説明

茎用ねじアセンブリのための継手要素

【課題】本発明の目的は、ねじ頭部のロック方法,使用法の複雑さ,整形ロッド及びロッド捕捉アセンブリの適正配置の難しさ,幾つかの複雑な装置に関連した多数のパーツに必要な操作,並びに2種間の弱い境界面に由来する骨固定装置に関するロッド捕捉アセンブリの術後移動等について改良することにある。
【解決手段】本発明は、茎用ねじアセンブリ用の継手要素である。この継手要素は、上端と、下端と、前記上端から前記下端に向かい延びるロッド受容開口とを有しており、前記継手要素の前記上端及び下端間には、ねじ式締結具を受けるための孔が延びていて、前記継手要素が、把持面を含む外表面を有しており、前記座部は、前記ねじ式締結具の前記頭部の一部に係合するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎固定装置に関し、特に、拡張可能な頭部付き茎用ねじを有する茎用ねじアセンブリに関するものである。好適な実施例において、この茎用ねじアセンブリは、座部を有する継手要素を含んでいて、該座部が茎用ねじの頭部を受けると共に、継手要素に関する茎用ねじの多軸線回りの運動を可能にしており、また、同茎用ねじアセンブリは、継手要素及び茎用ねじが相対的に運動するのを阻止するように、茎用ねじの頭部を拡開して継手要素の座部に押し付けるインサートを含んでいる。
【背景技術】
【0002】
脊柱は、骨及び結合組織からなる非常に複雑な系統であり、この系統が身体の支持を可能にすると共に、精緻な脊柱及び諸神経を保護している。該脊柱は、1つの上にもう1つが積み重ねられた一連の椎骨を含んでおり、ここで、その各椎体は、椎体の外側面(皮質)を形成する比較的に強固な骨部分と、椎体の中心部(海綿状)を形成する比較的に弱い骨部分とを含んでいる。各椎体間には椎間板があり、これは、脊柱に加えられる圧縮力の緩衝及び抑制に備えている。精緻な脊髄及び諸神経を含む脊柱管は、椎体の後部に位置している。
【0003】
種々の脊柱疾患が知られており、該疾患には、側湾症(脊椎の異常な側方湾曲),後湾症(通常は胸椎における脊椎の異常な前方湾曲),過剰前湾症(通常は腰椎における脊椎の異常な後方湾曲),脊椎すべり症(通常は腰椎もしくは頚椎における1つの椎骨上での別の椎骨の前転位),及びその他の疾患がある。その他の疾患は、椎間板の割れ又はずれ、変形性椎間板症、椎骨の骨折等のような異常,疾患もしくは障害により生じる。このような病気で苦しむ患者は、通常、神経機能の低下に加えて、極端な衰弱性の痛みを経験する。
【0004】
本発明は、外科用移植材料を用いて脊椎の隣接椎骨を一緒に融着及び/又は機械的に固定する、脊椎固定と通常言われている技術にかかわっている。脊椎固定はまた、脊椎の全体的なアラインメントを変更するように隣接椎骨の互いのアラインメントを変更するのにも使用される。かかる技術は、上述した病気を治療するために、そして、大抵の場合、患者が受けている痛みを和らげるために、効果的に使用されてきた。しかしながら、後から詳しく述べるように、現在の固定装置に関しては幾つかの欠点がある。
【0005】
ある脊椎固定技術は、脊椎とほぼ平行に延びる、脊椎ロッドと通常言われる整形ロッドを使用することにより脊椎を固定することを含んでいる。これは、脊椎を後方から露出させると共に、骨用ねじを適切な椎骨の茎(pedicles)に固定することにより行われる。該茎用ねじ(pedicle screw)は、通常、1つの椎骨につき2つ、即ち、棘突起の両側にある各茎のところに1つ設けられ、脊椎ロッドの固定ポイントとして作用する。その後、脊椎ロッドを受けるようになっているクランプ要素が使用され、脊椎ロッドを茎用ねじに結合する。この脊椎ロッドの調整影響力により、脊椎は、もっと望ましい形状に倣うように力を受ける。ある例においては、脊椎ロッドは、望ましい湾曲の脊柱を実現するために曲がることがある。
【0006】
ビナウド(Vignaud)等に対する特許文献1は、U形状の頭部が剛に接続された茎用ねじを含む脊椎固定装置を開示している。このU形状の頭部は、その内部に脊椎ロッドを受けるためU形状のチャンネルを含んでいる。U形状の頭部には雌ねじ部が設けられているので、雄ねじ部を有する止めねじを雌ねじ部にねじ込みうる。茎用ねじを骨に挿入し、そして脊椎ロッドをU形状のチャンネルに配置した後、止めねじを継手要素の雌ねじ部にねじ込んで、脊椎ロッドをU形状のチャンネル内に固定すると共に、同脊椎ロッド及び茎用ねじ間の相対運動を防止する。また、該脊椎固定装置は、U形状の要素の上方部を覆うキャップを含んでいて、止めねじをU形状の頭部にねじ込む際にU形状の要素のアームが広がるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,129,388号明細書
【特許文献2】米国特許第5,733,286号明細書
【特許文献3】米国特許第5,672,176号明細書
【特許文献4】米国特許第5,476,464号明細書
【特許文献5】国際特許公報WO88/03781号
【特許文献6】米国特許第4,484,570号明細書
【特許文献7】米国特許第5,344,422号明細書
【特許文献8】米国特許第5,584,831号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
外科医は、上述した特許文献1に開示されたような脊椎固定装置を挿入しようと試みる際に、かなりの難しさをしばしば経験してきた。例えば、外科医は、往々にして、脊椎ロッドを骨用ねじのU形状頭部の中に効率的且つ適切に入れることができなかった。これは、脊椎の湾曲と、ねじが設けられる茎の配向が異なるため、茎用ねじのU形状の頭部が互いに整列しないことが往々にしてあるからである。脊椎ロッドは、茎用ねじを脊椎ロッドに接続するために、複数の平面上で曲げられることがしばしばあり、これは、脊椎ロッドとの結合を弱くすることになる。また、これらの諸問題は、手術を相当に長引かせることになり、外科手術に関連した合併症の可能性が増すことになる。
【0009】
上述した特許文献1において認められた諸問題に応えて、エリコ(Errico)等に対する特許文献2、ビーダーマン(Biedermann)等に対する特許文献3及びメッツ−スタベンハーゲン(Metz-Stavenhagen)に対する特許文献4の各明細書は、骨に固定された固定要素が球状の頭部を有している多軸の脊椎固定装置を開示している。これらの米国特許における脊椎固定装置は、整形ロッド捕捉アセンブリを有していて、整形ロッドを該捕捉アセンブリ内に取り付けると共に、該整形ロッドを固定要素に接続する。固定要素の球状の頭部は、該固定要素が整形ロッドの捕捉アセンブリに関して運動することを可能にする。しかし、上述した米国特許のものは、各脊椎固定装置が挿入後にずれるかもしれないので、特許文献1に記載のものに認められる欠点の全てを解消するものではない。これは主として、固定要素の球状の頭部と整形ロッド捕捉アセンブリとの間の表面接触面積が不十分であることに由来している。また、該脊椎固定装置は複雑であり製造が難しい。
【0010】
他の多軸骨固定装置は、特許文献5に教示されている。この公報は、骨結合板にある開口に骨用ねじを固定するための装置を記載している。骨用ねじの頭部は長手方向の溝を備えていて、この溝により、骨結合板にある開口の1つに入れられた後、頭部を拡張可能としている。ねじを開口の1つに挿通した後、頭部を拡開するために該頭部の頂部にある孔に調整ねじを螺入する。拡開した頭部の外表面は、骨結合板にねじを固定するように、骨結合板にある開口に圧接する。特許文献6もまた骨結合板と関連して用いられる骨用ねじを開示しており、該骨用ねじは、中央の開口と複数のスロットをもつ頭部を有していて、該開口及びスロットが頭部を複数の舌状部に分割している。頭部にある中央の開口には、頭部を拡開すると共に骨用ねじを骨結合板に関してロックするために、円錐面を有する拡開工具が挿入される。しかし、特許文献5及び特許文献6に記載のものは骨板に関係しており、整形ロッドを用いる脊椎固定装置ではない。
【0011】
上述した装置があるにもかかわらず、先行技術の脊椎固定装置は、ねじ頭部のロック方法,使用法の複雑さ,整形ロッド及びロッド捕捉アセンブリの適正配置の難しさ,幾つかの複雑な装置に関連した多数のパーツに必要な操作,並びに2種間の弱い境界面に由来する骨固定装置に関するロッド捕捉アセンブリの術後移動等において改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る茎用ねじアセンブリは、上記課題を解決すべく以下のように構成されている。茎用ねじアセンブリは、骨に挿入するための先端部と、該先端部の反対側端部のところにある拡張可能な頭部とを有する締結具を含んでいる。該頭部は、それを形成している材料により、或いはその構造により拡張可能としうる。拡張可能な頭部についての好適な一構造は、1つ以上のスロットが形成された頭部を含んでいる。この場合において、拡張可能な頭部は、凸状部を含む外表面と、内法寸法を有する内表面を規定する凹所と、頭部の拡張を可能にするため内表面及び外表面間に延在する少なくとも1つのスロットを有するのが好ましい。また、該茎用ねじアセンブリは、頭部の凹所内に少なくとも部分的に配置することができるインサートを含んでいる。このインサートは、上述した凹所の内法寸法よりも大きい外法寸法を含む外表面を有する。この場合においては、インサートは頭部の凹所と一緒に回転可能でよい。
【0013】
また、茎用ねじアセンブリは、茎用ねじを整形ロッドに結合するための継手要素を含んでいる。該継手要素は、締結具を受け入れるため同継手要素を貫いて延びる孔と、締結具の頭部を受ける座部とを有するのが好ましい。座部は、頭部の凸状部を受けると共に、更なる枢回運動を阻止するためロックされる前に締結具及び継手要素が相対的に枢回するのを可能にする凹状部を含んでいてよい。茎用ねじアセンブリは更に、継手要素に関連したロック部材を含んでいてよい。このロック部材は、整形ロッドが継手要素内に配置された後、該整形ロッドを継手要素内にロックする。該ロック部材は、インサートの外法寸法が頭部の内法寸法に当接するように、インサートを頭部の凹所内に押し込むようになっているのが望ましく、継手要素が締結具に関して更に枢回運動するのを阻止するため頭部が拡開して継手要素の座部に当る。
【0014】
締結具の拡張可能な頭部は、頭部と継手要素の座部の間において、改良されたレベルの表面接触を提供している。この表面接触レベルの向上は、より確実なロック力を発生させる結果になる。また、ロック力は、締結具の頭部及び継手要素間の境界面のところで作用する摩擦力により増大する。この摩擦力は、継手要素の座部上にある締結具の頭部の法線力に比例し、従って、インサートが締結具の頭部を拡開させるべく作用するにつれて増大する。その結果、1つ以上の骨締結具に関する脊椎ロッド又は継手要素の術後のずれ及び/又は移動の可能性が相当に減少する。更に、本発明の茎用ねじアセンブリは部品の数が少ない。その結果、移植手術が非常に簡略化されると共に、構成要素が患者の身体内に落下する可能性が大きく減少する。
【0015】
好適には、締結具は、ねじの先端部から頭部に向かい延びる雄ねじ部を有する茎用骨ねじ(pedicle bone screw)である。締結具は、サッタ−(Sutter)の特許文献6に開示されたような骨移植片材料を受けるために、雄ねじ部に1つ以上の穴を有していてよい。ねじを骨に固定するためにねじを使用する代わりに、他の好適な場合において、締結具は、前述したメッツ−スタベンハーゲンに対する特許文献4に開示されたようなフック形状の固定要素を含んでいてよい。締結具はまた、その外表面上にヒゲ状突起(barbs)を有する構造であってよく、これにより締結具は骨の中に強制的に入れられ、そしてヒゲ状突起は締結具が骨から引き出されるのを防止する。締結具は、好ましくは、頭部と先端部の間にネック部を含んでおり、該ネック部は頭部の近くに配置されるのが望ましい。ネック部は、凹状表面を有すると共に、締結具の雄ねじ部の直径よりも通常小さな直径を有する。締結具の頭部は、好ましくは、内法寸法を有する内表面を規定する凹所を含んでいる。また、頭部は、その内表面及び外表面間に延びる複数のスロットを含んでいる。締結具は、好ましくは、先端部から頭部まで延びる長手方向軸線を有しており、該締結具の凹所並びに内表面及び外表面はこの長手方向軸線に中心を置いている。スロットは、頭部の頂面のところでほぼ始まり、そして長手方向軸線とほぼ平行な方向に締結具の先端部に向かい延びる。複数のスロットは、締結具の上端のところで頭部を2つ以上の可撓性アーム部に分割する。1つの好適な場合において、頭部を6個の可撓性アーム部に分割するために、頭部には6個のスロットが形成されている。該可撓性アーム部は、頭部の外表面を拡開するために長手方向軸線から遠ざかる方向に曲がるようになっていることが望ましい。また、可撓性アーム部は、頭部の外法寸法を減少させるように、そして締結具を継手要素に入れる組み立てを考慮して、頭部を収縮するため長手方向軸線に向かい曲がることもできる。
【0016】
拡張可能な頭部はまた、インサートを凹所内に少なくとも部分的に固定するために、凹所に延びて入る少なくとも1つのタブを含むのが好ましい。該タブは、可撓性アーム部の先端のところに形成されているのが好ましく、各可撓性アーム部が1つのタブを含むのが望ましい。これらの可撓性アーム部は、インサートを固定するためにタブを凹所に延入させて、該凹所の外周面の周りに実質的に環状の形状に通常配置される。
【0017】
インサートは、上端と、下端と、該上端及び下端間に延びる長手方向軸線とを有するのが好ましい。また、該インサートは、その上端及び下端の間に、外表面と、該外表面の周りに延びるフランジ部とを好ましくは含んでいる。好適な場合において、フランジ部は、インサートの長手方向軸線に対して実質的に垂直な平面にある。該フランジ部は、インサートの外法寸法、即ち、最大直径を有するインサートの部分を規定するのが好ましい。換言すれば、フランジ部はインサートの最大直径部を提供している。側方から見たとき或いは側断面図において、インサートの外表面は、フランジ部からインサートの下端に向かい内方に傾斜している。この場合、インサートの下端形状は実質的に球形である。しかしながら、他の場合においては、インサート下端は平坦である。インサートの上端は、整形ロッドに係合するようになった放射状表面を有するのが好ましい。この上端の放射状表面は、整形ロッドに関するインサートの角度に関係なく、該整形ロッド及びインサート間に良好な表面接触を確保する。インサートが拡張可能な頭部の凹所内に少なくとも部分的に位置付けられたときに、インサートの上端は、特に、整形ロッドが締結具の頭部に接触するのを防止するために、該頭部の上端を越えて延びている。
【0018】
他の好適な場合において、インサートは、同インサートの周囲から外方に延びる少なくとも1つ、好ましくは複数の半径方向の突起部を含んでいる。この半径方向の突起部は、インサートの上端に設けられているのが好ましく、各突起部は、インサートが凹所内に少なくとも部分的に配置されたときに拡張可能な頭部に形成されたスロットの1つに延びて入る大きさに作られている。インサートは、半径方向の突起部の直下に配置されるのが好ましい半径方向フランジ部と、インサートの上端に形成された受け口とを有する。受け口は、ねじ回し,六角棒スパナ等のような駆動体を受けるようになっている。この場合において、締結具は、駆動体をインサートの受け口に挿入し、次いで該駆動体を回してインサートを時計方向又は反時計方向に回転させることにより、骨に取り付けられる。インサートは駆動体からの駆動トルクを締結具に伝える。この駆動トルクは半径方向突起部とスロットの境界面でインサートから締結具に伝えられる。
【0019】
他の好適な場合においては、インサートは受け口を有していないが、該インサートを貫いて延びる軸方向の孔を有している。これらの特定の場合においては、頭部の凹所が設けられた部分に、駆動体を受ける大きさに作られた受け口が形成される。インサートが凹所内に少なくとも部分的に位置付けられたときに、同インサートを貫いて延びる孔は頭部に形成された受け口と実質的に整列されているので、駆動体はこの孔を通過して頭部の受け口に到達することができる。その後、締結具を骨に固定するために、駆動体を回転して締結具を時計方向或いは反時計方向に回す。
【0020】
継手要素は、上端及び下端と、該上端及び下端間に延びる長手方向軸線とを有する実質的にU形状の部材を含むことが好ましい。該継手要素は、その長手方向軸線に実質的に平行な方向に延びる孔を規定する内表面と、外表面とを有している。継手要素の内表面は締結具を受ける孔の形状を規定する。この場合において、この孔は、継手要素の長手方向軸線に実質的に平行な方向に延びている。継手要素は、好ましくは、ロック部材と螺合されるように適合したねじ部を含んでいる。この場合において、該ねじ部は継手要素の内表面に形成されており、そしてロック部材は、継手要素の該雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有する止めねじを含んでいる。しかしながら、他の好適な場合においては、該ねじ部は継手要素の外表面に形成してよく、ロック部材は、継手要素の外表面にあるねじ部と螺合するように適合した雌ねじ部を有するロックナットを含む。継手要素はまた、整形ロッドを継手要素に着座させるパースエイダー(persuader)機器のような調節装置を受けるために該継手要素に形成された、1つ以上の窪みもしくは溝を有していてよい。この場合においては、この窪みもしくは溝は、継手要素の長手方向軸線に対して実質的に垂直な方向にほぼ延びている。
【0021】
継手要素の下端にあるその内表面は、頭部の凸状部を受けるための、及び所定位置にロックされる前に継手要素に関して頭部が揺動するのを可能にするための凹状部を含んでいる座部を好ましくは画成している。この座部は、拡張空所において継手要素の下端近くに設けられるのが好ましい。該拡張空所は、雌ねじ部の直径よりも大きな直径を有するのが好ましい。
【0022】
上述した茎用ねじアセンブリの組立て中に、締結具の先端部は、拡張可能な頭部がその凸状の外表面を継手要素の凹状の座部と接触させて拡張空所内に位置付けられるまで、継手要素の孔に通される。ある好適な場合において、これは、締結具の先端部を継手要素の下端に向かいその上端を経て通すことによって、行われる。締結具の先端部及びねじ部が継手要素の下端に向かい進むにつれて、頭部は、その外表面が継手要素の孔の最小直径よりも大きい直径を有するので、継手要素の孔の小径部分を通り過ぎうるように、収縮されねばならない。好適な場合において、孔の最小直径部分は、継手要素の雌ねじ部により規定されている。しかしながら、他の場合においては、最小直径部分は、環状のリングのような内向きに延びる突起部としうる。その結果、頭部の可撓性アーム部は、該頭部を収縮させるために内向きに曲がらなければならず、曲がると、頭部は継手要素の小径部分を通過しうる。頭部は、拡張空所に到達するまで収縮状態で継手要素を通り続け、到達すると、可撓性アーム部はその元の非湾曲位置に自由に復帰する。
【0023】
一旦インサートが凹所内に位置決めされれば、インサートの外法寸法が頭部の凹所が形成された部分に当接するので、可撓性アーム部は内方に曲がることができない。このような理由で、頭部はもはや収縮できない。更に、締結具は、インサートが頭部の凹所が形成された部分内に固定状態に留まっている限り、継手要素から取り外すことはできない。
【0024】
脊椎固定手術中、締結具を骨の中にねじ込んだ後、継手要素は、締結具に関して、また、そこに固定されたインサートに関して自由に揺動する。締結具のねじ部の直径より小さな直径の凹状面を有するのが好ましい上記締結具のネック部は、継手要素が締結具の長手方向軸線に関してより広い角度範囲にわたり揺動するのを可能にする。従って、整形ロッドは、継手要素のロッド受容開口内に、より容易に配置されうる。整形ロッドをロッド受容開口内に配置させた後、整形ロッドは、ロック部材を継手要素のねじ部にねじ込むことにより所定位置にロックされる。ロック部材が整形ロッドを十分に締め付けると、今度は整形ロッドが下向きの力をインサートに作用する。次いで、可撓性アーム部を互いに遠ざかる方向に強制的に動かして締結具の頭部を拡開させるため、インサートが更に凹所内に移動する。頭部が拡開するにつれて、継手要素の座部に係合する頭部の面積が増し、そして頭部が座部に与える法線力が増大する。従って、頭部及び継手要素間の境界面に沿って作用する摩擦力は法線力に比例するので、摩擦力も増大する。頭部及び継手要素間の表面接触面積の増大並びに摩擦力の増大によって、それらの間のロック力が増すと共に、継手要素が締結具に関して更に枢回もしくは揺動運動するのを阻止する。その結果、茎用ねじアセンブリが術後にずれたり及び/又は移動する可能性が大きく低減するので、脊髄もしくは脊椎移植患者に対する術後の合併症の発生が最小になる。本発明のある好適な場合においては、継手要素が締結具の頭部直上の整形ロッドを固定する。しかし、他の好適な場合においては、継手要素が、フリッグ(Frigg)に対する特許文献7及びマッケイ(McKay)に対する特許文献8に開示されたように、整形ロッドを茎用ねじの長手方向軸線から偏心して保持するように構成されていてよい。
【0025】
本発明はまた、締結具を骨内に取り付ける工具を含んでいる。この工具は、回転可能のシャフトと、スロットに係合すべく該シャフトの端部から延びる1つ以上のピンもしくはフォークとを有する駆動体であることが好ましい。好適な場合においては、駆動体は、締結具の頭部にある各スロットについて1つのフォークを有する。この駆動体もシャフトの下端のところに雄ねじ部を有していてよい。この雄ねじ部は、締結具が骨内にねじ込まれているときに、継手要素の雌ねじ部に係合するように適合されていることが好ましい。駆動体の雄ねじ部と継手要素の雌ねじ部との係合により、締結具が骨に固定もしくは取着されたときの茎用ねじアセンブリの安定性が向上する。特に、ねじ部の係合は、締結具を骨内にねじ込むときの締結具に関する継手要素の相対運動を防止し、締結具の導入を簡略化する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る茎用ねじアセンブリに用いる締結具の斜視図である。
【図2】図1に示す締結具の平面図である。
【図3】図1に示す締結具の部分的な断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る茎用ねじアセンブリに用いるインサートの側面図である。
【図5】図4とは別の実施形態に係る茎用ねじアセンブリに用いるインサートの側面図である。
【図6】図4に示すインサートの斜視図である。
【図7】図4に示すインサートの平面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る茎用ねじアセンブリに用いる継手要素の斜視図である。
【図9】図8に示す継手要素の部分的な断面図である。
【図10】図1に示す締結具を図8に示す継手要素と組み合せる茎用ねじアセンブリの組立方法を示す側面図である。
【図11】図10に示すサブアセンブリの次の組立工程における部分的な概略側面図である。
【図12】図11に示すサブアセンブリの次の組立工程における部分的な概略側面図である。
【図13】図10〜図12に示すサブアセンブリの次の組立工程における側面図である。
【図14】図13に示すサブアセンブリの次の組立工程における側面図である。
【図15】別の実施形態によるサブアセンブリの図11に対応した部分的な断面図である。
【図16】別の実施形態によるサブアセンブリの図12に対応した部分的な断面図である。
【図17】図4に示すインサートと図1に示す締結具とを組合わせる方法の第1ステップを示す部分的な概略側面図である。
【図18】図17に示すサブアセンブリの組立工程の第2ステップにおける部分的な概略側面図である。
【図19】図17に示すサブアセンブリの組立工程の第3ステップにおける部分的な概略側面図である。
【図20】図14に示す茎用ねじアセンブリの部分断面図である。
【図21】図14に示す茎用ねじアセンブリにおける継手要素のロッド受容開口内に整形ロッドを取付けた状態を表す側面図である。
【図22】本発明の別の実施形態に係る茎用ねじアセンブリを示す斜視図である。
【図23】図22に示す茎用ねじアセンブリに用いるインサートの斜視図である。
【図24】図23に示すインサートの平面図である。
【図25】図24の線XXV−XXVによる断面図である。
【図26】図22に示す茎用ねじアセンブリの部分斜視図である。
【図27】図22に示す茎用ねじアセンブリの図26とは別の部分斜視図である。
【図28】図22に示す茎用ねじアセンブリの平面図である。
【図29】締結具を骨内に留めると共に整形ロッドを継手要素のロッド受容開口内に取付けた状態における図22に示す茎用ねじアッセンブリの、図28の線XXIX−XXIXによる断面図である。
【図30】本発明の更に別の実施形態に係る茎用ねじアセンブリに用いるインサートの斜視図である。
【図31】図30に示すインサートの側面図である。
【図32】図30に示すインサートを茎用ねじアセンブリに組み立てる一方法の第1ステップを示す側面図である。
【図33】図32に示す茎用ねじアセンブリの組立工程の第2ステップにおける側面図である。
【図34】図33に示す茎用ねじアセンブリの組立工程の第3ステップにおける側面図である。
【図35】図34に示す茎用ねじアセンブリの部分的に拡大した断面図である。
【図36】図34に示す茎用ねじアセンブリにおける継手要素のロッド受容開口内に整形ロッドを取付けた状態を表す断面図である。
【図37】本発明の更に別の実施形態に係る茎用ねじアセンブリに用いるインサートの側面図である。
【図38】本発明の更に別の実施形態に係る茎用ねじアセンブリに用いるインサート及び締結具の側面図である。
【図39】本発明のある好適な実施形態に従った、茎用ねじアセンブリの締結具を骨の中にねじ込むための駆動体の斜視図である。
【図40】本発明の更なる好適な実施例に従った、茎用ねじアセンブリの締結具を骨の中にねじ込むための駆動体の斜視図である。
【図41】図40に示す駆動体が締結具と係合した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のこれらの目的、特徴及び利点並びにその他目的、特徴及び利点は、添付図面と関連付けて以下に記載される好適な実施例についての詳細な説明を読むことにより一層容易に明らかとなろう。
【0028】
図1を参照すると、本発明の好適な実施例に従って、すり割付き茎用ねじアセンブリは、椎体の骨のような骨に挿入可能の先端部32を有する締結具30と、その頂端部にある拡張可能の頭部34とを含んでいる。この締結具30は、長手方向軸線A−Aを有すると共に、同締結具の先端部32から拡張可能の頭部34に向かって延びる雄ねじ部36を好ましくは含んでいる。該雄ねじ部36は、拡張可能の頭部34に隣接して配置されるのが好ましい締結具のネック部38で終端している。雄ねじ部36の有する外径はネック部38の直径よりも大きい。該ネック部は、好ましくは凹状面を有していて、後から詳細に説明するように、締結具30が広範囲の角度にわたり自由に枢回するのを可能にする。上述した雄ねじ部36,ネック部38,及び拡張可能の頭部34を有する締結具30は、チタン或いはステンレス鋼のように耐久性があり且つ人体にインプラントすることができる非有機性材料で形成するのが好ましい。
【0029】
図1〜図3を参照すると、拡張可能の頭部34は、先端部32から遠いところにある上端40と、ネック部38に一体的に結合した下端42とを有する。頭部34の外表面44は凸状部を含んでいる。拡張可能な頭部34には凹状部もしくは凹所46が形成されており、該凹所46は締結具30の長手方向軸線A−Aに中心があることが好ましい。この凹所46は、ある内法寸法の内表面48を有する。また、頭部34は、後から詳細に説明するように、該頭部の拡張及び収縮を可能にするため、該頭部の外面及び内面間に延在する複数のスロット50を含んでいる。
【0030】
図1及び図2を参照すると、好ましい締結具の拡張可能な頭部34は、その外表面44及び内表面48間に延在する6個のスロット50を含んでいる。該スロット50は、頭部34の周囲のまわりにほぼ一様に離間して配置されている。図2に示すように、第1のスロット50aの中心は、隣接する第2のスロット50bの中心から、符号Aで表わされた角度だけずれている。好ましい実施例においては、角度Aは約60°である。図2の実施例は6個のスロットを開示しているが、唯一つのスロットを含め、任意の数のスロットを頭部に形成してよい。これらのスロット50は、拡張可能な頭部34を分割して複数の可撓性のあるアーム部52とする。各アーム部は、ネック部に隣接して締結具に一体的に結合された下端と、そこから離遠した上端とを有する。図2に示すように、可撓性のアーム部52は、凹所46をほぼ囲んでおり、そして好ましくは、この凹所46の周辺周りに一様に離間した配置となっている。可撓性の各アーム部52は、その上端のところに、凹所46の中心にある長手方向軸線A−Aに向かって該アーム部から延びるタブ54を有している。図3に示すように、凹所46の内表面48は、締結具30の長手方向軸線A−Aに対して角度Aを規定している。この角度Aは、一つの実施例において約15°である。
【0031】
図4,図6及び図7を参照すると、本発明の茎用ねじアセンブリはまた、拡張可能の頭部(図2)にある凹状部内に少なくとも部分的に位置決め及び/又は固定しうるインサートもしくは挿入部材56を含んでいる。図4に示すように、このインサート56は、放射状表面の上端58と、放射状表面の下端60と、該上端及び下端58,60間に延在する外表面62とを有している。また、インサート56は、該上端及び下端間に延びる符号B−Bで表わされた長手方向軸線を有すると共に、外表面62の最大直径部周りに延びるフランジ部64を含んでいる。換言すれば、フランジ部64は、インサート56の最大外法寸法を規定している。しかし、他の好適な実施例においては、フランジ部は、インサート56の最大外法寸法を規定していない。
【0032】
インサートの外表面62は、符号Dで表わされた第1直径の第1部分66を有する。この第1部分66は、インサート56の上端58とフランジ部64との間に延在している。インサート56の外表面は、インサート56の下端60とフランジ部64との間に延在する第2部分68を有している。インサート56の外法寸法はフランジ部64のところで符号Dで表わされた第2直径を有し、これは第1直径Dよりも大きい。インサートの下端60とフランジ部64との間において、外表面62は、インサートの長手方向軸線B−Bに関して符号Aで表わされた角度で内向きに傾斜している。図3及び4Aを参照して、インサート56の角度Aは、このインサートが後から詳しく説明する理由のため頭部34の外表面44を拡開できるように、凹所46の角度Aよりも大きいのが好ましい。図4に示したインサートは実質的に球面状の下端を有しているが、図5に示すように、インサート56’の下端60’は実質的に平らであってもよい。
【0033】
図8及び図9を参照して、茎用ねじアセンブリはまた、整形ロッドを締結具30(図1)と接続するための継手要素70を含んでいる。この継手要素70は、上端72及び下端74と、上端から下端に延びる符号C−Cで表わされた長手方向軸線とを有する。また、継手要素70は、その下端74のところに凸状部を含む外表面76を有している。この外表面は、整形ロッドを茎用ねじアセンブリに着座させるのに使用される強制もしくはパースエイダー(persuader)機器のような取付要素もしくは工具を用いて継手要素を把持及び/又は操作しうるように、上述の外表面には溝78が形成されることが好ましい。該溝78は継手要素の長手方向軸線C−Cに対して実質的に垂直の方向に延びることが好ましい。
【0034】
孔80は、締結具を受けるため継手要素70の長手方向軸線C−Cに沿って延びている。この孔80は、上端72の近くに雌ねじ部84を有し下端74近くに拡張空所86を有する継手要素の内表面82を画成している。拡張空所86の下端は、拡張可能な頭部(図1)の凸状外表面を受けるための凹状面を備えた座部88を有するのが好ましい。拡張空所86の内法寸法Dは、拡張可能な頭部(図2)が通常の未拡開状態にあるとき、該頭部の外表面の外法寸法よりも大きい直径を有する。その結果、締結具及び継手要素は、後から詳細に説明するように、頭部が未拡開であるとき、互いに関して自由に回転及び揺動ができる。
【0035】
図10〜図14は、すり割付き茎用ねじアセンブリを組み立てる方法の好適な一例を示している。図10を参照して、締結具30の先端部32は、継手要素70の上端のところで同継手要素の孔80(図9)に通される。締結具30の雄ねじ部36は、同雄ねじ部36の外径が継手要素の雌ねじ部84の直径よりも小さいので、自由に孔を通ることができる。しかし、一旦頭部34が雌ねじ部84に到達すれば、締結具30は、頭部34の外径が雌ねじ部84の直径よりも大きいので、もはや孔80を自由に通ることはできない。
【0036】
図11を参照して、孔80を通り継手要素の下端に向かう締結具30の頭部34の移動を継続するために、頭部34の可撓性アーム部52は、該頭部を押し縮めるべく、矢印により示された方向に互いの方に向かって内方に湾曲しなければならない。押し縮められている状態下では、頭部34の外径は、継手要素の雌ねじ部84の直径よりも小さいか、或いはその直径に等しい。図12を参照して、一旦頭部34が雌ねじ部84を越えて移動し拡張空所86に入ると、可撓性のアーム部52は、矢印により表わした方向に自由に移動して互いに遠ざかる。可撓性のアーム部52は、頭部34が押し縮められていない状態にあるときの該頭部34の外径よりも拡張空所86の内径の方が大きいので、元の向きに自由に復帰する。
【0037】
図15及び図16を参照して、他の好適な実施例においては、頭部34’の外径は継手要素70’の雌ねじ部84’の直径よりも小さい。その結果、頭部34’は雌ねじ部84’に沿って自由に通ることができる。これらの実施例において、孔は、継手要素70’の拡開空所86’と雌ねじ部84’との間に位置した最小直径部85’を有している。図15に示すように、可撓性のアーム部52’は頭部を縮めるために互いの方に向かい内方に移動しなければならない。押し縮められている状態下では、頭部34’の外径は、継手要素70’の最小直径部85’の直径よりも小さいか、或いはその直径に等しい。図16を参照して、一旦頭部34’が最小直径部85’を越えて移動し拡張空所86’に入ると、可撓性のアーム部52’は、自由に移動して互いに遠ざかり、頭部34’をその元の押し縮められていない状態に戻す。最小直径部は、継手要素70’の中心軸線C−Cに向かい内方に突き出るフランジ部85’でよい。
【0038】
図13は、拡張可能の頭部34が継手要素の拡開空所86内に位置付けられた後の締結具30と継手要素70とを示している。拡張可能な頭部34の外表面は拡開空所86の内径よりも小さい直径を有するので、拡張可能な頭部34及び締結具30は継手要素70に関して自由に枢回する。減少直径のネック部38は、締結具30が継手要素70に関して広い角度範囲にわたり枢回することを可能とする。インサート56(図4)はその後、拡張可能の頭部34の凹所46内に少なくとも部分的に配置される。
【0039】
図17〜図19は、インサート56を凹所46内に少なくとも部分的に設けるための好適な方法の一例を示している。図17は、インサート56の外表面62が頭部34の可撓性アーム部52に係合する前に該頭部34の凹所46近くにあるそのインサート56を示している。フランジ部64のところにおけるインサート56の外法寸法は、凹所46の内法寸法88よりも大きい。凹所46の内法寸法88は、可撓性のアーム部52の上端にある対峙したタブ54間に延びている。
【0040】
図18において、インサート56は、可撓性のアーム部52に当接しており、そして下方向に移動して凹所46の中に入る。その結果、インサートの外表面62はタブ54に係合して、可撓性のアーム部52を矢印で示す方向に強制的に遠ざける。図19を参照して、可撓性のアーム部52は、インサート56のフランジ部64がタブ54を通過するまで、互いに遠ざかるように曲り続け、通過すると、可撓性のアーム部52は、自由に移動して矢印で指示した方向に互いの方に向かい戻る。その後はタブ54がインサート56を凹所46内に少なくとも部分的に固定状態に保持する。凹所内に保持された状態で、インサート56の上端58は、後から詳細に説明する理由により、頭部34の上端40よりも上方にあることが好ましい。一旦インサート56がタブ54により固定されると、インサートの外表面62は可撓性のアーム部52の内表面48、即ち、凹所46の内表面に密接に係合しているため、可撓性のアーム部52はもはや互いの方に内向きに縮むことはできない。その結果、一旦インサート56が凹所46内に固定されてしまえば、拡張可能な頭部の可撓性のアーム部52を著しく操作することなくインサートを凹所から除去することは非常に難しい。
【0041】
図14及び図20を参照して、一旦インサート56が凹所46内に取り付けられると、インサート56及び締結具30は、継手要素70に関して一緒に自由に揺動することができる。図20に示すように、インサート56は、凹所46内に完全に固定されてしまわない方が好ましく、また、拡張可能な頭部34の上端40に関して比較的に鮮明な輪郭を呈するのが望ましい。その結果、インサート56の上端58は、継手要素内に配置される整形ロッド(図示せず)が頭部34に接触するのを防止するため、締結具30の上端40よりも上方に位置することになる。
【0042】
図21を参照して、インサート56が拡張可能な頭部34の凹所46内に取り付けられた後、茎用ねじアセンブリは骨90に挿入する準備ができる。第1のステップにおいて、締結具30は、パイロットホールをこの骨に穿孔することにより骨90に留めうる。次に、締結具30の先端部32はパイロットホールの中に入れられ、駆動体もしくはその他の工具を用いて骨にねじ込まれる。駆動体はねじ回しでよく、或いは後から詳細に説明するように、同駆動体から延びて頭部に形成された1つ以上のスロット内に嵌るように設計された1つ以上の突起部を含んでいてよい。ねじ付きの締結具30は、同締結具の十分な部分が骨の中に留められるまで、骨90内に埋め込まれる。
【0043】
締結具30を骨90の中に留めた後、継手要素70はこの締結具に関して自由に揺動及び回転する。この揺動及び/又は回転動作は、整形ロッド92を継手要素70のロッド受容開口94内に配置させることが必要になる可能性がある。ロッド受容開口94は、継手要素の頂部のところでU字形開口により規定するのが好ましい。上述したように、締結具30のネック部38は、凹状面と、締結具の雄ねじ部の直径よりも小さな直径とを有している。その結果、継手要素70は、ネック部が頭部34の下端まで全面的に延びている場合に可能であるよりも広い範囲の角度にわたり、締結具30の長手方向軸線A−Aに関して揺動しうる。その後、整形ロッド92をロッド受容開口94内に配置できるように、継手要素70を揺動及び/又は回転させうる。継手要素は溝78を使用して動かしてもよいし、或いは同継手要素の本体部を把持することにより動かしてもよい。
【0044】
整形ロッド92を配設した後、雄ねじ部を有する止めねじ(ロック部材)96が継手要素70の雌ねじ部84に螺入される。止めねじ96は、整形ロッド92に当るまで、雌ねじ部84にねじ込まれ続ける。その後、止めねじ96は、整形ロッド92をロッド受容開口もしくはチャンネル94内にロックするため、更に回転され雌ねじ部に入る。この止めねじ96が下向きの力を整形ロッド92に作用し、そして該整形ロッド92が下向きの力をインサート56に作用する。インサート56に作用する下向きの力により、同インサートが更に凹所46内に移動して、可撓性のアーム部52を互いに遠ざかる方向に無理に押し、頭部34の外法寸法を拡大する。止めねじ96を締め続けると、拡張可能な頭部34の外面44が継手要素70の座部88に接触して、継手要素を所定位置にロックすると共に、締結具に関する継手要素の更なる揺動運動を防止する。拡張可能である頭部の特質は、剛な頭部を有する締結具で得られるよりも大きな表面接触面積を頭部と継手要素の間に与えるのに備えている。拡張可能な頭部は、該頭部と継手要素の座部の間により大きな摩擦力を与えるので、発生するロック力は十分に大きい。
【0045】
図22〜図31は本発明の好適な実施例に従ったすり割付き茎用ねじアセンブリを示している。図22は、先端部132,雄ねじ部136,ネック部138及び拡張可能な頭部を含むねじ込み締結具130を示しており、該頭部は、頭部を可撓性のアーム部に押し込むための凹所及びスロットを有する。茎用ねじアセンブリはまた、継手要素170を含んでいる。締結具130及び継手要素170は、図1及び図8に関して上述したものと実質的に同様である。
【0046】
図23〜図25を参照して、茎用ねじアセンブリ用のインサート156は、上端158と、放射状表面をもつ下端160と、該上端及び下端間に延在する外表面162とを有している。インサート156の上端158は、そこから外方に延びる半径方向の突起部198を有する。該半径方向の突起部198は、拡張可能な頭部(図1)に形成されたスロット内に嵌る大きさに作られている。このインサートは、その上端に、六角棒スパナ,或いはねじ回しのような駆動体を受けるために形成された受け口199を含んでいる。インサートはまた、突起部の直下に設けられたフランジ部164を含んでいる。このフランジ部は、外表面162の最大直径部の周りに延びると共に、好ましくは、インサートの外法寸法を規定している。インサートの外表面は、同インサートが移動して頭部の凹所の中に更に入りながら同頭部の可撓性のアーム部を互いに遠ざかる方向に押し込むことができるように、同インサートの長手方向軸線に関してある角度で内向きに傾斜している。
【0047】
図26は、拡張可能な頭部134の凹所内に取り付けられた図23のインサート156を備える部分図を示している。同インサートは、図17〜図19に関して上述した方法とほぼ同様の工程を用いて凹所146内に取り付けられている。インサートの上端158から延びる半径方向の突起部198が頭部134のスロット150内に配置されている。頭部の可撓性のアーム部152は、インサート156により、互いの方に向かい内方に曲がるのを阻止されている。ある実施例においては、インサートの外表面162(図25)により、アーム部152が互いの方に向かい内方に曲がるのを阻止していてよい。図27を参照して、インサート156を締結具130の頭部に取り付けた後、締結具及びインサートは継手要素170に関して一緒に自由に枢回する。
【0048】
図28及び図29を参照して、締結具は、最初にパイロットホールを骨190に穿孔し、次いで該締結具の先端部132をこのパイロットホールに挿入することによって、骨190に固定しうる。しかる後、六角棒スパナのような駆動体をインサート156の上端のところに形成された受け口199に挿入する。駆動体がインサート156を回転させるときに、締結具を骨190にねじ込むためにインサート156の半径方向突起部158が頭部134の可撓性アーム部に係合する。締結具を骨190内に留めた後、継手要素170は締結具に関して自由に揺動し回転するので、整形ロッド192を継手要素170のロッド受容開口194内に配置しうるように、継手要素170は締結具に関して自由に揺動し回転する。整形ロッド192が配置された後、雄ねじ部を有するロック部材196が継手要素170の雌ねじ部184を通るように該雌ねじ部と係合し、そしてロック部材196の下端197が整形ロッド192に係合するまで、該整形ロッド192に向かい進められる。ロック部材196は、下向きの力を整形ロッド192に与えるため、雌ねじ部184内に続けてねじ込まれる。次いで整形ロッド192が下向きの力をインサート156の上端158に与えて、同インサート156を拡張可能な頭部134の凹所146内に更に押し込む。該インサートが更に移動されて拡張可能な頭部134の凹所146内に入るにつれて、インサートの外表面144が可撓性のアーム部152を互いに遠ざかるように強制的に動かして、拡張可能な頭部の外径を拡大させる。その結果、拡張可能な頭部の外表面は継手要素170の座部188に係合して、該継手要素を締結具130に関して所定位置にロックすると共に、締結具に関する該継手要素の更なる揺動運動を阻止する。
【0049】
図30〜図37は、本発明の更なる好適な実施例に従った茎用ねじアセンブリのためのインサート256を示している。この特定実施例において、締結具230及び継手要素270は上述した実施例と実質的に同一の構造である。しかしながら、図30及び図31を参照すると、インサート256は、実質的に球状である形状の外表面262と、頂部258のところにある最小直径部264とを有している。インサート256の外表面262が球状の形状であることにより、同インサートは、締結具230の頭部234の凹所246内で自由に回転するのが可能である。
【0050】
図32〜図34は、図30及び図31のインサート256を用いてすり割付き茎用ねじアセンブリを組み立てるための好適な方法を示している。図32を参照して、締結具230の先端部232は継手要素270の孔280に通される。締結具230の雄ねじ部236は、同雄ねじ部236の外径が継手要素270の孔280の最小径よりも小さいので、該孔280を自由に通ることができる。上述したように、孔の最小径は、継手要素270の雌ねじ部284か、或いは、フランジ部(例えば、図15における部分85’)のような、継手要素の孔の設計に組み込まれた別の特徴により規定することができる。しかし、一旦頭部234が継手要素270の最小直径部に到達すれば、締結具230は、頭部234の外径が最小径よりも大きいので、もはや孔280を自由に通ることはできない。
【0051】
図33は、拡張可能な頭部234が継手要素270の拡張空所286内に配置された後の締結具230及び継手要素270を示している。拡張可能な頭部234の外表面は拡張空所286の内径よりも小さな直径を有するので、拡張可能な頭部234及び締結具230は継手要素270に関して自由に枢回できる。径が減少されている締結具のネック部238は、締結具230及び継手要素270が互いに関して広い角度範囲にわたり枢回することを可能にする。
【0052】
図34及び図35を参照して、その後、インサート256が拡張可能な頭部234の凹所246内に少なくとも部分的に配置される。該インサート256はこの凹所246内に頭部234の可撓性アーム部252により保持される。この時点で、インサート256は凹所246内で自由に回転し、また、継手要素270は締結具230に関して自由に枢回し回転する。図36を参照して、整形ロッド292をロッド受容開口294内に取り付けた後、該整形ロッド292がインサート256を更に凹所245内に押し込むときに拡張可能な頭部234の拡開が行われる。
【0053】
図37は、本発明の他の好適な実施例に従った茎用ねじアセンブリ用のインサート356を示している。このインサート356は、その上端358に半径方向の突起部398を有している。上端358は、特に、整形ロッドを締結具の頭部から離した状態に維持しておくために、放射状湾曲を有する表面を画成している(図1)。この放射状湾曲の表面はまた、整形ロッドを継手要素内に取り付ける前の継手要素に関する締結具の運動を容易にする。インサートは、図17〜図19に示すように拡張可能な頭部の可撓性アーム部により固定されるための径方向のフランジ部364を含んでいる。
【0054】
図38は、本発明の更に別の実施例に従った茎用ねじアセンブリを示している。この茎用ねじアセンブリは、図1〜図3に示した実施例と実質的に同一の締結具430を含んでいる。該締結具430は、拡張可能な頭部434と、該拡張可能な頭部に形成された凹所446と、複数の可撓性アーム部452とを含んでいる。該締結具430は、凹所446の底部のところに形成された受け口402を有する。締結具を骨の中に入れ込むために該受け口に工具を挿入しうる。また、茎用ねじアセンブリは、上端458から下端460まで延びる孔401を有するインサート456を含むことが好ましい。この孔401は、上述した工具が該孔を通過して、締結具を骨内に入れ込むため凹所446の底部のところに形成された受け口402に入るのを可能にするようになった、軸方向孔であることが好ましい。
【0055】
図39を参照すると、好適な一実施例において、締結具530を骨590の中にねじ込むための駆動体591は、下向きに延びる複数のピンもしくはフォーク597のある下端595を備えたシャフト593を含んでいる。該フォーク597は、締結具530の頭部534にあるスロット550に嵌まり込む大きさに作られている。シャフト593が回転すると、フォーク597が頭部534の可撓性アーム部544に係合して、締結具530を回転させ、骨590の中にねじ込む。
【0056】
図40及び図41は、本発明の更なる好適な実施例に従って締結具630を骨690の中にねじ込む駆動体691を示している。この駆動体691は、図39に示したものと実質的に同一であり、下端695を有するシャフト693と、頭部634のスロット650に嵌り込む大きさに作られた下向きに延びる複数のフォーク697とを含んでいる。該駆動体は、好ましくはシャフト693とフォーク697(図40)との間に雄ねじ部699を含んでいる。該雄ねじ部699は継手要素670の雌ねじ部684と螺合可能に組み合うよう設計されている。このように組み合う駆動体の雄ねじ部699及び雌ねじ部684の係合により、締結具630を骨690の中にねじ込むときに茎用ねじアセンブリ全体が通常安定化する。
【0057】
上に論じた諸特徴を上述のように改変及び組合せたもの、また、その他のように改変及び組合せたものも使用可能であるから、好適な実施例についての上述の説明は、特許請求の範囲に規定された本発明を限定するというよりは、例示であると考えるべきである。
【符号の説明】
【0058】
30 締結具
32 締結具の先端部
34 締結具の頭部
34' 締結具の頭部
44 締結具の外表面
46 締結具の凹所
48 締結具の内表面
50 頭部にあるスロット
52 可撓性アーム部
52' 可撓性アーム部
54 可撓性アーム部にあるタブ
56 インサート
56' インサート
58 インサートの上端
60 インサートの下端
62 インサートの外表面
64 インサートのフランジ部
70 継手要素
70' 継手要素
72 継手要素の上端
74 継手要素の下端
84 頭部を受ける孔
88 継手要素の座部
90 骨
92 整形ロッド
94 ロッド受容開口
96 止めねじ(ロック部材)
130 締結具
132 締結具の先端部
134 締結具の頭部
146 締結具の凹所
150 頭部にあるスロット
152 可撓性アーム部
156 インサート
158 インサートの上端
160 インサートの下端
164 インサートのフランジ部
170 継手要素
188 継手要素の座部
190 骨
192 整形ロッド
194 ロッド受容開口
196 止めねじ(ロック部材)
230 締結具
232 締結具の先端部
234 締結具の頭部
256 インサート
262 インサートの外表面
270 インサート
292 整形ロッド
294 ロッド受容開口
356 インサート
358 インサートの上端
364 インサートのフランジ部
430 締結具
434 締結具の頭部
446 締結具の凹所
452 可撓性アーム部
456 インサート
458 インサートの上端
460 インサートの下端
530 締結具
534 締結具の頭部
544 可撓性アーム部
550 頭部にあるスロット
590 骨
630 締結具
690 骨


【特許請求の範囲】
【請求項1】
茎用ねじアセンブリ用の継手要素であって、
該継手要素が、上端と、下端と、前記上端から前記下端に向かい延びるロッド受容開口とを有しており、
前記継手要素の前記上端及び下端間には、ねじ式締結具を受けるための孔が延びていて、前記継手要素が、把持面を含む外表面を有しており、
前記座部は、前記ねじ式締結具の前記頭部の一部に係合するようになっていて、前記継手要素が、把持面を含む外表面を有している、茎用ねじアセンブリ用の継手要素。
【請求項2】
前記継手要素の前記上端及び下端間に延びる長手方向軸線を有する、請求項1に記載の継手要素。
【請求項3】
前記把持面は、前記継手要素の前記外表面に形成された1つ以上の凹状部を含む、請求項2に記載の継手要素。
【請求項4】
前記1つ以上の凹状部は、前記継手要素の長手方向軸線を横断する方向に延びる、請求項3に記載の継手要素。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2010−279719(P2010−279719A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171998(P2010−171998)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【分割の表示】特願2000−308713(P2000−308713)の分割
【原出願日】平成12年10月10日(2000.10.10)
【出願人】(500520330)
【Fターム(参考)】