荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法
【目的】パターン面積密度計算と近接効果補正計算とを効率的に行なう荷電粒子ビーム描画装置を提供する。
【構成】描画する際のショット数が互いに略同一になるように描画領域を複数の第1のブロック領域に分割する分割部と、描画領域を、第1のブロック領域のいずれよりも小さい複数の第1の小領域と、第1の小領域よりも小さい複数の第2の小領域とを用いて、第1のブロック領域毎に、パターン面積密度を計算する面積密度計算部と、描画領域を改めて第1および第2の小領域の数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域に分割する分割部と、第2のブロック領域毎に、近接効果補正照射量を計算する補正照射量計算部と、荷電粒子ビームのビーム照射量を近接効果補正照射量を用いて計算するビーム照射量計算部と、試料に所定のパターンを描画する描画部と、を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【構成】描画する際のショット数が互いに略同一になるように描画領域を複数の第1のブロック領域に分割する分割部と、描画領域を、第1のブロック領域のいずれよりも小さい複数の第1の小領域と、第1の小領域よりも小さい複数の第2の小領域とを用いて、第1のブロック領域毎に、パターン面積密度を計算する面積密度計算部と、描画領域を改めて第1および第2の小領域の数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域に分割する分割部と、第2のブロック領域毎に、近接効果補正照射量を計算する補正照射量計算部と、荷電粒子ビームのビーム照射量を近接効果補正照射量を用いて計算するビーム照射量計算部と、試料に所定のパターンを描画する描画部と、を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(レチクル或いはマスクともいう。)が必要となる。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、高精度の原画パターンの生産に用いられる。
【0003】
上述した電子ビーム描画では、より高精度な試料面内、例えばマスク面内の線幅均一性が求められている。ここで、かかる電子ビーム描画では、電子ビームをレジストが塗布されたマスクに照射して回路パターンを描画する場合、電子ビームがレジスト層を透過してその下の層に達し、再度レジスト層に再入射する後方散乱による近接効果と呼ばれる現象が生じてしまう。これにより、描画の際、所望する寸法からずれた寸法に描画されてしまう寸法変動が生じてしまう。
【0004】
この近接効果を補正するために、回路パターン全体を、例えば、0.5μm角程度の小領域に分割し影響度マップ作成を行なう。そして、この影響度マップをもとに、補正を行い、描画するための電子ビームの照射量を算出する。
【0005】
従来の近接効果補正計算では、例えば、以下の方法が用いられる。チップ領域を同じ大きさの計算領域(ブロック領域)に分割して、このブロック領域毎に補正計算を行なう。ここで、計算を行なう際、ブロック領域をさらに小さくメッシュ状の小領域に分割して計算される。また、この小領域によって切り取られる内部の図形の面積を累積加算したパターン面積密度を小領域の位置で定義したパターン面積密度マップがブロック領域毎に作成される。そして、近接効果補正計算では、このパターン面積密度マップが用いられる。
【0006】
ここで、パターン面積密度計算の計算時間は、ショット数に比例する。そのため、同じ大きさのブロック領域では、ショット数にばらつきが生じるためブロック領域毎の計算時間がばらばらとなり効率的に計算できないといった問題がある。そこで、各ブロック領域に含まれるショット数が同程度になるようにブロック領域の大きさを変えることにより、各ブロック領域間での計算時間を同程度にする。
【0007】
一方、近接効果補正計算の計算時間は、メッシュ状の小領域数に比例する。そのため、ブロック領域のサイズが大きい領域では計算時間が長くなり、ブロック領域のサイズが小さい領域では計算時間が逆に短くなる。よって、パターン面積密度の計算のためにブロック領域サイズを不均一にすると、近接効果補正計算ではブロック領域毎の計算時間がばらばらとなり効率的に計算できなくなるといった問題がある。以上のように、一方を優先すれば他方に問題が生じてしまうことになる。
【0008】
特許文献1には、上記問題を解決するために、パターン面積密度計算の場合と、近接効果補正計算の場合とで計算領域(ブロック領域)の大きさを変更する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−64862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
もっとも、補正精度向上のために近接効果補正用のマップのメッシュサイズ(小領域サイズ)が、例えば、0.1μm角程度に小さくなっていった場合、近接効果補正の計算にかかる時間が増大する。これは、近接効果補正のコンボリューション計算にかかる時間がメッシュ数に比例して増加するためである。そこで、チップ内の場所ごとに必要とする補正精度にあわせて異なったメッシュサイズを用いることで、描画領域全体のメッシュ数を減らして近接効果補正計算の高速化を図ることが考えられる。
【0011】
この際、近接効果補正計算の計算領域を均一のサイズとすると、計算領域毎に含まれるメッシュ数(小領域数)が異なる場合が生じ、計算領域毎に計算時間が異なってしまう恐れがある。計算領域毎に計算時間が異なると、描画処理においてアンバランスが生じ、例えば、不要な待機時間が生じて描画時間が伸びるなどの問題が生じることが考えられる。
【0012】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところはパターン面積密度計算と近接効果補正計算とを効率的に行なうことで、バランスのとれた描画処理を実現し、処理速度が向上する荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、描画する際のショット数が互いに略同一になるようなサイズで描画領域を複数の第1のブロック領域に分割する第1のブロック領域分割部と、前記描画領域を、前記第1のブロック領域のいずれよりも小さいメッシュ状の複数の第1の小領域と、前記第1の小領域よりも小さいメッシュ状の複数の第2の小領域とを用いて、前記第1のブロック領域毎に、内部に位置する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を計算する面積密度計算部と、前記複数の第1のブロック領域に分割された前記描画領域を、改めて前記第1および第2の小領域の数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域に分割する第2のブロック領域分割部と、前記第2のブロック領域毎に、前記第2のブロック領域内部に位置する前記第1および第2の小領域における近接効果補正照射量を、対応する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を用いて計算する補正照射量計算部と、前記第1および第2の小領域における荷電粒子ビームのビーム照射量を、対応する前記第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて計算するビーム照射量計算部と、前記第1および第2の小領域毎に計算されたビーム照射量で前記荷電粒子ビームを照射して、試料に所定のパターンを描画する描画部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記態様の荷電粒子ビーム描画装置において、前記描画領域内における前記第1および第2の小領域の分布情報を記憶する分布情報記憶部をさらに備え、前記第2のブロック領域分割部が前記分布情報に基づき分割することが望ましい。
【0015】
上記態様の荷電粒子ビーム描画装置において、前記所定の閾値の情報を記憶する閾値情報記憶部をさらに備えることが望ましい。
【0016】
上記態様の荷電粒子ビーム描画装置において、前記複数の第2のブロック領域に分割された前記描画領域を、改めて前記複数の第1のブロック領域に分割し直す第3のブロック領域分割部をさらに備え、前記ビーム照射量計算部は、前記第1のブロック領域内部に位置する前記第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて前記ビーム照射量を計算することが望ましい。
【0017】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、描画する際のショット数が互いに略同一になるようなサイズで描画領域を複数の第1のブロック領域に分割する工程と、前記描画領域を、前記第1のブロック領域のいずれよりも小さいメッシュ状の複数の第1の小領域と、前記第1の小領域よりも小さいメッシュ状の複数の第2の小領域とを用いて、前記第1のブロック領域毎に、内部に位置する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を計算する工程と、前記複数の第1のブロック領域に分割された前記描画領域を、改めて前記第1および第2の小領域の数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域に分割する工程と、前記第2のブロック領域毎に、前記第2のブロック領域内部に位置する前記第1および第2の小領域における近接効果補正照射量を、対応する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を用いて計算する工程と、前記第1および第2の小領域における荷電粒子ビームのビーム照射量を、対応する前記第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて計算する工程と、前記第1および第2の小領域毎に計算されたビーム照射量で前記荷電粒子ビームを照射して、試料に所定のパターンを描画する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、パターン面積密度計算と近接効果補正計算とを効率的に行なうことで、バランスのとれた描画処理を実現し、処理速度が向上する荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態における描画装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図3】実施の形態におけるショット数が互いに略同一なブロック領域の一例を示す図である。
【図4】実施の形態におけるショット数が略同一なブロック領域がメッシュ分割された一例を示す図である。
【図5】実施の形態におけるショット数が所定の閾値を超えないブロック領域の一例を示す図である。
【図6】実施の形態におけるショット数が所定の閾値を超えないブロック領域がメッシュ分割された一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。ただし、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでもかまわない。
【0021】
本明細書中、描画データとは、試料に描画するパターンの基データである。描画データはCAD等で設計者により生成された設計データを、描画装置内での演算処理が可能となるようフォーマットを変換したデータである。図形等の描画パターンが、例えば、図形の頂点等の座標で定義されている。
【0022】
また、本明細書中、ショットとは、荷電粒子ビームの1回の照射により荷電粒子が照射される領域を意味する。
【0023】
また、本明細書中、ショットデータとは、ショットの情報を備え、荷電粒子ビームによる描画を行う上での最終的なデータ形式を有するデータを意味する。
【0024】
本実施の形態の荷電粒子ビーム描画装置は、描画する際のショット数が互いに略同一になるなサイズで描画領域を複数の第1のブロック領域に分割する第1のブロック領域分割部と、描画領域を、第1のブロック領域のいずれよりも小さいメッシュ状の複数の第1の小領域と、第1の小領域よりも小さいメッシュ状の複数の第2の小領域とを用いて、第1のブロック領域毎に、内部に位置する各小領域のパターン面積密度を計算する面積密度計算部と、複数の第1のブロック領域に分割された描画領域を、改めて第1および第2の領域の数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域に分割する第2のブロック領域分割部と、第2のブロック領域毎に、第2のブロック領域内部に位置する第1および第2の小領域における近接効果補正照射量を、対応する第1および第2の小領域のパターン面積密度を用いて計算する補正照射量計算部と、第1および第2の小領域における荷電粒子ビームのビーム照射量を、対応する第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて計算するビーム照射量計算部と、第1および第2の小領域毎に計算されたビーム照射量で荷電粒子ビームを照射して、試料に所定のパターンを描画する描画部と、を備える。
【0025】
本実施の形態の荷電粒子ビーム描画装置は、近接効果補正計算の際に、計算領域(ブロック領域)の大きさを、計算領域内のメッシュ状の小領域(以下、単にメッシュとも称する)の数が所定の閾値を超えないように制御する。これにより、バランスのとれた描画処理が実現され、描画処理の処理速度が向上する。
【0026】
図1は、本実施の形態における描画装置の構成を示す概念図である。
【0027】
図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例となる。そして、描画装置100は、試料101に所望するパターンを描画する。
【0028】
描画部150は、電子鏡筒102、描画室103を有している。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、ブランキング(BLK)偏向器212、ブランキング(BLK)アパーチャ214、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、及び偏向器208が配置されている。
【0029】
また、描画室103内には、移動可能に配置されたXYステージ105が配置されている。また、XYステージ105上には、試料101が配置されている。試料101として、例えば、ウェハにパターンを転写する露光用のマスク基板が含まれる。マスク基板としては、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0030】
制御部160は、駆動回路108、メモリ109、140、152、154、偏向制御回路110、デジタルアナログ変換機(DAC)112、114、116、制御計算機120、及びメモリ121を有している。制御計算機120内では、ブロック領域分割部122、128、132、メッシュ分割部124、面積密度計算部126、近接効果補正計算部130、照射量計算部134、照射時間計算部136、及び描画データ処理部138といった各機能を有している。
【0031】
制御計算機120には、メモリ109に記憶された描画データが入力される。制御計算機120に入力される情報或いは演算処理中及び処理後の各情報はその都度メモリ121に記憶される。
【0032】
描画領域内における近接効果補正計算用のメッシュ(小領域)の分布情報を記憶する分布情報記憶部を備えることが、近接効果補正計算の処理を最適化する上で望ましい。図1では、例えば、メモリ152が分布情報記憶部に相当する。メッシュ(小領域)の分布情報は、例えば、描画処理に先立ち、描画装置100に入力され、メモリ152に記憶される。または、メッシュ(小領域)の分布情報は、例えば、描画装置100内での処理結果としてメモリ152に記憶されるものであってもかまわない。
【0033】
また、近接効果補正計算用にブロック分割する際の指標となる、メッシュ数の所定の閾値の情報を記憶する閾値情報記憶部をさらに備えることが望ましい。図1では、例えば、メモリ154が閾値情報記憶部に相当する。メッシュ数の所定の閾値の情報は、例えば、描画処理に先立ち、描画装置100に入力され、メモリ154に記憶される。
【0034】
制御計算機120には、メモリ121、偏向制御回路110、メモリ109,140が図示していないバスを介して接続されている。偏向制御回路110は、DAC112、114、116に接続される。DAC112は、BLK偏向器212に接続されている。DAC114は、偏向器205に接続されている。DAC116は、偏向器208に接続されている。
【0035】
図1では、本実施の形態を説明する上で必要な構成部分について記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれることは言うまでもない。
【0036】
また、図1では、コンピュータの一例となる制御計算機120で、ブロック領域分割部122、128、132、メッシュ分割部124、面積密度計算部126、近接効果補正計算部130、照射量計算部134、照射時間計算部136、及び描画データ処理部138といった各機能の処理を実行するように記載しているがこれに限るものではない。例えば、電気的な回路によるハードウェアにより実施させても構わない。或いは、電気的な回路によるハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、かかるハードウェアとファームウェアとの組合せでも構わない。
【0037】
照射部の一例となる電子銃201から電子ビーム200が照射される。電子銃201から出た電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。
【0038】
ここで、電子ビーム200をまず矩形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像の位置は、偏向器205によって偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させることができる。その結果、電子ビーム200は成形される。
【0039】
そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向器208により偏向される。その結果、連続移動するXYステージ105上の試料101の所望する位置に照射される。XYステージ105の移動は、駆動回路108によって駆動される。偏向器205の偏向電圧は、偏向制御回路110及びDAC114によって制御される。偏向器208の偏向電圧は、偏向制御回路110及びDAC116によって制御される。
【0040】
ここで、試料101上の電子ビーム200が、所望する照射量を試料101に入射させる照射時間tに達した場合、以下のようにブランキングする。すなわち、試料101上に必要以上に電子ビーム200が照射されないようにするため、例えば静電型のBLK偏向器212で電子ビーム200を偏向すると共にBLKアパーチャ214で電子ビーム200をカットする。これにより、電子ビーム200が試料101面上に到達しないようにする。BLK偏向器212の偏向電圧は、偏向制御回路110及びDAC112によって制御される。
【0041】
ビームON(ブランキングOFF)の場合、電子銃201から出た電子ビーム200は、図1における実線で示す軌道を進むことになる。一方、ビームOFF(ブランキングON)の場合、電子銃201から出た電子ビーム200は、図1における点線で示す軌道を進むことになる。また、電子鏡筒102内および描画室103内は、図示していない真空ポンプにより真空引きされ、大気圧よりも低い圧力となる真空雰囲気となっている。
【0042】
ここで、近接効果補正の際のメッシュサイズを、補正精度を最適化するために領域によって異なるようにする場合を考える。例えば、補正精度を特に上げたい領域では、他の領域よりもメッシュサイズを細かくする。
【0043】
この場合において、発明者等は、パターン面積密度を計算する際には、ショット数が同程度になるようなサイズが不均一な複数のブロック領域を計算領域とし、近接効果補正量を計算する際には、メッシュ数が所定の閾値を超えない複数のブロック領域を計算領域とすることで共に効率化を図ることができることを見出した。以下、効率化を図った計算手法による描画方法について説明する。
【0044】
図2は、本実施の形態における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。まず、制御計算機120は、メモリ109から描画データを読み込む。そして、その描画データを使って以下のような演算が各ステップで行なわれる。
【0045】
S(ステップ)102において、ブロック分割工程として、ブロック領域分割部122(第1のブロック領域分割部)は、描画する際のショット数が互いに略同一になるように不均一なサイズで描画領域を複数のブロック領域(第1のブロック領域)に分割する。
【0046】
図3は、本実施の形態におけるショット数が互いに略同一なブロック領域の一例を示す図である。図3において、描画領域となるチップ領域10は、まず、短冊状のフレーム領域12a〜12d(或いはストライプ領域ともいう)に仮想分割される。各フレーム領域12a〜12dは、偏向器208で偏向可能な幅で分割される。
【0047】
そして、各フレーム領域12a〜12dは、描画する際のショット数が互いに略同一になるように不均一なサイズで分割される。この不均一なサイズで分割された各領域がブロック領域(第1のブロック領域)14となる。ここで、図3では、ブロック領域14に分割する際に各フレーム領域12a〜12dを長手方向に分割しただけであるが、これに限るものではなく、各フレーム領域12a〜12dを短手方向にさらに分割してもよい。
【0048】
なお、図3において斜線で示す領域15a、15bは、例えば、他の領域よりも微細なパターンが形成され、他の領域よりも近接効果補正において高い精度が要求される領域である。この領域15a、15bは後に記述するように、近接効果補正の際に他の領域よりも小さなメッシュサイズで仮想分割される領域である。
【0049】
S104において、ショットデータ生成工程として、描画データ処理部138は、描画データを装置内フォーマットのショットデータへと変換する。その際、ブロック領域14毎に変換する。
【0050】
図4は、本実施の形態におけるショット数が互いに略同一なブロック領域がメッシュ分割された一例を示す図である。図4は、特に図3のチップ10の右隅のブロック領域14を拡大した図である。
【0051】
チップ領域10は、メッシュ分割部124によって、複数のブロック領域(第1のブロック領域)14のいずれよりも小さいメッシュ状の複数の第1の小領域20aと、第1の小領域よりも小さいメッシュ状の複数の第2の小領域20bに仮想分割される。
【0052】
図3において斜線で示す領域15a、15bは、第1の小領域20aよりもメッシュサイズの小さい第2の小領域20bに仮想分割されることになる。このため、図4に示すように、1個のブロック領域14に、2つの異なるメッシュサイズの小領域20a、20bが混在する場合が起こりうる。そして、その割合はブロック領域14毎に異なり得る。
【0053】
S106において、面積密度計算工程として、面積密度計算部126は、上述した複数の小領域20a、20bを用いて、ブロック領域14毎に、パターン面積密度ρ(x,y)を計算する。すなわち、内部に位置する各小領域20a、20bのパターン面積密度ρ(x,y)を計算する。ここでは、面積密度計算部126内で、ブロック領域14毎に分散処理を行なう。
【0054】
座標(x,y)は、例えば、ブロック領域14の基準位置からの第1および第2の小領域20a、20bの位置で定義する。但し、これに限るものではなく、チップ領域10の基準位置からの第1および第2の小領域20a、20bの位置で定義しても構わない。或いは、その他の位置を基準しても構わない。
【0055】
パターン面積密度ρ(x,y)は、第1および第2の小領域20a、20b内部に位置する図形の面積を累積加算した値を該当する第1および第2の小領域20a、20bの面積で割った値で示すことができる。ショット数が互いに略同一になるようなブロック領域14を使うため、ブロック領域14間の計算時間を同程度にすることができる。
【0056】
そして、面積密度計算部126は、計算されたパターン面積密度ρ(x,y)を用いて、第1および第2の小領域20a、20bの位置で定義されたパターン面積密度マップ142を作成する。そして、パターン面積密度マップ142は、メモリ140に格納される。
【0057】
ここで、ブロック領域14を計算領域として近接効果補正計算を行なったのでは、ブロック領域14毎の第1および第2の小領域20a、20bの数が異なるため、ブロック領域14間の計算時間を同程度にすることができない。このため、例えば、以下のように対応する。
【0058】
S108において、ブロック領域再分割工程として、ブロック領域分割部128(第2のブロック領域分割部)は、複数のブロック領域14に分割されたチップ領域10を、改めて第1および第2の小領域20a、20bより大きなサイズで複数のブロック領域16(第2のブロック領域)に分割し直す。この際、第1および第2の小領域20a、20bの数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域16に分割する。ここでは、例えば、フレーム幅よりも大きな短手方向のサイズで分割されてもかまわない。
【0059】
ブロック領域再分割工程では、ブロック領域16への分割処理において、例えば、メモリ152に記憶されるメッシュ分布情報が参照される。メッシュ分布情報は、描画領域内における第1の小領域20aと第2の小領域20bの分布情報である。例えば、ブロック領域16への分割地点でメッシュ分布情報からメッシュ数を積算し、所定の閾値に達したところでブロック領域16のサイズを決定する。
【0060】
また、ブロック領域再分割工程では、ブロック領域16への分割処理において、例えば、メモリ154に記憶されるメッシュ閾値情報が参照される。メッシュ数の所定の閾値、すなわち、第1および第2の小領域20a、20bの数の閾値は、近接効果補正計算の処理が最適化されるよう適宜決定される。
【0061】
図5は、本実施の形態におけるショット数が所定の閾値を超えないサイズのブロック領域の一例を示す図である。
【0062】
図5において、描画領域となるチップ領域10は、上述したように、短冊状のフレーム領域12a〜12dに仮想分割されている。そして、各フレーム領域12a〜12dは、ショット数が所定の閾値を超えないサイズで分割される。分割された各領域がブロック領域16となる。
【0063】
図5において斜線で示される領域15a、15bは、第1の小領域20aよりもメッシュサイズの小さい第2の小領域20bに仮想分割される。すなわち他の領域よりもメッシュが細かい小領域に分割されている。領域15a、15bを含むブロック領域16は、ブロック領域16内のメッシュ数を所定の閾値以下に保つため、他のブロック領域16よりもサイズが小さくなる。
【0064】
ここで、図5では、ブロック領域16に分割する際に各フレーム領域12a〜12dを長手方向に分割しただけであるが、これに限るものではなく、各フレーム領域12a〜12dを短手方向にさらに分割してもよいし、フレーム領域の境界をまたいで分割してもかまわない。
【0065】
図6は、実施の形態におけるショット数が所定の閾値を超えないサイズのブロック領域がメッシュ分割された一例を示す図である。チップ領域10は、メッシュ状の複数のサイズの異なる小領域20a、20bに振り分けられているので、その複数の小領域20a、20bがここでも用いられる。
【0066】
図6(b)のブロック領域16bでは、サイズの小さい第2の小領域20bを含むため、図6(a)のブロック領域16aよりも大きさが小さくなっている。図6(a)、図6(b)ともにブロック領域内の小領域数、すなわち、メッシュ数が40個と等しくなるよう設定されている。メッシュ数が等しいため、続く近接効果補正計算の際の計算処理時間がほぼ等しくなる。
【0067】
S110において、近接効果補正計算工程として、近接効果補正計算部130(補正照射量計算部)は、ブロック領域16毎に、ブロック領域16内部に位置する第1および第2の小領域20a、20bにおける近接効果補正照射量Dp(x,y)を対応する第1および第2の小領域20a、20bのパターン面積密度ρ(x,y)を用いて計算する。ここでは、近接効果補正計算部130内で、ブロック領域16毎に、分散処理を行なう。ここでの(x,y)は、例えば、ブロック領域16の基準位置からの第1および第2の小領域20a、20bの位置で定義する。
【0068】
但し、これに限るものではなく、チップ領域10の基準位置からの第1および第2の小領域20a、20bの位置で定義しても構わない。或いは、その他の位置を基準しても構わない。近接効果補正計算部130は、メモリ140からパターン面積密度マップ142を読み出す。そして、パターン面積密度マップ142から対応する第1および第2の小領域20a、20bのパターン面積密度ρ(x,y)を参照すればよい。座標近接効果補正照射量Dpは、公知の計算方法により求めることができる。
【0069】
本実施の形態では、ショット数が所定の閾値を超えないサイズのブロック領域16を使うため、ブロック領域16間の計算時間を同程度にする、あるいは、所定の計算時間を超えないようにすることができる。
【0070】
そして、近接効果補正計算部130は、計算された近接効果補正照射量Dp(x,y)を用いて、小領域20a、20bの位置で定義された近接効果補正照射量マップ144を作成する。そして、近接効果補正照射量マップ144は、メモリ140に格納される。
【0071】
S112において、ブロック領域再分割工程として、ブロック領域分割部132(第3のブロック領域分割部)は、複数のブロック領域16に分割されたチップ領域10を改めて元の複数のブロック領域14に分割し直す。近接効果補正照射量マップ144の座標がブロック領域16の基準位置から定義されているのに対して、ショットデータは、ブロック領域14で定義されるので、近接効果補正照射量Dp(x,y)とショットデータとの整合性をとるのに不便である。元の複数のブロック領域14に分割し直すことで座標系を統一することで整合性をとりやすくすることができる。但し、ここでは利便性を向上させるために分割し直したが、これに限るものではなく、ブロック領域16のままでも構わない。
【0072】
S114において、ビーム照射量(Dose)計算工程として、照射量計算部134(ビーム照射量計算部)は、第1および第2の小領域20a、20bにおける電子ビーム200のビーム照射量D(x,y)を、対応する第1および第2の小領域20a、20bの近接効果補正照射量Dp(x,y)を用いて計算する。照射量計算部134は、メモリ140から近接効果補正照射量マップ144を読み出す。そして、近接効果補正照射量マップ144から対応する第1および第2の小領域20a、20bの近接効果補正照射量Dp(x,y)を参照すればよい。このようにして、ブロック領域14内部に位置する第1および第2の小領域20a、20bの近接効果補正照射量Dp(x,y)を用いてビーム照射量D(x,y)を計算する。ビーム照射量D(x,y)は、基準照射量D0を用いて以下の式(1)により求めることができる。
【0073】
D(x,y)=Dp(x,y)×D0 ・・・式(1)
【0074】
S116において、照射時間計算工程として、照射時間計算部136は、第1および第2の小領域20a、20b毎に、得られた照射量D(x,y)と設定されている電流密度Jを用いて、照射時間t(=照射量D(x,y)/電流密度J)を計算する。
【0075】
S118において、描画工程として、制御計算機120は、求めた照射時間tで試料101のへのビーム照射がOFFになるように偏向制御回路110に信号を出力する。そして、偏向制御回路110では、かかる信号に沿って、求めた照射時間tに合わせて、電子ビーム200を偏向するようにBLK偏向器212を制御する。そして、所望する照射量D(x,y)を試料101に照射した後、BLK偏向器212により偏向された電子ビーム200は、試料101に到達しないようにBLKアパーチャ214によって遮蔽される。このようにして、描画部150は、小領域20毎に計算されたビーム照射量で電子ビーム200を照射する。これにより、試料101に所定のパターンを描画する。
【0076】
以上のように、本実施の形態では、パターン面積密度計算と近接効果補正計算とで異なるブロック領域を用いる。そして、パターン面積密度計算では、ショット数が互いに略同一になるような第1のブロック領域を使う。他方、近接効果補正計算では、メッシュ数が所定の閾値を超えないサイズの第2のブロック領域を使う。これによりそれぞれ適したブロックで計算が可能となる。
【0077】
そのため、近接効果補正の精度向上のために描画領域中で異なるメッシュサイズのメッシュを適用したとしても、パターン面積密度計算と近接効果補正計算とを効率よく実行することができる。その結果、必要な領域での補正精度を落とすことなく近接効果補正計算を速く実行でき、高速な描画処理が実現可能である。
【0078】
以上の説明において、「〜部」或いは「〜工程」と記載したものの処理内容或いは動作内容は、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。或いは、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、ファームウェアとの組合せでも構わない。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録される。例えば、メモリ140に記録される。
【0079】
また、コンピュータとなる制御計算機120は、さらに、図示していないバスを介して、記憶装置の一例となるRAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM、磁気ディスク(HD)装置、入力手段の一例となるキーボード(K/B)、マウス、出力手段の一例となるモニタ、プリンタ、或いは、入力出力手段の一例となる外部インターフェース(I/F)、FD、DVD、CD等に接続されていても構わない。
【0080】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0081】
例えば、実施の形態ではメッシュサイズが2サイズの場合を例に説明したが、メッシュサイズが3サイズ以上であってもかまわない。
【0082】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0083】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0084】
10 チップ領域(描画領域)
14 第1のブロック領域
16 第2のブロック領域
20a 第1の小領域
20b 第2の小領域
100 描画装置
122 ブロック領域分割部(第1のブロック領域分割部)
126 面積密度計算部
128 ブロック領域分割部(第2のブロック領域分割部)
130 近接効果補正計算部(補正照射量計算部)
132 ブロック領域分割部(第3のブロック領域分割部)
134 ビーム照射量計算部
150 描画部
152 メモリ(分布情報記憶部)
154 メモリ(閾値情報記憶部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(レチクル或いはマスクともいう。)が必要となる。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、高精度の原画パターンの生産に用いられる。
【0003】
上述した電子ビーム描画では、より高精度な試料面内、例えばマスク面内の線幅均一性が求められている。ここで、かかる電子ビーム描画では、電子ビームをレジストが塗布されたマスクに照射して回路パターンを描画する場合、電子ビームがレジスト層を透過してその下の層に達し、再度レジスト層に再入射する後方散乱による近接効果と呼ばれる現象が生じてしまう。これにより、描画の際、所望する寸法からずれた寸法に描画されてしまう寸法変動が生じてしまう。
【0004】
この近接効果を補正するために、回路パターン全体を、例えば、0.5μm角程度の小領域に分割し影響度マップ作成を行なう。そして、この影響度マップをもとに、補正を行い、描画するための電子ビームの照射量を算出する。
【0005】
従来の近接効果補正計算では、例えば、以下の方法が用いられる。チップ領域を同じ大きさの計算領域(ブロック領域)に分割して、このブロック領域毎に補正計算を行なう。ここで、計算を行なう際、ブロック領域をさらに小さくメッシュ状の小領域に分割して計算される。また、この小領域によって切り取られる内部の図形の面積を累積加算したパターン面積密度を小領域の位置で定義したパターン面積密度マップがブロック領域毎に作成される。そして、近接効果補正計算では、このパターン面積密度マップが用いられる。
【0006】
ここで、パターン面積密度計算の計算時間は、ショット数に比例する。そのため、同じ大きさのブロック領域では、ショット数にばらつきが生じるためブロック領域毎の計算時間がばらばらとなり効率的に計算できないといった問題がある。そこで、各ブロック領域に含まれるショット数が同程度になるようにブロック領域の大きさを変えることにより、各ブロック領域間での計算時間を同程度にする。
【0007】
一方、近接効果補正計算の計算時間は、メッシュ状の小領域数に比例する。そのため、ブロック領域のサイズが大きい領域では計算時間が長くなり、ブロック領域のサイズが小さい領域では計算時間が逆に短くなる。よって、パターン面積密度の計算のためにブロック領域サイズを不均一にすると、近接効果補正計算ではブロック領域毎の計算時間がばらばらとなり効率的に計算できなくなるといった問題がある。以上のように、一方を優先すれば他方に問題が生じてしまうことになる。
【0008】
特許文献1には、上記問題を解決するために、パターン面積密度計算の場合と、近接効果補正計算の場合とで計算領域(ブロック領域)の大きさを変更する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−64862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
もっとも、補正精度向上のために近接効果補正用のマップのメッシュサイズ(小領域サイズ)が、例えば、0.1μm角程度に小さくなっていった場合、近接効果補正の計算にかかる時間が増大する。これは、近接効果補正のコンボリューション計算にかかる時間がメッシュ数に比例して増加するためである。そこで、チップ内の場所ごとに必要とする補正精度にあわせて異なったメッシュサイズを用いることで、描画領域全体のメッシュ数を減らして近接効果補正計算の高速化を図ることが考えられる。
【0011】
この際、近接効果補正計算の計算領域を均一のサイズとすると、計算領域毎に含まれるメッシュ数(小領域数)が異なる場合が生じ、計算領域毎に計算時間が異なってしまう恐れがある。計算領域毎に計算時間が異なると、描画処理においてアンバランスが生じ、例えば、不要な待機時間が生じて描画時間が伸びるなどの問題が生じることが考えられる。
【0012】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところはパターン面積密度計算と近接効果補正計算とを効率的に行なうことで、バランスのとれた描画処理を実現し、処理速度が向上する荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、描画する際のショット数が互いに略同一になるようなサイズで描画領域を複数の第1のブロック領域に分割する第1のブロック領域分割部と、前記描画領域を、前記第1のブロック領域のいずれよりも小さいメッシュ状の複数の第1の小領域と、前記第1の小領域よりも小さいメッシュ状の複数の第2の小領域とを用いて、前記第1のブロック領域毎に、内部に位置する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を計算する面積密度計算部と、前記複数の第1のブロック領域に分割された前記描画領域を、改めて前記第1および第2の小領域の数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域に分割する第2のブロック領域分割部と、前記第2のブロック領域毎に、前記第2のブロック領域内部に位置する前記第1および第2の小領域における近接効果補正照射量を、対応する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を用いて計算する補正照射量計算部と、前記第1および第2の小領域における荷電粒子ビームのビーム照射量を、対応する前記第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて計算するビーム照射量計算部と、前記第1および第2の小領域毎に計算されたビーム照射量で前記荷電粒子ビームを照射して、試料に所定のパターンを描画する描画部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記態様の荷電粒子ビーム描画装置において、前記描画領域内における前記第1および第2の小領域の分布情報を記憶する分布情報記憶部をさらに備え、前記第2のブロック領域分割部が前記分布情報に基づき分割することが望ましい。
【0015】
上記態様の荷電粒子ビーム描画装置において、前記所定の閾値の情報を記憶する閾値情報記憶部をさらに備えることが望ましい。
【0016】
上記態様の荷電粒子ビーム描画装置において、前記複数の第2のブロック領域に分割された前記描画領域を、改めて前記複数の第1のブロック領域に分割し直す第3のブロック領域分割部をさらに備え、前記ビーム照射量計算部は、前記第1のブロック領域内部に位置する前記第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて前記ビーム照射量を計算することが望ましい。
【0017】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、描画する際のショット数が互いに略同一になるようなサイズで描画領域を複数の第1のブロック領域に分割する工程と、前記描画領域を、前記第1のブロック領域のいずれよりも小さいメッシュ状の複数の第1の小領域と、前記第1の小領域よりも小さいメッシュ状の複数の第2の小領域とを用いて、前記第1のブロック領域毎に、内部に位置する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を計算する工程と、前記複数の第1のブロック領域に分割された前記描画領域を、改めて前記第1および第2の小領域の数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域に分割する工程と、前記第2のブロック領域毎に、前記第2のブロック領域内部に位置する前記第1および第2の小領域における近接効果補正照射量を、対応する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を用いて計算する工程と、前記第1および第2の小領域における荷電粒子ビームのビーム照射量を、対応する前記第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて計算する工程と、前記第1および第2の小領域毎に計算されたビーム照射量で前記荷電粒子ビームを照射して、試料に所定のパターンを描画する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、パターン面積密度計算と近接効果補正計算とを効率的に行なうことで、バランスのとれた描画処理を実現し、処理速度が向上する荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態における描画装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図3】実施の形態におけるショット数が互いに略同一なブロック領域の一例を示す図である。
【図4】実施の形態におけるショット数が略同一なブロック領域がメッシュ分割された一例を示す図である。
【図5】実施の形態におけるショット数が所定の閾値を超えないブロック領域の一例を示す図である。
【図6】実施の形態におけるショット数が所定の閾値を超えないブロック領域がメッシュ分割された一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。ただし、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでもかまわない。
【0021】
本明細書中、描画データとは、試料に描画するパターンの基データである。描画データはCAD等で設計者により生成された設計データを、描画装置内での演算処理が可能となるようフォーマットを変換したデータである。図形等の描画パターンが、例えば、図形の頂点等の座標で定義されている。
【0022】
また、本明細書中、ショットとは、荷電粒子ビームの1回の照射により荷電粒子が照射される領域を意味する。
【0023】
また、本明細書中、ショットデータとは、ショットの情報を備え、荷電粒子ビームによる描画を行う上での最終的なデータ形式を有するデータを意味する。
【0024】
本実施の形態の荷電粒子ビーム描画装置は、描画する際のショット数が互いに略同一になるなサイズで描画領域を複数の第1のブロック領域に分割する第1のブロック領域分割部と、描画領域を、第1のブロック領域のいずれよりも小さいメッシュ状の複数の第1の小領域と、第1の小領域よりも小さいメッシュ状の複数の第2の小領域とを用いて、第1のブロック領域毎に、内部に位置する各小領域のパターン面積密度を計算する面積密度計算部と、複数の第1のブロック領域に分割された描画領域を、改めて第1および第2の領域の数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域に分割する第2のブロック領域分割部と、第2のブロック領域毎に、第2のブロック領域内部に位置する第1および第2の小領域における近接効果補正照射量を、対応する第1および第2の小領域のパターン面積密度を用いて計算する補正照射量計算部と、第1および第2の小領域における荷電粒子ビームのビーム照射量を、対応する第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて計算するビーム照射量計算部と、第1および第2の小領域毎に計算されたビーム照射量で荷電粒子ビームを照射して、試料に所定のパターンを描画する描画部と、を備える。
【0025】
本実施の形態の荷電粒子ビーム描画装置は、近接効果補正計算の際に、計算領域(ブロック領域)の大きさを、計算領域内のメッシュ状の小領域(以下、単にメッシュとも称する)の数が所定の閾値を超えないように制御する。これにより、バランスのとれた描画処理が実現され、描画処理の処理速度が向上する。
【0026】
図1は、本実施の形態における描画装置の構成を示す概念図である。
【0027】
図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例となる。そして、描画装置100は、試料101に所望するパターンを描画する。
【0028】
描画部150は、電子鏡筒102、描画室103を有している。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、ブランキング(BLK)偏向器212、ブランキング(BLK)アパーチャ214、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、及び偏向器208が配置されている。
【0029】
また、描画室103内には、移動可能に配置されたXYステージ105が配置されている。また、XYステージ105上には、試料101が配置されている。試料101として、例えば、ウェハにパターンを転写する露光用のマスク基板が含まれる。マスク基板としては、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0030】
制御部160は、駆動回路108、メモリ109、140、152、154、偏向制御回路110、デジタルアナログ変換機(DAC)112、114、116、制御計算機120、及びメモリ121を有している。制御計算機120内では、ブロック領域分割部122、128、132、メッシュ分割部124、面積密度計算部126、近接効果補正計算部130、照射量計算部134、照射時間計算部136、及び描画データ処理部138といった各機能を有している。
【0031】
制御計算機120には、メモリ109に記憶された描画データが入力される。制御計算機120に入力される情報或いは演算処理中及び処理後の各情報はその都度メモリ121に記憶される。
【0032】
描画領域内における近接効果補正計算用のメッシュ(小領域)の分布情報を記憶する分布情報記憶部を備えることが、近接効果補正計算の処理を最適化する上で望ましい。図1では、例えば、メモリ152が分布情報記憶部に相当する。メッシュ(小領域)の分布情報は、例えば、描画処理に先立ち、描画装置100に入力され、メモリ152に記憶される。または、メッシュ(小領域)の分布情報は、例えば、描画装置100内での処理結果としてメモリ152に記憶されるものであってもかまわない。
【0033】
また、近接効果補正計算用にブロック分割する際の指標となる、メッシュ数の所定の閾値の情報を記憶する閾値情報記憶部をさらに備えることが望ましい。図1では、例えば、メモリ154が閾値情報記憶部に相当する。メッシュ数の所定の閾値の情報は、例えば、描画処理に先立ち、描画装置100に入力され、メモリ154に記憶される。
【0034】
制御計算機120には、メモリ121、偏向制御回路110、メモリ109,140が図示していないバスを介して接続されている。偏向制御回路110は、DAC112、114、116に接続される。DAC112は、BLK偏向器212に接続されている。DAC114は、偏向器205に接続されている。DAC116は、偏向器208に接続されている。
【0035】
図1では、本実施の形態を説明する上で必要な構成部分について記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれることは言うまでもない。
【0036】
また、図1では、コンピュータの一例となる制御計算機120で、ブロック領域分割部122、128、132、メッシュ分割部124、面積密度計算部126、近接効果補正計算部130、照射量計算部134、照射時間計算部136、及び描画データ処理部138といった各機能の処理を実行するように記載しているがこれに限るものではない。例えば、電気的な回路によるハードウェアにより実施させても構わない。或いは、電気的な回路によるハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、かかるハードウェアとファームウェアとの組合せでも構わない。
【0037】
照射部の一例となる電子銃201から電子ビーム200が照射される。電子銃201から出た電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。
【0038】
ここで、電子ビーム200をまず矩形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像の位置は、偏向器205によって偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させることができる。その結果、電子ビーム200は成形される。
【0039】
そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向器208により偏向される。その結果、連続移動するXYステージ105上の試料101の所望する位置に照射される。XYステージ105の移動は、駆動回路108によって駆動される。偏向器205の偏向電圧は、偏向制御回路110及びDAC114によって制御される。偏向器208の偏向電圧は、偏向制御回路110及びDAC116によって制御される。
【0040】
ここで、試料101上の電子ビーム200が、所望する照射量を試料101に入射させる照射時間tに達した場合、以下のようにブランキングする。すなわち、試料101上に必要以上に電子ビーム200が照射されないようにするため、例えば静電型のBLK偏向器212で電子ビーム200を偏向すると共にBLKアパーチャ214で電子ビーム200をカットする。これにより、電子ビーム200が試料101面上に到達しないようにする。BLK偏向器212の偏向電圧は、偏向制御回路110及びDAC112によって制御される。
【0041】
ビームON(ブランキングOFF)の場合、電子銃201から出た電子ビーム200は、図1における実線で示す軌道を進むことになる。一方、ビームOFF(ブランキングON)の場合、電子銃201から出た電子ビーム200は、図1における点線で示す軌道を進むことになる。また、電子鏡筒102内および描画室103内は、図示していない真空ポンプにより真空引きされ、大気圧よりも低い圧力となる真空雰囲気となっている。
【0042】
ここで、近接効果補正の際のメッシュサイズを、補正精度を最適化するために領域によって異なるようにする場合を考える。例えば、補正精度を特に上げたい領域では、他の領域よりもメッシュサイズを細かくする。
【0043】
この場合において、発明者等は、パターン面積密度を計算する際には、ショット数が同程度になるようなサイズが不均一な複数のブロック領域を計算領域とし、近接効果補正量を計算する際には、メッシュ数が所定の閾値を超えない複数のブロック領域を計算領域とすることで共に効率化を図ることができることを見出した。以下、効率化を図った計算手法による描画方法について説明する。
【0044】
図2は、本実施の形態における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。まず、制御計算機120は、メモリ109から描画データを読み込む。そして、その描画データを使って以下のような演算が各ステップで行なわれる。
【0045】
S(ステップ)102において、ブロック分割工程として、ブロック領域分割部122(第1のブロック領域分割部)は、描画する際のショット数が互いに略同一になるように不均一なサイズで描画領域を複数のブロック領域(第1のブロック領域)に分割する。
【0046】
図3は、本実施の形態におけるショット数が互いに略同一なブロック領域の一例を示す図である。図3において、描画領域となるチップ領域10は、まず、短冊状のフレーム領域12a〜12d(或いはストライプ領域ともいう)に仮想分割される。各フレーム領域12a〜12dは、偏向器208で偏向可能な幅で分割される。
【0047】
そして、各フレーム領域12a〜12dは、描画する際のショット数が互いに略同一になるように不均一なサイズで分割される。この不均一なサイズで分割された各領域がブロック領域(第1のブロック領域)14となる。ここで、図3では、ブロック領域14に分割する際に各フレーム領域12a〜12dを長手方向に分割しただけであるが、これに限るものではなく、各フレーム領域12a〜12dを短手方向にさらに分割してもよい。
【0048】
なお、図3において斜線で示す領域15a、15bは、例えば、他の領域よりも微細なパターンが形成され、他の領域よりも近接効果補正において高い精度が要求される領域である。この領域15a、15bは後に記述するように、近接効果補正の際に他の領域よりも小さなメッシュサイズで仮想分割される領域である。
【0049】
S104において、ショットデータ生成工程として、描画データ処理部138は、描画データを装置内フォーマットのショットデータへと変換する。その際、ブロック領域14毎に変換する。
【0050】
図4は、本実施の形態におけるショット数が互いに略同一なブロック領域がメッシュ分割された一例を示す図である。図4は、特に図3のチップ10の右隅のブロック領域14を拡大した図である。
【0051】
チップ領域10は、メッシュ分割部124によって、複数のブロック領域(第1のブロック領域)14のいずれよりも小さいメッシュ状の複数の第1の小領域20aと、第1の小領域よりも小さいメッシュ状の複数の第2の小領域20bに仮想分割される。
【0052】
図3において斜線で示す領域15a、15bは、第1の小領域20aよりもメッシュサイズの小さい第2の小領域20bに仮想分割されることになる。このため、図4に示すように、1個のブロック領域14に、2つの異なるメッシュサイズの小領域20a、20bが混在する場合が起こりうる。そして、その割合はブロック領域14毎に異なり得る。
【0053】
S106において、面積密度計算工程として、面積密度計算部126は、上述した複数の小領域20a、20bを用いて、ブロック領域14毎に、パターン面積密度ρ(x,y)を計算する。すなわち、内部に位置する各小領域20a、20bのパターン面積密度ρ(x,y)を計算する。ここでは、面積密度計算部126内で、ブロック領域14毎に分散処理を行なう。
【0054】
座標(x,y)は、例えば、ブロック領域14の基準位置からの第1および第2の小領域20a、20bの位置で定義する。但し、これに限るものではなく、チップ領域10の基準位置からの第1および第2の小領域20a、20bの位置で定義しても構わない。或いは、その他の位置を基準しても構わない。
【0055】
パターン面積密度ρ(x,y)は、第1および第2の小領域20a、20b内部に位置する図形の面積を累積加算した値を該当する第1および第2の小領域20a、20bの面積で割った値で示すことができる。ショット数が互いに略同一になるようなブロック領域14を使うため、ブロック領域14間の計算時間を同程度にすることができる。
【0056】
そして、面積密度計算部126は、計算されたパターン面積密度ρ(x,y)を用いて、第1および第2の小領域20a、20bの位置で定義されたパターン面積密度マップ142を作成する。そして、パターン面積密度マップ142は、メモリ140に格納される。
【0057】
ここで、ブロック領域14を計算領域として近接効果補正計算を行なったのでは、ブロック領域14毎の第1および第2の小領域20a、20bの数が異なるため、ブロック領域14間の計算時間を同程度にすることができない。このため、例えば、以下のように対応する。
【0058】
S108において、ブロック領域再分割工程として、ブロック領域分割部128(第2のブロック領域分割部)は、複数のブロック領域14に分割されたチップ領域10を、改めて第1および第2の小領域20a、20bより大きなサイズで複数のブロック領域16(第2のブロック領域)に分割し直す。この際、第1および第2の小領域20a、20bの数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域16に分割する。ここでは、例えば、フレーム幅よりも大きな短手方向のサイズで分割されてもかまわない。
【0059】
ブロック領域再分割工程では、ブロック領域16への分割処理において、例えば、メモリ152に記憶されるメッシュ分布情報が参照される。メッシュ分布情報は、描画領域内における第1の小領域20aと第2の小領域20bの分布情報である。例えば、ブロック領域16への分割地点でメッシュ分布情報からメッシュ数を積算し、所定の閾値に達したところでブロック領域16のサイズを決定する。
【0060】
また、ブロック領域再分割工程では、ブロック領域16への分割処理において、例えば、メモリ154に記憶されるメッシュ閾値情報が参照される。メッシュ数の所定の閾値、すなわち、第1および第2の小領域20a、20bの数の閾値は、近接効果補正計算の処理が最適化されるよう適宜決定される。
【0061】
図5は、本実施の形態におけるショット数が所定の閾値を超えないサイズのブロック領域の一例を示す図である。
【0062】
図5において、描画領域となるチップ領域10は、上述したように、短冊状のフレーム領域12a〜12dに仮想分割されている。そして、各フレーム領域12a〜12dは、ショット数が所定の閾値を超えないサイズで分割される。分割された各領域がブロック領域16となる。
【0063】
図5において斜線で示される領域15a、15bは、第1の小領域20aよりもメッシュサイズの小さい第2の小領域20bに仮想分割される。すなわち他の領域よりもメッシュが細かい小領域に分割されている。領域15a、15bを含むブロック領域16は、ブロック領域16内のメッシュ数を所定の閾値以下に保つため、他のブロック領域16よりもサイズが小さくなる。
【0064】
ここで、図5では、ブロック領域16に分割する際に各フレーム領域12a〜12dを長手方向に分割しただけであるが、これに限るものではなく、各フレーム領域12a〜12dを短手方向にさらに分割してもよいし、フレーム領域の境界をまたいで分割してもかまわない。
【0065】
図6は、実施の形態におけるショット数が所定の閾値を超えないサイズのブロック領域がメッシュ分割された一例を示す図である。チップ領域10は、メッシュ状の複数のサイズの異なる小領域20a、20bに振り分けられているので、その複数の小領域20a、20bがここでも用いられる。
【0066】
図6(b)のブロック領域16bでは、サイズの小さい第2の小領域20bを含むため、図6(a)のブロック領域16aよりも大きさが小さくなっている。図6(a)、図6(b)ともにブロック領域内の小領域数、すなわち、メッシュ数が40個と等しくなるよう設定されている。メッシュ数が等しいため、続く近接効果補正計算の際の計算処理時間がほぼ等しくなる。
【0067】
S110において、近接効果補正計算工程として、近接効果補正計算部130(補正照射量計算部)は、ブロック領域16毎に、ブロック領域16内部に位置する第1および第2の小領域20a、20bにおける近接効果補正照射量Dp(x,y)を対応する第1および第2の小領域20a、20bのパターン面積密度ρ(x,y)を用いて計算する。ここでは、近接効果補正計算部130内で、ブロック領域16毎に、分散処理を行なう。ここでの(x,y)は、例えば、ブロック領域16の基準位置からの第1および第2の小領域20a、20bの位置で定義する。
【0068】
但し、これに限るものではなく、チップ領域10の基準位置からの第1および第2の小領域20a、20bの位置で定義しても構わない。或いは、その他の位置を基準しても構わない。近接効果補正計算部130は、メモリ140からパターン面積密度マップ142を読み出す。そして、パターン面積密度マップ142から対応する第1および第2の小領域20a、20bのパターン面積密度ρ(x,y)を参照すればよい。座標近接効果補正照射量Dpは、公知の計算方法により求めることができる。
【0069】
本実施の形態では、ショット数が所定の閾値を超えないサイズのブロック領域16を使うため、ブロック領域16間の計算時間を同程度にする、あるいは、所定の計算時間を超えないようにすることができる。
【0070】
そして、近接効果補正計算部130は、計算された近接効果補正照射量Dp(x,y)を用いて、小領域20a、20bの位置で定義された近接効果補正照射量マップ144を作成する。そして、近接効果補正照射量マップ144は、メモリ140に格納される。
【0071】
S112において、ブロック領域再分割工程として、ブロック領域分割部132(第3のブロック領域分割部)は、複数のブロック領域16に分割されたチップ領域10を改めて元の複数のブロック領域14に分割し直す。近接効果補正照射量マップ144の座標がブロック領域16の基準位置から定義されているのに対して、ショットデータは、ブロック領域14で定義されるので、近接効果補正照射量Dp(x,y)とショットデータとの整合性をとるのに不便である。元の複数のブロック領域14に分割し直すことで座標系を統一することで整合性をとりやすくすることができる。但し、ここでは利便性を向上させるために分割し直したが、これに限るものではなく、ブロック領域16のままでも構わない。
【0072】
S114において、ビーム照射量(Dose)計算工程として、照射量計算部134(ビーム照射量計算部)は、第1および第2の小領域20a、20bにおける電子ビーム200のビーム照射量D(x,y)を、対応する第1および第2の小領域20a、20bの近接効果補正照射量Dp(x,y)を用いて計算する。照射量計算部134は、メモリ140から近接効果補正照射量マップ144を読み出す。そして、近接効果補正照射量マップ144から対応する第1および第2の小領域20a、20bの近接効果補正照射量Dp(x,y)を参照すればよい。このようにして、ブロック領域14内部に位置する第1および第2の小領域20a、20bの近接効果補正照射量Dp(x,y)を用いてビーム照射量D(x,y)を計算する。ビーム照射量D(x,y)は、基準照射量D0を用いて以下の式(1)により求めることができる。
【0073】
D(x,y)=Dp(x,y)×D0 ・・・式(1)
【0074】
S116において、照射時間計算工程として、照射時間計算部136は、第1および第2の小領域20a、20b毎に、得られた照射量D(x,y)と設定されている電流密度Jを用いて、照射時間t(=照射量D(x,y)/電流密度J)を計算する。
【0075】
S118において、描画工程として、制御計算機120は、求めた照射時間tで試料101のへのビーム照射がOFFになるように偏向制御回路110に信号を出力する。そして、偏向制御回路110では、かかる信号に沿って、求めた照射時間tに合わせて、電子ビーム200を偏向するようにBLK偏向器212を制御する。そして、所望する照射量D(x,y)を試料101に照射した後、BLK偏向器212により偏向された電子ビーム200は、試料101に到達しないようにBLKアパーチャ214によって遮蔽される。このようにして、描画部150は、小領域20毎に計算されたビーム照射量で電子ビーム200を照射する。これにより、試料101に所定のパターンを描画する。
【0076】
以上のように、本実施の形態では、パターン面積密度計算と近接効果補正計算とで異なるブロック領域を用いる。そして、パターン面積密度計算では、ショット数が互いに略同一になるような第1のブロック領域を使う。他方、近接効果補正計算では、メッシュ数が所定の閾値を超えないサイズの第2のブロック領域を使う。これによりそれぞれ適したブロックで計算が可能となる。
【0077】
そのため、近接効果補正の精度向上のために描画領域中で異なるメッシュサイズのメッシュを適用したとしても、パターン面積密度計算と近接効果補正計算とを効率よく実行することができる。その結果、必要な領域での補正精度を落とすことなく近接効果補正計算を速く実行でき、高速な描画処理が実現可能である。
【0078】
以上の説明において、「〜部」或いは「〜工程」と記載したものの処理内容或いは動作内容は、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。或いは、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、ファームウェアとの組合せでも構わない。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録される。例えば、メモリ140に記録される。
【0079】
また、コンピュータとなる制御計算機120は、さらに、図示していないバスを介して、記憶装置の一例となるRAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM、磁気ディスク(HD)装置、入力手段の一例となるキーボード(K/B)、マウス、出力手段の一例となるモニタ、プリンタ、或いは、入力出力手段の一例となる外部インターフェース(I/F)、FD、DVD、CD等に接続されていても構わない。
【0080】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0081】
例えば、実施の形態ではメッシュサイズが2サイズの場合を例に説明したが、メッシュサイズが3サイズ以上であってもかまわない。
【0082】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0083】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置および荷電粒子ビーム描画方法置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0084】
10 チップ領域(描画領域)
14 第1のブロック領域
16 第2のブロック領域
20a 第1の小領域
20b 第2の小領域
100 描画装置
122 ブロック領域分割部(第1のブロック領域分割部)
126 面積密度計算部
128 ブロック領域分割部(第2のブロック領域分割部)
130 近接効果補正計算部(補正照射量計算部)
132 ブロック領域分割部(第3のブロック領域分割部)
134 ビーム照射量計算部
150 描画部
152 メモリ(分布情報記憶部)
154 メモリ(閾値情報記憶部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画する際のショット数が互いに略同一になるようなサイズで描画領域を複数の第1のブロック領域に分割する第1のブロック領域分割部と、
前記描画領域を、前記第1のブロック領域のいずれよりも小さいメッシュ状の複数の第1の小領域と、前記第1の小領域よりも小さいメッシュ状の複数の第2の小領域とを用いて、前記第1のブロック領域毎に、内部に位置する第1および第2の小領域のパターン面積密度を計算する面積密度計算部と、
前記複数の第1のブロック領域に分割された前記描画領域を、改めて前記第1および第2の小領域の数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域に分割する第2のブロック領域分割部と、
前記第2のブロック領域毎に、前記第2のブロック領域内部に位置する第1および第2の小領域における近接効果補正照射量を、対応する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を用いて計算する補正照射量計算部と、
前記第1および第2の小領域における荷電粒子ビームのビーム照射量を、対応する前記第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて計算するビーム照射量計算部と、
前記第1および第2の小領域毎に計算されたビーム照射量で前記荷電粒子ビームを照射して、試料に所定のパターンを描画する描画部と、
を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記描画領域内における前記第1および第2の小領域の分布情報を記憶する分布情報記憶部をさらに備え、
前記第2のブロック領域分割部が前記分布情報に基づき分割することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記所定の閾値の情報を記憶する閾値情報記憶部をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
前記複数の第2のブロック領域に分割された前記描画領域を、改めて前記複数の第1のブロック領域に分割し直す第3のブロック領域分割部をさらに備え、
前記ビーム照射量計算部は、前記第1のブロック領域内部に位置する第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて前記ビーム照射量を計算することを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項5】
描画する際のショット数が互いに略同一になるようなサイズで描画領域を複数の第1のブロック領域に分割する工程と、
前記描画領域を、前記第1のブロック領域のいずれよりも小さいメッシュ状の複数の第1の小領域と、前記第1の小領域よりも小さいメッシュ状の複数の第2の小領域とを用いて、前記第1のブロック領域毎に、内部に位置する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を計算する工程と、
前記複数の第1のブロック領域に分割された前記描画領域を、改めて前記第1および第2の小領域の数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域に分割する工程と、
前記第2のブロック領域毎に、前記第2のブロック領域内部に位置する前記第1および第2の小領域における近接効果補正照射量を、対応する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を用いて計算する工程と、
前記第1および第2の小領域における荷電粒子ビームのビーム照射量を、対応する前記第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて計算する工程と、
前記第1および第2の小領域毎に計算されたビーム照射量で前記荷電粒子ビームを照射して、試料に所定のパターンを描画する工程と、
を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項1】
描画する際のショット数が互いに略同一になるようなサイズで描画領域を複数の第1のブロック領域に分割する第1のブロック領域分割部と、
前記描画領域を、前記第1のブロック領域のいずれよりも小さいメッシュ状の複数の第1の小領域と、前記第1の小領域よりも小さいメッシュ状の複数の第2の小領域とを用いて、前記第1のブロック領域毎に、内部に位置する第1および第2の小領域のパターン面積密度を計算する面積密度計算部と、
前記複数の第1のブロック領域に分割された前記描画領域を、改めて前記第1および第2の小領域の数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域に分割する第2のブロック領域分割部と、
前記第2のブロック領域毎に、前記第2のブロック領域内部に位置する第1および第2の小領域における近接効果補正照射量を、対応する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を用いて計算する補正照射量計算部と、
前記第1および第2の小領域における荷電粒子ビームのビーム照射量を、対応する前記第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて計算するビーム照射量計算部と、
前記第1および第2の小領域毎に計算されたビーム照射量で前記荷電粒子ビームを照射して、試料に所定のパターンを描画する描画部と、
を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記描画領域内における前記第1および第2の小領域の分布情報を記憶する分布情報記憶部をさらに備え、
前記第2のブロック領域分割部が前記分布情報に基づき分割することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記所定の閾値の情報を記憶する閾値情報記憶部をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
前記複数の第2のブロック領域に分割された前記描画領域を、改めて前記複数の第1のブロック領域に分割し直す第3のブロック領域分割部をさらに備え、
前記ビーム照射量計算部は、前記第1のブロック領域内部に位置する第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて前記ビーム照射量を計算することを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項5】
描画する際のショット数が互いに略同一になるようなサイズで描画領域を複数の第1のブロック領域に分割する工程と、
前記描画領域を、前記第1のブロック領域のいずれよりも小さいメッシュ状の複数の第1の小領域と、前記第1の小領域よりも小さいメッシュ状の複数の第2の小領域とを用いて、前記第1のブロック領域毎に、内部に位置する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を計算する工程と、
前記複数の第1のブロック領域に分割された前記描画領域を、改めて前記第1および第2の小領域の数が所定の閾値を超えないサイズで複数の第2のブロック領域に分割する工程と、
前記第2のブロック領域毎に、前記第2のブロック領域内部に位置する前記第1および第2の小領域における近接効果補正照射量を、対応する前記第1および第2の小領域のパターン面積密度を用いて計算する工程と、
前記第1および第2の小領域における荷電粒子ビームのビーム照射量を、対応する前記第1および第2の小領域の近接効果補正照射量を用いて計算する工程と、
前記第1および第2の小領域毎に計算されたビーム照射量で前記荷電粒子ビームを照射して、試料に所定のパターンを描画する工程と、
を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−115373(P2013−115373A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262767(P2011−262767)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]