説明

芝刈機

【課題】
芝刈り作業時、本体に負荷を掛けずに刈込まれた芝がスムーズに集草され、更に仕上がりがきれいに刈込め、捨てられる芝の量を削減出来る芝刈機を提供することである。
【解決手段】
解決手段は、本体の斜め後方に位置するハンドルを有し、ハンドルを保持してモータ軸に連動した回転刃11の回転と固定刃16の摺り合わせによって芝の刈込みを行う芝刈機1において、回転刃11と固定刃16の進行方向後方に第二回転刃13と第二固定刃17を設け、第二回転刃13を第一回転刃11に対して刈込み高さがaだけ低くなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝の刈込みを行う芝刈機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の芝刈機は、本体の斜め後方上部に前後方向に対して回転自在に枢支したハンドルを有し、該ハンドルを保持して前方に押すようにして本体を地面に沿って走行させ、モータ軸の回転に連動した回転刃、または該回転刃と固定刃の摺り合せによって芝が刈込まれ、該芝は排出路のダストカバ部の傾斜に沿って本体後部の排出口から集草バッグに送られる構造なっている。
【0003】
また、刈込み作業は、本体に負荷を掛けずに刈込まれた芝がスムーズに集草され、更に仕上がりがきれいに行えるように、初めに刈込み高さ調整を高い位置にセットして刈込み、順次短く刈込むことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−103634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように構成された芝刈機は、刈込み作業を行なう際に刈込み高さを調整しながら何度も刈込みをしなければならないため、必然と作業時間が増えていた。
そのため、長い芝でも一度に短く刈込む場合が多くなり、芝が詰まって排出され難かった時には機能が低下し本体に負荷が掛かっていた。
また、このようにして刈込まれた芝は長くてかさばるので、集草バッグがすぐに満杯になり芝捨て回数が増えるのと同時にゴミの量を増やしていた。
更に、芝の長さは均一でないので、一回の刈込みではきれいに刈り整えるのは困難であるという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、刈込み作業時、本体に負荷を掛けずに刈込まれた芝がスムーズに集草され、更に仕上がりがきれいに刈込め、捨てられる芝の量を削減出来る芝刈機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、モータを保持し、底部に車輪を備えた本体と、前記本体の進行方向後方側上部に位置するハンドルと、前記本体の後方に設けられ、集草バッグと接続される吐出部と、前記モータにより駆動される第一回転刃と、前記第一回転刃を有する第一切断部と、前記第一回転刃と進行方向で異なる位置に設けられた第二回転刃と、前記第二回転刃を有し、前記第一切断部による切断高さより低い第二切断部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、最初に刈込み高さが高い回転刃で刈込み、次に少し低い刈込み高さの回転刃で刈込むので刈込まれた芝の長さが短くなり、刈込まれた芝はスムーズに排出口から集草バッグに送ることが出来るようになる。
また、刈込まれた芝の長さを短く出来るので、集草バックが満杯になり難く、芝捨て回数とゴミの量を減らすことが出来る。
更に2枚の回転刃によって通常1回分の刈込み作業で2回分刈込んでいるので、効率良く、仕上がりをきれいに刈込みすることでが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る芝刈機を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る芝刈機の本体の部分断面側面図。
【図3】本発明の実施形態に係る芝刈機での使用状態説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の芝刈機の一実施形態を図1〜図3に従い説明する。
【0011】
図1は本発明の実施形態に係る芝刈機の全体図、図2は本発明の実施例の芝刈機の本体の部分断面側面図、図3は本発明の実施例の芝刈機での芝刈り状態図である。
【0012】
芝刈機1は、底部の前後に地面と接地する車輪を備えた本体2と、本体の斜め後方上方に前後方向に対して回転自在に枢支されたハンドル3と、本体2の後端に取り付けられる集草バッグと、を有する。作業者は、本体後方側よりハンドル3を把持した状態で芝刈機1を押すことで作業を行えるよう構成されている。なお、特に断らない限り、図2における左方、右方を、それぞれ芝刈機1の前方、後方とする。
【0013】
本体2は、前方底部の左右に取り付けられた前輪12と、後方底部に取り付けられたローラ22と、内部に積載されるモータ7と、底面に露出して設けられる回転刃・固定刃と、を備えている。左右の前輪12は連結部によって接続され、連結部にはレバー21が取り付けられている。
【0014】
本体2の前方下方には、芝草等を導入する開口部28が形成され、後方には、刈り取った芝を集草バッグ19に排出するための吐出部18が形成されている。
【0015】
レバー21は、前輪12の中央に取り付けられ、本体2の前方側中央の開口より突出して操作可能に設けられており、レバー21を操作することにより本体2に対する前輪12の高さ位置を変更することができるよう設けられている。これにより、本体に取り付けられた回転刃と地面との距離、即ち刈込高さを調節することが可能である。
【0016】
モータ7は、本体2に対して進行方向と垂直方向に出力軸を有するよう横置きに配置され、出力軸にはプーリ8が固定されている。モータ7は、電源コード6と図示しない配線により電気的に接続されており、ハンドル3の操作により電力が供給されるよう構成されている。
【0017】
ハンドル3は、伸縮自在に設けられ、本体2と接続される側と反対側に作業者が把持可能な操作部を備えている。ハンドル3において、セフティスイッチ4を押しながらスイッチ5を押すことにより、電源コード6からモータ7に電力を供給可能に構成されている。
【0018】
プーリ8は、外周面に溝が形成され、内周面に溝が形成された第一ベルト9が取り付けられている。
【0019】
第一回転刃11は、螺旋状の刃を複数条組み合わせて円筒状に形成される所謂リール式回転刃であり、中心に回転軸31を備えて構成されている。回転軸31は、第一回転刃11の両端部に突出して構成され、軸受を介して本体2に回転可能に支持されている。回転軸31の端部にはプーリ10が固定されている。プーリ10には、モータ7の出力軸37に取り付けられる第一ベルト9が取り付けられ、モータ7の駆動により第一回転刃11が従動可能に構成されている。また、プーリ10には、第二ベルト14が取り付けられている。
【0020】
第一固定刃16は、鉄等の金属により板状に形成され、本体2にボルトにより固定されている。第一回転刃11は第一固定刃16に対して接触しながら回転可能な位置に配置されている。また、第一固定刃16の取り付けにおいて、本体2の図示しないサイドカバーを取り外し、固定刃16と本体2との接続部のすき間を変更することにより、第一回転刃11とのすり合わせを調節することが可能である。
【0021】
第一回転刃11と第一固定刃16とは、それぞれが接触する切断部26の高さ(切断高さ)で切断を行えるよう構成されており、すり合わせにより鋏切ることで芝草の除去を行う一対の切断部(第一切断部)としてそれぞれ構成されている。
【0022】
第二回転刃13は、第一回転刃11より本体後方側に設けられ、螺旋状の刃を複数条組み合わせて円筒状に形成される所謂リール式回転刃であり、中心に回転軸33を備えて構成されている。回転軸33は、第二回転刃13の両端部に突出して構成され、軸受を介して本体に回転可能に設けられている。回転軸33の端部にはプーリ15が固定されている。プーリ15には、プーリ15に一端が取り付けられる第二ベルト14が取り付けられ、第一回転刃に取り付けられたプーリ10の回転力がプーリ15に伝達され、第二回転刃13が従動可能に構成されている。
【0023】
第二固定刃17は、鉄等の金属により板状に形成され、本体2にボルトにより固定されている。第二回転刃13は固定刃17に対して回転可能な範囲で接触するよう配置されている。
【0024】
第二回転刃13と第二固定刃17とは、それぞれが接触する切断部27の高さ(切断高さ)で切断を行えるよう構成されており、すり合わせにより鋏切ることで芝草の除去を行う一対の切断部(第一切断部)としてそれぞれ構成されていると共に、第一回転刃11と第一固定刃16とから構成される切断部26より低い位置に設けられている。
【0025】
尚、モータ7は第一回転刃11と第二回転刃13との間に位置するよう配置されており、本体2をコンパクトに構成することが可能となっている。
【0026】
芝刈機1は本体2の斜め後方上方に前後方向に対して回転自在に枢支したハンドル3を有し、該ハンドル3のセフティロックスイッチ4を押しながらメインスイッチ5を入れることにより、電源コード6により電力が本体2に内蔵のモータ7に供給され、モータ7軸の回転がモータ7軸に直結されたプーリ8とベルト9によって連結された中間プーリー10に直結された第一回転刃11が前輪12と第二回転刃13の間で追従して回転するように構成され、更に中間プーリー10とベルト14によって連結されたプーリ15に直結された第二回転刃13が追従して回転し、第一固定刃16と第二固定刃17は、各々第二回転刃11、第二回転刃13の回転に摺り合わせ調整可能に構成されている。
【0027】
第一回転刃11は第二回転刃13に対して刈込み高さがaだけ高くなるように構成している。尚、第一回転刃11と第二回転刃13とは、外径が各々異なるよう構成されている。特に、進行方向後方に設けられた第二回転刃13の径は、第一回転刃11の径より大きく、集草バッグに近い側の風量を大きくとることができるため、集草率が向上すると共に、芝刈機1を小型化することができる。
【0028】
前述のように構成された芝刈機1での刈込み作業としては、作業者が芝刈機1の後方でハンドル3を把持してスイッチ5を押し、モータ7を駆動させる。この状態で進行方向の前方に移動することで、図3に示すように開口部28から導入された長い芝Wが最初に第一回転刃11と第一固定刃16の刃物の摺り合わせによって地面からの高さbの高さに刈込まれ、更に第二回転刃13と第二固定刃17の刃物の摺り合わせによって地面からの高さcの高さに刈込まれるようになり、刈られた芝が第一回転刃11と第二回転刃13の回転によって生じた風dが排出口18から本体2後方の集草バッグ19に流れることで集められる。
【0029】
このように構成された芝刈機によれば、モータ7を保持し、底部に車輪を備えた本体2と、本体2の進行方向後方側上部に位置するハンドル3と、本体2の後方に設けられ、集草バッグ19と接続される吐出部18と、本体2の前方下部に形成された開口部28と、モータ7により駆動する第一回転刃11と、第一回転刃11を有する第一切断部26と、第一切断部26と進行方向で異なる位置に設けられた第二回転刃13と、第二回転刃13を有し、第一切断部26による切断高さより低い第二切断部27による切断高さとを備えることを特徴としており、このようにすれば、2枚の回転刃によって通常1回分の刈込み作業で2回分刈込んでいるので、効率良く、仕上がりをきれいに刈込みすることでが出来るようになる。更に、本体2から排出される芝草がより細かく切断されるため、より多くの芝草を集草バッグに収容することができ、作業効率を向上させることができる。
【0030】
また、第一回転刃11と第二回転刃13とは、各々独立した回転軸31、33を有するため、第一回転刃11による切断時の影響を第二回転刃13が受けにくく、芝草等を効果的に切断することが可能となる。尚、第一切断部26と第二切断部27とは前後方向に離間していることが望ましい。
【0031】
また、第一回転刃11と第二回転刃13とは、各々共通の駆動源により駆動されるため、積載する駆動源(モータ7)が一つで済むため、構成を簡単化することができる。尚、各々に取付けられたプーリベルト等により伝達されていることが望ましい。また、第一回転刃11と第二回転刃13とは各々モータ7の回転軸に直結でないことが望ましく、このようにすれば、モータ7にかかる負荷を抑制することができる。
【0032】
第一回転刃11若しくは第二回転刃13は、本体2に固定された固定刃16,17とすり合わせられることで切断を行うため、比較的低い回転数で芝草等の切断を行うことができ、切断時に芝が倒れてしまうことを抑制することができる。
【0033】
また、第一回転刃11若しくは第二回転刃13は、リール式回転刃であるため、本実施形態のように複数の切断部を備えた構成であっても本体2が前後方向に大型化するのを抑制することができる。特に、リール式回転刃は刈込時に一度芝を起こす役割も果たすことから、後方の第二回転刃13による刈り込みをより効率的に行うことができる。
【0034】
また、第一切断部と第二切断部とは、一つの操作により同時に本体に対する刈込高さが調整可能に構成されているため、操作を簡略化することができると共に、第一切断部と第二切断部の高さの差を保持したまま、刈込高さの調整を行うことが可能となる。
【0035】
以上、本発明を示す実施形態に基づき説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、高さの異なる二つの切断部を備えた構成としたが、三つ以上の切断部を備えて構成されていてもよい。
【0036】
また、本発明の実施形態では第一の切断部と第二の切断部の駆動源を共通とし、ベルトにより動力の伝達を行うものとしたが、切断部が各々別の駆動源により駆動されるようにしてもよい。
【0037】
また、本発明の実施形態ではリール式の回転刃により構成したが、ロータリ式回転刃により構成されていてもよく、ロータリ式回転刃とリール式回転刃をそれぞれ有する構成としてもよい。尚、ロータリ式回転刃を設ける場合、回転数を上昇させることで発生する風により芝草が倒れる可能性があるため、固定刃と回転刃からなる鋏式であることが望ましい。
【0038】
また、実施形態では第一切断部及び第二切断部の切断高さを同時に調節できる構成としたが、各々を別途調節できるようにしてもよい。このようにすれば、各々の切断部の切断高さの差も調節することができ、即ち間隔cを調節することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…芝刈機、2…本体、3…ハンドル、4…セフティロックスイッチ、5…メインスイッチ、6…電源コード、7…モータ、8…プーリ、9…ベルト、10…中間プーリ、11…第一回転刃、12…前輪、13…第二回転刃、14…ベルト、15…プーリ、第一16…固定刃、17…第二固定刃、18…排出口、19…集草バッグ、a…距離、b…距離、c…距離、d…風である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを保持し、底部に車輪を備えた本体と、
前記本体の進行方向後方側上部に位置するハンドルと、
前記本体の後方に設けられ、集草バッグと接続される吐出部と、
前記モータにより駆動される第一回転刃と、
前記第一回転刃を有する第一切断部と、
前記第一回転刃と進行方向で異なる位置に設けられた第二回転刃と、
前記第二回転刃を有し、前記第一切断部による切断高さより低い第二切断部と、
を備えることを特徴とする芝刈機。
【請求項2】
前記第二切断部は、前記第一切断部より前記本体の後方側に設けられていることを特徴とする請求項1の芝刈機。
【請求項3】
前記第一回転刃と前記第二回転刃とは、外径が各々異なるよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載の芝刈機。
【請求項4】
前記第一回転刃と前記第二回転刃とは、各々独立した回転軸を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項5】
前記第一回転刃と前記第二回転刃とは、各々共通の駆動源により駆動されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項6】
前記第一若しくは前記第二回転刃は、本体に固定された固定刃とすり合わせられることで切断を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項7】
前記第一若しくは前記第二回転刃は、リール式回転刃であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項8】
前記第一切断部と前記第二切断部とは、一つの操作により同時に本体に対する刈込高さが調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のうち何れか一項に記載の芝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−211967(P2011−211967A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83521(P2010−83521)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】