説明

花粉荷を有効成分とする骨量増進組成物

【課題】骨疾患を予防・治療することができる顕著な効果を有する骨量増進組成物、より詳しくは、骨形成促進組成物や、骨吸収抑制組成物や、骨疾患の予防・治療薬や、骨疾患の予防・治療用機能性食品又は食品素材や、機能性飼料又は飼料素材を提供すること。
【解決手段】クローバー、ダイコン、シスタス、ナタネ、茶、ソバ等の花粉荷又は花粉荷処理物、特に水又はエタノールにより抽出した花粉荷抽出物を有効成分とする骨量増進組成物、より詳しくは、骨形成促進組成物、骨吸収抑制組成物、骨疾患の予防・治療薬、又は花粉荷又は花粉荷処理物、特に水又はエタノールにより抽出した花粉荷抽出物を配合・添加した骨疾患の予防・治療用機能性食品若しくは食品素材或いは骨疾患の予防・治療用機能性飼料若しくは飼料素材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有する骨量増進組成物、より詳しくは、骨形成促進組成物や、骨吸収抑制組成物や、骨粗鬆症等の骨疾患の予防・治療薬や、骨粗鬆症等の骨疾患の予防・治療用機能性食品又は食品素材や、動物の骨疾患の予防・治療用機能性飼料又は飼料素材に関する。
【背景技術】
【0002】
骨の代謝異常や骨形成不全等により、骨中のカルシウム量の減少などが生じて、種々の骨疾患が起こると考えられており、骨疾患の代表として骨折、骨軟化症、骨減少症、骨粗鬆症、腰背痛等が知られている。特にこれら骨疾患の中でも骨粗鬆症は、加齢による骨吸収と骨形成のバランスが崩れることで、相対的に骨吸収が優位となるために骨量の減少が起こり、骨の微細構造の変化により骨の強度が低下し、骨折が起こりやすくなる病態を示す。特に女性の場合には、閉経や卵巣摘除などにより骨量の減少は急速に起こる。骨粗鬆症になると、骨折したり、激しい痛みなどを伴うだけでなく、特に老人の寝たきりの原因ともなるため、高齢化社会における生活の質の向上という観点からも、有効な治療法が求められている。骨粗鬆症は発症してから治療するのは困難であることから、予防に努めることが重要であり、若年期から骨量を増やすことが不可欠で、日常的に骨形成に必要な栄養成分や、骨形成を促進する食品を積極的に摂取するようにしなければならないことが深く認識されるようになった。骨を強化する食品としては、現在、主にカルシウムやマグネシウム、ビタミンDが利用されている。また、カルシウムの腸管からの吸収を促進するカゼインホスホペプチドなども利用されている。
【0003】
骨粗鬆症等の骨疾患の治療薬としては、活性型ビタミンDや女性ホルモン(エストロゲン)、カルシトニン、イプリフラボン類が臨床に用いられ、ビタミンKに代表されるポリイソプレノイド誘導体の破骨細胞形成抑制作用に基づく抗骨粗鬆症剤(例えば、特許文献1参照)が提案されている。また、カゼインホスホペプチド及びゲニステインを有効成分として含有する骨強化剤(例えば、特許文献2参照)、サポニン、ダイジン、ダイゼイン、ゲニスチン及びゲニスティンを主たる有効成分とする骨形成促進及び抗骨粗鬆症組成物(例えば、特許文献3参照)、ワサビ抽出物を有効成分とし、抗骨粗鬆症作用を発揮する骨量増進組成物(例えば、特許文献4参照)、イソフラボンを主たる有効成分とする骨形成促進及び骨塩量減少防止用組成物(例えば、特許文献5参照)、ビタミンKと亜鉛を共に強化した抗骨粗鬆症組成物(例えば、特許文献6参照)、アセキサム酸亜鉛を有効成分とする骨疾患治療剤(例えば、特許文献7参照)、アカモク(ホンダワラ属)の乾燥物を有効成分とし、抗骨粗鬆症作用を発揮する骨量増進組成物(例えば、特許文献8参照)、亜鉛塩とイソフラボンを添加してなることを特徴とする骨形成促進および骨塩量減少防止用食品(例えば、特許文献9参照)が、本発明者により提案されている。
【0004】
一方、花粉は生殖細胞に富んだ粒子で、蛋白質、アミノ酸、炭水化物、ホルモン、ビタミン等の植物の受精作用に係る生理活性物質を含有している。また、花粉荷(花粉だんご)は蜜蜂が花粉を蜜で固めたもので、花粉荷は蜂蜜と共に巣の中に蓄えられる。この花粉荷は人により容易に回収され、通例花粉食品はこの蜜蜂由来の花粉荷を原料としている。花粉の栄養価は高く、直接あるいは糖でくるんで栄養食品として利用することも知られている。(例えば、非特許文献1参照)。日本健康食品協会が花粉食品作業部会をおき、食品としての基準を検討しており、1.乾燥花粉だんごあるいはその破砕したものをそのまま利用する花粉食品、2.糖衣粒、カプセル、あるいは蜂蜜などと混合した形の、花粉加工食品、3.水又はアルコールなどで抽出した後粉末とした花粉エキス食品、の3種類に類別している(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
花粉を摂食すると細胞壁の硬さから全体的な消化率は低くなるが、花粉細胞内物質は腸管で滲出するので、その栄養的機能については問題がないとされている(例えば、非特許文献2参照)。この花粉を高等動物に投与した場合には種々の薬理効果が期待され、今日までに体重増加作用、消化管機能調整、ヘモグロビン値増大、止血作用、抗炎症作用、前立腺肥大抑制作用等の生理活性作用のあることが知られている。そして、花粉入りの錠剤やジュースの形態で、健康食品や医薬品として欧米で製品化されている。特に、前立腺炎や前立腺肥大症に対する抑制効果を発揮させるため、花粉エキスが水溶性エキスと油性エキスとで構成される、花粉エキスを有効成分とする花粉エキスソフトカプセル剤(例えば、特許文献10参照)が知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−215849号公報
【特許文献2】特開2001−302539号公報
【特許文献3】特開2000−191526号公報
【特許文献4】特開平10−279492号公報
【特許文献5】特開平10−114653号公報
【特許文献6】特開平10−36256号公報
【特許文献7】特開平10−218767号公報
【特許文献8】特開2003−26597号公報
【特許文献9】特開2004−215673号公報
【特許文献10】特開平9−278665号公報
【非特許文献1】「ミツバチ科学」7(1):9-12 Honeybee Science (1986)
【非特許文献1】「ミツバチ科学」12(1):34-38 Honeybee Science (1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、骨粗鬆症に代表される骨疾患において我が国で現在認可されているいくつかの治療剤は骨吸収抑制剤(骨が溶けるのを抑制する)が主であり、唯一メバロン酸合成阻害剤であるスタチンに骨形成促進作用があると報じられたが、遺伝子レベルの知見であり、実際には、骨形成促進効果は弱いものであった。また、欧州ではヒト型遺伝子組み換え副甲状腺ホルモンが使用されているが、骨吸収を促進するという副作用の面からその使用は制限されている。本発明の課題は、骨吸収を抑制すると共に、積極的に骨形成を促進して骨量を増進させ、骨疾患を予防・治療することができる顕著な効果を有する骨吸収抑制作用や骨形成促進作用を有する骨粗鬆症等の骨疾患の予防・治療に有用な飲食品、薬剤、飼料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、現在、骨粗鬆症等の骨疾患をもつ多くの人に対応するため、種々の植物、既知の食品等を検討し、鋭意研究した結果、副作用のない、むしろ栄養価の高いことが知られている花粉荷の水及びエタノール抽出物に従来の生理活性作用とは異なる骨吸収抑制作用や骨形成促進作用のあることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、(1)花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有することを特徴とする骨量増進組成物や、(2)花粉荷処理物が、花粉荷の水又はエタノール抽出物であることを特徴とする上記(1)記載の骨量増進組成物や、(3)花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有することを特徴とする骨形成促進組成物や、(4)花粉荷処理物が、花粉荷の水又はエタノール抽出物であることを特徴とする上記(3)記載の骨形成促進組成物や、(5)花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有することを特徴とする骨吸収抑制組成物や、(6)花粉荷処理物が、花粉荷の水又はエタノール抽出物であることを特徴とする上記(5)記載の骨吸収抑制組成物に関する。
【0010】
また本発明は、(7)花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有することを特徴とする骨疾患の予防・治療薬や、(8)花粉荷処理物が、花粉荷の水又はエタノール抽出物であることを特徴とする上記(7)記載の骨疾患の予防・治療薬や、(9)骨疾患が骨粗鬆症であることを特徴とする上記(7)又は(8)記載の骨疾患の予防・治療薬に関する。
【0011】
さらに本発明は、(10)花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有することを特徴とする骨疾患の予防・治療用機能性食品又は食品素材や、(11)花粉荷処理物が、花粉荷の水又はエタノール抽出物であることを特徴とする上記(10)記載の骨疾患の予防・治療用機能性食品又は食品素材や、(12)骨疾患が骨粗鬆症であることを特徴とする上記(10)又は(11)記載の骨疾患の予防・治療用機能性食品又は食品素材や、(13)花粉荷又は花粉荷処理物が配合されていることを特徴とする骨疾患の予防・治療用機能性飼料又は飼料素材や、(14)花粉荷処理物が、花粉荷の水又はエタノール抽出物であることを特徴とする上記(13)記載の骨疾患の予防・治療用機能性飼料又は飼料素材に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、骨量を増進して骨疾患を予防・治療することができる骨形成促進作用を有する骨形成促進組成物や、骨吸収抑制作用を有する骨吸収抑制組成物や、骨粗鬆症等の骨疾患の予防・治療に有用な薬剤、飲食品、飼料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の骨量増進組成物としては、花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有するものであれば特に制限されるものではなく、また、本発明の骨形成促進組成物としては、花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有するものであれば特に制限されるものではなく、そしてまた、本発明の骨吸収抑制組成物としては、花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有するものであれば特に制限されるものではなく、上記骨量増進組成物が有する骨量増進作用とは、骨形成促進組成物が有する骨形成促進作用と骨吸収抑制組成物が有する骨吸収抑制作用とが合わさった結果、骨量を増進させる作用をいう。
【0014】
また、上記花粉荷とは、ミツバチが採集した花粉を意味し、花粉荷に含まれる成分は花粉種によって異なるが、本発明においては植物の種類は何ら限定されるものではなく、例えば、果樹類の花粉、クローバー、ダイコン、シスタス、ナタネ、茶、ソバ等の花粉を挙げることができるが、シスタスの花粉が好ましい。本発明においては、花粉荷をそのまま利用することもできるが、花粉の粒子は細胞壁が硬く消化率が低いといわれていることから、粉砕処理、破砕処理、乾燥処理、抽出処理、酵素処理、発酵処理又はこれらの複合処理等が施された花粉荷処理物を有利に用いることもできる。例えば、花粉混和水に超音波振動を施す等の機械処理、酵素処理、発酵処理技術を用いて細胞壁を壊し消化を良くするようにすることもできるが、抽出処理が好ましい。かかる抽出処理により得られる花粉荷抽出物としては、花粉荷の水又はエタノール抽出物が好ましく、必要に応じて抽出後に粉末化処理を行うこともできる。例えば花粉荷のエタノール抽出物であるエタノールエキスは、花粉荷の重量に対して0.5〜10倍量、特に1〜3倍量のエタノールを用いて抽出したものが好ましい。また、花粉荷の水抽出物である水エキスは、花粉荷の重量に対して0.5倍量〜10倍量、特に2〜6倍量の水を用いて抽出したものがより好ましい。さらに、エタノール水溶液を花粉荷の重量に対して0.5〜10倍量用いて抽出し、エタノール水エキスとすることもできる。抽出温度は、通常20〜50℃程度で行われるが、特に限定されず、低温抽出、高温抽出等を行ってもよい。
【0015】
本発明の骨疾患の予防・治療薬、骨疾患の予防・治療機能を有する食品や食品素材(サプリメント形態を含む)、また飼料用組成物としては、花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有するものであれば特に制限されるものではなく、すなわち、上記本発明の骨形成促進組成物や骨吸収抑制組成物を有効成分として含有するものであればその含有量は特に制限されるものではないが、目安として、投与量、又は摂取量は成人1人1日あたり0.001〜10gが好ましく、0.001〜1gがより好ましく、0.01〜1gがさらに好ましい。
【0016】
本発明の骨疾患の予防・治療薬としては、上記のように、本発明の骨形成促進組成物や骨吸収抑制組成物を含有するものであれば特に制限されるものではなく、また、本発明の骨疾患の予防・治療用機能性食品又は食品素材としては、上記のように、本発明の骨形成促進組成物や骨吸収抑制組成物を有効成分として含有し、骨疾患の予防・治療機能を有する食品や食品素材であれば特に制限されるものではなく、さらに、本発明の飼料用組成物としては、上記のように、本発明の骨形成促進組成物や骨吸収抑制組成物を配合したものであればどのようなものでもよく、上記骨疾患としては、骨折、骨軟化症、骨減少症、骨粗鬆症、腰背痛等を挙げることができ、中でも、閉経後骨粗鬆症、エストロゲン欠乏性骨粗鬆症、老人性骨粗鬆症、ステロイド誘発骨粗鬆症等の骨粗鬆症や骨軟化症などの代謝性骨疾患を好適に例示することができる。また、上記機能性食品若しくは食品素材、又は飼料若しくは飼料素材における「骨疾患の予防・治療用」とは、例えば、食品若しくは食品素材、又は飼料若しくは飼料素材の包装体や添付の説明書に、骨疾患の予防や治療に有効である旨の表示が付されていることを意味する。例えば、食品の場合には「花粉荷エキスは骨のカルシウム量を増やすので、骨の健康が気になる方に適しています。」あるいは「花粉荷エキスは骨のカルシウムの維持に役立つので、骨の健康が気になる方に適しています。」などの表示を付すこともできる。
【0017】
上記本発明の骨形成促進組成物や骨吸収抑制組成物を、骨疾患の予防・治療薬等の医薬品やサプリメントとして用いる場合は、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。また、これらに加えて、イプリフラボン類等の公知の骨形成促進作用及び/又は骨吸収抑制作用を有する物質や、カルシウム、マグネシウム、リン等のミネラルを併用することができる。これら予防若しくは治療剤は、経口的又は非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、ドリンク剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば溶液、乳剤、懸濁液等の剤型にしたものを注射の型で非経口投与することができる他、スプレー剤の型で鼻孔内投与することもできるが、経口的に投与することが好ましい。投与量は、投与対象、予防か治療かの投与目的、骨疾患の種類や重篤度、患者の年齢・体重等に応じて適宜選定することができる。投与量は、ヒト及びヒトを除く動物に対し、1日あたり0.001g〜10g、好ましくは0.01g〜1gの範囲にあるのが好ましく、例えば医薬品・医薬部外品の投与量は成人1人1日あたり0.001〜10gが好ましく、0.01〜1gがより好ましく、0.05〜1gがさらに好ましい。
【0018】
上記本発明の骨形成促進組成物や骨吸収抑制組成物を添加した、骨疾患の予防・治療に用いられる、骨疾患の予防・治療機能を有する食品や食品素材の種類としては特に制限されず、例えば、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、酒類、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶、スポーツ飲料等の各種飲料や、プリン、クッキー、パン、ケーキ、ゼリー、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、チーズ、バター等の乳製品や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ等の各種総菜を挙げることができる。これら食品や食品素材には、上述した公知の骨形成促進作用及び/又は骨吸収抑制作用を有する物質や、カルシウム、マグネシウム、リン等のミネラルを併用してもよい。例えば食品や食品素材の摂取量は成人1人1日あたり0.001〜1gが好ましく、0.01〜1gがより好ましく、0.01〜0.5gがさらに好ましい。
【0019】
上記本発明の骨形成促進組成物を配合した飼料用組成物は、動物(ヒトを除く)、例えば、ブタ、ウシ、ニワトリ等の家畜・家禽や、イヌ、ネコ等のペット、養殖魚介類の飼育等に有利に用いることができ、かかる飼料用組成物には、上述したイプリフラボン類等の公知の骨形成促進作用及び/又は骨吸収抑制作用を有する物質や、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、マンガン、銅等のミネラルを併用することができる。例えば食品と同様に飼料の投与量は対象動物(ヒトを除く)1体1日あたり0.001〜1gが好ましく、0.01〜1gがより好ましく、0.01〜0.5gがさらに好ましい。
【0020】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
(花粉荷エタノール抽出物の調製)
花粉荷(スペイン産 シスタス)20gに99.5%エタノール30mlを加え乳鉢で練り込み、別の容器に移して室温で、60分間振とう混和した。次に、回転数3,000rpm(800×g)、10分間遠心分離機で遠心分離した後、上澄み液をΦ0.45μmのフィルターでろ過し、多検体濃縮装置(シグマ社)を用いて、気流下で濃縮した。得られた固形分から535mg/mlの花粉荷抽出物を作製した。収率は、13.6%であった。
【0022】
(花粉荷水抽出物の調製)
花粉荷の素材として中国産の菜種10g、中国産のそば10g、台湾産のお茶10g、スペイン産のシスタス10gを用いた。各花粉荷10gにイオン交換水(以下、水)を40ml加え、乳鉢にて練り込み、次に50mlのコーニングチューブに移し、室温で30分間振とうした。その後、該チューブを1,500rpm、10分間遠心分離機で遠心分離し、上澄み液をさらに同条件で合計2回遠心分離した。上澄み液を1.5mlのエッペンドルフチューブに移し、13,000rpm(10,000×g)、20分間遠心分離機で遠心分離した。ろ液がやや懸濁していたお茶エキスとシスタスエキスについては吸引ろ過(ろ紙:アドバンテック131)を行った。各種のエキスをΦ0.45μmのフィルターでろ過し、凍結乾燥を行った。得られた粉末を秤量し、それぞれ約580mg/mlのサンプルを作製した。
【実施例2】
【0023】
(ラット骨組織片の培養方法)
ラット(ウイスター系雄性;4週齢)は日本SLC(株)(浜松)から購入し、固形飼料(炭水化物57.4%、カルシウム1.1%、リン1.1%及び亜鉛0.012%を含む)と精製蒸留水を自由に摂取させ、25℃の室温で飼育した。この飼育したラットをジエチルエーテルで麻酔し、心臓穿刺により採血後、大腿骨を無菌的に採取し、冷0.25Mショ糖溶液で骨髄を洗浄除去後、骨幹部(皮質部)と骨幹端部(海綿骨)組織に分け、細片した。これらの骨組織片を、ダルベッコ変法イーグル培養液(ペニシリン−ストレプトマイシン含有)中に、実施例1で調製したシスタス由来花粉荷水抽出物とシスタス由来花粉荷エタノール抽出物(10、100、1000μg/ml培養液)をそれぞれ含有した培養液を加えた培養用ディッシュ(35mm)の中で、37℃で48時間、5%CO−95%airの条件で、インキュベーター中で培養した。また、ダルベッコ変法イーグル培地及びペニシリン−ストレプトマイシン混合溶液(5000unit/ml−5000μg/ml)はGibco Laboratories(Grand Island,NY,USA)から入手し、他の試薬はシグマ社(USA)及び和光純薬工業から購入した。試薬は精製蒸留水を用いて調製したものである。なお、花粉荷の水及びエタノール抽出物を添加することなく、培養液のみで培養した場合を対照とした。
【0024】
(骨カルシウムの測定)
組織片を0.25Mショ糖溶液で洗浄後、16時間、110℃で乾燥し、重量を測定した。その後、これらの組織片に濃硝酸溶液(3ml)を加えて120℃で16時間分解した。カルシウム量はカルシウム測定用キットを用いて測定し、骨組織中カルシウム量は、骨組織(乾燥)1g当たりのmg量として表示した。結果を表1に示す。得られた結果は、平均値±標準誤差として表示し、Student’s t-testにより対照群に対する有意差を検定し、危険率5%以下の場合に有意差ありとした。
【0025】
【表1】

【0026】
表1より、骨幹部(皮質骨)及び骨幹端部(海綿骨)組織におけるカルシウム量は、花粉荷シスタスの水抽出物(10、100、1000μg/ml培養液)の存在下で有意に増加した。また、花粉荷シスタスのエタノール抽出物(100、1000μg/ml培養液)においても有意に増加することが見出された。これらの結果は、花粉荷シスタスの水及びエタノール抽出物中には骨形成を増進し、骨塩増加効果を発揮する因子の存在を示していることは明らかである。
【実施例3】
【0027】
(花粉荷抽出物ラット経口投与実験)
4週齢のラット(オス、体重85.90g)に実施例1で調製したシスタス由来花粉荷水抽出物を精製蒸留水に溶解して、1.0mg/ml及び5.0mg/mlの液を調整した。ラット体重100g当り各1mlを、胃ゾンデを用いて、1日1回7日間経口投与し、最終投与の24時間目に解剖した。大腿骨を摘出し、骨幹部と骨幹端部組織にわけた。該骨幹部と骨幹端部を以下のアルカリ性ホスファターゼ活性の測定とDNA量の定量の方法にしたがって、また、カルシウム量の測定は、実施例2に記載の方法にしたがってそれぞれ測定した。精製蒸留水を同様の条件で経口投与した場合を対照とした。結果を表2に示す。
【0028】
(アルカリ性ホスファターゼ活性の測定)
骨の石灰化の促進に関する最も重要な酵素であるアルカリ性ホスファターゼの発現量を調べた。インキュベーター中で培養した後、組織片を0.25Mのショ糖液で洗浄し、6.5mMのバルビタール緩衝液(pH7.4)3ml中で破砕し、超音波処理した。この液を遠心分離して上清を酵素液としてWalter及びSchuttの方法(in Method of Enzymatic Analysis, Vol1-2,p856, Academic Press, New York, 1965)に従って測定した。すなわち、p−ニトロフェニール燐酸を基質として、ジエタノールアミン緩衝液(pH9.8)2mlに酵素液0.05mlを添加し、37℃で30分間インキュベーションし、0.05NのNaOHを10ml添加した後、分光光度計を用いて吸光度(405nm)を測定し、骨に対する治療剤及び骨に対する作用の知られている化合物の骨アルカリ性ホスファターゼ活性を調べた。
【0029】
(DNA量の定量)
骨組織中の細胞数の指標として、DNA量を定量した。インキュベーター中で培養した後、組織片を0.25Mの蔗糖溶液で洗浄し、湿重量を測定した。その後、0.1NのNaOH4ml中で粉砕して、4℃で24時間浸透させた。この液を遠心分離し、上清を試料としてCeriottiらの方法(J.Biol.Chem., 241: 34-77, 1951)に従って定量した。即ち、試料2mlに濃塩酸1ml及び0.04%のインドール溶液1mlを添加し沸騰水中で100℃に加熱後、急冷して、クロロホルム4mlで抽出し、クロロホルム層を採取して、分光光度計(490nm)を用いて骨中のDNA量を測定した。
【0030】
【表2】

【0031】
表2より、骨幹部(皮質骨)及び骨幹端部(海綿骨)組織におけるカルシウム量、アルカリ性ホスファターゼ活性、DNA量は、シスタス由来花粉荷の水抽出物(1.0、5.0mg/100g体重)を経口投与した結果、有意に増加したことを示している。これらの結果から、シスタス由来花粉荷の水抽出物は、骨形成を増進し、骨塩増加効果を発揮することがわかった。
【実施例4】
【0032】
ラット(各6匹)を用いて、実施例2の方法と同様の方法により大腿骨を摘出し、その骨幹部組織を実施例1で調製したシスタス、菜種、茶、そばの花粉荷水抽出物液(100μg/ml培養液)をそれぞれ含有した培養液を加えた培養用ディッシュ(35mm)の中で、37℃で48時間、5%CO−95%airの条件で、インキュベーター中で培養した。実施例2の方法と同様の方法により骨幹部組織カルシウム量を測定した。なお、対照は、花粉荷の水抽出物を添加することがなく培養液のみで培養したものとした。各値は6匹のラットから得られた値の平均値±標準誤差として表示した。
【0033】
【表3】

【0034】
表3より、骨幹部(皮質骨)組織におけるカルシウム量は、各種花粉荷水抽出物(100μg/ml培養液)の存在下で有意に増加した。この結果は、一種のみならず種々の花粉荷抽出物中にも骨形成を増進し、骨塩増加効果を発揮する因子の存在を示していることは明らかである。
【実施例5】
【0035】
骨吸収に及ぼすシスタス由来花粉荷の水抽出物の効果について調べた。ラット(4週齢)の大腿骨から得た骨幹部組織あるいは骨幹端部組織を、副甲状腺ホルモン(PTH;10−7M)、PTH;10−7Mに花粉荷抽出物(10、100、1000μg/培養液中1ml)を加えた培養液中で48時間培養した。培養後、骨組織を冷0.25Mショ糖溶液中で洗浄し、5時間90〜100℃で乾燥後、骨組織の重量を測定した。骨組織は濃硝酸3.0ml中100℃で16時間加熱分解し、希釈後のカルシウム量を、キット(和光純薬工業)を用いて測定した。骨組織中のカルシウム量は、骨組織の乾燥重量1g当りのmgとして表示した。
【0036】
【表4】

【0037】
表に示したように、対照群と比較して、PTH存在下で骨組織を培養すると、骨組織中カルシウム量が減少し、骨吸収が引き起こされた。このPTHの作用は、シスタス水抽出花粉荷成分の存在下でほぼ完全に抑制されることが見出された。この作用は抽出物の10μg/mlにおいてみられた。このように、シスタス花粉荷成分は、生理的に骨吸収を促進する副甲状腺ホルモンの効果を抑制し、骨吸収抑制効果を発揮することが明らかとなった。
【実施例6】
【0038】
(医薬品組成物)
花粉荷エキス末 1.00kg
還元麦芽糖 1.00kg
乳糖 0.58kg
セルロース 0.30kg
ステアリン酸マグネシウム 0.06kg
リン酸カルシウム 0.06kg

上記を順次配合し、打錠機を用いてΦ9mmのタブレット10,000錠分の錠剤を加工した。
【実施例7】
【0039】
(医薬部外品組成物)
ブドウ糖果糖液糖 18.00kg
精製ハチミツ 3.50kg
花粉荷エキス末 0.80kg
クエン酸 0.65kg
アスパラギン酸ナトリウム 35.00g
ニコチン酸アミド 25.00g
ビタミンC 10.00g
パントテン酸カルシウム 5.00g
ビタミンB1 3.00g
ビタミンB2 3.00g
香料 0.125kg

上記を順次混合し、よく撹拌し、100mlのドリンク剤1,000本を加工した。
【実施例8】
【0040】
(食品組成物)
還元麦芽糖 1.35kg
花粉荷エキス末 0.80kg
乳糖 0.20kg
ガラクトオリゴ糖 0.20kg
セルロース 0.15kg
カゼインホスホペプチド 0.10kg
ショ糖脂肪酸エステル 0.10kg
ミルクカルシウム 0.10kg

上記を順次混合し、打錠機を用いてΦ9mmのタブレット10,000錠分の錠剤を加工した。
【実施例9】
【0041】
(食品組成物又は飼料組成物)
還元麦芽糖水飴 1018g
ガラクトオリゴ糖 300g
花粉荷エキス 250g
コラーゲン 100g
リンゴ繊維 90g
粉末ヨーグルト 80g
香料 70g
カゼインホスホペプチド 30g
ミルクカルシウム 30g
ビタミンC 10g
リンゴ酸 10g
粉末蜂蜜 10g
ビタミンB2 2g

上記を順次混合し、撹拌造粒し、2gスティック、1,000本分の顆粒を加工した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有することを特徴とする骨量増進組成物。
【請求項2】
花粉荷処理物が、花粉荷の水又はエタノール抽出物であることを特徴とする請求項1記載の骨量増進組成物。
【請求項3】
花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有することを特徴とする骨形成促進組成物。
【請求項4】
花粉荷処理物が、花粉荷の水又はエタノール抽出物であることを特徴とする請求項3記載の骨形成促進組成物。
【請求項5】
花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有することを特徴とする骨吸収抑制組成物。
【請求項6】
花粉荷処理物が、花粉荷の水又はエタノール抽出物であることを特徴とする請求項5記載の骨吸収抑制組成物。
【請求項7】
花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有することを特徴とする骨疾患の予防・治療薬。
【請求項8】
花粉荷処理物が、花粉荷の水又はエタノール抽出物であることを特徴とする請求項7記載の骨疾患の予防・治療薬。
【請求項9】
骨疾患が骨粗鬆症であることを特徴とする請求項7又は8記載の骨疾患の予防・治療薬。
【請求項10】
花粉荷又は花粉荷処理物を有効成分として含有することを特徴とする骨疾患の予防・治療用機能性食品又は食品素材。
【請求項11】
花粉荷処理物が、花粉荷の水又はエタノール抽出物であることを特徴とする請求項10記載の骨疾患の予防・治療用機能性食品又は食品素材。
【請求項12】
骨疾患が骨粗鬆症であることを特徴とする請求項10又は11記載の骨疾患の予防・治療用機能性食品又は食品素材。
【請求項13】
花粉荷又は花粉荷処理物が配合されていることを特徴とする骨疾患の予防・治療用機能性飼料又は飼料素材。
【請求項14】
花粉荷処理物が、花粉荷の水又はエタノール抽出物であることを特徴とする請求項13記載の骨疾患の予防・治療用機能性飼料又は飼料素材。

【公開番号】特開2007−16014(P2007−16014A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131842(P2006−131842)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年3月28日から3月30日 社団法人日本薬学会主催の「日本薬学会 第126年会」において文書をもって発表
【出願人】(598162665)株式会社山田養蜂場 (32)
【Fターム(参考)】