説明

芳香組成物および方法

4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、3−ヒドロキシ−2−メチル−4H−ピラン−4−オン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、および上記のいずれかの含硫黄類似体、およびこれらの組合せからなる群より選択される第1成分と、2−フランメタンチオール、2−メチル−3−フランチオール、5−メチル−2−フランメタンチオール、およびこれらの組合せからなる群より選択される第2成分と、2−(1−メルカプトエチル)フラン、2−フランエタンチオール、ビス−(2−フルフリル)ジスルフィド、フランチオールジスルフィド、およびこれらの組合せからなる群より選択される第3成分を含む芳香組成物。芳香組成物には、さらに、少なくとも1種類のアルカリアミンまたはベンジルアミンおよび/またはヘキセノール、1,5−オクタジエン−3−オン、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、(E)−2−ノネナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナール、ブタン酸、2または3−メチルブタン酸、2−メチル−3−(メチルジチオ)フラン、ジメチルテトラスルフィド、ジメチルトリスルフィド、4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3−(2H)フラノン、m−クレゾール、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2−(5H)フラノンおよびこれらの組合せからなる群より選択される化合物を含めてもよい。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2005年7月19日に米国仮特許出願第60/700,502号明細書の優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、芳香組成物、特に、ツナ芳香組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
風味は、製品、特に食品と飲料の評価において重要な役割を果たしている。これはまた、とりわけ、人間用の食品や犬猫用ペットフードなど、動物用食品について言えることである。芳香は、非食品の評価においても重要な役割を果たしている。
【0004】
多くの飼育試験によると、ネコが魚を食べるか否かにかかわらず、ネコは、缶入りのツナ製品を一貫してよく食べる。缶入りのツナ製品がネコに好かれるということは、飼い主にも認識されている。さらには、1つには缶入りのツナが人間用の食品としても販売されているという理由から、缶入りのツナの芳香は、大部分の缶入りのペットフードのように不快とは見られない。食品の美味しさおよび芳香を改善するために、多くの研究が試みられている。タンパク系食品およびペットフードに関するこの研究の大部分は、一般に、肉と乳製品の風味を対象としている。しかしながら、こういった研究のいずれも、特に大方のネコに好まれる芳香である、缶入りのツナに似せた芳香の生成について報告してはいない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
缶入りのツナの芳香は非常に複雑で、生またはグリルしたツナの芳香とは大きく異なる。ツナに似た匂いのする芳香組成物の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、驚くべきことに、それぞれはツナの芳香とは似ていないが、合わせた場合に、人間の官能パネル検査で缶入りのツナの匂いと似ている、わずかに3〜4種類の芳香組成物の組合せを見出した。
【0007】
発明の概要
本発明は、様々な食品組成物、非食品、および他の製品の風味を改善する組成物および方法を対象とする。
【0008】
本発明の1つの態様は、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、3−ヒドロキシ−2−メチル−4H−ピラン−4−オン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、および上記のいずれかの含硫黄類似体、およびこれらの組合せからなる群より選択される第1成分と、2−フランメタンチオール、2−メチル−3−フランチオール、5−メチル−2−フランメタンチオール、およびこれらの組合せからなる群より選択される第2成分と、2−(1−メルカプトエチル)フラン、2−フランエタンチオール、ビス−(2−フルフリル)ジスルフィド、フランチオールジスルフィド、およびこれらの組合せからなる群より選択される第3成分を含む芳香組成物が存在する。第1成分が4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンを含み、第2成分が2−フランメタンチオールを含み、第3成分が2−(1−メルカプトエチル)フランを含むことが好ましい。2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンの比は、x:y:zであることが好ましく、ここでxは約13〜約17、yは約22〜約26、zは約400〜約600である。2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンの比は、x:y:zであることがさらに好ましく、ここでxは約15、yは約24、zは約450である。一部の実施形態では、組成物は、1:1の水/油混合物と、40ppb〜120ppmの4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンと、1ppb〜1200ppbの2−フランメタンチオールと、1ppb〜900ppbの2−(1−メルカプトエチル)フランを含む。組成物は、さらに、少なくとも1種類の有機アミンを含むことが好ましい。少なくとも1種類の有機アミンを含む一部の実施形態では、組成物は、1:1の水/油混合物を含み、有機アミンはトリエチルアミンであり、トリメチルアミンは約5ppb〜5000ppbの範囲である。一部の実施形態では、2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン:トリエチルアミンの比は、x:y:z:aであり、ここでxは約13〜約17、yは約22〜約26、zは約400〜約600であり、aは約50〜約400である。組成物は、しばしば、ヘキセノール、1,5−オクタジエン−3−オン、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、(E)−2−ノネナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナール、ブタン酸、2または3−メチルブタン酸、2−メチル−3−(メチルジチオ)フラン、ジメチルテトラスルフィド、ジメチルトリスルフィド、4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3−(2H)フラノン、m−クレゾール、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2−(5H)フラノン、およびこれらの組合せからなる群より選択される化合物をさらに含む。一部の実施形態では、芳香組成物はツナ風味を有する。
【0009】
本発明の別の態様は、製品を芳香組成物と混合する工程を有する、製品に風味付けをする方法であり、ここで、芳香組成物は、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、3−ヒドロキシ−2−メチル−4H−ピラン−4−オン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、および上記のいずれかの含硫黄類似体、およびこれらの組合せからなる群より選択される第1成分と、2−フランメタンチオール、2−メチル−3−フランチオール、5−メチル−2−フランメタンチオール、およびこれらの組合せからなる群より選択される第2成分と、2−(1−メルカプトエチル)フラン、2−フランエタンチオール、ビス−(2−フルフリル)ジスルフィド、フランチオールジスルフィド、およびこれらの組合せからなる群より選択される第3成分を含む。第1成分が4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンを含み、第2成分が2−フランメタンチオールを含み、第3成分が2−(1−メルカプトエチル)フランを含むことが好ましい。芳香組成物は、2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンの比が、x:y:zであることが好ましく、ここでxは約13〜約17、yは約22〜約26、zは約400〜約600である。一部の実施形態では、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンが40ppb〜120ppm、2−フランメタンチオールが1ppb〜1200ppb、2−(1−メルカプトエチル)フランが1ppb〜900ppbの範囲である。芳香組成物は、時には、ヘキセノール、1,5−オクタジエン−3−オン、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、(E)−2−ノネナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナール、ブタン酸、2または3−メチルブタン酸、2−メチル−3−(メチルジチオ)フラン、ジメチルトリスルフィド、ジメチルテトラスルフィド、4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3−(2H)フラノン、m−クレゾール、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2−(5H)フラノン、およびこれらの組合せからなる群より選択される化合物をさらに含む。芳香組成物は、さらに、少なくとも1種類の有機アミンを含むことが好ましい。一部の実施形態では、2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン:トリエチルアミンの比は、x:y:z:aであり、ここでxは約13〜約17、yは約22〜約26、zは約400〜約600であり、aは約50〜約400である。製品は、食品であることが好ましい。一部の実施形態では、食品はペットフード製品である。一部の実施形態では、食品は、少なくとも約15重量%のタンパク質成分と、約30重量%〜70重量%の炭水化物成分と、約3.0重量%よりも大きい脂肪成分と、約0重量%〜約10重量%の粗繊維成分を有する。
【0010】
本発明の別の態様は、基剤と芳香組成物を含む芳香改善製品であり、ここで、前記芳香組成物は、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、3−ヒドロキシ−2−メチル−4H−ピラン−4−オン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、および上記のいずれかの含硫黄類似体、およびこれらの組合せからなる群より選択される第1成分と、2−フランメタンチオール、2−メチル−3−フランチオール、5−メチル−2−フランメタンチオール、およびこれらの組合せからなる群より選択される第2成分と、2−(1−メルカプトエチル)フラン、2−フランエタンチオール、ビス−(2−フルフリル)ジスルフィド、フランチオールジスルフィド、およびこれらの組合せからなる群より選択される第3成分を含む。一部の実施形態では、基剤は食品である。一部の実施形態では、食品はペットフードである。
【0011】
以下の発明の詳細な説明がよく理解されるように、これまで本発明の特性と技術的利点をかなり広範に述べてきた。本発明のさらなる特性と利点については、以下に、本発明の課題となる請求項を形成し、説明する。当然ながら、開示される着想と特定の実施形態は、本発明と同じ目的を達成するために、他の構造の修正または設計の根拠として、容易に利用されるであろうことが、当業者に認識されるべきである。こういった等価物が、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の精神および範囲から離れていないこともまた、当業者は理解すべきである。その組成と操作法の両方が本発明の特徴であると思われる新しい特性は、さらなる目的物および利点と共に、添付の図面と連関させて考えると、以下の説明から良く理解されるであろう。しかしながら、各図が単に例示と説明の目的で提供され、本発明の限定を定義する意図ではないことが、明確に理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本明細書では、「動物」は、人間以外の動物と人間の両方を含む。
【0013】
本明細書では、「芳香」は、当然、「匂い」および/または「味」を含む。「芳香」と「風味」という用語は、同意語であり、同義的に使われる。芳香組成物は液体、乾燥粉末、噴霧、ペースト、懸濁液およびこれらの組合せから選択できる。芳香は、天然組成物、人工組成物、またはこれらの組合せのいずれでもよい。
【0014】
本明細書では、「風味」は、当然、「匂い」および/または「味」を含む。「芳香」と「風味」という用語は、同意語であり、同義的に使われる。風味組成物は液体、乾燥粉末、噴霧、ペースト、懸濁液およびこれらの組合せから選択できる。風味は、天然組成物、人工組成物、またはこれらの組合せのいずれでもよい。
【0015】
本明細書では、「ppb」は、10億分の1を意味し、重量に関する変数である。10億分の1は、ng(ナノグラム)/gであり、すなわち、10ppbで存在するとは、凝集した混合物1g中に特定の成分が10ng存在するということを意味する。
【0016】
本明細書では、「ppm」は、100万分の1を意味し、重量に関する変数である。100万分の1は、μg/gであり、すなわち、10ppmで存在するとは、凝集した混合物1g中に特定の成分が10μg存在するということを意味する。
【0017】
本明細書では、「製品を風味付けされた組成物と混合する」は、風味を、完成品に混合、または完成品に添加する、もしくは、製造またはこれらの工程のいくつかの組合せの間に、製品の成分のいくつか、またはすべてと混合する、工程のことをいう。混合の前後の文脈で用いられる場合、「製品」という用語は、製品またはその成分のいずれかのことをいう。この混合工程は、製品に風味を添加する、製品に風味を噴霧する、製品に風味をコーティングする、風味に製品を懸濁する、製品を風味でカプセル化する、風味を製品に混合する、およびこれらの組合せの各工程から選択される処理を含む。風味組成物は、液体、乾燥粉末、噴霧、ペースト、懸濁液、および/またはこれらの組合せから選択される。
【0018】
本明細書では、「油脂」は、当技術分野で慣例化されている意味で用いられる。「脂肪」と「油」は本明細書では同義的に使われる。
【0019】
栄養的に完全な食物は、その食物単独で(sole)配給可能な、動物にとって栄養的に適合した食物であり、追加の食物(水以外の)なしに生命を維持することができる。
【0020】
バランスの取れた食物は、適度な量と比率の栄養物としても知られる、栄養的に完璧な食物である。
【0021】
ツナ製品が一貫してネコによく食べられることを実証する飼育試験を考慮しつつ、本発明者らは、その利用によって、さらに口に合う製品およびさらにツナ様の芳香を有する製品となるように、芳香組成物を開発している。ツナ製品の芳香を組成物中に再現できれば、ツナ製品に認められる利点を、他の食品にも適用できる可能性がある。本発明者らは、驚くべきことに、人間の官能パネルによる試験でも、合わせることによりツナの芳香を発する、芳香化合物の組合せを見出した。
【0022】
表1は、缶入りのツナに見られる芳香活性化合物および分析的に決定された芳香特性を提供する。
【表1】

【0023】
当業者は、本明細書で用いられる風味または芳香組成物が、天然のツナがほとんど、またはまったく入っていない製品に有用であることが好ましいということを、認識している。本明細書では、天然のツナがほとんどはいっていないとは、通常、最終製品中に天然のツナを10%未満で含む食品であり、5%未満が好ましく、2%未満がさらに好ましく、0%が最も好ましい。当業者は、しかしながら、本発明にかかる芳香および風味組成物は天然のツナ風味を含む製品に加えて風味を改善することができ、このことが本発明の意図される範囲内にあることも認識すべきである。
【0024】
好ましい実施の形態では、芳香組成物は、第1成分、第2成分、および第3成分を含み、ここで第1成分には、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノンのうちの1種類以上、上記のいずれかの含硫黄類似体のうちの1種類以上、およびこれらの組合せが含まれる。第1成分はまた、この化合物群の他の関連化合物を1種類以上含んでいてもよい。第1成分は、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンを含むことが最も好ましい。第2成分には、2−フランメタンチオール、2−メチル−3−フランチオール、5−メチル−2−フランメタンチオール、およびこれらの組合せのうち1種類以上が含まれる。第2成分はまた、この化合物群の他の関連化合物を1種類以上含んでいてもよい。第2成分は、2−フランメタンチオールを含むことが最も好ましい。第3成分には、2−(1−メルカプトエチル)フラン、2−フランエタンチオール、ビス−(2−フルフリル)ジスルフィド、フランチオールジスルフィド、およびこれらの組合せのうち1種類以上が含まれる。第3成分はまた、この化合物群の他の関連化合物を1種類以上含んでいてもよい。第3成分は、2−(1−メルカプトエチル)フランを含むことが最も好ましい。一部の実施形態では、芳香組成物は、第4成分の有機アミンをさらに含むことが好ましい。存在する場合は、有機アミンはとりエチルアミンであることが好ましい。第1成分、第2成分、第3成分の重量比はx:y:zであり、ここでxは約1〜約25であり、yは約1〜約50であり、zは約100〜約1000であることが好ましい。第4成分が存在する場合は、これを成分「a」で表すと、重量比はx:y:z:aであり、ここでx、y、zは上記値を有し、「a」は最大約750までの重量比であることが好ましい。第1成分、第2成分、第3成分の重量比はx:y:zであり、ここでxは約5〜約20であり、yは約15〜約35であり、zは約250〜約750であることがさらに好ましい(第4成分「a」が存在する場合、他の成分に対する重量比は、最大約600まで)。
【0025】
第1成分、第2成分、第3成分の重量比はx:y:zであり、ここでxは約13〜約17であり、yは約22〜約26であり、zは約400〜約600であり、第4成分「a」が存在する場合、他の成分に対する重量比は、約50〜約400までであることがさらになお好ましい。第1成分、第2成分、第3成分の重量比はx:y:zであり、約15:24:450であることが最も好ましい(第4成分「a」も存在する場合、x:y:z:aは約15:24:450:221であることが好ましい)。これらを下の表2にまとめる。濃度単位における好ましい値(油:水混合物中、および基剤に銀鮭を用いた)もまた、表2に提供する。
【表2】

【0026】
一部の実施形態では、風味組成物は、ヘキセノール、1,5−オクタジエン−3−オン、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、(E)−2−ノネナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナール、ブタン酸、2または3−メチルブタン酸、2−メチル−3−(メチルジチオ)フラン、ジメチルトリスルフィド、ジメチルテトラスルフィド、4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3−(2H)フラノン、m−クレゾール、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2−(5H)フラノン、およびこれらの組合せからなる群より選択される別の成分をさらに含む。
【0027】
芳香組成物は、幅広い製品またはベースに適用できる。製品または基剤は、人間および人間以外の両方の食品または非食品でありうる。それらは、ペットフードであることが好ましい。それらはまた、ペット用品またはペット用の健康用品であっても構わない。基剤がペットフードの場合、それは、ウエット、またはセミモイスト・タイプのペットフードであることが好ましい。あるいは、それはドライペットフードでも差し支えない。ドライペットフードの実施形態では、水分含量は、約6%〜約12%の範囲であることが好ましい。ウエットタイプのペットフードの実施形態では、水分含量は、約65%〜約85%の範囲であることが好ましい。他の実施形態は、中程度の水分のペットフード製品を対象としたものを含み、約20%〜約30%の水分の範囲であることが好ましい。
【0028】
3成分の濃度を実質的に固定し、1成分の濃度を水と油の担体中で変化させた実験を行った。表3はこれらの実験結果の概要を示し、芳香組成物用の範囲を提供するものである。表は、様々な化合物の比を変化させることにより、魚臭、および加熱調理した魚臭を生じさせるが、比率が最も好ましい比に近づくにつれて、様々な成分が適切なバランスになることにより、芳香がさらにツナに似てくることを示している。第1成分(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン)が少なすぎると、芳香は硫黄臭と焦げた臭いが強くなり、バランスが崩れるであろう。この成分が多すぎると、においは焼けた油っぽい、魚臭がし始め、一般にやや甘すぎるにおいがするであろう。第2成分(すなわち、2−フランメタンチオール系の化合物)または第3成分(すなわち、2−(1−メルカプトエチル)フラン系の化合物)が少なすぎると、焼けたにおいが少なすぎ、芳香は加熱調理したにおいがしないであろう。この成分が多すぎると、焼けたにおいがし始め、魚くさい、油っぽいにおいが過剰になり、芳香は焼けすぎたにおいがしてしまう。有機アミン成分が少なすぎると、芳香は加熱調理したにおいがするであろうが、魚っぽいにおいが足りないであろう。この成分が多すぎると、芳香は腐った不快な臭いになってしまう。
【表3−1】

【表3−2】

一部の実施形態では、芳香組成物は担体および40ppb〜120ppmの範囲の4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンと、1ppb〜1200ppbの2−フランメタンチオール、1ppb〜900ppbの2−(1−メルカプトエチル)フランを含む。担体は、水:油系の担体が好ましいが、他の担体も利用できる。水:油系の担体中の油は、いずれの脂肪または油でも構わない。他の担体の限定されない例としては、グリセロール(グリセリン)、アルコール、他の脂肪または油、当業者に既知の他の食品用担体、脂肪酸モノ−およびジ−グリセリド、中鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。水性乳剤を用いるのが好ましい。組成物は、少なくとも1種類の有機アミンを含むことが好ましく、アルカリアミンが好ましいが、芳香族アミンなどの他の有機アミンも利用可能である。有機アミンとして、トリエチルアミンが好ましい。有機アミンの組合せも利用可能である。用いる場合は、有機アミン濃度は約5ppb〜約5000ppbの範囲が好ましい。好ましい実施形態では、組成物は、油と水の等量の混合物を含む。他の実施形態では、芳香組成物は、さらに、ヘキセノール、1,5−オクタジエン−3−オン、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、(E)−2−ノネナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナール、ブタン酸、2または3−メチルブタン酸、2−メチル−3−(メチルジチオ)フラン、ジメチルテトラスルフィド、ジメチルトリスルフィド、4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3−(2H)フラノン、m−クレゾール、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2−(5H)フラノン、およびこれらの組合せからなる群より選択される化合物を含む。一部の実施形態では、芳香組成物はツナ風味を有する。それは、芳香組成物が油と水の両方に可溶な化合物を含んでいることから、担体が油と水の両方を含んでいる場合に、特に有益である。担体中の油と水の濃度は、微量の水(1%以上)と大部分の油(99%未満)を含むものから、特にほとんど油を含まず(0%以上)ほとんどすべてが水であるものまで、変化しうる。芳香組成物は、限定はしないが、液体、乾燥粉末、噴霧、ペースト、懸濁液、およびこれらの組合せを含む、いずれの形態をとっても差し支えない。一部の実施形態では、芳香組成物は天然成分、人工的な成分または天然成分と人工的な成分の組合せを含む。
【0029】
におい成分の最適な濃度は、適切な溶液中では、455ppbの4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、221ppbのトリメチルアミン、24ppbの2−フランメタンチオール、および15ppbのMEF(2−(1−メルカプトエチル)フラン)であると決定された。2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン比はx:y:zであり、ここでxは約13〜約17の範囲であり、yは約22〜約26の範囲であり、zは約400〜約600の範囲であることが好ましい。2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン比はx:y:zであり、ここでxは約15であり、yは約24であり、zは約450であることがさらに好ましい。もし存在する場合は、有機アミンの比は、上記の比のように「a」で指定することができ、x:y:z:aとなる。この場合、xは約13〜約17の範囲であり、yは約22〜約26の範囲であり、zは約400〜約600の範囲であり、「a」は約50〜約400である。油と水の等量の混合物では、好ましい芳香組成物は40ppb〜120ppmの4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンと、1ppb〜1200ppbの2−フランメタンチオール、1ppb〜900ppbの2−(1−メルカプトエチル)フランを含む。用いた油は植物油である。
【0030】
組成物は、基剤を芳香組成物と混合して前記製品を形成する工程を有してなる、製品を風味付けする方法に用いることができ、ここで前記芳香組成物は、第1成分、第2成分、および第3成分を含む。本明細書では、「基剤」という用語は、芳香組成物を加える製品又は材料のことをいう。「基剤」は、芳香組成物を加えて最終的な芳香改善製品を生成する、製品又は材料である。基剤は食品が好ましいが、非食品でも差し支えない。食品は、人間用の食品でもペットフードでも構わない。食品は、ペットフード製品であることが好ましく、ウエットまたはセミモイスト・タイプのペットフード製品であることが好ましいが、ドライペットフード製品であっても構わない。基剤は製品のほんの一部または大部分であって差し支えない。基剤が食品である場合、それは、炭水化物、脂肪、タンパク質またはこれらの組合せを含む。これらの食品材料は、加熱調理した、または加熱調理していないパン生地、穀物、動物性または植物性タンパク質の混合物を含んでいて差し支えない。1つの好ましい実施形態では、基剤は混合肉である。他の限定しない例としては、すり身または銀鮭、魚のタンパク質、乳製品、大豆、鶏肉、菌類由来のマイコプロテイン、他の防臭加工されたタンパク質などが挙げられる。混合工程は、例えば、芳香を製品に加える、芳香を製品に噴霧する、芳香を製品にコーティングする、製品を芳香中に懸濁する、芳香を製品に塗装する、芳香を製品に貼り付ける、製品を芳香でカプセル化する、芳香を製品と混合する各工程、およびこれらの組合せから選択して差し支えない。芳香組成物が(担体を含む)食品に噴霧され、またはコーティングされる場合、約0.001%〜約10%の濃度で行うことが好ましく、約0.01%〜約1%がさらに好ましく、約0.1%〜約0.5%が最も好ましい。第1成分は4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンを含み、第2成分は2−フランメタンチオールを含み、第3成分は2−(1−メルカプトエチル)フランを含むことが好ましい。芳香組成物は、2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンの比x:y:zを有し、ここでxは約13〜約17の範囲であり、yは約22〜約26の範囲であり、zは約400〜約600の範囲であることが好ましい。芳香組成物は、さらに幅を広げると、2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンの比x:y:zを有し、ここでxは約1〜25であり、yは約1〜50であり、zは約100〜1000である。存在する場合には、有機アミンの比は、上記の比のように「a」として指定することができ、x:y:z:aとなる。この場合は、xは約13〜約17の範囲であり、yは約22〜約26の範囲であり、zは約400〜約600の範囲であり、「a」は約50〜約400の範囲であることが好ましい。さらに広範には、好ましい範囲は次のとおりである。すなわち、xは約1〜25の範囲、yは約1〜50の範囲、zは約100〜1000の範囲、aは0〜750の範囲である。最も好ましい実施形態では、2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンの比はx:y:zであり、ここでxは約15であり、yは約24であり、zは約450である。一部の実施形態では、基剤中、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンは40ppb〜120ppmの範囲、2−フランメタンチオールは1ppb〜1200ppbの範囲、2−(1−メルカプトエチル)フランは1ppb〜1200ppbである。一部の実施形態では、風味組成物は、さらに、ヘキセノール、1,5−オクタジエン−3−オン、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、(E)−2−ノネナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナール、ブタン酸、2または3−メチルブタン酸、2−メチル−3−(メチルジチオ)フラン、ジメチルトリスルフィド、ジメチルテトラスルフィド、4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3−(2H)フラノン、m−クレゾール、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2−(5H)フラノン、およびこれらの組合せからなる群より選択される化合物を含む。初期濃度は、処理中の着臭剤の損失を加味して適応させてもよい。非食品基剤の一部の例として、おもちゃおよびペット用品が挙げられる。
【0031】
本発明の別の態様は、基剤および芳香組成物を含む、芳香改善製品である。芳香組成物は、第1成分、第2成分、および第3成分を含む。第1成分は、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、3−ヒドロキシ−2−メチル−4H−ピラン−4−オン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノンおよび上記のいずれかの含硫黄類似体、およびこれらの組合せからなる群より選択され、第2成分は、2−フランメタンチオール、2−メチル−3−フランチオール、5−メチル−2−フランメタンチオール、およびこれらの組合せからなる群より選択され、第3成分は、2−(1−メルカプトエチル)フラン、2−フランエタンチオール、ビス−(2−フルフリル)ジスルフィド、フランチオールジスルフィド、およびこれらの組合せからなる群より選択される。好ましい実施の形態では、第1成分は4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンを含み、第2成分は2−フランメタンチオールを含み、第3成分は2−(1−メルカプトエチル)フランを含む。2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンの比はx:y:zであり、ここでxは約13〜約17の範囲であり、yは約22〜約26の範囲であり、zは約400〜約600の範囲であることが好ましい。さらに広範には、芳香組成物は、2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンの比x:y:zを有し、ここでxは約1〜約25の範囲であり、yは約1〜約50の範囲であり、zは約100〜約1000の範囲であることが好ましい。2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンの比はx:y:zであり、ここでxは約15であり、yは約24であり、zは約450であることが最も好ましい。存在する場合には、有機アミンの比は、上記の比のように「a」として指定することができ、x:y:z:aとなる。この場合は、xは約13〜約17の範囲であり、yは約22〜約26の範囲であり、zは約400〜約600の範囲であり、「a」は約50〜約400の範囲である。さらに広範には、好ましい範囲は次のとおりである。すなわち、xは約1〜25の範囲、yは約1〜50の範囲、zは約100〜1000の範囲、aは0〜750の範囲である。有機アミンの存在する実施形態では、それは約4ppb〜約15,000ppbの範囲が好ましい。有機アミンとしては、トリエチルアミンが好ましい。
【0032】
基剤が食品の場合は、それはドライ、セミウエット、またはウエットタイプであって差し支えない。一部の好ましい実施形態では、基剤は銀鮭、鶏肉または防臭加工されたタンパク質である。基剤が肉である実施形態では、第1成分(x)の好ましい濃度は、約15ppb〜約240ppbが好ましく、約15ppb〜約150ppbがさらに好ましく、約30ppb〜約75ppbがさらになお好ましく、約40ppbが最も好ましい。基剤が肉である場合には、第2成分の好ましい濃度は約50ppb〜約450ppbが好ましく、約50ppb〜約300ppbがさらに好ましく、約60ppb〜約150ppbがさらになお好ましく、約75ppbが最も好ましい。基剤が肉である場合、第3成分の好ましい濃度は約500ppb〜約9000ppbが好ましく、約750ppb〜約6000ppbがさらに好ましく、約1000ppb〜約3000ppbがさらになお好ましく、約1500ppbが最も好ましい。第4成分「a」(有機アミン)が存在する場合は、それは約500ppb〜約4500ppbが好ましく、約650ppb〜約3500ppbがさらに好ましく、約800ppb〜約2000ppbがさらになお好ましく、約1000ppbが最も好ましい。一部の実施形態では、基剤は、人間の官能パネルが、芳香組成物の添加前にほとんど芳香を感知しない、味のない基剤である。随意的に、別の成分を加えても差し支えなく、その成分は、ヘキセノール、1,5−オクタジエン−3−オン、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、(E)−2−ノネナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナール、ブタン酸、2または3−メチルブタン酸、2−メチル−3−(メチルジチオ)フラン、ジメチルトリスルフィド、ジメチルテトラスルフィド、4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3−(2H)フラノン、m−クレゾール、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2−(5H)フラノン、およびこれらの組合せからなる群より選択される。
【0033】
銀鮭を基剤として用いた組成物では、好ましい芳香組成物は、1500ppbの4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、75ppbの2−フランメタンチオール、および40ppbの2−(1−メルカプトエチル)フランを含む。当業者は、上記範囲には特定の範囲内にある、より小さい範囲が含まれ、所定の範囲内のそれぞれの濃度も含まれることを認識する。着臭剤は、芳香化合物が可溶または混和性である限り、風味産業で一般に使用される他の担体にも取り入れることができる。本明細書では例示の目的で、油および水が選択された。これは、着臭剤化合物のすべてが水溶性というわけではないことによる。一部の実施形態では、風味組成物は、さらに、ヘキセノール、1,5−オクタジエン−3−オン、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、(E)−2−ノネナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナール、ブタン酸、2または3−メチルブタン酸、2−メチル−3−(メチルジチオ)フラン、ジメチルトリスルフィド、ジメチルテトラスルフィド、4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3−(2H)フラノン、m−クレゾール、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2−(5H)フラノン、およびこれらの組合せからなる群より選択される化合物を含む。
【0034】
一部の実施形態では、食品はペットフードである。ペットフードは、ネコ用食品とイヌ用食品からなる群より選択されることが好ましい。典型的には、ペットフードには、タンパク質含有量が約15重量%以上、炭水化物含有量が約30重量%〜約70重量%の範囲、脂肪含有量が約3.0重量%を超え、粗繊維含有量が約0重量%〜約10重量%の範囲で含まれる。ドライペットフードの実施形態では、水分含有量は約6%〜約12%の範囲であることが好ましい。ウエットタイプのペットフードの実施形態では、水分含有量は約65%〜約85%の範囲であることが好ましい。他の実施形態は、中程度の水分量のペットフードを対象とし、水分含有量が約20%〜約30%の範囲であることが好ましい。
【0035】
有機アミンを加えることにより、芳香組成物が改善されることが見出された。風味組成物は、さらに少なくとも1種類の有機アミンを含むことが好ましい。有機アミンは、アルカリアミンであり、トリメチルアミンを含むことが最も好ましい。上記結果から分かるように、組成物の1:1の水/油混合物でのトリメチルアミンの最適濃度は約221ppbである。しかしながら、トリエチルアミン(または他のアルカリアミンまたはベンジルアミン)は、約6ppb〜約4.6ppmの範囲の濃度で存在して構わない。
【0036】
芳香組成物が、多くの他の芳香改善成分を含んでいて差し支えないことも見出した。これらには、ヘキセノール、1,5−オクタジエン−3−オン、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、(E)−2−ノネナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナール、ブタン酸、2または3−メチルブタン酸、2−メチル−3−(メチルジチオ)フラン、ジメチルテトラスルフィド、ジメチルトリスルフィド、4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3−(2H)フラノン、m−クレゾール、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2−(5H)フラノンが含まれる。当然ながら、本発明にかかる組成物が、本明細書で別記しない限り、他の成分を含んでも構わない。組成物は天然成分、人工的な成分、または人工的な成分と天然成分の組合せを含んで差し支えない。
【0037】
理論的には、芳香組成物のそれぞれの成分の好ましい重量比は、母体にかかわらず同一となるべきであるが、実際には、それぞれの成分の最適濃度が芳香組成物を添加する食品または食品組成物の母体に応じて変化するであろうことを、当業者は承知するであろう。表4は2種類の別の母体を用いた上記の1:1の水/油モデルを比較したものである。提供されたデータから、芳香組成物の利用者は所望の結果を提供するために、濃度を変化させて構わないことがわかる。
【表4】

【0038】
したがって、化合物濃度を母体の性質に応じて変化させ、得られる芳香を最適化して差し支えないことがわかる。適用されるべき所望の芳香を知っている当業者は、次に、濃度を変化させて所望の芳香にたどり着くであろう。相対比率もまた、上述の比が好ましい比を表したにすぎないことは明らかではあるが、必要であれば変化させて構わない。一部の事例では、母体に本物のツナを含むことに注目すべきである。こういった場合、食品はツナ芳香組成物を加えた本物のツナを含むであろう。
【0039】
同じように、同様の実験から、組成物が銀鮭の基剤を含む場合、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンは約1500ppmが好ましく、2−フランメタンチオールは約75ppbが好ましく、2−(1−メルカプトエチル)フランは約1200ppbが好ましく、トリメチルアミンは約4〜約40ppbが好ましいことがわかった。
【0040】
同じ原理を、芳香を加えた/改善した非食品に適用する。組成物濃度および、おそらくは成分の相対比率は、所望の結果を達成するのに改善を必要とするであろう。非食品として、薬に限定はしないが、処方薬のみならず、カウンタードラッグ(処方箋なしで買える薬)、ビタミン、サプリメントおよび/または当業者に周知の同様の製品、ペット用健康用品、およびおもちゃが含まれる。
【0041】
特定の母体とともに用いる芳香または風味組成物の最適濃度を決定することは、熟練した職人の知識および技術の範囲内にある。最適条件を決定するには試験が必要ではあるが、これは、当技術分野における日常的な所定の実験である。この試験を行うためのサンプル調査法を本明細書に提供する。
【0042】
本明細書に記載の組成物は、風味付けされた製品の製造方法に利用して差し支えない。本方法は、芳香組成物を前記製品に混合する工程を含み、ここで芳香組成物は、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、3−ヒドロキシ−2−メチル−4H−ピラン−4−オン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノンおよび上記のいずれかの含硫黄類似体、およびこれらの組合せからなる群より選択される第1成分、2−フランメタンチオール、2−メチル−3−フランチオール、5−メチル−2−フランメタンチオール、およびこれらの組合せからなる群より選択される第2成分、および2−(1−メルカプトエチル)フラン、2−フランエタンチオール、ビス−(2−フルフリル)ジスルフィド、フランチオールジスルフィド、およびこれらの組合せからなる群より選択される第3成分を含む。
【0043】
食品組成物は、完全な栄養的にバランスの取れた、味がなく、芳香のない基剤が好ましい。味のない基剤の限定されない実例として、好ましくは、15重量%を超える含有量のタンパク質を含み、15〜65重量%の範囲が好ましく、15〜35重量%がさらに好ましく、18〜25重量%が最も好ましい基剤である。炭水化物含有量は、好ましくは30〜70重量%の範囲であり、35〜50重量%が好ましく、40〜45重量%が最も好ましい。脂肪は、好ましくは3重量%を超える量であり、3〜20.0重量%が好ましい範囲であり、3〜10.0重量%がさらになお好ましい範囲であり、3.0〜8.0重量%が最も好ましい範囲である。粗繊維は、好ましくは0〜10重量%の範囲であり、0.5〜9重量%が好ましい範囲であり、1.0〜8重量%がさらになお好ましい範囲であり、2.0〜8.0重量%が最も好ましい範囲である。食品は6〜32%の含水率を有することが好ましく、12〜28%が好ましい範囲であり、14〜24%がさらに好ましい範囲であり、14〜22%がもっとも好ましい範囲である。水分活性(Aw)は0.9未満であり、0.5〜0.90が好ましい範囲であり、0.6〜0.85がさらに好ましい範囲であり、0.65〜0.80が最も好ましい範囲である。この範囲は、食品がペットフードの場合に、特に好ましい。
【0044】
訓練を受けた官能パネルによる定量的記述分析後の芳香の特性が、中程度より上ではなく、好ましくはすべてが弱いより下である場合、基剤は風味が乏しい。官能試験は食品、芳香および香料業界に従事する当業者にとって一般的であり、既知である。典型的な試験の記述は、例えば、"Sensory Analysis of Foods", Ed. J. R. Piggott, Elsevier Applied Science Publishers London and New York, 1984, ISBN 0-85334-272-5および"Principles of Sensory Evaluation of Food" M. A. Amerine, Academic Press: New York, 1965および"Sensory Evaluation Techniques, Third Edition, M. Meilgaard; G. V. Civille; B. T. Carr, CRC Press: Boca Raton, FL, 1999に見られる。
【0045】
本発明およびその利点を詳細に説明してきたが、当然ながら、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神および範囲から離れることなく、本明細書に様々な変更、置換および代替をなすことができることが理解されよう。さらには、本願の範囲は、明細書に記載される処理、機械、製造、組成物、手段、方法および工程の特定の実施形態に限定されることを意図されていない。当業者は、本発明の開示から容易に認識するであろうことから、本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同一の機能を発揮し、または実質的に同一の結果を達成する、現存する、または今後開発される処理、機械、製造、組成物、手段、方法および工程に関しては、本発明にしたがって利用して差し支えない。よって、添付の特許請求の範囲は、こういった処理、機械、製造、組成物、手段、方法および工程をその範囲に含むことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、3−ヒドロキシ−2−メチル−4H−ピラン−4−オン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、および上記のいずれかの含硫黄類似体、およびこれらの組合せからなる群より選択される第1成分と、
2−フランメタンチオール、2−メチル−3−フランチオール、5−メチル−2−フランメタンチオール、およびこれらの組合せからなる群より選択される第2成分と、
2−(1−メルカプトエチル)フラン、2−フランエタンチオール、ビス−(2−フルフリル)ジスルフィド、フランチオールジスルフィド、およびこれらの組合せからなる群より選択される第3成分と、
を含む芳香組成物。
【請求項2】
前記第1成分が4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンを含み、前記第2成分が2−フランメタンチオールを含み、前記第3成分が2−(1−メルカプトエチル)フランを含むことを特徴とする請求項1記載の芳香組成物。
【請求項3】
2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンの比が、x:y:zであり、ここでxが約13〜約17の範囲であり、yが約22〜約26の範囲であり、zが約400〜約600の範囲であることを特徴とする請求項2記載の芳香組成物。
【請求項4】
2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンの比が、x:y:zであり、ここでxが約15であり、yが約24であり、zが約450であることを特徴とする請求項2記載の芳香組成物。
【請求項5】
前記組成物が、1:1の水/油混合物と、40ppb〜120ppmの範囲の4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンと、1ppb〜1200ppbの範囲の2−フランメタンチオールと、1ppb〜900ppbの範囲の2−(1−メルカプトエチル)フランとを含むことを特徴とする請求項2記載の芳香組成物。
【請求項6】
少なくとも1種類の有機アミンをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の芳香組成物。
【請求項7】
前記組成物が1:1の水/油混合物を含み、ここで前記有機アミンがトリメチルアミンであり、該トリメチルアミンが約5ppb〜約5000ppbの範囲であることを特徴とする請求項6記載の芳香組成物。
【請求項8】
2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン:有機アミンの比が、x:y:z:aであり、ここでxが約13〜約17の範囲であり、yが約22〜約26の範囲であり、zが約400〜約600の範囲であり、aが約50〜約400の範囲であることを特徴とする請求項6記載の芳香組成物。
【請求項9】
ヘキセノール、1,5−オクタジエン−3−オン、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、(E)−2−ノネナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナール、ブタン酸、2または3−メチルブタン酸、2−メチル−3−(メチルジチオ)フラン、ジメチルテトラスルフィド、ジメチルトリスルフィド、4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3−(2H)フラノン、m−クレゾール、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2−(5H)フラノン、およびこれらの組合せからなる群より選択される化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の芳香組成物。
【請求項10】
前記芳香組成物がツナ風味を有することを特徴とする請求項1記載の芳香組成物。
【請求項11】
製品を風味付けする方法であって、前記製品と芳香組成物を混合する工程を有してなり、ここで、前記芳香組成物が、
4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、3−ヒドロキシ−2−メチル−4H−ピラン−4−オン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、および上記のいずれかの含硫黄類似体、およびこれらの組合せからなる群より選択される第1成分と、
2−フランメタンチオール、2−メチル−3−フランチオール、5−メチル−2−フランメタンチオール、およびこれらの組合せからなる群より選択される第2成分と、
2−(1−メルカプトエチル)フラン、2−フランエタンチオール、ビス−(2−フルフリル)ジスルフィド、フランチオールジスルフィド、およびこれらの組合せからなる群より選択される第3成分と、
を含む製品を風味付けする方法。
【請求項12】
前記第1成分が4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンを含み、前記第2成分が2−フランメタンチオールを含み、前記第3成分が2−(1−メルカプトエチル)フランを含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンの比が、x:y:zであり、ここでxが約13〜約17の範囲であり、yが約22〜約26の範囲であり、zが約400〜約600の範囲であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンが40ppb〜120ppmの範囲であり、2−フランメタンチオールが1ppb〜1200ppbの範囲であり、2−(1−メルカプトエチル)フランが1ppb〜1200ppbの範囲であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記芳香組成物がさらに、ヘキセノール、1,5−オクタジエン−3−オン、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、(E)−2−ノネナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナール、ブタン酸、2または3−メチルブタン酸、2−メチル−3−(メチルジチオ)フラン、ジメチルテトラスルフィド、ジメチルトリスルフィド、4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3−(2H)フラノン、m−クレゾール、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2−(5H)フラノン、およびこれらの組合せからなる群より選択される化合物をさらに含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種類の有機アミンをさらに含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項17】
2−(1−メルカプトエチル)フラン:2−フランメタンチオール:4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン:有機アミンの比が、x:y:z:aであり、ここでxが約13〜約17の範囲であり、yが約22〜約26の範囲であり、zが約400〜約600の範囲であり、aが約50〜約400の範囲であることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記製品が食品であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項19】
前記食品がペットフード製品であることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記食品が、少なくとも約15重量%のタンパク質成分と、約30重量%〜70重量%の範囲の炭水化物成分と、約3.0重量%を超える脂肪成分と、約0重量%〜約10重量%の範囲の粗繊維成分とを有することを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項21】
基剤と芳香組成物を含む芳香改善製品であって、ここで、前記芳香組成物が、
4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、3−ヒドロキシ−2−メチル−4H−ピラン−4−オン、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)フラノン、および上記のいずれかの含硫黄類似体、およびこれらの組合せからなる群より選択される第1成分と、
2−フランメタンチオール、2−メチル−3−フランチオール、5−メチル−2−フランメタンチオール、およびこれらの組合せからなる群より選択される第2成分と、
2−(1−メルカプトエチル)フラン、2−フランエタンチオール、ビス−(2−フルフリル)ジスルフィド、フランチオールジスルフィド、およびこれらの組合せからなる群より選択される第3成分と、
を含むことを特徴とする芳香改善製品。
【請求項22】
前記基剤が食品であることを特徴とする請求項21記載の芳香改善製品。
【請求項23】
前記食品がペットフードであることを特徴とする請求項22記載の芳香改善製品。

【公表番号】特表2009−503146(P2009−503146A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522906(P2008−522906)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/027911
【国際公開番号】WO2007/011965
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】