説明

芳香族ポリエーテルスルホン粒子の製造方法および芳香族ポリエーテルスルホン粒子

【課題】本発明は、ヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン粒子を簡便に製造する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】芳香族ポリエーテルスルホンと、二価フェノール化合物または水、および塩基性化合物を加熱した後、界面活性剤の共存下で、芳香族ポリエーテルスルホン粒子を析出させることを特徴とするヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン粒子の製造方法。このようにして得られる芳香族ポリエーテルスルホン粒子をアロイ化した熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなる組成物は、芳香族ポリエーテルスルホン粒子がポリマーマトリックス中に微分散、さらにはナノサイズにまで分散し、機械特性、耐熱性、および電気的特性が極めて優れた熱可塑性樹脂アロイ、熱硬化性樹脂アロイを提供することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン粒子を経済的且つ簡便に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリエーテルスルホン(以下PESと略す)は、その優れた耐熱性、機械特性、電気的特性、難燃性、耐薬品性、耐加水分解性、耐放射線性、低誘電特性、成形加工性により、射出成形用の回路基盤、光ディスク、磁気ディスク等のディスク用支持板、電気絶縁性保護膜、集積回路用層間絶縁膜、集積回路基盤材料などの電気、電子部品、自動車部品、航空機部品および医療用機器部品などに幅広く用いられている。また、前記優れた性質を活かし、PESを熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂にアロイ化することにより、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の性能を向上させる改質剤としても、幅広く使用されている。
【0003】
しかしながら、マトリックスとなる樹脂中にPESが粗大分散しているのが現状であり、アロイ化による品質向上には、さらなる微分散化技術が必要であった(特許文献1,2)。
【0004】
一般的にポリマーの分散性を向上させるためには、相溶化剤を使用する方法やアロイ成分を化学反応により結合する方法が知られている。
【0005】
PESの微分散化技術については、以下2点の方法が開示されている。
【0006】
(1)PESを熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂とアロイ化する場合、反応活性なヒドロキシフェニル末端基を有する方が、熱可塑性樹脂や熱硬化製樹脂との反応を進行させることが可能なため、より微分散化することが開示されている。
【0007】
(2)アロイ化の際に、PESのヒドロキシフェニル末端基とマトリックス樹脂との反応を均一に起こすために、PESの形状を粒子径の小さい粒子とすることで、アロイ時の微分散化、混練時間の短縮等に効果的であることが開示されている(特許文献3,4,5)。
【0008】
このような技術背景からも推測できるように、PESの場合、(1)反応活性なヒドロキシフェニル末端基を多く含有し、かつ(2)ポリマーの形状を粒子状にすることで、アロイ化におけるさらなる微分散化、混練時間の短縮等が可能であると推測できる。
【0009】
しかしながら、上記2点に関して以下のような技術的課題がある。
【0010】
(1)の課題点を以下述べる。一般にPESは、アルカリ金属化合物の存在下、ジハロゲノジフェニルスルホン化合物と二価フェノール化合物との重縮合反応等により得られ、理論上、二価フェノール化合物に対し、ジハロゲノジフェニルスルホン化合物を等モル量使用した場合、ポリマー末端の一方はヒドロキシフェニル末端基、もう片一方がハロゲノフェニル末端基となる。(特許文献6、7、8)。
【0011】
しかしながら、従来技術の重合方法により得られるPESは、高分子量体であるために、溶融粘度が高く、通常の押出成形、射出成形可能なエンジニアリングプラスチックに比べると、加工性に課題があった。これは、ポリマーの反応活性なヒドロキシフェニル末端基が、加熱によりハロゲノフェニル末端基と反応したり、熱劣化や酸化劣化によるものと考えられている。
【0012】
このような背景より、PESのヒドロキシフェニル末端基の増加、および溶融粘度低下のために、低分子量化についての技術が開示されている。
【0013】
しかしながら、反応性のヒドロキシフェニル末端基量を増加するために、積極的に過剰の二価フェノール化合物を使用した場合では、末端基量を微増加することが可能となるものの、同時にポリマー分子量が著しく低下する傾向であった。ポリマー分子量の著しい低下は、PESの優れた耐熱性、機械特性、電気的特性、難燃性、耐薬品性、耐加水分解性など物性自体が低下するため、アロイ用改質剤として好ましくない。また、重合途中の酸化など副反応により、所望するPESが再現性よく得られないとういう課題もあった。さらに、過剰の二価フェノール化合物やアルカリ金属塩が得られたPES中に残存するという問題、ポリマーの低分子量化による回収効率の低下等、精製・除去がより困難になるという問題もあった。
【0014】
このように、PESにヒドロキシフェニル末端基を導入する技術に関して、物性が大きく損なわれてしまうため、十分なヒドロキシフェニル基をPESに導入することは困難であった。
【0015】
(2)の課題点を以下述べる。これまでのところ、芳香族ポリエーテルスルホン粒子(以下PES粒子と略す)の製造方法としては、機械的粉砕法、化学的粒子化法などが開示されている。
【0016】
機械的粉砕法として、市販のPESを粉砕機を用いて数十μmサイズの粒子を得る方法が開示されている(特許文献3)。しかしながら、粒子径を50μm以下と小さくすればするほど、粉砕に要する時間、コスト等が極端に増加し、生産性が低下するという問題点がある。また、粒子径分布も広くなるのが現状であった。
【0017】
化学的粒子化法としては、市販のPESをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、エタノールを加えた溶液を、オクチルフェノキシポリエトキシエタノールを溶解した純水中に添加し、粒子径1μm以下の水性分散液を得る方法が開示されている(特許文献4)。しかしながら、用いる溶媒の種類が多く工程が煩雑になるという問題点がある。また液中乾燥法による、粒子化法についても開示されているが、実施例中において、具体的な方法については明記されておらず、実現性の判断は、難しい(特許文献5)。一般に液中乾燥法は、工程が煩雑であり、溶媒除去が高コストになるため、生産性に劣るという問題点がある。
【0018】
このように、粒子化の技術に関しては、高コスト、用いる溶媒が多く工程が煩雑等、生産性の低下を免れることはできず、満足のいくものでは無かった。
【0019】
このように、(1)、(2)それぞれ固有の問題を有しているため、アロイ用改質剤としては、通常の重合法、および市販品のヒドロキシフェニル末端基をある程度含有し、かつ高分子量体のPESを、機械的粉砕法において、微細化しているものが最も多く利用されている。しかしながら、前述したように、高コスト、取扱い性が悪い等の問題がある。
【特許文献1】特開2001−106921号公報
【特許文献2】特開2005−105151号公報
【特許文献3】特開2007−231234号公報
【特許文献4】特開2000−80329号公報
【特許文献5】特開平4−325590号公報
【特許文献6】特公昭42−7799号公報
【特許文献7】特公昭45−21318号公報
【特許文献8】特開昭48−19700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、ヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン粒子を簡便に製造する方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは鋭意検討した結果、芳香族ポリエーテルスルホン(A)と、二価フェノール化合物(B)または水(C)、および塩基性化合物(D)を加熱した後、界面活性剤の共存下で芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)を析出させることで上記目的を達成することを見出した。
【0022】
すなわち、本発明は、下記の構成を有する。
[1]一般式(a−1)および/または一般式(a−2)で表される構造を有する芳香族ポリエーテルスルホン(A)と、一般式(b−1)および/もしくは(b−2)で表される二価フェノール化合物(B)または水(C)、ならびに塩基性化合物(D)を加熱した後、界面活性剤の共存下で、芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)を析出させることを特徴とする芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
【0023】
【化1】

【0024】
(式中のRは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基を表し、mは0〜3の整数を表す。Yは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、C(CH2、CH(CH)、CHを表す)
[2]芳香族ポリエーテルスルホン(A)と、前記二価フェノール化合物(B)または水(C)、および塩基性化合物(D)を非プロトン性極性溶媒を含む溶媒中で加熱する工程(I)、工程(I)で得られた溶液と界面活性剤を混合し、均一溶液または懸濁液を得る工程(II)、工程(II)で得られた均一溶液または懸濁液に非プロトン性極性溶媒とは異なる第2の溶媒を加えて芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)を析出させる工程(III)を含むことを特徴とする[1]記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
[3]芳香族ポリエーテルスルホンおよび/または芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)と酸(F)を接触させることを特徴とする[1]または[2]記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
[4]二価フェノール化合物(B)の添加量が、芳香族ポリエーテルスルホン(A)100質量部に対して、0.1〜200質量部であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
[5]水(C)の添加量が、芳香族ポリエーテルスルホン(A)100質量部に対して、0.001〜200質量部であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
[6]塩基性化合物(D)が炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム、および無水炭酸カリウムから選ばれる1種または2種以上である[1]〜[5]のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
[7]界面活性剤が、完全ケン化型または部分ケン化型のポリビニルアルコール、完全ケン化型または部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体、ポリエチレングリコール、およびポリビニルピロリドンから選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子の製造方法。
[8]界面活性剤の添加量が、芳香族ポリエーテルスルホン(A)100質量部に対し、1〜200質量部であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
[9]非プロトン性極性溶媒が、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、およびスルホランから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする[2]〜[8]のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
[10]工程(I)において、非プロトン性極性溶媒に相溶し、かつ0.101MPa下において、水と共沸混合物を形成する溶媒を含むことを特徴とする[2]〜[9]のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
[11]0.101MPa下において、水と共沸混合物を形成する溶媒がベンゼン、トルエン、キシレンのいずれか1種または2種以上の混合物であることを特徴とする[10]記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
[12]工程(I)において、加熱温度が100〜200℃であることを特徴とする[2]〜[11]のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
[13]第2の溶媒が、25℃における芳香族ポリエーテルスルホン(A)の溶解度が1質量%以下の溶媒であることを特徴とする[2]〜[12]のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
[14]第2の溶媒が、水、メタノール、エタノールから選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする[2]〜[13]のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子の製造方法。
[15]ヒドロキシフェニル末端基組成が50モル%以上(重水素化ジメチルスルホキシド中、H−NMRにより測定され、[6.6〜6.9ppmのピーク面積(ヒドロキシルフェニル末端基)]/(6.9ppmのピーク面積(ヒドロキシフェニル末端基由来)+7.7ppmのピーク面積(クロロフェニル末端基由来))×100より算出される)、平均粒子径が0.1〜50μmであることを特徴とする芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)。
[16]芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の粒子径分布が、1.0〜1.5であることを特徴とする[15]記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)。
【発明の効果】
【0025】
本発明の製造方法により、ヒドロキシフェニル末端基を多量に含有する芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)を得ることが可能となる。本発明により得られたヒドロキシフェニル末端基を多量に含有する芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)は、光拡散剤、液晶用スペーサー、接着剤、塗料、印刷インク中の分散液、ポリマーアロイ用添加剤、各種触媒の担持体、電子写真のトナー、クロマトグラフィー担体、自動車部品、航空機部品、電子部品、化粧品の基材および医療用担体などに利用できる。特に本発明の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)をアロイ化した熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなる組成物は、芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)がポリマーマトリックス中に微分散、さらにはナノサイズにまで分散し、機械特性、耐熱性、および電気的特性が極めて優れた熱可塑性樹脂アロイ、熱硬化性樹脂アロイを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下本発明をさらに詳しく説明する。
【0027】
本発明のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)(以下PES粒子(E)と略す)は、芳香族ポリエーテルスルホン(A)(以下PES(A)と略す)と、二価フェノール化合物(B)または水(C)、ならびに塩基性化合物(D)を加熱した後、面活性剤の共存下で、PES粒子(E)を析出させることにより製造する。
【0028】
PES(A)と、二価フェノール化合物(B)または水(C)、および塩基性化合物(D)を加熱した後、界面活性剤の共存下で、PES粒子(E)を析出させる方法としては、例えば、
(1)PES(A)と、二価フェノール化合物(B)または水(C)、および塩基性化合物(D)を加熱した後、溶融させ、冷却することにより析出させる方法
(2)PES(A)と、二価フェノール化合物(B)または水(C)、および塩基性化合物(D)を溶媒に溶解させ、加熱した溶液の溶媒を除去することにより析出させる方法
(3)PES(A)と、二価フェノール化合物(B)または水(C)、および塩基性化合物(D)を溶媒に溶解させ、加熱した溶液にPESと非相溶の溶媒を加えることにより析出させる方法
(4)PES(A)と、二価フェノール化合物(B)または水(C)、および塩基性化合物(D)を溶媒に溶解させ、加熱した溶液にPESとPESを溶解する溶媒に非相溶の溶媒を加え、エマルジョンを形成させ、PESを溶解する溶媒を除去することにより析出させる方法
等が挙げられる。尚、界面活性剤は、PESが析出する際に共存さえすれば、添加方法、添加手順等に関しては、いずれの方法でも構わない。工程の容易さから、(3)が好ましく用いられる。
【0029】
以下、本発明のPES粒子(E)の製造方法について説明する。
(1)ヒドロキシフェニル末端基を有するPESの製造方法
本工程により、PESにヒドロキシフェニル末端基を導入することが可能である。
【0030】
PES(A)と、二価フェノール化合物(B)または水(C)、および塩基性化合物(D)を非プロトン性極性溶媒を含む溶媒中で加熱する工程(I)について説明する。
【0031】
本発明で用いられるPES(A)は、一般式(a−1)および/または一般式(a−2)で表される構造を有する。
【0032】
【化2】

【0033】
(式中のRは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基を表し、mは0〜3の整数を表す。Xは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、C(CH2、CH(CH)、CHを表す)
【0034】
PES(A)の分子量は、PES(A)のDMF中、25℃、1g/dlで測定した還元粘度(JIS K7367−1(2002)に記載の方法)が、0.35以上である。より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.45以上のものである。
【0035】
このようなPES(A)としては、公知の方法により製造することが可能である。また公知の方法により製造されている市販品のPESとして、例えばビー・エー・エス・エフ社製“ULTRASON E”シリーズ、住友化学株式会社製“スミカエクセル”シリーズ3600P、4100P、4800P、5003P、5200Pなどがあげられる。
【0036】
本発明で使用される二価フェノール化合物(B)は、下記一般式(b−1)、および/または(b−2)で表されるものである。
【0037】
【化3】

【0038】
(式中のRは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基を表し、mは0〜3の整数を表す。Xは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、C(CH2、CH(CH)、CHを表す)。
【0039】
このような二価フェノール化合物(B)としては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどのジヒドロキシジフェニルスルホン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどのジヒドロキシフェニルエーテル類が挙げられるが、これらの中で、入手性や実用性、価格面から、ハイドロキノン、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノール−S)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン)(ビスフェノール−A)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノール−F)、4,4’−エチリデンビスフェノール(ビスフェノール−E)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが好ましく、より好ましくは4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノール−S)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン)(ビスフェノール−A)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノール−F)、4,4’−エチリデンビスフェノール(ビスフェノール−E)であり、特に好ましくは、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノール−S)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン)(ビスフェノール−A)である。
【0040】
本反応で使用する二価フェノール化合物(B)の添加量により、ヒドロキシフェニル末端基の導入量を制御することが可能である。本反応を定量的に進行させるためには、PES(A)100質量部に対し、0.1〜200質量部が好ましく、より好ましくは1〜150質量部、さらに好ましくは1〜100質量部、特に好ましくは1〜50質量部である。二価フェノール化合物(B)の添加量が200質量部以上になると、未反応の二価フェノール化合物(B)や二価フェノール化合物(B)の塩がポリマー中に残存したり、ポリマーが着色する傾向がある。二価フェノール化合物(B)の添加量が0.1質量部以下では、ヒドロキシフェニル末端基を定量的に導入することが困難となる。
【0041】
本発明で使用する水(C)は、特に制限はないが、得られるポリマー中の不純物含量などを考慮すると、出来る限り不純物の少ない水を用いることが好ましい。本反応で使用する水(C)の添加量により、ヒドロキシフェニル末端基の導入量を制御することが可能である。本反応を定量的に進行させるためには、PES(A)100質量部に対し、0.001〜200質量部が好ましく、より好ましくは0.01〜160質量部、特に好ましくは0.01〜120質量部である。水(C)の添加量が200質量部以上になると、非プロトン性極性溶媒へのPES(A)の溶解性が低下して析出しやすくなるため、好ましくない。溶解性を向上するためには、用いる非プロトン性極性溶媒中のPES(A)の濃度を低下させることが必要となる。しかし、濃度が低下することで反応性が低下するため、反応の進行が長時間になり、さらには溶媒量が増えることでポリマーの回収が困難となり、コストも増大するため、工業的に現実的ではない。一方、0.001質量部以下では、ヒドロキシフェニル末端基を定量的に導入することが困難となる。
【0042】
本発明の反応を定量的に進行させるため、本反応の有機溶媒として、非プロトン性極性溶媒を使用する。具体的には、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−メチル−2−ピペリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、およびこれら2種以上の混合物などが挙げられるが、特に好ましくは、ジメチルスルホキシド、DMF、NMPが挙げられる。
【0043】
本発明に使用される溶媒量は、PES(A)、二価フェノール化合物(B)または水(C)を溶解させる量であれば、特に制限はないが、PES(A)100質量部に対して、50〜2000質量部の範囲が好ましい。さらに好ましくは200〜1000質量部である。50質量部未満では原料となるPES(A)、二価フェノール化合物(B)が溶解せず、残存するため好ましくない。また溶媒量が2000質量部を超えると、ポリマー濃度や二価フェノール化合物(B)または水(C)の濃度が下がり、反応速度が遅くなったり、何よりも溶媒量の増加により、生産量の低下、溶媒回収コストに影響するので、好ましくない。
【0044】
なお本発明では非プロトン性極性溶媒中で本反応を実施することが重要であるが、場合によっては、非プロトン性極性溶媒以外の有機溶媒を併用することもできる。このような溶媒としては、上記範囲であれば特に限定されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、2−メチルナフタレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル等のエステル系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、1,2−ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、および水の中から選ばれる1種または2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0045】
本発明の原料中に含まれる微量の水分、反応中に外部から入ってくる水分、使用する塩基性化合物の結合水、塩基性化合物水溶液中、塩基性化合物調製時の水分などは、本発明の目的の反応を定量的に進行するのを阻害する傾向にある。反応系内の水分を除去する目的で、非プロトン性極性溶媒に相溶し、かつ0.101MPa下において、水と共沸混合物を形成する溶媒を用いることができる。このような溶媒としては、上記範囲であれば特に限定されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、エチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセチルアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブチルアルコール、ヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系溶媒、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、安息香酸等のカルボン酸系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、1,2−ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、エチレンジアミン、アニリン、ピリジン、メチルピリジン等のアミン系溶媒などが挙げられる。溶媒回収等の容易さから、ベンゼン、トルエン、キシレン等から選ばれる1種または2種以上の混合溶媒が好ましく使用できる。
【0046】
0.101MPa下において、水と共沸混合物を形成する溶媒の使用量は、系内の水分を除去可能な量であれば特に制限はないが、全モノマー100質量部に対して、1〜1000倍重量の範囲が好ましく、さらに好ましくは2〜500質量部である。
【0047】
本発明の反応では、反応系に塩基性化合物(D)を添加すると、さらに反応速度を向上させることができる。使用する塩基性化合物(D)としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、無水炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン、N、N−ジメチルアミン、N、N−ジエチルアミン等の二級アミン、N−メチルアミン、N−エチルアミン等の一級アミン、アンモニアなどが挙げられる。これらの中でも、取り扱い易さから、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム、無水炭酸カリウムなどを使用することができ、なかでも炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム、無水炭酸カリウムから選ばれる1種または2種以上を好ましく使用することができる。
【0048】
二価フェノール化合物(B)を用いる場合、塩基性化合物(D)の添加量は、使用する二価フェノール化合物(B)100質量部に対し、0.005〜200質量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.05〜80質量部である。二価フェノール化合物(B)の添加量が200質量部以上では、得られるヒドロキシフェニル末端基を有するPESの分子量が小さくなりすぎ、ポリマーの回収・洗浄が困難となるだけでなく、酸性の二価フェノール化合物や二価フェノール化合物の塩がポリマー中に残存し、ポリマーが着色する傾向がある。一方、0.1質量部以下では、反応性のヒドロキシフェニル末端基を導入することが困難となる。
【0049】
本反応は、実質的には、二価フェノールの塩が反応に寄与していることから、系中へ添加する方法としては、別途塩基性化合物と二価フェノールから二価フェノール化合物の金属塩を生成させた後、反応系に添加させても良い。
【0050】
水(C)を用いる場合、塩基性化合物(D)の添加量は、使用する水(C)100質量部に対し、0.05〜1500質量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.05〜800質量部である。塩基性化合物(D)の添加量が1500質量部以上では、塩基性化合物(D)がポリマー中に残存し、ポリマーが着色する傾向がある。一方、0.05質量部以下では、十分な反応は進行せず、ヒドロキシフェニル末端基を導入することが困難となる。
【0051】
加熱温度は、使用する溶媒種、溶媒の沸点、反応溶液の濃度、二価フェノール化合物(B)および水(C)の添加量、塩基性化合物(D)の添加量に依存するが、通常100〜250℃で実施するのが好ましく、さらに好ましくは100〜200℃である。250℃以上より高温で反応すると、二価フェノール化合物(B)の塩基性化合物の熱分解、反応系内で生成したヒドロキシフェニル末端基を有するPESそのものの熱分解が進行するため、分子量の制御やヒドロキシフェニル末端基導入量の制御が困難となったり、最終的に得られるPES粒子(E)の熱安定性・滞留安定性の低下や、着色といった傾向が認められるようになる。一方、100℃より低い温度で本反応を行うと、反応が非常に遅くなるという問題がある。
【0052】
反応に要する時間は、二価フェノール化合物(B)の種類・添加量および水(C)の添加量、塩基性化合物の種類・添加量、反応濃度、反応温度により大幅に変化するが、通常は10分〜10時間の範囲であり、好ましくは30分〜5時間の範囲で実施される。
【0053】
反応雰囲気としては、酸素が存在しないことが好ましく、窒素もしくはその他の不活性ガス中で行うとよい結果が得られる。二価フェノール化合物(B)の塩基性化合物(D)は酸素の存在下で加熱すると酸化されやすく、目的とする反応が妨げられ、その結果、分子量制御、ヒドロキシフェニル末端基導入量の制御が困難となるほか、重合体の着色原因ともなる。
【0054】
(2)ヒドロキシフェニル末端基を有するPES粒子(E)の製造方法
本発明の工程(I)により得られた溶液と界面活性剤を混合し、均一溶液または懸濁液を得る工程(II)を説明する。
【0055】
界面活性剤としては、例えば脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、塩化トリアルキルメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等のカチオン系界面活性剤、完全ケン化型や部分ケン化型のポリビニルアルコール、完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体、ポリエチレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルエーテル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンアミン、ポリビニルピロリドン、セルロース等ノニオン系界面活性剤、およびアルキルアミノカルボン酸塩、カルボキシベタイン等の両性の界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の混合系を用いることができる。尚、ここで言うアルキルとは、炭素数2〜30までの直鎖状または分岐状飽和炭化水素基、および直鎖状または分岐状不飽和炭化水素基を表す。このうち好ましいものとしては、数平均分子量が1000以上の界面活性剤である。特に好ましくは、完全ケン化型または部分ケン化型のポリビニルアルコール、完全ケン化型または部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール−エチレン)共重合体、ポリエチレングリコール、およびポリビニルピロリドンから選ばれる1種または2種以上の混合物である。尚、ここで言う数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いて、ポリエチレングリコールによる校正曲線と対比させて算出したものである。
【0056】
界面活性剤の添加量としては、PES(A)100質量部に対して、1〜200質量部が好ましく、より好ましくは30〜200質量部、さらに好ましくは50〜200質量部である。添加量が上記範囲より少ない場合、PESが粒子状ではなく、粗大凝集物として得られ、粒子径分布も広くなる傾向であり好ましくない。上記範囲より多い場合、界面活性剤が非プロトン性極性溶媒に残存するため、好ましくない。
【0057】
本発明の工程(II)により得られた均一溶液または懸濁液に第2の溶媒を加えてPES粒子(E)を析出させる工程(III)を説明する。
【0058】
第2の溶媒を添加時のPESの均一溶液または懸濁液の温度としては、0〜80℃が好ましく、より好ましくは10〜60℃である。PESの均一溶液または懸濁液の温度が上記範囲より高い場合、PESが粒子状ではなく、粗大凝集物として得られる傾向であり、好ましくない。
【0059】
第2の溶媒としては、25℃におけるPESの溶解度が1%以下の溶媒を使用しなければならない。このような溶媒としては、上記範囲であれば特に限定されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、2−メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル等のエステル系溶媒等、クロロホルム、ブロモホルム、1,2−ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、および水の中から選ばれる1種または2種以上の混合溶媒が挙げられる。このうち、好ましいものとしては、水、メタノール、およびエタノールなどが挙げられ、これらはその1種または2種以上の混合溶媒として使用できる。また上記の溶媒には、PES(A)の溶解度が1%以下の範囲で、上記記載の非プロトン性極性溶媒が含有されていてもよい。
【0060】
第2の溶媒の添加量は、PES(A)の均一溶液または懸濁液100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以上である。添加量が上記範囲より少ない場合、PES粒子(E)が析出しない。
【0061】
第2の溶媒の添加速度は、PESの均一溶液または懸濁液100質量部に対して、10質量部/分以下が好ましく、より好ましくは5質量部/分である。添加速度が上記範囲より速い場合、PESが粒子状ではなく、粗大凝集物として得られる傾向であり好ましくない。
【0062】
以上の手法により、PES粒子(E)の分散液(G)を得ることができる。
【0063】
PES粒子の分散液(G)からPES粒子(E)の単離を行う工程(IV)を説明する。単離を行うためには、通常公知の固液分離、洗浄、乾燥の手法を用いることができる。以下詳細に説明する。
【0064】
PES粒子の分散液(G)に含まれるPES粒子(E)、非プロトン性極性溶媒、第2の溶媒、界面活性剤から、PES粒子(E)を単離する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、濾過、デカンテーション、遠心分離、酸析法、塩析法、スプレードライ法、凍結凝固法などが挙げられる。
【0065】
洗浄方法としては、二価フェノール(B)、塩基性化合物(D)、非プロトン性極性溶媒、界面活性剤がPES粒子(E)に残存しないよう、十分洗浄することが好ましい。
【0066】
洗浄溶媒としては、第2の溶媒を用いることが好ましく、より好ましくは水、メタノール、エタノールから選ばれる1種または2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
【0067】
固液分離を行った後の溶媒は、回収を行い、再利用することも可能であり、これにより生産性を向上させることができる。
【0068】
PES粒子(E)の乾燥方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、風乾、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などが挙げられる。加熱する場合、温度は、ガラス転移点温度より低い温度が好ましく、50〜150℃が好ましい。
【0069】
以上の手法により、PES粒子(E)を得ることができる。
【0070】
本発明のPES粒子(E)を製造する際に、PESおよび/またはPES粒子(E)と酸(F)を接触させることについての説明をする。
【0071】
本発明のいずれかの工程において、酸を接触させることにより、PESの末端に残存する塩基性化合物(D)を効率よく取り除くことができる。
【0072】
接触させる工程は特に限定されないが、工程(II)において直接接触させる方法、および工程(III)において第2の溶媒中に酸(F)を加え接触させる方法、工程(IV)において洗浄溶媒に酸(F)を加え接触させる方法が好ましい。
【0073】
使用される酸(F)としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、過塩素酸、亜硫酸、クロム酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、シアン化水素、臭素水素酸、ホウ酸などの無機酸、酢酸、蟻酸、シュウ酸、酒石酸、ステアリン酸、ナフテン酸、ピクリン酸、りんご酸などの有機酸から選ばれる1種または2種以上の混酸を用いることができ、酸の種類はこれらに限るものではない。
【0074】
使用する酸(F)の量としては、用いる溶媒への溶解性などの影響を受けるため、特に制限はないが、使用するPESを100質量部とした際に、1質量部以上が好ましく、より好ましくは3質量部以上である。酸の量が上記範囲より少ない場合、塩基性化合物(D)を十分に取り除くことができず、好ましくない。
【0075】
接触時間は、使用する溶媒の量、酸の種類、温度等により変化するため、特に制限はないが、通常0.5〜2時間である。
【0076】
(3)ヒドロキシフェニル末端基を有するPES粒子(E)の特徴
本発明の製造方法より得られるPES粒子(E)のヒドロキシフェニル末端基組成(モル%)は、50モル%以上である。尚、ここで言う、ヒドロキシフェニル末端基組成とは、重水素化DMSO溶媒中、400MHz H−NMRを用い、積算回数100回により、7.7ppmのクロル置換された芳香族炭素に隣接するプロトン(1HCl)と、6.6〜6.9ppmのヒドロキシル基で置換された芳香族炭素に隣接するプロトン(1HOH)の面積比から、下記式により算出したものである。
[ヒドロキシフェニル末端基組成(モル%)]=
OHのピーク面積]/([OHのピーク面積]+[Clのピーク面積]×100
[クロロフェニル末端基組成(モル%)]=
Clのピーク面積]/([OHのピーク面積]+[Clのピーク面積]×100
【0077】
ヒドロキシフェニル末端基組成(モル%)のより好ましい範囲は、60モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。ヒドロキシフェニル末端基量が上記範囲より低い場合、アロイ時の微分散化が困難となり、マトリックス樹脂の品質が低下する傾向であり、好ましくない。
【0078】
本発明のPES粒子(E)の数平均粒子径は、0.1〜50μmである。数平均粒子径のより好ましい範囲は、0.1〜30μmである。数平均粒子径が上記範囲より小さいと、取扱い性が低下し、回収等が困難になるため、収率が低下する傾向である。数平均粒子径が上記範囲より大きいと、二価フェノール(B)や塩基性化合物(D)を粒子内に多く残存する傾向であるため、洗浄効率の悪化、着色等PESの品質が低下するため好ましくない。尚、PES粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真にて、任意粒子100個を観測、直径を測定し、以下の式(1)より算出する。尚、粒子が真円でない場合は、長径を測定するものとする。
【0079】
さらに本発明のPES粒子(E)の粒子径分布は、1.0〜1.5の範囲であるとより好ましい。均一な粒子径は、ポリマーアロイ用添加剤、触媒担持体、電子写真用のトナー、液晶スペーサーなどに適用する場合、予期した以上の性能を発現することがあるため好ましい。例えば、ポリマーアロイ用添加剤として用いた場合、混練時間の短縮等、生産性の大幅な向上がある。 尚、粒子径分布は、以下の式(3)に従い、数平均粒子径に対する体積平均粒子の比により算出する。体積平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真にて、任意粒子100個を観測、直径を測定し、以下の式(2)より算出する。尚、粒子が真円でない場合は、長径を測定するものとする。
【0080】
【数1】

【0081】
尚、Ri:粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布とする。
【0082】
本発明のヒドロキシフェニル末端基を有するPES粒子(E)中に残存するアルカリ金属量は、1000ppm以下が好ましく、より好ましくは500ppm、さらに好ましくは100ppm以下である。尚、ここで言うアルカリ金属量とは、PES粒子(E)中に含まれる金属残分を、原子吸光法、ICP発光分光分析法、ICP質量分析法などで測定して求めた含有量のことである。アルカリ金属量が上記範囲より多いと、滞留安定性の低下、着色等が起こる傾向であるため好ましくない。
【0083】
本発明の製造方法によれば、これらのアロイ用に好適な、反応性のヒドロキシフェニル末端基を有するPES粒子(E)を簡便な方法で、製造することが可能となる。得られるヒドロキシフェニル末端基を有するPES粒子(E)は、光拡散剤、液晶用スペーサー、接着剤、塗料、印刷インク中の分散液、ポリマーアロイ用添加剤、各種触媒の担持体、電子写真のトナー等電子部品、クロマトグラフィー担体、自動車部品、航空機部品、化粧品の基材および医療用担体などに利用できる。特に本発明のヒドロキシフェニル末端基を有するPES粒子(E)をアロイ化した熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなる組成物は、PES粒子(E)がポリマーマトリックス中に微分散、さらにはナノサイズにまで分散し、さらに使用するヒドロキシフェニル末端基を有するPES粒子(E)の末端基量、その分子量、配合量によっては完全相溶した構造を呈し、機械特性、耐熱性、および電気的特性が極めて優れた熱可塑性樹脂アロイ、熱硬化性樹脂アロイを提供することが可能となる。
【実施例】
【0084】
次に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例中、用いる測定は下記の通りである。
【0085】
(1)還元粘度(ηsp/c)
還元粘度は、JIS K7367−1(2002)に記載の方法で、毛細管粘度計を用い、DMF中、25℃、1g/dlの条件で測定した。
【0086】
なお還元粘度(ηsp/c)は、下記し記に基づき計算し、5回の測定値を平均化した値を使用した。
ηsp/c=(t−t)/t/c
t;重合体溶液の粘度計における標線間の通過時間(秒)
;純溶媒の粘度計の標線間の通過時間(秒)
c;重合体溶液の濃度(g/dl)
【0087】
(2)数平均分子量の測定
界面活性剤の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリエチレングリコールによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。
装置:株式会社島津製作所製 LC−10Aシリーズ
カラム:昭和電工株式会社製GF−7MHQ
移動相:水
流速:1.0ml/min
検出:示差屈折率計。
【0088】
(3)PES末端基組成
400MHz H−NMR(核磁気共鳴)装置(日本電子株式会社製:AL−400)を用い、試料濃度1mg/mLの重水素化DMSO溶液中、積算回数100回で測定した。
【0089】
7.7ppmにクロロ基に隣接する2つのプロトン(2×HCl)と、6.6〜6.9ppmにヒドロキシル基に隣接する2つプロトン(2×HOH)が、観察される。これらのピーク面積比を用い、末端基組成を下記関係式より算出した。
OHのピーク面積]/([OHのピーク面積]+[Clのピーク面積]×100
[クロロフェニル末端基組成(モル%)]=
Clのピーク面積]/([OHのピーク面積]+[Clのピーク面積]×100。
【0090】
(4)数平均粒子径、体積平均粒子径、粒子径分布の算出法
走査型電子顕微鏡(日本電子社製走査型電子顕微鏡JSM−6301NF)にて、PES粒子を観察、平均粒子径を測定した。尚、粒子が真円でない場合は、長径をその粒子径として測定した。
【0091】
数平均粒子径(Dn)、体積平均粒子径(Dv)は、任意粒子100個の平均より数式(1)および(2)に従い、算出した。
【0092】
粒子径分布(PDI)は、数式(3)に従い、算出した。
【0093】
【数2】

【0094】
なお、Ri:粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布とする。
【0095】
(5)アルカリ金属含有量の定量
PES中のアルカリ金属含有量の定量は下記の方法により行った。試料を石英るつぼに秤量し、電気炉を用いて灰化し、灰化物を濃硝酸で溶解した後、希硝酸で定容とした。得られた定容液をICP重量分析法(装置;Agilent製4500)及びICP発光分光分析法(装置;PerkinElmer製Optima4300DV)に処した。
【0096】
(6)熱硬化性樹脂アロイのモルフォロジー観察
透過型電子顕微鏡(HITACHI、ELECTRON MICROSCOPE H−700)を用いて、得られた樹脂組成物についてモルフォロジー観察を行い、任意の分散した個々の球状分散相の最も長い粒子系を30点測定し、それらの値を平均化した値を平均粒子径とした。
【0097】
[使用するPESの物性]
住友化学株式会社製“スミカエクセル4800P”
還元粘度 0.48。
400MHz H−NMRより、クロロフェニル末端基のみが観察された。
【0098】
<ヒドロキシフェニル末端基を有するPES粒子の製造>
[実施例1]
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管(ジムロート)を取り付けた100mLの四口フラスコに、PES(住友化学株式会社製 スミカエクセル4800P)5.00gに対し、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(DHDPS)1.25g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)50ml、無水炭酸カリウム0.70gを秤量し、NMP反応溶液を攪拌しながら反応温度を150℃にまで上昇させ、反応時間5時間で反応を終了した。室温まで冷却した後に、ポリビニルアルコール(PVA)(日本合成化学工業株式会社製,ゴーセノール,GL−05,数平均分子量8000)2.00gを加え、60℃の温度下、2時間撹拌した。混合溶液は懸濁液であった。室温まで冷却し、水50gを流速1g/分の速度で添加した。得られたスラリー溶液を濾別し、濾物を水100gで3回洗浄した。その後、温度80℃において真空乾燥させ、PES粒子4.10gを得た。H−NMRではクロロフェニル末端基は確認されず、ヒドロキシフェニル末端基組成が100モル%であった。数平均粒子径は27μm、体積平均粒子径は44μm、粒子径分布は1.62であった。アルカリ金属含有量は80ppmであった。結果を表1に示す。
【0099】
[実施例2]
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの変わりに水1.35gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施した。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=20/80(モル%)であった。数平均粒子径は24μm、体積平均粒子径は42μm、粒子径分布は1.75であった。アルカリ金属含有量は80ppmであった。結果を表1に示す。
【0100】
[実施例3]
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを0.27g、無水炭酸カリウムを0.15g用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施した。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=21/79(モル%)であった。数平均粒子径は28μm、体積平均粒子径は46μm、粒子径分布は1.64であった。アルカリ金属含有量は70ppmであった。結果を表1に示す。
【0101】
[実施例4]
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを0.10g、無水炭酸カリウムを0.06g用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施した。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=38/62(モル%)であった。数平均粒子径は26μm、体積平均粒子径は45μm、粒子径分布は1.73であった。アルカリ金属含有量は30ppmであった。結果を表1に示す。
【0102】
[実施例5]
溶媒をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の代わりにジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリビニルアルコール(PVA)を5.00gに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=0/100(モル%)であった。数平均粒子径は17μm、体積平均粒子径は20μm、粒子径分布は1.18であった。アルカリ金属含有量は90ppmであった。結果を表1に示す。得られた粒子の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0103】
[実施例6]
実施例2で得られたPES粒子5.00g、35%塩酸0.54gをメタノール100g中に混合し、1時間撹拌した。その後、温度80℃において真空乾燥させ、PES粒子4.10gを得た。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=0/100(モル%)であった。数平均粒子径は17μm、体積平均粒子径は20μm、粒子径分布は1.18であった。アルカリ金属含有量は20ppmであった。結果を表1に示す。
【0104】
[比較例1]
無水炭酸カリウムを添加しない以外は、実施例1と同様の方法で実施した。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=100/0(モル%)であった。数平均粒子径は29μm、体積平均粒子径は45μm、粒子径分布は1.55であった。アルカリ金属含有量は16ppmであった。結果を表1に示す。
【0105】
[比較例2]
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを添加しない以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=100/0(モル%)であった。数平均粒子径は29μm、体積平均粒子径は46μm、粒子径分布は1.59であった。アルカリ金属含有量は400ppmであった。結果を表1に示す。
【0106】
[比較例3]
ポリビニルアルコール(PVA)を添加しない以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られたPESは粒子状ではなく1mm以上の凝集体であった。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=0/100(モル%)であった。アルカリ金属含有量は500ppmであった。結果を表1に示す。
【0107】
[比較例4]
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管(ジムロート)を取り付けた100mLの四口フラスコに、PES(住友化学株式会社製 スミカエクセル4800P)5.00g、ポリビニルアルコール(PVA)(日本合成化学工業株式会社製,ゴーセノールGL−05,数平均分子量8000)2.00g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)50mlを秤量し、60℃の温度下、2時間撹拌した。混合溶液は懸濁液であった。室温まで冷却し、水50gを流速1g/分の速度で添加した。得られたスラリー溶液を濾別し、濾物を水100gで3回洗浄した。その後、温度80℃において真空乾燥させ、PES粒子4.00gを得た。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=100/0(モル%)であった。数平均粒子径は31μm、体積平均粒子径は48μm、粒子径分布は1.55であった。アルカリ金属含有量は14ppmであった。結果を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
<ヒドロキシフェニル末端基を有するPES粒子(E)と熱硬化性樹脂のアロイ>
[実施例7]
攪拌機付き試験管に、エポキシ樹脂としてテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(Epikote 604)(ジャパンエポキシレジン株式会社製)100gと実施例1で合成したPES粒子40gを加え、140℃に加熱し撹拌した。撹拌時間1時間と3時間時のエポキシ樹脂組成物中のPES粒子径を透過型電子顕微鏡にて測定した。結果を表2に示す。
【0110】
[実施例8]
実施例1で合成したPES粒子の変わりに、実施例5で合成したPES粒子を用いた以外は、実施例7と同様の方法で実施した。結果を表2に示す。
【0111】
[比較例5]
実施例1で合成したPES粒子の変わりに、比較例3で合成したPESを用いた以外は、実施例7と同様の方法で実施した。結果を表2に示す。
【0112】
[比較例6]
実施例1で合成したPES粒子の変わりに、比較例4で合成したPES粒子を用いた以外は、実施例7と同様の方法で実施した。結果を表2に示す。
【0113】
【表2】

【0114】
ヒドロキシフェニル末端基を有する実施例7、実施例8では、PES粒子がエポキシ中で0.1μm以下に溶解することが分かる。さらに粒子径分布の狭い実施例8では、0.1μm以下に溶解する速度が速くなるため、混練時間の短縮等、生産性向上により効果があることが分かる。
【0115】
一方、ヒドロキシフェニル末端基を有するが粒子状ではないPESを用いる比較例5、クロロフェニル末端基を有するPES粒子を用いる比較例6では、エポキシへの溶解速度が非常に遅いことが分かる。
【0116】
これらの結果より、本発明の効果が明確に現れたと言える。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】実施例5により得られたPES粒子の走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(a−1)および/または一般式(a−2)で表される構造を有する芳香族ポリエーテルスルホン(A)と、一般式(b−1)および/もしくは(b−2)で表される二価フェノール化合物(B)または水(C)、ならびに塩基性化合物(D)を加熱した後、界面活性剤の共存下で、芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)を析出させることを特徴とする芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
【化1】

(式中のRは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基を表し、mは0〜3の整数を表す。Yは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、C(CH2、CH(CH)、CHを表す)
【請求項2】
芳香族ポリエーテルスルホン(A)と、前記二価フェノール化合物(B)または水(C)、および塩基性化合物(D)を非プロトン性極性溶媒を含む溶媒中で加熱する工程(I)、工程(I)で得られた溶液と界面活性剤を混合し、均一溶液または懸濁液を得る工程(II)、工程(II)で得られた均一溶液または懸濁液に非プロトン性極性溶媒とは異なる第2の溶媒を加えて芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)を析出させる工程(III)を含むことを特徴とする請求項1記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
【請求項3】
芳香族ポリエーテルスルホンおよび/または芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)と酸(F)を接触させることを特徴とする請求項1または2記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
【請求項4】
二価フェノール化合物(B)の添加量が、芳香族ポリエーテルスルホン(A)100質量部に対して、0.1〜200質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
【請求項5】
水(C)の添加量が、芳香族ポリエーテルスルホン(A)100質量部に対して、0.001〜200質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
【請求項6】
塩基性化合物(D)が炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム、および無水炭酸カリウムから選ばれる1種または2種以上である請求項1〜5のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
【請求項7】
界面活性剤が、完全ケン化型または部分ケン化型のポリビニルアルコール、完全ケン化型または部分ケン化型のポリ(ビニルアルコールーエチレン)共重合体、ポリエチレングリコール、およびポリビニルピロリドンから選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子の製造方法。
【請求項8】
界面活性剤の添加量が、芳香族ポリエーテルスルホン(A)100質量部に対し、1〜200質量部であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
【請求項9】
非プロトン性極性溶媒が、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、およびスルホランから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
【請求項10】
工程(I)において、非プロトン性極性溶媒に相溶し、かつ0.101MPa下において、水と共沸混合物を形成する溶媒を含むことを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
【請求項11】
0.101MPa下において、水と共沸混合物を形成する溶媒がベンゼン、トルエン、キシレンのいずれか1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項10記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
【請求項12】
工程(I)において、加熱温度が100〜200℃であることを特徴とする請求項2〜11のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
【請求項13】
第2の溶媒が、25℃における芳香族ポリエーテルスルホン(A)の溶解度が1質量%以下の溶媒であることを特徴とする請求項2〜12のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の製造方法。
【請求項14】
第2の溶媒が、水、メタノール、エタノールから選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項2〜13のいずれか1項記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子の製造方法。
【請求項15】
ヒドロキシフェニル末端基組成が50モル%以上(重水素化ジメチルスルホキシド中、H−NMRにより測定され、[6.6〜6.9ppmのピーク面積(ヒドロキシルフェニル末端基)]/(6.9ppmのピーク面積(ヒドロキシフェニル末端基由来)+7.7ppmのピーク面積(クロロフェニル末端基由来))×100より算出される)、平均粒子径が0.1〜50μmであることを特徴とする芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)。
【請求項16】
芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)の粒子径分布が、1.0〜1.5であることを特徴とする請求項15記載の芳香族ポリエーテルスルホン粒子(E)。

【図1】
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【公開番号】特開2010−1448(P2010−1448A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205026(P2008−205026)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】