舶1の推進]
次に、一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とが船舶1を推進させるときの推力の方向について説明する。一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とによる船舶1の推進は、船舶1がどの速度領域で航走するときに行われてもよい。
図15は、一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とが船舶1を前進させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
【0053】
操船者が船舶1を真っすぐに前進させるときには、ステアリングハンドル6が直進位置に配置され、レバー7がF領域に配置される。したがって、2つの第1デフレクタ21は、前進噴射口25からの水の噴射方向が平面視において前後方向に沿うように配置され、2つの第1バケット12は、前進位置に配置される。さらに、2つのエンジン10の出力の大きさが一致するように、2つのエンジンECU49がそれぞれ2つのエンジン10を制御する。その一方で、2つの電動モータ27の出力の大きさが一致するように、2つのモータECU50がそれぞれ2つの電動モータ27を制御する。これにより、第2インペラ33が正転方向に回転駆動される。したがって、各噴射口25、30から後方に水が噴射され、前方向への力(一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とが発生する推力)がハル2に加わる。そのため、船舶1は、左右に旋回せずに、真っすぐに前進する。
【0054】
図16は、一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とが船舶1を前進させながら旋回させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
操船者が船舶1を前進させながら旋回させるときには、ステアリングハンドル6が操舵され、レバー7がF領域に配置される。したがって、2つの第1デフレクタ21は、前進噴射口25からの水の噴射方向が平面視において前後方向に対して左右に傾くように配置され、2つの第1バケット12は、前進位置に配置される。さらに、2つのエンジン10の出力の大きさが一致するように、2つのエンジンECU49がそれぞれ2つのエンジン10を制御する。その一方で、2つの電動モータ27の出力の大きさが異なるように、2つのモータECU50がそれぞれ2つの電動モータ27を制御する。これにより、第2インペラ33が正転方向に回転駆動される。したがって、各噴射口25、30から後方に水が噴射され、ハル2を旋回させる前進方向への力(一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とが発生する推力)がハル2に加わる。そのため、船舶1は、ステアリングハンドル6の位置に応じた角度で旋回しながら前進する。
【0055】
図17は、一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とが船舶1を後進させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
操船者が船舶1を真っすぐに後進させるときには、ステアリングハンドル6が直進位置に配置され、レバー7がR領域に配置される。したがって、2つの第1デフレクタ21は、後進噴射口26からの水の噴射方向が平面視において前後方向に沿うように配置され、2つの第1バケット12は、後進位置に配置される。さらに、2つのエンジン10の出力の大きさが一致するように、2つのエンジンECU49がそれぞれ2つのエンジン10を制御する。その一方で、2つの電動モータ27の出力の大きさが一致するように、2つのモータECU50がそれぞれ2つの電動モータ27を制御する。これにより、第2インペラ33が逆転方向に回転駆動される。したがって、各後進噴射口26および各吸水口29から前方に水が噴射され、後方向への力(一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とが発生する推力)がハル2に加わる。そのため、船舶1は、左右に旋回せずに、真っすぐに後進する。
【0056】
図18は、一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とが船舶1を後進させながら旋回させるときの推力の方向について説明するための模式的な平面図である。
操船者が船舶1を後進させながら旋回させるときには、ステアリングハンドル6が操舵され、レバー7がR領域に配置される。したがって、2つの第1デフレクタ21は、後進噴射口26からの水の噴射方向が平面視において前後方向に対して左右に傾くように配置され、2つの第1バケット12は、後進位置に配置される。さらに、2つのエンジン10の出力の大きさが一致するように、2つのエンジンECU49がそれぞれ2つのエンジン10を制御する。その一方で、2つの電動モータ27の出力の大きさが異なるように、2つのモータECU50がそれぞれ2つの電動モータ27を制御する。これにより、第2インペラ33が逆転方向に回転駆動される。したがって、各後進噴射口26および各吸水口29から前方に水が噴射され、ハル2を旋回させる後進方向への力(一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とが発生する推力)がハル2に加わる。そのため、船舶1は、ステアリングハンドル6の位置に応じた角度で旋回しながら後進する。
【0057】
図19は、前進方向への推力と船舶1の速度との関係の一例を示すグラフである。
メインECU48は、船舶1の速度Vに応じて第1推進機構4および第2推進機構5の運転を切り替える。具体的には、図19に示すように、船舶1の速度Vが所定の第1速度V1(たとえば、時速5マイル)未満である低速領域では、メインECU48は、たとえば、一対の第2推進機構5だけで船舶1を推進させる。そして、メインECU48が低速領域で船舶1を加速させる場合には、一対の第2推進機構5からの推力を増加させる(図19における二点鎖線参照)。低速領域では、一対の第1推進機構4が用いられていないので、一対の第2推進機構5が発生する推力の大きさが、船舶1全体の推力の大きさに相当する(図19における二点鎖線と実線を参照)。
【0058】
また、船舶1の速度Vが、第1速度V1以上で、第1速度V1よりも大きい第2速度V2未満である中速領域では、メインECU48は、たとえば、一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とによって船舶1を推進させる。そして、メインECU48が中速領域で船舶1を加速させる場合には、メインECU48が、一対の第1推進機構4の推力を増加させると共に、一対の第2推進機構5の推力を減少させる(図19における一点鎖線と二点鎖線とを参照)。すなわち、船舶1全体の推力が急激に増加しないように、第1推進機構4および第2推進機構5の推力を制御する。中速領域では、一対の第1推進機構4が発生する推力と、一対の第2推進機構5が発生する推力との和が、船舶1全体の推力の大きさに相当する。
【0059】
また、船舶1の速度Vが第2速度V2以上である高速領域では、たとえば、一対の第1推進機構4だけで船舶1を推進させる。そして、メインECU48が高速領域で船舶1を加速させる場合には、一対の第1推進機構4からの推力を増加させる。高速領域では、一対の第2推進機構5が用いられていないので、一対の第1推進機構4が発生する推力の大きさが、船舶1全体の推力の大きさに相当する。
【0060】
図20は、本発明の第1実施形態に係る船舶1の制御について説明するためのフローチャートである。以下では、レバー7がF領域に配置されている場合の船舶1の制御について説明する。
メインECU48は、たとえば、バッテリ52の残量に応じて第1推進機構4および第2推進機構5を切り替える。具体的には、メインECU48は、メインスイッチ54がオンであるか否かを判断する(S1)。メインスイッチ54がオフの場合(S1でNO)、レバー7がF領域に配置されていても、船舶1は推進されない。一方、メインスイッチ54がオンの場合(S1でYES)、メインECU48は、残量検出装置53の検出値に基づいて、バッテリ52の残量が規定値以上であるか否かを判断する(S2)。
【0061】
バッテリ52の残量が規定値未満である場合(S2でNO)、メインECU48は、エンジンECU49によってエンジン10を制御させることにより、一対の第1推進機構4によって船舶1を推進させる(S3)。前述のように、一対の第2推進機構5を用いずに、一対の第1推進機構4によって船舶1を推進させることにより、電動モータ27が水流によって回転駆動され発電する。これにより、バッテリ52が充電される。すなわち、メインECU48は、バッテリ52の残量が規定値未満である場合は、一対の第1推進機構4だけで船舶1を推進させて、バッテリ52を充電させる。そして、メインECU48は、一対の第1推進機構4によって船舶1を推進させながら、再び、メインスイッチ54がオンであるか否かを判断する(S1に戻る)。
【0062】
一方、バッテリ52の残量が規定値以上である場合(S2でYES)、メインECU48は、速度検出装置51の検出値に基づいて、船舶1の速度Vが第1速度V1未満であるか否かを判断する(S4)。すなわち、メインECU48は、船舶1の速度Vが低速領域であるか否かを判断する。
バッテリ52の残量が規定値以上であり、船舶1の速度Vが第1速度V1未満である場合(S4でNO)、メインECU48は、モータECU50によって電動モータ27を制御させることにより、一対の第2推進機構5によって船舶1を推進させる(S5)。その後、メインECU48は、一対の第2推進機構5によって船舶1を推進させながら、再び、メインスイッチ54がオンであるか否かを判断する(S1に戻る)。
【0063】
一方、船舶1の速度Vが第1速度V1以上である場合(S4でYES)、メインECU48は、船舶1の速度Vが第2速度V2未満であるか否かを判断する(S6)。すなわち、船舶1の速度Vが中速領域であるか否かを判断する。
船舶1の速度Vが、第1速度V1以上で第2速度V2未満である場合(S6でNO)、メインECU48は、エンジンECU49によってエンジン10を制御させることにより、一対の第1推進機構4によって船舶1を推進させる。さらに、メインECU48は、モータECU50によって電動モータ27を制御させることにより、一対の第2推進機構5によって船舶1を推進させる。すなわち、メインECU48は、一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とによって船舶1を推進させる(S7)。そして、メインECU48は、一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とによって船舶1を推進させながら、再び、メインスイッチ54がオンであるか否かを判断する(S1に戻る)。
【0064】
一方、船舶1の速度Vが第2速度V2以上である場合(S6でYES)、すなわち、船舶1の速度Vが高速領域である場合、メインECU48は、エンジンECU49によってエンジン10を制御させることにより、一対の第1推進機構4によって船舶1を推進させる(S8)。そして、メインECU48は、一対の第1推進機構4によって船舶1を推進させながら、再び、メインスイッチ54がオンであるか否かを判断する(S1に戻る)。
【0065】
このように、バッテリ52の残量が規定値未満である場合には、メインECU48は、船舶1の速度Vによらず、一対の第1推進機構4によって船舶1を推進させる。これにより、バッテリ52が充電される。そして、バッテリ52の残量が規定値以上に達した場合には、メインECU48は、船舶1の速度Vに応じて第1推進機構4および第2推進機構5を駆動させる。
【0066】
以上のように本実施形態では、第1推進機構4がエンジン10によって推力を発生し、第2推進機構5が電動モータ27によって推力を発生する。これにより、船舶1が推進される。一対の第1推進機構4が発生する推力の方向と、一対の第2推進機構5が発生する推力の方向とは、一致している。したがって、第1推進機構4および第2推進機構5のいずれによっても船舶1を同じ方向に推進させることができる。さらに、第1推進機構4および第2推進機構5は、互いに独立している。したがって、エンジンを備える従来の船舶に第2推進機構5を追加することにより、エンジンに関連する既存の構造を大幅に変更することなく、エンジン10および電動モータ27の二種類の駆動源によって船舶1を推進させることができる。
【0067】
また第1実施形態では、メインECU48が、一対の第2推進機構5を制御することにより、一対の第2推進機構5からそれぞれ異なる大きさの推力を発生させる。一対の第2推進機構5は、ハル2の幅方向に関してハル2の中央部9の両側に配置されている。したがって、メインECU48が一対の第2推進機構5からそれぞれ異なる大きさの推力を発生させることにより、ハル2を旋回させる力(一対の第2推進機構5が発生する推力)がハル2に加わり、船舶1が旋回する。そのため、第1デフレクタ21のような推力の方向を左右に変換する部材を第2推進機構5に設けなくてもよい。これにより、船舶1の構造の複雑化を抑制することができる。
【0068】
また第1実施形態では、電動モータ27が正転および逆転可能に構成されている。電動モータ27が正転することにより、第2ジェットポンプ28の第2噴射口30から水が噴射され、電動モータ27が逆転することにより、第2ジェットポンプ28の第2噴射口30から水が吸い込まれる。したがって、電動モータ27が正転しているときと、電動モータ27が逆転しているときとでは、互いに反対方向の推力が発生する。すなわち、第2推進機構5が発生する推力の方向は、電動モータ27の回転方向によって切り替えられる。そのため、第1バケット12のような推力の方向を前後に変換する部材を第2推進機構5に設けなくてもよい。これにより、船舶1の構造の複雑化を抑制することができる。
【0069】
また第1実施形態では、船舶1が中速領域で航走しているときに、メインECU48が、一対の第1推進機構4の推力を船舶1の速度の増加に伴って増加させ、一対の第2推進機構5の推力を船舶1の速度の増加に伴って減少させる。これにより、船舶1の速度の増加に伴って船舶1全体の推力が急激に増加することが防止される。したがって、中速領域において船舶1を滑らかに加速させることができる。
【0070】
また第1実施形態では、ハル2が、後方視V字状の底部44を含み、第1推進機構4および第2推進機構5が、底部44に配置されている。船体中心C1から第2推進機構5までのハル2の幅方向への距離D2は、船体中心C1から第1推進機構4までのハル2の幅方向への距離D1よりも大きい。すなわち、第2推進機構5の第2吸水口29が、第1推進機構4の第1吸水口13よりも上方に位置しているので、第2吸水口29に加わる水圧は、第1吸水口13に加わる水圧よりも小さい。一対の第1推進機構4だけで船舶1を推進させている状態では、水圧によって第2吸水口29に水が進入し、船舶1に抵抗が加わる。特に、高速領域では、一対の第1推進機構4だけで船舶1が推進されるので、高速領域では、第2吸水口29への水の進入によって大きな抵抗が船舶1に加わる。そのため、第2吸水口29に加わる水圧を低減することにより、高速領域において船舶1に加わる抵抗を低減することができる。
【0071】
また第1実施形態では、一対の第1推進機構4だけで船舶1を推進させているときに、第2推進機構5(第2流路31)に流入する水流によって電動モータ27が回転駆動され、電動モータ27が発電する。電動モータ27が発生した電力は、電動モータ27に接続されたバッテリ52に供給される。これにより、バッテリ52が充電される。したがって、バッテリ52の残量が規定値未満であっても、第1推進機構4だけで船舶1を推進させることにより、規定値以上までバッテリ52を充電させることができる。
【0072】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の第1実施形態では、ステアリングハンドル6が直進位置のときに、前進噴射口25および後進噴射口26からの水の噴射方向が平面視において前後方向に沿う場合について説明した。しかし、ステアリングハンドル6が直進位置のときにハル2に加わる力の向きが前方向または後方向であれば、ステアリングハンドル6が直進位置のときの前進噴射口25および後進噴射口26からの水の噴射方向は、平面視において前後方向に対して傾いていてもよい。
【0073】
たとえば、ステアリングハンドル6が直進位置のときに、船体中心C1から離れる方向に前進噴射口25および後進噴射口26から水が噴射されてもよい。すなわち、2つの噴射口(2つの前進噴射口25、または2つの後進噴射口26)から平面視においてV字状に水が噴射されてもよい。さらに、前進噴射口25および後進噴射口26からの水の噴射方向が水平面に対して傾いていてもよい。2つの噴射口から平面視においてV字状に水が噴射される場合には、ステアリングハンドル6が直進位置のときにおいて、一対の第1推進機構4が発生する合力(推力)の方向と、一対の第2推進機構5が発生する推力の方向とが、一致していればよい。
【0074】
同様に、前述の第1実施形態では、ステアリングハンドル6が直進位置のときに、第2噴射口30からの水の噴射方向が平面視において前後方向に沿う場合について説明した。しかし、ステアリングハンドル6が直進位置のときにハル2に加わる力の向きが前方向または後方向であれば、ステアリングハンドル6が直進位置のときの第2噴射口30からの水の噴射方向は、平面視において前後方向に対して傾いていてもよい。さらに、第2噴射口30からの水の噴射方向は、水平面に対して傾いていてもよい。2つの第2噴射口30から平面視においてV字状に水が噴射される場合には、ステアリングハンドル6が直進位置のときにおいて、一対の第1推進機構4が発生する推力の方向と、一対の第2推進機構5が発生する合力(推力)の方向とが、一致していればよい。
【0075】
すなわち、ステアリングハンドル6が直進位置のときに各噴射口25、26、30から斜めに水が噴射される場合、ステアリングハンドル6が直進位置のときにおいて、一対の第1推進機構4が発生する合力の方向と、一対の第2推進機構5が発生する合力の方向とが一致していればよい。つまり、「一対の第1推進機構4が発生する推力の方向と、一対の第2推進機構5が発生する推力の方向とが一致する」とは、一対の第1推進機構4が発生する合力の方向と、一対の第2推進機構5が発生する合力の方向とが一致することを含む。
【0076】
また、前述の第1実施形態では、第1噴射口14から噴射された水を第1デフレクタ21によって方向転換させることにより、船舶1を旋回させる場合について説明した。しかし、第1デフレクタ21を用いずに船舶1を旋回させてもよい。すなわち、メインECU48は、一方の第1推進機構4からの推力の大きさと、他方の第1推進機構4からの推力の大きさとを異ならせることにより、船舶1を旋回させてもよい。この場合、第1デフレクタ21は設けられていなくてもよい。
【0077】
また、前述の第1実施形態では、一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とによって船舶1を旋回させるときに、第1推進機構4および第2推進機構5の両方からハル2を旋回させる力をハル2に加える場合について説明した。しかし、メインECU48は、ハル2を旋回させる力を一対の第1推進機構4からハル2に加えさせると共に、ハル2を前方向または後方向に推進させる力を一対の第2推進機構5からハル2に加えさせてもよい。同様に、メインECU48は、ハル2を旋回させる力を一対の第2推進機構5からハル2に加えさせると共に、ハル2を前方向または後方向に推進させる力を一対の第1推進機構4からハル2に加えさせてもよい。
【0078】
また、前述の第1実施形態では、船舶1の速度Vが第1速度V1以上で第2速度V2未満である中速領域で、一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とによる船舶1の推進が行われる場合について説明した。しかし、一対の第1推進機構4と一対の第2推進機構5とによる船舶1の推進が行われずに、一対の第1推進機構4による船舶1の推進と、一対の第2推進機構5による船舶1の推進とが行われてもよい。
【0079】
具体的には、第1速度V1と第2速度V2とが同じ速度であってもよい。つまり、船舶1の速度Vが第1速度V1未満である低速領域では、一対の第2推進機構5による船舶1の推進が行われてもよい。さらに、船舶1の速度Vが第1速度V1以上である高速領域では、一対の第1推進機構4による船舶1の推進が行われてもよい。図20を参照して説明すると、船舶1の速度Vが第1速度V1以上である場合に(S4でYES)、メインECU48は、エンジンECU49によってエンジン10を制御させることにより、一対の第1推進機構4によって船舶1を推進させてもよい(S8)。
【0080】
また、前述の第1実施形態では、第1推進機構4と第2推進機構5がそれぞれ2つずつ設けられており、一対の第2推進機構5が、ハル2の幅方向に関して一対の第1推進機構4の両側に配置されている場合について説明した。しかし、第1推進機構4の数は、2つに限らず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。第2推進機構5についても同様である。さらに、第1推進機構4および第2推進機構5の配置は、それぞれの数に応じて適宜設定されてもよい。
【0081】
具体的には、たとえば図21に示す船舶201のように、第1推進機構4が、ハル2の中央部9に配置されており、一対の第2推進機構5が、ハル2の中央部9の両側に配置されていてもよい。この場合、一対の第2推進機構5は、左右対称に配置されていることが好ましい。
また、たとえば図22に示す船舶301のように、第1推進機構4および第2推進機構5が、ハル2の中央部9に配置されており、第2推進機構5が、第1推進機構4に隣接していてもよい。同様に、たとえば図23に示す船舶401のように、第1推進機構4および第2推進機構5が、ハル2の中央部9に配置されており、第2推進機構5が、第1推進機構4に隣接していてもよい。
【0082】
第2推進機構5が第1推進機構4に隣接している場合、図22に示すように、第2推進機構5は、第1推進機構4の側方に配置されていてもよいし、図23に示すように、第1推進機構4の上方に配置されていてもよい。また、図示はしないが、第2推進機構5は、第1推進機構4の下方に配置されていてもよい。
また、たとえば図24に示す船舶501のように、第2推進機構5が、ハル2の中央部9に配置されており、一対の第1推進機構4が、ハル2の中央部9の両側に配置されていてもよい。この場合、一対の第1推進機構4は、左右対称に配置されていることが好ましい。
【0083】
また、図22〜図24に示すように、船舶301、401、501に備えられる第2推進機構5の数が1つである場合、前述のように一対の第2推進機構5が発生する推力に差を生じさせて、船舶301、401、501を旋回させることができない。したがって、船舶301、401、501に備えられる第2推進機構5の数が1つである場合、第1デフレクタ21が第2ノズル36に取り付けられ、この第1デフレクタ21によって水の噴射方向が左右に変更されてもよい。これにより、第2推進機構5だけで船舶301、401、501を推進させるときでも、船舶301、401、501を旋回させることができる。
【0084】
また、たとえば図25に示す船舶601のように、3つの第2推進機構5がハル2の中央部9とその両側に配置されており、一対の第1推進機構4が、ハル2の中央部9に配置された第2推進機構5の両側に配置されていてもよい。この場合、第1推進機構4は、図25に示すように、真中の第2推進機構5と側方の第2推進機構5との間に配置されていてもよい。また、図示はしないが、第1推進機構4は、側方の第2推進機構5よりも側方に配置されていてもよい。
【0085】
また、前述の第1実施形態では、ハル2の底部44が、後方から見て左右対称なV字状である場合について説明した。しかし、ハル2の底部44は、左右対称でなくてもよい。さらに、ハル2の底部44は、後方から見てV字状でなくてもよい。具体的には、ハル2の底部44は、たとえば、後方から見て左右対称なU字状であってもよいし、平坦であってもよい。
【0086】
また、前述の第1実施形態では、一対の第1推進機構4だけで船舶1を推進させているときに、第2吸水口29から第2流路31に進入した水が、第2インペラ33を回転駆動させる場合について説明した。しかしながら、第2吸水口29から第2流路31に水が進入すると、船舶1に抵抗が加わる。したがって、図26に示す第2推進機構705のように、第2吸水口29を塞ぐ蓋757と、第2吸水口29が開かれる開位置と第2吸水口29が閉じられる閉位置との間で蓋757を移動させる開閉機構758とが設けられていてもよい。この場合、蓋757によって第2吸水口29を閉じることができるので、第2吸水口29への水の流入によって船舶に抵抗が加わることを防止することができる。
【0087】
また、前述の第1実施形態では、第1推進機構4および第2推進機構5が、ジェットポンプを備えるジェット推進機構である場合について説明した。しかし、第1推進機構4は、プロペラを備えるプロペラ推進機構であってもよい。第2推進機構5についても同様である。プロペラ推進機構は、駆動源(エンジン10または電動モータ27)と、駆動源の動力をプロペラに伝達する駆動ユニットとがハル2内に配置された船内機であってもよい。たとえば、図27に示す船舶801のように、第1推進機構804が、船内機であり、一対の第2推進機構5のそれぞれが、ジェット推進機構であってもよい。また、プロペラ推進機構4は、駆動源および駆動ユニットがハル2の外に配置された船外機であってもよいし、駆動源がハル2内に配置されており、駆動ユニットがハル2の外に配置された船内外機であってもよい。
【0088】
また、前述の第1実施形態では、船舶1を旋回させるときに、メインECU48が、一方の第2推進機構5からの推力の大きさと、他方の第2推進機構5からの推力の大きさとが異なるように、一対の第2推進機構5を制御する場合について説明した。しかし、図28および図29に示す船舶901のように、各第2推進機構5が、第2ノズル36から噴射された水の方向を左右に変更する第2デフレクタ959を備えており、この第2デフレクタ959によって水の噴射方向を左右に変更することにより船舶901を旋回させてもよい。この場合、メインECU48は、図28に示すように、各第2推進機構5からの推力の大きさが一致するように一対の第2推進機構5を制御してもよいし、図29に示すように、一方の第2推進機構5からの推力の大きさと、他方の第2推進機構5からの推力の大きさとが異なるように、一対の第2推進機構5を制御してもよい。
【0089】
また、前述の第1実施形態では、船舶1がボートである場合について説明した。しかし、船舶1は、鞍型のシートを備えるパーソナルウォータークラフトであってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
以下に、特許請求の範囲に記載された構成要素と前述の実施形態における構成要素との対応関係を示す。
【0090】
内燃機関:エンジン10
第1推進機構:第1推進機構4、804
電動モータ:電動モータ27
第2ジェットポンプ:第2ジェットポンプ28
第2推進機構:第2推進機構5、705
ハル:ハル2
船舶:船舶1、201、301、401、501、601、801、901
第1の羽根:第1の羽根24
第1回転軸:第1ドライブシャフト19
第2の羽根:第2の羽根40
第2回転軸:第2ドライブシャフト35
第1ジェットポンプ:第1ジェットポンプ11
ハルの中央部:ハルの中央部9
推力制御装置:メインECU48
噴射口:第2噴射口30
切替制御装置:メインECU48
中央部:中央部46
底部:底部44
中央部から第1推進機構までのハルの幅方向への距離:距離D1
中央部から第2推進機構までのハルの幅方向への距離:距離D2
バッテリ:バッテリ52
【符号の説明】
【0091】
1 船舶
2 ハル
4 第1推進機構
5 第2推進機構
9 ハルの中央部
10 エンジン
11 第1ジェットポンプ
19 第1ドライブシャフト
24 第1の羽根
27 電動モータ
28 第2ジェットポンプ
30 第2噴射口
35 第2ドライブシャフト
40 第2の羽根
44 底部
46 中央部
48 メインECU
52 バッテリ
201 船舶
301 船舶
401 船舶
501 船舶
601 船舶
705 第2推進機構
801 船舶
804 第1推進機構
901 船舶
D1 距離
D2 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を含み、前記内燃機関によって推力を発生するように構成された第1推進機構と、
電動モータと、前記電動モータによって駆動される第2ジェットポンプとを含み、前記電動モータによって前記第2ジェットポンプを駆動させることにより推力を発生するように構成された、前記第1推進機構とは独立した少なくとも1つの第2推進機構と、
前記第1推進機構が発生する推力の方向と、前記少なくとも1つの第2推進機構が発生する推力の方向とが一致するように、前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とが設けられたハルと、を含む、船舶。
【請求項2】
前記第1推進機構は、複数の第1の羽根と、前記複数の第1の羽根と共に前記内燃機関によって回転駆動される第1回転軸とを含み、
前記少なくとも1つの第2推進機構は、複数の第2の羽根と、前記複数の第2の羽根と共に前記電動モータによって回転駆動される、前記第1回転軸とは独立した第2回転軸とを含む、請求項1記載の船舶。
【請求項3】
前記第1回転軸および第2回転軸は、平行または略平行に配置されている、請求項2記載の船舶。
【請求項4】
前記第1推進機構は、前記内燃機関によって駆動される第1ジェットポンプをさらに含み、前記内燃機関によって前記第1ジェットポンプを駆動させることにより推力を発生するように構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2推進機構は、前記ハルの幅方向に関して前記ハルの中央部の両側に配置された一対の第2推進機構を含み、
前記船舶は、前記一対の第2推進機構の一方からの推力の大きさと、前記一対の第2推進機構の他方からの推力の大きさとが異なるように、前記一対の第2推進機構を制御するようにプログラムされた推力制御装置をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2推進機構は、前記ハルの幅方向に関して前記ハルの中央部の両側に配置された一対の第2推進機構を含み、
前記第1推進機構は、前記ハルの幅方向に関して前記ハルの中央部に配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項7】
前記第1推進機構は、前記ハルの幅方向に関して前記ハルの中央部に配置されており、
前記少なくとも1つの第2推進機構は、前記第1推進機構に隣接している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第2推進機構は、前記ハルの幅方向に関して前記ハルの中央部に配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項9】
前記電動モータは、正転および逆転可能に構成されており
前記第2ジェットポンプは、噴射口を含み、前記電動モータの正転に伴って前記噴射口から水を噴射し、前記電動モータの逆転に伴って前記噴射口から水を吸い込むように構成されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項10】
前記船舶は、前記船舶の速度が所定の第1速度未満である低速領域では、前記少なくとも1つの第2推進機構が前記船舶を推進し、前記船舶の速度が、前記第1速度以上の所定の第2速度以上である高速領域では、前記第1推進機構が前記船舶を推進するように、前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とを制御するようにプログラムされた切替制御装置をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項11】
前記切替制御装置は、前記船舶の速度が前記第1速度以上で前記第2速度未満である中速領域では、前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とが前記船舶を推進するように、前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とを制御するようにプログラムされている、請求項10記載の船舶。
【請求項12】
前記切替制御装置は、前記中速領域では、前記船舶の速度の増加に伴って前記第1推進機構の推力が増加すると共に、前記船舶の速度の増加に伴って前記少なくとも1つの第2推進機構の推力が減少するように、前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とを制御するようにプログラムされている、請求項11記載の船舶。
中速領域において
【請求項13】
前記ハルは、前記ハルを後方から見たときに最も下に位置する中央部を有する後方視V字状の底部を含み、
前記第1推進機構は、前記底部に配置されており、
前記少なくとも1つの第2推進機構は、前記中央部からの前記ハルの幅方向への距離が前記中央部から前記第1推進機構までの前記ハルの幅方向への距離よりも大きくなるように前記底部に配置されている、請求項10〜12のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項14】
前記電動モータは、前記少なくとも1つの第2推進機構が推力を発生していない状態で前記船舶が前記第1推進機構によって推進されているときに、前記少なくとも1つの第2推進機構に流入する水流によって回転駆動されることにより電力を発生するように構成されており、
前記船舶は、前記電動モータに接続されており、前記電動モータが発生した電力によって充電されるように構成されたバッテリをさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項15】
内燃機関と、前記内燃機関によって駆動される第1ジェットポンプとを含み、前記内燃機関によって前記第1ジェットポンプを駆動させることにより推力を発生するように構成された第1推進機構と、
電動モータを含み、前記電動モータによって推力を発生するように構成された、前記第1推進機構とは独立した少なくとも1つの第2推進機構と、
前記第1推進機構が発生する推力の方向と、前記少なくとも1つの第2推進機構が発生する推力の方向とが一致するように、前記第1推進機構と前記少なくとも1つの第2推進機構とが設けられたハルと、を含む、船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−183948(P2012−183948A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49292(P2011−49292)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)