説明

色補正装置及び映像信号処理装置

【課題】 従来のものよりも小型化を図ることができる色補正装置及び映像信号処理装置を提供すること。
【解決手段】 色補正装置20は、9ビットの映像信号をRGB毎に入力して上位4ビットデータと下位5ビットデータとを分別する分別器30と、上位4ビットデータに基づいて色補正する色補正部40と、色補正部40から出力されるデータと分別器30から出力されるデータとを加算し、色補正された9ビットの映像信号をRGB毎に出力する加算器50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号の色補正を行う色補正装置及び映像信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の色補正装置は、例えば放送番組の制作において、画面に表示された映像に対し画面全体に渡って色相や彩度を変化させる処理(以下「色補正」という。)を行うものであり、特定の色を濃くしたり、画面全体の色を青っぽくしたりする目的で使用されている。例えば、RGB(赤緑青)の映像信号を入出力して色補正を行う場合は、基本的には図5に示すように色補正装置が構成され、式(1)に示された1次変換で色補正が行われる。
【数1】

【0003】
図5に示された色補正装置10は、入力される映像信号のゲインをRGB毎に補正するゲイン補正部1と、色補正された映像信号のゲインをRGB毎に補正するゲイン補正部2との間に設けられている。ゲイン補正部1の入力側には、例えば撮像装置、映像記録装置等が接続され、ゲイン補正部2の出力側には、例えば映像表示装置、映像記録装置等が接続される。
【0004】
RGB各色の映像信号のビット数は通常8ビットであり、ゲイン補正部1及び2は、それぞれ、8ビットの映像信号を入力し、出力する構成であるが、色補正装置10は、信号処理による精度の低下を避けるため9ビットの映像信号を入出する構成となっている。なお、映像信号を8ビットよりも少ないビット数、例えば6ビットで構成した場合は、なだらかに映像が変化している部分で偽輪郭などの画質低下を引き起こすこととなる。
【0005】
ゲイン補正部1及び2は、掛け算器で構成される。色補正装置10は、図6に示すように、9個の係数掛け算器11(11a〜11i)と、3個の加算器12(12a〜12c)とで構成される。係数掛け算器11a、11b及び11cには、それぞれ、式(1)に示された色補正係数C11、C21及びC31が入力される。同様に、係数掛け算器11d、11e及び11fには、それぞれ、色補正係数C12、C22及びC32が入力され、係数掛け算器11g、11h及び11iには、それぞれ、色補正係数C13、C23及びC33が入力される。
【0006】
色補正装置10は、9ビットの映像信号をRGB毎に入出力する構成なので、係数掛け算器11及び加算器12は、精度を確保するため10ビットの計算を行う構成となっている。また、0.5%の精度で色補正することを想定すると、係数掛け算器11a〜11iに入力される補正係数は、各8ビット必要となる。この色補正装置10は、従来、リニアマトリクスによる色補正装置として使用されており、例えば特許文献1の図5に示されているものと同様な構成である。
【0007】
前述のように従来の色補正装置10は構成されているので、係数掛け算器11が補正係数と映像信号の入力データとを掛け算し、掛け算されたデータを加算器12が式(1)に基づいてRGB毎に加算することによって、色補正された映像信号をRGB毎に出力することができるようになっている。
【0008】
【特許文献1】特許第3316054号公報(第2頁、第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の色補正装置は、ハードウェアとしては実現可能であるが、回路規模が大きくなるので、装置の小型化を図るのが困難であるという課題を有していた。以下具体的に説明する。
【0010】
図6に示された従来の色補正装置10の入力側において、RGB各色の9ビットの信号と、9個の色補正係数の8ビット信号とがあり、入力信号としては合計で99ビットとなる。また、色補正装置10の出力側において、RGB各色の9ビットの信号があり、出力信号としては27ビットとなる。したがって、色補正装置10が入出力する信号は合計で126ビットにもなるため、例えば1個のLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)で色補正装置10を構成して小型化することは極めて困難である。
【0011】
一方、小型化を図るため、9個の色補正係数に代えて色相及び彩度という機能によって簡易な色補正を対象とする色補正装置を構成することもできる。この場合、色相及び彩度を補正するための色補正係数をそれぞれ8ビットとすると、図7に示すように、色補正装置10の入力側は43ビット、出力側は27ビットのメモリ13で構成することができるが、このメモリ13の容量は約30テラバイトとなり現実的なものではない。
【0012】
さらに、今後は8ビットの映像信号よりも10ビットの映像信号の方が主流になると考えられ、その場合は、入力側は49ビット、出力側は33ビットのメモリで構成することとなってメモリの容量は約2300テラバイトとなり、ほぼ実現不可能となる。
【0013】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、従来のものよりも小型化を図ることができる色補正装置及び映像信号処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の色補正装置は、映像信号のビットデータを所定数の上位ビットデータと下位ビットデータとに分離するビットデータ分離手段と、前記上位ビットデータに基づいて色補正する色補正手段と、この色補正手段によって色補正されたデータと前記ビットデータ分離手段によって分離された前記下位ビットデータとから色補正された映像信号を生成する色補正信号生成手段とを備えた構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明の色補正装置は、色補正手段が上位ビットデータに基づいて色補正する構成としたので、全ビットデータを用いて色補正する従来のものよりも色補正手段の回路規模を縮小することができ、従来のものよりも小型化を図ることができる。
【0016】
本発明の映像信号処理装置は、複数の画素データを平均化する平均化手段と、平均化された前記複数の画素データから所定数の平均値データを抽出する平均値データ抽出手段と、前記平均値データに基づいて色補正する色補正装置と、この色補正装置によって色補正されたデータを前記平均化手段によって平均化された前記複数の画素データに内挿する色補正データ内挿手段とを備えた構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の映像信号処理装置は、色補正装置が、平均値データ抽出手段によって抽出された所定数の平均値データに基づいて色補正する構成としたので、全ての画素に対して色補正する従来のものよりも演算量を削減して回路規模を縮小することができ、従来のものよりも小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、従来のものよりも小型化を図ることができるという効果を有する色補正装置及び映像信号処理装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態の色補正装置の構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態の色補正装置20は、9ビットの映像信号をRGB毎に入力して上位4ビットデータと下位5ビットデータとに分別する分別器30と、上位4ビットデータに基づいて色補正する色補正部40と、色補正部40から出力されるデータと分別器30から出力されるデータとを加算する加算器50とを備えている。
【0022】
なお、図示を省略したが、本実施の形態の色補正装置20は、映像信号の入力側及び出力側に、それぞれ、例えば映像信号のゲインをRGB毎に調整するゲイン調整部を備えているものとする。そして、入力側のゲイン調整部は、例えば撮像装置から出力される8ビットの映像信号を9ビットの映像信号に変換して分別器30に出力し、出力側のゲイン調整部は、加算器50から9ビットの映像信号を入力して8ビットの映像信号に変換し、例えば映像記録装置に出力するものとする。
【0023】
ここで、分別器30が9ビットの映像信号を入力し、加算器50が9ビットの映像信号を出力する構成、すなわち色補正装置20が9ビットデータをRGB毎に処理する構成としたのは、以下の理由による。
【0024】
RGB各色の映像信号は、一般的には8ビットデータが用いられ、"0"〜"255"の値で表されるが、色補正の処理において8ビットのままでは映像表示の精度が劣化してしまう場合がある。例えば、入力されたRGB各色の値がそれぞれ"250"、"200"及び"180"で、式(1)に示されたRの色補正係数C11、C12及びC13がそれぞれ"0.9"、"0.1"及び"0.1"の場合は、Rの値は"263"となり8ビットで表現できない数値となる。
【0025】
したがって、色補正装置20から出力されるRGB各色のデータを8ビットで表現する場合には、入力されるRGB各色のデータを予め小さくしておく処理が必要となり、その結果、入力されるRGB各色で表される映像よりも表示精度が劣化した映像が得られることになる。そのため、色補正装置20が9ビットデータをRGB毎に処理する構成として表示精度の劣化を防止するようにしている。
【0026】
分別器30は、図2に示すように、入力される9ビットの映像信号のビットデータから上位4ビットデータを取得する上位ビット取得部31と、上位ビット取得部31から出力されるデータを32倍する掛け算器32と、9ビットの映像信号のビットデータから掛け算器32の算出結果のデータを減算する減算器33とを備えている。
【0027】
なお、分別器30は、本発明のビットデータ分離手段を構成している。また、特許請求の範囲に記載の映像信号のビットデータを所定数の上位ビットのデータと下位ビットのデータとに分離するとは、例えば9ビットの映像信号のビットデータを、例えば4ビットの上位ビットデータと、5ビットの下位ビットデータとに分離することをいう。
【0028】
上位ビット取得部31は、例えば映像信号のビットデータを32で割り算し、その結果の整数部分を取り出すことによって、映像信号のビットデータから上位4ビットデータを取得するようになっている。
【0029】
掛け算器32は、上位ビット取得部31によって取得された上位4ビットのデータを32倍して9ビットデータに換算し、減算器33に出力するようになっている。なお、掛け算器32の倍率は、上位ビット取得部31に入力されるデータのビット数と、上位ビット取得部31が出力するデータのビット数に応じて変更できるようになっている。
【0030】
減算器33は、9ビットの映像信号のビットデータから掛け算器32の算出結果の9ビットデータを減算した差分データ、すなわち映像信号の下位5ビットデータを出力するようになっている。
【0031】
色補正部40は、例えばメモリで構成され、図3に示すように、RGBの各信号値と色補正係数とを掛け算する係数掛け算器41(41a〜41i)と、掛け算された結果のデータを加算する加算器42(42a〜42c)と、加算器42から出力されるデータを32倍する掛け算器43(43a〜43c)とを備えている。本実施の形態において色補正部40は、4ビットの信号を入力し、9ビットの信号を出力するようになっているので、係数掛け算器41及び加算器42は、計算精度を確保するため5ビットで動作するようになっている。なお、色補正部40は、本発明の色補正手段を構成している。
【0032】
係数掛け算器41は、分別器30から出力されるRGB各色の上位4ビットデータと、色相及び彩度をそれぞれ補正するための各8ビットの色補正係数とをそれぞれ入力するようになっている。そして、係数掛け算器41は、RGB各色の上位4ビットデータと、色相及び彩度に基づいた色補正係数C11〜C33とを掛け算するようになっている。
【0033】
具体的には、係数掛け算器41a〜41cには、それぞれ、色補正係数C11、C21及びC31が入力される。係数掛け算器41d〜41fには、それぞれ、色補正係数C12、C22及びC32が入力される。係数掛け算器41g〜41iには、それぞれ、色補正係数C13、C23及びC33が入力される。
【0034】
加算器42は、係数掛け算器41が掛け算した結果のデータをRGB毎に加算するようになっている。例えば、加算器42aは、係数掛け算器41a、41d及び41gが、RGB各色の信号値と、色補正係数C11、C12及びC13とをそれぞれ掛け算した結果を加算し、Rの色補正後の信号を4ビットデータで掛け算器43に出力する。
【0035】
掛け算器43は、加算器42から出力される4ビットデータを32倍して9ビットデータに変換するようになっている。ここで、掛け算器43の倍率を"32"としたのは、前述のように色補正部40がRGB毎に4ビットデータを入力して9ビットデータを出力する構成としたからである。したがって、掛け算器43の倍率は、色補正部40に対して入出力されるRGB毎のビット数に応じて設定されるようになっている。例えば、色補正部40がRGB毎に5ビットデータを入力して9ビットデータを出力する構成の場合は、掛け算器43の倍率は"16"となる。
【0036】
図1に戻り、加算器50は、分別器30から出力される9ビットの差分データと、色補正部40から出力される9ビットデータとを加算して、色補正された9ビットデータをRGB毎にそれぞれ出力するようになっている。なお、加算器50は、本発明の色補正信号生成手段を構成している。
【0037】
次に、色補正部40の出力値を数式で説明する。
【0038】
まず、式(1)を書き換えて式(2)を得る。
【数2】

【0039】
ここで、色補正係数C14、C24及びC34(以下「C14〜C34」と記す。)は、それぞれ、"C11−1"、"C22−1"及び"C33−1"を表している。通常は、入力された映像信号を大幅に色補正することはないので、色補正係数C11、C22及びC33(以下「C11〜C33」と記す。)に対して、色補正係数C12、C13、C21、C23、C31及びC32(以下「C12〜C32」と記す。)は十分に小さい値である。例えば、色補正係数C11〜C33は通常"1"に近い値であるが、色補正係数C12〜C32の絶対値は通常"0.1"以下である。また、色補正係数C11〜C33は"1"に近い値なので、色補正係数C14〜C34の絶対値も通常"0.1"以下である。
【0040】
次に、分別器30から色補正部40に入力されるR、G及びBの値をそれぞれ[Rin]、[Gin]及び[Bin]とし、色補正部40が出力するR、G及びBの値をそれぞれRout'、Gout'及びBout'と表記すると、色補正部40の出力は次式で示される。
【数3】

【0041】
次に、本実施の形態の色補正装置20の動作について説明する。
【0042】
まず、分別器30によって、映像信号の9ビットデータがRGB毎にそれぞれ入力される。入力されたRGB各色の9ビットデータは、RGB各色の入力ラインに接続された分別器30に含まれる上位ビット取得部31によって、上位4ビットデータがRGB毎に取得され、掛け算器32及び色補正部40に出力される。
【0043】
具体的には、例えばRの映像信号として"180"のデータが分別器30に入力された場合、上位ビット取得部31は、"180"を32で割り算し、その結果から整数部分のみ取り出して"5"を得る。これは、"180"を表す9ビットの2進数"010110100"から上位4ビットの"0101"を取得したことと等価である。
【0044】
次いで、掛け算器32によって、上位ビット取得部31が取得した上位4ビットデータがRGB毎に32倍される。例えば、前述のように上位ビット取得部31が"5"を得た場合は、掛け算器32は、"5"を32倍した"160"を得る。"160"を9ビットの2進数で表すと"010100000"である。
【0045】
さらに、減算器33によって、分別器30に入力された映像信号の9ビットデータから掛け算器32の出力データがRGB毎に減算され、差分データとして出力される。例えば、前述のように"180"のデータが分別器30に入力された場合、減算器33は、"180"から"160"を減算して"20"を取得し、この結果を差分データとして加算器50に出力する。"20"を9ビットの2進数で表すと"000010100"である。
【0046】
引き続き、色補正部40によって、RGB各色の上位4ビットデータに基づいて、式(2)により色補正が行われる。
【0047】
具体的には、まず、係数掛け算器41によって、RGB各色の上位4ビットデータと、色相及び彩度を補正するための各8ビットの色補正係数とがそれぞれ入力され、RGB各色の上位4ビットデータと、色相及び彩度に基づいて定められた色補正係数C14〜C34及びC12〜C32(式(2)参照。)とが掛け算される。
【0048】
次いで、加算器42によって、係数掛け算器41から出力される掛け算の結果のデータがRGB毎に加算される。例えば、加算器42aは、係数掛け算器41a、41d及び41gの掛け算結果のデータを加算して、Rの4ビットデータを出力する。
【0049】
次いで、掛け算器43によって、加算器42から出力される4ビットデータがRGB毎にそれぞれ32倍されて9ビットデータに変換される。
【0050】
そして、加算器50によって、分別器30が出力した9ビットの差分データと、色補正部40が出力した9ビットデータとが加算され、加算されたデータは、色補正された9ビットデータとして出力される。
【0051】
ここで、本実施の形態の色補正装置20の出力と、従来の色補正装置の出力との誤差について説明する。前述のように、本実施の形態の色補正装置20の出力は式(3)で示される。一方、従来の色補正装置の出力は式(2)で示される。したがって、式(2)及び式(3)より、本実施の形態の色補正装置20による色補正の誤差は次式で示される。
【数4】

【0052】
ここで、右辺第1項の色補正係数C14〜C34及びC12〜C32の絶対値は前述のように"0.1"以下である。また、右辺第2項は、上位4ビットを32倍したデータと9ビットのデータとの差であるので最大で"31"となり、この値は9ビットで表される数値の最大値"511"の値の10%以下である。ゆえに、式(4)で示される誤差は1%以下となる。一般に人間の視覚で検知できる誤差は3%程度なので、1%以下の誤差を人間は検知できない。したがって、人間の視覚特性上において、本実施の形態の色補正装置20による色補正は、従来の色補正装置によるものと同等である。
【0053】
次に、式(4)に具体的な数値を代入して誤差を算出する。例として、RGB各色の映像信号のデータをそれぞれ"180"、"170"及び"150"とし、C14、C12及びC13がそれぞれ"−0.1"、"0.1"及び"0.1"の場合におけるRの映像信号の誤差(Rout'−Rout)を算出する。
【0054】
まず、RGB各色の映像信号のデータは、それぞれ"180"、"170"及び"150"であるので、分別器30によって出力されるRGB各色の上位4ビットのデータは、それぞれ"5"、"5"及び"4"である。したがって、[Rin]="5"、[Gin]="5"、[Bin]="4"となり、32[Rin]−Rin="−20"、32[Gin]−Gin="−10"及び32[Bin]−Bin="−22"が得られる。
【0055】
ゆえに、誤差(Rout'−Rout)="2"+"−1"+"−2.2"="−1.2"となる。この値は、9ビットで表される数値の最大値"511"に対し、約0.2%である。
【0056】
次に、色補正部40の回路規模について説明する。
【0057】
図1において、色補正部40の入力側は、RGB各色の4ビットデータと、色相及び彩度をそれぞれ補正するための各8ビットの色補正係数とが入力される構成となっているので、色補正部40の入力側は合計28ビットである。一方、色補正部40の出力側は、RGB各色の9ビットデータを出力する構成となっているので、出力側は合計27ビットである。したがって、色補正部40に必要とされる容量は約900メガバイトとなり、容易に実現できる値となるので、本実施の形態の色補正装置20は、従来のものよりも小型化を図ることができる。
【0058】
さらに、例えば10ビットの映像信号の色補正において、色補正部40が例えばRGB各色の5ビットデータを入力し、RGB各色の11ビットデータを出力する構成とした場合は、色補正部40の入力側は合計31ビット、出力側は合計33ビットとなるので、色補正部40に必要とされる容量は約8.9ギガバイトとなり、十分実現可能な値となるので、本実施の形態の色補正装置20は、8ビットを超える映像信号を色補正する場合でも、従来のものよりも小型化を図ることができる。
【0059】
すなわち、前述のように、通常の色補正では補正量は小さく、大幅に色を変更する用途はほとんどないという点と、人間の視覚特性では数パーセント程度以下の誤差の認識は困難であるという点とを利用し、本実施の形態の色補正装置20は、従来のものと同等な色補正ができ、しかも従来のものよりも小型化を図ることができるものである。
【0060】
以上のように、本実施の形態の色補正装置20によれば、分別器30は、入力された映像信号のビットデータを上位4ビットデータと下位5ビットデータとに分別し、色補正部40は、上位4ビットデータに基づいて色補正し、加算器50は、色補正された上位4ビットデータと、分別器30からの下位5ビットデータとを加算する構成としたので、色補正部40の回路規模を従来のものよりも縮小することができ、装置全体の小型化を図ることができる。
【0061】
なお、前述の実施の形態において、色補正装置20が9ビットの映像信号をRGB毎に入出力する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば11ビットの映像信号をRGB毎に入出力する構成としても同様の効果が得られる。
【0062】
また、前述の実施の形態において、色補正部40が、映像信号の上位4ビットデータを入力して色補正する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば上位3ビット、上位6ビット等のデータを入力して色補正する構成としてもよい。この場合、式(4)で算出される誤差と回路規模との関係を考慮して、色補正部40に入力する上位ビットデータのビット数を決定するのが好ましい。
【0063】
また、前述の実施の形態において、ハードウェアによる構成を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ソフトウェアによって色補正処理を行う構成としてもよい。この場合、前述の色補正装置20に対応するものとしてルックアップテーブルが構成される。
【0064】
(第2の実施の形態)
まず、本発明の第2の実施の形態の映像信号処理装置の構成について説明する。なお、本実施の形態の映像信号処理装置は、例えば1920×1080画素で構成された入力映像のデータをRGB毎に入力し、入力映像全体の色補正を行う装置である。また、以下の記載において、「N×M画素」の表記は、水平方向がN画素、垂直方向がM画素の構成を表すものとする。
【0065】
図4に示すように、本実施の形態の映像信号処理装置60は、N×M画素のデータを入力して平均値を算出するLPF(Low Pass Filter)61(61a〜61c)と、N×M画素のデータから平均値を減算する減算器62(62a〜62c)と、N×M画素のデータをサンプリングするサンプリング回路63(63a〜63c)と、平均値に基づいて色補正する色補正装置20と、色補正装置20によって色補正されたデータを内挿する内挿回路64(64a〜64c)と、減算器62からのデータと内挿回路64からのデータとを加算する加算器65(65a〜65c)とを備えている。
【0066】
なお、以下の記載において説明を簡略化するため、映像信号処理装置60が4×4画素のデータを入力して処理する例を挙げる。また、本実施の形態において、入力される各画素のデータは、それぞれ9ビットデータとするが、これに限定されるものではない。
【0067】
LPF61は、例えば4×4画素の9ビットデータを入力し、16個の画素データを平均化して16個の画素の平均値データを出力するようになっている。なお、LPF61は、本発明の平均化手段を構成している。
【0068】
減算器62は、入力されたN×M画素のデータからN×M画素の平均値データを減算し、その差分をN×M画素の差分データとして出力するようになっている。
【0069】
サンプリング回路63は、N×M画素の平均値データからN/4×M/4画素の平均値データをサンプリングするようになっている。なお、特許請求の範囲に記載の所定数の平均値データとは、本実施の形態に係るN/4×M/4画素の平均値データをいう。
【0070】
例えば4×4画素の平均値データがLPF61に入力された場合、サンプリング回路63は、16画素分の平均値データから1画素分の平均値データを取り出して出力する。なお、サンプリング回路63は、本発明の平均値データ抽出手段を構成している。
【0071】
色補正装置20は、本発明の第1の実施の形態で説明したように構成されており、N/4×M/4画素の平均値データをRGB毎に入力して色補正するようになっている。例えば4×4画素の平均値データがLPF61に入力された場合、色補正装置20は、4×4画素の画素中1個の画素を代表点として色補正するものである。
【0072】
したがって、1920×1080画素で構成された入力映像を対象として色補正する場合、色補正装置20は、この入力映像の水平方向及び垂直方向のサイズがそれぞれ1/4ずつ縮小された480×270画素の映像を色補正することになり、入力映像の全画素に対して色補正する従来のものよりも、1/16の演算量で色補正が実現できることとなる。
【0073】
内挿回路64は、色補正されたN/4×M/4画素の平均値データをN×M画素のデータに内挿するようになっている。なお、内挿回路64は、本発明の色補正データ内挿手段を構成している。
【0074】
加算器65は、減算器62から出力されるN×M画素の差分データと、内挿回路64から出力されるN×M画素のデータとを加算し、色補正されたN×M画素のデータを出力するようになっている。
【0075】
次に、本実施の形態の映像信号処理装置60の動作について説明する。なお、本発明の第1の実施の形態に係る色補正装置20の動作の説明と重複する説明は省略する。
【0076】
まず、LPF61によって、N×M画素のデータがRGB毎に入力され、低域周波数成分が抽出されて平均化され、N×M画素の平均値データがRGB毎に取得される。
【0077】
具体的には、例えば、4×4画素のRデータがLPF61aに入力された場合、LPF61aによって、16画素分のRデータの平均値が取得され、減算器62a及びサンプリング回路63aに出力される。
【0078】
次いで、減算器62によって、N×M画素の入力データからN×M画素の平均値データがRGB毎に減算され、N×M画素の差分データとしてRGB毎に加算器65に出力される。
【0079】
さらに、サンプリング回路63によって、N×M画素の平均値データからN/4×M/4画素の平均値データがRGB毎にサンプリングされる。
【0080】
引き続き、色補正装置20によって、N/4×M/4画素の平均値データがRGB毎に色補正される。例えば、LPF61に4×4画素の9ビットデータが入力された場合は、色補正装置20には1個の平均値データがサンプリング回路63から入力され、色補正装置20によって、入力された平均値データの例えば上位4ビットデータでRGB毎に色補正が実行された後、色補正された9ビットデータがRGB毎に内挿回路64に出力される。
【0081】
次いで、内挿回路64によって、N/4×M/4画素の色補正された9ビットデータがN×M画素のデータに内挿される。例えば、前述のように色補正装置20によって1個の平均値データが色補正された場合は、その平均値データで4×4画素のデータが補完されることになり、4×4画素のデータのそれぞれは、色補正された1個の平均値データと同一になる。
【0082】
そして、加算器65によって、減算器62から出力される差分データと、内挿回路64から出力されるN×M画素のデータとがRGB毎に加算され、色補正されたN×M画素のデータがRGB毎に出力される。
【0083】
以上のように、本実施の形態の映像信号処理装置60によれば、色補正装置20は、所定数の画素の平均値データに基づいて色補正処理を行い、内挿回路64は、色補正されたデータを内挿する構成としたので、全ての画素に対して色補正する従来のものよりも演算量を削減して回路規模を縮小することができ、従来のものよりも小型化を図ることができる。
【0084】
なお、前述の実施の形態において、N×M画素の9ビットデータをRGB毎に入出力する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば11ビットの映像信号をRGB毎に入出力する構成としても同様の効果が得られる。
【0085】
また、前述の実施の形態において、色補正装置20が色補正処理を行う割合をN×M画素に対して1/4×1/4とする構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば1/2×1/2、1/6×1/6等の割合で色補正処理を行う構成としてもよい。また、RGB毎に画素数が異なる映像信号を処理する場合は、色補正装置20が色補正処理を行う割合をRGB毎に変更すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る色補正装置のブロック図
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る分別器のブロック図
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る色補正部のブロック図
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る映像信号処理装置のブロック図
【図5】従来の色補正装置のブロック図
【図6】従来の色補正装置に係る色補正部のブロック図
【図7】従来の色補正装置に係る色補正部の入出力ビット数の説明図
【符号の説明】
【0087】
20 色補正装置
30 分別器(ビットデータ分離手段)
31 上位ビット取得部
32 掛け算器
33 減算器
40 色補正部(色補正手段)
41(41a〜41i) 係数掛け算器
42(42a〜42c) 加算器
43(43a〜43c) 掛け算器
50 加算器(色補正信号生成手段)
60 映像信号処理装置
61(61a〜61c) LPF(平均化手段)
62(62a〜62c) 減算器
63(63a〜63c) サンプリング回路(平均値データ抽出手段)
64(64a〜64c) 内挿回路(色補正データ内挿手段)
65(65a〜65c) 加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号のビットデータを所定数の上位ビットデータと下位ビットデータとに分離するビットデータ分離手段と、前記上位ビットデータに基づいて色補正する色補正手段と、この色補正手段によって色補正されたデータと前記ビットデータ分離手段によって分離された前記下位ビットデータとから色補正された映像信号を生成する色補正信号生成手段とを備えたことを特徴とする色補正装置。
【請求項2】
複数の画素データを平均化する平均化手段と、平均化された前記複数の画素データから所定数の平均値データを抽出する平均値データ抽出手段と、前記平均値データに基づいて色補正する請求項1に記載の色補正装置と、この色補正装置によって色補正されたデータを前記平均化手段によって平均化された前記複数の画素データに内挿する色補正データ内挿手段とを備えたことを特徴とする映像信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−217043(P2006−217043A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25184(P2005−25184)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】