説明

荷電粒子ビーム描画装置、パターン検査装置及びレイアウト表示方法

【課題】パターン密度に応じて発生する表示画質劣化や表示速度低下を抑止する。
【解決手段】荷電粒子ビーム描画装置は、階層化された描画データに含まれる第1階層の要素に対応する第2階層の要素群を順次読み込むデータ読込部と、第2階層の要素数を取得する要素数取得部31と、第2階層の要素数に応じて区画サイズを調整し第1階層の要素を複数の区画に分割し、区画ごとにフラグを有する区画マップを形成するマップ形成部32と、読み込まれた第2階層の要素の位置に対応する区画のフラグが、その区画を表示する表示処理を許可する許可状態又は禁止する禁止状態であるかを判断するフラグ判断部33と、区画のフラグが許可状態であると判断された場合に表示処理を許可し、区画のフラグが禁止状態であると判断された場合に表示処理を禁止する処理制限部34と、表示された区画のフラグを許可状態から禁止状態に切り替えるフラグ切替部35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置、パターン検査装置及びレイアウト表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴って、半導体デバイスに要求される回路線幅は益々微小になってきている。半導体デバイスに所望の回路パターンを形成するためには、リソグラフィ技術が用いられており、このリソグラフィ技術では、マスク(レチクル)と称される原画パターンを用いたパターン転写が行われている。このパターン転写に用いる高精度なマスクを製造するためには、優れた解像度を有する荷電粒子ビーム描画装置が用いられている。
【0003】
この荷電粒子ビーム描画装置としては、階層化された描画データをレイアウト表示(ビューワ処理)するレイアウト表示部を備える荷電粒子ビーム描画装置が開発されている。また、荷電粒子ビーム描画装置により描画されたパターンを検査するため、階層化された描画データをレイアウト表示(ビューワ処理)するレイアウト表示部を備えるパターン検査装置も開発されている。
【0004】
通常、描画データは、チップ階層、フレーム階層、ブロック階層、セル階層及び図形階層に階層化されている。この描画データをレイアウト表示するとき、レイアウト表示の倍率が低い場合には、チップ階層、フレーム階層、ブロック階層及びセル階層のデータが読み込まれてレイアウト表示される。ところが、レイアウト表示の倍率が高くなり、所定値以上となると、他の階層に比べ最もデータ量が多い図形階層のデータが読み込まれることになるため、表示速度が低下してしまう。
【0005】
このとき、表示速度を上げるため、あらかじめ決められた擬似ピクセルサイズで、処理対象となる階層の要素を格子状(メッシュ状)に区切り、特定の擬似ピクセル内の要素を画面上に表示すると、その特定擬似ピクセルのフラグを1に設定し、要素内の全擬似ピクセルが1になると、処理対象の要素に対する表示処理を終了する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
これにより、データの読み飛ばしが可能となり、表示を高速に行うことができる。また、擬似ピクセルサイズが大きければ大きいほど、全擬似ピクセルサイズが早期に1となる可能性が高く、データを大きく読み飛ばすことが可能となり、表示を高速に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−219371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の技術では、高密度パターンを高速に表示するように擬似ピクセルサイズを大きい値に設定すると、テストパターンなどにみられる疎パターン(低密度パターン)をレイアウト表示する際、見た目が粗くなってしまう。一方、疎パターンを精緻に表示するように擬似ピクセルサイズを小さい値に設定すると、高密度パターンをレイアウト表示する際、表示速度が遅くなってしまう。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、パターン密度に応じて発生する表示画質劣化や表示速度低下を抑止することができる荷電粒子ビーム描画装置、パターン検査装置及びレイアウト表示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係る第1の特徴は、荷電粒子ビーム描画装置において、階層化された描画データに含まれる第1階層の要素に対応する第2階層の要素群を順次読み込むデータ読込部と、描画データから第2階層の要素数を取得する要素数取得部と、要素数取得部により取得された第2階層の要素数に応じて区画サイズを調整し第1階層の要素を複数の区画に分割し、区画ごとにフラグを有する区画マップを形成するマップ形成部と、データ読込部により読み込まれた第2階層の要素の位置に対応する区画のフラグが、その区画を表示する表示処理を許可する許可状態又は禁止する禁止状態であるかを判断するフラグ判断部と、フラグ判断部により区画のフラグが許可状態であると判断された場合、その区画を表示する表示処理を許可し、フラグ判断部により区画のフラグが禁止状態であると判断された場合、その区画を表示する表示処理を禁止する処理制限部と、表示処理により表示された区画のフラグを許可状態から禁止状態に切り替えるフラグ切替部とを備えることである。
【0011】
また、上記第1の特徴に係る荷電粒子ビーム描画装置において、マップ形成部は、第2階層の要素数に加え、第1階層の要素サイズに応じて区画サイズを調整することが望ましい。
【0012】
本発明の実施形態に係る第2の特徴は、パターン検査装置において、階層化された描画データに含まれる第1階層の要素に対応する第2階層の要素群を順次読み込むデータ読込部と、描画データから第2階層の要素数を取得する要素数取得部と、要素数取得部により取得された第2階層の要素数に応じて区画サイズを調整し第1階層の要素を複数の区画に分割し、区画ごとにフラグを有する区画マップを形成するマップ形成部と、データ読込部により読み込まれた第2階層の要素の位置に対応する区画のフラグが、その区画を表示する表示処理を許可する許可状態又は禁止する禁止状態であるかを判断するフラグ判断部と、フラグ判断部により区画のフラグが許可状態であると判断された場合、その区画を表示する表示処理を許可し、フラグ判断部により区画のフラグが禁止状態であると判断された場合、その区画を表示する表示処理を禁止する処理制限部と、表示処理により表示された区画のフラグを許可状態から禁止状態に切り替えるフラグ切替部とを備えることである。
【0013】
また、上記第2の特徴に係るパターン検査装置において、マップ形成部は、第2階層の要素数に加え、第1階層の要素サイズに応じて区画サイズを調整することが望ましい。
【0014】
本発明の実施形態に係る第3の特徴は、レイアウト表示方法において、階層化された描画データに含まれる第1階層の要素に対応する第2階層の要素群を順次読み込む工程と、描画データから第2階層の要素数を取得する工程と、取得した第2階層の要素数に応じて区画サイズを調整し第1階層の要素を複数の区画に分割し、区画ごとにフラグを有する区画マップを形成する工程と、読み込んだ第2階層の要素の位置に対応する区画のフラグが、その区画を表示する表示処理を許可する許可状態又は禁止する禁止状態であるかを判断する工程と、区画のフラグが許可状態であると判断した場合、その区画を表示する表示処理を許可し、区画のフラグが禁止状態であると判断した場合、その区画を表示する表示処理を禁止する工程と、表示した区画のフラグを許可状態から禁止状態に切り替える工程とを有することである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パターン密度に応じて発生する表示画質劣化や表示速度低下を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係る荷電粒子ビーム描画装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す荷電粒子ビーム描画装置が用いる描画データを説明するための説明図である。
【図3】図1に示す荷電粒子ビーム描画装置が備えるレイアウト表示装置のデータ処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示すデータ処理部が行う擬似ピクセルマップの作成を説明するための説明図である。
【図5】図3に示すデータ処理部が行う擬似ピクセルサイズの縮小を説明するための説明図である。
【図6】図3に示すデータ処理部が行う擬似ピクセルサイズの拡大を説明するための説明図である。
【図7】図3に示すデータ処理部が行う擬似ピクセルマップのフラグ切替を説明するための説明図である。
【図8】図1に示す荷電粒子ビーム描画装置が備えるレイアウト表示装置が行うレイアウト表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態に係るパターン検査装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図1ないし図8を参照して説明する。
【0018】
図1に示すように、第1の実施形態に係る荷電粒子ビーム描画装置1は、荷電粒子ビームによる描画を行う描画部2と、その描画部2を制御する制御部3と、描画データをレイアウト表示するレイアウト表示装置4とを備えている。この荷電粒子ビーム描画装置1は、荷電粒子ビームとして例えば電子ビームを用いた可変成形型の描画装置の一例である。なお、荷電粒子ビームは電子ビームに限られるものではなく、イオンビームなどの他の荷電粒子ビームであっても良い。
【0019】
描画部2は、描画対象となる試料Wを収容する描画室2aと、その描画室2aに連通する光学鏡筒2bとを有している。描画室2a内には、試料Wを支持するステージ11が設けられている。このステージ11は水平面内で互いに直交するX方向とY方向に移動可能に形成されており、そのステージ11の載置面上には、例えばマスクやブランクなどの試料Wが載置される。また、光学鏡筒2b内には、電子ビームBを出射する電子銃21と、その電子ビームBを集光する照明レンズ22と、ビーム成形用の第1のアパーチャ23と、投影用の投影レンズ24と、ビーム成形用の第1の偏向器25と、ビーム成形用の第2のアパーチャ26と、試料W上にビーム焦点を結ぶ対物レンズ27と、試料Wに対するビームショット位置を制御するための第2の偏向器28とが配置されている。
【0020】
この描画部2では、電子ビームBが電子銃21から出射され、照明レンズ22により第1のアパーチャ23に照射される。この第1のアパーチャ23は例えば矩形状の開口を有している。これにより、電子ビームBが第1のアパーチャ23を通過すると、その電子ビームの断面形状は矩形状に成形され、投影レンズ24により第2のアパーチャ26に投影される。なお、この投影位置は第1の偏向器25により偏向可能であり、投影位置の変更により電子ビームBの形状と寸法を制御することが可能である。その後、第2のアパーチャ26を通過した電子ビームBは、その焦点が対物レンズ27によりステージ11上の試料Wに合わされて照射される。このとき、ステージ11上の試料Wに対する電子ビームBのショット位置は第2の偏向器28により制御される。
【0021】
制御部3は、入力される描画データを描画装置用フォーマットに変換するデータ変換部3aと、変換済みの描画データを記憶するデータ記憶部3bと、その変換済みの描画データに基づいて描画部2を制御する描画制御部3cとを備えている。
【0022】
データ変換部3aは、例えば半導体集積回路などのレイアウトデータ(設計データやCADデータなど)を変換することで得られたデータである描画データを描画装置用フォーマットに変換する。なお、描画データは、その描画データを保管するデータベースなどの記憶装置(図示せず)から例えば有線又は無線のネットワークを介してデータ変換部3aに入力される。
【0023】
データ記憶部3bは、データ変換部3aにより変換された描画装置用フォーマットの描画データを記憶する記憶部である。このデータ記憶部3bとしては、例えば、磁気ディスク装置や半導体ディスク装置(フラッシュメモリ)などを用いることが可能である。
【0024】
描画制御部3cは、データ記憶部3bから描画装置用フォーマットの描画データを読み出し、その描画データに基づいて描画部2を制御する。詳述すると、描画制御部3cは、読み出した描画データに基づき、試料Wが載置されたステージ11を例えばX方向に移動させつつ、電子ビームBを偏向によりステージ11上の試料Wの各所定位置にショットする図形描画を行い、その後、ステージ11をY方向にステップ移動させてから前述と同様に図形描画を行い、これを繰り返して試料Wの描画領域に電子ビームBによる描画を行う。
【0025】
ここで、前述の描画データは、図2に示すように、チップ階層CP、そのチップ階層CPよりも下位のフレーム階層FR、そのフレーム階層FRよりも下位のブロック階層BL、そのブロック階層BLよりも下位のセル階層CL、そのセル階層CLよりも下位の図形階層FGに階層化されている。なお、変換前後の両方の描画データが階層化されている。
【0026】
図2の例では、チップ階層CPの要素群(チップ群)の一部であるチップCP1が、フレーム階層FRの要素群(フレーム群)の一部である三個のフレームFR1〜FR3に対応している。また、フレーム階層FRの要素群の一部であるフレームFR2が、ブロック階層BLの要素群(ブロック群)の一部である十八個のブロックBL1〜BL18に対応している。ブロック階層BLの要素群の一部であるブロックBL9が、セル階層CLの要素群(セル群)の一部である四個のセルCL1〜CL4に対応している。セル階層CLの要素群の一部であるCL1が図形階層FGの要素群(図形群)の一部である複数の図形FG1、FG2に対応している。
【0027】
図1に戻り、レイアウト表示装置4は、変換前後の両方の描画データを読み込むデータ読込部4aと、描画データを処理するデータ処理部4bと、レイアウト表示用のオブジェクトを生成するオブジェクト生成部4cと、そのオブジェクト表示用の表示処理を行うオブジェクト表示処理部4dと、オブジェクトを表示する表示部4eとを備えている。
【0028】
データ読込部4aは、変換前の描画データに加え、データ記憶部3bに記憶された描画装置用フォーマットに変換された変換後の描画データ、すなわちその画像データに含まれる各階層の要素群を順次読み込む。
【0029】
データ処理部4bは、データ読込部4aにより読み込まれた各階層の要素の位置(例えば、配置座標)や大きさ(例えば、X方向寸法やY方向寸法など)に応じて要素の表示画面上の位置を算出する。
【0030】
オブジェクト生成部4cは、データ処理部4bにより算出された各階層の要素の位置情報に、各階層の要素をレイアウト表示する色などの情報を付加し、レイアウト表示用のオブジェクト(例えば、表示する要素の輪郭あるいは図形など)を生成する。
【0031】
オブジェクト表示処理部4dは、オブジェクト生成部4cにより生成されたレイアウト表示用のオブジェクト(例えば、表示する要素の輪郭あるいは図形など)をモニタなどの表示部4eに表示させる表示処理を行う。
【0032】
表示部4eは、オブジェクト表示処理部4dの表示処理に応じてレイアウト表示用のオブジェクトを表示画面に表示する。この表示部4eとしては、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどを用いることが可能である。
【0033】
次に、前述のデータ処理部4bについて詳しく説明する。ここでは、ある階層を第1階層とすると、その下位の階層が第2階層となる。例えば、第1階層をセル階層CLとすると、第2階層はセル階層CLの下位である図形階層FGとなる(図2参照)。
【0034】
図3に示すように、データ処理部4bは、描画データから対象とする第1階層の要素に対応する第2階層の要素数を取得する要素数取得部31と、第1階層の要素を複数の区画、すなわち複数の擬似ピクセルPに分割し、その擬似ピクセルPごとにフラグを有する擬似ピクセルマップMを形成するマップ形成部32と、擬似ピクセルPのフラグ状態を判断するフラグ判断部33と、フラグ状態に応じて擬似ピクセルPごとに表示処理を制限する処理制限部34と、表示処理により表示された擬似ピクセルPのフラグ状態を切り替えるフラグ切替部35とを備えている。
【0035】
このデータ処理部4bは、電気回路などのハードウエアにより構成されても良く、また、各機能を実行するプログラムなどのソフトウエアにより構成されても良く、あるいは、それらの両方の組合せにより構成されても良い。
【0036】
要素数取得部31は、第1階層の要素に対応する第2階層の要素パターンデータヘッダにある要素データ量から第2階層の要素数を算出する。この算出では、例えば、要素データ量を要素数に変換するための係数が用いられる。
【0037】
マップ形成部32は、対象とする第1階層の要素を格子状に複数の擬似ピクセル(区画)Pに分割し、その擬似ピクセルPごとにフラグを有する擬似ピクセルマップMを形成する。この擬似ピクセルマップMが区画マップとして機能する。擬似ピクセルマップMのフラグは、擬似ピクセルPを表示する表示処理を許可する許可状態又は禁止する禁止状態を示す変数として機能する。
【0038】
ここで、第1階層がセル階層CLであり、第2階層が図形階層FGである場合には、図4に示すように、セル階層CLの要素であるセルCL1が格子状に複数の擬似ピクセルPに分割され、その擬似ピクセルPごとにフラグを有する擬似ピクセルマップMが形成される。このとき、セルCL1はX方向に複数に分割され、Y方向にも複数に分割される。セルCL1のサイズはX方向寸法CxとY方向寸法Cyで定義され、擬似ピクセルサイズ(区画サイズ)はX方向寸法PxとY方向寸法Pyで定義される。なお、図4には、初期状態の擬似ピクセルマップMが示されており、例えば、フラグが0(ゼロ)であるとき許可状態であり、フラグが1であるとき禁止状態であるとすると、初期状態のフラグは全て許可状態(0)にされている。
【0039】
このような擬似ピクセルマップMの形成時、マップ形成部32は、セルCL1に対応する図形階層FGの図形数、すなわち、セルCL1のパターン密度(単位面積当たりの図形数)に応じて擬似ピクセルサイズを調整する。例えば、マップ形成部32は、図5に示すように、セルCL1のパターン密度が低くなると、擬似ピクセルサイズを小さくし、一方、図6に示すように、セルCL1のパターン密度が高くなると、擬似ピクセルサイズを大きくする。なお、図5では、フラグの許可状態を示す数字(0)は省略されているが、図4や図6と同様に、擬似ピクセルマップMは擬似ピクセルPごとにフラグを有している。
【0040】
この擬似ピクセルサイズを算出する算出方法としては、セルパターンデータヘッドにあるセルデータ量Dcellと、セルサイズCx、Cyとから、擬似ピクセルサイズPx、Pyを算出する。このとき、以下の式を用いる。
【0041】
Px×Py=(1/k)×{Ccell/(Cx/Pax)×(Cy/Pay)}
Ccell=m×Dcell
ここで、Ccellは図形数の概算であり、mはセルデータ量を図形数(パターン数)に変換するための係数である。また、kは擬似ピクセルサイズを調整するための係数であり、Pax及びPayは実際の画面における1ピクセルあたりの長さ(μm)を示す値である。
【0042】
例えば、m=1/16、K=10、Pax=Pay=1とすると、Cx=Cy=64μm、Dcell=64mbyteのとき、Px=Pyとして、Px=Py≒10pixelとなる。
【0043】
なお、ここでは、擬似ピクセルサイズは図形数、すなわちパターン密度と比例関係にあるが、これに限るものではなく、例えば、比例関係以外の二次関数や三次関数などの関係でも良い。また、擬似ピクセルサイズを調整するための係数kを固定しているが、これに限るものではなく、係数kを変動させても良く、例えば、数個の係数を用意しておき、階層の種類に応じて係数を切り替えて用いるようにしても良く、また、セルサイズに応じて係数を切り替えて用いるようにしても良い。
【0044】
フラグ判断部33は、データ読込部4aにより読み込まれた第2階層の要素が位置する擬似ピクセルPのフラグが、その擬似ピクセルPを表示する表示処理を許可する許可状態(0)又は禁止する禁止状態(1)であるかを判断する。
【0045】
処理制限部34は、フラグ判断部33により擬似ピクセルPのフラグが許可状態(0)であると判断された場合、その擬似ピクセルPを表示する表示処理を許可し、フラグ判断部33により擬似ピクセルPのフラグが禁止状態(1)であると判断された場合、その擬似ピクセルPを表示する表示処理を禁止する。
【0046】
フラグ切替部35は、表示処理により表示された擬似ピクセルPのフラグを許可状態(0)から禁止状態(1)に切り替える。擬似ピクセルPが表示されるたびに、その表示済みの擬似ピクセルPのフラグは禁止状態(1)となる。
【0047】
このため、読み出された要素が禁止状態(1)のフラグを有する擬似ピクセルPに位置する場合には、その要素の表示処理が実行されずに飛ばされ、次の要素が読み出される。さらに、全ての擬似ピクセルPが禁止状態(1)になると、表示処理を実行する必要が無くなるため、要素の読み出し自体が停止される。
【0048】
例えば、図7に示すように、擬似ピクセルマップMが形成されると、最初に読み込んだ図形FG1の位置(座標)が求められ、その図形FG1の位置に対応する擬似ピクセルPaのフラグが許可状態(0)であるため、その擬似ピクセルPaの区画が表示される。例えば、擬似ピクセルPaのサイズが10×10ピクセルであれば、その100ピクセル全てが塗りつぶされて表示される。その後、表示済みの擬似ピクセルPaのフラグが許可状態(0)から禁止状態(1)に切り替えられ、次の図形FG2の読み込みが行われる。
【0049】
次いで、前述の図形FG1の次に読み込んだ図形FG2の位置(座標)が求められ、その図形FG2の位置が前述の図形FG1と同じ擬似ピクセルPaに対応する場合、その擬似ピクセルPaのフラグは禁止状態(1)であるため、図形FG2の表示処理は実行されず、次の図形の読み込みが開始される。このように、擬似ピクセルPの表示処理が一度実行されると、その後、表示済みの擬似ピクセルPに位置する他の図形が存在しても、その図形を表示する表示処理は実行されない。これにより、無駄な表示処理が省略されるので、レイアウト表示速度を向上させることができる。
【0050】
その後も、対象のセルに対応する図形群が順次読み込まれ、全擬似ピクセルPが禁止状態(1)となると、全擬似ピクセルPの表示が完了しているため、これ以上残りの図形を読み込む必要がなくなり、図形の読み込みが中止される。これにより、不要な読込処理が防止されるので、レイアウト表示速度を向上させることができる。
【0051】
次に、前述のレイアウト表示装置4が行うレイアウト表示処理(レイアウト表示方法)について詳しく説明する。一例として、セルCL1に対応する図形階層FGの要素群(FG1、FG2、・・)の読み込みが開始されるまで、レイアウト表示の倍率が上げられると(拡大)、以下のレイアウト表示処理が実行される。
【0052】
図8に示すように、図形階層FGの図形数(要素数)がデータ処理部4bの要素数取得部31により描画データから取得される(ステップS1)。このステップS1では、例えば、セルパターンデータヘッドからセルデータ量が求められ、そのセルデータ量から所定の係数により図形数が算出される。なお、セルパターンデータヘッドは描画データに含まれており、データ読込部4aにより読み込まれて用いられる。
【0053】
ステップS1が完了すると、擬似ピクセルマップMがデータ処理部4bのマップ形成部32により作成される(ステップS2)。このステップS2では、対象とするセルCL1が格子状に複数の擬似ピクセルPに分割され、その擬似ピクセルPごとにフラグを有する擬似ピクセルマップMが形成される。このとき、ステップS1で取得された図形階層FGの図形数に応じて擬似ピクセルサイズが調整され、その擬似ピクセルサイズが擬似ピクセルマップMの作成に用いられる。また、初期状態の擬似ピクセルマップMの全擬似ピクセルPのフラグは許可状態(0)にされる。
【0054】
ステップS2が完了すると、図形階層FGの要素である図形データがデータ読込部4aにより読み込まれ(ステップS3)、読み込まれた要素である図形の位置に対応する擬似ピクセルPがデータ処理部4bのフラグ判断部33により許可状態であるか否かが判断される(ステップS4)。このステップS4では、読み込んだ要素である図形の位置(座標)が求められ、その図形の位置に対応する擬似ピクセルPaのフラグが許可状態(0)であるか否かが判定される。
【0055】
ステップS4において、擬似ピクセルPが許可状態(0)であると判断された場合には(ステップS4のYES)、擬似ピクセルPの表示処理が処理制限部34により許可されて実行される(ステップS5)。一方、擬似ピクセルPが許可状態(0)でない、すなわち禁止状態(1)であると判断された場合には(ステップS4のNO)、擬似ピクセルPの表示処理が処理制限部34により禁止され、再度、図形階層FGの要素である図形データが読み込まれる(ステップS3)。
【0056】
ステップS5が完了すると、表示済みの擬似ピクセルPのフラグがデータ処理部4bのフラグ切替部35により許可状態(0)から禁止状態(1)に切り替えられる(ステップS6)。その後、擬似ピクセルマップMの全擬似ピクセルPのフラグが禁止状態(1)であるか否かが判断される(ステップS7)。
【0057】
ステップS7において、全擬似ピクセルPのフラグが禁止状態(1)であると判断された場合には(ステップS7のYES)、図形階層FGの要素である図形の読み出しが中止され(ステップS8)、処理が終了する。一方、全擬似ピクセルPのフラグが禁止状態(1)でない、すなわちどれか一つでも許可状態(0)であると判断された場合には(ステップS7のNO)、再度、図形階層FGの要素である図形データが読み込まれる(ステップS3)。
【0058】
このレイアウト表示処理では、擬似ピクセルPの表示処理が一度実行されると、その後、表示済みの擬似ピクセルPに位置する図形が存在した場合でも、その図形を表示する表示処理は実行されなくなる。これにより、無駄な表示処理が省略されるので、レイアウト表示速度を向上させることができる。また、セルに対応する図形群が順次読み込まれ、全擬似ピクセルPのフラグが禁止状態(1)となると、全擬似ピクセルPの表示が完了しているため、これ以上残りの図形を読み込む必要がなくなり、図形の読み込みが中止される。これにより、不要な読込処理が防止されるので、レイアウト表示速度を向上させることができる。
【0059】
さらに、図形階層FGの要素数である図形数に応じて擬似ピクセルマップMの擬似ピクセルサイズが調整される。これにより、図形階層FGの図形数、すなわちパターン密度に応じて擬似ピクセルサイズが拡大又は縮小されて調整されるので、疎パターンや密パターン共にそれぞれ適切な擬似ピクセルサイズを用いることが可能となる。疎パターンに関しては、小さな擬似ピクセルサイズが設定され、表示速度の低下を抑えつつ表示画質を向上させることができる。一方、密パターンに関しては、大きな擬似ピクセルサイズが設定され、表示画質を保ちつつ表示速度を向上させることができる。なお、描画パターンが密パターンである場合には、擬似ピクセルサイズをある程度大きくしても、その擬似ピクセルサイズ内に位置する図形は多数存在しており、表示画質はほとんど低下することがない。
【0060】
このようなレイアウト表示処理は、セルCL1に対応する図形階層FGの要素群(FG1、FG2、・・・)の読み込みが開始されるまで、レイアウト表示の倍率が上げられると実行されるが、これに限るものではない。例えば、図形階層FGの要素群のレイアウト表示よりもレイアウト表示の倍率が低い場合であって、チップ階層CPの要素群(CP1、CP2、・・・)のレイアウト表示が選択されている場合でも、前述のレイアウト表示処理を実行することが可能である。同様にレイアウト表示の倍率が低い場合であって、フレーム階層FRの要素群(FR1、FR2、・・・)のレイアウト表示やブロック階層BLの要素群(BL1、BL2、・・・)のレイアウト表示、あるいは、セル階層CLの要素群(CL1、CL2、・・・)のレイアウト表示などが選択されている場合でも、前述のレイアウト表示処理を実行することが可能である。したがって、どの階層のレイアウト表示でも前述と同様なレイアウト表示処理を実行することが可能である。
【0061】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、セルCL1に対応する図形階層FGの要素数(図形数)を取得し、その取得した図形階層FGの要素数に応じて擬似ピクセルマップMの擬似ピクセルサイズを調整する。これにより、図形階層FGの要素数、すなわちパターン密度に応じて擬似ピクセルサイズが変更されるので、疎パターンや密パターン共にそれぞれ適切な擬似ピクセルサイズを用いることが可能となる。このため、高密度パターンのレイアウト表示に最適な擬似ピクセルサイズを設定し、低密度パターンを表示したときの表示画質低下を抑えることが可能となる。さらに、疎パターンの精緻なレイアウト表示に最適な擬似ピクセルサイズを設定し、高密度パターンを表示したときの表示速度低下を抑えることが可能となる。このようにして、パターン密度に応じて発生する表示画質劣化や表示速度低下を抑止することができる。
【0062】
また、フラグ判断部33により全ての擬似ピクセルPのフラグが禁止状態であると判断された場合、処理制限部34によりデータ読込部4aによる図形階層FGの要素群の読み込みを中止することから、不必要なデータ読み込みを防止することが可能となるので、表示速度を向上させることができる。
【0063】
なお、マップ形成部32により図形階層FGの要素数に加え、セル階層CLの要素サイズ(セルサイズ)あるいは階層の種類に応じて擬似ピクセルサイズを調整するようにしても良い。この場合には、より細かく擬似ピクセルサイズを調整することが可能となるので、パターン密度に応じて発生する表示画質劣化や表示速度低下をより確実に抑止することができる。
【0064】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図9を参照して説明する。
【0065】
第2の実施形態に係るパターン検査装置は、第1の実施形態に係るレイアウト表示装置を備えている。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態で説明した部分と同一部分は同一符号で示し、その説明も省略する。
【0066】
図9に示すように、第2の実施形態に係るパターン検査装置41は、パターンを検査する検査部42と、第1の実施形態に係るレイアウト表示装置4とを備えている。
【0067】
検査部42には、例えば半導体集積回路などのレイアウトデータ(設計データやCADデータなど)を変換することで得られた第1データである検査装置用データが入力される。なお、この第1データである検査装置用データはレイアウト表示装置4にも入力される。また、検査部42には、第1の実施形態に係る荷電粒子ビーム描画装置1により試料W上に実際に描画されたパターンに基づいて作成された第2データである検査装置用データが入力される。
【0068】
第1データである検査装置用データは、そのデータを保管するデータベースなどの記憶装置(図示せず)から有線又は無線のネットワークを介して検査部42やレイアウト表示装置4に入力される。また、第2データである検査装置用データも同様にそのデータを保管するデータベースなどの記憶装置(図示せず)から有線又は無線のネットワークを介して検査部42に入力される。これらの検査装置用データは第1の実施形態に係る描画データと同様に、例えば、チップ階層CP、フレーム階層FR、ブロック階層BL、セル階層CL及び図形階層FGにより階層化されている(図2参照)。
【0069】
検査部42は、入力された各検査装置用データに基づいて、例えば、第1の実施形態に係る荷電粒子ビーム描画装置1により試料W上に実際に描画されたパターンなどを検査する。この検査では、例えば、実際に描画されたパターンと描画データとを比較するような検査が行われる。
【0070】
レイアウト表示装置4は、入力された第1データである検査装置用データを表示部4eにレイアウト表示(ビューワ処理)する。この表示部4eに表示されたオブジェクトは検査者により視認され、描画データのパターン確認などに用いられる。レイアウト表示装置4の構成やレイアウト表示処理などは第1の実施形態と同様である。
【0071】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、前述の第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能で、すなわち、パターン密度に応じて発生する表示画質劣化や表示速度低下を抑止することができる。
【0072】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 荷電粒子ビーム描画装置
2 描画部
2a 描画室
2b 光学鏡筒
3 制御部
3a データ変換部
3b データ記憶部
3c 描画制御部
4 レイアウト表示装置
4a データ読込部
4b データ処理部
4c オブジェクト生成部
4d オブジェクト表示処理部
4e 表示部
11 ステージ
21 電子銃
22 照明レンズ
23 第1のアパーチャ
24 投影レンズ
25 第1の偏向器
26 第2のアパーチャ
27 対物レンズ
28 第2の偏向器
B 電子ビーム
W 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階層化された描画データに含まれる第1階層の要素に対応する第2階層の要素群を順次読み込むデータ読込部と、
前記描画データから前記第2階層の要素数を取得する要素数取得部と、
前記要素数取得部により取得された前記第2階層の要素数に応じて区画サイズを調整し前記第1階層の要素を複数の区画に分割し、区画ごとにフラグを有する区画マップを形成するマップ形成部と、
前記データ読込部により読み込まれた前記第2階層の要素の位置に対応する区画のフラグが、その区画を表示する表示処理を許可する許可状態又は禁止する禁止状態であるかを判断するフラグ判断部と、
前記フラグ判断部により前記区画のフラグが前記許可状態であると判断された場合、その区画を表示する表示処理を許可し、前記フラグ判断部により前記区画のフラグが前記禁止状態であると判断された場合、その区画を表示する表示処理を禁止する処理制限部と、
前記表示処理により表示された前記区画のフラグを前記許可状態から前記禁止状態に切り替えるフラグ切替部と、
を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記マップ形成部は、前記第2階層の要素数に加え、前記第1階層の要素サイズに応じて前記区画サイズを調整することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
階層化された描画データに含まれる第1階層の要素に対応する第2階層の要素群を順次読み込むデータ読込部と、
前記描画データから前記第2階層の要素数を取得する要素数取得部と、
前記要素数取得部により取得された前記第2階層の要素数に応じて区画サイズを調整し前記第1階層の要素を複数の区画に分割し、区画ごとにフラグを有する区画マップを形成するマップ形成部と、
前記データ読込部により読み込まれた前記第2階層の要素の位置に対応する区画のフラグが、その区画を表示する表示処理を許可する許可状態又は禁止する禁止状態であるかを判断するフラグ判断部と、
前記フラグ判断部により前記区画のフラグが前記許可状態であると判断された場合、その区画を表示する表示処理を許可し、前記フラグ判断部により前記区画のフラグが前記禁止状態であると判断された場合、その区画を表示する表示処理を禁止する処理制限部と、
前記表示処理により表示された前記区画のフラグを前記許可状態から前記禁止状態に切り替えるフラグ切替部と、
を備えることを特徴とするパターン検査装置。
【請求項4】
前記マップ形成部は、前記第2階層の要素数に加え、前記第1階層の要素サイズに応じて前記区画サイズを調整することを特徴とする請求項3記載のパターン検査装置。
【請求項5】
階層化された描画データに含まれる第1階層の要素に対応する第2階層の要素群を順次読み込む工程と、
前記描画データから前記第2階層の要素数を取得する工程と、
取得した前記第2階層の要素数に応じて区画サイズを調整し前記第1階層の要素を複数の区画に分割し、区画ごとにフラグを有する区画マップを形成する工程と、
読み込んだ前記第2階層の要素の位置に対応する区画のフラグが、その区画を表示する表示処理を許可する許可状態又は禁止する禁止状態であるかを判断する工程と、
前記区画のフラグが前記許可状態であると判断した場合、その区画を表示する表示処理を許可し、前記区画のフラグが前記禁止状態であると判断した場合、その区画を表示する表示処理を禁止する工程と、
表示した前記区画のフラグを前記許可状態から前記禁止状態に切り替える工程と、
を有することを特徴とするレイアウト表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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