説明

良好な機械的特性を示す、防炎性、改良された耐衝撃性、耐引掻性ポリカーボネート成形材料

本発明は、防炎性で改良された耐衝撃性および耐引掻性のポリカーボネート(PC)組成物、および充填剤として表面変性された焼成カオリンを有する成形材料に関し、以下のものを含有する:
A)10〜90重量部の芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート
B)0.5〜30重量部のゴム変性グラフトポリマー、
C)0.5〜20重量部の少なくとも1種のリン含有難燃剤、
D)0.1〜25.0重量部の表面処理された焼成カオリン
E)0〜10重量部の少なくとも1種の他の添加剤
F)0〜40重量部のビニル(コ)ポリマー(C.1)、
ただし、重量部に関する全データは、組成物中の全成分A+B+C+D+E+Fの総重量部の合計が100となるように標準化される。さらに、本発明は、成形品を製造するための組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防炎性、改良された耐衝撃性、および耐引掻性のポリカーボネート(PC)組成物、および良好な機械的特性、良好な流動性および高薬品耐性を示す、充填剤として表面変性された焼成カオリンを備える成形材料、それらの製造方法および成形品を製造するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
US2007/0072960A1は、ポリカーボネート、ポリカーボネート-ポリシロキサンコポリマー(SiCoPC)および表面処理によりシラン化された充填材(例えば、ビニルシランで処理されたタルク、クレー、ウォラストナイト、シリカ、ガラス水晶またはマイカ)を含有し、耐衝撃性改良剤を付加的に含有できる防炎性の熱可塑性組成物を開示する。
【0003】
EP758003A2において、難燃剤としてリン酸エステルと無機充填剤を含有する、改良された表面特性と高い弾性率を備えるポリカーボネート組成物が記載されている。無機充填剤として、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレーまたはマイカが記載され、一方で、耐衝撃性改良剤の添加と焼成カオリンは記載されていない。
【0004】
WO2003082965は、ポリマーと特定の粘度鉱物を含有する防炎性ポリマー組成物を開示し、この場合において、粒子総数は100立方マイクロメートルあたり少なくとも1個であり、粘度鉱物は有機モンモリロナイトではない。カオリン、部分焼成および完全焼成カオリンが具体的に記載されている。しかしながら、本発明と異なり表面変性した焼成カオリンは記載されていない。
【0005】
EP525955は、ポリカーボネートブレンドまたはポリエステルカーボネートブレンドと、液体ポリジオルガノシロキサンで処理された充填剤(例えば、焼成カオリン)を含有する防炎性ポリマー組成物を開示する。EP525955Aiにおいて、リン含有難燃剤および耐衝撃性改良剤は開示されていない。
【0006】
EP707978A1は、とりわけ、支持体上のバインダー(PC)中に分散させた所望による表面変性焼成クレーを備える保護層を有する記録材料を開示する。しかしながら、組成物は耐衝撃性の改良も防炎性も備えない。
【0007】
WO1982002398A1によると、シラン変性充填剤、例えばカオリンを含有する熱可塑性ポリカーボネート組成物が既知である。しかしながら、EP707978A1のように、耐衝撃性が改良され防炎性を備える組成物は記載されていない。
【0008】
EP66772A2は、芳香族熱可塑性PCと、0.05〜20マイクロメーターの平均粒径を有するシリケート0.025〜5重流量部から成るポリカーボネート組成物が記載されている。一方で、耐衝撃性改良剤と難燃剤の添加は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第2007/0072960号A1明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第758003号A2明細書
【特許文献3】国際特許出願公開第2003082965号明細書
【特許文献4】欧州特許第525955号明細書
【特許文献5】欧州特許第707978号A1明細書
【特許文献6】国際特許出願公開第1982002398号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、急激な衝撃応力の下、極めて良好な機械的特性、例えば高い耐衝撃性、高い弾性係数および破断伸びの良好な特性の組合せにより特徴づけられる、および良好な耐引掻性と共に、良好な耐薬品性(ESC性能)により特徴づけられる成形材料を提供する。成形材料は、好ましくは防炎性であるべきであり、薄い壁厚であっても(すなわち、1.5mm壁厚であっても)UL94 V-0の要求を満たし、および良好な溶融粘度を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、以下のものを含有する組成物が見出されている:
A)10〜90重量部、好ましくは50〜85重量部、特に好ましくは60〜75重量部の芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、
B)0.5〜30.0重量部、好ましくは1.0〜25.0重量部、より好ましくは2.0〜20.0重量部、特に好ましくは4.0〜9.0重量部のゴム変性グラフトポリマー、
C)0.5〜20.0重量部、好ましくは1.0〜18.0重量部、より好ましくは2.0〜16.0重量部、特に好ましくは3.0〜15.5重量部の、少なくとも1種のリン含有難燃剤、
D)0.1〜25.0重量部、好ましくは1.0〜20.0重量部、より好ましくは5.0〜15.0重量部、正により好ましくは7.0〜13.0重量部、および特に好ましくは8.0〜12.0重量部の表面処理された焼成カオリン、
E)0〜10.0重量部、好ましくは0.5〜8.0重量部、特に好ましくは1.0〜6.0重量部の添加剤、
F)0〜40.0重量部、好ましくは1.0〜30.0重量部、特に好ましくは1.5〜10重量部のビニル(コ)ポリマー、
ただし、本出願において重量部に関する全データは、組成物中の全成分A+B+C+D+E+Fの総重量部の合計が100となり、所望される性能特性を示すように標準化される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
また、本発明は、成形材料の調製方法と、成形品を製造するための成形材料の使用を提供する。
【0013】
本発明による成形材料は、全ての種類の成形品の製造に使用できる。これらは、射出成形、押出およびブロー成型法により製造できる。方法の別の形態は、予め製造されたシートまたはフィルムから熱成形することにより成形品を製造することである。
【0014】
これらの成形品の例は、フィルム、異形材、全ての種類の住宅部品、例えば、屋内電機部品、例えばジュース絞り器、コーヒーマシーン、ミキサーなど;オフィス用設備、例えばモニター、フラットスクリーン、ノート型パソコン、プリンター、コピーなど;シート、パイプ、電気設備ダクト、窓、ドアおよび建設分野(内部建具および外部用途)に関する他の異形材、ならびに電気および電子部品、例えばスイッチ、プラグおよびソケット、ならびに商業的な車両、特に自動車部門に関する車体および内装部品である。
【0015】
特に、本発明に係る成形材料は、例えば以下の成形品または成型部品の製造にも使用できる:鉄道車両、船舶、航空機、バスおよび他の自動車用の内部付属品、小型変圧器を有する電気装置のハウジング、情報処理および変換装置用のハウジング、医療機器用のハウジングおよびクラッディング、マッサージ装置およびマッサージ装置用のハウジング、子供向けの乗物玩具、平壁パネル、安全装置用のハウジング、熱的に絶縁された輸送コンテナー、衛生陶器およびバスルーム建具用の成形品、換気口用のカバー格子板、および庭設備用のハウジング。
【0016】
成分A
本発明において適する成分Aに係る芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは文献から既知であるか、または以下の文献から既知の方法により調製できる。芳香族ポリカーボネートの調製に関しては、例えば、シュネル著「ポリカーボネートの化学と物理」、インターサイエンスパブリッシャーズ、1964年、ならびに独国特許(DE−AS)1495626号明細書、独国特許出願公開第2232877号A明細書、および同2703376号A明細書、同2714544号A明細書、同3000610号A明細書および同3832396号A明細書を参照。また、芳香族ポリエステルカーボネートの調製に関しては、例えば独国特許出願公開第3077934号A明細書を参照できる。
【0017】
芳香族ポリカーボネートの調製は、例えば、ジフェノールと、炭酸ハロゲン化物(好ましくはホスゲン)および/または芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物(好ましくはベンゼンジカルボン酸二ハロゲン化物)を、界面重合法により、必要に応じて連鎖停止剤(例えばモノフェノール)を使用し、また必要に応じて、三官能性以上の分枝剤(例えばトリフェノールまたはテトラフェノール)を用いて反応させることによりおこなわれる。ジフェノールと、例えばジフェニルカーボネートを反応させる溶融重合法による調製も可能である。
【0018】
好ましくは、芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを調製するためのジフェノールは、以下の化学式(I)で表される:
【0019】
【化1】

式中、
Aは単結合、C−C−アルキレン、C−Cアルキリデン、C−C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、C−C12−アリーレン(該アリーレンには、必要に応じてヘテロ原子を含有する更なる芳香族環を結合させてもよい)、あるいは、以下の式(II)若しくは(III)で表される基を示す;
【0020】
【化2】

【0021】
【化3】

【0022】
Bは、いずれの場合もC-C12-アルキル、好ましくはメチル、またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
xは、いずれの場合も相互に独立して0、1または2であり、
pは、1または0であり、および
およびRは、各Xに対して独立して選択され、相互に独立して水素またはC−C-アルキル、好ましくは水素、メチル若しくはエチルから選択でき、
は炭素であり、ならびに
mは、4〜7の整数、好ましくは4または5であり、但し、少なくとも1つのX原子上においては、RおよびRは同時にアルキルである。
【0023】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス-(ヒドロキシフェニル)−C−C−アルカン、ビス-(ヒドロキシフェニル)−C−C−シクロアルカン、ビス-(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス-(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス-(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス-(ヒドロキシフェニル)-スルホンおよびα,α-ビス-(ヒドロキシフェニル)-ジイソプロピル-ベンゼン、並びに環を臭素化および/または環を塩素化させたそれらの誘導体である。
【0024】
特に好ましいジフェノールは、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびこれらのジ−およびテトラ臭素化若しくは塩素化誘導体、例えば2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス-(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)-プロパンまたは2,2−ビス-(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンなどである。特に好ましくは、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノールA)である。ジフェノールを単独で使用してもよく、任意の混合物として使用してもよい。ジフェノールは文献において既知であり、または文献において既知の方法に従い得ることができる。
【0025】
熱可塑性の芳香族ポリカーボネートを調製するために適当な連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、並びに長鎖アルキルフェノール、例えば4-[2-(2,4,4-トリメチルペンチル)]-フェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)-フェノール(DE-A2842005参照)など、またはアルキル置換基中に合計で8個〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノール若しくはジアルキルフェノール、例えば、3,5−ジ−tert−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、および2−(3,5−ジメチルヘプチル)-フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)-フェノールである。使用される連鎖停止剤の量は、いずれの場合も、使用されるジフェノールの合計モル数に基づいて、一般に0.5モル%〜10モル%の間である。
【0026】
熱可塑性の芳香族ポリカーボネートは、10000〜200000g/モル、好ましくは15000〜80000g/モル、特に好ましくは24000〜32000g/モルの平均分子量(ポリカーボネート標準試薬を用い、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)により測定される重量平均M)を有する。
【0027】
熱可塑性の芳香族ポリカーボネートは、既知の方法、好ましくは、使用するジフェノールの合計量に基づき0.05〜2.0モル%の三官能価以上の化合物(例えば、3個以上のフェノール基を有する化合物)を組み込む方法により分枝化できる。直鎖状ポリカーボネート、より好ましくはビスフェノールAに基づくものが好ましく使用される。
【0028】
ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートが共に適当である。本発明に係る成分Aのコポリカーボネートを調製するために、ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを、使用されるジフェノールの全量に基づいて1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%の量で使用することもできる。これらは、US3419634において既知であり、文献から既知の方法に従って調製してもよい。また、ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートも適当であり、ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートの調製は、例えば、DE-A3334782に記載されている。
【0029】
ビスフェノールAホモポリカーボネートに加えて、好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAと、ジフェノールのモル総量に基づき15モル%以下の、上記好ましいまたは特に好ましいとして上述したもの、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンとのコポリカーボネートである。
【0030】
芳香族ポリエステルカーボネートを調製するための芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物は、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。
【0031】
特に好ましくは、イソフタル酸のニ酸二塩化物とテレフタル酸の二酸二塩化物を1:20〜20:1の割合で混合させた混合物である。
ポリエステルカーボネートを調製する場合、炭酸ハロゲン化物(好ましくはホスゲン)を、二官能性の酸誘導体として更に導入する。
【0032】
上述したモノフェノールに加えて、芳香族ポリエステルカーボネートを調製するための連鎖停止剤として、それらのクロロ炭酸エステルおよび芳香族モノカルボン酸の酸塩化物(必要に応じて、C−C22−アルキル基またはハロゲン原子により置換されてもよい)、並びに脂肪族C−C22−モノカルボン酸塩化物が適当である。
【0033】
連鎖停止剤の量は、フェノール系の連鎖停止剤の場合ジフェノールのモル量に基づき、モノカルボン酸塩化物系の連鎖停止剤の場合ジカルボン酸二塩化物のモル量に基づき、いずれの場合も0.1〜10モル%である。
【0034】
芳香族ポリエステルカーボネートの調製において、1種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸を更に使用できる。
【0035】
芳香族ポリエステルカーボネートは直鎖状であってもよく、既知の方法で分枝化させてもよい(DE-A2940024および同3007934参照)。直鎖状のポリエステルカーボネートが好ましい。
【0036】
分枝剤としては、以下のものが使用できる:例えば、三官能性以上のカルボン酸塩化物、例えばトリメシン酸トリクロリド、シアヌル酸トリクロリド、3,3'-,4,4'−ベンゾフェノン−テトラカルボン酸テトラクロリド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸テトラクロリド若しくはピロメリット酸テトラクロリドなど、使用したジカルボン酸ジクロリドに基づき0.01〜1.0mol%の量;または三官能性以上のフェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−へプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル-イソプロピル)-フェノール、テトラ-(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニルイソプロピル]−フェノキシ)−メタン、1,4−ビス[4',4''−(ジヒドロキシトリフェニル)メチル]ベンゼンなど、使用するジフェノールに基づき0.01〜1.0mol%の量。フェノール系分枝剤はジフェノールと共に最初に導入でき、酸塩化物系分枝剤は酸二塩化物と共に導入できる。
【0037】
熱可塑性の芳香族ポリエステルカーボネートにおけるカーボネート構造単位の含有量は、所望に応じて変化させることができる。好ましくは、カーボネート基の含有量は、エステル基とカーボネート基の合計量に基づき、100モル%以下、特に80モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。芳香族ポリエステルカーボネートのエステルおよびカーボネート部分は、ブロック状またはランダムに分布した状態で重縮合生成物中に存在できる。
【0038】
熱可塑性の芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは、単独で使用してもよく、任意に混合させて使用してもよい。
【0039】
成分B
成分Bは、以下のものから成る1種以上のグラフトポリマーを含有する:
B.1 5〜95、好ましくは20〜90wt%、特に好ましくは30〜60wt%の少なくとも1種のビニルモノマー、および
B.2 95〜5、好ましくは80〜10wt%、特に好ましくは70〜40wt%の、10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満のガラス転移温度を有する1種以上の骨格。
【0040】
骨格B.2は、一般に、0.05〜10.00μm、好ましくは0.10〜5.00μm、より好ましくは0.20〜1.00μmおよび特に好ましくは0.25〜0.50μmの平均粒径(d50値)を有する。
【0041】
モノマーB.1は、好ましくは以下のものから成る混合物である:
B.1.1 50〜99重量部の、ビニル芳香族化合物および/または核置換ビニル芳香族(例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート)、および
B.1.2 1〜50重量部の、シアン化ビニル(不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/または(メタ)アクリル酸−(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)、例えば無水マレイン酸。
【0042】
好ましいモノマーB.1.1は、モノマースチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートのうちの少なくとも一つから選択され、好ましいモノマーB.1.2は、モノマーアクリロニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートのうちの少なくとも一つから選択される。特に好ましいモノマーは、B.1.1がスチレンであり、B.1.2がアクリロニトリルである。
【0043】
グラフトポリマーに関する適当な骨格B.2は例えばジエンゴム、EP(D)Mゴム、すなわちエチレン/プロピレンおよび所望によりジエンに基づくゴム、ポリアクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴムである。
【0044】
好ましい骨格B.2は、ジエンゴム、例えばブタジエンおよびイソプレンベース、またはジエンゴムの混合物またはジエンゴムもしくはそれらの混合物と別の共重合性モノマー(例えばB.1.1およびB.1.2に係る)とのコポリマーである。ただし、成分B.2のガラス転移温度は10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−10℃未満である。純粋なポリブタジエンゴムが特に好ましい。
【0045】
ガラス転移温度は、中間位置測定(タンジェント法)としてのTg測定により、10K/分の加熱速度にてDIN EN61006に従い示差走査熱量測定(DSC)により測定する。
【0046】
特に好ましいポリマーBは、例えばABSポリマー(エマルジョン、バルクおよび懸濁ABS)であり、例えば、DE−OS 2035390(=US−PS3644574)またはDE−OS 2248242(=GB−PS 1409275)およびUllmanns,Enzyklopaedie der Technischen Chemie,第19巻(1980年),280頁以降に記載されている。骨格B.2のゲル含有量は、少なくとも30wt%、好ましくは少なくとも40wt%(トルエン中で測定)である。
【0047】
グラフトポリマーBは、フリーラジカル重合によって、例えば乳化、懸濁、溶液またはバルク重合によって、好ましくは乳化またはバルク重合によって、特に好ましくは乳化重合によって、製造される。
【0048】
また、特に適当なグラフトゴムはABSポリマーであり、該ポリマーは、US-P4937285に従い、有機ヒドロペルオキシドとアスコルビン酸を含有する開始剤系を用いるレドックス開始による乳化重合法で調製される。
【0049】
既知であるように、グラフト反応においてグラフトモノマーは、骨格上に完全にグラフト化される必要はないので、本発明に係る用語グラフトポリマーBは、骨格の存在下におけるグラフトモノマーの(共)重合によって得られるこれらの生成物と、後処理(work-up)の間に同時に得られるこれらの生成物も含む。
【0050】
ポリマーBのB.2に係る適当なポリカーボネートゴムは、アルキルアクリレートのポリマーであり、所望により、B.2に基づき40wt%以下の別の重合性のエチレン性不飽和モノマーを有するアルキルアクリレートのポリマーである。好ましい重合性アクリレートは、C〜C−アルキルエステル、例えばメチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロゲンC〜Cアルキルエステル、例えばクロロエチルアクリレート、並びにこれらのモノマーの混合物を含む。
【0051】
架橋のために、一つよりも多くの重合性二重結合を有するモノマーを共重合できる。架橋モノマーの好ましい例は、C原子3〜8個を有する不飽和モノカルボン酸と、C原子3〜12個を有する不飽和一価アルコール、またはOH基2〜4個とC原子2〜20個とを有する飽和ポリオールとのエステル、例えばエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;多価不飽和複素環化合物、例えばトリビニルシアヌレートおよびトリアリルシアヌレート;多官能性ビニル化合物、例えばジビニルベンゼンおよびトリビニルベンゼン;および更にトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも三つのエチレン性不飽和基を有する複素環化合物である。特に好ましい架橋モノマーは、環状モノマートリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋モノマーの量は、骨格B.2に基づき、好ましくは0.02〜5.00wt.%、特に0.05〜2.00wt.%である。少なくとも三つのエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合、骨格B.2に基づき1wt%未満の量に限定することが有利である。
【0052】
骨格B.2の製造に関するアクリレートに加えて所望により使用できる、好ましい「別の」重合性のエチレン性不飽和モノマーは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC〜C−アルキルエーテル、メチルメタクリレートおよびブタジエンである。骨格B.2として好ましいアクリレートゴムは、少なくとも60wt%のゲル含量を有するエマルジョンポリマーである。
【0053】
B.2に係る他の適当な骨格は、グラフト活性部位を有するシリコーンゴムであり、例えばDE−OS 3704657、DE−OS 3704655、DE−OS 3631540およびDE−OS 3631539に記述されている。
【0054】
骨格B.2のゲル含有量は適当な溶媒中で25℃にて測定される(M.Hoffman,H.Kroemer,R.Kuhn,Polymeranalytik I and II,Georg Thieme−Verlag,シュトゥットガルト 1977年参照)。
【0055】
平均粒径d50は、その上下にそれぞれ50wt.%の粒子が存在する直径である。それは、超遠心分離測定によって決定できる(W.Scholtan,H.Lange,Kolloid,Z.and Z.Polymere 250(1972年),782〜1796頁参照)。
【0056】
成分C
本発明に係る意味の範囲におけるリン含有難燃剤Cは、好ましくは、モノマーおよびオリゴマーのリン酸およびホスホン酸エステル、ホスホネートアミンおよびホスファゼン、および防炎添加剤として使用することが可能なこれらの群の1以上から選択される複数の成分の混合物から選択される。ここで特に言及されていない他のハロゲンフリーのリン化合物を単独でまたは他のハロゲンフリーのリン化合物と組合せて使用することもできる。
【0057】
好ましいモノマーおよびオリゴマーリン酸エステルおよびホスホン酸エステルは、一般式(IV)のリン化合物である:
【0058】
【化4】

式中、
、R、RおよびRは、相互に独立して、いずれの場合も所望によりハロゲン化されたC〜Cアルキル、いずれの場合も所望によりアルキル置換された、好ましくはC-Cアルキル置換された、および/またはハロゲン置換された、好ましくは塩素または臭素置換された、C〜Cシクロアルキル、C〜C20−アリールもしくはC〜C12−アラルキルであり、
nは、相互に独立して0または1であり、
qは、0〜30であり、および
Xは、炭素原子を6〜30個有する単核−もしくは多核芳香族基、または炭素原子を2〜30個有する直鎖もしくは分枝脂肪族基であって、これらはOH置換されていてもよく、8個以下のエーテル結合を有してもよい。
【0059】
好ましくはR、R、RおよびRは、相互に独立して、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチルまたはフェニルC〜Cアルキルである。芳香族基R、R、RおよびRは、順にハロゲンおよび/またはアルキル基、好ましくは塩素、臭素および/またはC〜Cアルキルによって置換されていてもよい。特に好ましいアリール基は、クレシル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニルまたはブチルフェニル並びにそれらの対応臭素化および塩素化誘導体である。
【0060】
式(IV)における、Xは、好ましくは、炭素原子を6〜30個有する単核もしくは多核芳香族基である。これは好ましくは式(I)のビスフェノールから誘導される。
【0061】
式(IV)における、nは、相互に独立して、0または1であることができ、nは、好ましくは1に等しい。
【0062】
qは、0〜30、好ましくは0〜20、特に好ましくは0〜10の整数であり;混合物の場合それは0.8〜5.0、好ましくは1.0〜3.0、より好ましくは1.05〜2.00および特に好ましくは1.08〜1.60の平均値を示す。
【0063】
Xは、特に好ましくは、以下の化合物
【0064】
【化5】

【0065】
またはそれらの塩素化もしくは臭素化誘導体であり、特にXは、レソルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールAまたはジフェニルフェノールから誘導される。Xは、特に好ましくはビスフェノールAから誘導される。
【0066】
式(IV)のリン化合物は、特にトリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、ジフェニルクレシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、ジフェニル−2−エチルクレシルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、レソルシノールブリッジオリゴホスフェートおよびビスフェノールAブリッジオリゴホスフェートである。ビスフェノールAから誘導される式(IV)のオリゴマーリン酸エステルの使用が特に好ましい。
【0067】
成分Cとして最も特に好ましいものは、式(IVa)によるビスフェノールA系オリゴリン酸エステルである。
【0068】
【化6】

【0069】
成分Cに係るリン化合物は既知であるか(例えば、EP-A0363608、EP-A0640655参照)、または既知の方法により同様の方法で製造できる(例えば,Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie,第18巻,301頁以降,1979年;Houben-Weyl,Methoden der organischen Chemie,第12/1巻,43頁;Beilstein 第6巻,177頁)。
【0070】
本発明による成分Cとして、異なる化学構造および/または同じ化学構造と異なる分子量を備えるリン酸エステルの混合物を用いることも可能である。
【0071】
同じ構造と異なる鎖長を有する混合物が特に使用され、付与されるq値は平均q値である。平均q値は、適当な方法(ガスクロマトグラフィー(GC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC))を用いてリン化合物の組成(分子量分布)を測定し、それらからqに関する平均値を計算することによって決定される。
【0072】
さらに、ホスホネートアミンおよびホスファゼンを、WO 00/00541およびWO 01/18105に記述されているように、難燃剤として使用できる。
【0073】
難燃剤は単独で使用してもよく、または相互に任意に混合させて用いてもよく、他の難燃剤と混合して用いてもよい。
【0074】
成分D
表面処理された焼成カオリンは、成分Dとして使用される。
【0075】
天然に生じるカオリンの主成分はカオリナイト、Al(OH)[Si]であり、および二次成分は長石、マイカおよび石英である。この成分に加えて、カオリナイトに加えてまたはカオリナイトの代わりに、ナクライト、ジッカイト、ハロイサイトおよび水和ハロイサイトを含有するカオリンを使用することも可能である。
【0076】
本発明に係る焼成カオリンは、最低500℃、好ましくは850℃〜1100℃にてカオリンを熱処理することにより得られる。カオリンの結晶構造の部分を形成する水酸基は、この熱処理の間に失われ、カオリンは焼成カオリンへと変換される。
【0077】
焼成温度に応じて、種々の組成および構造の無水ケイ酸アルミニウム(例えば、AlSi、SiAl12、SiAl13)が得られる。
【0078】
使用されるカオリンの平均粒径(d50値)は、0.1μm〜5.0μm、好ましくは0.2μm〜2.0μmおよび特に好ましくは0.8μm〜1.8μmである。
平均粒径が0.1μmよりも小さい場合、耐衝撃性および表面硬度に関する十分な改良が充填剤によりもたらされない。一方、5.0μmよりも大きい平均粒径を有するカオリンの使用は、表面欠陥をもたらし、および靱性を減少させる。
【0079】
平均粒径(d50値)は、Sedigraph 5100,(Micrometrics Instruments社, Norcross, ジョージア,米国)を用いて、水性媒体中で沈殿させることにより測定される。
【0080】
焼成カオリンの表面変性は、一般式(V)の有機チタンまたはシラン化合物を用いて行うことができる。
【0081】
【化7】

式中、M=TiまたはSiであり、
=H、アルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニル、シクロアルキル、ビニル、アミノ、メルカプト、アセトキシ、アルコキシ、エポキシおよび(メタ)アクリルオキシ;
n=1〜6の整数、および
X=H、アルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニル、シクロアルキル、ビニルおよび/またはOR、(式中R=H、アルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニル、シクロアルキル、ビニルおよびアルキルエーテルおよびアルキルポリエーテル)である。
【0082】
好ましくは、M=Siである。例えば、アルキルシラン、アリールシラン、エポキシシラン、アミノシラン例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、メルカプトシラン、アルコキシシラン、メタクリルオキシシラン、例えばγ-メタクリルオキシプロピルトリヒドロキシシラン、ビニルシランまたはビニルアルコキシシラン、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランまたはビニルトリメトキシシランを用いることも可能である。
【0083】
好ましい基X、RおよびRは、水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニル、シクロアルキルまたはビニル基であり、それらは、置換されてもよく、非置換であってもよく、および所望によりヘテロ原子により遮られてもよい。ここで、X、RおよびRは、いずれの場合も相互に独立して、同じであってもよく、異なっていてもよく、およびX残基またはR残基は、好ましくは同一である。
【0084】
炭化水素残基X、RおよびRの例は、アルキル残基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル残基、ヘキシル残基、例えば、n-ヘキシル残基、ヘプチル残基、例えばn-ヘプチル残基、オクチル残基、例えばn-オクチル残基、およびイソオクチル残基、例えば2,2,4-トリメチルペンチル残基、ノニル残基、例えばn-ノニル残基、デシル残基、例えばn-デシル残基、ドデシル残基、例えばn-ドデシル残基、オクタデシル残基、例えばn-オクタデシル残基、シクロアルキル残基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル残基、およびメチルシクロヘキシル残基;アリール残基、例えばフェニル、ビフェニル、ナフチルおよびアントリルおよびフェナントリル残基;アルカリール残基、例えば、o-、m-、p-トリル残基、キシリル残基およびエチルフェニル残基;アラルキル残基、例えば、ベンジル残基、αおよびβ-フェニルエチル残基である。
【0085】
置換炭化水素残基X、RおよびRの例は、ハロゲン化アルキル残基、例えば、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピルおよびペルフルオロヘキシルエチル残基、ハロゲン化アリール残基、例えば、p-クロロフェニルおよびp-クロロベンジル残基である。
【0086】
残基X、RおよびRの別の例は、ビニル、アリル、メタアリル、1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル残基、5-ヘキセニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、エチニル、プロパルギルおよび1-プロピニル残基である。
【0087】
残基Rは、好ましくはビニルまたはアミノ、特に好ましくはビニルである。
【0088】
本発明に係る別の好ましい実施態様において、残基Rは水素、メチルまたはエチルである。
【0089】
シランまたはチタン化合物は、焼成カオリンに基づき0.05wt%〜5.00wt%、好ましくは0.50wt%〜2.00wt%、および特に、0.80〜1.50wt%の量で表面処理に使用される。
【0090】
表面処理剤は、まず焼成カオリンに施すことができ、または未処理の焼成カオリンと共に直接計量添加できる。
【0091】
他の添加剤E
組成物は、他の常套のポリマー添加剤、例えば防炎相乗剤、ドリップ抑制剤(例えば、フッ素化ポリオレフィン、シリコーンおよびアラミド繊維から成る物質の分類からの化合物)、潤滑剤および離型剤(例えばペンタエリトリトールテトラステアレート)、核形成剤、安定剤、帯電防止剤(例えば、導電性カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブおよび有機帯電防止剤、例えばポリアルキレンエーテル、アルキルスルホン酸エステルまたはポリアミド含有ポリマー)および染料、顔料、充填剤、および補強剤、特にガラス繊維、無機補強剤および炭素繊維を含有できる。
【0092】
ドリップ抑制剤として、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはPTFE含有組成物、例えば、スチレン-またはメチルメタクリレート-含有ポリマーもしくはコポリマーを有するPTFEのマスターバッチなどが使用される。安定剤として、好ましくは立体障害フェノールおよび亜リン酸エステルまたはそれらの混合物が使用され、例えばIrganox(登録商標)B900(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)である。ペンタエリトリトールテトラステアレートは、離型剤として好ましく使用される。更に、ブラック顔料(例えば、ブラックパール)が好ましく添加される。
【0093】
成分F
成分Fは、1種以上の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーを含有する。
ビニル(コ)ポリマーFとして適当なものは、ビニル芳香族、シアン化ビニル(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C〜C)アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)からなる群からの少なくとも1種のモリマーから成るポリマーである。特に適当なものは、F.1およびF.2から成る(コ)ポリマーである:
F.1 50〜99、好ましくは60〜80重量部のビニル芳香族および/または核置換ビニル芳香族、例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチル-スチレン、p-クロロスチレンなど)および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)アルキルエステル、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなど)、および、
F.2 1〜50、好ましくは20〜40重量部のシアン化ビニル(不飽和ニトリル)例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどおよび/または(メタ)アクリル酸(C〜C)アルキルエステル、例えば、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレートなど、および/または不飽和カルボン酸、例えばマレイン酸、および/または不飽和カルボンサンの誘導体(例えば、無水物およびイミド)、例えば、無水マレイン酸およびN-フェニルマレイミドなど。
【0094】
ビニル(コ)ポリマーFは、樹脂状、熱可塑性であり、およびゴムを含有しない。F.1スチレンとF.2アクリロニトリルからなるコポリマーが特に好ましい。
【0095】
Fに係る(コ)ポリマーは既知であり、フリーラジカル重合、特に乳化、懸濁、溶液またはバルク重合により調製できる。(コ)ポリマーは、好ましくは、15000〜200000g/モルの間、特に好ましくは100000〜150000g/モルの間に平均分子量(重量平均、光散乱または沈殿法により測定される)を有する。
【0096】
特に好ましい実施態様において、Fは、130000g/モルの重量平均分子量Mを有し、77wt%のスチレンと23wt%のアクリロニトリルからなるコポリマーである。
【0097】
以下の例は、本発明を更に説明する役割を果たす。
【実施例】
【0098】
成分A
275000g/モルの重量平均分子量M(基準としてポリカーボネートを用い、ジクロロメタンで、GPCにより測定した)を有するビスフェノールAに基づく直鎖状ポリカーボネート。
【0099】
成分B
ABSポリマーに基づき、57wt%の微粒子架橋ポリブタジエンゴム(平均粒径d50=0.35μm)の存在下、27wt%アクリロニトリルと73wt%スチレンからなる混合物43wt%(ABSポリマーに基づく)を乳化重合させることにより調製された、ABSグラフトポリマー。
【0100】
成分C
ビスフェノールA系オリゴリン酸エステル
【0101】
【化8】

【0102】
成分D1
1.5μmの平均粒径を有する焼成カオリン(ケイ酸アルミニウム)。平均粒径(d50値)は、Sedigraph 5100,(Micrometrics Instruments社, Norcross, ジョージア,米国)を用いて、水性媒体中で沈殿させることにより測定される。
【0103】
成分D2
1.5μmの平均粒径を有する、ビニルシラン変性した焼成カオリン(ケイ酸アルミニウム)。
【0104】
成分E1
ポリテトラフルオロエチレン粉末、CFP6000N、デュポン
【0105】
成分E2
潤滑剤/離型剤としてのペンタエリトリトールテトラステアレート
【0106】
成分E3
亜リン酸エステル、Irganox(登録商標)B900、チバスペシャリティケミカルズ
【0107】
成分E4
ブラック顔料ブラックパール800、キャボット
【0108】
成形材料の調製および試験
2軸押出機(ZSK-25)(Werner and pfleiderer)を用いて、260℃の機械温度、225rpmの速度にて20kg/時の処理量で、表1に記載した供給材料を配合して粒状化した。
【0109】
生成した細粒を、射出成形機で適切な試験片へと加工した(溶融温度260℃、金型温度80℃、フロー前面速度240mm/s)。
【0110】
材料の性能を評価するために、以下の方法を使用した:
アイゾット衝撃抵抗は、80mm×10mm×4mmのサイズを有し、片側を開放した試験片を、ISO 180/1Uに従い測定した。
【0111】
緊張時の弾性係数および破断伸びは、170mm×10mm×4mmの幾何学的形状を有するダンベル試験片を用い、ISO527に従い測定した。
【0112】
熱歪み温度は、80mm×10mm×4mmのサイズを有し、片側を開放した試験片を用い、ISO306(ビカット軟化点、120K/時の加熱速度と50Nの加重を与える方法B)に従い測定した。
【0113】
溶融粘度は、細粒を用いISO11443に従い測定した。
【0114】
環境応力亀裂性能(ESC性能)は、ISO4599に従い、80mm×10mm×4mmの棒を測定することにより導かれた。試験片は湾曲した型板を用いて事前伸展し(事前伸展ε=2.4%)、室温にて、試験媒体(トルエン/イソプロパノール60:40)中に貯蔵した。環境応力亀裂性能は、破損するまでの時間を用いて評価した。
【0115】
燃焼挙動は、127mm×12.7mm×1.5mmに計測したバーを用い、UL94Vに従い測定した。
【0116】
耐引掻性は、75mm×60mm×3mmの幾何学的形状を有するシートを用い、鉛筆硬度として、ASTM D-3363(重量750g)に従い測定した。この試験において、3H、2H、H,F、HB、B、2Bおよび3B(硬度が減少する)の硬度を有する鉛筆を、特定の圧力を付与しながら表面全体にわたり通過させる。鉛筆硬度は、表面上に引掻き傷が検出されない最も高硬い鉛筆を付与する。
【0117】
表1から、ポリカーボネート、エマルションABS、BDPおよびビニルシラン変性焼成カオリンの組合せを備える実施例2における組成物のみが、本発明に係る目的をもたらすこと、すなわち、UL94V試験における良好な性能と改良された耐引掻性を備えると共に、良好な耐衝撃性、高い弾性係数、改良された破断伸び、流動性および耐薬品性をもたらすことが判る。
【0118】
このような幾つかの実施態様のように、表面処理した(すなわち、ビニルシラン変性した)焼成カオリンは有利な結果をもたらすことができる。別の表面処理もまた、当業者に既知のものとして実施可能である。
【0119】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)10〜90重量部の芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、
B)0.5〜30重量部のゴム変性グラフトポリマー、
C)0.5〜20重量部の少なくとも1種のリン含有難燃剤、
D)0.1〜25.0重量部の表面処理された焼成カオリン
E)0〜10重量部の少なくとも1種の他の添加剤
F)0〜40重量部のビニル(コ)ポリマー(C.1)
を含有する組成物:
ただし、重量部に関する全データは、組成物における全成分A+B+C+D+E+Fの重量部の合計が100となるように標準化される。
【請求項2】
使用するカオリンの平均粒径(d50値)が0.1μm〜5.0μmであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
焼成カオリンの表面が、一般式(V)の有機チタンまたはシラン化合物により変性されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物:
【化1】

式中、M=TiまたはSiであり、
=H、アルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニル、シクロアルキル、ビニル、アミノ、メルカプト、アセトキシ、アルコキシ、エポキシおよび(メタ)アクリルオキシ;
n=1〜6の整数、および
X=H、アルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニル、シクロアルキル、ビニルおよび/またはOR、(式中、R=H、アルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニル、シクロアルキル、ビニルおよびアルキルエーテルおよびアルキルポリエーテル)である。
【請求項4】
M=Siであり、R=ビニルであることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
が、メチル、エチルおよび水素を含有する群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
シランまたはチタン化合物が、焼成カオリンに基づき、0.05wt%〜5.00wt%の量で表面処理に使用されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
熱可塑性の、芳香族ポリカーボネートが、10000〜200000g/モルの平均分子量(重量平均)を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
成分Bの骨格が、0.05〜10.00μmの平均粒径(d50値)を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
成分Bの骨格が、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、ポリアクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴムを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
グラフトポリマー(B)が、以下のものから構成されることを特徴する、請求項1に記載の組成物:
B.1)27wt%アクリロニトリルと73wt%スチレンからなるエマルジョンポリマーを43wt%、および
B.2)0.35μmの平均粒径d50を有する、粒状の架橋ポリブタジエンゴムを57wt%。
【請求項11】
リン含有難燃剤(C)が、一般式(IV)の難燃剤であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物:
【化2】

式中、
、R、RおよびRは、相互に独立して、いずれの場合も所望によりハロゲン化されたC〜Cアルキル、いずれの場合も所望によりアルキル置換された、好ましくはC-Cアルキル置換された、および/またはハロゲン置換された、好ましくは塩素または臭素置換された、C〜Cシクロアルキル、C〜C20−アリールもしくはC〜C12アラルキルであり、
nは、相互に独立して0または1であり、
qは、0.80〜5.00であり、
Xは、炭素原子を6〜30個有する単核−もしくは多核芳香族基、または炭素原子を2〜30個有する直鎖もしくは分枝脂肪族基であって、これらはOH置換されていてもよく、8個以下のエーテル結合を有してもよい。
【請求項12】
防炎相乗剤、ドリップ抑制剤、潤滑剤および離型剤、核形成剤、安定剤、帯電防止剤、染料、顔料および充填剤ならびに補強剤を含有する群から選択される少なくとも1種の添加剤を成分Eとして含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
射出成形または熱形成された成形品を製造するための、請求項1から12の1ずれか一つに記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2013−514412(P2013−514412A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543738(P2012−543738)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069834
【国際公開番号】WO2011/073291
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512137348)バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (91)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
【Fターム(参考)】