説明

芳香族ポリマーの製造方法

【課題】従来の方法では、トルエンと炭酸ナトリウム水溶液との二相系溶媒を均一に分散させながら、芳香族モノマーを鈴木カップリング反応させる方法であることから、該方法による芳香族ポリマーの製造方法は、必ずしも容易ではなかった。
【解決手段】アルコキシド、パラジウム化合物、イミダゾリウム塩、並びに、非プロトン性有機溶媒の存在下、式(A)
−Ar−X (A)
(式中、Xは式(1)〜(5)


で表わされる基を表わし、Arは、芳香族炭化水素基等を表わす。)
で表わされる芳香族モノマーと、式(B)
−Ar−X (B)
(式中、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わし、Arは、2価の芳香族炭化水素基等を表わす。)
で表わされる芳香族モノマーとを重合する工程を含むことを特徴とする芳香族ポリマーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリマーの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香環がπ共役した芳香族ポリマーは、例えば、有機エレクトロニクス材料などに有用である。芳香族ポリマーの製造方法として、芳香族モノマーを鈴木カップリング反応によって製造する方法が知られている。
具体的には、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、相間移動触媒、炭酸ナトリウム水溶液及びトルエン存在下、9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジ(エチレンボロネート)と2,7−ジブロモ−9,9−ジ(4−メトキシフェニル)フルオレンを芳香族モノマーとを重合することにより芳香族ポリマーを製造する方法が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−520289号公報(実施例7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報記載の方法では、トルエンと炭酸ナトリウム水溶液との二相系溶媒を均一に分散させながら、芳香族モノマーを鈴木カップリング反応させる方法であることから、該方法による芳香族ポリマーの製造方法は、必ずしも容易ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは鈴木カップリング反応による重合によって芳香族ポリマーを製造する方法について鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。
すなわち、本発明は、
<1> アルカリ金属アルコキシド及びアルカリ土類金属アルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコキシド、パラジウム化合物、イミダゾリウム塩、並びに、非プロトン性有機溶媒の存在下、式(A)
−Ar−X (A)
(式中、Xは式(1)〜(5)

で表わされる基を表わし、Arは、炭素数6〜36の2価の芳香族炭化水素基を表わす。該芳香族炭化水素基に含まれる炭素原子は、ヘテロ原子又はカルボニル基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シリル基、アシル基、イミン残基、酸イミド基、カルボキシル基、ニトリル基又はニトロ基で置換されていてもよい。)
で表わされる芳香族モノマーと、式(B)
−Ar−X (B)
(式中、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わし、Arは、炭素数6〜36の2価の芳香族炭化水素基を表わす。該芳香族炭化水素基に含まれる炭素原子は、ヘテロ原子又はカルボニル基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シリル基、アシル基、イミン残基、酸イミド基、カルボキシル基、ニトリル基又はニトロ基で置換されていてもよい。)
で表わされる芳香族モノマーとを重合する工程を含むことを特徴とする芳香族ポリマーの製造方法;
【0006】
<2> 非プロトン性有機溶媒が、エーテル溶媒、芳香族炭化水素溶媒及び脂肪族炭化水素溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒であることを特徴とする<1>記載の芳香族ポリマーの製造方法;
<3> パラジウム化合物が、パラジウム(0)錯体またはパラジウム(II)錯体あることを特徴とする<1>又は<2>記載の芳香族ポリマーの製造方法;
<4> イミダゾリウム塩が、式(C)

(式中、Zは、式(6)〜(8)で表わされる2価の基を表わす。R及びRはそれぞれ独立に、炭素数3〜9の分枝状アルキル基を表わす。Xは、ハロゲン化物イオン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、硫酸水素イオン、硫酸イオン、アルキル硫酸イオン、アリール硫酸イオン、炭酸水素イオン、又は、炭酸イオンを表わす。)

で表わされる塩であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか記載の芳香族ポリマーの製造方法;
等である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、二相系溶媒を用いることなく、簡便に芳香族ポリマーを製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<芳香族モノマー>
本発明に用いられる芳香族モノマーは、式(A)
−Ar−X (A)
で表わされる芳香族モノマー(以下、芳香族モノマー(A)と記すことがある)と、式(B)
−Ar−X (B)
で表わされる芳香族モノマー(以下、芳香族モノマー(B)と記すことがある)とである。
【0009】
Ar及びArは、それぞれ独立に、炭素数6〜36の2価の芳香族炭化水素基を表わす。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、例えば、ナフタレン基、アントラセン基、フルオレン基等の縮合系芳香族炭化水素基等を挙げることができる。また、異なる例示として、ビフェニレン基のようにフェニレン基が単結合した芳香族炭化水素基のように、得られる芳香族ポリマーの主鎖を形成する前記芳香族炭化水素基が、互いに、単結合、ヘテロ原子、スルホニル基又はカルボニル基で連結されたもの等を挙げることができる。
該芳香族炭化水素基に含まれる炭素原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などのヘテロ原子;スルホニル基;カルボニル基に置き換えられていてもよい。
【0010】
芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、シリル基、アシル基、イミン残基、1価の複素環基、酸イミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ニトリル基又はニトロ基等を挙げることができる。また、置換基に含まれる水素原子は、さらに、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基、又はニトリル基で置換されていてもよい。
【0011】
アルキル基とは、炭素数1〜20のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−メチルペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基及びn−イコシル基等を挙げることができる。
【0012】
アルコキシ基とは、炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基及びn−イコシルオキシ基等を挙げることができる。
【0013】
アルキルチオ基とは、炭素数1〜20のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ドデシルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等を挙げることができる。
【0014】
アリールオキシ基とは、前記炭素数6〜20のアリール基に酸素原子が結合した基であり、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、フェナントリルオキシ基、アントリルオキシ基等が挙げられる。
アリールチオ基とは、前記炭素数6〜20のアリール基に硫黄原子が結合した基であり、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0015】
アリールアルケニル基としては例えば、フェニルアルケニル基、ナフチルアルケニル基などが挙げられる。
アルケニル基としては例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基などが挙げられる。
【0016】
アリールアルキニル基としては例えば、フェニルアルキニル基、ナフチルアルキニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、1−オクチニル基などが挙げられる。
【0017】
1価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子1個が結合手となった基を意味する。1価の複素環基には、アルキル基等の置換基が結合していてもよい。1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、アルキルピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基などが挙げられる。
【0018】
アミノ基は−N(R’)で表わされる基である。ここで、R’はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基および1価の複素環基からなる群から選ばれる炭素数1〜20の炭化水素基である。アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、s−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ドデシルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジニルアミノ基、トリアジニルアミノ基などが挙げられる。
【0019】
シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、ジメチル−イソプロピルシリル基、ジエチル−イソプロピルシリル基、t−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ドデシルジメチルシリル基、フェニルアルキルシリル基、アルコキシフェニルアルキルシリル基、アルキルフェニルアルキルシリル基、ナフチルアルキルシリル基、フェニル−アリルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基などが挙げられる。
【0020】
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基等の脂肪族アシル基、例えば、ベンゾイル基、ナフトイル基等の芳香族アシル基等が挙げられる。
【0021】
イミン残基は、式:H−N=C<および式:−N=CH−の少なくとも一方で表される部分構造を有するイミン化合物から、該部分構造中の水素原子が結合手となった基を意味する。ここで、イミン化合物としては、例えば、アルジミン、ケチミン及びアルジミン中の窒素原子に結合した水素原子がアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基等で置換された化合物が挙げられる。イミン残基の炭素数は、通常2〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜16程度である。イミン残基としては、例えば、一般式:−CR''=N−R'''または一般式:−N=C(R''')(式中、R''は水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基を表し、R'''は独立に、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基を表し、ただし、R'''が2個存在する場合、2個のR'''は相互に結合し一体となって2価の基、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数2〜18のアルキレン基として環を形成してもよい。)で表される基な
どが挙げられる。イミン残基の具体例としては、以下の構造式で示される基などが挙げら
れる。
【0022】

【0023】
酸イミド基は、酸イミドに含まれる窒素原子が結合手となった残基を意味する。酸イミド基の炭素数は、例えば、4〜20等を挙げることができ、好ましくは4〜18程度、より好ましくは4〜16程度である。酸イミド基としては、例えば、以下に示す基などが挙げられる。

【0024】
アルコキシカルボニル基は、前記アルコキシ基にカルボニル基が結合した基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0025】
芳香族炭化水素基としては、例えば、式(a)〜(e)で表わされる2価の基等が挙げられる。

式中、Rは置換基を意味し、置換基としては、Ar及びArの水素原子に置換されてもよい置換基として例示されたものと同様の基を挙げることができる。nは0〜4の整数を表わす。
【0026】
芳香族炭化水素基に含まれる炭素原子がヘテロ原子又はカルボニル基で置き換えられた芳香族炭化水素基としては、例えば、式(f)〜(z)で表わされる2価の基等が挙げられる。

(式中、Rは前記置換基を意味し、nは0〜2の整数を表わす。YはN、S、C=Oを表わす。)
【0027】
互いに、ヘテロ原子、スルホニル基又はカルボニル基で連結された芳香族炭化水素基としては、例えば、式(aa)〜(ac)で表わされる2価の基等が挙げられる。

【0028】
本発明の製造方法に用いられる芳香族モノマー(A)におけるArと、芳香族モノマー(B)におけるArとは同一であっても異なっていてもよい。
好ましいAr及びArとしては、例えば、式(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(m)((m)
中のYはSが好ましい)、(y)、(aa)で表される基等を挙げることができる。
【0029】
芳香族モノマー(A)のXは、式(1)〜(5)

で表わされる基を表わす。
芳香族モノマー(A)におけるXは、同一でも異なっていてもよいが、同一のXであると、芳香族モノマー(A)の調製が容易であることから好ましい。好ましいXは、式(2)で表わされる基である。
【0030】
芳香族モノマー(A)としては、例えば、2,2’−(9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(9,9−ジオクチル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジオクチル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(9,9−ジオクチル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジオクチル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(9,9−ジドデシル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジドデシル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(9,9−ジドデシル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジドデシル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(3,5−ジメトキシ−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9−オクチル−9H−カルバゾール−3,6−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)ビス(1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(2−メチル−5−オクチル−1,4−フェニレン)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(2,5−ジブチル−1,4−フェニレン)ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−[2,5−ビス(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン]ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)、2,5−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)チオフェン、2,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)チオフェン、2,5−ビス(1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)チオフェン、2,5−ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)チオフェン、1,1’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−4,4’−ビフェニル、1,1’−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−4,4’−ビフェニル、1,1’−ビス(1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)−4,4’−ビフェニル、1,1’−ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)−4,4’−ビフェニル、5,5’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2,2’−バイチオフェン等が挙げられる。好ましくは、例えば2,2’−(9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジオクチル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジドデシル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(3,5−ジメトキシ−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(2−メチル−5−オクチル−1,4−フェニレン)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)チオフェン、1,1’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−4,4’−ビフェニル、5,5’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2,2’−バイチオフェン等が挙げられる。
【0031】
本発明の製造方法において、芳香族モノマー(A)が異なる複数種の芳香族モノマー(A)を用いてもよい。
【0032】
芳香族モノマー(B)のXは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす。
芳香族モノマー(B)におけるXは、同一でも異なっていてもよいが、同一のXであると、芳香族ポリマー(B)の調製が容易であることから好ましい。好ましいXは、臭素原子である。
【0033】
芳香族モノマー(B)としては、例えば、2,7−ジブロモ−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチル−9H−フルオレン、2,7−ジブロモ−9,9−ジドデシル−9H−フルオレン、2,7−ジクロロ−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン、2,7−ジクロロ−9,9−ジオクチル−9H−フルオレン、2,7−ジクロロ−9,9−ジドデシル−9H−フルオレン、2−ブロモ−7−クロロ−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン、2−ブロモ−7−クロロ−9,9−ジオクチル−9H−フルオレン、2−ブロモ−7−クロロ−9,9−ジドデシル−9H−フルオレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロモ−2−エチルベンゼン、1,4−ジブロモ−2−メトキシベンゼン、ジメチル 2,5−ジブロモテレフタレート、1,4−ジブロモナフタレン、3,5−ジブロモピリジン、1,1’−ジブロモ−4,4’−ビフェニル、2,5−ジブロモピリジン、1,4−ジブロモ−2,5−ジヘキシルオキシベンゼン、1−ブロモ−4−クロロベンゼン、1−ブロモ−4−クロロトルエン、1−ブロモ−4−クロロ−2−プロピルベンゼン、2,5−ジブロモ−4’−フェノキシベンゾフェノン、2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン、2,5−ジブロモ−3、2,5−ジブロモ−3−オクチルチオフェン−ドデシルチオフェン、2,5−ジクロロ−3−ヘキシルチオフェン、5,5’−ジブロモ−2,2’−バイチオフェン、5,5’−ジブロモ−3,3’−ジヘキシル−2,2’−バイチオフェン、ビス(4−ブロモフェニル)−4−(4−t−ブチル)ベンゼンアミン、ビス(4−ブロモフェニル)−4−(1−メチルプロピル)ベンゼンアミン、ビス(4−ブロモフェニル)−4−ベンゼンアミン、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−n−ブチルフェニル)−1,4−ベンゼンジアミン、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−ビシクロ[4,2,0]オクタ−1,3,5−トリエン−3−アミン、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−1,4−ベンゼンジアミン、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス[4−(1,1−ジメチルエチル)−2,6−ジメチルフェニル]−1,4−ベンゼンジアミン、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾセレナジアゾール、4,7−ビス(5−ブロモ−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール、4,7−ビス(5−ブロモ−4−メチル−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール、4,7−ビス(5−ブロモ−3−メチル−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール、3,7−ジブロモ−10−(4−n−ブチルフェニル)−10H−フェノチアジン、3,7−ジブロモ−10−(4−n−ブチルフェニル)−10H−フェノキシアジン、3,3’−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルビス[[4−ブロモフェニル]イミノ]]ビスベンゾイックアシッド ジエチルエステル、4,4’−ビス[(4−ブロモフェニル)フェニルアミノ]ビフェニル等が挙げられる。好ましくは、例えば2,7−ジブロモ−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチル−9H−フルオレン、2,7−ジブロモ−9,9−ジドデシル−9H−フルオレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン、ビス(4−ブロモフェニル)−4−ベンゼンアミン等が挙げられる。
【0034】
本発明の製造方法において、芳香族モノマー(B)が異なる複数種の芳香族モノマー(B)を用いてもよい。
【0035】
本発明の製造方法における芳香族モノマー(B)の使用量としては、芳香族モノマー(A)1モルに対して、0.8〜1.2モルであり、好ましくは0.9〜1.1モルである。
【0036】
<非プロトン性有機溶媒>
本発明で用いられる非プロトン性有機溶媒とは、分子内に、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などに結合した活性水素を有さず、かつ、芳香族モノマー(A)及び芳香族モノマー(B)を溶解し得る有機溶媒である。具体的には、例えば、非環状エーテル溶媒、環状エーテル溶媒などのエーテル溶媒、非プロトン性極性溶媒、芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒等を挙げることができる。
非プロトン性極性溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等が挙げられる。非環状エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられ、環状エーテル溶媒としては、例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられ、脂肪族炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
好ましい非プロトン性有機溶媒としては、芳香族モノマー(A)及び芳香族モノマー(B)の溶解度の観点から、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
非プロトン性有機溶媒には必要に応じて、2種以上の非プロトン性有機溶媒を混合して用いてよく、例えば、テトラヒドロフランとトルエンとの混合溶媒、エチレングリコールジメチルエーテルとトルエンとの混合溶媒等が挙げられる。
【0037】
アルカリ金属アルコキシド及びアルカリ土類金属アルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコキシド、パラジウム化合物、イミダゾリウム塩、並びに、非プロトン性有機溶媒の存在下、芳香族モノマー(A)と芳香族モノマー(B)とを重合する工程(以下、重合工程と記すことがある)における非プロトン性有機溶媒の使用量としては、例えば、芳香族モノマー(A)と芳香族モノマー(B)との合計モル数1モルに対して、1×10−3L〜1Lの範囲等を挙げることができる。前記範囲の濃度であると、得られる芳香族ポリマーの分子量が向上する傾向があることから好ましい。
【0038】
<アルコキシド>
本発明に用いられる、アルカリ金属アルコキシド及びアルカリ土類金属アルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコキシドとは一般式
MX・pH
(式中、Mはアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンを表わし、Xは炭素数1〜8のアルコキシ基を表わす。nはMの価数を表わし、1又は2である。pは0〜8を表わす。)
で表されるアルコキシドである。
Mとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオン、例えば、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属カチオン等が挙げられる。
Xとしては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0039】
アルカリ金属アルコキシドとしては、例えば、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウム−t−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等が挙げられ、アルカリ土類金属アルコキシドとしては、例えば、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウム−t−ブトキシド、カルシウムメトキシド、カルシウムエトキシド、カルシウム−t−ブトキシド等が挙げられる。
アルコキシドとして異なる複数種のアルコキシドを用いてもよい。
好ましいアルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド等を挙げることができる。
【0040】
アルコキシドの使用量としては、例えば、芳香族モノマー(B)1モルに対して、0.5〜20当量(ここで、当量とは、芳香族モノマー(B)に含まれるXの合計物質量と等しい水素イオンを中和するのに必要なアルコキシドの理論物質量の比を表す)の範囲等を挙げることができる。好ましくは0.5〜6当量である。
【0041】
<パラジウム化合物>
本発明で用いられるパラジウム化合物としては、例えば、パラジウム(0)錯体またはパラジウム(II)錯体等を挙げることができる。
パラジウム(0)錯体としては、ジベンジリデンアセトンが0価パラジウムに配位した錯体、いわゆる、ジベンジリデンアセトン−パラジウム(0)錯体等が挙げられ、具体的には、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)等が挙げられる。
パラジウム(II)錯体としては、例えば、酢酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナート等のパラジウムカルボン酸塩、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)等のハロゲン化パラジウム、例えば、アリルパラジウム(II)クロライドダイマー、ビス2−メチルアリルパラジウム(II)クロライドダイマー、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)等のハロゲン化パラジウム錯体等が挙げられる。
好ましいパラジウム化合物としては、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)等を挙げることができる。
【0042】
パラジウム化合物の使用量としては芳香族モノマー(B)に対して0.0001〜0.8モルの範囲が好ましく、0.001〜0.2モルの範囲がより好ましい。該使用量が多すぎると、反応の後処理が煩雑になる傾向がある。
【0043】
<イミダゾリウム塩>
イミダゾリウム塩とは、分子内に2−イミダゾリンの塩又はイミダゾールの塩を部分構造として有する塩であり、例示すれば、式(C)

(式中、Zは、式(6)〜(8)で表わされる2価の基を表わす。R及びRはそれぞれ独立に、炭素数3〜9の分枝状アルキル基を表わす。Xは、例えば、Cl、Br、Iなどのハロゲン化物イオン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、硫酸水素イオン、硫酸イオン、アルキル硫酸イオン、アリール硫酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン等を表わす。)

で表わされる塩等を挙げることができる。
【0044】
分枝状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、イソペンチル基、s−ヘキシル基、t−ヘプチル基、イソオクチル基、t−ノニル基、アダマンチル基(トリシクロ[3.3.1.13,7]デカンの水素原子の1つが結合手となった基)等が挙げられる。特に好ましくは、t−ブチル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0045】
式(C)で表されるイミダゾリウム塩としては、例えば、1,3−ビス(1−アダマンチル)−ベンズイミダゾリウムクロライド、1,3−ジ−t−ブチルベンズイミダゾリウムクロライド、1,3−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリウムクロライド、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリニウムクロライド、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリジニウムクロライド、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾリジニウムクロライド、1,3−ビス(1−アダマンチル)−ベンズイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジ−t−ブチルベンズイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1,3−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリジニウムテトラフルオロボレート、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾリジニウムテトラフルオロボレート、1,3−ビス(1−アダマンチル)−ベンズイミダゾリウムブロマイド、1,3−ジ−t−ブチルベンズイミダゾリウムブロマイド、1,3−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリウムブロマイド、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾリウムブロマイド、1,3−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリニウムブロマイド、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾリニウムブロマイド、1,3−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリジニウムブロマイド、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾリジニウムブロマイド、
等が挙げられる。
【0046】
イミダゾリウム塩とアルコキシドとを反応させることで、含窒素複素環カルベンを与える。含窒素複素環カルベンとしては、例えば、1,3−ビス(1−アダマンチル)−ベンズイミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ−t−ブチルベンズイミダゾリン−2−イリデン、1,3−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾリン−2−イリデン、1,3−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾリジン−2−イリデン等を挙げることができ、好ましくは、例えば、1,3−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾリン−2−イリデン等が挙げられる。
【0047】
イミダゾリウム塩の使用量としてはパラジウム化合物1モルに対して0.2〜4モルの範囲が好ましく、0.5〜1.5モルの範囲がより好ましい。
【0048】
前記で述べたように本発明の製造方法ではイミダゾリウム塩はアルコキシドで含窒素複素環カルベンを与えるが、イミダゾリウム塩の当量未満であれば、無機塩基等のアルコキシドとは異なる強塩基を併用して、含窒素複素環カルベンを与えてもよい。
無機塩基としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、カルボン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩等を挙げることができる。
好ましくは、強塩基としては前記アルコキシドのみを用いる。
【0049】
<重合工程>
重合工程を具体的に説明すると、例えば、予め調製したパラジウム化合物に、アルコキシド及びイミダゾリウム塩を混合して含窒素複素環カルベンとパラジウムとの錯体を得、続いて芳香族モノマー(A)及び芳香族モノマー(B)を混合して重合する工程、例えば、非プロトン性有機溶媒の入った容器に、調製されたパラジウム化合物及びアルコキシドを混合し、別途、アルコキシド及びイミダゾリウム塩から調製された含窒素複素環カルベン、芳香族モノマー(A)及び芳香族モノマー(B)を徐々に混合して重合する工程
等を挙げることができる。
【0050】
重合工程における温度は、例えば、0〜180℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは30〜100℃の範囲等が挙げられる。
重合工程における重合時間としては、例えば、1〜96時間の範囲等を挙げることができ、好ましくは3〜48時間の範囲等が挙げられる。
【0051】
重合工程によって得られた芳香族ポリマーを含む反応混合物は、例えば、貧溶媒を加えるなどして芳香族ポリマーを析出させ、ろ別などの固液分離により芳香族ポリマーを取り出してもよい。
該反応混合物は、金属等の不純物を取り除くために、塩酸などの酸性溶液で洗浄した後、上記の方法で取り出してもよい。
また、得られた芳香族ポリマーは、クロマトグラフィによる分別等の精製処理をしてもよい。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明を実施例で更に詳細に説明する。
得られた芳香族ポリマーの重合度は、ゲル浸透クロマトグラフィ(以下、GPCと記すことがある。)を行い、その分析結果からポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を算出することで評価した。なお、GPCの分析条件は以下のとおりである。
[分析条件]
GPC測定装置:CTO−10A(株式会社島津製作所製)
カラム:TSK−GEL GMHHR−M(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相:THF
流量:0.5mL/分
検出:UV検出(波長300nm)
【0053】
<実施例1>
冷却装置が取り付けられた反応装置に、酢酸パラジウム(10.2mg、0.022mmol)、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレート(19.3mg、0.045mmol、Aldrich社)及びソジウム t-ブトキサイド(131mg、1.37mmol)を該反応装置に仕込み、さらに該反応装置に、9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジ(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン)(293mg、0.46mmol)及び2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(250mg、0.46mmol)を溶解させたトルエン(4ml)溶液、並びに、テトラヒドロフラン(以下、THFと記すことがある)1mlを加えた。該反応装置を窒素雰囲気下とし、70℃に昇温した後、同温度でさらに7時間攪拌させ、得られた反応混合物を室温(約20℃)まで冷却した。該反応混合物をTHFで希釈した。希釈溶液に含まれる芳香族ポリマーの重合度を測定したところ、ポリスチレン換算によるMwは507,000であり、Mnは192,000であった。
【0054】
<実施例2>
実施例1の酢酸パラジウムの代わりにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(20.9mg、0.022mmol)を、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレートの代わりに1,3-ジ(t-ブチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレート(9.9mg、0.045mmol)を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られた芳香族ポリマーの重合度を測定したところ、ポリスチレン換算によるMwは238,000であり、Mnは89,000であった。
【0055】
<実施例3>
冷却装置が取り付けられた反応装置に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(41.7mg、0.046mmol)、1,3-ジ(t-ブチル)ベンズイミダゾリウムテトラフルオロボレート(20.7mg、0.091mmol、Aldrich社)及びソジウム t-ブトキサイド(131mg、1.37mmol)を該反応装置に仕込み、さらに該反応装置に、9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジエチルボレート(484mg、0.91mmol)及び2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(500mg、0.91mmol)を溶解させたトルエン(4ml)溶液、並びに、THF(1ml)を加えた。該反応装置を窒素雰囲気下とし、70℃に昇温した後、同温度でさらに7時間攪拌させ、得られた反応混合物を室温まで冷却した。該反応混合物をTHFで希釈した。希釈溶液に含まれる芳香族ポリマーの重合度を測定したところ、ポリスチレン換算によるMwは48,000であり、Mnは20,000であった。
【0056】
<実施例4>
実施例1の酢酸パラジウムの代わりに塩化パラジウム(8.1mg、0.046mmol)を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られた芳香族ポリマーの重合度を測定したところ、ポリスチレン換算によるMwは11,000であり、Mnは7,000であった。
【0057】
<実施例5>
実施例1の酢酸パラジウムの代わりにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(20.9mg、0.022mmol)を、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレンの代わりに2,5−ジブロモ−3−オクチルチオフェン(161mg、0.46mmol)を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られた芳香族ポリマーの重合度を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)は59,000であり、数平均分子量(Mn)は36,000であった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の製造方法によれば、簡便に芳香族ポリマーを製造することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属アルコキシド及びアルカリ土類金属アルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコキシド、パラジウム化合物、イミダゾリウム塩、並びに、非プロトン性有機溶媒の存在下、式(A)
−Ar−X (A)
(式中、Xは式(1)〜(5)

で表わされる基を表わし、Arは、炭素数6〜36の2価の芳香族炭化水素基を表わす。該芳香族炭化水素基に含まれる炭素原子は、ヘテロ原子又はカルボニル基に置き換えられていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、置換基で置換されていてもよい。)
で表わされる芳香族モノマーと、式(B)
−Ar−X (B)
(式中、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わし、Arは、炭素数6〜36の2価の芳香族炭化水素基を表わす。該芳香族炭化水素基に含まれる炭素原子は、ヘテロ原子又はカルボニル基に置き換えられていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、シリル基、アシル基、イミン残基、酸イミド基、カルボキシル基、ニトリル基又はニトロ基で置換されていてもよい。)
で表わされる芳香族モノマーとを重合する工程を含むことを特徴とする芳香族ポリマーの製造方法。
【請求項2】
非プロトン性有機溶媒が、エーテル溶媒、芳香族炭化水素溶媒及び脂肪族炭化水素溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒であることを特徴とする請求項1記載の芳香族ポリマーの製造方法。
【請求項3】
パラジウム化合物が、パラジウム(0)錯体またはパラジウム(II)錯体あることを特徴とする請求項1又は2記載の芳香族ポリマーの製造方法。
【請求項4】
イミダゾリウム塩が、式(C)

(式中、Zは、式(6)〜(8)で表わされる2価の基を表わす。R及びRはそれぞれ独立に、炭素数3〜9の分枝状アルキル基を表わす。Xは、ハロゲン化物イオン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、硫酸水素イオン、硫酸イオン、アルキル硫酸イオン、アリール硫酸イオン、炭酸水素イオン、又は、炭酸イオンを表わす。)

で表わされる塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の芳香族ポリマーの製造方法。

【公開番号】特開2011−99069(P2011−99069A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255929(P2009−255929)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】