説明

荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法

【課題】長期のダウンタイムの発生を抑え、生産性の低下を抑制する荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法を提供することである。
【解決手段】荷電粒子ビーム描画装置は、ステージStを内蔵する描画室1を備え、ステージSt上に支持部材である支持ホルダ40を介して載置されるマスクMに、電子ビームを照射して所望のパターンを描画するようにする。ステージStは、支持ホルダ40を3点で支持する支持ピン43を有し、支持ホルダ40は、その一部に導電膜が設けられるとともに、マスクMを3点で支持する支持部42を有するように構成される。描画を終えた後は、支持ホルダ40を描画室1から搬出して、支持ホルダ40用の収納室に収納するかまたはクリーニングするかを選択するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の集積度の増加に伴い、個々の素子の寸法は微小化が進み、各素子を構成する配線やゲートなどの幅も微細化されている。
【0003】
半導体集積回路の製造においては、マスクまたはレチクル(以下、マスクと総称する。)と呼ばれる回路原版を用い、レジストと呼ばれる感光性樹脂に転写してウェハを加工する工程が基本となる。そして、この基本工程を繰り返すことによって、半導体集積回路が製造される。
【0004】
転写工程には、ステッパまたはスキャナと呼ばれる露光装置が用いられる。従来は、転写光源として光を用い、マスク上の回路パターンをウェハ上に4分の1から5分の1程度に縮小投影して転写する方法が採られてきた。半導体集積回路の微細化のためには、この転写工程での解像性能を向上させることが必要となる。ここで、結像光学系の開口係数をNA、光源の波長をλとすると、解像寸法は(λ/NA)に比例する。したがって、開口係数NAの向上または波長λの短波長化を図ることにより、露光解像度を小さくすることができる。
【0005】
そこで、波長λの短波長化を図って露光解像度を小さくするため、極短波長(λ=13〜14nm)のEUV(Extreme Ultra Violet;極短紫外)光を用いたEUVリソグラフィ技術の開発が進められている。EUVリソグラフィの開口係数NAは、フォトリソグラフィより小さいが、波長の2.0〜1.5倍程度は解像するので、30nm以下の解像寸法が可能である。
【0006】
こうしたEUVリソグラフィ等のリソグラフィ技術を用いた半導体集積回路の製造においては、それぞれのリソグラフィ技術に対応したマスクの準備が重要となる。
【0007】
半導体集積回路の製造に使用されるマスクの製造には、電子ビームリソグラフィ技術が広く一般に使われている。電子ビームリソグラフィ技術は、利用する電子ビームが荷電粒子ビームであるために、本質的に優れた解像度を有し、微細パターンの描画が可能である。また、焦点深度を大きく確保することができるので、高い段差上でも寸法変動を抑制できるという利点も有している。
【0008】
例えば、特許文献1には、電子ビームによる描画を行って、EUVリソグラフィ技術に用いられるEUVマスクを製造する方法が記載されている。また、特許文献2では、マスクに対する負荷の少ない静電チャックを用いてEUVマスクを支持できるよう、マスクを構成する基板の裏面に導電膜をコートする技術が開示されている。
【0009】
こうした電子ビームリソグラフィ技術を実現し、マスクの製造に使用される電子ビーム描画装置は、通常、描画対象となる試料を載置するステージを内蔵する描画室と、そのステージ上の試料に対し具備する電子銃から電子ビームを照射する電子鏡筒とを備える。そして、電子ビーム描画装置では、電子ビームを偏向制御できる範囲が限られているため、ステージを移動させ、ステージ上の試料を移動させながら描画を行い、試料に微細パターンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−260056号公報
【特許文献2】特表2003−501823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
荷電粒子ビームである電子ビームを用いる電子ビーム描画装置では、上述したように、描画対象となる試料をステージ上に載置し、ステージを移動させながら試料に微細パターンを形成する。ステージ上での試料の支持は、支持部となる、ステージの上面に設けられた複数の支持ピンによって行われる。支持ピンは、描画対象となる試料を下方から支持するよう、その先端部分に、例えば、頭面が球状の支持体部を配置して構成されている。すなわち、従来の電子ビーム描画装置では、ステージ上に配置された複数の支持ピンが、その先端部分に配置された頭面球状の支持体部を用いて試料と下方側から直接に接する。そして、支持ピンによって試料を支持して電子ビームによるパターンの描画を行っている。
【0012】
しかしながら、従来の電子ビームを用いる描画装置においては、ステージを移動させながら試料へのパターンの描画を行う間に、支持ピンの試料を支持する性能が劣化することがあった。
例えば、特許文献2に記載されるように、EUVマスクの製造に用いられる試料では、パターン形成面である上面と対向する下面に導電膜がコートされることがある。導電膜としては、例えば、クロム(Cr)膜等が用いられる。
【0013】
試料の下面に導電膜がコートされている場合、試料を下方側から支持するステージの支持ピンは、試料下面の導電膜に触れることがある。そして、ステージを移動させながらパターンの描画を行う場合、試料下面の導電膜に剥離が生じ、試料を支持する支持ピンの支持体部に剥離物が付着することがあった。こうした支持ピンの支持体部への剥離物の付着は、支持ピンの試料支持性能を低下させ、例えば、支持ピン上での試料のスリップを生じさせることになる。支持ピン上で試料のスリップが発生すると、所望とする微細なパターンの描画は行えない。こうした支持ピンの性能の劣化は、試料がEUVマスク以外のマスク等であり、導電膜を設けないマスクの場合であっても、使用する間に生じることがあった。尚、スリップの発生は、試料上における電子ビームの照射位置に所定の変化が現れることによって確認される。
【0014】
支持ピンの性能に劣化が生じた場合、描画装置ではメンテナンスが必要となる。メンテナンスでは、ステージ上の劣化した支持ピンのクリーニングや支持ピンの交換を行う。ここで、描画装置では、電子ビームを用いたパターンの描画を行うために、描画室等の内部が高真空の状態に保たれている。したがって、描画装置のメンテナンス時には、一旦、装置内を大気開放する必要が生じる。そして、メンテナンス終了後、再び、電子ビームによるパターン描画のために、描画室内を高真空の状態にする必要がある。そのため、メンテナンス時において、描画装置の長期のダウンタイムが発生してしまい、マスク製造における生産性の低下を生じさせることになる。
【0015】
尚、支持ピンの上部に設けられた頭面球状の支持体部を、着脱可能なボール状の部材によって構成することも考えられる。そうした着脱容易な部材を用いることにより、描画装置のメンテナンス作業を簡便化することができる。しかしながら、支持体部を着脱可能な部材により構成すると、支持ピンの剛性が低下し、支持ピンによって支持される試料の位置検出精度が低下するおそれがある。
【0016】
以上より、例えば、電子ビームを用いて試料へのパターンの描画を行うとともに、試料を載置するステージの支持ピンが劣化した場合のメンテナンス作業を簡便化し、装置のダウンタイムの長期化を抑え、生産性の低下を抑制することができる荷電粒子ビーム描画装置が求められている。
【0017】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、長期のダウンタイムの発生を抑え、生産性の低下を抑制する荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様は、ステージを内蔵する描画室を備え、ステージ上に支持部材を介して載置される試料に荷電粒子ビーム照射手段により荷電粒子ビームを照射して所望のパターンを描画する荷電粒子ビーム描画装置であって、
ステージは、支持部材を3点で支持する第1の支持部を有し、
支持部材は、その少なくとも一部に導電膜が設けられているとともに、試料を3点で支持する第2の支持部を有することを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【0020】
本発明の第1の態様において、第2の支持部の表面に導電膜が設けられていることが好ましい。
【0021】
本発明の第1の態様において、描画室に接続し、試料および支持部材を搬送する搬送手段が設けられた搬送室と、
搬送室に接続し、支持部材が収納される収納室とを有することが好ましい。
【0022】
本発明の第2の態様は、描画室内に設けられたステージの上に試料を載置し、荷電粒子ビームを照射してその試料に所望のパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、
ステージ上の3点に設けられた第1の支持部によって支持されるように、支持部材をそのステージ上に載置する工程と、
その支持部材上の3点に設けられた第2の支持部によって支持されるように、試料を支持部材上に載置する工程と、
試料に荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する工程とを有し、
描画を終えた後は、支持部材を描画室から搬出して収納室に収納する工程および支持部材を描画室から搬出してクリーニングする工程のいずれか一方が選択されることを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法に関する。
【0023】
本発明の第3の態様は、描画室内に設けられたステージの上に試料を載置し、荷電粒子ビームを照射して試料に所望のパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、
ステージ上の3点に設けられた第1の支持部によって支持されるように、支持部材をそのステージ上に載置する工程と、
その支持部材上の3点に設けられた第2の支持部によって支持されるように、試料を支持部材上に載置する工程と、
試料に荷電粒子ビームを照射して所望のパターンを描画する工程と、
描画を終えた後に、試料を支持部材とともに描画室から搬出する工程と、
支持部材をクリーニングする工程とを有することを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法に関する。
【0024】
本発明の第2の態様および第3の態様において、支持部材をクリーニングする工程は、試料上における荷電粒子ビームの照射位置に所定の変化が現れたときに行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1の態様によれば、長期のダウンタイムの発生を抑え、生産性の低下を抑えることができる描画装置を提供することができる。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、使用する描画装置に長期のダウンタイムが発生することを抑え、生産性の低下を抑えることができる描画方法を提供することができる。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、使用する描画装置に長期のダウンタイムが発生することを抑え、生産性の低下を抑えることができる描画方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態の描画装置の構成を示す概略図である。
【図2】本実施の形態の描画装置の描画室に内蔵されたステージおよび支持ホルダの配置構造を模式的に説明する側面図である。
【図3】本実施の形態の支持ホルダの構造を示す模式的な側面図である。
【図4】本実施の形態の描画装置の要部構成を説明する概略図である。
【図5】本実施形態の描画装置を用いたパターンの描画について説明する図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の描画装置の別の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
本発明の第1の実施形態は、描画対象となる試料であるマスクに、荷電粒子ビームである電子ビームを照射して所定のパターンを描画する荷電粒子ビーム描画装置である。以下、本発明の第1の実施形態の荷電粒子ビーム描画装置を、単に、描画装置と称する。
【0030】
図1は、本発明の第1の実施形態の描画装置の構成を示す概略図である。
【0031】
本実施形態の描画装置100は、ステージSt上に載置されたマスクMに電子ビームを照射してパターンの描画を行う描画室1と、描画室1に接続して隣接する位置に配置され、搬送手段である搬送ロボットRを内蔵するロボット室2と、ロボット室2に接続して描画室1と反対側で隣接する位置に配置されたロードロック室5と、ロードロック室5にロボット室2と反対側で隣接する位置に配置されたマスク投入装置7とを備えている。マスクMとしては、例えば、石英基板の上面側にレジスト層を配置し、下面側に導電性のクロム膜を配置して構成されたEUVマスクとすることが可能である。尚、ロボット室2は、本発明における搬送室に対応する。
【0032】
描画装置100の、ロボット室2と描画室1との間、ロボット室2とロードロック室5との間およびロードロック室5とマスク投入装置7との間には、それぞれゲートバルブ3、6、8が設けられている。さらに、ロボット室2の描画室1およびロードロック室5に隣接しない周囲には、マスクMの位置決めを行うアライメント室4と、このアライメント室4と対向する位置に、後に詳述するマスクMの支持部材である、本実施形態の支持ホルダ40を収納する収納室9が接続して配置されている。ロードロック室5は、例えば、外部から描画装置100内にマスクMを投入するに際し、描画室1やロボット室2等を大気開放しないように機能する。
【0033】
マスクMにパターンの描画を行う前、マスクMの支持部材である支持ホルダ40は、ロボット室2に接続する収納室9に収納されており、マスクMへの描画を開始するにあたり、搬送ロボットRによって収納室9から取り出される。その後、ゲートバルブ3が開かれ、支持ホルダ40は、描画室1内に搬送され、ステージSt上に載置される。
【0034】
次いで、描画対象となるマスクMが、図示省略するロボットによりマスク投入装置7からロードロック室5に投入される。そして、ゲートバルブ8を閉じられ、ロードロック室5が真空にされた後、ゲートバルブ6が開かれ、搬送ロボットRによってマスクMはロードロック室5からアライメント室4に搬送される。
【0035】
アライメント室4でアライメント(位置決め)が行われると、次に、ゲートバルブ3が開かれ、搬送ロボットRによりマスクMはアライメント室4から描画室1内に搬送される。そして、マスクMは、描画室1のステージStの上に載置された支持ホルダ40の上に載置される。
【0036】
図2は、本実施の形態の描画装置の描画室に内蔵されたステージおよび支持ホルダの配置構造を模式的に説明する側面図である。
【0037】
荷電粒子ビームである電子ビームを用いてパターンの描画を行う描画装置100は、所望の方向に移動可能なステージStを描画室1内に内蔵して有する。
【0038】
本実施形態の描画装置100の描画室1のステージStは、上面の周辺部に、第1の支持部である支持ピン43が設けられている。支持ピン43は、柱状体とすることができ、その上部の先端面に、頭面が球状の支持体部44を設けて構成することができる。本実施形態の描画装置100の描画室1のステージStは、例えば、3個の支持ピン43を有することができる。
【0039】
本実施形態の描画装置100は、描画室1のステージStの上に、支持部材である支持ホルダ40を載置することができる。そして、支持ホルダ40の上にマスクMが載置される。したがって、ステージStの支持ピン43はマスクMに直接接触することはなく、マスクMからの剥離物がステージStの支持ピン43に付着することはない。支持ホルダ40は、上述したように、収納室9に収納されており、マスクMへのパターンの描画の前に取り出され、搬送されてステージSt上に載置される。
【0040】
ステージSt上での支持ホルダ40の支持は、上述したように、ステージStの上面に配置された第1の支持部である支持ピン43によって行われる。本実施の形態の描画装置100では、ステージStは、上述したように、その上面に3個の支持ピン43を有する。したがって、描画装置100では、描画室1のステージSt上に配置された3個の支持ピン43が、その上部に配置された頭面球状の支持体部44により、支持ホルダ40と下方から接し、支持ホルダ40を3点で支持している。支持ホルダ40を4点以上で支持しようとする場合、支持ピン43について高精度の高さ調整が必要となり、高さ調整が不十分であると、支持ホルダ40に変形が生じてしまう。したがって、本実施の形態の描画装置100では、ステージSt上での支持ホルダ40の支持が、3点支持によってなされている。
【0041】
図3は、本実施の形態の支持ホルダの構造を示す模式的な側面図である。
【0042】
図3に示すように、本実施の形態の支持ホルダ40は、板状体41の上面の周辺部に、第2の支持部である、頭面が球状の支持部42を配置して構成されている。本実施形態の描画装置100は、描画室1のステージSt上の支持ホルダ40の上に描画対象であるマスクMを載置し、荷電粒子ビームである電子ビームを用いたパターンの描画を行うことができる。
【0043】
支持ホルダ40上でのマスクMの支持は、支持ホルダ40の上面に配置された支持部42によって行われる。支持ホルダ40では、その上面の周辺部に3個の支持部42を設けることができる。したがって、本実施の形態の描画装置100では、描画室1のステージSt上に支持ホルダ40を載置し、その支持ホルダ40が、上面に配置された頭面球状の支持部42により、マスクMと下方から3点で接し、マスクMの3点支持を実現することができる。マスクMを4点以上で支持しようとする場合、支持部42について高精度の高さ調整が必要となり、高さ調整が不十分であると、マスクMに変形が生じてしまう。したがって、本実施の形態の描画装置100では、支持ホルダ40上でのマスクMの支持が、3点支持によってなされている。
【0044】
このとき、支持ホルダ40の支持部42の形状は、頭面が球状となる形状のみに限られるわけではない。マスクMとの点接触を可能とする他の形状の選択が可能である。例えば、断面が三角形状となる円錐形状や三角錐形状や四角錐形状とすること等が可能である。尚、ここで言う点接触とは、厳密な点による接触のみを意図するものではない。支持部42のマスクMと接触する先端部分は、マスクMを変形させない程度の許容できる範囲で面積を有している。
【0045】
さらに、支持ホルダ40の支持部42は、支持ホルダ40上でのマスクMのスリップ(以下、マスクスリップとも言う。)を防止するため、支持部42の断面が台形や長方形となる形状を選択することも可能である。その場合、マスクMと接する支持部42の頭面は平面となり、頭面が平面の3個の支持部42によりマスクMの3点支持を実現することができる。
【0046】
支持ホルダ40は、例えば、窒化ケイ素(SiC)等、高強度のセラミクス材を用いて構成することが好ましい。そして、支持ホルダ40は、マスクMより大きな面積を有することや、小さい面積とすることが可能である。
【0047】
支持ホルダ40がマスクMより大きな面積である場合には、マスクMへの描画時等で、電子ビームの照射を受けることがある。同様に、支持ホルダ40がマスクMより小さな面積であっても、マスクMを載置しない状態で描画装置100の動作確認を行う場合等があって電子ビームの照射を受けることがある。そうした場合に、照射された電子ビームによって支持ホルダ40に電荷が溜まる懸念がある。こうした電荷の蓄積は、特に、支持ホルダ40の支持部42の先端部分に起こりやすいと考えられる。そのため、支持ホルダ40の支持部42の配置面の全面またはその少なくとも一部に、導電コートを施し、図示されない導電膜を設けることが好ましい。そして、支持ホルダ40の一部に導電膜を設ける場合、支持ホルダ40の支持部42の表面に導電膜を設けることが好ましく、特に、上部の頭面にのみ導電コートすることが好ましい。支持ホルダ40の少なくとも一部に設けられる導電膜の材料としては、金属チタン(Ti)を用いた材料の使用が好ましい。
【0048】
図2に示すように、本実施形態の描画装置100では、ステージSt上で、第1の支持部である支持ピン43を用いて支持ホルダ40を3点で支持する。支持ホルダ40上では、第2の支持部である支持部42を用い、マスクMを3点で支持する。そしてさらに、マスクMを支持する3点の重心がマスクMの重心と一致するようにすることが好ましい。ステージSt上での支持ホルダ40の3点支持を実現することにより、支持される支持ホルダ40の変形を最小限に抑えることができる。そして、支持ホルダ40上で、上述のように、マスクMの重心を考慮した3点支持を実現することにより、支持されるマスクMの変形を最小限に抑えることができる。
【0049】
このとき、ステージSt上に支持ホルダ40が載置されたときに、支持ホルダ40の3点支持を実現するステージStの支持ピン43の支持体部44の配設位置と、マスクMの3点支持を実現する支持ホルダ40の支持部42の配設位置は一致していることが好ましい。すなわち、図2に示すように、各支持ピン43の各支持体部44の上に各支持部42が位置するように構成することが好ましい。より具体的には、ステージSt上に支持ホルダ40が載置された状態で、支持ピン43の支持体部44の形成領域と対向する、支持ホルダ40の板状体41の領域の近傍に支持部42が配設されることが好ましい。そして、支持ピン43の支持体部44の形成領域と対向する支持ホルダ40の領域内に、支持部42とマスクMとの接点が形成されるように構成することが好ましい。
【0050】
次に、第1実施形態の描画装置100について、電子ビーム照射してマスクMに描画を行うための他の構成についてより詳細に説明する。
【0051】
図4は、本実施の形態の描画装置の要部構成を説明する概略図である。
【0052】
図4において、描画装置100の描画室1内には、上述したように、ステージStが内蔵されている。ステージSt上には、図2に示した支持ピン43(図4では図示を省略。)の各支持体部44(図4では図示を省略。)の上に各支持部42(図4では図示を省略。)が位置するように本実施形態の支持ホルダ40が載置され、支持ホルダ40は3点で支持されている。そして、支持ホルダ40の上には、図2に示した支持部42(図4では図示を省略。)より3点支持され、電子ビームによる描画がなされるマスクMが設置される。ステージStは、ステージ駆動回路104によりX方向(紙面における左右方向)とY方向(紙面における垂直方向)に駆動される。ステージStの移動位置は、レーザ測長計等を用いた位置回路105により測定される。
【0053】
描画室1の上方には、電子ビーム光学系110が設置されている。この電子ビーム光学系110は、荷電粒子ビーム照射手段として荷電粒子ビームである電子ビームの照射が可能な電子銃106、各種レンズ107、108、109、111、112、ブランキング用偏向器113、成形偏向器114、ビーム走査用の主偏向器115、ビーム走査用の副偏向器116、および、ビーム成形用の第1のアパーチャ117および第2のアパーチャ118等から構成されている。
【0054】
図5は、本実施形態の描画装置を用いたパターンの描画について説明する図である。
【0055】
図5に示すように、マスクM上に描画されるパターン51は、短冊状のフレーム領域52に分割されている。電子ビーム54による描画は、ステージStが一方向(例えば、X方向)に連続移動しながら、フレーム領域52毎に行われる。フレーム領域52は、さらに副偏向領域53に分割されており、電子ビーム54は、副偏向領域53内の必要な部分のみを描画する。尚、フレーム領域52は、主偏向器115の偏向幅で決まる短冊状の描画領域であり、副偏向領域53は、副偏向器116の偏向幅で決まる単位描画領域である。
【0056】
副偏向領域53内での電子ビーム54の位置決めは、主偏向器115で行われ、副偏向領域53内での描画は、副偏向器116によって制御される。すなわち、主偏向器115によって、電子ビーム54が所定の副偏向領域53に位置決めされ、副偏向器116によって、副偏向領域53内での描画位置が決められる。さらに、成形偏向器114とビーム成形用アパーチャ117、118によって、電子ビーム54の形状と寸法が決められる。そして、ステージStを一方向に連続移動させながら、副偏向領域53内を描画し、1つの副偏向領域53の描画が終了したら、次の副偏向領域53を描画する。フレーム領域52内の全ての副偏向領域53の描画が終了したら、ステージStを連続移動させる方向と直交する方向(例えば、Y方向)にステップ移動させる。その後、同様の処理を繰り返して、フレーム領域52を順次描画して行く。
【0057】
図4で、記憶媒体である磁気ディスク121には、マスクMの描画データが格納されている。磁気ディスク121から読み出された描画データは、フレーム領域52毎にパターンメモリ122に一時的に格納される。パターンメモリ122に格納されたフレーム領域52毎のパターンデータ、すなわち、描画位置や描画図形データ等で構成されるフレーム情報は、データ解析部であるパターンデータデコーダ123と描画データデコーダ124に送られる。
【0058】
パターンデータデコーダ123からの情報は、ブランキング回路125とビーム成形器ドライバ126に送られる。具体的には、パターンデータデコーダ123で上記データに基づいたブランキングデータが作成され、ブランキング回路125に送られる。また、所望とするビーム寸法データも作成されて、ビーム成形器ドライバ126に送られる。そして、ビーム成形器ドライバ126から、電子ビーム光学系110の成形偏向器114に所定の偏向信号が印加されて、電子ビーム54の寸法が制御される。
【0059】
制御計算機120には、偏向制御部132が接続している。偏向制御部132は、セトリング時間決定部131に接続し、セトリング時間決定部131は、副偏向領域偏向量算出部130に接続し、副偏向領域偏向量算出部130は、パターンデータデコーダ123に接続している。また、偏向制御部132は、ブランキング回路125と、ビーム成形器ドライバ126と、主偏向器ドライバ127と、副偏向器ドライバ128とに接続している。
【0060】
描画データデコーダ124の出力は、主偏向器ドライバ127と副偏向器ドライバ128に送られる。そして、主偏向器ドライバ127から、電子ビーム光学系110の主偏向器115に所定の偏向信号が印加されて、電子ビーム54が所定の主偏向位置に偏向走査される。また、副偏向器ドライバ128から、副偏向器116に所定の副偏向信号が印加されて、副偏向領域53内での描画が行われる。
【0061】
次に、制御計算機120による描画制御について説明する。
制御計算機120は、記憶媒体で磁気ディスク121に記録されたマスクMの描画データを読み出す。読み出された描画データは、フレーム領域52毎にパターンメモリ122に一時的に格納される。
【0062】
パターンメモリ122に格納されたフレーム領域52毎の描画データ、つまり、描画位置や描画図形データ等で構成されるフレーム情報は、データ解析部であるパターンデータデコーダ123と描画データデコーダ124を介して、副偏光領域偏向量算出部130、ブランキング回路125、ビーム成形器ドライバ126、主偏向器ドライバ127、副偏向器ドライバ128に送られる。
【0063】
パターンデータデコーダ123では、描画データに基づいてブランキングデータが作成されてブランキング回路125に送られる。また、描画データに基づいて所望とするビーム形状データが作成されて副偏向領域偏向量算出部130とビーム成形器ドライバ126に送られる。
【0064】
副偏向領域偏向量算出部130は、パターンデータデコーダ123により作成したビーム形状データから、副偏向領域53における、1ショットごとの電子ビームの偏向量(移動距離)を算出する。算出された情報は、セトリング時間決定部131に送られ、副偏向による移動距離に対応したセトリング時間が決定される。
【0065】
セトリング時間決定部131で決定されたセトリング時間は、偏向制御部132へ送られた後、パターンの描画のタイミングを計りながら、偏向制御部132より、ブランキング回路125、ビーム成形器ドライバ126、主偏向器ドライバ127、副偏向器ドライバ128のいずれかに適宜送られる。
【0066】
ビーム成形器ドライバ126では、電子ビーム光学系110の成形偏向器114に所定の偏向信号が印加されて、電子ビーム54の形状と寸法が制御される。
【0067】
描画データデコーダ124では、描画データに基づいて副偏向領域53の位置決めデータが作成され、このデータは主偏向器ドライバ127に送られる。次いで、主偏向器ドライバ127から主偏向器115へ所定の偏向信号が印加されて、電子ビーム54は、副偏向領域53の所定位置に偏向走査される。
【0068】
描画データデコーダ124では、描画データに基づいて、副偏向器116の走査のための制御信号が生成される。制御信号は、副偏向器ドライバ128に送られた後、副偏向器ドライバ128から副偏向器116に所定の副偏向信号が印加される。副偏向領域53内での描画は、設定されたセトリング時間が経過した後、電子ビーム54を繰り返し照射することによって行われる。
【0069】
以上の構造を有する描画装置100では、マスクMをステージSt上の支持ホルダ40の上に載置し、描画室1内で、マスクMを移動させながら電子ビームを照射して所定のパターンを描画することができる。
【0070】
描画装置100では、電子ビーム照射によるマスクMへの描画作業の後、支持ホルダ40上に載置された状態のままで、マスクMを搬送ロボットRにより描画室1から搬出することができる。その場合、図1に示すように、マスクMと支持ホルダ40は、ゲートバルブ3およびゲートバルブ6を通ってロードロック室5に搬送される。ロードロック室5では、ゲートバルブ6が閉じられた後、ゲートバルブ8が開かれ、描画室1やロボット室2等を大気開放すること無く、マスクMと支持ホルダ40を描画装置100の外部に搬出することができる。
【0071】
このとき、描画装置100では、装置外部に搬出された支持ホルダ40の支持部42等に付着物等が見られ、また、劣化が確認された場合に、支持ホルダ40のクリーニング等のメンテナンスが行われ、支持ホルダ40のマスク支持性能の回復が行われる。
【0072】
また、描画装置100は、支持ホルダ40を描画処理後のマスクMを載置したまま、描画処理毎に装置外に搬出することをせず、マスクMのみをロードロック室5を通して装置外に搬送することも可能である。その場合、描画室1のステージSt上にある支持ホルダ40は、マスクMが取り外された後、収納室9に搬送される。そして、収納室9で、付着物の有無や劣化の有無が検査され、クリーニング等のメンテナンスの必要性が判断される。
【0073】
図6は、本発明の第1の実施形態の描画装置の別の例を示す概略図である。
【0074】
第1の実施形態の描画装置の別の例である描画装置200は、図6に示すように、収納室9に隣接する位置に、支持部材である支持ホルダ40を装置外に搬出するための出入チャンバ46を設けて構成される。そして、出入チャンバ46と収納室9との間と、出入チャンバ46の装置外と通じる部分にゲートバルブ47、48が設けられている。描画装置200は、出入チャンバ46およびゲートバルブ47、48を設けた以外は、上述した描画装置100と同様の構成を有する。したがって、共通する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0075】
描画装置200は、図6に示すように、収納室9に隣接する位置に出入チャンバ46を配置して有する。描画装置200では、描画室1のステージSt上でのマスクMでの描画作業の終了後、マスクMのみを搬送ロボットRにより描画室1から取り出すことができる。そして、マスクMは、ゲートバルブ3およびゲートバルブ6を通ってロードロック室5に搬送される。ロードロック室5では、ゲートバルブ6が閉じられた後、ゲートバルブ8が開かれ、マスクMを、描画室1内を大気開放すること無く、描画装置100の外部に搬出することができる。
【0076】
一方、描画室1のステージSt上の支持ホルダ40は、搬送ロボットRにより描画室1から搬出され、収納室9に収納される。収納室9に収納された支持ホルダ40において、支持部42に付着物が付着する等、劣化が確認された場合には、ゲートバルブ47が開かれ、支持ホルダ40を出入チャンバ46に搬送することができる。次いで、ゲートバルブ47が閉じられ、その後ゲートバルブ48が開かれて、描画室1内等を大気開放すること無く、支持ホルダ40を装置外に取り出すことができる。そして、劣化した支持ホルダ40のクリーニングや、支持ホルダ40の交換等のメンテナンスを行うことができ、支持ホルダ40のマスク支持性能の回復を行うことができる。
【0077】
メンテナンス終了の後、支持ホルダ40を、ゲートバルブ47が閉じられた状態の出入チャンバ46に、ゲートバルブ48を通して投入することができる。そして、ゲートバルブ48が閉じられ、出入チャンバ46内が高真空の状態にされた後、ゲートバルブ47を開くことができ、支持ホルダ40を、ゲートバルブ47を通過させて収納室9に搬送することができる。収納室9に搬送された支持ホルダ40は、その後、マスクMのパターン描画のために、描画室1のステージSt上に搬送することができる。
【0078】
〔実施の形態2〕
次に、本発明の第2の実施形態である荷電粒子ビーム描画方法について説明する。
【0079】
第2実施形態の荷電粒子ビーム描画方法は、荷電粒子ビームである電子ビームを用いた描画方法である。そして、上述した本発明の荷電粒子ビーム描画装置の一態様である描画装置100を用いて、試料であるマスクMへの電子ビームによる描画を行うことができる。マスクMは、上述したように、例えば、石英基板の上面側にレジスト層を配置し、下面側に導電性のクロム膜が配置して構成されたEUVマスクとすることができる。以下、第2実施形態の荷電粒子ビーム描画方法を、単に、描画方法と称し、図面を参照しながら説明する。
【0080】
描画装置100では、図1に示したように、描画室1に隣接する位置に、搬送ロボットRを内蔵するロボット室2が配置され、ロボット室2の描画室1に隣接しない周囲には、マスクMの位置決めを行うアライメント室4と、このアライメント室4と対向する位置に、支持ホルダ40を収納する収納室9が配置されている。
【0081】
したがって、電子ビームを用いたマスクMへの描画の前に、描画室1の外部に設けられた収納室9に収納された、支持部材である支持ホルダ40を、搬送ロボットRにより収納室9から取り出す。次いで、ロボット室2と描画室1との間のゲートバルブ3を開き、支持ホルダ40を描画室1内に搬送する。そして、図2に示すように、ステージStの支持ピン43の支持体部44の上に、支持ホルダ40の支持部42が位置するように、ステージSt上に支持ホルダ40を載置する。ステージSt上では、図2に示すように、支持ホルダ40が、ステージStの上面に設けられた3個の支持ピン43の支持体部44により3点で支持されている。
【0082】
次いで、描画対象となるマスクMを、図示省略するロボットによりマスク投入装置7からロードロック室5に投入する。そして、ゲートバルブ8を閉じ、ロードロック室5を高真空の状態にした後、ゲートバルブ6を開き、搬送ロボットRによってマスクMをロードロック室5からアライメント室4に搬送する。
【0083】
アライメント室4でアライメント(位置決め)を行うと、次に、ゲートバルブ3を開き、搬送ロボットRによりマスクMをアライメント室4から描画室1内に搬送する。そして、マスクMを、描画室1のステージStの上に載置された支持ホルダ40の上に設置する。
【0084】
支持ホルダ40では、板状体41の上面に設けられた3個の支持部42を用いてマスクMを3点で支持する。支持部42によるマスクMの3点の支持位置は、マスクMの重心位置と実質的に一致している。こうしたマスクMの3点支持を実現することにより、マスクMの変形は抑制され、安定的なマスクMの支持が可能となる。
【0085】
そして、図4に示すように、ステージStの位置検出を位置回路105により行い、制御計算機120からの信号に基づいて、ステージ駆動回路104によりステージStを描画可能な位置まで移動させる。
【0086】
次に、図4に示すように電子銃106より電子ビーム54を出射する。出射された電子ビーム54は、照明レンズ107により集光される。そして、ブランキング用偏向器113により、電子ビーム54をマスクMに照射するか否かの操作を行う。
【0087】
第1のアパーチャ117に入射した電子ビーム54は、第1のアパーチャ117の開口部を通過した後、ビーム成形器ドライバ126により制御された成形偏向器114によって偏向される。そして、第2のアパーチャ118に設けられた開口部を通過することにより、所望の形状と寸法を有するビーム形状になる。このビーム形状は、マスクMに照射される電子ビーム54の描画単位である。
【0088】
電子ビーム54は、ビーム形状に成形された後、縮小レンズ111によって縮小される。そして、マスクM上における電子ビーム54の照射位置は、主偏向器ドライバ127によって制御された主偏向器115と、副偏向器ドライバ128によって制御された副偏向器116とにより制御される。主偏向器115は、マスクM上の副偏向領域53に電子ビーム54を位置決めする。また、副偏向器116は、副偏向領域53内で描画位置を位置決めする。
【0089】
マスクMへの電子ビーム54による描画は、ステージStを一方向に移動させながら、電子ビーム54を走査することにより行われる。具体的には、ステージStを一方向に移動させながら、各副偏向領域53内におけるパターンの描画を行う。そして、1つのフレーム領域52内にある全ての副偏向領域53の描画を終えた後は、ステージStを新たなフレーム領域52に移動して同様に描画する。
【0090】
上述のようにして、マスクMの全てのフレーム領域52の描画を終えた後、マスクMを、支持ホルダ40上に載置された状態のまま、搬送ロボットRを用いて支持ホルダ40とともに描画室1から搬出する。そして、ロボット室2を通して、ロードロック室5に搬入する。次いで、ゲートバルブ6を閉じ、その後にゲートバルブ8を開いて、マスク投入装置7から描画後のマスクMと支持ホルダ40とを装置外に搬出する。
【0091】
搬出されたマスクMは、支持ホルダ40上から取り外され、所定の検査が行われる。その結果、マスクMの描画パターンや描画パターンの周囲に設けられたテストパターンに、マスクスリップ等による描画異常が発見された場合には、支持ホルダ40のクリーニング等、メンテナンスを行うようにする。尚、スリップが発生すると、マスクM上における電子ビームの照射位置に所定の変化、すなわち、理想的な照射位置から回転するなどの変化が現れる。
【0092】
本実施の形態においては、描画後のマスクMの搬出毎に、支持ホルダ40のクリーニング等、メンテナンスを行ってもよい。こうして、本実施の形態の描画方法では、マスクMへの描画の後、描画室1等を大気開放すること無く、支持ホルダ40を装置外に搬出し、そのメンテナンスを行うことができる。
【0093】
また、本実施の形態の描画方法は、上述した描画装置100と異なり、描画室1の外部にマスクMの収納室を有しない描画装置を用いた場合でも、同様に実施することができる。すなわち、電子ビームを用いたマスクMへの描画の前に、マスク投入装置7を用いて支持ホルダ40のみを搬送ロボットRにより描画室1内に搬送し、ステージSt上に載置する。その後、上記と同様の方法により、支持ホルダ40上にマスクMを設置し、電子ビームを用いた描画を行い、描画後にマスクMを支持ホルダ40とともに装置外に搬出して、必要な支持ホルダ40のメンテナンスを行う。この場合でも、マスクMへの描画の後、描画室1等を大気開放すること無く、支持ホルダ40を装置外に搬出し、そのメンテナンスを行うことができる。
【0094】
次に、本実施の形態の描画方法の別の例について説明する。
【0095】
本実施形態の描画方法の別の例では、上述した描画装置200を用い、上述した本実施の形態の描画方法と同様に、電子ビームを用いたマスクMへの描画を行う。その後、マスクMとは別に、支持ホルダ40を、描画室1等を大気開放すること無く、装置外に取り出し、そのメンテナンスを行うことができる。
以下、図面を用いて本実施の形態の描画方法の別の例について説明する。
【0096】
描画装置200では、図6に示すように、描画室1に隣接する位置に、搬送ロボットRを内蔵するロボット室2が配置され、ロボット室2の描画室1に隣接しない周囲には、マスクMの位置決めを行うアライメント室4と、このアライメント室4と対向する位置に、支持ホルダ40を収納する収納室9が配置されている。そして、描画装置200は、図6に示すように、収納室9に隣接する位置に、支持ホルダ40を装置外に搬出するための出入チャンバ46を設けて構成されている。出入チャンバ46と収納室9との間と、出入チャンバ46の装置外と通じる部分には、ゲートバルブ47、48が設けられている。
【0097】
描画装置200を用いた本実施の形態の描画方法の別の例では、電子ビームを用いたマスクMへの描画の前に、描画室1の外部に設けられた収納室9に収納された支持ホルダ40を、搬送ロボットRにより収納室9から取り出す。次いで、ロボット室2と描画室1との間のゲートバルブ3を開き、支持ホルダ40を描画室1内に搬送する。そして、図2に示すように、ステージStの支持ピン43の支持体部44の上に、支持ホルダ40の支持部42が位置するように、ステージSt上に支持ホルダ40を載置する。ステージSt上では、図2に示すように、支持ホルダ40が、ステージStの上面に設けられた3個の支持ピン43の支持体部44により3点で支持されている。
【0098】
次いで、描画対象となるマスクMを、図示省略するロボットによりマスク投入装置7からロードロック室5に投入する。そして、ゲートバルブ8を閉じ、ロードロック室5を高真空の状態にした後、ゲートバルブ6を開き、搬送ロボットRによってマスクMをロードロック室5からアライメント室4に搬送する。
【0099】
アライメント室4でアライメント(位置決め)を行うと、次に、ゲートバルブ3を開き、搬送ロボットRによりマスクMをアライメント室4から描画室1内に搬送する。そして、マスクMを、描画室1のステージStの上に載置された支持ホルダ40の上に設置する。
【0100】
支持ホルダ40では、板状体41の上面に設けられた3個の支持部42を用いてマスクMを3点で支持する。支持部42によるマスクMの3点の支持位置は、マスクMの重心位置と実質的に一致している。こうした3点支持を実現することにより、マスクMの変形は抑制され、安定的なマスクMの支持が可能となる。
【0101】
そして、図4に示すように、ステージStの位置検出を位置回路105により行い、制御計算機120からの信号に基づいて、ステージ駆動回路104によりステージStを描画可能な位置まで移動させる。その後、上述した本実施の形態の描画方法と同様に、電子ビームを用いたマスクMへの描画を行う。
【0102】
上述したように、マスクMの全てのフレーム領域52の描画を終えた後、搬送ロボットRを用いて、マスクMを支持ホルダ40上から取り外し、マスクMのみを、搬送ロボットRを用いて描画室1から搬出する。そして、ロボット室2を通して、ロードロック室5に搬入する。次いで、ゲートバルブ6を閉じ、その後にゲートバルブ8を開いて、描画室1等を大気開放すること無く、マスク投入装置7から描画後のマスクMを装置外に搬出する。搬出された描画後のマスクMは、所定の検査が行われる。
【0103】
次に、マスクMの取り外された支持ホルダ40を、搬送ロボットRを用いてステージSt上から取り外し、支持ホルダ40を、搬送ロボットRを用いて描画室1から搬出する。そして、ロボット室2を通して、収納室9に搬入する。
【0104】
そして、マスクスリップ等によってマスクM上における電子ビームの照射位置に所定の変化が現れ、上述した描画後のマスクMの検査の結果、マスクMの描画パターンや描画パターンの周囲に設けられたテストパターンに描画異常が発見された場合には、収納室9内の支持ホルダ40のクリーニング等、メンテナンスを行うようにする。すなわち、ゲートバルブ47を開いて、支持ホルダ40を出入チャンバ46に搬入する。次いで、ゲートバルブ47を閉じ、その後にゲートバルブ48を開いて、描画室9等を大気開放すること無く、支持ホルダ40を装置外に搬出する。搬出された支持ホルダ40対し、クリーニング等のメンテナンスを行う。
【0105】
尚、支持ホルダ40のメンテナンスの頻度については、描画後のマスクMの検査結果によらず、決められた個数のマスクMへの描画が行われた後に必ず行うようにすることも可能である。
【0106】
こうして、本実施の形態の描画方法の別の例では、マスクMへの描画の後、描画室1等を大気開放すること無く、収納室9から支持ホルダ40を装置外に搬出し、そのメンテナンスを行うことができる。
【0107】
このメンテナンスの後の支持ホルダ40は、ゲートバルブ48、出入チャンバ46およびゲートバルブ47を通して、収納室9に収納され、次のマスクMへの描画のために使用される。
【0108】
尚、描画装置200を用いた本実施の形態の描画方法の別の例では、マスクMへの描画の後にマスクMが取り外された後、支持ホルダ40を収納室9に搬送すること無く、ステージSt上にそのまま設置しておくことも可能である。
【0109】
すなわち、マスクMへの描画を終え、マスクMを支持ホルダ40上から取り外した後、支持ホルダ40をステージSt上に載置されたまま、マスクMの検査結果を待つようにすることが可能である。描画後のマスクの検査の結果、マスクMの描画パターン等にマスクスリップ等による描画異常が発見された場合には、ステージSt上から支持ホルダ40を取り外し、上述したのと同様に収納室9に搬送して、出入チャンバ46を通して装置外に搬送し、クリーニング等のメンテナンスを行うようにする。
【0110】
一方、描画後の検査で、マスクMの描画パターンに描画異常等の性能劣化が見られなかった場合には、支持ホルダ40は、ステージSt上に載置されたままの状態が維持され、次の描画対象試料であるマスクMが描画室1内に搬入されるのを待って、マスクMを載置するようにすることができる。
【0111】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0112】
例えば、上記実施の形態では電子ビームを用いたが、本発明はこれに限られるものではなく、イオンビームなどの他の荷電粒子ビームを用いた場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
M マスク
R 搬送ロボット
St ステージ
1 描画室
2 ロボット室
3、6、8、47、48 ゲートバルブ
4 アライメント室
5 ロードロック室
7 マスク投入装置
9 収納室
40 支持ホルダ
41 板状体
42 支持部
43 支持ピン
44 支持体部
46 出入チャンバ
51 描画されるパターン
52 フレーム領域
53 副偏向領域
54 電子ビーム
100、200 描画装置
104 ステージ駆動回路
105 位置回路
106 電子銃
107、108、109、111、112 レンズ
110 電子ビーム光学系
113 ブランキング用偏向器
114 成形偏向器
115 主偏向器
116 副偏向器
117 第1のアパーチャ
118 第2のアパーチャ
120 制御計算機
121 磁気ディスク
122 パターンメモリ
123 パターンデータデコーダ
124 描画データデコーダ
125 ブランキング回路
126 ビーム成形器ドライバ
127 主偏向器ドライバ
128 副偏向器ドライバ
130 副偏向領域偏向量算出部
131 セトリング時間決定部
132 偏向制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージを内蔵する描画室を備え、前記ステージ上に支持部材を介して載置される試料に荷電粒子ビーム照射手段により荷電粒子ビームを照射して所望のパターンを描画する荷電粒子ビーム描画装置であって、
前記ステージは、前記支持部材を3点で支持する第1の支持部を有し、
前記支持部材は、その少なくとも一部に導電膜が設けられているとともに、前記試料を3点で支持する第2の支持部を有することを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記第2の支持部の表面に前記導電膜が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記描画室に接続し、前記試料および前記支持部材を搬送する搬送手段が設けられた搬送室と、
前記搬送室に接続し、前記支持部材が収納される収納室とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
描画室内に設けられたステージの上に試料を載置し、荷電粒子ビームを照射して前記試料に所望のパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、
前記ステージ上の3点に設けられた第1の支持部によって支持されるように、支持部材を前記ステージ上に載置する工程と、
前記支持部材上の3点に設けられた第2の支持部によって支持されるように、前記試料を前記支持部材上に載置する工程と、
前記試料に荷電粒子ビームを照射して前記パターンを描画する工程とを有し、
前記描画を終えた後は、前記支持部材を前記描画室から搬出して収納室に収納する工程および前記支持部材を前記描画室から搬出してクリーニングする工程のいずれか一方が選択されることを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項5】
描画室内に設けられたステージの上に試料を載置し、荷電粒子ビームを照射して前記試料に所望のパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、
前記ステージ上の3点に設けられた第1の支持部によって支持されるように、支持部材を前記ステージ上に載置する工程と、
前記支持部材上の3点に設けられた第2の支持部によって支持されるように、前記試料を前記支持部材上に載置する工程と、
前記試料に荷電粒子ビームを照射して前記パターンを描画する工程と、
前記描画を終えた後に、前記試料を前記支持部材とともに前記描画室から搬出する工程と、
前記支持部材をクリーニングする工程とを有することを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115219(P2013−115219A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259591(P2011−259591)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】