説明

色素増感型太陽電池用色素、色素増感型太陽電池用色素含有電極および色素増感型太陽電池

【課題】色素増感型太陽電池に適した色素及び色素増感型陽電池を提供する。
【解決手段】下式の色素を酸化チタンのような金属酸化物粒子に吸着させることにより、色素増感型太陽電池の電極およびこれを用いた色素増感型太陽電池を形成することができる。


但し、上記式(I)において、アルキル基、アリール基およびアルコキシ基のいずれかであり、Xは、次式チオフェン環などの環状構造体であり、Yは、ピリジル基であり、nは1〜12のいずれかの整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池用色素、この色素増感型太陽電池用色素を吸着した色素増感型太陽電池用色素含有電極、および、このような電極を有する色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感太陽電池に用いられる増感色素としては、一般にRu金属錯体系色素が用いられる。
このようなRu金属錯体色素は吸光係数が余り高くなく、単分子として光吸収能は大きくは無いが、色素増感太陽電池においてはナノポーラスな金属酸化物を電極として用いる事が出来るためアノード電極の膜厚を厚くする事で、単位面積当たりの色素量を多くすることが可能であり、こうした機能を利用することにより高い光電変換効率を実現する事ができる。しかし、貴金属であるRuを用いているため将来的には供給安定面で不安さを有しており、また、高い光電変換効率を維持する為には色素使用量も増えてしまう。これら背景に基づきRu錯体などの貴金属を用いない色素増感太陽電池用有機色素が注目されている。
【0003】
一般的に有機増感色素はRu系色素に比べ高いモル吸光係数を有するが、逆にアノード電極の膜厚を厚くしても光電変換効率は大きくは向上しない。また、有機系色素に用いる骨格には光吸収能と電荷移動能を両立するために高い共役構造が必要とされるが、これら共役構造が発達する事で溶剤等への溶解性が悪くなりアノード電極への染色が困難となる。更に、色素増感太陽電池用の有機色素には電解質として使用されるヨウ素アニオンからの電荷移動を効率よく行うために窒素元素を含むヘテロ環及び/またはアミン基をドナー骨格に用いる事が多い。有機色素としては、これら各要素を取り入れた設計が重要であるが、吸収波長領域がルテニウム錯体とほぼ同等である有機色素の場合でも、ルテニウム錯体に比べて開放電圧が低いため変換効率が低いとの問題があった。
【0004】
一方、色素増感太陽電池には電解質として通常はヨウ素及びヨウ化リチウムなどのヨウ素アニオンの組み合わせによるI-/I3-のようなレドックス能を有する電解質(酸化還元反応が可能な電解質)が利用される。こうしたレドックス能を有する電解質のなかでも、I-/I3-の溶液は安定性に優れている為に広汎に使用されているが、こうしたI-/I3-溶液は、セル耐久性に関してはヨウ素による配線材料の腐食、劣化が問題となっており、I-/I3-溶液に代わるレドックスとの酸化還元を行える色素が要求されているが、良好なものは殆ど報告されていない。
【0005】
この問題を解決すべく開発されたのがオリゴn-ヘキシルチオフェン(共役結合系)、シアノ酢酸基(アクセプター、アンカー)の組み合わせに対して、ドナー部としてN-エチルカルバゾールを用いたMK−2である(非特許文献1参照)。MK−2は従来の有機色素と比較して開放電圧が高く、また変換効率も高い優れた色素であり、有機色素としては非常に高い変換効率を発現する事が確認されている。MK-2の構造を下記に(MK−2)として示す。
【0006】
【化1】

しかし、前述のとおり高い吸光係数を有することで光電極の膜厚を厚くしても変換効率の向上は見込めず、未だRu系色素に勝る変換効率は達成できていない。更に、窒素元素を含むカルバゾール化合物をドナー骨格として用いている為にI-/I3-レドックス溶液以外の電解液への適用は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2007/119525A1公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】独立行政法人産業技術総合研究所のウェブサイト http://www.aist.go.jp/aist#j/press#release/pr2008/pr20081119/pr20081119.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、色素染色溶剤であるトルエン等への汎用溶剤への溶解性が良好でありながら、高性能な色素増感太陽電池用増感色素を提供することを目的としている。
また本発明は、上記色素増感太陽電池用色素を用いる事で高性能な色素増感太陽電池用色素含有電極を提供することを目的としている。
【0010】
更には、HOMO-LUMO準位の調整による非ヨウ素系レドックス溶液を用いて発電が可能となる色素増感太陽電池用色素含有電極を提供する事を目的としている。
さらに本発明は、上記色素増感太陽電池用色素を用いた電極を有する色素増感太陽電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の色素増感太陽電池用色素は、次式(I)で表わすことができる。
【0012】
【化2】

上記式(I)において、Xは、次式(a)、(b)および(c)よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の基を表わし、Yは次式(d)、(e)および(f)よりなる群から選ばれる一種類の基を表わし、nは1〜12のいずれかの整数である。
【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

但し、上記式(a)、(b)および(c)において、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基およびアルコキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の原子あるいは基を表わす。
【0015】
また、本発明の色素増感型太陽電池用色素含有電極は、上記の式(I)で表わされるカルバゾール化合物を金属酸化物粒子の表面に吸着させたカルバゾール化合物被覆金属酸化物粒子が金属製電極表面に配置された構成を有する。
【0016】
さらに本発明の色素増感型太陽電池は、上記のように表面にカルバゾール化合物被覆金属酸化物粒子が配置された透明電極を一方の電極とし、他方の電極として触媒電極を配置し、該透明電極と触媒電極との間に電解質を挟持してなる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の色素増感型太陽電池用色素は、ピリジル基を有するカルバゾール化合物をドナー骨格として適用し、該骨格に側鎖を有する共役系低分子のオリゴチオフェン等を導入することでトルエン等の汎用溶剤に対する溶解性付与、色素間スタックの抑制、光電極等からの電荷の漏れの抑制を可能にし、さらに共役長の調整によって光吸収波長領域および電荷移動能の調整等の設計を行うことで色素増感太陽電池に用いる色素として有効に利用することができる。
【0018】
本発明のカルバゾール化合物からなる色素を酸化チタンに吸着した電極は、色素増感型太陽電池用の電極として有効に使用することができる。この電極を有する色素増感型太陽電池は、MK-2を用いた太陽電池よりも開放電圧および短絡電流密度が高く、さらに変換効率も高い値を示す。また、本発明のカルバゾール化合物からなる色素は、MK-2より低い吸光係数を有しており、この特性を利用して光電極の有効面積を増やすことで高い変換効率を有する色素増感太陽電池用光電極の提供が可能となる。
【0019】
しかも、本発明のカルバゾール化合物からなる色素を含有する電極を用いることにより、非ヨウ素系電解質での発電が可能になり、特に色素増感型の太陽電池では必須構成要件であった液体の電解液を使用せずに、これに変わって導電性ポリマーなどの固体電解質を用いて発電することが可能になる。従って、ヨウ素レドックスによるセル配線材料の腐食を抑制して高寿命なセルの提供又は色素増感型太陽電池からの電解液の漏れが発生しないという新たな色素増感型太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、色素増感型太陽電池<液式光電変換素子>の断面の例を模式的に示す図面である。
【図2】図2は、色素増感型太陽電池<完全固体型光電変換素子>の断面の例を模式的に 示す図面である。
【図3】図3は、式(12)で表わす化合物の1H-NMRのスペクトルである。
【図4】図4は、式(12)で表わす化合物のLC-MSのスペクトルである。
【図5】図5は、式(14)で表わす化合物の1H-NMRのスペクトルである。
【図6】図6は、式(14)で表わす化合物のLC-MSのスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次の本発明のカルバゾール化合物からなる色素増感型太陽電池用色素、この色素を用いた色素増感型太陽電池用色素含有電極および色素増感型太陽電池について具体的に説明する。
【0022】
本発明のカルバゾール化合物からなる色素増感型太陽電池用色素は下記式(I)で表すことができる。
【0023】
【化5】

上記式(I)において、nは1〜12の整数であり、2〜10の整数であることが特に好ましい。
【0024】
上記式(I)において、Xは、次式(a)、(b)、(c)のいずれかの基である。
【0025】
【化6】

但し、上記式(a)、(b)および(c)において、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基およびアルコキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の原子あるいは基を表わす。
【0026】
これらの中でもR3およびR4のいずれか一方が水素原子であり、他方の基は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアリール基、または、炭素数1〜12のアルコキシ基のいずれかであることが好ましい。
【0027】
また、R3およびR4のいずれか一方が水素原子であり、他方の基は、アルキル基、アリール基、または、アルコキシ基のいずれかである場合、これらの基は直鎖状の基であることが好ましい。
【0028】
特に本発明においては式(I)におけるXはチオフェン環を有する上記式(a)であることが好ましく、この場合、チオフェン環に結合しているR3,R4の内のいずれか一方は、水素原子であり、他方が炭素数2〜12のアルキル基、アリール基またはアルコキシ基のいずれかであることが好ましく、このような置換基を有するチオフェン環が通常は2〜12個、好ましくは3〜7個結合していること(即ち式(I)におけるnが通常は2〜12、好ましくは3〜7である)が特に望ましい。
【0029】
上記式(I)において、Yは、次式(d)、(e)、(f)のいずれかの基である。
【0030】
【化7】

さらに、本発明の色素増感型太陽電池用色素としては、以下に示す式で表す化合物を使用することができる。
【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
【化10】

上記式(II) 〜(IV) において、Y、R3、R4およびnは前記と同様である。
【0034】
このような本発明の色素増感型太陽電池用色素の具体的な例として、例えばnが3、Yが(d)の化合物を示せば次のようになる。
【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
【化13】

このような化合物の内、色素増感型太陽電池用の色素としては、チオフェン環を有する(II-1)が好ましい。
【0038】
また、本発明において、R3およびR4は、水素原子、アルキル基、アリール基およびアルコキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の原子あるいは基であるが、R3およびR4のいずれか一方が水素原子であり、他方がアルキル基、アリール基およびアルコキシ基であることが好ましい。
【0039】
このような化合物は、カルバゾールを出発物質として合成することができる。
まず、カルバゾールとハロゲン化ピリジンとを酢酸パラジウム(II)、炭酸カリウム及び、トリ-t-ブチルホスフィンの存在下反応させ、カルバゾールの窒素原子位置にピリジン環を導入する(以下ピリジン置換カルバゾールともいう)。
【0040】
次に、N-ブロモスクシンイミド等を用いて、ピリジン置換カルバゾールにおける3位置をハロゲン化する。ハロゲン化されたピリジン置換カルバゾールとチオフェン環等のヘテロ五員環でホウ素が置換されたボロン酸エステルとを、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド及び、炭酸ナトリウム水溶液の存在下還流してカップリングを行う(スズキカップリング反応)。
【0041】
このようにして、ヘテロ五員環をピリジン置換カルバゾールの3位置に導入する。
この後、N-ブロモスクシンイミド等を用いたヘテロ五員環のハロゲン化および上記スズキカップリング反応を繰り返すことにより、ヘテロ五員環が繰り返された構造を有するピリジン置換カルバゾールを得ることができる。そして、カップリングの際に使用するヘテロ五員環に結合している置換基を変えることにより、所望のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を導入することができる。
【0042】
上記のようにして所望の数のヘテロ五員環を結合させた後、例えば、冷却した塩化ホスホリルにN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を滴下してビルスマイヤー試薬を調製し、このビルスマイヤー試薬を上記のようにして調製したヘテロ五員環が結合したピリジン置換カルバゾール誘導体に加えることにより、末端のヘテロ五員環にアルデヒド基を導入する。こうして得られた末端のヘテロ五員環にアルデヒド基が導入されたピリジン置換カルバゾール誘導体アルデヒドとシアノ酢酸とを、ピペリジンの存在下に反応させ、反応物をクロロホルムなどで抽出して、抽出された有機相を塩酸などの鉱酸で処理することにより、末端のヘテロ五員環にアクセプターであると共にアンカーでもあるシアノ基およびカルボキシル基を導入することができる。
【0043】
このような化合物は、色素増感型太陽電池用色素は、色素増感型太陽電池用電極および色素増感型太陽電池に好適に使用することができる。すなわち、本発明の色素増感型太陽電池用の色素を有機溶媒に溶解して、透明電極の表面に配置した金属酸化物の層(例えばTiO2膜(或いは層))に吸着させた電極を一方の電極とし、間に酸化還元反応を行う層を介して他方の電極を配置することにより、本発明の色素増感型太陽電池とすることができる。
【0044】
このような色素増感型太陽電池は、通常は図1に示すような断面構造を有している。
また、後述するように、酸化還元反応を行う層に導電性ポリマーなどのような固体電解質を用いる場合は、透明電極と金属酸化物の層(例えばTiO2膜(或いは層))の間に電荷の漏れを防止する短絡防止層をもうけることができる。
【0045】
このような色素増感太陽電池は、通常は図2に示すような断面構造を有している。
色素増感型太陽電池では、上記のような色素化合物を陽極に配置された透明電極の表面に積層された酸化チタンなどの金属酸化物の粒子層中に吸着させることにより光増感させることができる。
【0046】
このときの酸化チタンなどの金属酸化物粒子の粒子層の厚さ(膜厚)は通常は1〜50μm、好ましくは10〜30μmである。
色素増感型の太陽電池の一方の電極は、上記のように透明電極の表面に色素が吸着された電極であるが、他方の電極は基板の表面にPtなどの導電性金属をスパッタリング、蒸着などの方法により、例えば2〜100nm厚さに積層した積層体からなる触媒電極を使用する。
【0047】
上記のような電極間には通常は電解液が充填されている。この電解液としては従来から使用されているヨウ化リチウム/ヨウ素/t-ブチルピリジン/ヨウ化1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムから形成されるI-/I3-レドックス溶液のようなヨウ素系の電解液を使用することもできるが、本発明では、カルバゾールのN位にピリジル基を導入することにより、液体である電解液の代わりに導電性ポリマーを使用することが可能になる。固体電解質としては、導電性ポリマー(ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリピロールなど)や、本出願人が先に出願している国際特許出願(PCT/JP2010/061514)に係る発明である固体電解質用組成物(キレート能を有するモノマーを含むモノマーを重合して得られる高分子化合物と、炭素材料および/またはπ共役系高分子である電荷移動性材料とを含む固体電解質用組成物)などを挙げることができる。このような固体電解質を用いると、液体であるI-/I3-の溶液のような電解液のように液漏れを起こすことがないので、長寿命の色素増感型太陽電池を使用することができる。
【0048】
本発明の色素増感型太陽電池において、上記のようなレドックス溶液あるいは導電性ポリマーを充填する電極間の間隙の幅は、通常チタニアの膜厚とのバランスで決定する必要があるが、1〜50μm、好ましくは10〜30μmの範囲内に調整するのが好ましい。
【0049】
しかも、このように導電性ポリマーを用いた色素増感型太陽電池は、従来から使用されている色素を用いた色素増感型太陽電池と同等若しくは同等以上の発電効率を有している。
【0050】
以下本発明の色素増感型太陽電池について、具体的に実施例を示してピリジン置換カルバゾール化合物を製造する工程から説明する。
これらの実施例は、本発明の一態様を示すものであり、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
【0051】
なお、本発明において、本発明の色素増感型太陽電池用色素の性能を評価させるために、MK-2を基準にして評価を行った。なお、MK−2は、WO2007/119525の実施例2の記載に従って調製した。
【実施例】
【0052】
次に本発明の実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、1HNMRおよびLC-MSは、以下の装置および条件で測定した。
1HNMR(装置:JNM−ECX500M、500MHz、溶媒:テトラヒドロフラン-d8)。
LC-MS(装置:LC部 Agilent 1100Series、MS部 Bruker Daltonics esquire4000、APCI法)
また、太陽電池の性能は、以下の条件で測定した。
1SUN、擬似太陽光(入射光強度100mW/cm(AM1.5))を光源として、光電変換素子の色素増感電極側から入射させ、電圧/電流発生器(R6243, ADVANTEST)によって電圧印加し、電池特性を測定した。
【0053】
[合成例1]
(1−i)(1)で表されるカルバゾール(東京化成工業社製) 8.19gと(2)で表される3-ヨードピリジン(東京化成工業社製)10.39gを、酢酸パラジウム(II)0.22g、炭酸カリウム17.57g及び、トリ-t-ブチルホスフィン1.01gをキシレン中、10時間加熱還流を行う。反応液を室温に冷却後、酢酸エチルで希釈し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で精製し、(3)で表されるカルバゾール誘導体9.63gを得た。収率は80%であった。
【0054】
【化14】

(1−ii)(3)で表されるカルバゾール誘導体2.92gのテトラヒドロフラン溶液10mlへ、室温にて、N-ブロモスクシンイミド1.70gとテトラヒドロフラン8mlのスラリー溶液を加え、2時間攪拌する。攪拌後、反応液から溶媒を減圧下で留去し、残留物を酢酸エチルで溶解した。有機層を10%炭酸ナトリウム、水、及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物から再結晶(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)により、(4)で表されるカルバゾール誘導体2.33gを得た。収率は61%であった。
【0055】
【化15】

(1−iii)(4)で表されるカルバゾール誘導体2.85gと(5)で表される3-ヘキシルチオフェン-5-ボロン酸エステル3.71gとを混合し、混合物をビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.32g及び、25wt%炭酸ナトリウム水溶液12.23g存在下、トルエン中、9時間加熱還流を行う。反応液を室温に冷却後、酢酸エチルで希釈し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で精製し、(6)で表されるカルバゾール誘導体3.21gを得た。収率は89%であった。
【0056】
【化16】

(1−iv)(6)で表されるカルバゾール誘導体2.80gのテトラヒドロフラン溶液15mlを-20℃に冷却し、そこへN-ブロモスクシンイミド0.86gとテトラヒドロフラン8mlのスラリー溶液を加え、1時間攪拌する。攪拌後、反応液から溶媒を減圧下で留去し、残留物を酢酸エチルで溶解した。有機層を10%炭酸ナトリウム、水、及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物から再結晶(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)により、(7)で表されるカルバゾール誘導体2.79gを得た。収率は88%であった。
【0057】
【化17】

(1−v)前記(1−iii)のスズキカップリング反応、及び前記(1−iv)の臭素化反応を繰り返すことにより、(8)で表されるヘキシル置換チオフェンが3個連なったカルバゾール誘導体、(9)で表されるヘキシル置換チオフェンが4個連なったカルバゾール誘導体、(10)で表されるヘキシル置換チオフェンが5個連なったカルバゾール誘導体を合成することができる。
【0058】
【化18】

【0059】
【化19】

【0060】
【化20】

[実施例1]
塩化ホスホリル0.16mlを5℃に冷却し、N,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)を0.29ml滴下し、1時間攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調整する。合成例1で得られた(8)で表されるカルバゾール誘導体0.85gをDMF6mlで溶解し、そこへ上記で調整したビルスマイヤー試薬を室温で滴下し、70℃で1時間攪拌する。その後、反応液に10%の酢酸ナトリウム水溶液を50g加え中和し、酢酸エチルで抽出を行う。有機層を水及び、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1) で精製し、(11)で表されるカルバゾール誘導体アルデヒドを0.88g得た。収率は99.5%であった。
【0061】
【化21】

(11)で表されるカルバゾール誘導体アルデヒド0.88gとシアノ酢酸0.19gとを、ピペリジン0.3mlの存在下、トルエン/アセトニトリル=1/1混合溶媒10ml中で7時間加熱還流を行った。その後、反応液にクロロホルム50mlを加え、有機層を1N-塩酸で処理し、水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム→クロロホルム/エタノール=10/1)により精製し、(12)で表される色素化合物0.84gを得た。収率は88%であった。
【0062】
【化22】

[実施例2]
塩化ホスホリル0.33mlを5℃に冷却し、N,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)を0.61ml滴下し、1時間攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調整する。合成例1で得られた(9)で表されるカルバゾール誘導体1.88gをDMF12mlで溶解し、そこへ上記で調整したビルスマイヤー試薬を室温で滴下し、70℃で1時間攪拌する。その後、反応液に10%の酢酸ナトリウム水溶液を100g加え中和し、酢酸エチルで抽出を行う。有機層を水及び、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物を再結晶(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1) で精製し、(13)で表されるカルバゾール誘導体アルデヒドを0.84g得た。収率は49%であった。
【0063】
【化23】

(13)で表されるカルバゾール誘導体アルデヒド0.83gとシアノ酢酸0.15gとを、ピペリジン0.2mlの存在下、トルエン/アセトニトリル=1/1混合溶媒10ml中で10時間加熱還流を行った。
【0064】
その後、反応液にクロロホルム100mlを加えた。有機層を1N-塩酸で処理し、水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム→クロロホルム/エタノール=10/1)により精製し、(14)で表される色素化合物0.36gを得た。収率は40%であった。
【0065】
【化24】

[実施例3]
塩化ホスホリル0.11mlを5℃に冷却し、N,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)を0.12ml滴下し、1時間攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調整する。合成例1で得られた(10)で表されるカルバゾール誘導体0.40gをDMF3mlで溶解し、そこへ上記で調整したビルスマイヤー試薬を室温で滴下し、70℃で1時間攪拌する。その後、反応液に10%の酢酸ナトリウム水溶液を50g加え中和し、酢酸エチルで抽出を行う。有機層を水及び、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物を再結晶(溶媒:ヘキサン) で精製し、(15)で表されるカルバゾール誘導体アルデヒドを0.21g得た。収率は50%であった。
【0066】
【化25】

(15)で表されるカルバゾール誘導体アルデヒド0.20gとシアノ酢酸0.03gとを、ピペリジン0.1mlの存在下、トルエン/アセトニトリル=1/1混合溶媒3ml中で10時間加熱還流を行った。その後、反応液にクロロホルム100mlを加え、有機層を1N-塩酸で処理し、水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム→クロロホルム/エタノール=10/1)により精製し、(16)で表される色素化合物0.14gを得た。収率は65%であった。
【0067】
【化26】

[合成例2]
(2−i)(1)で表されるカルバゾール(東京化成工業社製) 9.00gと(17)で表される4-ヨードピリジン(東京化成工業社製)10.39gを、酢酸パラジウム(II)0.24g、炭酸カリウム19.31g及び、トリ-t-ブチルホスフィン1.11gをキシレン中、10時間加熱還流を行う。反応液を室温に冷却後、酢酸エチルで希釈した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で精製し、(18)で表されるカルバゾール誘導体8.90gを得た。収率は68%であった。
【0068】
【化27】

(2−ii)(18)で表されるカルバゾール誘導体6.00gのテトラヒドロフラン溶液50mlへ、室温にて、N-ブロモスクシンイミド4.37gとテトラヒドロフラン30mlのスラリー溶液を加え、2時間攪拌する。攪拌後、反応液から溶媒を減圧下で留去し、残留物を酢酸エチルで溶解した。有機層を10%炭酸ナトリウム、水、及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し、カラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)でシリカゲル吸着成分を除去し、(19)で表せるカルバゾール誘導体を主成分とした混合物4.96gを得た。
【0069】
【化28】

(2−iii)(19)で表されるカルバゾール誘導体を主成分とする混合物4.96gと(5)で表される3-ヘキシルチオフェン-5-ボロン酸エステル6.45gとを混合し、混合物をビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.54g及び、25wt%炭酸ナトリウム水溶液19.52g存在下、トルエン中、9時間加熱還流を行う。室温に冷却後、酢酸エチルで希釈し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で精製し、(20)で表されるカルバゾール誘導体1.57gを得た。(18)で表される化合物からの収率は16%であった。
【0070】
【化29】

(2−iv)(20)で表されるカルバゾール誘導体1.57gのテトラヒドロフラン溶液65mlへ、N-ブロモスクシンイミド6.42gとテトラヒドロフラン20mlのスラリー溶液を室温にて加え、1時間攪拌する。攪拌後、反応液から溶媒を減圧下で留去し、残留物を酢酸エチルで溶解した。有機層を10%炭酸ナトリウム、水、及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物から再結晶(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)により、(21)で表されるカルバゾール誘導体1.80gを得た。収率は94%であった。
【0071】
【化30】

(2−v)前記(2−iii)のスズキカップリング反応および)前記(2−iv)の臭素化物を得る反応を繰り返し行うことにより、式(22)で表されるヘキシル置換チオフェンが三個連なったカルバゾール誘導体、式(23)で表されるヘキシル置換チオフェンが四個連なったカルバゾール誘導体、式(24)で表されるヘキシル置換チオフェンが五個連なったカルバゾール誘導体を合成することができた。
【0072】
【化31】

【0073】
【化32】

【0074】
【化33】

[実施例4]
塩化ホスホリル0.16mlを5℃に冷却し、N,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)を2ml滴下し、1時間攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調整する。合成例2で得られた(22)で表されるカルバゾール誘導体0.50gをDMF5mlで溶解し、そこへ上記で調整したビルスマイヤー試薬を室温で滴下し、70℃で1時間攪拌する。その後、反応液に10%の酢酸ナトリウム水溶液を50g加え中和し、酢酸エチルで抽出を行う。有機層を水及び、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製し、(25)で表されるカルバゾール誘導体アルデヒドを0.41g得た。収率は79%であった。
【0075】
【化34】

(25)で表されるカルバゾール誘導体アルデヒド0.40gとシアノ酢酸0.10gとを、ピペリジン0.2mlの存在下、トルエン/アセトニトリル=1/1混合溶媒10ml中で7時間加熱還流を行った。その後、反応液にクロロホルム50mlを加え、有機層を1N-塩酸で処理し、水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム→クロロホルム/エタノール=10/1)により精製し、(26)で表される色素化合物0.32gを得た。収率は73%であった。
【0076】
【化35】

[実施例5]
塩化ホスホリル0.12mlを5℃に冷却し、N,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)を2ml滴下し、1時間攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調整する。合成例2で得られた(23)で表されるカルバゾール誘導体0.60gをDMF5mlで溶解し、そこへ上記で調整したビルスマイヤー試薬を室温で滴下し、70℃で1時間攪拌する。その後、反応液に10%の酢酸ナトリウム水溶液を50g加え中和し、酢酸エチルで抽出を行う。有機層を水及び、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物を再結晶(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1) で精製し、(27)で表されるカルバゾール誘導体アルデヒドを0.42g得た。収率は72%であった。
【0077】
【化36】

(27)で表されるカルバゾール誘導体アルデヒド0.41gとシアノ酢酸0.10gとを、ピペリジン0.2mlの存在下、トルエン/アセトニトリル=1/1混合溶媒6ml中で10時間加熱還流を行った。
【0078】
その後、反応液にクロロホルム100mlを加えた。有機層を1N-塩酸で処理し、水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム→クロロホルム/エタノール=10/1)により精製し、(28)で表される色素化合物0.34gを得た。収率は78%であった。
【0079】
【化37】

[実施例6]
塩化ホスホリル0.06mlを5℃に冷却し、N,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)を2ml滴下し、1時間攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調整する。合成例2で得られた(24)で表されるカルバゾール誘導体0.50gをDMF6mlで溶解し、そこへ上記で調整したビルスマイヤー試薬を室温で滴下し、70℃で1時間攪拌する。その後、反応液に10%の酢酸ナトリウム水溶液を50g加え中和し、酢酸エチルで抽出を行う。有機層を水及び、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物を再結晶(溶媒:ヘキサン)で精製し、(29)で表されるカルバゾール誘導体アルデヒドを0.38g得た。収率は75%であった。
【0080】
【化38】

(29)で表されるカルバゾール誘導体アルデヒド0.38gとシアノ酢酸0.06gとを、ピペリジン0.2mlの存在下、トルエン/アセトニトリル=1/1混合溶媒6ml中で10時間加熱還流を行った。その後、反応液にクロロホルム100mlを加え、有機層を1N-塩酸で処理し、水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、有機層から溶媒を減圧下で留去し粗生成物を得た。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム→クロロホルム/エタノール=10/1)により精製し、(30)で表される色素化合物0.33gを得た。収率は81%であった。
【0081】
【化39】

[実施例7]
(液体電解質を用いた色素増感型太陽電池の作成)
(7−i)<光電極の作成>
透明電極基材として、片面にFTO電極被膜が形成されたFTOガラスを用いて、この透明電極のFTO面に市販の酸化チタンペースト(商品名:Ti-Nanoxide T/SP、アナターゼ粒子サイズ13μm、Solaronix社製)をスクリーン印刷法により塗布した。
これを空気中で450℃で焼成することにより、酸化チタンの多孔膜層を作成し、これを四塩化チタン処理することにより酸化チタン光電極を作成した。
【0082】
(7−ii)<色素の吸着>
実施例1〜6で調製した色素化合物を濃度が0.1〜0.5mMになるようにトルエンに溶解させ、この色素溶液に(7−i)で作成した酸化チタン光電極を室温で、18時間浸漬させて色素を酸化チタンに吸着させた。
色素を吸着させた後、光電極をトルエンで充分に洗浄し室温で乾燥して色素吸着酸化チタン光電極を得た。
【0083】
(7−iii)<電解液の作成>
ヨウ化リチウム/ヨウ素/t-ブチルピリジン/ヨウ化1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムをそれぞれ、0.1M/0.05M/0.5M/0.6Mの濃度になるようにアセトニトリルに溶解させて電解液を調製した。
【0084】
(7−iv)<液体電解質を用いた色素増感型太陽電池の作成>
前記(7−i)および(7−ii)で作成した色素吸着酸化チタン光電極とFTOガラスにスパッタ法により作成したPt電極を、ポリエチレンフィルムスペーサーを介して重ね合わせて、両者の間隙に(7−iii)で得た電解液を注入し、クロップで止め液体電解質を用いた色素増感型太陽電池を得た。
使用した色素による液体電解質を用いた色素増感型太陽電池の性能を表1に示す。
【0085】
【表1】

[実施例8]
(固体電解質を用いた色素増感型太陽電池の作成)
(8−i)<光電極の作成>
透明電極基材として、片面にFTO電極被膜が形成されたFTOガラスを用いて、この透明電極のFTO面にチタンアルコキシドのイソプロピルアルコール溶液を塗布、120℃に加熱し短絡防止層を作成した。その上に、市販の酸化チタンペースト(商品名:Ti-Nanoxide T37/SP、アナターゼ粒子サイズ37μm、Solaronix社製)をスクリーン印刷法により塗布した。
これを空気中で450℃で焼成することにより、酸化チタンの多孔膜層を作成し、これを四塩化チタン処理することにより酸化チタン光電極を作成した。
【0086】
(8−ii)<色素の吸着>
実施例1〜6で調製した色素を濃度が0.1〜0.5mMになるようにトルエンに溶解させ、この色素溶液に(8−i)で作成した酸化チタン光電極を室温で、18時間浸漬させて色素を酸化チタンに吸着させた。
色素を吸着させた後、光電極をトルエンで充分に洗浄し室温で乾燥して色素吸着酸化チタン光電極を得た。
【0087】
(8−iii)<固体電解質層の作成>
ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT、Rieke Metals.Inc. Mw=50000)をo-ジクロロベンゼンに溶解し、1 wt%溶液とした。この溶液を用いて、前記の(8−i)および(8−ii)で作成した色素吸着酸化チタン光電極上に、スピンコート法によりP3HT膜の電解質層を形成した。
【0088】
(8−iv)<Pt電極の形成、及び固体電解質を用いた色素増感型太陽電池の作成>
前記(8−iii)で作成した素子のP3HT上にPtをスパッタしPt電極を形成し、固体電解質を用いた色素増感型太陽電池を作成した。
使用した色素による固体電解質を用いた色素増感型太陽電池の性能を表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
なお表2中、Jsc、Voc、FFおよびEffは、それぞれ短絡電流密度、開放電圧、フィルファクターおよび変換効率を表し、効率比は、MK−2を色素として用いた太陽電池の変換効率に対する表2に記載の各実施例の化合物を色素として用いた太陽電池の変換効率の割合を示したものである。
【符号の説明】
【0091】
1・・・透明電極基材(光電極)
2・・・酸化チタン層
3・・・色素
4・・・電解液
5・・・スペーサー
6・・・Pt
7・・・電極基材(対極)
11・・・透明電極基材(光電極)
12・・・短絡防止層
13・・・酸化チタン層
14・・・色素
15・・・固体電解層
16・・・スペーサー
17・・・Pt
18・・・電極基材(対極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上記式(I)で表わさせるカルバゾール化合物からなることを特徴とする色素増感型太陽電池用色素;
【化1】

[但し、上記式(I)において、Xは、次式(a)、(b)および(c)よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の基を表わし、Yは次式(d)、(e)および(f)よりなる群から選ばれる一種類の基を表わし、nは1〜12のいずれかの整数である。
【化2】

【化3】

(但し、上記式(a)、(b)および(c)において、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基およびアルコキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の原子あるいは基を表わす。)]
【請求項2】
次式(I)で表わされるカルバゾール化合物を金属酸化物粒子に吸着させたカルバゾール化合物被覆金属酸化物粒子が金属製又は金属酸化物電極表面に配置された構成を有することを特徴とする色素増感型太陽電池用電極;
【化4】

[但し、上記式(I)において、Xは、次式(a)、(b)および(c)よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の基を表わし、Yは次式(d)、(e)および(f)よりなる群から選ばれる一種類の基を表わし、nは1〜12のいずれかの整数である。
【化5】

【化6】

(但し、上記式(a)、(b)および(c)において、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基およびアルコキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の原子あるいは基を表わす。)]
【請求項3】
表面を次式(I)で表わされるカルバゾール化合物で被覆されたカルバゾール化合物被覆金属酸化物粒子が電極表面に配置された透明電極を一方の電極とし、他方の電極として触媒電極を配置し、該透明電極と触媒電極との間に電解質が挟持されていることを特徴とする色素増感型太陽電池;
【化7】

[但し、上記式(I)において、Xは、次式(a)、(b)および(c)よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の基を表わし、Yは次式(d)、(e)および(f)よりなる群から選ばれる一種類の基を表わし、nは1〜12のいずれかの整数である。
【化8】

【化9】

(但し、上記式(a)、(b)および(c)において、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基およびアルコキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の原子あるいは基を表わす。)]
【請求項4】
前記電解質が固体電解質であることを特徴とする請求項第3項記載の色素増感型太陽電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−113863(P2012−113863A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260101(P2010−260101)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】