荷電分子の輸送のための、ないし結合特異的分離のための方法及び装置
DNAセンサを作り出すためには荷電分子が輸送されなければならない。本発明によれば、以下の手段が行われる。即ち、卑金属が正のイオンとして溶液中に与えられ、それによって負に荷電された分子が反対方向に輸送され、測定電極の近傍に蓄積される。溶液からの金属イオンの蓄積により測定電極上に金属層が生成されることによって、適切な電位が与えられる場合には荷電分子の結合特異的分離が達成される。従って特に、目標DNAが測定電極のキャッチャー分子の近傍に与えられ、非特異的に結合されたDNAも取り除けられる。所属の装置においては、電極装置(20、30)に、測定電極(20、30)の材料より卑の金属からなる犠牲電極(40)が付属せしめられる。測定電極(20、30)は特に貴金属、とりわけ金からなり、犠牲電極(40)は銅からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に2つの測定電極間でレドックス(酸化還元)サイクリング・プロセスによりDNAセンサを作動させる際に、水溶液中において荷電分子を輸送するための、ないし結合特異的分離のための方法及び装置に関する。さらに本発明はその所属の装置に関する。
【0002】
分子生物学の多数の方法においては、電界内の荷電粒子の輸送(移動)が重要な役割を演ずる。その際液状の媒体中の荷電粒子の移動速度vは、電界の強さEとイオン電荷Qとに比例し、粒子半径rと懸濁液の粘性ηに逆比例する。移動速度vに対し次式が成立する。
v=QE/6πrη (1)
【0003】
例えば電気泳動においては、生体分子、即ちとりわけ、大きさや電荷に関して異なる蛋白質及びDNAは互いに分離される。他の可動性の荷電粒子が存在することは、電気泳動的分離の特定の形(例えば等電位の焦点合わせ)においては避けられねばならない。何故ならさもないと電荷輸送は部分的にまたは全部がこの他の荷電粒子によって引き受けられ、分離すべき分子によっては引き受けられないからである。それ故緩衝剤として、等電位点を所望のpH値において持つアミノ酸が使用される。即ち、設定されたpH値においては緩衝剤分子そのものは正味電荷を持たず、それ故移動に支配されない。
【0004】
例えば特定の場所における濃度を上げるか下げるための荷電分子の輸送においても電界が使用される。特にマイクロセンサにおいて例えばDNA分析のために、検出すべきDNA断片(目標分子)がキャッチャー分子の場所(センサ表面)において濃縮されると感度を上昇させることができる。従って質量作用の法則に基づき、キャッチャー分子/目標分子結合の数は上昇する。あらゆる場合に、しかしながらこのような反応においては、互いにぴったり合うキャッチャー分子/目標分子対が形成されるのみならず、その連続が若干の個所において互いに正確には一致しない(ミスマッチ)ようなものも形成される。
【0005】
結合エネルギーの大きさは一致しないベースの数と共に減少するから、相応する力を使用することによって、特定の数のミスマッチを所有するような結合を再び選択的に分離することができる(厳格処理)。この場合力としては、第1のプロセスである分子の濃縮とは異なり反対向きの極性を持った電界が効力を有する。
【0006】
電界における荷電粒子の輸送のための前提条件は、電解質ないし輸送路内において厳密に単調に経過する電界勾配である。即ち、電界勾配はその符号を変えてはならず、0になってはならない。任意の電圧の印加はそのため水性のシステムに対しては必然的に十分ではない。電極の前の化学反応が存在しない場合には、電圧は電気化学的二重層にかかり、電極間の電界勾配は0になる。むろん電極において還元反応ないし酸化反応が行われる場合には、電極の前の二重層は消極され、電界は電解質内で厳密に単調に経過する。結果は水性の電解質におけるイオン輸送である。
【0007】
水性のシステムにおけるこのような電界を生成するためのしばしば使用される方法は、水の分解電圧の印加である。その際アノードには酸素、カソードには水素が発生される。実験的実施の場合には、ガス及び特にその遊離基的前駆体が検査すべき分子と接触しないように注意されなければならない。何故ならさもなければこの検査すべき分子が化学的に変化するかもしれないからである。巨視的なシステムにおいてはこのことは、電極のすぐ前の電解質スペースを電極間の電解質スペースから例えば隔膜によって分離することによって行われる。この解決法はマイクロセンサに対しては問題が多い。何故なら隔膜は実用的ではないからである。
【0008】
マイクロシステムにおける電気泳動のための1つの可能性は、親水性のポリマーからなるいわゆる浸透層が電極の前に挿入されることにあり、そのことは米国特許出願公開第5605662号明細書に示されている。水の電気分解及びDNAの反応生成物の移動度はこの層において著しく抑制され、その結果混和はほとんど行われない。浸透層における電荷輸送はより小さなイオンによって引き受けられる。
【0009】
既知の方法は有効であるにかかわらず、新しいポリマー層の挿入によってマイクロセンサシップの製造が明らかに費用がかかり従って高価となる。
【0010】
本発明の課題は、電界によって荷電分子を輸送するための適切な方法であって、電極に水素や酸素が発生しない方法を示すことにある。また本発明は、電気泳動法を利用し、チップ製造の標準材料及び層で処理できる対応する装置を提供することにある。
【0011】
この課題は、方法に関しては特許請求の範囲の請求項1または請求項12によって解決される。それに属する装置は請求項15に示されている。方法ないし装置のさらに発展させた構成は、それぞれの従属請求項に示されている。
【0012】
本発明による装置においては、原則的に同じ構成により自由選択で請求項1に基づく本発明の方法または請求項12に基づく本発明の方法を実施することができる。その際両方法を互いに組み合わせる、例えば周期的に組み合わせることも有利に可能である。
【0013】
本発明は、電気泳動法を使用する際に、分析溶液中に電界を生成するため水の電気分解のほかに他の反応を挿入し得ることを利用するものである。本発明によれば、金属/金属イオン複合体、例えば銅/銅ヒスチジン複合体が電極の前の消極剤として提案される。負に荷電されたイオンを集積する目的で銅で被覆された電極を正に分極する際に、酸素は生ぜず、その代わりに銅がイオンとして溶液中に入る。そこに金属に対する錯化剤、例えば銅に対するヒスチジンが存在するならば、金属イオンは安定に溶液中にとどまる。例えば銅・ヒスチジン錯体は極めて安定であるから、自由な銅イオンの濃度は極めて小さくかつほぼ一定にとどまる。銅イオンのDNAハイブリダイゼイションへの影響はそれによって避けられる。
【0014】
例えばキャッチャー分子/目標分子結合の選択性を高める(厳格処理)、即ち非特異的に結合され、非相補的な試料DNAをキャッチャーDNAから遠ざけるために、電極が負に分極されるべき場合には、十分に貴の金属、例えば銅の金属イオン錯体が存在する場合、金属イオンは還元され、その場合電極(この場合測定電極)上に分離される。水素の発生はそれによって避けられる。金属イオンのための錯化剤は場合によっては同時に緩衝剤としても使用することができる。ヒスチジンは例えばpH=7の際緩衝剤として使用される。測定電極上に分離された銅は、洗浄ステップにおいて負の電位を新たに印加することによって取り除くことができる。目標分子の破損は、高いイオン強度の洗浄溶液が使用されることによって阻止され、その結果、例えばCu2+イオンの形の銅のみが取り除かれるが、目標DNAは動かされない。
【0015】
金属/金属イオン錯体に基づく電気泳動法の利点は、電界を生成するために必要な電圧が僅かであるということにある。その電圧は水の電気分解電圧より低く、その結果水電気分解の攻撃的な生成物は生じ得ない。従って電気分解スペースと電気泳動スペースとの分離が不必要となる。それにもかかわらず、生じる電界は、分析において所望の分子を輸送するために十分である。
【0016】
銅は既に今日導体路のために使用され、今後センサ利用ないしマイクロ電気泳動のようなマイクロシステム技術利用のための電極材料として使用され得る。それ故そのようなマイクロシステムの製造において、半導体技術のコスト的に有利な標準法を用いることができる。
【0017】
本発明のその他の詳細及び利点は、特許請求の範囲と関連して図面に示す実施例の説明から明らかである。
【0018】
図1から、生化学的測定を実施するための一般的な装置の原理的構成が明らかである。1は平らな、例えばシリコンからなる基板で、その上には例えば酸化ケイ素(SiO2)からなる薄い絶縁層2が設けられている。この装置上には2つの測定電極20及び30があり、これらの電極は好ましくは貴金属、特に金からなっている。全測定装置は水溶液15と接触している。
【0019】
水溶液15中には負に荷電された巨大(マクロ)分子があり、そのことは図1にはもつれた糸構造により示され、それはさらに図5において詳細に200、200´で示されている。負に荷電された分子は測定電極20、30に輸送されるべきもので、以下では目標分子ともいわれる。DNA分析の場合には目標分子は検査すべきDNAである。例えばヒドロゲル層35中に固定されているキャッチャー分子を介して、目標DNAは測定目的のため電極20、30の近傍に蓄積され得る。
【0020】
水溶液15中にはさらに、水溶液内で安定でかつ測定電極の金属より卑の材料が存在する。最も一般的な場合、その材料は金属/金属イオン(Me/Me+)結合、例えばCu/Cu2+である。このことは、所定の電位比に相応して、金属性の銅Cu0が2つの電子を放出して溶解されるか、銅(II)イオンCu2+が2つの電子を吸収して分離され得るかということを意味し、その際次式が成立する。
Cu0⇔Cu+++2e (2)
【0021】
図5に従う装置においては、犠牲電極40として銅電極を使用する場合、正電位を印加することによってCu2+が溶液中に入る。それによってそこでは負の目標分子200が銅電極40に向け動き、その近傍において、従って測定電極20、30の領域においても蓄積される。
【0022】
水溶液中にCu2+イオンが存在する場合に図6に従って適切な負の電位が加えられる場合には、完全ではない相補性に基づいて低下した結合強さを有するようなキャッチャー分子/目標DNA結合はほどける。その際同時に測定電極における銅(II)イオン(Cu2+)が金属性の銅(Cu0)に還元される。
【0023】
一方では図5a、5bに基づいて、他方では図6a、6b及び図7に基づいて、図1に原理的にのみ示された別の可能性に従う方法に関するプロセスが説明される。特に図5a〜6bにはセンサ面21及び31を有する測定電極20及び30上にはそれぞれヒドロゲル層35が設けられ、この層内にはヒドロゲル層35の外側に存在する目標分子200のためのキャッチャー分子100が閉じ込まれている。この場合、キャッチャー分子100が目標分子200を捕らえるか結合し、それによってセンサ面21ないし31における分析に供することが重要である。この手法については例えば本出願人の先願のPCT/DE02/01982号明細書に示されている。
【0024】
キャッチャー分子100は、例えば特殊なチオール基修飾オリゴヌクレオチドであり得る。キャッチャー分子100と結合されるべき目標分子200は分析すべきDNAである。
【0025】
一般に、既知の測定装置においては図5aに従う状態が存在し、この状態では目標DNAは僅かな濃度でしかキャッチャーDNA上に存在しない。この場合信頼するに足る測定結果に到達することは困難である。これに対し図5bに従う装置においては、目標DNAは高い濃度でキャッチャーDNA上にあり、それはDNA蓄積によって達成される。この状態で良好な測定結果を得ることができる。
【0026】
キャッチャーDNAには、図6aに従い、相補性の目標DNA200のほかに完全に相補性でないDNA断片200´も結合する。厳格処理によって、非特異的に結合されたDNAは電極にそれぞれ適切な電位を加えることによって選択的に取り除くことができる。非特異的に結合されたDNAはその弱い結合力によって突き放される。
【0027】
図1並びに図5a及び5bから、補助電極40に特有の電位を印加することによって目標DNAの所望の蓄積が得られることが明白である。それに関して詳細には、卑金属、例えば銅からなる補助電極40が選ばれ、補助電極40には正の電位が加えられる。全装置が
水溶液中にある場合にはCu2+イオンは溶液中に入る。それによって電界勾配が生じ、負に荷電されたDNA分子が引き寄せられる。
【0028】
後者のプロセスは主として図7により明らかにされる。特にここでは、溶液中に与えられた銅イオンが錯化されることが明らかである、そのためヒスチジン分子70が使用される。
【0029】
図1並びに図6a及び6bから、測定電極20、30及び補助電極40、45に特有の電位を印加することによってDNAの所望の選択が得られることが明白である。詳細には、測定電極は負の、補助電極は正の極性が与えられる。全装置が銅(II)イオン(Cu2+)を含む水溶液中にある場合には、このイオンは測定電極20、30上で金属性の銅(Cu0)に還元される。それによって、電界勾配が生じ、負に荷電され完全には相補性でないDNAは突き放される。
【0030】
両代替方法は別々にまたは組み合わせて進行することができる。先ず目標分子が蓄積され、次いで選択される。しかしまた、選択のみを行うこともできる。
【0031】
図2〜4にはセンサ装置の種々の変形が示されている。図2においては金から形成された測定電極20、30が金のセンサ自由面21、31を有し、この面にキャッチャーDNA100が結合される。それとは異なり、図3においてはキャッチャーDNA100を含むヒドロゲル35が存在する。特に図4においては、本来の測定電極20及び30のほかにさらに金からなる反応自由面50が存在し、この面にキャッチャーDNA100が密集した配置で結合されている。このことは、キャッチャーDNAの大きな密度という利点を有する。もちろん反応面50の製造にあたっては先ず測定電極20、30が銅等によって覆われ、そこにキャッチャーDNA100が蓄積されるのを阻止するようにしなければならない。図4においてはそのため銅層22及び32が存在する。図2〜4に従うすべての装置においては、それぞれ犠牲電極40が測定電極20及び30の近傍に配置されており、それによって銅の溶液侵入により電界勾配を作り上げ、従って測定電極20及び30の近傍における目標DNA200の蓄積を生じさせる。従って結果において測定精度が著しく改善される。
【0032】
図8〜10において、図2〜4に従う測定センサの種々の変形が平面図で示されている。特に図8には、互いに噛み合うフィンガー電極を有する2つの櫛状電極82及び83からなる測定センサ80が存在し、単一の犠牲電極84が櫛状電極の周りにリング状に配置されている。
【0033】
相応のことは図9にも示され、そこでは櫛状電極の領域はヒドロゲル層85でおおわれている。このようなヒドロゲル層は全測定装置上にあってよい。特に図10においてはさらに反応層86がキャッチャー分子の蓄積のために存在している。
【0034】
図8〜10に従う個別センサから、n行、m列を持ったアレイを構想することができる。図11及び12から、n-mアレイを表す多数の測定センサ80、80´…を有する全部揃った装置が示されている。その場合原理的には、図8〜10の1つに相応して個別位置を持ったアレイを作り上げることが可能であり、各個別位置がリング状の銅製犠牲電極84を持っている。その際個別位置を有する全m-n装置の周りに別のリングとして補助電極185が配置されている。
【0035】
図11に従えば、全部揃った装置180が容器、例えば、蓋120、流入口121及び流出口122を有する貫流路150内に存在している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の方法を実施するための原理的な構成の説明図である。
【図2】本発明の異なる構成の断面図である。
【図3】本発明の異なる構成の断面図である。
【図4】本発明の異なる構成の断面図である。
【図5】図3に示す構成に基づき低い濃度の目標分子を高い濃度の目標分子へ蓄積する説明図である。
【図6】図5において、非特異的の、即ち非相補性の試料DNAが存在し、いわゆる厳格処理の支配下にある状態の説明図である。
【図7】本発明により犠牲電極及び錯化剤を使用する場合の電極プロセスの説明図である。
【図8】測定電極の形態の平面図である。
【図9】測定電極の異なる形態の平面図である。
【図10】測定電極のさらに異なる形態の平面図である。
【図11】相並んで配置された測定位置を有する測定装置の断面図である。
【図12】図8に相応して個々の位置から形成されたアレイ装置の平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 基板
2 絶縁層
15 水溶液
20、30 測定電極
21、31 センサ面
22、32 銅層
35 ヒドロゲル層
40 補助電極(犠牲電極)
45 補助電極
50 反応自由面
100 キャッチャー分子
200 巨大分子(目標分子)
82、83 櫛状電極
84 犠牲電極
85 補助電極
120 蓋
121 流入口
122 流出口
150 貫流路
180 装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に2つの測定電極間でレドックス(酸化還元)サイクリング・プロセスによりDNAセンサを作動させる際に、水溶液中において荷電分子を輸送するための、ないし結合特異的分離のための方法及び装置に関する。さらに本発明はその所属の装置に関する。
【0002】
分子生物学の多数の方法においては、電界内の荷電粒子の輸送(移動)が重要な役割を演ずる。その際液状の媒体中の荷電粒子の移動速度vは、電界の強さEとイオン電荷Qとに比例し、粒子半径rと懸濁液の粘性ηに逆比例する。移動速度vに対し次式が成立する。
v=QE/6πrη (1)
【0003】
例えば電気泳動においては、生体分子、即ちとりわけ、大きさや電荷に関して異なる蛋白質及びDNAは互いに分離される。他の可動性の荷電粒子が存在することは、電気泳動的分離の特定の形(例えば等電位の焦点合わせ)においては避けられねばならない。何故ならさもないと電荷輸送は部分的にまたは全部がこの他の荷電粒子によって引き受けられ、分離すべき分子によっては引き受けられないからである。それ故緩衝剤として、等電位点を所望のpH値において持つアミノ酸が使用される。即ち、設定されたpH値においては緩衝剤分子そのものは正味電荷を持たず、それ故移動に支配されない。
【0004】
例えば特定の場所における濃度を上げるか下げるための荷電分子の輸送においても電界が使用される。特にマイクロセンサにおいて例えばDNA分析のために、検出すべきDNA断片(目標分子)がキャッチャー分子の場所(センサ表面)において濃縮されると感度を上昇させることができる。従って質量作用の法則に基づき、キャッチャー分子/目標分子結合の数は上昇する。あらゆる場合に、しかしながらこのような反応においては、互いにぴったり合うキャッチャー分子/目標分子対が形成されるのみならず、その連続が若干の個所において互いに正確には一致しない(ミスマッチ)ようなものも形成される。
【0005】
結合エネルギーの大きさは一致しないベースの数と共に減少するから、相応する力を使用することによって、特定の数のミスマッチを所有するような結合を再び選択的に分離することができる(厳格処理)。この場合力としては、第1のプロセスである分子の濃縮とは異なり反対向きの極性を持った電界が効力を有する。
【0006】
電界における荷電粒子の輸送のための前提条件は、電解質ないし輸送路内において厳密に単調に経過する電界勾配である。即ち、電界勾配はその符号を変えてはならず、0になってはならない。任意の電圧の印加はそのため水性のシステムに対しては必然的に十分ではない。電極の前の化学反応が存在しない場合には、電圧は電気化学的二重層にかかり、電極間の電界勾配は0になる。むろん電極において還元反応ないし酸化反応が行われる場合には、電極の前の二重層は消極され、電界は電解質内で厳密に単調に経過する。結果は水性の電解質におけるイオン輸送である。
【0007】
水性のシステムにおけるこのような電界を生成するためのしばしば使用される方法は、水の分解電圧の印加である。その際アノードには酸素、カソードには水素が発生される。実験的実施の場合には、ガス及び特にその遊離基的前駆体が検査すべき分子と接触しないように注意されなければならない。何故ならさもなければこの検査すべき分子が化学的に変化するかもしれないからである。巨視的なシステムにおいてはこのことは、電極のすぐ前の電解質スペースを電極間の電解質スペースから例えば隔膜によって分離することによって行われる。この解決法はマイクロセンサに対しては問題が多い。何故なら隔膜は実用的ではないからである。
【0008】
マイクロシステムにおける電気泳動のための1つの可能性は、親水性のポリマーからなるいわゆる浸透層が電極の前に挿入されることにあり、そのことは米国特許出願公開第5605662号明細書に示されている。水の電気分解及びDNAの反応生成物の移動度はこの層において著しく抑制され、その結果混和はほとんど行われない。浸透層における電荷輸送はより小さなイオンによって引き受けられる。
【0009】
既知の方法は有効であるにかかわらず、新しいポリマー層の挿入によってマイクロセンサシップの製造が明らかに費用がかかり従って高価となる。
【0010】
本発明の課題は、電界によって荷電分子を輸送するための適切な方法であって、電極に水素や酸素が発生しない方法を示すことにある。また本発明は、電気泳動法を利用し、チップ製造の標準材料及び層で処理できる対応する装置を提供することにある。
【0011】
この課題は、方法に関しては特許請求の範囲の請求項1または請求項12によって解決される。それに属する装置は請求項15に示されている。方法ないし装置のさらに発展させた構成は、それぞれの従属請求項に示されている。
【0012】
本発明による装置においては、原則的に同じ構成により自由選択で請求項1に基づく本発明の方法または請求項12に基づく本発明の方法を実施することができる。その際両方法を互いに組み合わせる、例えば周期的に組み合わせることも有利に可能である。
【0013】
本発明は、電気泳動法を使用する際に、分析溶液中に電界を生成するため水の電気分解のほかに他の反応を挿入し得ることを利用するものである。本発明によれば、金属/金属イオン複合体、例えば銅/銅ヒスチジン複合体が電極の前の消極剤として提案される。負に荷電されたイオンを集積する目的で銅で被覆された電極を正に分極する際に、酸素は生ぜず、その代わりに銅がイオンとして溶液中に入る。そこに金属に対する錯化剤、例えば銅に対するヒスチジンが存在するならば、金属イオンは安定に溶液中にとどまる。例えば銅・ヒスチジン錯体は極めて安定であるから、自由な銅イオンの濃度は極めて小さくかつほぼ一定にとどまる。銅イオンのDNAハイブリダイゼイションへの影響はそれによって避けられる。
【0014】
例えばキャッチャー分子/目標分子結合の選択性を高める(厳格処理)、即ち非特異的に結合され、非相補的な試料DNAをキャッチャーDNAから遠ざけるために、電極が負に分極されるべき場合には、十分に貴の金属、例えば銅の金属イオン錯体が存在する場合、金属イオンは還元され、その場合電極(この場合測定電極)上に分離される。水素の発生はそれによって避けられる。金属イオンのための錯化剤は場合によっては同時に緩衝剤としても使用することができる。ヒスチジンは例えばpH=7の際緩衝剤として使用される。測定電極上に分離された銅は、洗浄ステップにおいて負の電位を新たに印加することによって取り除くことができる。目標分子の破損は、高いイオン強度の洗浄溶液が使用されることによって阻止され、その結果、例えばCu2+イオンの形の銅のみが取り除かれるが、目標DNAは動かされない。
【0015】
金属/金属イオン錯体に基づく電気泳動法の利点は、電界を生成するために必要な電圧が僅かであるということにある。その電圧は水の電気分解電圧より低く、その結果水電気分解の攻撃的な生成物は生じ得ない。従って電気分解スペースと電気泳動スペースとの分離が不必要となる。それにもかかわらず、生じる電界は、分析において所望の分子を輸送するために十分である。
【0016】
銅は既に今日導体路のために使用され、今後センサ利用ないしマイクロ電気泳動のようなマイクロシステム技術利用のための電極材料として使用され得る。それ故そのようなマイクロシステムの製造において、半導体技術のコスト的に有利な標準法を用いることができる。
【0017】
本発明のその他の詳細及び利点は、特許請求の範囲と関連して図面に示す実施例の説明から明らかである。
【0018】
図1から、生化学的測定を実施するための一般的な装置の原理的構成が明らかである。1は平らな、例えばシリコンからなる基板で、その上には例えば酸化ケイ素(SiO2)からなる薄い絶縁層2が設けられている。この装置上には2つの測定電極20及び30があり、これらの電極は好ましくは貴金属、特に金からなっている。全測定装置は水溶液15と接触している。
【0019】
水溶液15中には負に荷電された巨大(マクロ)分子があり、そのことは図1にはもつれた糸構造により示され、それはさらに図5において詳細に200、200´で示されている。負に荷電された分子は測定電極20、30に輸送されるべきもので、以下では目標分子ともいわれる。DNA分析の場合には目標分子は検査すべきDNAである。例えばヒドロゲル層35中に固定されているキャッチャー分子を介して、目標DNAは測定目的のため電極20、30の近傍に蓄積され得る。
【0020】
水溶液15中にはさらに、水溶液内で安定でかつ測定電極の金属より卑の材料が存在する。最も一般的な場合、その材料は金属/金属イオン(Me/Me+)結合、例えばCu/Cu2+である。このことは、所定の電位比に相応して、金属性の銅Cu0が2つの電子を放出して溶解されるか、銅(II)イオンCu2+が2つの電子を吸収して分離され得るかということを意味し、その際次式が成立する。
Cu0⇔Cu+++2e (2)
【0021】
図5に従う装置においては、犠牲電極40として銅電極を使用する場合、正電位を印加することによってCu2+が溶液中に入る。それによってそこでは負の目標分子200が銅電極40に向け動き、その近傍において、従って測定電極20、30の領域においても蓄積される。
【0022】
水溶液中にCu2+イオンが存在する場合に図6に従って適切な負の電位が加えられる場合には、完全ではない相補性に基づいて低下した結合強さを有するようなキャッチャー分子/目標DNA結合はほどける。その際同時に測定電極における銅(II)イオン(Cu2+)が金属性の銅(Cu0)に還元される。
【0023】
一方では図5a、5bに基づいて、他方では図6a、6b及び図7に基づいて、図1に原理的にのみ示された別の可能性に従う方法に関するプロセスが説明される。特に図5a〜6bにはセンサ面21及び31を有する測定電極20及び30上にはそれぞれヒドロゲル層35が設けられ、この層内にはヒドロゲル層35の外側に存在する目標分子200のためのキャッチャー分子100が閉じ込まれている。この場合、キャッチャー分子100が目標分子200を捕らえるか結合し、それによってセンサ面21ないし31における分析に供することが重要である。この手法については例えば本出願人の先願のPCT/DE02/01982号明細書に示されている。
【0024】
キャッチャー分子100は、例えば特殊なチオール基修飾オリゴヌクレオチドであり得る。キャッチャー分子100と結合されるべき目標分子200は分析すべきDNAである。
【0025】
一般に、既知の測定装置においては図5aに従う状態が存在し、この状態では目標DNAは僅かな濃度でしかキャッチャーDNA上に存在しない。この場合信頼するに足る測定結果に到達することは困難である。これに対し図5bに従う装置においては、目標DNAは高い濃度でキャッチャーDNA上にあり、それはDNA蓄積によって達成される。この状態で良好な測定結果を得ることができる。
【0026】
キャッチャーDNAには、図6aに従い、相補性の目標DNA200のほかに完全に相補性でないDNA断片200´も結合する。厳格処理によって、非特異的に結合されたDNAは電極にそれぞれ適切な電位を加えることによって選択的に取り除くことができる。非特異的に結合されたDNAはその弱い結合力によって突き放される。
【0027】
図1並びに図5a及び5bから、補助電極40に特有の電位を印加することによって目標DNAの所望の蓄積が得られることが明白である。それに関して詳細には、卑金属、例えば銅からなる補助電極40が選ばれ、補助電極40には正の電位が加えられる。全装置が
水溶液中にある場合にはCu2+イオンは溶液中に入る。それによって電界勾配が生じ、負に荷電されたDNA分子が引き寄せられる。
【0028】
後者のプロセスは主として図7により明らかにされる。特にここでは、溶液中に与えられた銅イオンが錯化されることが明らかである、そのためヒスチジン分子70が使用される。
【0029】
図1並びに図6a及び6bから、測定電極20、30及び補助電極40、45に特有の電位を印加することによってDNAの所望の選択が得られることが明白である。詳細には、測定電極は負の、補助電極は正の極性が与えられる。全装置が銅(II)イオン(Cu2+)を含む水溶液中にある場合には、このイオンは測定電極20、30上で金属性の銅(Cu0)に還元される。それによって、電界勾配が生じ、負に荷電され完全には相補性でないDNAは突き放される。
【0030】
両代替方法は別々にまたは組み合わせて進行することができる。先ず目標分子が蓄積され、次いで選択される。しかしまた、選択のみを行うこともできる。
【0031】
図2〜4にはセンサ装置の種々の変形が示されている。図2においては金から形成された測定電極20、30が金のセンサ自由面21、31を有し、この面にキャッチャーDNA100が結合される。それとは異なり、図3においてはキャッチャーDNA100を含むヒドロゲル35が存在する。特に図4においては、本来の測定電極20及び30のほかにさらに金からなる反応自由面50が存在し、この面にキャッチャーDNA100が密集した配置で結合されている。このことは、キャッチャーDNAの大きな密度という利点を有する。もちろん反応面50の製造にあたっては先ず測定電極20、30が銅等によって覆われ、そこにキャッチャーDNA100が蓄積されるのを阻止するようにしなければならない。図4においてはそのため銅層22及び32が存在する。図2〜4に従うすべての装置においては、それぞれ犠牲電極40が測定電極20及び30の近傍に配置されており、それによって銅の溶液侵入により電界勾配を作り上げ、従って測定電極20及び30の近傍における目標DNA200の蓄積を生じさせる。従って結果において測定精度が著しく改善される。
【0032】
図8〜10において、図2〜4に従う測定センサの種々の変形が平面図で示されている。特に図8には、互いに噛み合うフィンガー電極を有する2つの櫛状電極82及び83からなる測定センサ80が存在し、単一の犠牲電極84が櫛状電極の周りにリング状に配置されている。
【0033】
相応のことは図9にも示され、そこでは櫛状電極の領域はヒドロゲル層85でおおわれている。このようなヒドロゲル層は全測定装置上にあってよい。特に図10においてはさらに反応層86がキャッチャー分子の蓄積のために存在している。
【0034】
図8〜10に従う個別センサから、n行、m列を持ったアレイを構想することができる。図11及び12から、n-mアレイを表す多数の測定センサ80、80´…を有する全部揃った装置が示されている。その場合原理的には、図8〜10の1つに相応して個別位置を持ったアレイを作り上げることが可能であり、各個別位置がリング状の銅製犠牲電極84を持っている。その際個別位置を有する全m-n装置の周りに別のリングとして補助電極185が配置されている。
【0035】
図11に従えば、全部揃った装置180が容器、例えば、蓋120、流入口121及び流出口122を有する貫流路150内に存在している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の方法を実施するための原理的な構成の説明図である。
【図2】本発明の異なる構成の断面図である。
【図3】本発明の異なる構成の断面図である。
【図4】本発明の異なる構成の断面図である。
【図5】図3に示す構成に基づき低い濃度の目標分子を高い濃度の目標分子へ蓄積する説明図である。
【図6】図5において、非特異的の、即ち非相補性の試料DNAが存在し、いわゆる厳格処理の支配下にある状態の説明図である。
【図7】本発明により犠牲電極及び錯化剤を使用する場合の電極プロセスの説明図である。
【図8】測定電極の形態の平面図である。
【図9】測定電極の異なる形態の平面図である。
【図10】測定電極のさらに異なる形態の平面図である。
【図11】相並んで配置された測定位置を有する測定装置の断面図である。
【図12】図8に相応して個々の位置から形成されたアレイ装置の平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 基板
2 絶縁層
15 水溶液
20、30 測定電極
21、31 センサ面
22、32 銅層
35 ヒドロゲル層
40 補助電極(犠牲電極)
45 補助電極
50 反応自由面
100 キャッチャー分子
200 巨大分子(目標分子)
82、83 櫛状電極
84 犠牲電極
85 補助電極
120 蓋
121 流入口
122 流出口
150 貫流路
180 装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に2つの測定電極間でレドックス・サイクリングプロセスによりDNAセンサを作動させる際に、水溶液中において荷電分子を輸送するための方法において、
・測定電極の近傍に、水電解質中で安定であり測定電極の材料より卑の金属性材料が電位を印加可能な電極として配置され、
・電極に正の電位が加えられることにより、金属性材料が正イオンとして溶液中に与えられ、
・それにより負に荷電された分子が目標分子として反対方向に輸送され、測定電極に蓄積される
手段を有することを特徴とする荷電分子の輸送方法。
【請求項2】
溶液中に入る金属イオンが錯化剤の存在によって錯化され、それによってその濃度が僅かでほぼ一定に保持されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
金属性材料として銅が使用され、この銅が銅犠牲アノードを形成することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
銅イオンの錯化のための錯化剤としてヒスチジンが使用されることを特徴とする請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
目標分子を検知するため電極表面のキャッチャー分子が使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
キャッチャー分子としてチオール基修飾キャッチャー分子が使用されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
キャッチャー分子としてヒドロゲル結合のキャッチャー分子が使用されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項8】
電気泳動法が実施されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
DNA断片のDNA分析が行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
DNA分析において、蓄積された分子が目標分子として検出されることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
電気泳動ないしDNA分析のために使用される電極の分極によってプロセスの選択性が高められることを特徴とする請求項8又は9記載の方法。
【請求項12】
特に2つの測定電極間でレドックス・サイクリングプロセスによりDNAセンサを作動させる際に、水溶液中において荷電分子を結合特異的分離するための方法において、
・水溶液中に金属イオンが存在し、
・測定電極に負電位を加えることによって、金属イオンが測定電極へ金属として分離され、
・それにより、負に荷電され測定電極の近傍に結合された分子が十分に低い結合エネルギーを持った目標分子として測定電極から離れるように輸送される
手段を有することを特徴とする荷電分子の分離方法。
【請求項13】
金属イオンとして銅、測定電極として金が使用されることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
測定電極から離れるように輸送される分子が、DNA分析の際検出すべきでない目標分子であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項15】
請求項1又は請求項2〜10の1つによる方法を実施するため、ないし請求項12又は請求項13、14の1つによる方法を実施するための装置において、水溶液(15)中における電気化学的測定のための測定電極(20、30)を備え、水溶液中には金属イオンないし測定電極(20、30)の材料より卑の材料からなる金属の集積(40)が存在し、その材料は水溶液(15)中で安定であることを特徴とする装置。
【請求項16】
測定電極(20、30)が貴金属、特に金からなることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項17】
金属が銅であり、犠牲電極(40)を形成することを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項18】
金からなる測定電極がセンサ面(21、31)を有し、センサ面に目標DNA(200)のためのキャッチャー分子が結合されていることを特徴とする請求項16記載の装置。
【請求項19】
測定電極(20、30)が、互いに噛み合うフィンガー電極を有する櫛状電極(82、83)からなるインターディジタル構造を形成することを特徴とする請求項15、16、18のいずれか1つに記載の装置。
【請求項20】
犠牲電極(84)が櫛状電極(82、83)の周りにリング状に配置されていることを特徴とする請求項17記載の装置。
【請求項21】
キャッチャー分子(100)を結合するためのヒドロゲル層(35)が測定電極(20、30)上に配置されていることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項22】
測定電極(20、30)にキャッチャー分子(100)を蓄積するための別の反応面(50)が属していることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項23】
犠牲電極(84)を有する個々のインターディジタル構造(80、80´、…)によって、m行、n列のアレイが形成されていることを特徴とする請求項19記載の装置。
【請求項24】
個々の犠牲電極(84)に対する補助電極(185)がm-nアレイ(180)の周りをリング状に延びていることを特徴とする請求項23記載の装置。
【請求項1】
特に2つの測定電極間でレドックス・サイクリングプロセスによりDNAセンサを作動させる際に、水溶液中において荷電分子を輸送するための方法において、
・測定電極の近傍に、水電解質中で安定であり測定電極の材料より卑の金属性材料が電位を印加可能な電極として配置され、
・電極に正の電位が加えられることにより、金属性材料が正イオンとして溶液中に与えられ、
・それにより負に荷電された分子が目標分子として反対方向に輸送され、測定電極に蓄積される
手段を有することを特徴とする荷電分子の輸送方法。
【請求項2】
溶液中に入る金属イオンが錯化剤の存在によって錯化され、それによってその濃度が僅かでほぼ一定に保持されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
金属性材料として銅が使用され、この銅が銅犠牲アノードを形成することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
銅イオンの錯化のための錯化剤としてヒスチジンが使用されることを特徴とする請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
目標分子を検知するため電極表面のキャッチャー分子が使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
キャッチャー分子としてチオール基修飾キャッチャー分子が使用されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
キャッチャー分子としてヒドロゲル結合のキャッチャー分子が使用されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項8】
電気泳動法が実施されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
DNA断片のDNA分析が行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
DNA分析において、蓄積された分子が目標分子として検出されることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
電気泳動ないしDNA分析のために使用される電極の分極によってプロセスの選択性が高められることを特徴とする請求項8又は9記載の方法。
【請求項12】
特に2つの測定電極間でレドックス・サイクリングプロセスによりDNAセンサを作動させる際に、水溶液中において荷電分子を結合特異的分離するための方法において、
・水溶液中に金属イオンが存在し、
・測定電極に負電位を加えることによって、金属イオンが測定電極へ金属として分離され、
・それにより、負に荷電され測定電極の近傍に結合された分子が十分に低い結合エネルギーを持った目標分子として測定電極から離れるように輸送される
手段を有することを特徴とする荷電分子の分離方法。
【請求項13】
金属イオンとして銅、測定電極として金が使用されることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
測定電極から離れるように輸送される分子が、DNA分析の際検出すべきでない目標分子であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項15】
請求項1又は請求項2〜10の1つによる方法を実施するため、ないし請求項12又は請求項13、14の1つによる方法を実施するための装置において、水溶液(15)中における電気化学的測定のための測定電極(20、30)を備え、水溶液中には金属イオンないし測定電極(20、30)の材料より卑の材料からなる金属の集積(40)が存在し、その材料は水溶液(15)中で安定であることを特徴とする装置。
【請求項16】
測定電極(20、30)が貴金属、特に金からなることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項17】
金属が銅であり、犠牲電極(40)を形成することを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項18】
金からなる測定電極がセンサ面(21、31)を有し、センサ面に目標DNA(200)のためのキャッチャー分子が結合されていることを特徴とする請求項16記載の装置。
【請求項19】
測定電極(20、30)が、互いに噛み合うフィンガー電極を有する櫛状電極(82、83)からなるインターディジタル構造を形成することを特徴とする請求項15、16、18のいずれか1つに記載の装置。
【請求項20】
犠牲電極(84)が櫛状電極(82、83)の周りにリング状に配置されていることを特徴とする請求項17記載の装置。
【請求項21】
キャッチャー分子(100)を結合するためのヒドロゲル層(35)が測定電極(20、30)上に配置されていることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項22】
測定電極(20、30)にキャッチャー分子(100)を蓄積するための別の反応面(50)が属していることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項23】
犠牲電極(84)を有する個々のインターディジタル構造(80、80´、…)によって、m行、n列のアレイが形成されていることを特徴とする請求項19記載の装置。
【請求項24】
個々の犠牲電極(84)に対する補助電極(185)がm-nアレイ(180)の周りをリング状に延びていることを特徴とする請求項23記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−508353(P2006−508353A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556022(P2004−556022)
【出願日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際出願番号】PCT/DE2003/003938
【国際公開番号】WO2004/051275
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際出願番号】PCT/DE2003/003938
【国際公開番号】WO2004/051275
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】
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