説明

芳香族化合物及び開始剤を含むカラーリング組成物

材料を着色するための天然のカラーリング組成物、ならびにその使用方法。該カラーリング組成物は、塩また酵素のような活性剤の存在下で酸化的にオリゴマー形成又は重合して、材料を染色する着色化合物を形成するL−DOPAのような天然の前駆体芳香環分子を含む。天然のカラーリング組成物はまた、緩衝剤、着色剤、安定剤および/または増粘剤も含めることができ、および配合されて活性カラーリング組成物を形成する1または2種の不活性溶液を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2009年11月13日に出願された“染毛のためのチロシナーゼ酵素的酸化の使用”と称する米国仮特許出願第61/261,287号、および2009年11月13日に出願された“染毛のためのL−DOPAの酸化の使用”と称する米国仮特許出願第61/261,290号について優先権を主張し、それぞれの内容はその全体が参照により本明細書に利用されおよび組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、カラーリング組成物およびその使用方法に関し、ならびにより具体的には、L−DOPAと開始剤を含有するカラーリング組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
何千年もの間、材料は染色されおよび着色されている。天然物質は歴史的に大方の材料を着色するために使用されてきたが、これらの物質は材料の多くの種類を永久的に染めることが場合できないことが多い。したがって、他の多くの有益な用途の中で天然および人工繊維を含む材料を持続的に着色する合成染料処方に対する大規模な需要がある。永久的な染料処方の最大の市場の一つは、染毛剤市場である。
【0004】
ほとんどの永久染毛剤製品は、顕色剤およびアルカリ化剤が含まれている。顕色剤は通常、水またはクリームローション中での過酸化水素などの酸化剤であり、アルカリ化剤は、ほとんどの場合、アンモニアまたはアンモニア置換体である。これらの化学物質は毛髪を膨潤させ、そしてそのため色素が天然メラニンに到達し及び置き換わるのに十分な深さで髪のキューティクルに浸透できるようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いくつかの研究ではアンモニア、鉛、および/またはコールタールを含む合成染毛剤に見られる化学物質は、毒性であり、このような脱毛、灼熱、発赤、皮膚のかゆみ、腫れまたは呼吸困難などの危険な副作用を持ちうることが示唆している。結果として、多くの人々がカラーリング組成物に見られる化学物質への曝露を避けるために、毛髪染料の使用を差し控えることにしている。自然界に存在する化合物を用いるいくつかの天然処方があるが、それらは一様でなくおよびほとんどの場合一時的になりやすい。
【0006】
その結果、毛髪等の材料を永久的に着色するため、合成化学物質ではなく天然化学物質を使用するカラーリング組成物に対する継続的なニーズがある。さらに、永久的または半永久的に材料を着色するための効率的かつ環境に優しい処方および方法のための継続的な需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、酸化によって着色された共役ポリマーを形成する天然の前駆体芳香環分子を提供することが本発明の主な目的と利点である。
【0008】
有機カラーリング組成物(organic coloring composition)を提供することが本発明の別の目的と利点である。
【0009】
L−DOPAおよび開始剤を含む有機カラーリング組成物を提供することが本発明のさらに別の目的と利点である。
【0010】
配合されたとき、有機カラーリング組成物を形成する、二種以上の溶液または懸濁液を含む組成物を提供することが本発明のさらなる目的と利点である。
【0011】
有機カラーリング組成物を使用して材料を着色するための方法を提供することが本発明のさらに別の目的と利点である。
【0012】
本発明の他の目的および利点は、以下において一部分は明らかとなり、一部分が表示される。
【0013】
上記目的および利点に従い、本発明は、(i)芳香族化合物および;(ii)開始剤を含む以下のカラーリング組成物であって;該芳香族化合物は、該開始剤の存在下で酸化されカラーポリマーを形成する、カラーリング組成物を提供する。一実施形態では、芳香族化合物は、L−DOPAであり、開始剤は、塩または蛋白質である。塩はヘキサシアノ鉄酸カリウム、炭酸水素カリウム、およびそれらの組み合わせなどを含むが、これに限定されない当該分野で公知のいずれかの塩であってよい。タンパク質は、西洋ワサビペルオキシダーゼを含むが、これに限定されない酵素であり得る。
【0014】
本発明の第二の態様は、(i)芳香族化合物および(ii)開始剤を含む、以下のカラーリング組成物であって、該芳香族化合物は、該開始剤の存在下で酸化されてカラーポリマーを形成する、カラーリング組成物を提供する。この実施形態では、芳香族化合物は第1の溶液の一部であり、開始剤は、第2の溶液の一部である。これらの溶液は、使用時、使用者によってそのときに配合することができる。
【0015】
本発明の第三の態様は、(i)芳香族化合物、(ii)着色剤および(iii)開始剤を含むカラーリング組成物であって、該芳香族化合物は、該開始剤の存在下で酸化され、カラーポリマー形成するカラーリング組成物を提供する。着色剤は、好ましくは、有機化合物であり、多くの他の天然および/または有機化合物のうち、そのクルクミン、ローソン、エモジン、ジュガロン、プルンバギン、L−システイン、メチオニン、シスチン、グルタミン、およびそれらの組み合わせを含めることができる。
【0016】
本発明の第四の態様は、(i)芳香族化合物;(ii)開始剤(該芳香族化合物は、該開始剤の存在下で酸化されてカラーポリマーを形成する);および(iii)1種以上の以下の添加剤:(a)緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液など);(b)増粘剤および/または(c)安定剤、を含むカラーリング組成物を提供する。
【0017】
本発明の第五の態様は、材料を染色する方法を提供する。前記方法は、材料を、(i)芳香族化合物および(ii)開始剤を含むカラーリング組成物(該芳香族化合物は、該開始剤の存在下で酸化されカラーポリマーを形成する。)を含むカラーリング組成物と、接触させる工程を含む。この方法はさらに、次の工程:(i)カラーリング組成物を材料と1〜60分間接触したままにすること、(ii)材料を第1の前処理液で前処理すること、(iii)前記材料をすすぐこと、(iv)材料を乾燥させることおよび/または(v)使用時に、芳香族化合物および開始剤を配合すること、の1以上を含むことができる。
【0018】
本発明は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むことにより、より十分に理解されおよび評価されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(“L−DOPA”)の分子構造である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る、L−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料を使用する、紫外−可視分光法(“UV−Vis”)の結果のグラフである。
【図3】図3Aおよび3Bは、本発明の一実施形態に係る、L−DOPAの処理後の着色されたまたは対照毛髪試料の走査型電子顕微鏡(“SEM”)画像である。
【図4】図4A、4Bおよび4Cは、本発明の一実施形態に係る、L−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料を使用する、UV−Visの結果のグラフである。
【図5】図5A、5Bおよび5Cは、本発明の一実施形態に係る、L−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料の走査型電子顕微鏡(“SEM”)画像である。
【図6】図6Aおよび6Bは、本発明の一実施形態に係る、L−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料を使用する、UV−Visの結果のグラフである。
【図7】図7A、7B、7Cおよび7Dは、本発明の一実施形態に係る、L−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料の走査型電子顕微鏡(“SEM”)画像である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係るL−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料を使用する、UV−Visの結果のグラフである。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係るL−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料の走査型電子顕微鏡(“SEM”)画像である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係るL−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料を使用する、UV−Visの結果のグラフである。
【図11】図11は、本発明の一実施形態に係るL−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料を使用する、UV−Visの結果のグラフである。
【図12】図12は、本発明の一実施形態に係るL−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料を使用する、UV−Visの結果のグラフである。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に係るL−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料を使用する、UV−Visの結果のグラフである。
【図14】図14は、本発明の一実施形態に係るL−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料を使用する、UV−Visの結果のグラフである。
【図15】図15は、本発明の一実施形態に係るL−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料を使用する、UV−Visの結果のグラフである。
【図16】図16は、本発明の一実施形態に係るL−DOPAの処理後の着色されたまたは対照の毛髪試料を使用する、UV−Visの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に記載されるものは、材料を着色するための新規の有機カラーリング組成物およびその使用方法である。カラーリング組成物は、酸化により共役されたカラーポリマーを形成する天然の前駆体芳香環分子を含む。一実施形態によれば、天然の前駆体芳香環分子はまた、INN名“レボドパ(levodopa)”またはIUPAC名(S)−2−アミノ−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン酸としても知られ、図1に示される分子構造のアミノ酸L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(“L−DOPA”)である。一実施形態では、L−DOPAを含む種子からの抽出物がカラーリング組成物に使用されている。
【0021】
L−DOPA分子は活性剤の存在下で酸化的にオリゴマー形成又は重合され、材料を染色する着色化合物を形成する。活性剤は、芳香環の前駆体分子の酸化又は酸化を誘発する任意の化合物、分子、または化学物質とすることができ、化学量論的または半化学量論的量で存在することができる。一実施形態では、活性剤は、ヘキサシアノ鉄酸カリウム(“PFH”)、炭酸水素カリウムを含む、塩または酵素、およびこれらの組み合わせである。カラーリング組成物はまた、リン酸緩衝液などの緩衝剤を含めることができる。
【0022】
また、本明細書に記載するのは新規のカラーリング組成物の使用方法または適用方法である。適用方法の一実施形態は、2種の水溶液または懸濁液、着色剤前駆体を含む1種の溶液または懸濁液、および活性剤を含む他の溶液または懸濁液を配合する工程を含む。これらの試薬が配合される時、材料を着色するのに適したカラーリング組成物を形成する。
【0023】
以下で説明する手順および例は、本発明の1つ以上の実施形態による新規なカラーリング組成物の製造と使用のために用いることができる。これらの化合物を製造するための出発材料および試薬は商業的供給業者、例えばアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)、バッケム(Bachem)(トーランス、カリフォルニア州)、シグマ(Sigma)(セントルイス、ミズーリ州)、またはワージントン・バイオケム・コーポレイション(Worthington Biochemical Corp.)(レイクウッド、ニュー ジャージー州)のいずれかから入手できるか、あるいは当業者に公知の方法によって、例えばフィーザー アンド フィーザーズ リエージェンツ フォー オーガニック シンセサイズ(Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis)、1−17巻、ジョン ワイリー アンド サンズ(John Wiley and Sons)、ニュー ヨーク、ニュー ヨーク州、1991年; ロッズ ケミストリー オブ カーボン コンパウンズ(Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds)、1−5巻および補遺、エルゼビア サイエンス パブリッシャーズ(Elsevier Science Publishers)、1989年; 有機反応(Organic Reactions)、1−40巻、ジョン ワイリー アンド サンズ、ニュー ヨーク、ニュー ヨーク州、1991年; マーチ J.(March J.): 先端有機化学(Advanced Organic Chemistry)、第4版、ジョン ワイリー アンド サンズ、ニュー ヨーク、ニュー ヨーク州; およびラロック(Larock): 総合的有機変換(Comprehensive Organic Transformations)、VCHパブリッシャーズ、ニュー ヨーク、1989年等の参照の下に記載された方法に従って調製される。本願明細書全体にわたり引用された全文書の開示全体は参照により本明細書に取り込まれる。
【0024】
多数の例示的な実施形態、態様および変動が本明細書で提供されているが、当業者は、特定の変更、置換、追加およびそれらの組み合わせならびに、該実施形態、態様および変動の特定のサブコンビネーションを認識するであろう。請求の範囲は、このような変更、置換、追加および組み合わせの全てを含めるように解釈され、ならびに実施形態、態様および変動の特定のサブコンビネーションはその範囲内にあることが意図されている。
【実施例】
【0025】
実施例1−ヘキサシアノ鉄酸カリウムおよび炭酸水素カリウム開始剤溶液を使用するカラーリング組成物
【0026】
これらの実験では、L−DOPA(シグマアルドリッチから購入)0.1gを、毛髪試料の入っている時計皿に添加した。これに水1mLを添加して加え、そして混合物を混ぜ合わせて白色懸濁液を形成させた。開始剤溶液(水10mL中ヘキサシアノ鉄酸カリウム4.4gおよび炭酸水素カリウム0.8g)1mLを添加し、そして試料を可変の時間、室温で放置した。次いで、試料を溶液から取り出し、風乾し、そしてその後に水ですすいだ。
【0027】
L−DOPAは、毛幹の存在下で酸化して色素を形成した。図3A(白髪対照)と3B(L−DOPA処理“027−93−7B”)に示すように、この黒色色素は毛幹の周りの被膜で重合され、構造安定性、暗色および程よい髪の感触を提供していた。図2に示すものは、表1に記載した毛髪試料処理後、着色されたまたは対照の毛髪試料の紫外−可視分光法(“UV−Vis”)のグラフである。
【0028】
表1−可変の毛髪処理方法
【表1】

【0029】
実施例2−ヘキサシアノ鉄酸カリウムおよび炭酸水素カリウム開始剤溶液およびL−DOPAの可変濃度を有するカラーリング組成物
【0030】
最適なカラーリング組成物のための前駆体分子の最適な濃度を決定することが必要であった。これらの実験では、L−DOPAの特定量を、毛髪の試料の入った時計皿に添加した。これに水1mLを添加して加え、そして混合物を混ぜ合せて白色懸濁液を形成させた。開始剤溶液(水10mL中ヘキサシアノ鉄酸カリウム4.4g及び炭酸水素カリウム0.8g)1mLを添加し、そして試料は、可変の時間、室温に放置した。次いで、試料を溶液から取り出し、風乾し、その後に水ですすいだ。表2はこれらの実験の2つの変数:(i)染色時間および、(ii)L−DOPAの濃度について記載する
【0031】
表2−可変の毛髪処理方法
【表2】

【0032】
種々の濃度で酸化されたL−DOPAは、L−DOPA濃度が増加するほど、より少ない時間における色素の暗度が増加することを示した。黒色色素は毛幹の周りの被膜で重合され、構造安定性、暗色および程よい髪の感触を提供していた。図4A−4Cに示すのは、表2に記載された毛髪試料処理後に着色されたまたは対照の毛髪試料のUV−Visの結果のグラフを示す。図5A−5Cに示すのは、代表的な毛髪試料の走査型電子顕微鏡(“SEM”)の画像である。
【0033】
実施例3−酵素開始剤および可変の染色時間を使用するカラーリング組成物
【0034】
前駆体分子の重合は酵素によって開始することができると考えられる。これらの実験では、チロシナーゼと西洋ワサビペルオキシダーゼ(“HRP”)を含む、いくつかの異なる酵素が使用された。しかし、当業者は、所望の条件の下、カラーリング組成物における開始剤として機能することができる、他の多くの酵素があることを認識するであろう。
【0035】
チロシナーゼを、カラーリング組成物のためにイニシエータとして試験した。チロシナーゼは植物やヒトの両方見出される銅含有酵素であり、他の機能に加えて、酸化によりチロシンからメラニンの生成を触媒する。これらの実験では、L−DOPAの0.05gを毛髪試料の入った時計皿に追加した。これに水の1mLを添加して加え、そして混合物を混ぜ合せて白色懸濁液を形成させた。開始剤溶液(0.004gUSBチロシナーゼおよび10mLの水性リン酸緩衝液(pH7))の1mLを添加し、そして試料を可変の時間、室温で放置した。次いで、試料を溶液から取り出し、風乾し、そしてその後に水ですすいだ。
【0036】
HRPもまた、カラーリング組成物のための開始剤として試験した。HRPは、チロシナーゼのように、その基質の酸化を触媒する酵素である。これらの実験では、L−DOPAの0.05gが毛髪試料の入った時計皿に追加された。これに水の1mLを添加して加え、そして混合物を混ぜ合せて白色懸濁液を形成させた。開始剤溶液(0.008g西洋ワサビペルオキシダーゼおよび10mLの水性リン酸緩衝液)の1mLを添加し、そして試料を可変の時間、室温で放置した。次いで、試料を溶液から取り出し、風乾し、そしてその後水ですすいだ。
【0037】
表3は、チロシナーゼおよびHRP実験の両方の染色時間の長さを示している。
【0038】
表3−可変の毛髪処理方法
【表3】

【0039】
L−DOPAは、HRPまたはチロシナーゼのいずれかの存在下である程度酸化した。しかし、酸化は、24時間までのチロシナーゼを使用するのが特に効果的であった。図6Aおよび図6Bは、表3に記載された毛髪試料処理後に、着色されたまたは対照の毛髪試料のUV−Visの結果のグラフである。図7A−7Dに示すのは代表的な毛髪試料のSEM画像である。
【0040】
実施例4−酵素開始剤および染色の複数のラウンドを使用するカラーリング組成物
【0041】
これらの実験では、L−DOPAの0.05gを、毛髪試料の入った時計皿に追加した。これに水1mLを添加して加え、そして混合物を混ぜ合せて白色懸濁液を形成させた。開始剤溶液(0.004gUSBチロシナーゼおよび10mLの水性リン酸緩衝液(pH7))1mLを添加し、そして試料は、可変の時間、室温で放置した。次いで、試料を溶液から取り出し、風乾し、その後に水ですすいだ。表4に示すように、試料のいくつかは次いで染色の複数の1以上の追加のラウンドに供した。
【0042】
表4−試料マトリックス
【表4】

【0043】
酸化されたL−DOPAのコーティングは、3回の試験にわたって繰り返された。着色の強度は染色数の増加とともに増加した。着色の増加は、チロシナーゼ開始剤を使用するのが特に効果的であった。図8は、表4に記載された毛髪試料処理後に着色されたまたは対照の毛髪試料のUV−Visの結果を示すグラフである。図9に示すのは、代表的な毛髪試料のSEM画像である。
【0044】
実施例5−異なる酵素活性をもつ酵素開始剤を使用したカラーリング組成物
【0045】
様々な活性をもつ酵素を使用すると、カラーリング組成物のまたはその使用の効果を変化させるかもしれないと考えた。これらの実験では、L−DOPAの0.05gを、毛髪試料の入った時計皿に添加した。これに水の1mLを添加して加え、そして混合物を混ぜ合せて白色懸濁液を形成させた。開始剤溶液(0.004g酵素および10mLの水性リン酸緩衝液(pH7))の1mLを添加し、そして試料を可変の時間で、室温で放置した。次いで、試料を溶液から取り出し、風乾し、そしてその後水ですすいだ。実験の変量を、表5に示す。様々な活性をもつ酵素は以下に示すところより入手した:(i)≧ 500単位/mgのワージントンバイオケミカルコーポレーションからのチロシナーゼおよび、(ii)1590単位/mgのUSBコーポレーション(クリーブランド、オハイオ州)からのチロシナーゼ。
【0046】
表5−試料マトリックス
【表5】

【0047】
ワージントンチロシナーゼおよびUSBチロシナーゼの両方について、チロシナーゼの0.004gをリン酸緩衝液10mLに懸濁した。図10に示すように、L−DOPAは、より高い活性レベルをもつチロシナーゼ(すなわち、これらの実験ではUSBチロシナーゼ)を用いると、より短期間でより強い色素色に酸化される。
【0048】
実施例6−異なる酵素活性を有する酵素開始剤を使用する、温度上昇におけるカラーリング組成物
【0049】
次にカラーリング組成物は、高温でより効果的かもしれないという仮説を立てた。これらの実験では、L−DOPA0.05gは、毛髪試料の入った時計皿に添加された。これに水の1mLを添加して加え、そして混合物を混ぜ合せて白色懸濁液を形成させた。開始剤溶液(0.004g酵素および10mLの水性リン酸緩衝液(pH7))の1mLを添加し、そして試料を割り当てられた時間、35℃または45℃で放置した。次いで、試料を溶液から取り出し、風乾し、そしてその後に水ですすいだ。実験の変数は表6に記載する。
【0050】
表6−試料マトリックス
【表6】

【0051】
ワージントンチロシナーゼおよびUSBチロシナーゼの両方について、チロシナーゼの0.004gをリン酸緩衝液10mLに懸濁した。図11に示すように、チロシナーゼ触媒によるL−DOPAの酸化の速度と効力の両方が増加した。
【0052】
実施例7−異なる酵素活性および水の緩衝液を用いる酵素開始剤を使用する、温度上昇でのカラーリング組成物
【0053】
緩衝液を変化させることがカラーリング組成物の活性を変化させ、このため染色手順の結果を変えるかもしれないという仮説を次に立てた。これらの実験では、L−DOPA0.05gは、毛髪試料の入った時計皿に添加された。これに水の1mLを添加して加え、そして混合物を混ぜ合せて白色懸濁液を形成させた。開始剤溶液(0.004g酵素および10mLの水)の1mLを添加し、試料を割り当てられた時間、35℃または45℃で放置した。次いで、試料を溶液から取り出し、風乾し、そしてその後に水ですすいだ。実験の変数は表7に記載する。
【0054】
表7−試料マトリックス
【表7】

【0055】
ワージントンチロシナーゼおよびUSBチロシナーゼの両方について、チロシナーゼの0.004gをリン酸緩衝液10mLに懸濁した。図12に示すように、リン酸緩衝液の代わりに、水溶液の使用によって、室温と温度上昇の両方で、チロシナーゼ触媒によるL−DOPAの酸化速度と効力は劇的に増加した。
【0056】
実施例8−酵素濃度を調整することによる色調(shade)範囲の最適化
【0057】
酵素の濃度低下の影響を調べるために、以下の実験は、1/10の酵素の濃度で、表8に示すような試料を用いて行われた。
【0058】
表8−試料マトリックス
【表8】

【0059】
図13に示すように、酵素濃度の低下は、チロシナーゼ触媒によるL−DOPAの酸化速度と効力を低下させた。
【0060】
カラーリング組成物は、さらに着色剤を含めることができる。好ましい実施形態では、着色剤は、有機化合物である。着色剤として使用することができる有機化合物の例としては、多くの場合、ルバーブやクロウメモドキから分離されたエモジン、通常ウコンから分離されるクルクミン、通常ヘナの植物から単離されるローソンが含まれる。他の有機色素はプルンバギン、ジュガロン、アミノ酸の組み合わせが含まれている。当業者であれば、染色剤として利用できるものとして知られている何百もの有機化合物があることを認識するであろう。以下は、着色を向上させるための1種以上の着色剤を含むカラーリング組成物の代表的な処方である。
【0061】
実施例9−着色剤としてのエモジンの使用
【0062】
これらの実験では、表9に示されている成分が使用される。エモジン(6−メチル−1,3,8−トリヒドロキシアントラキノン)をL−DOPAと配合しおよび十分な均質性を確保するためにすり砕いた。炭酸水素ナトリウムを水に溶解し、そしてL−DOPA/エモジン混合物を炭酸水素ナトリウム溶液と配合した。これは次に材料を着色するために使用されるカラーリング組成物を形成した。一連の実験では、材料は55℃で24時間までの加熱下で、約1時間がほとんどの染色の目的に最適であることを含めて、組成物に曝露された。材料は、風乾しおよび室温の水ですすいだ。
【0063】
表9−エモジンを含有するカラーリング組成物
【表9】

【0064】
実施例10−着色剤としてのクルクミンおよびローソンの使用
【0065】
これらの実験では、表10に示されている成分が使用された。クルクミン((1E,6E)−1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン)およびローソン(2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン)をL−DOPAと配合しおよび十分な均質性を確保するようすり砕いた。炭酸水素ナトリウムを水に溶解し、そしてL−DOPA/クルクミン/ローソン混合物を炭酸水素ナトリウム溶液と配合した。これは次いで材料を着色するために使用されるカラーリング組成物を形成した。一連の実験では、材料は、55℃で24時間までの加熱下で、約1時間はほとんどの染色のために最適であることを含めて、組成物に曝露された。材料は、風乾しおよび室温の水ですすいだ。
【0066】
表10−クルクミンとローソンを含有するカラーリング組成物
【表10】

【0067】
実施例11−着色剤としてのエモジン、クルクミンおよびローソンの使用
【0068】
これらの実験では、表11に示されている成分が使用された。クルクミン、ローソンおよびエモジンは、L−DOPAと配合しおよび十分な均質性を確保するためにすり砕いた。炭酸水素ナトリウムを水に溶解し、そしてL−DOPA/クルクミン/ローソン/エモジン混合物を炭酸水素ナトリウム溶液と配合した。これは材料を着色するために使用されるカラーリング組成物を形成した。一連の実験では、材料は55℃で24時間までの加熱下で、約1時間はほとんどの染色のために最適であることを含めて、組成物に曝露された。材料は、風乾しおよび室温の水ですすいだ。
【0069】
表11−エモジン、クルクミンおよびローソンを含有するカラーリング組成物
【表11】

【0070】
実施例12−L−DOPAに対するクルクミン、ローソン、ジュガロン、プルンバギンおよびエモジンの比率
【0071】
L−DOPAに対する有機色素(例えば、クルクミン、ローソン、ジュガロン、プルンバギン、またはエモジンなど)の比率を変化させた影響も分析した。これらの実験では、材料は炭酸水素ナトリウムで30分間予浸され、続いてチロシナーゼとL−DOPA/色素ミックスで60分〜24時間反応させた。実験の1セットにおけるL−DOPAに対する有機色素の比率は表12に示される。
【0072】
表12−L−DOPAの有機色素に対する比率
【表12】

【0073】
様々な比率は、色の色調を変化させた。
【0074】
実施例13−アミノ酸ブレンドを使用する色調範囲の最適化
【0075】
さらにカラーリング組成物の色調の範囲を最適化するために、アミノ酸のブレンドを組成物に添加し、そして材料を着色する能力を試験した。これらの実験では、材料はチロシナーゼおよびL−DOPA/アミノ酸ミックスに24時間まで反応に曝露された。実験の1セットにおけるL−DOPAに対するアミノ酸の比率は表13に示されている。
【0076】
表13−L−DOPAのアミノ酸に対する比率
【表13】

【0077】
様々な比率は、色の色調を変化させた。
【0078】
実施例14−カラーリング組成物のpHの低下
【0079】
材料を着色する着色組成物の能力におけるpHの効果を測定するために、一連の実験は、溶液の1以上の、pHが変更されて行われた。実験の一つのセットでは、通常、溶液に使用される水を、0.3125%クエン酸溶液に置き換えた。クエン酸は、これらの実験で髪の感触は改善したが、低下させたpHは色の暗度低下をまねいた。
【0080】
実施例15−L−DOPAとチロシナーゼの有機源
【0081】
完全な有機カラーリング組成物に対する継続的な必要性があるので、L−DOPAとチロシナーゼの有機源を調査した。例えば、チロシナーゼは、ジャガイモと食用真菌類(ホワイトボタンマッシュルームなど)、アボカド、トマト、その他多くのものを含む様々な天然物から分離することができる。以下の実験では、粗チロシナーゼ抽出物をホワイトボタンマッシュルームから得て、そして表14に示すように、L−DOPAを酸化する能力についていくつかの異なる温度で試験した。
【0082】
表14−天然チロシナーゼの試料マトリックス
【表14】

【0083】
有機チロシナーゼは、商業的供給源から得られたチロシナーゼと同様にカラーリング組成物において機能したようであった。例えば、図14を参照。
【0084】
L−DOPAは、ハッショウマメから得ることを含む、天然の供給源から得ることができる。以下の実験では、ハッショウマメから精製したL−DOPAを商業的供給源(シグマ−アルドリッチ)から購入し、表15に示すように、それがカラーリング組成物中でどのように働くかを調べた。室温実験のために、天然のL−DOPAと天然チロシナーゼ(ホワイトボタンマッシュルーム抽出物からの)の両方が使用された。
【0085】
表15−天然L−DOPAの試料マトリックス
【表15】

【0086】
有機L−DOPAはカラーリング組成物において合成L−DOPAと同様に機能していたようであった。例えば、図15を参照。
【0087】
実施例16−材料の前処理
【0088】
材料を着色するカラーリング組成物の能力における前処理の効果を調べるために、材料が1つ以上の溶液で前処理された、一連の実験が行われた。たとえば、実験の一つセットでは、材料は、以下の:(i)10%プルラン溶液;(ii)10%プルラン/0.625%クエン酸溶液;(ii)20%N−アセチル−システイン溶液;または(iv)20%N−アセチル−システイン/20%尿素溶液で、前処理がされた。
【0089】
実施例17−安定性を向上させるブレンドの試験
【0090】
アミノ酸はまた、材料がカラーリング組成物にさらされた後、材料の染色および/または着色を安定化する能力について試験した。表16は、実験の1セットについてアミノ酸に対するL−DOPAの比率を示している。
【0091】
表16−ブレンドの試料マトリックス
【表16】

【0092】
これらの実験の結果を図16に示す。
【0093】
実施例18−増粘剤
【0094】
カラーリング組成物の一実施形態によれば、組成物は、増粘剤を含むことができる。増粘剤は、1種以上の溶液に濃厚な粘稠性を持たせることができ、そのため染色するための材料との相互作用の増加をもたらす。一般に藻類から抽出され、食品業界での増粘剤として使用されるアルギン酸ナトリウムを含む、当技術分野で公知の多数の増粘剤がある。他の増粘剤はCaCO、ホウ酸カリウム、グアーガム、セルロースガム、アルギン酸塩、キサンタンガム、スクレロチウムガム、ワックス、油、その他の天然および植物由来のゴムを含む。好ましい実施形態では、増粘剤は、天然および/または有機化合物である。
【0095】
カラーリング組成物の他の実施形態によれば、組成物は、使用する直前または使用中に、混合され、配合されまたはその他の連絡状態におかれる、二つ以上の不活性になっているか、そうでなければ反応しない(すなわち、実質的に別の成分を添加せずに材料を着色することができない)溶液を含むことができる。たとえば、溶液番号1は、溶液に懸濁された前駆体分子を含むことができ、他方、溶液番号2は開始剤溶液(例えば、塩、酵素、および/または緩衝剤など)を含む。別の実施形態では、前駆体分子は、粉末、ペースト、ゲル、または濃縮液であり、これに水または他の液体(例えば緩衝剤)の特定量を使用者により添加する必要がある。好ましい実施態様によれば、二種以上の溶液が、使用する直前または使用中のいずれかで、使用者によって一緒に混ぜ合わされる。
【0096】
本明細書に開示されるカラーリング組成物は、材料を永久または半永久的に着色するのに使用することができる。材料を着色するため、カラーリング組成物は、材料に適用され、所定の時間の材料に浸透させ、室温または、必要に応じて室温より高い温度にさらされ、およびその後材料から洗い流される。材料は乾燥させることができるか、所定の方法に従って乾燥させることができる。カラーリング組成物は、プレミックスしなければならない2つの溶液からなる場合は、溶液は配合されて、材料に適用される。適用の方法の一実施形態は、2つの水溶液または懸濁液、一方の溶液または懸濁液は色の前駆体を含み、他方の溶液または懸濁液は活性剤を含む、を配合する工程を含む。配合された時、これらの試薬は、材料を着色するのに適したカラーリング組成物を形成する。
【0097】
本発明を好ましい実施態様に関して説明してきたが、修正、変更、および追加が、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明になされ得ることを理解するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族化合物;および
開始剤を含むカラーリング組成物であって、
前記芳香族化合物は前記開始剤の存在下で酸化されてカラーポリマーを形成するカラーリング組成物。
【請求項2】
前記芳香族化合物が第1の溶液であり前記開始剤が第2の溶液である請求項1に記載のカラーリング組成物。
【請求項3】
前記第1および第2の溶液は使用者によって配合される請求項2に記載のカラーリング組成物
【請求項4】
前記芳香族化合物はL−DOPAである請求項1に記載のカラーリング組成物。
【請求項5】
前記開始剤が塩である請求項1に記載のカラーリング組成物。
【請求項6】
前記塩が、ヘキサシアノ鉄酸カリウム、炭酸水素カリウム、およびそれらの組合せからなる群から選択される請求項5に記載のカラーリング組成物。
【請求項7】
前記開始剤がタンパク質である請求項1に記載のカラーリング組成物。
【請求項8】
前記タンパク質が酵素である請求項7に記載のカラーリング組成物。
【請求項9】
前記酵素が西洋ワサビペルオキシダーゼである請求項1に記載のカラーリング組成物。
【請求項10】
さらに着色剤を含む請求項1に記載のカラーリング組成物。
【請求項11】
前記着色剤が、クルクミン、ローソン、エモジン、ジュガロン、プルンバギン、L−システイン、メチオニン、シスチン、グルタミン、およびそれらの組合せからなる群から選択される請求項10に記載のカラーリング組成物。
【請求項12】
前記カラーリング組成物が有機化合物を含む請求項1に記載のカラーリング組成物。
【請求項13】
さらに緩衝剤を含む請求項1に記載のカラーリング組成物。
【請求項14】
前記緩衝剤はリン酸緩衝液である請求項13に記載のカラーリング組成物。
【請求項15】
さらに増粘剤を含む請求項1に記載のカラーリング組成物。
【請求項16】
さらに安定剤を含む請求項1に記載のカラーリング組成物。
【請求項17】
材料を染色する方法であって該方法が該材料を請求項1に記載のカラーリング組成物と接触させる工程を含む方法。
【請求項18】
材料はケラチン材料である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ケラチン材料が毛髪である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記カラーリング組成物を材料と1ないし60分間接触させたままにする工程をさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記材料を第1の前処理溶液で前処理する工程をさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項22】
所望により前記材料をすすぎ;および
所望により前記材料を乾燥させる工程をさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項23】
使用時に前記芳香族化合物と前記開始剤とを配合する工程をさらに含む請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−510880(P2013−510880A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539054(P2012−539054)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/056695
【国際公開番号】WO2011/060354
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512124902)ワーナー バブコック インスティチュート フォア グリーン ケミストリー リミテッド ライアビリティー カンパニー (1)
【出願人】(509284897)ジョン マスターズ オーガニック ヘア ケア インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】