説明

荷物の取込装置および荷物の取込方法

【目的】 荷物の取り込み途中にある障害物を乗り越えて簡単に荷物を取り込むことができる荷物の取込装置を提供する。
【構成】 台車26から立設されるマスト28にデッキ30を昇降可能に取付ける。デッキ30の先端部から水平方向に伸縮可能なガイドレール34を取付ける。ガイドレール34を伸長した場合にデッキ30から腰壁20を越えて相当量だけ延長し、かつ、短縮した場合にデッキ30内に格納できる。デッキ30およびガイドレール34の上面に、一連のローラコンベア36を構成する。デッキ30の基端部にウインチ50を設け、このウインチ50から繰り出されるワイヤー52の先端部に、パレット44を積層した専用パレット48に係止可能なフックを設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、荷物の取込装置、とりわけ、荷物を取り込む途中に所定高さの障害が存在する場合に特に有効な荷物の取込装置および荷物の取込方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、建築現場において資材等の荷物を運搬するために車輪を取付けた台車が知られるが、この台車には例えば実開昭57−106698号公報に開示されるように、荷物を載置するデッキをマストに昇降可能に取付け、更に、このデッキ上で荷物を水平移動できるようになったものがある。従って、このような台車を用いることにより、所定高さにある荷物をデッキに簡単に取り込んで、運搬および荷下ろしすることができ、荷物の取込装置として用いることができる。尚、前記台車ではデッキ上で荷物を移動できる範囲は、重心の関係で最大限前後車輪のスパン間に略限定される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる従来の荷物の取込装置としては、デッキ上での荷物の移動範囲が台車の前後車輪間に限定されるため、荷物を取り込む途中に所定高さの障害物がある場合は、この障害物によって台車の進入が阻止されてデッキ先端部を荷物まで届けることができなくなってしまう。例えば、腰壁が形成された建物の外方にエレベータが構成され、このエレベータに積載されたパレット等の荷物を前記腰壁越しに建物内に取り込む場合、この腰壁が障害物となって前記台車を用いることができない。このため、腰壁越しの取り込みをどうしても非能率的な人手に頼らざるを得ず、この取込作業の大幅な遅延化が来されてしまうという課題があった。
【0004】そこで、本発明はかかる従来の課題に鑑みて、荷物の取り込み途中にある障害物を乗り越えて簡単に荷物を取り込むことができる荷物の取込装置および荷物の取込方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために本発明の荷物の取込装置は、台車から立設されるマストに昇降可能に取り付けられるデッキと、このデッキの先端部から水平方向に伸縮可能なガイドレールと、デッキ基端部に設けられ、伸長状態にある前記ガイドレールの先端部に取り込む荷物にワイヤーを係止して巻き取るウインチと、を備えて構成する。
【0006】また、前記デッキおよび前記ガイドレールの上面に一連のローラコンベアを構成することが望ましい。
【0007】一方、かかる目的を達成するために本発明の荷物の取込方法は、台車から立設されるマストに昇降可能に取り付けられたデッキの先端部からガイドレールを水平方向に伸縮可能に設け、デッキを所定高さに保持した状態でガイドレールを伸長してその先端部を相手側の荷物載置台上に載置し、この状態でデッキ基端部に設けたウインチのワイヤーを荷物に係止してウインチを巻き取ることにより、荷物をガイドレールに沿ってデッキに取り込む。
【0008】
【作用】以上の構成により本発明の荷物の取込装置および荷物の取込方法にあっては、マストに昇降可能に取り付けられたデッキの高さを障害物の高さより高く保持しておき、この状態でデッキの先端部からガイドレールを伸長することにより、このガイドレールは障害物を乗り越えて荷物の載置台に到達する。そして、伸長したガイドレールの先端部を荷物載置台上に載置することにより、このガイドレールはこの荷物載置台とデッキとの間を橋渡しした状態となる。この状態でウインチのワイヤーを荷物に係止して巻取ることにより、荷物はワイヤーに引っ張られてガイドレール上に取り込まれ、更にウインチを巻き取ることにより、荷物はガイドレール上を移動してデッキに簡単に取り込まれる。このように荷物がデッキに取り込まれた後、ガイドレールを短縮しかつデッキを下降することにより、台車の移動および荷下ろしを行うことができる。
【0009】また、前記デッキおよび前記ガイドレールの上面に一連のローラコンベアを構成することにより、ウインチで荷物を引っ張る際の移動抵抗を著しく低減し、荷物の取り込みを迅速に行うことができると共に、ウインチの小型化を図ることができる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明にかかる荷物の取込装置10の一実施例を示す概略構成図で、この取込装置10は建築途中にある多層階ビル12の任意階の床面14に搬入されて用いられる。前記建築途中にある多層階ビル12の外壁16には窓用の開口部18が形成されるようになっており、このため、この開口部18の下側縁の前記外壁16は腰壁20となっている。一方、前記外壁16の外側には、この外壁16に沿ってリフト22が設けられており、このリフト22から前記腰壁20を越えて床面14内に荷物を取り込む際に前記取込装置10が用いられる。
【0011】前記取込装置10は、前後両側に計4個の車輪24を備えた台車26を備え、この台車26の前後一端部の車輪24近傍から立設されるマスト28にデッキ30が昇降可能に取付けられる。前記デッキ30は図外の油圧シリンダにより昇降駆動されるようになっており、このデッキ30の昇降量はマスト28側方に設けた油圧ユニット32により制御される。
【0012】前記デッキ30には、このデッキ30の先端部(図中左端部)から水平方向に伸縮可能なガイドレール34が取付けられる。ガイドレール34はその伸縮方向に複数段に分割されて互いに連結され、図外の駆動手段を介してアンテナ式に伸縮できるようになっている。そして、前記ガイドレール34が伸長された場合にはデッキ30から腰壁20を越えて相当量だけ延長され、かつ、短縮された場合にはデッキ30内に格納できるようになっている。また、前記デッキ30および前記ガイドレール34の上面には、一連のローラコンベア36が構成されると共に、このガイドレール34の先端部下側に補助車輪38が設けられる。
【0013】前記リフト22は、外壁16に沿って組み立てられた外部足場40を利用して構成され、図外のケーブルおよび巻取装置を介してステージ42を昇降できるようになっている。尚、本実施例では前記リフト22によって荷物としてのパレット44を運搬するようになっており、前記ステージ42にはパレット44が多層に積み重ねた状態で載置される。また、前記多層に積層されたパレット44は端部にアイボルト46を取り付けた専用のパレット48に載置される。
【0014】一方、前記デッキ30の基端部(マスト28側)にはウインチ50が設けられ、このウインチ50から繰り出されるワイヤー52の先端部には図外のフックが取り付けられる。そして、前記フックは前記専用パレット48のアイボルト46に係止可能となっている。
【0015】以上の構成により本実施例の取込装置10にあっては、リフト22によって運ばれたパレット44を腰壁20越しに床面14に取り込む場合に、まず、この床面14上の取込装置10を移動して腰壁20の近傍に位置させる。このとき、取込装置10はデッキ30の先端方向が前記腰壁20を志向するように配置される。一方、前記リフト22のステージ42は前記腰壁20の上端より若干高位置に停止されており、このステージ42と略同一高さとなるように前記デッキ30をマスト28に沿って昇降し、その高さに固定される。この状態でガイドレール34を伸長してその先端部を前記ステージ42上に載置する。このとき、ガイドレール34先端部は補助車輪38によって支持される。この状態でデッキ30とステージ42とは、ガイドレール34によって橋渡しされた状態となる。
【0016】また、前記ガイドレール34の伸長に伴ってウインチ50からワイヤー52を繰出し、その先端部に設けたフックを前記ステージ42に載置した専用パレット48のアイボルト46に係止する。そして、前記ウインチ50を作動してワイヤー52を巻き取ることにより、前記専用パレット48はパレット44を積層した状態で引っ張られ、ガイドレール34の先端部に取り込まれる。更に前記ワイヤー52を巻き取ることにより、専用パレット48はガイドレール34上を移動してデッキ30に簡単に取り込まれる。このとき、前記ガイドレール34および前記デッキ30の上面にはローラコンベア36を構成してあるので、前記専用パレット48が多層のパレット44を積層してその重量が大きくなった場合にも、この専用パレット48の移動抵抗を減少して、パレット44の取り込みを簡単かつ迅速に行うことができると共に、ウインチ50の動力を小さくして小型化を図ることができる。
【0017】ところで、この実施例では前記取込装置10を所定の取込位置に配置した際に車輪24をロックして、台車26が移動するのを阻止すると共に、台車26の後方(図中右方)の床面14にアイボルト54を取り付け、このアイボルト54とマスト28の上端部とをロープ56によって繋ぐことにより、パレット44の取り込み途中において台車26が転倒するのを防止するようにしてある。
【0018】そして、前記デッキ30にパレット44が取り込まれた状態で、ガイドレール34を短縮してこのデッキ30内に格納すると共に、マスト28に沿ってデッキ30を下降し、かつ、マスト28上端部を固定するロープ56を取り外しておくことにより、台車26は床面14上を自由に移動して任意の場所にパレット44を積み下ろすことができる。ところで、このように腰壁20越しにパレット44等の荷物を取り込むに、前記取込装置10を用いることにより簡単かつ迅速に行うことができ、しかも、この取込装置10が、マスト28に昇降可能に設けたデッキ30にガイドレール34を伸縮可能に設けることにより達成されるため、この取込装置10自体の構造を簡単化し、かつ、小型軽量化を図ることができる。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように本発明にかかる荷物の取込装置および荷物の取込方法にあっては、取込装置を、台車から立設されるマストに昇降可能にデッキを取り付け、このデッキの先端部から水平方向に伸縮可能なガイドレールを設け、かつ、デッキ基端部に、荷物に係止したワイヤーを巻き取るウインチを設けて構成し、デッキを所定高さに保持した状態でガイドレールを伸長してその先端部を相手側の荷物載置台上に載置し、この状態でウインチのワイヤーを荷物に係止してウインチを巻き取ることにより、荷物をガイドレールに沿ってデッキに取り込むことができる。従って、荷物の取り込み途中に障害物が存在する場合にも、前記デッキを所定高さに保持した状態でガイドレールを伸長することにより、この障害物を乗り越えて簡単に荷物を取り込むことができ、この取込作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0020】また、本発明において前記デッキおよび前記ガイドレールの上面に一連のローラコンベアを構成することにより、ウインチで荷物を引っ張る際の移動抵抗を著しく低減し、荷物の取り込みを更に迅速に行うことができると共に、ウインチの小型化を図ることができるという各種優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる荷物の取込装置の一実施例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
10 取込装置
20 腰壁(障害物)
26 台車
28 マスト
30 デッキ
34 ガイドレール
36 ローラコンベア
44 パレット(荷物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 台車から立設されるマストに昇降可能に取り付けられるデッキと、このデッキの先端部から水平方向に伸縮可能なガイドレールと、デッキ基端部に設けられ、伸長状態にある前記ガイドレールの先端部に取り込む荷物にワイヤーを係止して巻き取るウインチと、を備えたことを特徴とする荷物の取込装置。
【請求項2】 前記デッキおよび前記ガイドレールの上面に一連のローラコンベアを構成したことを特徴とする請求項1に記載の荷物の取込装置。
【請求項3】 台車から立設されるマストに昇降可能に取り付けられたデッキの先端部からガイドレールを水平方向に伸縮可能に設け、デッキを所定高さに保持した状態でガイドレールを伸長してその先端部を相手側の荷物載置台上に載置し、この状態でデッキ基端部に設けたウインチのワイヤーを荷物に係止してウインチを巻き取ることにより、荷物をガイドレールに沿ってデッキに取り込むことを特徴とする荷物の取込方法。

【図1】
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【公開番号】特開平6−239414
【公開日】平成6年(1994)8月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−25433
【出願日】平成5年(1993)2月15日
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)