説明

芳香環およびヘテロ環からなる液晶オリゴマー及びポリマー、またそれからなるフィルム

【課題】加水分解による劣化が非常に少ない液晶オリゴマー及びポリマーを提供する。
【解決手段】芳香族ヘテロ環と芳香族炭化水素環が単結合にて連結した部位の繰り返し単位を有する一般式(I)で表されるオリゴマー又はポリマーであって、繰返し単位(A−B)が2種類以上存在し、その分子鎖内に含まれる下記部分構造式(a)のうち少なくとも一つが双極子モーメントの和が0でなく、且つ100℃以上において液晶性を発現する、下記一般式(I)で表されるオリゴマー又はポリマー。


(一般式(I)中、Aは置換又は無置換の芳香族ヘテロ環を表す。Bは置換又は無置換の芳香族炭化水素環を表す。jは2〜10を表し、複数存在するA及びBはそれぞれ少なくとも2種類存在する。nは3以上を表す。)


(部分構造式(a)中、A及びBは前記一般式(I)におけるA及びBと同一のものを示す。A’は置換又は無置換の芳香族ヘテロ環を表し、Aと同じでも異なっても良い。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な液晶オリゴマー及びポリマー化合物及びそれからなるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱により液晶性を発現する液晶ポリマー樹脂は、(i)溶融時の粘度が小さいこと、(ii)難燃性を有していることなど多くの利点があり、コネクター部品をはじめ多くの成形品に対して用いられている。また液晶ポリマーからなるフィルムは、低誘電損失であることが知られており、この性能を生かしてコンピューター、携帯機器を始めとする情報通信機器の電子回路基板、ITSを始めとする自動車関連の電子回路基板に用いられている。
【0003】
一方で、液晶ポリマーは加水分解による劣化が問題となっている。この問題を解決すべく多くの試みがなされているが、液晶ポリマーはエステル結合からなることから、本質的に加水分解を防ぐことはできない。
【0004】
この加水分解による劣化を根本的に解決する方法として、エステル結合を分子内に有さないことが好ましい。一方、分子内にエステル結合を含まない液晶として、シクロアルカン型ポリマーが発見された(非特許文献1を参照。)が、このものは室温付近で液晶あり、100℃付近では液体であるため成形品用途には使うことができない。
【0005】
また、芳香族ヘテロ環と芳香族炭化水素環が単結合にて連結したポリマーの例としては、特許文献1及び特許文献2が挙げられるが、これらのポリマーでは液晶性を発現しない。
【0006】
【非特許文献1】2007年日本液晶学会討論会プログラム2aA10
【特許文献1】米国特許第1,073,324号明細書
【特許文献2】特公昭43−14478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、新規な液晶オリゴマー、ポリマー化合物および組成物を提供することであって、これらにより加水分解による劣化を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を続け、芳香族ヘテロ環と芳香族炭化水素環が単結合にて連結した液晶ポリマーを見出すことにより、上記課題を解決することに成功した。すなわち本発明は、
〔1〕芳香族ヘテロ環と芳香族炭化水素環が単結合にて連結した部位の繰り返し単位を有する一般式(I)で表されるオリゴマー又はポリマーであって、繰返し単位(A−B)が2種類以上存在し、その分子鎖内に含まれる下記部分構造式(a)のうち少なくとも一つが双極子モーメントの和が0でなく、且つ100℃以上において液晶性を発現することを特徴とする、下記一般式(I)で表されるオリゴマー又はポリマー。
【化1】

(一般式(I)中、Aは置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を表す。Bは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を表す。jは2以上10以下の整数を表し、複数存在するA及びBはそれぞれ少なくとも2種類存在する。nは3以上の整数を表す。)
【化2】

(部分構造式(a)中、AおよびBは前記一般式(I)におけるA及びBと同一のものを示す。A’は置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を表し、Aと同じでも異なっていても良い。)
〔2〕前記一般式(I)において、Aで表される置換もしくは無置換の芳香族へテロ環が、1,2,4−オキサジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−チオジアゾール環、及び1,3,4−チオジアゾール環の群から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする前記〔1〕項に記載のオリゴマー又はポリマー。
〔3〕前記一般式(I)において、Aで表される置換もしくは無置換の芳香族へテロ環が、1,2,4−オキサジアゾール環または1,2,4−チオジアゾール環であることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕項に記載のオリゴマー又はポリマー。
〔4〕前記部分構造式(a)が、下記部分構造式(b)で表されることを特徴とする、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のオリゴマー又はポリマー。
【化3】

(部分構造式(b)中、Xは酸素原子または硫黄原子を表す。Bは前記一般式(I)におけるBと同一のものを示す。)
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のオリゴマー又はポリマーを含有することを特徴とする組成物。
〔6〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のオリゴマー若しくはポリマー又は前記〔5〕項に記載の組成物から得られることを特徴とするフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液晶オリゴマー及びポリマーは加水分解による劣化が非常に少ないので、フィルム等に成形し、電子機器の部品や回路形成材料として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本発明は、基本的に芳香族ヘテロ環と芳香族炭化水素環が単結合にて連結した部位の繰り返し単位を有する一般式(I)で表されるオリゴマー又はポリマーであって、繰返し単位(A−B)が2種類以上存在し、当該オリゴマー又はポリマーが、下記一般式(I)で表される液晶性のものである。以下、一般式(I)で表される本発明の液晶オリゴマー又はポリマーを説明する。
【0012】
【化4】

【0013】
一般式(I)中、Aは置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を表す。Bは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を表す。jは2以上10以下の整数を表し、複数存在するA及びBはそれぞれ少なくとも2種類存在する。nは3以上の整数を表す。
【0014】
一般式(I)において、上記のごとくAは置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を表すが、好ましくは5員環または6員環の置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5員環の置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくは1,2,4−オキサジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−チオジアゾール環、及び1,3,4−チオジアゾール環であり、最も好ましくは1,2,4−オキサジアゾール環である。
【0015】
一般式(I)中、Bは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を表す。好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基、ビフェニル基、またはナフチル基であり、具体例としては下記L−1〜L−6が挙げられる。
【0016】
【化5】

【0017】
A及びBの有してもよい置換基の例としては下記が挙げられる。すなわち、
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基);シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基);ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イルなどである。);
【0018】
アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基);シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどである。);ビシクロアルケニル基(置換又は無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イルなどである。);
アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基);
【0019】
アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換又は無置換の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基);シアノ基;ヒドロキシル基;ニトロ基;
【0020】
カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基);アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基);シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基);ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基);
【0021】
アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基);
【0022】
カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基);
【0023】
アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基);アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基);
【0024】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基);アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基);アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基);アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基);アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基);
【0025】
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基);アルキル又はアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基);
【0026】
メルカプト基;アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基);アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基);ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基);スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’フェニルカルバモイル)スルファモイル基);スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基);アルキル又はアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基);
【0027】
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基);アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基);アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基);カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基);
【0028】
アリール又はヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換又は無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基);イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基);
【0029】
ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基);ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基);ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基);
【0030】
シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)等が挙げられる。
【0031】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0032】
上記のうち、より好ましい置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基およびアルコキシカルボニルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子である。
【0033】
一般式(I)中、jは2以上10以下の整数を表す。好ましくは、jは2以上5以下の整数である。
【0034】
前記一般式(I)で表されるポリマーは、特に限定されないが、液晶性の発現の観点からランダムポリマーであることが好ましい。
【0035】
前記一般式(I)において、繰り返し構造(繰り返し単位)A−Bは少なくとも2種類存在する。すなわち、A、Bの分子構造が同一であっても、AとBとの結合位置によってA−Bは区別され、異なったものとして扱われる。例えば、下記に示す2種類の化合物(X)は、同一の分子構造A、Bからなるものの例であり、A−Bとしては区別されるが、いずれも、一般式(I)に含まれる。「複数存在するA及びBはそれぞれ少なくとも2種類存在する」、とはこのような意味である。
【0036】
【化6】

このようにA−Bは少なくとも2種類存在することが必須であるが、2種類存在する場合の両者の割合(モル比)は、例えば10/90〜90/10、好ましくは20/80〜80/10、さらに好ましくは30/70〜70/30であり、最も好ましくは40/60〜60/40である。
【0037】
なお、一般式(I)において、nは3以上の整数を表す。上限は、特に限定されないが、好ましくは1000程度である。
【0038】
(部分構造式(a))
本発明の前記一般式(I)で表されるオリゴマー又はポリマーは、その分子鎖内に含まれる下記部分構造式(a)のうち、少なくとも一つが双極子モーメントの和が0でないことを特徴とする。
【0039】
【化7】

部分構造式(a)中、AおよびBは上記した一般式(I)におけるA及びBと同一のものを示す。A’は置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を表し、Aと同じでも異なっていても良い。
【0040】
部分構造式(a)中、AおよびBの好ましいものの範囲は、上記に示したものと同様である。また、A’の好ましいものの範囲は、Aに示したものと同様である。
【0041】
本発明における部分構造式(a)の双極子モーメントは、和が0でないことを規定しているが、双極子モーメントは、例えばGaussian03, Revision C.02(商品名、米ガウシアン社製)を用い、B3LYP/6−31ギガ(D)レベルのDFT計算で構造最適化後、B3LYP/6−31+g(D)レベルのTD−DFT計算にて求めることができる。そして、双極子モーメントが0であるということは、分子構造内が対称である場合である。したがって、本発明における部分構造式(a)の双極子モーメントの和が0でないとは、部分構造式(a)が非対称であることを示している。
【0042】
本発明においては、好ましくは、部分構造式(a)は部分構造式(b)で表示されるものある。
【化8】

【0043】
なお、上記部分構造式(b)中、Xは酸素原子または硫黄原子を表す。また、Bは一般式(I)中におけるものと同一のもの(置換又は無置換の芳香族炭化水素環)を示す。
【0044】
Xは、特に好ましくは酸素原子である。
【0045】
Bの好ましい範囲は上記に示したものと同様である。
【0046】
部分構造式(b)の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。
【化9】

【0047】
本発明のオリゴマー若しくはポリマーは、プレス成形、圧縮成形、射出成形、押出成形、真空成形等の成形手段により、フィルムや種々の成形品に加工することができる。その場合、ポリマー(樹脂)を単独で成形してもよいが、通常の樹脂に加えられる添加剤を加えて、樹脂組成物(本発明のオリゴマー又はポリマーの組成物)とすることも好ましい。このような添加剤としては、公知のものが使用可能である、例えば紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、界面活性剤、顔料、染料、防カビ剤、抗菌剤、殺菌剤、帯電防止剤、難燃剤等が挙げられる。また、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の熱可塑性樹脂等を配合した組成物として同様に使用することもできる。
【0048】
<本発明のオリゴマー又はポリマー組成物>
本発明の組成物は上記の液晶オリゴマー又はポリマーを含んでなる。本発明の組成物には、さらに赤リンや有機臭素化物やリン化合物などの任意の難燃剤を使用することができる。
有機臭素化物としては通常難燃剤として使用される有機臭素化合物を含み、特に臭素含量20質量%以上のものが好ましい。具体例としてはヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールAなどの低分子量有機臭素化合物、臭素化ポリカーボネート(例えば臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマーあるいはそのビスフェノールAとの共重合物)、臭素化エポキシ化合物(例えば臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物や臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるものエポキシ化合物)、ポリ臭素化ベンジルアクリレート、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌルおよび臭素化フェノールの縮合物、臭素化ポリスチレン(ポリ臭素化スチレンを含む)、架橋臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリα−メチルスチレンなどのハロゲン化されたポリマーやオリゴマーあるいは、これらの混合物が挙げられ、なかでもエチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、臭素化エポキシオリゴマー又はポリマー、臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルおよび臭素化ポリカーボネートが、配合した液晶ポリマーとの相溶性や、得られるフィルムの難燃性の確保の観点から好ましく、臭素化ポリスチレンが最も好ましく使用できる。
組成物中に上記難燃剤を含有させる場合には、液晶オリゴマー又はポリマー100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがさらに好ましい。
【0049】
本発明の液晶オリゴマー又はポリマー組成物には、離型性を向上させる目的で離型剤を添加することが可能である。離型剤としては任意の離型剤を添加することができるが、中でもオレフィン系重合体および/または炭素数11以上の脂肪酸と脂肪族第1級アルコールからなるエステル化合物が、液晶ポリマーとの相溶性、及び得られるフィルムの離型性確保の観点から好ましい。
本発明で用いることができるオレフィン系重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン又はプロピレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとからなる共重合体、およびエチレン又はプロピレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ジエンとからなる共重合体からなる群から選ばれた一種以上のものである。
【0050】
炭素数が3以上のα−オレフィンとしては、好ましくはプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1,3−メチルペンテン−1、オクタセン−1等が使用でき、プロピレン又はブテン−1がさらに好ましい。また、これらは二種以上併用して使用してもよい。
【0051】
非共役ジエンとしては、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等が使用できる。
非共役ジエンを含有しない場合、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合比は通常40/60〜99/1(モル比)、好ましくは70/30〜95/5(モル比)である。
非共役ジエンを含有する場合、炭素数3以上のα−オレフィンの含有量は、通常3〜80モル%、好ましくは15〜60モル%であり、非共役ジエンの含有量は、通常0.1〜15モル%、好ましくは0.5〜10モル%である。
【0052】
これらの共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ペンテン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ブテン−1共重合体、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体などが挙げられ、なかでもエチレン/プロピレン共重合体およびエチレン/ブテン−1共重合体が耐熱性に優れより好ましい。最も好ましく用いられるものはポリエチレン、ポリプロピレンである。また、上記オレフィン系重合体2種以上併用することもできる。
オレフィン系重合体の分子量は特に規定はされないが、好ましくは数平均分子量(Mn)が4,000〜20,000の範囲内、さらに好ましくは5,000〜17,000の範囲内、最も好ましいのは5,000〜10,000の範囲内である。また、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比率(Mw/Mn)が好ましくは10〜40の範囲内、より好ましくは12〜37の範囲内、さらに好ましくは25〜35の範囲内である。
分子量は、ポリエチレンが可溶な溶媒を使用してGPC−LS(ゲル浸透クロマトグラフ−光散乱)法により測定することが可能である。
【0053】
本発明に用いるエステル化合物をなす脂肪酸および脂肪族第1級アルコールの炭素数は11以上、好ましくは14以上である。エステルに用いる脂肪酸および脂肪族アルコールの炭素数が小さすぎると、離型性、高温での成形のために分解ガスが発生し、良好な成形品が得られなくなるので好ましくない。エステルに用いる炭素数11以上の脂肪酸の具体例としては、ウンデシル酸、ラウリル酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ノナデカン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸などが挙げられ、特にラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、モンタン酸などが好適である。また、炭素数11以上の脂肪族第1級アルコールの具体例としては、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オレイルアルコール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘネイコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクサコサノール、エチレングリコール、ブチレングリコールなどが挙げられ、ウンデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オレイルアルコール、オクサコサノール、エチレングリコール、ブチレングリコールなどが好適である。
【0054】
本発明の組成物において、離型剤、例えばオレフィン系重合体および/または炭素数11以上の脂肪酸と脂肪族第1級アルコールとからなるエステル化合物の含有量は、液晶ポリマー100質量部に対して0.01〜2質量部、好ましくは0.03〜1.5質量部とすることができる。また、オレフィン系重合体および炭素数11以上の脂肪酸と脂肪族アルコールとからなるエステル化合物を液晶ポリマー組成物に含有させる場合、その比率は1/9〜9/1が、両成分及び液晶ポリマーとの相溶性の観点から好ましく、より好ましくは3/7〜7/3である。
【0055】
更に、本発明の液晶ポリマー組成物には、本発明の目的を損なわない程度の範囲で、酸化防止剤および熱安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、ポリエチレンおよびポリエチレンワックスなど)、染料(たとえばニトロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなど)を含む着色剤、エポキシ化合物などの相溶化剤、可塑剤、帯電防止剤、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤などの通常の添加剤を添加して、所定の特性を付与することができる。
【0056】
上記の難燃剤、添加剤などを組成物中に含有させる方法としては、溶融混練する方法が好ましく、具体的には、マスターバッチを製造する際に同時に溶融混練する方法、マスターバッチと液晶ポリマーを溶融混練する際同時に溶融混練する方法、あるいはマスターバッチと液晶ポリマーを溶融混練した後、それと上記赤リン以外の難燃剤、添加剤と溶融混練する方法等いずれでもよい。溶融混練には任意の方法を用いることができる。たとえば、バンパリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、溶融混練して組成物とすることができる。
【0057】
(混練)
本発明の液晶オリゴマー又はポリマー組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが溶融混練により製造することが好ましく、溶融混練には任意の方法を用いることができる。例えば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、200〜400℃の温度で溶融混練して組成物とすることが推奨される。
【0058】
<フィルム>
本発明のフィルムは上記の液晶オリゴマー又はポリマーを含んでなり、上記液晶オリゴマー又はポリマー組成物で形成されたものである。
本発明のフィルムを構成する液晶オリゴマー又はポリマー組成物の組成は、その用途に応じて、本発明の範囲内で適宜変更することが可能である。例えばフィルムの所望の耐熱性および加工性を得る目的においては、約200〜約400℃の範囲内、とりわけ約250〜約350℃の範囲内に融点を有する液晶オリゴマー又はポリマー組成物を上述した範囲から選択することが好ましいが、フィルム製造の観点からは、比較的低い融点を有するものが好ましい。したがって、より高い耐熱性や融点が必要な場合には、一旦得られたフィルムを加熱処理することによって、所望の耐熱性や融点にまで高めることが有利である。加熱処理の条件の一例を説明すれば、一旦得られたフィルムの融点が283℃の場合でも、260℃で5時間加熱すれば、融点は320℃になる。
【0059】
本発明の液晶オリゴマー又はポリマーフィルムは、任意の厚みのものでよく、5mm以下の板状またはシート状のものをも包含する。
【0060】
本発明の液晶オリゴマー又はポリマー組成物から成るフィルムは、上記液晶オリゴマー又はポリマー組成物を押出成形して得られる。任意の押出成形法がこの目的のために適用されるが、任意の二軸押出し法、インフレーション法等が工業的に有利である。特にインフレーション法では、フィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す。)だけでなく、これと直交する方向(以下、TD方向と略す。)にも応力が加えられるため、MD方向とTD方向における機械的性質および熱的性質のバランスのとれたフィルムを得ることができる。
また、フィルムの少なくとも一方の面を支持体と接触させた状態で液晶フィルムを加熱してポリマーを溶融する工程、溶融ポリマーを冷却して固化したポリマー層を形成する工程、及び該固化したポリマー層を該支持体から分離する工程を含んで成る液晶ポリマーの処理方法(例えば、特開平8−90570号公報を参照。)によっても有利に形成することができる。
【実施例】
【0061】
以下に本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0062】
実施例1
[液晶ポリマー(1)の合成]
下記スキームに従い、液晶ポリマー(1)を合成した。
【0063】
【化10】

【0064】
化合物(1−1)及び(1−2)は、特許文献1記載の方法で合成した。
化合物(1−1)5g、化合物(1−2)5gのN,N−ジメチルアセトアミド100ml溶液に触媒量のP−トルエンスルホン酸を加え室温にて48時間撹拌した。反応終了後、アセトンに流し込みろ過を行うことで、液晶ポリマー(1)を得た。得られた液晶ポリマー(1)を偏光顕微鏡での液晶相観察を行ったところ、300℃において液晶状態であることが確認できた。
【0065】
液晶ポリマー(1)0.2gを濃硫酸100mlに溶解させ、その溶液粘度を測定したところ、30℃において0.11であった。
【0066】
実施例2及び3
[液晶ポリマー(2)および液晶ポリマー(3)の合成]
実施例1の化合物(1−1)の仕込み量を7gおよび化合物(1−2)の仕込み量を3gに変更した以外は実施例1と同様な操作にて液晶ポリマー(2)を得た。
また、実施例1の化合物(1−1)の仕込み量を3gおよび化合物(1−2)の仕込み量を7gに変更した以外は、実施例1と同様な操作にて液晶ポリマー(3)を得た。
【0067】
【化11】

【0068】
得られた液晶ポリマー(2)および液晶ポリマー(3)の偏光顕微鏡での液晶相観察を行ったところ、300℃においていずれも液晶状態であることが確認できた。
【0069】
液晶ポリマー(2)および(3)を0.2gを濃硫酸100mlに溶解させ、その溶液粘度を測定したところ、30℃においてそれぞれ0.85、0.10であった。
【0070】
比較例1及び2
[比較ポリマー(1)および比較ポリマー(2)の合成]
特許文献1の実施例1および3に示されている下記比較ポリマー(1)、(2)を、当該実施例の記載に従って合成した。
【化12】

【0071】
得られた比較ポリマー(1)および比較ポリマー(2)の偏光顕微鏡での液晶相観察を行ったところ、350℃まで昇温を行ったがいずれも液晶状態を示さなかった。
【0072】
比較例3、4、及び5
[比較ポリマー(3)、比較ポリマー(4)、比較ポリマー(5)の合成]
特許文献2の実施例1、実施例2および実施例3に記載の下記比較ポリマー(3)、(4)および(5)を、同記載に従って合成した。
【化13】

【0073】
得られた比較ポリマー(3)、比較ポリマー(4)および比較ポリマー(5)の偏光顕微鏡での液晶相観察を行ったところ、350℃まで昇温を行ったがいずれも液晶状態を示さなかった。
【0074】
以上の結果、液晶ポリマー(1)、(2)及び(3)および比較ポリマー(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)の比較により、芳香族へテロ環Aと芳香族炭化水素環Bの直結したポリマーが液晶性を示すためには、繰り返し構造である芳香族へテロ環−芳香族炭化水素環が2種類以上必要であること、および部分構造式(a)が必要であることがわかる。
【0075】
実施例4
[フィルム作製]
液晶ポリマー(1)1.0gをテストミニプレス機(東洋精機製作所製、商品名、MP−WNH)にてフィルムを作製した。得られたフィルムの厚さは約100μmであった。
【0076】
比較例6
[フィルム作製]
パラヒドロキシ安息香酸8.3g(60mmol)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸4.2g(22mmol)、無水酢酸8.6gおよび触媒として酢酸カリウムを1.7mgを140℃に昇温し、1時間保持した。その後毎分約2℃の速度で昇温させて、副生する酢酸を留出除去しながら340℃まで昇温させ1時間その状態に保った。反応終了後、内容物を取り出し、ポリエステルを得た。当該ポリマーをヒートステージ付偏光顕微鏡で観察したところ、300℃において液晶性を示した。この液晶ポリマーを比較ポリマー(6)とする。
比較ポリマー(6)1.0gをテストミニプレス機(東洋精機製作所製、商品名、MP−WNH)にてフィルムを作製した。得られたフィルムの厚さは約100μmであった。
【0077】
実施例5
[加水分解試験]
実施例4で得られたフィルム0.1gと、5N重水酸化ナトリウム水溶液0.4mlおよび重ジメチルスルフォキシド16mlおよび重メタノール4mlの混合溶媒とを、密閉容器に加え、120℃まで加熱した。5時間後、自然放冷した後密閉容器を開放したところ、液晶ポリマーは溶解していないことを確認した。また、密閉容器中の溶媒を1H−NMR測定したが何も検出されなかった。
【0078】
比較例7
[加水分解試験]
比較例6で得られたフィルム0.1gと、5N重水酸化ナトリウム水溶液0.4mlおよび重ジメチルスルフォキシド16mlおよび重メタノール4mlの混合溶媒とを、密閉容器に加え、120℃まで加熱した。5時間後、自然放冷した後密閉容器を開放したところ、液晶ポリマーは完全に溶解していることを確認した。また、密閉容器中の溶媒を1H−NMR測定したところ、パラヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のピークが観測された。観測されたピークはパラヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のモル比は約73対27であり、仕込みのモル比と一致した。
【0079】
実施例5および比較例7との結果を比較することにより、本発明の液晶ポリマーフィルムはアルカリ加水分解に優れることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の液晶オリゴマー及びポリマーは加水分解による劣化が非常に少ないため、フィルム等に成形し、電子機器の部品や回路形成材料として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ヘテロ環と芳香族炭化水素環が単結合にて連結した部位の繰り返し単位を有する一般式(I)で表されるオリゴマー又はポリマーであって、繰返し単位(A−B)が2種類以上存在し、その分子鎖内に含まれる下記部分構造式(a)のうち少なくとも一つが双極子モーメントの和が0でなく、且つ100℃以上において液晶性を発現することを特徴とする、下記一般式(I)で表されるオリゴマー又はポリマー。
【化1】

(一般式(I)中、Aは置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を表す。Bは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を表す。jは2以上10以下の整数を表し、複数存在するA及びBはそれぞれ少なくとも2種類存在する。nは3以上の整数を表す。)
【化2】

(部分構造式(a)中、AおよびBは前記一般式(I)におけるA及びBと同一のものを示す。A’は置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を表し、Aと同じでも異なっていても良い。)
【請求項2】
前記一般式(I)において、Aで表される置換もしくは無置換の芳香族へテロ環が、1,2,4−オキサジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−チオジアゾール環、及び1,3,4−チオジアゾール環の群から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載のオリゴマー又はポリマー。
【請求項3】
前記一般式(I)において、Aで表される置換もしくは無置換の芳香族へテロ環が、1,2,4−オキサジアゾール環または1,2,4−チオジアゾール環であることを特徴とする請求項1又は2に記載のオリゴマー又はポリマー。
【請求項4】
前記部分構造式(a)が、下記部分構造式(b)で表されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のオリゴマー又はポリマー。
【化3】

(部分構造式(b)中、Xは酸素原子または硫黄原子を表す。Bは前記一般式(I)におけるBと同一のものを示す。)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴマー又はポリマーを含有することを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴマー若しくはポリマー又は請求項5に記載の組成物から得られることを特徴とするフィルム。

【公開番号】特開2009−242637(P2009−242637A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91660(P2008−91660)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】