説明

草刈り機

【課題】
草等の刈り取り、積み込みの各作業が可能な油圧ショベルの先部に取り付けて作業するアタッチメントに関して、刈り取り、積み込みの各作業をより簡単な作業動作で行うことができる装置を提供する。
【解決手段】
油圧ショベルのアームに支持されたベース部、このベース部に対して左右方向に揺動可能な揺動部、この揺動部に対して限定した角度範囲で回転可能なリスト揺動部、このリスト揺動部には作業具を備え、前記作業具は、草等を刈り取るバリカンを備え、前記バリカンの上部には前記バリカン長手方向と同じ方向の動作で草等を把持できる把持部を備えた草刈り機を使用する。この草刈り機で、バリカン作動し草を刈りながら旋回動作を行うと、バリカン上部に設けられた把持部に草が集草され、把持して積み込みをする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルの先部に取り付けられ、刃物により切断した伐採物を挟んで移動させる伐採物移動機構を備えた草刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
河川敷や工場建設予定地のような広大な土地に雑草等の植物が大量に生えており、これらの植物を手作業で除去するには時間がかかるため、人力用草刈り機によって刈り取り、人力によって集草し、油圧ショベルに把持する装置を取り付け、油圧ショベルによって積み込み搬出する方法がほとんどである。
また、油圧ショベルの先部に回転切断刃を備えた草刈り機、及び草刈り機によって刈り取った草を挟んで移動させる伐採物移動機構を備えた作業機によっても草刈りされるようになった。
【0003】
図8に示すように、特開2002−335733が開示されている。この草刈り機8は、油圧ショベルのアーム81の先部及びバケットシリンダ82に取り付けられたハウジング83に、油圧モーター84に接続され外周に刃物86を備えた円板85を取り付け、また、ハウジング83の後部に把持装置87を取り付けて草刈り及び積み込みも可能な草刈り機である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−335733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の草刈り機は、草を刈る場合、油圧モーター84で刃物86を備えた円板85を回転させるために、草の中に隠れた小石や空き缶を飛散させる。車や建物のガラスなどに小石を飛ばして破損させる恐れがある。また、周りに人がいる場合などケガをさせる恐れがある。よって、使用場所を限定される。また、前記従来の草刈り機は、草を刈った後草が少ない場合は、人力で集草し、草を山状に盛り上げないと把持装置87で挟んで運搬車に積み込むことができず、人力との共同作業が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
運転室を備える上部旋回体に対して上下方向に回動可能に設けられたブームと、前記ブームに対して上下方向回動可能に設けられたアームと、前記アームに支持されたバケットを備え、前記ブーム及びアームの駆動操作により前記バケットで土砂を掘削する建設機械において、前記アームに支持されたベース部、このベース部に対して左右方向に揺動可能な揺動部、この揺動部に対して限定した角度範囲で回転可能なリスト揺動部、このリスト揺動部には作業具を備え、前記作業具は、草等を刈り取るバリカンを備え、前記バリカンの上部には前記バリカン長手方向と同じ方向の動作で草等を把持できる把持部を備えたことを特徴とする草刈り機を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の草刈り機では、刈り取り、積み込みの各作業をより簡単な作業動作で効率よく行うことができる。人力作業においても困難であった急傾斜地の草刈り、集草、積み込み作業が、効率よく行うことができる。油圧駆動のバリカンなので、駆動力が大きく一枚の刃も大きくできるため、雑草だけでなくサトウキビ、トウモロコシ、木の枝落とし、垣根の剪定、街路樹の剪定、細い竹林の伐採、なども可能である。また、バリカン刃なので、小石の飛散もなく安全に作業することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1〜図4において、本実施形態の草刈り機10は、油圧ショベルのアーム先端に連結されるベース部11と、このベース部11に対して左右方向に揺動可能に取り付けられた揺動部20と、この揺動部20に対して限定した角度範囲で回転可能なリスト揺動部30と、このリスト揺動部30には草刈り機10が取り付けられている。草刈り機10は、下部に草刈り用バリカン50を備え、前記バリカン50の上部には曲面の双腕を持つ把持部40を備えている。
【0009】
ベース部11は、上側のピン穴でバケットシリンダ105(図4参照)のロッドに連結されたリンク106とピン結合され、下側のピン穴でアーム107(図4参照)の先端にピン結合され、バケットシリンダ105を伸縮することによりベース部11を下側のピン穴の軸芯Aを中心にしてアーム107に対して上下方向に(図2に図示A軸揺動範囲)揺動する構成となっている。A軸揺動範囲の下げ方向最終端部においては、把持部40にたまった草をバリカン側ではなくて把持部40上方より落とし車などに積み込むことができるようになっている。
また、ベース部11の外側には、揺動部20を揺動する駆動源として揺動部ウォーム減速機21が装着され、揺動部ウォーム減速機21のB軸芯(図2参照)がベース部11上下方向に伸びている。
【0010】
揺動部20は、ベース部11外側にある揺動部ウォーム減速機21を作動させると、B軸芯を中心にしてベース部11に対して左右に揺動する構成となっている。また、図2の中でB軸揺動範囲を図示している。
【0011】
リスト揺動部30は、揺動部20の中ほどより先部に伸びたところにリスト揺動部ウォーム減速機31を設けている。リスト揺動部ウォーム減速機31を作動させるとC軸芯を中心として限定した角度範囲で回転する。図3の中でC軸揺動範囲を図示している。
バリカン刃50が垂直上方から垂直下方まで180度を超える回転角度となっている。
本発明においては、限定した角度範囲で回転するようにしているが、全旋回でもかまわない。しかし、全旋回の場合、バリカン油圧モーターに油圧を送る機構やスイベルジョイント機構など装備が大きく重量も増えるので、限定した角度範囲が望ましい。
【0012】
揺動部B軸芯とリスト揺動部C軸芯とは直交している。この直交している点とA軸芯とは距離が近いほうが、図5の中の準備工程の中でバリカン50を法面に合わせるときの移動量が小さくなる。
【0013】
揺動部ウォーム減速機21とリスト揺動部ウォーム減速機31は、草刈り機10を法面などに合わせる準備工程の中で無負荷状態で姿勢を変えるために動かすだけなので、大きな駆動力を必要としない。よって、油圧ショベルの車載バッテリーの電力でも駆動可能である。しかし、油圧ショベルのオプション配管で上記2つのウォーム減速機を揺動モーターに変えても良い。揺動モーターとは、油圧によって限定された角度範囲で回転、揺動運動する装置である。
【0014】
把持部40は、左右一対の半円筒状の曲面で草を挟むようになっている。駆動源は、ある程度の把持力を必要とするので、市販されている電動油圧ユニット41を装備している。
電動油圧ユニット41は、直流電動機と作動油タンク、ギアポンプ、弁機構、油圧シリンダが一体となりユニット化されて、油圧ショベルのバッテリーから制御スイッチを介して直流電動機を回転させ、ギアポンプで作動油を加圧して油圧シリンダのピストンロッドを伸縮させる構造となっている。
本発明においては、電動油圧ユニットを使用しているが、油圧ショベルのオプション配管より直接油圧を引いて油圧シリンダを伸縮させて駆動するようにしてもかまわない。
【0015】
設置高さ調整車輪60は、法面上を草刈り機10が草を刈りながら移動する際に地面に接触もしくは地面に食い込む場合がある。それを防止するためにバリカン50の長手方向両端部の下側に設置している。法面など接地面とバリカン50との距離を一定に保つ機能を持つ。草を刈る現地の状況に応じて、例えば中山間地の基盤整備事業など行われた地域の法面の草刈りなどは、法面の表面が正確に整地された状態なので、接地高さ調整車輪60の高さ(法面など接地面とバリカンとの距離)を低くしてもバリカン50が地面と接触することはないが、自然のままの手が加えられていない法面などは、法面の表面が平坦ではないので接地高さ調整車輪60の高さを大きくすることが必要である。調整方法は、ねじ構造などで、工具で回転させて調整するような構造とする。
【0016】
図4は、本発明の草刈り機の作業状況図である。上部旋回体101、走行体102、ブーム103、アーム104、バケットシリンダ105、リンク106、エキステンションアーム107、草刈り機10で構成されている。エキステンションアーム107は、上部旋回体101の作業半径を広げるためのもので、標準的なものはアーム104に直接草刈り機10が取り付けられて使用される。
【0017】
図5は、本発明の草刈り機の作業工程を示した図である。図5では、法面が上側にある場合の草刈り方法を示したものである。はじめに、油圧ショベルを刈り取る法面の前面に移動し、進行方向を合わせる。それから次の工程で作業を進める。
準備行程
1.法面に草刈り機を近づけて、A軸を操作して草刈り機を水平にする。
2.B軸を操作して、バリカン長手方向を法面方向に合わせる。
3.C軸を操作して、バリカン底部(草刈り高さ調整車輪)を法面表面に設置させる。
伐採集積行程
1.バリカンを始動して草刈り機を法面に沿って移動させながら草刈りをする。
2.草刈り機が法面上方に移動し、草刈りが終わったらバリカンを停止する。その時把持する面に集草した草が多ければ把持する。
積載行程
草刈り機を移動させて、A軸をダンプ操作して草刈り機を逆さにして車などに積み込む。草を把持している場合は、把持装置を開放操作する。
【0018】
図6は、本発明の草刈り機の作業要領を示した図である。草を刈る法面が上側の場合において、図中上側のcの状態から矢印の方向に刈った場合、草刈り機の把持開口面が下向きになるために、集めた草を把持できない。そのため図中aからbの方向に刈り取りしないとうまく集草出来ない。そこではじめに1.2.3.の順序で刈り取り草を下側に寄せておきそれから4.5.6.の順序で刈り取る。
草を刈る法面が下側の場合において、図中下側dの状態から矢印の方向に刈った場合、草刈り機の把持開口面が水平より傾いているが、最初は集草した草が少なく、eの状態では
把持開口面がほぼ水平になるので草が把持部にうまく集草される。
【0019】
図6の草を刈る法面が下側の場合において、dの状態からfの状態まで草刈り機を移動させるとバリカン面と法面とが合わなくなってくる。これはバリカン面と法面との接触角度が油圧ショベルの旋回動作によって変化するためである。草を刈る法面が上側の場合cの状態から下側へ草刈り機を移動させるばあいも同様にバリカン面と法面が合わなくなってくる。この変化に対応するために、図2の中のA軸を揺動させる必要がある。この動作は油圧ショベルのオペレーターにとって熟練しなければうまく行えない動作である。しかしながら、図6の4.5.6.の動作のように、短い区間を刈り取る場合はA軸の変化量が少ないので揺動させなくとも刈り取り可能である。
【0020】
本発明による草刈り機の刈り取り能力は、バリカンの駆動源を油圧ショベルのオプション配管から油圧源を取っているため(一般的にはブレーカー配管)100ボルトのモーター駆動のバリカンと比較してかなり強力な駆動力がある。そのためバリカンの一枚の刈り刃を大きくすることができ、細い竹や小径木なども切断できる能力を持つ。よって、本発明の草刈り機の用途は、雑草、サトウキビ、トウモロコシ、木の枝落とし、垣根の剪定、街路樹の剪定、細い竹林の伐採、などにも適用できる。図3においてバリカンを上向きに揺動させて下方から上方に操作することによって、縦方向の剪定などに有効である。また、バリカンを下向きに揺動させて把持部を操作することによって、集草した草などを把持して車などに積み込みが可能である。
【0021】
本発明の草刈り機の把持部は、バリカンの上部に設置されて刈った草を曲面の双腕4a、4bでつかむ構造となっている。把持部の応用例としては、図7のような形状も可能である。背丈の高い草、細い竹、サトウキビなどは、曲面の双腕でなくて図7のAおよびBの形状でも落ちることなく刈り取り、移動、積み込みが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の草刈り機の斜視図である。
【図2】本発明の草刈り機の上面図及び正面図である。
【図3】本発明の草刈り機の側面図である。
【図4】本発明の草刈り機の作業状況図である。
【図5】本発明の草刈り機の作業工程を示した図である。
【図6】本発明の草刈り機の作業要領を示した図である。
【図7】本発明の草刈り機の把持部の応用例を示した図である。
【図8】従来技術における草刈り機の側面断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 草刈り機
11 ベース部
20 揺動部
21 揺動部ウォーム減速機
30 リスト揺動部
31 リスト揺動部ウォーム減速機
40 把持部
4a 把持腕
4b 把持腕
41 電動油圧ユニット
50 バリカン部
51 バリカン用油圧モーター
60 草刈り高さ調整車輪

101 上部旋回体
102 走行体
103 ブーム
104 アーム
105 バケットシリンダ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室を備える上部旋回体に対して上下方向に回動可能に設けられたブームと、前記ブームに対して上下方向回動可能に設けられたアームと、前記アームに支持されたバケットを備え、前記ブーム及びアームの駆動操作により前記バケットで土砂を掘削する建設機械において、
前記アームに支持されたベース部、このベース部に対して左右方向に揺動可能な揺動部、この揺動部に対して限定した角度範囲で回転可能なリスト揺動部、このリスト揺動部には作業具を備え、
前記作業具は、草等を刈り取るバリカンを備え、前記バリカンの上部には前記バリカン長手方向と同じ方向の動作で草等を把持できる把持部を備えたことを特徴とする草刈り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−147718(P2012−147718A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8356(P2011−8356)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(304029941)
【Fターム(参考)】