説明

芳香族スルホン酸誘導体、スルホン化ポリマーならびにそれを用いた高分子電解質材料および高分子電解質型燃料電池

【課題】プロトン伝導性に優れ、かつ、燃料遮断性、機械強度、耐熱水性、耐熱メタノール性、加工性、化学的安定性に優れる上に、高分子電解質型燃料電池としたときに高出力、高エネルギー密度、長期耐久性を達成することができる高分子電解質材料、およびそれを用いた膜電極複合体ならびに高分子電解質型燃料電池を提供する。
【解決手段】高分子電解質型燃料電池は、下記一般式(P1)で表される芳香族ポリエーテル系スルホン化ポリマーを含む高分子電解質材料を用いる。


(一般式(P1)中、Rは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高出力、高エネルギー容量および長期耐久性を達成することができる実用性に優れた高分子電解質型燃料電池およびその一部を構成する高分子電解質材料、ならびに高分子電解質材料に用いられるスルホン化ポリマーおよびその原料となる芳香族スルホン酸誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素、メタノールなどの燃料を電気化学的に酸化することによって、電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。なかでも高分子電解質型燃料電池は、標準的な作動温度が100℃前後と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として幅広い応用が期待されている。また、小型移動機器、携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やパソコンなどへの搭載が期待されている。
【0003】
高分子電解質型燃料電池においては、水素ガスを燃料とする従来の高分子電解質型燃料電池(以下、PEFCと記載する)に加えて、メタノールを直接供給するダイレクトメタノール型燃料電池(以下、DMFCと記載する)も注目されている。DMFCは燃料が液体で改質器を用いないために、エネルギー密度が高くなり一充填あたりの携帯機器の使用時間が長時間になるという利点がある。
【0004】
燃料電池は通常、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソード間のプロトン伝導体となる高分子電解質膜とが、膜電極複合体(以降、MEAと略称することがある。)を構成し、このMEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。高分子電解質膜は高分子電解質材料を主として構成される。高分子電解質材料は電極触媒層のバインダー等にも用いられる。
【0005】
高分子電解質膜の要求特性としては、第一に高いプロトン伝導性が挙げられる。また、高分子電解質膜は、燃料と酸素の直接反応を防止するバリアとしての機能を担うため、燃料の低透過性が要求される。特に、メタノールなどの有機溶媒を燃料とするDMFC用高分子電解質膜においては、メタノール透過はメタノールクロスオーバー(以降、MCOと略称することがある。)と呼ばれ、電池出力およびエネルギー効率の低下という問題を引き起こす。その他の要求特性としては、燃料電池運転中の強い酸化雰囲気に耐えるための化学的安定性、薄膜化や膨潤乾燥の繰り返しに耐えうる機械強度などを挙げることができる。
【0006】
これまで高分子電解質膜には、パーフルオロスルホン酸系ポリマーであるナフィオン(登録商標)(Nafion(登録商標):デュポン社製)が広く用いられてきた。ナフィオン(登録商標)は多段階合成を経て製造されるため非常に高価であり、かつ、クラスター構造を形成するために燃料クロスオーバーが大きいという課題があった。また、耐熱水性や耐熱メタノール性が不足するため、膨潤乾燥によって作成した膜の機械強度が低下するという問題や軟化点が低く高温で使用できないという問題、さらに、使用後の廃棄処理の問題や材料のリサイクルが困難といった課題もあった。パーフルオロスルホン酸系膜は高分子電解質膜として概ねバランスのとれた特性を有するが、当該電池の実用化が進むにつれて、さらなる特性の改善が要求されるようになってきた。
【0007】
このような欠点を克服するために非パーフルオロ系ポリマーの炭化水素系ポリマーをベースとした高分子電解質材料についても既にいくつかの取り組みがなされている。ポリマー骨格としては、耐熱性、化学的安定性の点から芳香族ポリエーテルケトンや芳香族ポリエーテルスルホンについて特に活発に検討がなされてきた。
【0008】
例えば、芳香族ポリエーテルケトンである、難溶性の芳香族ポリエーテルエーテルケトン(ビクトレックス(登録商標)PEEK(登録商標)(ビクトレックス社製)等があげられる。)のスルホン化物(例えば、非特許文献1参照。)、芳香族ポリエーテルスルホンである狭義のポリスルホン(以降、PSFと略称することがある。)(UDEL P−1700(アモコ社製)等があげられる)や狭義のポリエーテルスルホン(以降、PESと略称することがある。)(スミカエクセル(登録商標)PES(住友化学社製)等があげられる)のスルホン化物(例えば、非特許文献2)等が報告されたが、プロトン伝導性を高めるためにイオン性基の含有量を増加すると作成した膜が膨潤し、メタノールなどの燃料クロスオーバーが大きいという問題があり、またポリマー分子鎖の凝集力が低いために、高次構造の安定性に乏しく、作成した膜の機械強度や物理的耐久性が不十分という問題があった。
【0009】
また、芳香族ポリエーテルケトン(以降、PEKと略称することがある。)(ビクトレックス PEEK−HT(ビクトレックス製)等が挙げられる)のスルホン化物(例えば、特許文献1および2)においては、その高い結晶性ゆえに低いスルホン酸基密度の組成を有するポリマーは、結晶が残存することにより溶剤に不溶で加工性不良となる問題、逆に加工性を高めるためにスルホン酸基密度を増加させるとポリマーは結晶性でなくなることにより水中で著しく膨潤し、燃料クロスオーバーが大きいだけでなく、作成した膜の強度が不十分であった。
【0010】
スルホン酸基量を制御する方法として、芳香族ポリエーテルスルホン系においては、スルホン酸基を導入したモノマーを用いて重合し、スルホン酸基量が制御されたスルホン化芳香族ポリエーテルスルホンの報告がなされている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、ここにおいても高温高湿下で作成した膜が膨潤する問題は改善されず、特にメタノールなど燃料水溶液中やスルホン酸基密度が高くなる組成においてはその傾向が顕著で、このような耐熱水性や耐熱メタノール性に劣る高分子電解質膜ではメタノールなどの燃料クロスオーバーを十分に抑制すること、膨潤乾燥サイクルに耐えうる機械強度を付与することは困難であった。
また、特許文献4,5,6には下記式(H1)、(H2)、(H3)で表される構成単位を有する芳香族ポリアリーレン系重合体についての記載がある。しかしながら、ここにおいては重合の難易度が高く、生産性が劣るものであった。
【0011】
【化1】

【0012】
このように、従来技術による高分子電解質材料は経済性、加工性、プロトン伝導性、燃料クロスオーバー、機械強度、ひいては長期耐久性を向上する手段としては不十分であり、産業上有用な燃料電池用高分子電解質材料とはなり得ていなかった。
【非特許文献1】「ポリマー」(Polymer), 1987, vol. 28, 1009.
【非特許文献2】「ジャーナル オブ メンブレンサイエンス」(Journalof MembraneScience), 83 (1993) 211-220.
【特許文献1】特開平6−93114号公報
【特許文献2】特表2004−528683号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0091225号明細書
【特許文献4】特開2006−298794号公報
【特許文献5】特開2006−299015号公報
【特許文献6】特開2006−299080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、プロトン伝導性に優れ、かつ、燃料遮断性、機械強度、耐熱水性、耐熱メタノール性、加工性、化学的安定性に優れる上に、高分子電解質型燃料電池としたときに高出力、高エネルギー密度、長期耐久性を達成することができる高分子電解質材料に用いられるスルホン化ポリマーおよびその原料となる芳香族スルホン酸誘導体を提供せんとするものである。
【0014】
従来技術では、ポリマーのスルホン化反応(高分子反応)により芳香環上にスルホン酸基を導入する方法では、ポリマー中に導入するスルホン酸基の量および位置を精密に制御できないという問題点を有しており、ポリマーの量産化は困難であった。そこで、イオン性基を有する高分子電解質材料として側鎖にイオン性基を有する高分子電解質材料の合成に着目し、側鎖にスルホン酸基を複数置換したモノマーを用いたポリマー合成の試みや、そうして作成された膜を燃料電池用途を視野に入れて、機械特性評価、耐熱水性、耐熱メタノール性および加工性等との関係を検討し本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の高分子電解質材料は、下記一般式(P1)で表されることを特徴とする芳香族ポリエーテル系スルホン化ポリマーを含むものである。本発明の高分子電解質型燃料電池は、かかる高分子電解質材料を用いることを特徴とするものである。
【0016】
【化2】

【0017】
(一般式(P1)中、Rは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プロトン伝導性に優れ、かつ、燃料遮断性、機械強度、耐熱水性、耐熱メタノール性、加工性、化学的安定性に優れる上に、高分子電解質型燃料電池としたときに高出力、高エネルギー密度、長期耐久性を達成することができる高分子電解質材料に用いられるスルホン化ポリマーおよびその原料となる芳香族スルホン酸誘導体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、まず本発明について詳細に説明する。本発明は、前記課題、つまりプロトン伝導性に優れ、かつ、燃料遮断性、機械強度、耐熱水性、耐熱メタノール性、加工性、化学的安定性に優れる上に、高分子電解質型燃料電池としたときに高出力、高エネルギー密度、長期耐久性を達成することができる高分子電解質材料について、鋭意検討し、下記一般式(P1)で表されることを特徴とする芳香族ポリエーテル系スルホン化ポリマーを含む高分子電解質材料が課題を一挙に解決する高分子電解質形燃料電池を提供できることを究明したものである。
【0020】
【化3】

【0021】
(一般式(P1)中、Rは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
本発明の高分子電解質材料としては、膜類(フィルムおよびフィルム状のものを含む)の他、板状、繊維状、中空糸状、粒子状、塊状、微多孔状、コーティング類、発泡体類など、使用用途によって様々な形態をとりうる。ポリマ−の設計自由度の向上および機械特性や耐溶剤性等の各種特性の向上が図れることから、幅広い用途に適応可能である。特に高分子電解質材料が膜類であるときに好適である。以下、高分子電解質膜の場合において説明する。
【0022】
従来のスルホン化芳香族ポリエーテルケトン、スルホン化芳香族ポリエーテルスルホンを高分子電解質材料として用いた場合には、プロトン伝導性を高めるためにイオン性基の含有量を増加すると膜が膨潤し、メタノールなどの燃料クロスオーバーが大きいという問題、ポリマー分子鎖の凝集力が低いために膜の機械強度や高次構造の安定性が不十分という問題があった。
【0023】
これに対し、本発明の高分子電解質材料は、剛直性の高い側鎖に複数のスルホン酸基を高濃度に有する構造を特徴とする。これによって、スルホン酸基を高濃度で導入しても、耐熱水性や機械強度を損なうことなく、プロトン伝導性の優れた固体高分子電解質を得ることができる。
【0024】
また、該ポリマーの分子鎖のパッキングを良くし、分子間凝集力や再び結晶性を付与させるために、結晶性モノマーに保護基を置換させ可溶性にして重合し、膜等に成形された後には、少なくとも一部を脱保護せしめてもよい。その場合、耐熱水性や耐熱メタノール性などの耐溶剤性、引張強伸度、引裂強度や耐疲労性等の機械特性、メタノールや水素などの燃料遮断性を大幅に向上させた高分子電解質膜を得ることができる。この製造工程を経た場合に、特に本発明の高分子電解質膜は高いプロトン伝導性に加え、製膜性(加工性)、製造コストならびに耐熱水性、耐熱メタノール性、燃料遮断性、機械特性を両立できるという特徴を有する。
【0025】
また、本発明によって得られる高分子電解質膜は、その強い分子間凝集力から含水状態であっても非常に破れにくい性質、すわなち高引裂強度を有しており、膨潤・乾燥を繰り返すような自動車等に用いられる水素を燃料とした高分子電解質型燃料電池の運転条件においても極めて優れた長期耐久性を達成できるという特徴を有する。
【0026】
本発明において、ポリマーが結晶性であるとは、ポリマーがなんらかの条件で結晶化されうる、結晶化可能な性質を有することを意味する。また、ポリマーが非晶であるとはポリマーの結晶性の有無にかかわらず、使用する際のポリマーの状態として非晶であることを意味するものである。これらポリマーの結晶性の有無、結晶と非晶の状態については、広角X線回折(XRD)における結晶由来の鋭いピークや示差走査熱量分析法(DSC)における結晶化ピーク等によって評価することができる。
【0027】
また、本発明において耐熱水性、耐熱メタノール性に優れるとはそれぞれ高温水中、高温メタノール中での寸法変化(膨潤)が小さいことを意味する。この寸法変化が大きい場合には、高分子電解質膜として使用している途中に膜が破損してしまったり、膨潤で電極触媒層と剥離し、抵抗が大きくなるので好ましくない。これら耐熱水性、耐熱メタノール性の特性はいずれも高分子電解質型燃料電池に使用される電解質ポリマーに要求される重要な特性である。
【0028】
本発明に使用する高分子電解質材料は、機械強度や化学的安定性などの点から、炭化水素系ポリマーの中でも主鎖に芳香環を有するポリマーがさらに好ましい。すなわち、主鎖に芳香環を有するポリマーであって、イオン性基を側鎖に有するものである。主鎖構造は、芳香環を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばエンジニアリングプラスチックとして使用されるような十分な機械強度を有するものが好ましい。
【0029】
本発明に使用する主鎖に芳香環を有するポリマーの具体例としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンホスフィンホキシド、ポリエーテルホスフィンホキシド、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミドスルホン等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーが挙げられる。
【0030】
なお、ここでいうポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、特定のポリマー構造を限定するものではない。
【0031】
前記主鎖に芳香環を有するポリマーのなかでも、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンホスフィンホキシド、ポリエーテルホスフィンホキシド等のポリマーが、機械強度、加工性および耐加水分解性の面からより好ましい。
【0032】
具体的には下記一般式(T1)で示される繰返し単位を有する主鎖に芳香族を含有するポリマーが挙げられる。
【0033】
【化4】

【0034】
(ここで、Z、Zは芳香環を含む有機基を表し、それぞれが2種類以上の基を表しても良い。ZおよびZの少なくとも1種のうち、少なくとも一部はイオン性基を含有する。Yは電子吸引性基を表す。YはOまたはSを表す。aおよびbはそれぞれ独立に0または正の整数を表し、ただしaとbは同時に0ではない。)
かかる一般式(T1)で示される繰返し単位を有する主鎖に芳香族を含有するポリマーの中でも、一般式(T1−1)〜一般式(T1−6)で示される繰返し単位を有するポリマーは耐加水分解性、機械強度および製造コストの点でより好ましい。なかでも、機械強度や製造コストの面から、YがOである芳香族ポリエーテル系重合体がさらに好ましく、最も好ましくは一般式(T1−3)で示される繰返し単位を有するもの、すなわち、芳香族ポリエーテルケトン系重合体が最も好ましい。
【0035】
【化5】

【0036】
(ここで、Z、Zは芳香環を含む有機基を表し、それぞれが2種類以上の基を表しても良い。ZおよびZの少なくとも1種のうち、少なくとも一部はイオン性基を含有する。aおよびbはそれぞれ独立に0または正の整数を表し、ただしaとbは同時に0ではない。)
として好ましい有機基は、フェニレン基およびナフチレン基である。これらは置換されていてもよい。
【0037】
一般式(T1−4)におけるRで示される有機基の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、ビニル基、アリル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、フェニルフェニル基などである。工業的な入手の容易さの点ではRとして最も好ましいのはフェニル基である。
【0038】
本発明において、芳香族ポリエーテル系重合体とは、主として芳香環から構成される重合体において、芳香環ユニットが連結する様式としてエーテル結合が含まれているものをいう。エーテル結合以外に、直接結合、ケトン、スルホン、スルフィド、各種アルキレン、イミド、アミド、エステル、ウレタン等、芳香族系ポリマーの形成に一般的に使用される結合様式が存在していても良い。エーテル結合は主構成成分の繰り返し単位あたり1個以上あることが好ましい。芳香環は炭化水素系芳香環だけでなく、ヘテロ環などを含んでいても良い。また、芳香環ユニットと共に一部脂肪族系ユニットがポリマーを構成していてもかまわない。芳香族ユニットは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族基、アリロキシ基等の炭化水素系基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン化アルキル基、カルボキシル基、ホスホン酸基、水酸基等、任意の置換基を有していても良い。
【0039】
本発明に使用する芳香族ポリエーテル系重合体の合成方法については、実質的に十分な高分子量化が可能な方法であれば特に限定されるものではないが、例えば芳香族活性ジハライド化合物と2価フェノール化合物の芳香族求核置換反応、またはハロゲン化芳香族フェノール化合物の芳香族求核置換反応を利用して合成することができる。
【0040】
具体的には、例えば前記一般式(P1)で表される構成単位を含有する芳香族ポリエーテル系重合体は、芳香族活性ジハライド化合物として下記一般式(1)で表される化合物を使用し、2価フェノール化合物との芳香族求核置換反応により合成することが可能である。前記一般式(P1)で表される構成単位が2価フェノール化合物、芳香族活性ジハライド化合物のどちら側由来でも構わないが、モノマーの反応性を考慮して芳香族活性ジハライド化合物由来とする方がより好ましい。
【0041】
【化6】

【0042】
(一般式(1)中、Rは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
イオン性基を有さない前記芳香族活性ジハライド化合物としては、2価フェノール化合物との芳香族求核置換反応により高分子量化が可能なものであれば、特に限定される物ではない。芳香族活性ジハライド化合物のより好適な具体例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルケトン、4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、4,4’−ジクロロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、4,4’−ジフルオロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、等を挙げることができる。中でも4,4’−ジクロロジフェニルケトン、4,4’−ジフルオロジフェニルケトンが結晶性付与、機械強度、耐熱メタノール性、燃料クロスオーバー抑制効果の点からより好ましく、重合活性の点から4,4’−ジフルオロジフェニルケトンが最も好ましい。これら芳香族活性ジハライド化合物は、単独で使用することができるが、複数の芳香族活性ジハライド化合物を併用することも可能である。
【0043】
芳香族活性ジハライド化合物として、4,4’−ジクロロジフェニルケトン、4,4’−ジフルオロジフェニルケトンを用いて合成したt-ブチル基を有する芳香環を含有する高分子電解質材料としては、下記一般式(K1)で表される構成部位をさらに含み、分子間凝集力や結晶性を付与する成分となり、燃料として使用されるメタノール水中の高温での寸法安定性や機械強度、さらに水素を燃料とする高分子電解質型燃料電池においては高引裂強度や膨潤・乾燥の繰り返し耐性に優れた材料に有効な成分となるので好ましく用いられる。
【0044】
【化7】

【0045】
(一般式(K1)で表される構成単位は任意に置換されていてもよいが、イオン性基は含有しない。)
本発明に使用される芳香族ポリエーテル系重合体としては、前記一般式(P1)ならびに前記一般式(K1)で表される構成単位とともに、保護基を有するモノマーも好ましく併用される。保護基を含む構成単位として、より好ましくは下記一般式(K2)および(K3)から選ばれる少なくとも1種を含有するものである。
【0046】
【化8】

【0047】
(一般式(K2)および(K3)において、Ar〜Arは任意の2価のアリーレン基、RおよびRはHおよびアルキル基から選ばれた少なくとも1種の基、Rは任意のアルキレン基、EはOまたはSを表し、それぞれが2種類以上の基を表しても良い。一般式(K2)および(K3)で表される基は任意に置換されていてもよい。)
なかでも、化合物の臭いや反応性、安定性等の点で、前記一般式(K2)および(K3)において、EがOである、すなわち、ケトン部位をアセタールまたはケタール部位で保護/脱保護する方法が最も好ましい。2価フェノール化合物に保護基を導入した化合物をモノマーとして用いることは、成型後結晶性を付与でき機械強度を向上できる点から好ましい。前記一般式(K2)および(K3)で表される構成単位が2価フェノール化合物、芳香族活性ジハライド化合物のどちら側由来でも構わないが、モノマーの反応性を考慮して2価フェノール化合物由来とする方がより好ましい。
【0048】
【化9】

【0049】
(一般式(K2−1)および(K3−1)において、Ar〜Arは任意の2価のアリーレン基、RおよびRはHおよびアルキル基から選ばれた少なくとも1種の基、Rは任意のアルキレン基、EはOまたはSを表す。一般式(K2−1)および一般式(K3−1)で表される化合物は任意に置換されていてもよい。)
本発明に使用する、特に好ましい2価フェノール化合物の具体例としては、下記一般式(r1)〜(r10)で表される化合物、並びにこれらの2価フェノール化合物由来の誘導体が挙げることができる。
【0050】
【化10】

【0051】
これら2価フェノール化合物のなかでも、安定性の点から一般式(r4)〜(r10)で表される化合物がより好ましく、さらに好ましくは一般式(r4)、(r5)および(r9)で表される化合物、最も好ましくは一般式(r4)で表される化合物である。
【0052】
プロトン伝導度および耐加水分解性の点からイオン性基としてはスルホン酸基が最も好ましいが、本発明に使用されるイオン性基を有するモノマーは他のイオン性基を有していても構わない。また、本発明で得られた高分子電解質材料としては、ケトン基の有する高い結晶性の特性に加え、スルホン基よりも耐熱メタノール性に優れる成分となり、燃料として使用されるメタノール水中の高温での寸法安定性や機械強度に優れた材料に有効な成分となるのでさらに好ましく用いられる。これらのスルホン酸基は重合の際には、スルホン酸基が1価カチオン種との塩になっていることが好ましい。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。これら芳香族活性ジハライド化合物は、単独で使用することができるが、複数の芳香族活性ジハライド化合物を併用することも可能である。
【0053】
また、芳香族ポリエーテル系重合体を得る場合には、ハロゲン化芳香族ヒドロキシ化合物としても特に制限されることはないが、4−ヒドロキシ−4’−クロロベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−4’−クロロジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−フルオロジフェニルスルホン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−クロロフェニル)スルホン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−フルオロフェニル)スルホン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−クロロフェニル)ケトン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−フルオロフェニル)ケトン、等を例として挙げることができる。これらは、単独で使用することができるほか、2種以上の混合物として使用することもできる。さらに、活性化ジハロゲン化芳香族化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物の反応においてこれらのハロゲン化芳香族ヒドロキシ化合物を共に反応させて芳香族ポリエーテル系化合物を合成しても良い。
【0054】
本発明において、前記一般式(K2−1)、(K3−1)で表される2価フェノール化合物とともに併用されるあるいは単独で用いられる2価フェノール化合物は、特に限定されるものではなく、加工性、燃料遮断性、機械強度等を考慮して適宜選択することが可能である。
【0055】
用いられる2価フェノール残査の好適な具体例としては、下記一般式(X−1)〜(X−28)で示される2価フェノール残査を例示できる。なお、本発明の明細書において、2価フェノール残査とは対応する2価フェノール化合物が芳香族活性ジハライドと反応した後に残る構成単位を意味する。
【0056】
【化11】

【0057】
【化12】

【0058】
(nおよびmは1以上の整数、Rpは任意の有機基を表す。)
【0059】
【化13】

【0060】
【化14】

【0061】
これらは置換基ならびにイオン性基を有していてもよい。側鎖に芳香環を有するものも好ましい具体例である。また、これらは必要に応じて併用することも可能である。
【0062】
これらの中でも一般式(X−1)〜(X−17)で示される2価フェノール残査は、使用方法によっては結晶性を向上できる2価フェノール残査である。結晶性の向上により、本発明で得られた高分子電解質材料は、機械特性、耐溶剤性、燃料遮断性、長期耐久性等に優れた性能を発揮できるので好ましく使用できる。なかでも、さらに好ましくは、一般式(X−1)〜(X−5)、(X−7)、(X−14)、(X−17)で示される2価フェノール残査であり、最も好ましくは一般式(X−1)〜(X−5)で示される2価フェノール残査である。
【0063】
また、一般式(X−18)〜(X−28)で示される2価フェノール残査は、疎水性あるいは剛直性を高める効果があるので、燃料透過抑制効果が大きく、燃料中での寸法安定性向上に有効であるため好ましく使用できる。その中でもより好ましいのは、一般式(X−21)および一般式(X−22)で示されるものであり、特に好ましいのは一般式(X−21)で示される2価フェノール残査である。
【0064】
本発明で得られた高分子電解質材料において、前記一般式(P1)の構成単位の含有量は特に限定されるものではないが、プロトン伝導性の点からより多量であることが好ましい。
【0065】
前記一般式(P1)からなる芳香族活性ジハライド化合物の含有量が8モル%以上であることが好ましい。なかでもプロトン伝導性の観点から10モル以上であることが好ましく、機械特性、燃料クロスオーバー抑制効果および寸法安定性の点から30モル%未満であることが好ましい。前記一般式(P1)で表される構成単位を30モル%以上含む場合は、破断強度、弾性率、耐熱水性や燃料クロスオーバー抑制効果が不足する場合がある。
【0066】
本発明で得られた高分子電解質膜は、特に機械強度、耐熱メタノール性および燃料クロスオーバー抑制効果の点から、芳香環に置換した保護基全てが脱保護されていることがより好ましい。しかし、耐熱水性、耐熱メタノール性および燃料クロスオーバー抑制効果に悪影響を与えない範囲で芳香環に置換した保護基が一部残っていても構わない。ここで、芳香環に置換した保護基の全てが脱保護されているとは、保護基の残存量が検出限界以下であることを意味する。
【0067】
本発明に使用される成型用可溶性高分子電解質材料中に含まれる保護基の含有量としては、例えば2価フェノール化合物として前記一般式(K2−1)を使用した場合、2価フェノール化合物の合計モル量に対して前記一般式(K2−1)の合計モル量が5モル%以上含まれることが好ましい。前記一般式(K2−1)の合計モル量が5モル%未満であれば溶解性が不足して製膜性が不十分となる場合がある。前記一般式(K2−1)のモル量としては、溶解性への向上効果の点で30モル%以上がより好ましく、さらに好ましくは45モル%以上である。前記一般式(K2)で表される構成単位を多量に含むものは、溶解性や加工性に優れることから、極めて強靱な高分子電解質膜を製造する上で、その成型用可溶性高分子電解質材料として特に好ましく使用することができる。
【0068】
本発明で得られた高分子電解質成型体の主鎖骨格構造においては、そのパッキングの良さおよび極めて強い分子間凝集力から結晶性を示し、一般的な溶剤に全く溶解しない性質を有する点から、また引張強伸度、引裂強度および耐疲労性の点から、芳香族ポリエーテルケトン(PEK)系ポリマー、すなわち、前記一般式(T1−3)で示される繰返し単位を有するものが特に好ましい。ここで、芳香族ポリエーテルケトン系ポリマーとは、その分子鎖に少なくともエーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホン、ポリエーテルケトンホスフィンオキシド、ポリエーテルケトンニトリルなどを含むとともに、特定のポリマー構造を限定するものではない。ホスフィンオキシドやニトリルを多量に含有するものは、保護基を含有する成型用可溶性高分子電解質材料における溶剤可溶性が不足する場合があり、また、スルホンを多量に含む場合は耐熱メタノール性や耐熱水性等の耐溶剤性が不足する場合がある。
【0069】
【化15】

【0070】
(ここで、Z、Zは芳香環を含む有機基を表し、それぞれが2種類以上の基を表しても良い。ZおよびZの少なくとも1種のうち、少なくとも一部はイオン性基を含有する。aおよびbはそれぞれ独立に正の整数を表す。)
およびZとして好ましい有機基は、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェエニレン基である。これらは置換されていてもよいが、無置換である方が結晶性付与の点でより好ましい。さらに、好ましくはフェニレン基、最も好ましくはp−フェニレン基である。
【0071】
本発明において、イオン酸基を導入した化合物をモノマーとして用いることは、イオン性基の量を精密制御が可能な点からさらに好ましい。
【0072】
本発明によって得られた高分子電解質材料は、従来の結晶性ポリマーのスルホン化物とは異なる高次構造を有するものであり、結晶性を有するポリマーに可溶性を与え、均一で強靱な膜を得ることがである。
【0073】
本発明に使用される芳香族ポリエーテル系重合体を得るために行う芳香族求核置換反応による重合は、上記モノマー混合物を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒などを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。
【0074】
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。
【0075】
芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水剤を使用することもできる。
【0076】
反応水又は反応中に導入された水を除去するのに用いられる共沸剤は、一般に、重合を実質上妨害せず、水と共蒸留し且つ約25℃〜約250℃の間で沸騰する任意の不活性化合物である。普通の共沸剤には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、塩化メチレン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどが含まれる。もちろん、その沸点が用いた双極性溶媒の沸点よりも低いような共沸剤を選定することが有益である。共沸剤が普通用いられるが、高い反応温度、例えば200℃以上の温度が用いられるとき、特に反応混合物に不活性ガスを連続的に散布させるときにはそれは常に必要ではない。一般には、反応は不活性雰囲気下に酸素が存在しない状態で実施するのが望ましい。
【0077】
芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。
【0078】
重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低く、副生する無機塩の溶解度が高い溶媒中に加えることによって、無機塩を除去、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。回収されたポリマーは場合により水やアルコール又は他の溶媒で洗浄され、乾燥される。所望の分子量が得られたならば、ハライドあるいはフェノキシド末端基は場合によっては安定な末端基を形成させるフェノキシドまたはハライド末端封止剤を導入することにより反応させることができる。
【0079】
本発明で結晶性モノマーを用いた場合においては、加工性の観点から製膜段階まで保護基を脱保護させずに導入しておく必要があることから、保護基が安定に存在できる条件を考慮して、重合および精製を行う必要がある。芳香環に置換した保護基は酸性下では脱保護反応が進行してしまうため、系を中性あるいはアルカリ性に保つ必要がある。
【0080】
前記脱保護反応は、不均一又は均一条件下に水及び酸の存在下において行うことが可能であるが、機械強度や耐溶剤性の観点からは、膜等に成型した後で酸処理する方法がより好ましい。具体的には、成型された膜を塩酸水溶液中に浸漬することにより脱保護することが可能であり、酸の濃度や水溶液の温度については適宜選択することができる。
【0081】
ポリマーに対して必要な酸性水溶液の重量比は、好ましくは1〜100倍であるけれども更に大量の水を使用することもできる。酸触媒は好ましくは存在する水の0.1〜50重量%の濃度において使用する。好適な酸触媒としては塩酸、硝酸、フルオロスルホン酸、硫酸などのような強鉱酸、及びp−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンルスホン酸などのような強有機酸が挙げられる。ポリマーの膜厚等に応じて、酸触媒及び過剰水の量、反応圧力などは適宜選択できる。
【0082】
例えば、膜厚50μmの膜であれば、6N塩酸水溶液に例示されるような酸性水溶液中に浸漬し、95℃で1〜48時間加熱することにより、容易にほぼ全量を脱保護することが可能である。また、25℃の1N塩酸水溶液に24時間浸漬しても、大部分の保護基を脱保護することは可能である。ただし、脱保護の条件としてはこれらに限定される物ではなく、酸性ガスや有機酸等で脱保護したり、熱処理によって脱保護しても構わない。
【0083】
このようにして得られる本発明の高分子電解質材料として用いるポリマーの分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、0.1万〜500万、好ましくは1万〜50万である。0.1万未満では、成型した膜にクラックが発生するなど機械強度が不十分な場合がある。一方、500万を超えると、溶解性が不充分となり、また溶液粘度が高く、加工性が不良になるなどの問題がある場合がある。なお、本発明で得られる高分子電解質材料は、溶剤不溶性であるため分子量の測定が困難な場合がある。
【0084】
本発明の高分子電解質材料として用いるポリマー中のスルホン酸基はブロック共重合で導入しても、ランダム共重合で導入しても構わない。用いるポリマーの化学構造や結晶性の高さによって適宜選択することができる。燃料遮断性や低含水率が必要である場合にはランダム共重合がより好ましく、プロトン伝導性や高含水率が必要である場合にはブロック共重合がより好ましく用いられる。
【0085】
本発明に使用されるイオン性基は、負電荷を有する原子団であれば特に限定されるものではないが、プロトン交換能を有するものが好ましい。このような官能基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく用いられる。ここで、スルホン酸基は下記一般式(f1)で表される基、スルホンイミド基は下記一般式(f2)で表される基[一般式中Rは任意の原子団を表す。]、硫酸基は下記一般式(f3)で表される基、ホスホン酸基は下記一般式(f4)で表される基、リン酸基は下記一般式(f5)または(f6)で表される基、カルボン酸基は下記一般式(f7)で表される基を意味する。
【0086】
【化16】

【0087】
かかるイオン性基は前記官能基(f1)〜(f7)が塩となっている場合を含むものとする。前記塩を形成するカチオンとしては、任意の金属カチオン、NR(Rは任意の有機基)等を例として挙げることができる。金属カチオンの場合、その価数等特に限定されるものではなく、使用することができる。好ましい金属イオンの具体例を挙げるとすれば、Li、Na、K、Rh、Mg、Ca、Sr、Ti、Al、Fe、Pt、Rh、Ru、Ir、Pd等が挙げられる。中でも、高分子電解質膜としては、安価で、溶解性に悪影響を与えず、容易にプロトン置換可能なNa、Kがより好ましく使用される。
【0088】
これらのイオン性基は前記高分子電解質膜中に2種類以上含むことができ、組み合わせることにより好ましくなる場合がある。組み合わせはポリマーの構造などにより適宜決められる。中でも、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基を有することがより好ましく、耐加水分解性の点から少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。
【0089】
高分子電解質膜中のスルホン酸基の量は、スルホン酸基密度(mmol/g)の値として示すことができる。本発明における高分子電解質膜のスルホン酸基密度は、プロトン伝導性、燃料クロスオーバーおよび機械強度の点から0.1〜5.0mmol/gであることが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜3.0mmol/g、燃料クロスオーバーの点から最も好ましくは0.8〜2.0mmol/gである。スルホン酸基密度が、0.1mmol/gより低いと、プロトン伝導性が低いため十分な発電特性が得られないことがあり、5.0mmol/gより高いと燃料電池用電解質膜として使用する際に、十分な耐水性および含水時の機械的強度が得られないことがある。
【0090】
ここで、スルホン酸基密度とは、乾燥した高分子電解質膜1グラムあたりに導入されたスルホン酸基のモル数であり、値が大きいほどスルホン酸基の量が多いことを示す。スルホン酸基密度は、元素分析、中和滴定により求めることが可能である。これらの中でも測定の容易さから、元素分析法を用い、S/C比から算出することが好ましいが、スルホン酸基以外の硫黄源を含む場合などは、中和滴定法によりイオン交換容量を求めることもできる。本発明の高分子電解質材料は、後述するようにイオン性基を有するポリマーとそれ以外の成分からなる複合体である態様を含むが、その場合もスルホン酸基密度は複合体の全体量を基準として求めるものとする。
【0091】
中和滴定の手順は下記のとおりである。測定は3回以上行ってその平均をとるものとする。
(1) 試料をミルにより粉砕し、粒径を揃えるため、目50メッシュの網ふるいにかけ、ふるいを通過したものを測定試料とする。
(2) サンプル管(蓋付き)を精密天秤で秤量する。
(3) 前記(1)の試料 約0.1gをサンプル管に入れ、40℃で16時間、真空乾燥する。
(4) 試料入りのサンプル管を秤量し、試料の乾燥重量を求める。
(5) 塩化ナトリウムを30重量%メタノール水溶液に溶かし、飽和食塩溶液を調製する。
(6) 試料に前記(5)の飽和食塩溶液を25mL加え、24時間撹拌してイオン交換する。
(7) 生じた塩酸を0.02mol/L水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液(0.1体積%)を2滴加え、薄い赤紫色になった点を終点とする。
(8) スルホン酸基密度は下記の式により求める。
【0092】
スルホン酸基密度(mmol/g)=
〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/ml)×滴下量(ml)〕/試料の乾燥重量(g)
本発明に使用されるイオン性基を有するポリマーには本発明の目的を阻害しない範囲において、他の成分、例えば導電性若しくはイオン伝導性を有さない不活性なポリマーや有機あるいは無機の化合物、が含有されていても構わない。
【0093】
芳香族ポリエーテル系重合体に対してイオン性基を導入する方法は、イオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法と、高分子反応でイオン性基を導入する方法が挙げられる。
【0094】
イオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法としては、繰り返し単位中にイオン性基を有したモノマーを用いれば良く、必要により適当な保護基を導入して重合後脱保護基を行えばよい。かかる方法は例えば ジャーナル オブ メンブレン サイエンス(Journal of Membrane Science), 197, 2002, p.231-242 に記載がある。
【0095】
高分子反応でイオン性基を導入する方法について例を挙げて説明すると、芳香族系高分子へのホスホン酸基の導入は、例えばポリマー プレプリンツ(Polymer Preprints), 51, 2002, p.750等に記載の方法によって可能である。芳香族系高分子へのリン酸基の導入は、例えばヒドロキシル基を有する芳香族系高分子のリン酸エステル化によって可能である。芳香族系高分子へのカルボン酸基の導入は、例えばアルキル基やヒドロキシアルキル基を有する芳香族系高分子を酸化することによって可能である。芳香族系高分子への硫酸基の導入は、例えばヒドロキシル基を有する芳香族系高分子の硫酸エステル化によって可能である。
【0096】
芳香族系高分子をスルホン化する方法、すなわちスルホン酸基を導入する方法としては、たとえば特開平2−16126号公報あるいは特開平2−208322号公報等に記載の方法が公知である。具体的には、例えば、芳香族系高分子をクロロホルム等の溶媒中でクロロスルホン酸のようなスルホン化剤と反応させたり、濃硫酸や発煙硫酸中で反応することによりスルホン化することができる。スルホン化剤には芳香族系高分子をスルホン化するものであれば特に制限はなく、上記以外にも三酸化硫黄等を使用することができる。この方法により芳香族系高分子をスルホン化する場合には、スルホン化の度合いはスルホン化剤の使用量、反応温度および反応時間により、容易に制御できる。芳香族系高分子へのスルホンイミド基の導入は、例えばスルホン酸基とスルホンアミド基を反応させる方法によって可能である。
【0097】
本発明の高分子電解質材料は、広角X線回折(XRD)によって測定される結晶化度が0.5%未満であることがより好ましい。
【0098】
本発明で使用する保護基を有する高分子電解質材料は加工性が必要な成型用可溶性高分子電解質材料としての観点から、非晶性であることがより好ましく、0.5%未満であることが好ましい。結晶化度が0.5%以上である場合には、加工性が不足して均一で強靱な電解質膜が得られない場合があるので好ましくない。また、本発明によって得られた高分子電解質成型体としても、成型用可溶性高分子電解質材料の結晶化度の影響を受けるため、結晶化度は0.5%未満であることがより好ましい。結晶化度が0.5%以上である場合に、靭性が不足して長期耐久性が不足する場合があり、好ましくない。
【0099】
かかる高分子電解質材料の広角X線回折による結晶化度測定は、実施例に記載の方法で行う。
【0100】
本発明で得られた高分子電解質材料においては、燃料遮断性や高濃度燃料使用による高エネルギー容量化の観点から、耐溶剤性に優れる、すなわち100℃のN−メチルピロリドンに2時間浸漬後の重量減が70重量%以下であることがより好ましい。液体燃料としてはメタノールなどのアルコール類が使用される場合が多いが、本発明において耐溶剤性評価としてはポリマー種に関係なく優れた溶解性を有するN−メチルピロリドンを用いて評価する。さらに好ましくは50重量%以下、最も好ましくは30重量%以下である。重量減が70重量%を越える場合は、燃料遮断性だけでなく、結晶性が不足するために機械強度や長期耐久性が不十分であったり、高温高濃度のメタノール水溶液を燃料として用いるDMFC用に用いた場合には、膜が溶解したり大きく膨潤するので好ましくない。また、高分子電解質膜に直接、触媒ペーストを塗工して膜電極複合体を作製することが困難となり、製造コストが増大するだけでなく、触媒層との界面抵抗が大きくなり、十分な発電特性が得られない場合がある。
【0101】
かかる高分子電解質材料のN−メチルピロリドンに対する重量減は、実施例に記載の方法で測定する。
【0102】
本発明の高分子電解質材料を燃料電池用として使用する際には、通常膜の状態および触媒層のバインダーで使用される。
【0103】
本発明の高分子電解質材料を高分子電解質膜に成型する方法に特に制限はないが、t−ブチル基を有する段階で、溶液状態より製膜する方法あるいは溶融状態より製膜する方法等が可能である。前者では、たとえば、該高分子電解質材料をN−メチル−2−ピロリドン等の溶媒に溶解し、その溶液をガラス板等の上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜する方法が例示できる。
【0104】
製膜に用いる溶媒としては、芳香族ポリエーテル系重合体を溶解し、その後に除去し得るものであればよく、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロパノールなどのアルコール系溶媒、水およびこれらの混合物が好適に用いられるが、非プロトン性極性溶媒が最も溶解性が高く好ましい。
【0105】
必要な固形分濃度に調製したポリマー溶液を常圧の濾過もしくは加圧濾過などに供し、高分子電解質溶液中に存在する異物を除去することは強靱な膜を得るために好ましい方法である。ここで用いる濾材は特に限定されるものではないが、ガラスフィルターや金属性フィルターが好適である。該濾過で、ポリマー溶液が通過する最小のフィルターの孔径は、1μm以下が好ましい。濾過を行わないと異物の混入を許すこととなり、膜破れが発生したり、耐久性が不十分となるので好ましくない。
【0106】
次いで、本発明で得られた高分子電解質膜はイオン性基の少なくとも一部を金属塩の状態で熱処理することが好ましい。さらに、高分子電解質材料が重合時に金属塩の状態で重合するものであれば、そのまま製膜、熱処理することが好ましい。金属塩の金属はスルホン酸と塩を形成しうるものであればよいが、価格および環境負荷の点からはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Wなどが好ましく、これらの中でもLi、Na、K、Ca、Sr、Baがより好ましく、Li、Na、Kがさらに好ましい。この熱処理の温度は好ましくは150〜550℃、さらに好ましくは160〜400℃、特に好ましくは180〜350℃である。熱処理時間は、好ましくは10秒〜12時間、さらに好ましくは30秒〜6時間、特に好ましくは1分〜1時間である。熱処理温度が低すぎると、燃料透過性の抑制効果や弾性率、破断強度が不足する。一方、高すぎると膜材料の劣化を生じやすくなる。熱処理時間が10秒未満であると熱処理の効果が不足する。一方、12時間を超えると膜材料の劣化を生じやすくなる。熱処理により得られた高分子電解質膜は必要に応じて酸性水溶液に浸漬することによりプロトン置換することができる。この方法で成形することによって本発明の高分子電解質膜はプロトン伝導度と燃料遮断性、ならびに機械特性、長期耐久性、耐溶剤性をより良好なバランスで両立することが可能となる。
【0107】
本発明で使用される高分子電解質材料を高分子電解質膜へ転化する方法としては、該芳香族ポリエーテル系重合体から構成される膜を前記手法により作製後、芳香環に置換した保護基の少なくとも一部を脱保護せしめるものである。この方法によれば、溶解性に乏しい低スルホン酸基量ポリマーの溶液製膜が可能となり、プロトン伝導性と燃料クロスオーバー抑制効果の両立、優れた耐溶剤性、機械特性、寸法安定性を達成可能となる。
【0108】
本発明において、芳香環に保護基を置換させその一部または全部を脱保護せしめる方法は特に限定されるものではないが、成型した後で、酸処理する方法が挙げられる。具体的には、成型された膜を塩酸や硫酸水溶液中に浸漬することにより脱保護することが可能であり、酸の濃度や水溶液の温度については成型体への染みこみ安さ等を考慮して適宜選択することができる。例えば、膜厚50μmの膜であれば6N塩酸水溶液に例示されるような酸性水溶液中に浸漬し、95℃で8時間加熱することにより、容易に脱保護することが可能である。ただし、脱保護の条件としてはこれらに限定される物ではなく、酸性ガスや有機酸等で脱保護しても構わない。
【0109】
本発明によって得られる高分子電解質膜は、さらに必要に応じて放射線照射などの手段によって高分子構造を架橋せしめることもできる。かかる高分子電解質膜を架橋せしめることにより、燃料クロスオーバーおよび燃料に対する膨潤をさらに抑制する効果が期待でき、機械的強度が向上し、より好ましくなる場合がある。かかる放射線照射の種類としては例えば、電子線照射やγ線照射を挙げることができる。
【0110】
本発明によって得られる高分子電解質膜の膜厚としては、好ましくは1〜2000μmのものが好適に使用される。実用に耐える膜の強度を得るには1μmより厚い方がより好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには2000μmより薄い方が好ましい。かかる膜厚のさらに好ましい範囲は3〜500μm、特に好ましい範囲は5〜250μmである。かかる膜厚は、溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御することができる。
【0111】
また、本発明によって得られる高分子電解質膜には、通常の高分子化合物に使用される結晶化核剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤あるいは離型剤等の添加剤を、本発明の目的に反しない範囲内で添加することができる。また、微多孔膜、不織布、メッシュ等で補強しても良い。
【0112】
また、本発明によって得られる高分子電解質膜には、前述の諸特性に悪影響をおよぼさない範囲内で機械的強度、熱安定性、加工性などの向上を目的に、各種ポリマー、エラストマー、フィラー、微粒子、各種添加剤などを含有させてもよい。
【0113】
本発明の高分子電解質膜は、その20℃の条件下、30重量%メタノール水溶液に対する単位面積当たりのメタノール透過量が40μmol・min−1・cm−2以下であることが好ましい。該高分子電解質膜を用いた燃料電池において、燃料濃度が高い領域において高出力および高エネルギー容量が得られるという観点から、高い燃料濃度を保持すべく、燃料透過量が小さいことが望まれるからである。メタノール透過量は、25℃の純水に高分子電解質膜を24時間浸漬した後で測定する。
【0114】
かかる観点からは、0μmol・min−1・cm−2が最も好ましいが、プロトン伝導性を確保する観点からは0.01μmol・min−1・cm−2以上が好ましい。
【0115】
なおかつ、本発明によって得られる高分子電解質膜は、単位面積当たりのプロトン伝導度が1S・cm−2以上であることが好ましく、2S・cm−2以上がより好ましい。プロトン伝導度は、25℃の純水に高分子電解質膜を24時間浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、できるだけ素早く行う定電位交流インピーダンス法により測定することができる。
【0116】
単位面積当たりのプロトン伝導度を1S・cm−2以上とすることにより、燃料電池用高分子電解質膜として使用する際に、十分なプロトン伝導性、すなわち十分な電池出力を得ることができる。プロトン伝導度は高い方が好ましいが、高プロトン伝導度の膜はメタノール水などの燃料により溶解や崩壊しやすくなり、また燃料透過量も大きくなる傾向があるので、現実的な上限は50S・cm−2である。
【0117】
本発明によって得られる高分子電解質膜は、上記したような低メタノール透過量と高プロトン伝導度を同時に達成することが、高出力と高エネルギー容量を両立させる上から好ましい。
【0118】
本発明における高分子電解質部品とは、高分子電解質成型体および高分子電解質材料を含有する部品を意味する。本発明において、高分子電解質部品の形状としては、前述の高分子電解質成型体と同様である。
【0119】
本発明によって得られる高分子電解質材料を燃料電池用として使用する際には、膜の状態および触媒層のバインダーに好適である。
【0120】
本発明によって得られる高分子電解質膜は、種々の用途に適用可能である。例えば、体外循環カラム、人工皮膚などの医療用途、ろ過用用途、イオン交換樹脂用途、各種構造材用途、電気化学用途に適用可能である。また、人工筋肉としても好適である。中でも種々の電気化学用途により好ましく利用できる。電気化学用途としては、例えば、燃料電池、レドックスフロー電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置等が挙げられるが、中でも燃料電池が最も好ましい。
【0121】
また、本発明によって得られる膜電極複合体とは、本発明によって得られる高分子電解質材料を高分子電解質膜や触媒層に含有する膜電極複合体を意味する。さらに、膜電極複合体とは、高分子電解質膜と電極が複合化された部品である。
【0122】
かかる高分子電解質膜を燃料電池として用いる際の高分子電解質膜と電極の接合法については特に制限はなく、公知の方法(例えば、電気化学,1985, 53, p.269.記載の化学メッキ法、電気化学協会編(J. Electrochem. Soc.)、エレクトロケミカル サイエンス アンド テクノロジー (Electrochemical Science and Technology),1988, 135, 9, p.2209. 記載のガス拡散電極の熱プレス接合法など)を適用することが可能である。
【0123】
加熱プレスにより一体化する場合は、その温度や圧力は、高分子電解質膜の厚さ、水分率、触媒層や電極基材により適宜選択すればよい。また、本発明では高分子電解質膜が乾燥した状態または吸水した状態でもプレスによる複合化が可能である。具体的なプレス方法としては圧力やクリアランスを規定したロールプレスや、圧力を規定した平板プレスなどが挙げられ、工業的生産性やイオン性基を有する高分子電解質材料の熱分解抑制などの観点から0℃〜250℃の範囲で行うことが好ましい。加圧は高分子電解質膜や電極保護の観点からできる限り弱い方が好ましく、平板プレスの場合、10MPa以下の圧力が好ましく、加熱プレス工程による複合化を実施せずに電極と高分子電解質膜を重ね合わせ燃料電池セル化することもアノード、カソード電極の短絡防止の観点から好ましい選択肢の一つである。この方法の場合、燃料電池として発電を繰り返した場合、短絡箇所が原因と推測される高分子電解質膜の劣化が抑制される傾向があり、燃料電池として耐久性が良好となる。
【0124】
また、高分子電解質材料の軟化温度やガラス転移温度以上で加熱プレスする場合、イオン性基の分解温度が近い場合は高分子電解質材料の軟化温度やガラス転移温度以上の温度は採用困難であるが、このイオン性基を金属塩として分解を抑制し、高分子電解質材料の軟化温度やガラス転移温度以上で加熱プレスをする事ができる。例えば、電極の中の結着剤や高分子電解質膜などの高分子電解質材料のイオン性基がスルホン酸基の場合、スルホン酸Naとし、加熱プレスによる接合後、塩酸や硫酸などでプロトン交換し、膜電極複合体を製造することが挙げられる。
【0125】
また、電極と高分子電解質膜の複合化時に電極と高分子電解質膜の間に界面抵抗低減性層を介することも好ましい方法である。電極と高分子電解質膜間の微細な空隙を該界面抵抗低減層で少なくとも一部分は満たすことにより実質的これらの接触面積を増大させることができとともに、空隙に、燃料電池として使用する燃料や空気、および発生する水や二酸化炭素などが入り込むことによる抵抗の増大を防ぐことができる。また、電極の触媒層に生じたクラック中にも界面抵抗低減性組成物が浸入し、従来発電に使用できなかった触媒層クラックの内部壁面も有効に利用できるようになり、高分子電解質と触媒の接触面積を大きくできる。これらの結果として、膜電極複合体の抵抗が低下し、出力密度が大きくなり、高性能な燃料電池を得ることができる。さらに、電極基材や触媒層の突起などを被覆することも可能であり、膜電極複合体作製時の微小短絡や燃料電池として使用中の微小短絡を低減でき、膜電極複合体の性能低下を抑制できる効果も期待できる。さらに、高分子電解質膜にピンホールや表面欠陥等がある場合でも、界面抵抗低減性層により保護、補修可能であり、膜電極複合体としての性能安定化や耐久性向上が可能である。
【0126】
この界面抵抗低減層はm本発明の高分子電解質材料などイオン伝導性があり、使用する燃料に対する耐性があれば特に限定されないが、機械強度や耐燃料性の観点から、本発明で得られた高分子電解質材料を含むことが特に好ましい。例えば、膜電極複合化時は本発明の少なくとも保護基およびイオン性基を含有する高分子電解質材料と溶媒および可塑剤を含んだ組成物を界面抵抗低減層の前駆体とて使用し、膜電極複合化後に溶媒および可塑剤を乾燥、抽出洗浄などで除去することで、界面抵抗の低減と機械的強度および耐燃料性を兼ね備えた高性能な膜電極複合体が得られることができる。この時、界面抵抗低減層前駆体は複合工程前に、電極側に形成してもよいし、高分子電解質膜側に形成してもよい。
【0127】
次に、本発明の膜電極複合体に好適な電極の例を説明する。かかる電極は、触媒層および電極基材からなるものである。ここでいう触媒層は、電極反応を促進する触媒、電子伝導体、イオン伝導体などを含む層である。かかる触媒層に含まれる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金などの貴金属触媒が好ましく用いられる。これらの内の1種類を単独で用いてもよいし、合金、混合物など、2種類以上を併用してもよい。
【0128】
また、触媒層に電子伝導体(導電材)を使用する場合は、電子伝導性や化学的な安定性の点から炭素材料、無機導電材料が好ましく用いられる。なかでも、非晶質、結晶質の炭素材料が挙げられる。例えば、チャネルブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが電子伝導性と比表面積の大きさから好ましく用いられる。ファーネスブラックとしては、キャボット社製バルカンXC−72R(登録商標)、バルカンP(登録商標)、ブラックパールズ880(登録商標)、ブラックパールズ1100(登録商標)、ブラックパールズ1300(登録商標)、ブラックパールズ2000(登録商標)、リーガル400(登録商標)、ケッチェンブラック・インターナショナル社製ケッチェンブラックEC(登録商標)、EC600JD、三菱化学社製#3150、#3250などが挙げられ、アセチレンブラックとしては電気化学工業社製デンカブラック(登録商標)などが挙げられる。またカーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素なども使用することができる。これらの炭素材料の形態としては、不定形粒子状のほか繊維状、鱗片状、チューブ状、円錐状、メガホン状のものも用いることができる。また、これら炭素材料を後処理加工したものを用いてもよい。
【0129】
また、電子伝導体を使用する場合は、触媒粒子と均一に分散していることが電極性能の点で好ましい。このため、触媒粒子と電子伝導体は予め塗液として良く分散しておくことが好ましい。さらに、触媒層として、触媒と電子伝導体とが一体化した触媒担持カーボン等を用いることも好ましい実施態様である。この触媒担持カーボンを用いることにより、触媒の利用効率が向上し、電池性能の向上および低コスト化に寄与できる。ここで、触媒層に触媒担持カーボンを用いた場合においても、電子伝導性をさらに高めるために導電剤を添加することも可能である。このような導電剤としては、上述のカーボンブラックが好ましく用いられる。
【0130】
触媒層に用いられるイオン伝導性を有する物質(イオン伝導体)としては、一般的に、種々の有機、無機材料が公知であるが、燃料電池に用いる場合には、イオン伝導性を向上するスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などのイオン性基を有するポリマー(イオン伝導性ポリマー)が好ましく用いられる。なかでも、イオン性基の安定性の観点から、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるイオン伝導性を有するポリマー、あるいは本発明の高分子電解質材料および公知の炭化水素系高分子電解質材料が好ましく用いられる。パーフルオロ系イオン伝導性ポリマーとしては、例えばデュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のAciplex(登録商標)、旭硝子社製フレミオン(登録商標)などが好ましく用いられる。これらのイオン伝導性ポリマーは、溶液または分散液の状態で触媒層中に設ける。この際に、ポリマーを溶解あるいは分散化する溶媒は特に限定されるものではないが、イオン伝導性ポリマーの溶解性の点から極性溶媒が好ましい。なかでも、本発明で得られた高分子電解質材料が、触媒層中のイオン伝導性を有する物質(イオン伝導体)として最も好適に使用できる。特に、メタノール水溶液やメタノールを燃料にする燃料電池の場合、耐メタノール性の観点から本発明で得られた高分子電解質材料が耐久性などに有効である。本発明の高分子電解質材料を成型用可溶性高分子電解質材料の段階で加工し、MEAとした後で脱保護を行い、耐溶剤性を付与することにより、加工性と耐溶剤性を両立した極めて好ましいバインダーを作製することが可能である。
【0131】
前記、触媒と電子伝導体類は通常粉体であるので、イオン伝導体はこれらを固める役割を担うことが通常である。イオン伝導体は、触媒層を作製する際に触媒粒子と電子伝導体とを主たる構成物質とする塗液に予め添加し、均一に分散した状態で塗布することが電極性能の点から好ましいものである。触媒層に含まれるイオン伝導体の量としては、要求される電極特性や用いられるイオン伝導体の伝導度などに応じて適宜決められるべきものであり、特に限定されるものではないが、重量比で1〜80%の範囲が好ましく、5〜50%の範囲がさらに好ましい。イオン伝導体は、少な過ぎる場合はイオン伝導度が低く、多過ぎる場合はガス透過性を阻害する点で、いずれも電極性能を低下させることがある。
【0132】
かかる触媒層には、上記の触媒、電子伝導体、イオン伝導体の他に、種々の物質を含んでいてもよい。特に、触媒層中に含まれる物質の結着性を高めるために、上述のイオン伝導性ポリマー以外のポリマーを含んでもよい。このようなポリマーとしては例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)などのフッ素原子を含むポリマー、これらの共重合体、これらのポリマーを構成するモノマー単位とエチレンやスチレンなどの他のモノマーとの共重合体、あるいは、ブレンドポリマーなどを用いることができる。これらポリマーの触媒層中の含有量としては、重量比で5〜40%の範囲が好ましい。ポリマー含有量が多すぎる場合、電子およびイオン抵抗が増大し電極性能が低下する傾向がある。
【0133】
また、触媒層は、燃料が液体や気体の場合には、その液体や気体が透過しやすい構造を有していることが好ましく、電極反応に伴う副生成物質の排出も促す構造が好ましい。
【0134】
また、電極基材としては、電気抵抗が低く、集電あるいは給電を行えるものを用いることができる。また、前記触媒層を集電体兼用で使用する場合は、特に電極基材を用いなくてもよい。電極基材の構成材としては、たとえば、炭素質、導電性無機物質が挙げられ、例えば、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛などの炭素材、ステンレススチール、モリブデン、チタンなどが例示される。これらの、形態は特に限定されず、たとえば繊維状あるいは粒子状で用いられるが、燃料透過性の点から炭素繊維などの繊維状導電性物質(導電性繊維)が好ましい。導電性繊維を用いた電極基材としては、織布あるいは不織布いずれの構造も使用可能である。
【0135】
たとえば、東レ(株)製カーボンペーパーTGPシリーズ、SOシリーズ、E-TEK社製カーボンクロスなどが用いられる。かかる織布としては、平織、斜文織、朱子織、紋織、綴織など、特に限定されること無く用いられる。また、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、ウォータージェットパンチ法、メルトブロー法によるものなど特に限定されること無く用いられる。また編物であってもよい。これらの布帛において、特に炭素繊維を用いた場合、耐炎化紡績糸を用いた平織物を炭化あるいは黒鉛化した織布、耐炎化糸をニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法などによる不織布加工した後に炭化あるいは黒鉛化した不織布、耐炎化糸あるいは炭化糸あるいは黒鉛化糸を用いた抄紙法によるマット不織布などが好ましく用いられる。特に、薄く強度のある布帛が得られる点から不織布、やクロスを用いるのが好ましい。
【0136】
かかる電極基材に用いられる炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などがあげられる。
【0137】
また、かかる電極基材には、水の滞留によるガス拡散・透過性の低下を防ぐための撥水処理や、水の排出路を形成するための部分的撥水、親水処理や、抵抗を下げるための炭素粉末の添加等を行うこともできる。また、電極基材と触媒層の間に、少なくとも無機導電性物質と疎水性ポリマーを含む導電性中間層を設けることもできる。特に、電極基材が空隙率の大きい炭素繊維織物や不織布である場合、導電性中間層を設けることで、触媒層が電極基材にしみ込むことによる性能低下を抑えることができる。
【0138】
燃料電池のなかでも高分子電解質型燃料電池に好適であり、これには水素を燃料とするものとメタノールなどの有機化合物を燃料とするものがあり、炭素数1〜6の有機化合物およびこれらと水の混合物から選ばれた少なくとも1種を燃料とする直接型燃料電池に特に好ましく用いられる。炭素数1〜6の有機化合物としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの炭素数1〜3のアルコール、ジメチルエーテルが好ましく、メタノールが最も好ましく使用される。
【0139】
本発明の膜電極複合体を使用した燃料電池の燃料としては、酸素、水素およびメタン、エタン、プロパン、ブタン、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、グリセリン、エチレングリコール、ギ酸、酢酸、ジメチルエーテル、ハイドロキノン、シクロヘキサンなどの炭素数1〜6の有機化合物およびこれらと水との混合物等が挙げられ、1種または2種以上の混合物でもよい。特に発電効率や電池全体のシステム簡素化の観点から水素、炭素数1〜6の有機化合物を含む燃料が好適に使用され、発電効率の点でとりわけ好ましいのは水素およびメタノール水溶液である。メタノール水溶液を用いる場合、メタノールの濃度としては、使用する燃料電池のシステムによって適宜選択されるが、できる限り高濃度のほうが長時間駆動の観点から好ましい。例えば、送液ポンプや送風ファンなど発電に必要な媒体を膜電極複合体に送るシステムや、冷却ファン、燃料希釈システム、生成物回収システムなどの補機を有するアクティブ型燃料電池はメタノールの濃度30〜100%以上の燃料を燃料タンクや燃料カセットにより注入し、0.5〜20%程度に希釈して膜電極複合体に送ることが好ましく、補機が無いパッシブ型の燃料電池はメタノールの濃度が10〜100%の範囲の燃料が好ましい。
【0140】
さらに、本発明によって得られる高分子電解質成型体を使用した高分子電解質型燃料電池の用途としては、特に限定されないが、移動体の電力供給源が好ましいものである。特に、携帯電話、パソコン、PDA、テレビ、ラジオ、ミュージックプレーヤー、ゲーム機、ヘッドセット、DVDプレーヤーなどの携帯機器、産業用などの人型、動物型の各種ロボット、コードレス掃除機等の家電、玩具類、電動自転車、自動二輪、自動車、バス、トラックなどの車両や船舶、鉄道などの移動体の電力供給源、据え置き型の発電機など従来の一次電池、二次電池の代替、もしくはこれらとのハイブリット電源として好ましく用いられる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性の測定条件は次の通りである。また、本実施例中には化学構造式を挿入するが、該化学構造式は読み手の理解を助ける目的で挿入するものであり、ポリマーの重合成分の化学構造、正確な組成、並び方、スルホン酸基の位置、数、分子量などを必ずしも正確に表すわけではなく、これらに限定されるものでない。
【0142】
(1)スルホン酸基密度
検体となる膜の試料を25℃の純水に24時間浸漬し、40℃で24時間真空乾燥した後、元素分析により測定した。炭素、水素、窒素の分析は全自動元素分析装置varioEL、硫黄の分析はフラスコ燃焼法・酢酸バリウム滴定、フッ素の分析はフラスコ燃焼・イオンクロマトグラフ法で実施した。ポリマーの組成比から単位グラムあたりのスルホン酸基密度(mmol/g)を算出した。
【0143】
(2)プロトン伝導度
膜の試料を25℃の30重量%メタノール水溶液に24時間浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、できるだけ素早く定電位交流インピーダンス法でプロトン伝導度Aを測定した。
【0144】
また、膜の試料を25℃の純水に24時間浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、できるだけ素早く定電位交流インピーダンス法でプロトン伝導度Bを測定した。
【0145】
測定装置としては、Solartron製電気化学測定システム(Solartron 1287 Electrochemical InterfaceおよびSolartron 1255B Frequency ResponseAnalyzer)を使用した。サンプルは、φ2mmおよびφ10mmの2枚の円形電極(ステンレス製)間に加重1kgをかけて挟持した。有効電極面積は0.0314cmである。サンプルと電極の界面には、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)の15%水溶液を塗布した。25℃において、交流振幅50mVの定電位インピーダンス測定を行い、膜厚方向のプロトン伝導度を求めた。
【0146】
(3)重量平均分子量
ポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー製HLC−8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー製TSK gel SuperHM−H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N−メチル−2−ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN−メチル−2−ピロリドン溶媒)にて、流量0.2mL/minで測定し、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を求めた。
【0147】
(4)耐熱水性および耐熱メタノール性
電解質膜の耐熱水性および耐熱メタノール性は60℃、30wt%メタノール水溶液中での寸法変化率を測定することにより評価した。電解質膜を長さ約5cm、幅約1cmの短冊に切り取り、25℃の水中に24時間浸漬後、ノギスで長さ(L1)を測長した。該電解質膜を60℃の30wt%メタノール水溶液中に12時間浸漬後、再度ノギスで長さ(L2)を測長し、その寸法変化の大きさを目視で観察した。
【0148】
(5)膜厚
ミツトヨ製グラナイトコンパレータスタンドBSG−20にセットしたミツトヨ製ID−C112型を用いて測定した。
【0149】
(6)メタノール透過量
膜状の試料を25℃の熱水純水に24時間浸漬した後、20℃において1モル%メタノール水溶液を用いて測定した。
【0150】
H型セル間にサンプル膜を挟み、一方のセルには純水(60mL)を入れ、他方のセルには1モル%メタノール水溶液(60mL)を入れた。セルの容量は各80mLであった。また、セル間の開口部面積は1.77cmであった。20℃において両方のセルを撹拌した。1時間、2時間および3時間経過時点で純水中に溶出したメタノール量を島津製作所製ガスクロマトグラフィ(GC−2010)で測定し定量した。グラフの傾きから単位時間あたりのメタノール透過量を求めた。
【0151】
(7)広角X線回折
検体となる高分子電解質材料を回折計にセットし、以下の条件にてX線回折測定を行った。
【0152】
X線回折装置:リガク社製RINT2500V
X線:Cu−Kα
X線出力:50kV−300mA
光学系:集中法光学系
スキャン速度:2θ=2°/min
スキャン方法:2θ−θ
スキャン範囲:2θ=5〜60°
スリット:発散スリット-1/2°、受光スリット-0.15mm、散乱スリット-1/2°
結晶化度はプロファイルフィッティングを行うことにより各成分の分離を行い、各成分の回折角と積分強度を求め、得られた結晶質ピークと非晶質ハローの積分強度を用いて一般式(S1)の計算式から結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=(全ての結晶質ピークの積分強度の和)/(全ての結晶質ピークと非晶質ハローの積分強度の和)×100 (S1)
(8)N−メチルピロリドンに対する重量減
検体となる高分子電解質膜(約0.1g)を純水で十分に洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して重量を測定した。高分子電解質膜を1000倍重量のN−メチルピロリドンに浸漬し、密閉容器中、撹拌しながら100℃、2時間加熱した。次に、アドバンテック社製濾紙(No.2)を用いて濾過を行った。濾過時に1000倍重量の同一溶剤で濾紙と残渣を洗浄し、十分に溶出物を溶剤中に溶出させ、さらに残渣中に含まれるN−メチルピロリドンを純水で十分に洗浄させた。残渣を40℃で24時間真空乾燥して重量を測定することにより、重量減を算出した。
【0153】
(9)膜電極複合体の性能評価
A.電圧保持率
膜電極複合体をエレクトロケム社製単セル“EFC05−01SP”(電極面積5cm用セル)に組み込み、セル温度を50℃とし、アノード側に20%メタノール水溶液0.2ml/分の速度で供給し、カソード側に合成空気を50ml/分の速度で供給し、東陽テクニカ製評価装置、ポテンショスタットはsolartron製1470、周波数応答アナライザはsolartron製1255Bを用いて電圧−電流特性を測定し、電流密度250mA/cmの電圧を読みとり、以後5時間毎に1時間発電休止を入れるパターンで、250mA/cmの定電流で通算100時間の運転を行った。定電流評価後、電流−電圧曲線から電流密度250mA/cmの電圧をよみとり、初回からの保持率を算出した。
【0154】
B.燃料(メタノール)透過量(以下、「MCO」と称する場合がある。)の測定
電流を印加する前にカソードからの排出される合成空気をガス捕集用の袋に捕集してジ−エルサイエンス製オートサンプラー付ガスクロマトグラフ“MicroGC CP4900”を用いてサンプリングガス中のメタノールと、酸化されて生成する二酸化炭素の両方の濃度を測定し算出した。ここでの二酸化炭素は、全て透過したメタノール由来で発生したものと仮定した。カソードの空気流量をL(ml/分)、ガスクロマトグラフによるメタノールと二酸化炭素の合計濃度をZ(体積%)および合計体積をV(ml)、開口面積(膜電極複合体中のメタノール水溶液燃料が直接接触する面積)をA(cm)とし下式で計算した。
MCO(mol/cm2/分)=(L+V)×(Z/100)/22400/A
C.発電評価(メタノール水燃料)
30重量%メタノール水をアノードに溜めた状態で、東陽テクニカ製評価装置、ポテンショスタットはsolartron製1470、周波数応答アナライザはsolartron製1255Bを用いて測定した。電流スイープ速度を10mV/分とし、電圧が30mVまで測定した。電流−電圧曲線の電流と電圧の積が最高になる点を電極面積で割った値を出力密度とした。
【0155】
D.発電評価(水素燃料)
燃料電池セルをセル温度:60℃、燃料ガス:水素、酸化ガス:空気、ガス利用率:アノード70%/カソード40%、加湿;アノード側90%/カソード90%において電流−電圧(I−V)測定した。電流−電圧曲線の電流と電圧の積が最高になる点を電極面積で割った値を出力密度とした。
【0156】
合成例1
下記一般式S2:2,5-ジフルオロ-4-メチルアセトフェノン(S2)を合成した。
【0157】
【化17】

【0158】
大気下、塩化カルシウム管、冷却管、および、攪拌機を備えた5lフラスコに、2,5-ジフルオロトルエン(S1)400.5g(3.13mol)、塩化アセチル 288.1g(3.67mol)、二硫化炭素 1600ml、および、塩化アルミニウム 554.2g(4.16mol)を仕込み、オイルバス(58℃)で7時間加熱・還流した。 その間、内温は43〜47℃に保った。冷却後、攪拌機を備えた10l・ポリ容器に砕氷3000gと濃塩酸600mlを入れ、攪拌しながら、反応混合物を少しずつ投入した。混合物を20l・分液槽にて、ジエチルエーテル2l×1回、1l×2回、抽出・分液した。エーテル層に無水硫酸マグネシウム500gを入れて1.5時間乾燥し、硫酸マグネシウムをろ過して、ジエチルエーテル500ml×3回、洗浄した。ろ洗液を濃縮して、粗結晶510.3gを得た。
【0159】
粗結晶をエタノール426gと水213gに70℃で溶解し、冷蔵庫で再結晶した。得られた結晶をろ過して、冷エタノール/水(250ml/250ml)×2回洗浄し、30℃×6時間、減圧乾燥した。2,5-ジフルオロ-4-メチルアセトフェノン(S2)435.1g(2.58mol)を得た。白色結晶。mp. 46℃。収率81.7%。
【0160】
合成例2
下記一般式S3:2,5-ジフルオロ-4-メチル安息香酸(S3)を合成した。
【0161】
【化18】

【0162】
大気下、冷却管および攪拌機を備えた5lフラスコに、S2 456.8g(2.68mol)とピリジン1400mlを仕込み、オイルバス(90℃)で内温77℃に加熱した。そこへ、ヨウ素682.1g(2.69mol)を40分かけて9回に分けて投入した。その間、発熱するので、オイルバスの加熱をやめ、内温を94〜101℃に保った。更に、オイルバス(100℃)で加熱し、内温99℃で3時間攪拌した。室温まで冷却した後、反応混合物をろ過し、得られた固体をジエチルエーテル1.1l×2回、冷水1.1l×1回、洗浄して、ウェット固体1122gを得た。
【0163】
攪拌機を備えた10lフラスコに1N・水酸化ナトリウム水溶液8.2lを仕込み、内温70℃に加熱した。先に得られたウェット固体を投入し、内温80〜90℃で1時間攪拌した。室温まで冷却後、反応混合物の半分を10lのホーロー容器に入れ、氷冷下、攪拌しながら6N・塩酸750mlを加えた(pH≒3)。残り半分も同様の処理を行い、合わせて、20lの攪拌分液槽に入れ、ジエチルエーテル6lで抽出し、エーテル層を水5l×2回、洗浄した。エーテル層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して除いた後、濃縮した。得られた固体を40℃で22時間、真空乾燥した(0.15mmHg)。2,5-ジフルオロ-4-メチル安息香酸(S3)419.6g(2.44mol)を得た。黄色結晶。mp 170℃。収率90.6%。
【0164】
合成例3
下記一般式S4:2,5-ジフルオロ-4-(α-ブロモメチル)-安息香酸(S4)を合成した。
【0165】
【化19】

【0166】
大気下、冷却管および攪拌機を備えた10lフラスコに、S3 217.0g(1.26mol)、四塩化炭素3800ml、N-ブロモスクシンイミド 1113.0g(6.25mol)、および、過酸化ベンゾイル(25%含水)14.2g(44.1mmol)を仕込み、マントルヒーターで25時間加熱還流した(内温75〜76℃)。熱いうちに、固体をろ過し、75℃に加熱した四塩化炭素1000ml×2回、洗浄ろ過した。ろ洗液を6N・塩酸2l×2回、洗浄し、有機層を硫酸マグネシウム500gで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液を濃縮し、更に、室温で2時間、真空乾燥した。
2,5-ジフルオロ-4-(α-ブロモメチル)-安息香酸(S4)415.3g(1.26mol)を得た。黄色固体。収率〜100%。S4はモノブロモ体/ジブロモ体=4/96(GC面積比)の混合物。
【0167】
精製せずにそのまま次の反応に使用した。
【0168】
合成例4
下記一般式S5:2,5-ジフルオロテレフタル酸(S5)を合成した。
【0169】
【化20】

【0170】
大気下、滴下ロート、冷却管、および、攪拌機を備えた20lフラスコに、水2000mlと濃硫酸666mlを仕込み、更にS4 415.3g(1.26mol)を投入した。マントルヒーターで加熱し、内温が110℃になったところで、ニクロム酸ナトリウム・2水和物 521.8g(1.75mol)、濃硫酸1300ml、および、水3900mlの混合溶液を2時間45分かけて滴下した。その間、内温は110℃に保った。更に110℃で2時間30分攪拌を続け、室温まで冷却した。析出した結晶をろ過して、水で洗浄し、更に乳鉢ですりつぶして、水洗・ろ過した。ウェット結晶248.2gを60℃で3時間、減圧乾燥し、粗結晶220.5gを得た。粗結晶を酢酸4lに120℃で溶解し、室温まで冷却した。結晶をろ過して、酢酸500mlで洗浄し、ウェット結晶380.0gを得た。60℃で4.5時間、減圧乾燥し(14mmHg)、更に60℃で27時間、真空乾燥した(0.2mmHg)。2,5-ジフルオロテレフタル酸(S5)209.0g(1.03mol)を得た。収率82.1%。白色結晶。mp.312〜313℃。
【0171】
合成例5
下記一般式S6:2,5-ジフルオロテレフタル酸ジクロライド(S6)を合成した。
【0172】
【化21】

【0173】
窒素下、冷却管と攪拌機を備えた、3l・フラスコにS5 217.9g(1.08mol)、塩化チオニル 1887g(15.86mol)、およびDMF 0.43gを仕込み、オイルバス(82〜84℃)で3時間、加熱・還流した。その間、内温は62℃から75℃まで徐々に上がった。その後、オイルバス(60℃)で加熱しながら、過剰の塩化チオニルを減圧留去した(210〜190mmHg、内温35〜42℃)。フラスコに残った結晶をそのまま、内温30〜35℃で70分間、減圧乾燥(10mmHg)し、更に室温で1.5時間、真空乾燥(0.15mmHg)した。2,5-ジフルオロテレフタル酸ジクロライド(S6)の結晶を得た。収率〜100%。白色結晶。mp.64〜65℃。
【0174】
精製せずにそのまま、次の反応に使用した。
【0175】
合成例6
下記一般式S7:両側鎖モノマー(S7)を合成した。
【0176】
【化22】

【0177】
窒素下、冷却管、滴下ロート、および攪拌機を備えた、3l・セパラブルフラスコに、ジフェニルエーテル 551.2g(3.24mol)、脱水ジクロロメタン 500ml、および、塩化アルミニウム374.8g(2.81mol)を仕込み、食塩−氷水で、内温−1℃に冷却した。そこへ、S6 (1.08mol)を脱水ジクロロメタン 500mlに溶解した溶液を、1.5時間かけて滴下した。その間、内温は3℃を越えないように制御した。1〜3℃で1時間、攪拌した後、更に室温で16時間、熟成した。
【0178】
20l・ポリ容器に攪拌機を取り付け、氷3kgと濃塩酸 600mlを仕込み、反応液を少しずつ投入した。水層をデカンテーションで除き、残った泥状の有機層にジクロロメタン10lを加えてスラリーにした。20l・攪拌分液槽に、スラリー液(*)の4分の1とジクロロメタン3l、および、水5lを仕込み、15分攪拌した後、スラリー状の有機層(**)と水層を分液した。水層をろ過して、固体(***)を分離した。ろ液を再分液して、少量の有機層を分離し、先に分液した有機層(**)と合わせた。残りのスラリー液(*)で同様の操作を3回繰り返した。
【0179】
4回分の固体(***)428.7gを60℃で16時間、減圧乾燥し、225.8gの粉末結晶を得た。これをトルエン4.8lに110℃で溶解し、室温まで冷却して、冷蔵庫で一晩放置した。結晶をろ過して、冷トルエン250mlで洗浄し、ウェット結晶220.7gを得た。60℃で7.5時間、減圧乾燥し、両側鎖モノマー(S7)210.1g(0.414mol)を得た。白色結晶。収率38.4%。
mp.233〜234℃。 4回分のスラリー有機層(**)を濃縮して、固体517gを得た。これにヘキサン2lを加え、1.5時間攪拌してスラリー化した。ヘキサンをろ過して除いた後、固体をヘキサン1lで洗浄して、ウェット結晶402.7gを得た。結晶を60℃で16時間、減圧乾燥し、315.9gの粉末結晶を得た。これをトルエン4lに110℃で溶解し、室温まで冷却して、冷蔵庫で一晩放置した。結晶をろ過して、冷トルエン300mlで洗浄し、ウェット結晶188.0gを得た。60℃で5時間、減圧乾燥し、両側鎖モノマー(S7)176.4g(.348mol)を得た。白色結晶。収率32.2%。mp.233℃。
【0180】
合成例7
下記一般式S8:両側鎖スルホン酸モノマー(S8)を合成した。
【0181】
【化23】

【0182】
窒素下、攪拌機、冷却管、および、滴下ロートを備えた1l・フラスコに、S7 80.8g(0.160mol)を仕込み、攪拌しながら30%・発煙硫酸 259.1g(SO3として0.971mol)を5分かけて滴下した。その間、時々水で冷却し、内温は室温から60℃まで上昇した。発煙硫酸を滴下後、オイルバス(105℃)で加熱し、内温101〜102℃で1.5時間、攪拌した。50℃まで冷却後、氷400gを少しずつ加えた。その間、時々氷冷しながら、内温を50〜60℃に制御した。反応液を2l・コニカルビーカーに移し、氷冷しながら、40%・水酸化ナトリウム水溶液470g+αを40℃以下で滴下した。pH≒9になったところで滴下を止めた。
【0183】
攪拌機を取り付けた5l・ポリ容器にエタノール1600mlを入れ、攪拌しながら、中和した反応液を加えた。室温で30分攪拌し、析出した固体をろ過して除いた。固体はエタノール/水=2/1(体積比)400ml×2回、洗浄した。ろ液と洗浄液を合わせて濃縮し、水620mlに溶解し、エタノール2860mlを加えて79℃まで加熱し、溶解した。室温まで冷却して、冷蔵庫で一晩放置した。結晶をろ過して、冷やしたエタノール/水=74/16(体積比)350ml×2回、洗浄し、ウェット結晶222.7gを得た。これを60℃で22時間、減圧乾燥して、白色の粉末結晶 159.7gを得た。結晶は微量のエタノールを含む(1H-NMRで確認)。
【0184】
結晶を水800mlに再溶解し、微量の不溶物をろ過して除き、50℃で濃縮した。得られた淡黄色の結晶を乳鉢で粉砕し、100℃で17時間、真空乾燥した(0.2mmHg)。両側鎖R3モノマー(S8)153.6g(0.137mol)を得た。淡黄色結晶。収率85.8%。
【0185】
合成例8
前記一般式(D1)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソランを合成した。
【0186】
【化24】

【0187】
攪拌器、温度計及び留出管を備えた 500mlフラスコに、4,4′−ジヒドロキシベンゾフエノン49.5g、エチレングリコール134g、オルトギ酸トリメチル96.9g及びp−トルエンスルホン酸1水和物0.50gを仕込み溶解する。その後78〜82℃で2時間保温攪拌した。更に、内温を120℃まで徐々に昇温、ギ酸メチル、メタノール、オルトギ酸トリメチルの留出が完全に止まるまで加熱した。この反応液を室温まで冷却後、反応液を酢酸エチルで希釈し、有機層を5%炭酸カリウム水溶液100mlで洗浄し分液後、溶媒を留去した。残留物にジクロロメタン80mlを加え結晶を析出させ、濾過し、乾燥して2,2−ビス(4−ヒドロキシフエニル)−1,3−ジオキソラン52.0gを得た。この結晶をGC分析したところ99.8%の2,2−ビス(4−ヒドロキシフエニル)−1,3−ジオキソランと0.2%の4,4′−ジヒドロキシベンゾフエノンであった。
【0188】
実施例1
下記一般式(G1)で表されるポリマーを合成した。
【0189】
【化25】

【0190】
炭酸カリウム6.91g(50mmol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン10.23g(39.6mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン8.03g(36.8mmol)、および前記合成例7で得た6置換スルホン化物S8(3.2mmol)を用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、230℃で重合を行った。多量の水で再沈することで精製を行い、上記一般式(G1)で示される高分子電解質材料を得た。重量平均分子量は16.3万であった。
【0191】
得られた一般式(G1)のケタールを有する芳香環を含有する高分子電解質材料を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4h乾燥後、窒素下300℃で10分間熱処理し、膜を得た。成型前の高分子電解質材料の溶解性は極めて良好であった。95℃で6N塩酸に24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄した。得られた膜のスルホン酸基密度は2.32mmol/gであった。
【0192】
得られた膜は膜厚32μm、面積当たりのプロトン伝導度Aは23.4S/cmであった。また、60℃、30wt%メタノール水溶液中でほとんど寸法変化が認められず、伝導度が高く、耐熱メタノール性に優れていた。100℃のNMPに浸漬しても溶解することはなかった。 評価結果は表1にまとめた。得られた高分子電解質膜は広角X線回折で結晶質ピークは認められなかったが極めて強靱な電解質膜であった。耐溶剤性にも優れていた。さらに、伝導度を維持しながら、燃料遮断性にも優れていた。
【0193】
実施例2
下記一般式(G2)で表されるポリマーを合成した。
【0194】
【化26】

【0195】
炭酸カリウム6.91g(50mmol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン10.23g(39.6mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン6.98g(32mmol)、および前記合成例7で得た6置換スルホン化物S8(8mmol)を用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、230℃で重合を行った。多量の水で再沈することで精製を行い、上記一般式(G2)で示される高分子電解質材料を得た。重量平均分子量は14.3万であった。
【0196】
得られた一般式(G2)のケタールを有する芳香環を含有する高分子電解質材料を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4h乾燥後、窒素下300℃で10分間熱処理し、膜を得た。成型前の高分子電解質材料の溶解性は極めて良好であった。95℃で6N塩酸に24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄した。得られた膜のスルホン酸基密度は2.34mmol/gであった。
【0197】
得られた膜は膜厚36μm、面積当たりのプロトン伝導度Aは22.5S/cmであった。また、60℃、30wt%メタノール水溶液中でほとんど寸法変化が認められず、伝導度が高く、耐熱メタノール性に優れていた。100℃のNMPに浸漬しても溶解することはなかった。 評価結果は表1にまとめた。得られた高分子電解質膜は広角X線回折で結晶質ピークは認められなかったが極めて強靱な電解質膜であった。耐溶剤性にも優れていた。さらに、伝導度を維持しながら、燃料遮断性にも優れていた。
【0198】
実施例3
下記一般式(G3)で表されるポリマーを合成した。
【0199】
【化27】

【0200】
炭酸カリウム6.91g(50mmol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン10.23g(39.6mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン6.55g(30mmol)、および前記合成例7で得た6置換スルホン化物S8(10mmol)を用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、230℃で重合を行った。多量の水で再沈することで精製を行い、上記一般式(G3)で示される高分子電解質材料を得た。重量平均分子量は14.3万であった。
【0201】
得られた一般式(G3)のケタールを有する芳香環を含有する高分子電解質材料を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4h乾燥後、窒素下300℃で10分間熱処理し、膜を得た。成型前の高分子電解質材料の溶解性は極めて良好であった。95℃で6N塩酸に24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄した。得られた膜のスルホン酸基密度は2.92mmol/gであった。
【0202】
得られた膜は膜厚34μm、面積当たりのプロトン伝導度Aは32.4S/cmであった。また、60℃、30wt%メタノール水溶液中でほとんど寸法変化が認められず、伝導度が高く、耐熱メタノール性に優れていた。100℃のNMPに浸漬しても溶解することはなかった。 評価結果は表1にまとめた。得られた高分子電解質膜は広角X線回折で結晶質ピークは認められなかったが極めて強靱な電解質膜であった。耐溶剤性にも優れていた。さらに、伝導度を維持しながら、燃料遮断性にも優れていた。
【0203】
実施例4
下記一般式(G4)で表されるポリマーを合成した。
【0204】
【化28】

【0205】
炭酸カリウム6.91g(50mmol)、4,4‘−ジヒドロキシテトラフェニルメタン(39.6mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン6.55g(30mmol)、および前記合成例7で得た6置換スルホン化物S8(10mmol)を用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、230℃で重合を行った。多量の水で再沈することで精製を行い、上記一般式(G4)で示される高分子電解質材料を得た。重量平均分子量は15.3万であった。
【0206】
得られた一般式(G4)の高分子電解質材料を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4h乾燥後、窒素下300℃で10分間熱処理し、膜を得た。成型前の高分子電解質材料の溶解性は極めて良好であった。95℃で6N塩酸に24時間浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄した。得られた膜のスルホン酸基密度は2.95mmol/gであった。
【0207】
得られた膜は膜厚34μm、面積当たりのプロトン伝導度Aは30.3S/cmであった。また、60℃、30wt%メタノール水溶液中でほとんど寸法変化が認められず、伝導度が高く、耐熱メタノール性に優れていた。100℃のNMPに浸漬しても溶解することはなかった。 評価結果は表1にまとめた。極めて強靱な電解質膜であり耐溶剤性にも優れていた。さらに、伝導度を維持しながら、燃料遮断性にも優れていた。
【0208】
実施例5
下記一般式(G5)で表されるポリマーを合成した。
【0209】
実施例5
下記一般式(G5)で表されるポリマーを合成した。
【0210】
【化29】

【0211】
炭酸カリウム6.91g(50mmol)、フルオレンモノマー(39.6mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン6.55g(30mmol)、および前記合成例7で得た6置換スルホン化物S8(10mmol)を用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、230℃で重合を行った。多量の水で再沈することで精製を行い、上記一般式(G5)で示される高分子電解質材料を得た。重量平均分子量は15.3万であった。
【0212】
得られた一般式(G5)の高分子電解質材料を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4h乾燥後、窒素下300℃で10分間熱処理し、膜を得た。成型前の高分子電解質材料の溶解性は極めて良好であった。95℃で6N塩酸に24時間浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄した。得られた膜のスルホン酸基密度は2.80mmol/gであった。
【0213】
得られた膜は膜厚35μm、面積当たりのプロトン伝導度Aは28.6S/cmであった。また、60℃、30wt%メタノール水溶液中でほとんど寸法変化が認められず、伝導度が高く、耐熱メタノール性に優れていた。100℃のNMPに浸漬しても溶解することはなかった。 評価結果は表1にまとめた。極めて強靱な電解質膜であり耐溶剤性にも優れていた。さらに、伝導度を維持しながら、燃料遮断性にも優れていた。
【0214】
比較例1
市販のナフィオン(登録商標)117膜(デュポン社製)を用い、イオン伝導度、MCOおよび耐熱メタノール性を評価した。ナフィオン(登録商標)117膜は100℃の5%過酸化水素水中にて30分、続いて100℃の5%希硫酸中にて30分浸漬した後、100℃の脱イオン水でよく洗浄した。
【0215】
膜厚209μm、面積当たりのプロトン伝導度Aは5.0S/cmであった。また、60℃、30wt%メタノール水溶液中で20%寸法変化(膨潤)が認められた。伝導度は高いが、耐熱メタノール性が不十分であった。
【0216】
評価結果は表1にまとめた。伝導度は高いが、燃料遮断性には劣っていた。
【0217】
比較例2
市販のナフィオン(R)111膜(デュポン社製)を用い、各種特性を評価した。ナフィオン(R)111膜は100℃の5%過酸化水素水中にて30分、続いて100℃の5%希硫酸中にて30分浸漬した後、100℃の脱イオン水でよく洗浄した。
【0218】
評価結果は表1にまとめた。伝導度は高いが、燃料遮断性には劣っていた。
【0219】
比較例3
PEEKのスルホン化
ポリエーテルエーテルケトン(ビクトレックス(登録商標)PEEK(登録商標)(ビクトレックス社製))10gを濃硫酸100mL中、25℃で20時間反応させた。大量の水中に徐々に投入することによりポリエーテルエーテルケトンのスルホン化物を得た。得られたポリマーのスルホン酸基密度は2.1mmol/gであった。ポリマーが溶けながらスルホン化されるのでスルホン酸基の位置、量を再現性よく得ることは困難であった。
【0220】
得られたスルホン化物を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液をガラス繊維フィルターを用いて加圧ろ過後、ガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4h乾燥し、膜を得た。ポリマーの溶解性は良好であった。大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、高分子電解質膜を得た。
【0221】
評価結果は表1にまとめた。得られた高分子電解質膜は広角X線回折で結晶質ピークは認められなかった。さらに、伝導度は比較的高いが、燃料遮断性には劣っていた。また、60℃、30wt%メタノール水溶液中や95℃熱水中で崩壊してしまった。耐溶剤性に劣っていた。
【0222】
比較例4
PEKをスルホン化した。
【0223】
ポリエーテルケトン樹脂(ビクトレックス社製)10gを発煙硫酸100mL中、100℃で2h反応させた。濃硫酸で希釈後、大量の水中に徐々に投入することによりポリエーテルケトンのスルホン化物SPEK−2を得た。得られたSPEK−2のスルホン酸基密度は1.2mmol/gであった。
【0224】
SPEK−2ポリマーはN−メチルピロリドン(NMP)に溶解させることができず、製膜が困難であった。実施例1のポリマーと組成は類似しているが、溶解性に劣っていた。また、IRおよび固体13C−CP/MASスペクトルからケタール基の存在が確認できなかった。各種評価を行うことはできなかった。
【0225】
なお、粉末状態のポリエーテルケトン樹脂は広角X線回折で結晶質ピークが認められ、結晶化度は30%であった。
【0226】
比較例5
ハイドロキノン4.40g(40mmol)に変えた以外は実施例2に記載の方法でポリエーテルケトンポリマーの重合を行った。重合初期段階から、ポリマーが析出し、重合が困難であった。溶剤不溶性のため分子量測定はできなかった。溶解性が不足するので、製膜することはできず、各種測定を行うこともできなかった。
【0227】
実施例1〜7、比較例1〜3の各評価結果を表1に示す。実施例1〜7の電解質膜はプロトン伝導性に優れ、かつ、燃料遮断性、耐溶剤性に優れていた。比較例の電解質膜は、燃料遮断性あるいは耐溶剤性に劣っていた。
【0228】
【表1】

【0229】
電極作製例1
(1)メタノール水溶液を燃料とする膜電極複合体用の電極
炭素繊維の織物からなる米国イーテック(E-TEK)社製カーボンクロス“TL−1400W”上に、ジョンソンマッセイ(Johson&Matthey)社製Pt−Ru担持カーボン触媒“HiSPEC”(登録商標)10000と“HiSPEC”(登録商標)6000、実施例1で得られた式(G1)の成型用可溶性高分子電解質材料とN−メチル−2−ピロリドンからなるアノード触媒塗液を塗工し、乾燥して電極Aを作製した。アノード触媒塗液の塗工はカーボンブラック分散液を塗工した面に行った。また、同様に、上記の電極基材上に、田中貴金属工業社製Pt担持カーボン触媒TEC10V50Eとデュポン(DuPont)社製20%“ナフィオン”(“Nafion”)(登録商標)溶液とn−プロパノールからなるカソード触媒塗液を塗工し、乾燥して電極Bを作製した。
【0230】
電極Aは白金重量換算で2.5mg/cm、電極Bは白金重量換算で4.5mg/cmとなるように触媒付着量を調整した。
【0231】
(2)水素を燃料とする膜電極複合体用の電極
Aldrich社製“ナフィオン” (登録商標)溶液に、触媒担持カーボン(触媒:Pt、カーボン:Cabot社製ValcanXC-72、白金担持量:50重量%)を白金と“ナフィオン” (登録商標)の重量比が1:0.5になるように加え、よく撹拌して触媒−ポリマー組成物を調製した。この触媒−ポリマー組成物を、予め撥水処理(PTFEを20重量%含浸し焼成する)を行った電極基材(東レ(株)製カーボンペーパーTGP-H-060)に塗布し、直ちに乾燥して、電極Cを作製した。電極Cは白金重量換算で1.0mg/cmとなるように触媒付着量を調整した。
【0232】
界面抵抗低減層前駆体の作製例
実施例2で得られた式(G2)の成型用可溶性高分子電解質材料を10g、N−メチル−2−ピロリドン55g、グリセリン45gを容器にとり、100℃に加熱して均一になるまで撹拌して、界面抵抗低減層前駆体Bとした。
【0233】
実施例6
電極C2枚を使用しそれぞれが対向するように実施例2で得られた電解質膜を挟み込み、130℃で10分間、5MPaの圧力で加熱プレスを行い、膜電極複合体を得た。これを発電用セルに組み込み燃料電池とした。
【0234】
この燃料電池の水素を燃料とする発電特性を評価したところ、最大出力は700mW/cmであった。
【0235】
実施例7
電極Aと電極Bでそれぞれが対向するように実施例2で得られた脱保護処理前の膜を挟み込み、200℃で1分間、3MPaの圧力で加熱プレスを行い接合した。次に接合体を6N塩酸100gに浸し、80℃に加熱し、24時間処理し、膜電極複合体を得た。その後、純水で洗浄液が中性になるまで洗浄し発電用セルに組み込み燃料電池とした。
【0236】
電圧保持率は96%(初回の電圧が0.25V、100時間定電流発電後の電圧は0.24V)であり、優れた耐久性を示した。
【0237】
また、この膜電極複合体のメタノール透過量は4.5μmol/cm/分であった。また、パッシブ評価での出力は70mW/cmを示した。
【0238】
比較例6
電極A、電極Bに市販のナフィオン(登録商標)溶液(アルドリッチ社製試薬)を塗布し100℃で乾燥しナフィオン(登録商標)被膜つき電極を得た。デュポン社製“ナフィオン117(登録商標)”を電解質膜として使用し、前述の電極で、界面抵抗低減性組成物を用いることなく電解質膜を挟むように積層し、130℃で30分間、5MPaの圧力で加熱プレスを行い、膜電極複合体を得た。
【0239】
この膜電極複合体のメタノール透過量は13.0μmol/cm/分と大きく、電圧保持率は48%、(初回の電圧が0.21V、100時間定電流発電後の電圧は0.1V)であり、耐久性が劣った。また、パッシブ評価での出力は10mW/cmであり低出力であった。これらの評価後の評価セルを解体し、膜電極複合体を取り出して目視で観察したところ、アノード電極と電解質膜の界面に、メタノール水溶液の膨潤による剥離が発生し、触媒の一部が崩壊流出していた。使用した電解質材料の耐熱メタノール性が不十分であった。
【0240】
実施例8
界面抵抗低減層前駆体Bを前記電極A、電極B上に3mg/cmとなるように塗工し、100℃で1分間熱処理した。これらの電極を電極投影面積が5cmとなるようにカットした。
【0241】
次に、これらの界面抵抗低減層前駆体B付きの電極を界面抵抗低減層前駆体Bが実施例2で得られる脱保護処理前の膜側となるように積層し、100℃で1分間、3MPaの圧力で加熱プレスを行い、プレスした後の接合体を6N塩酸90gにメタノールを10g添加した溶液に浸し、80℃に加熱し、環流しながら30時間処理し、膜電極複合体を得た(残存溶剤抽出兼プロトン交換)。その後、純水で洗浄液が中性になるまで洗浄し発電用セルに組み込み燃料電池とした。
【0242】
電圧保持率は96%(初回の電圧が0.25V、100時間定電流発電後の電圧は0.24V)であり、優れた耐久性を示した。
【0243】
また、この膜電極複合体のメタノール透過量は4.5μmol/cm/分であった。また、パッシブ評価での出力は50mW/cmを示した。
【0244】
実施例9
実施例8の膜複合電極体を電極面積32cmとなるように作製して、図1に示すようなスタックセルを使用し、膜電極複合体6枚で燃料電池を作製した。アノード側に10%メタノール水溶液をポンプで循環させながら、発電したところ、出力7Wが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】スタック状燃料電池の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0246】
1:膜電極複合体
2:ガスケット
3:バイポーラーセパレーター
4:集電板
5:燃料供給口
6:締め付けネジ
7:空気流路
8:燃料流路
9:燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(P1)で表される構成単位を有することを特徴とする芳香族ポリエーテル系スルホン化ポリマー。
【化1】

(一般式(P1)中、Rは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
【請求項2】
該スルホン化ポリマーが下記一般式(K1)で表される構成単位をさらに含有する請求項1に記載のスルホン化ポリマー。
【化2】

(一般式(K1)で表される構成単位は任意に置換されていてもよいが、イオン性基は含有しない。)
【請求項3】
請求項1または2に記載のスルホン化ポリマーを含む高分子電解質材料。
【請求項4】
スルホン酸基密度が0.5〜3.0mmol/gである請求項3に記載に記載の高分子電解質材料。
【請求項5】
請求項3または4に記載の高分子電解質材料を用いた高分子電解質型燃料電池。
【請求項6】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする芳香族スルホン酸誘導体。
【化3】

(一般式(1)中、Rは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)

【図1】
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【公開番号】特開2010−70600(P2010−70600A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237441(P2008−237441)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 燃料電池・水素技術開発部 委託研究「固体高分子形燃料電池実用化戦略技術開発 要素技術開発 高性能炭化水素系電解質膜の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】