説明

荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法

【目的】照射量を繰り返し演算により求める際に、解の収束をより早め、描画時間を短縮することが可能な装置を提供する。
【構成】描画装置100は、試料の描画領域が仮想分割されたメッシュ毎に、繰り返し演算により当該小領域内にショットする荷電粒子ビームの繰り返し数第n回目の照射量補正係数を算出する照射量係数計算部60と、小領域毎に、第n−1回目の照射量補正係数から、繰り返し数n回目に算出された第n回目の照射量補正係数への変化率を第n回目の変化率として演算する変化率計算部62と、小領域毎に、第n回目の変化率を用いて第n回目の照射量補正係数を補正する照射量係数計算部65と、小領域毎に、補正された第n回目の照射量補正係数を用いて当該小領域内にショットする荷電粒子ビームの照射量を演算する照射量計算部70と、照射量で当該小領域内に所望のパターンを描画する描画部150と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法に係り、例えば、電子線描画において電子ビームの照射量を求める手法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(レチクル或いはマスクともいう。)が必要となる。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、高精度の原画パターンの生産に用いられる。
【0003】
図10は、従来の可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
可変成形型電子線(EB:Electron beam)描画装置は、以下のように動作する。第1のアパーチャ410には、電子線330を成形するための矩形の開口411が形成されている。また、第2のアパーチャ420には、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子線330を所望の矩形形状に成形するための可変成形開口421が形成されている。荷電粒子ソース430から照射され、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子線330は、偏向器により偏向され、第2のアパーチャ420の可変成形開口421の一部を通過して、所定の一方向(例えば、X方向とする)に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340に照射される。すなわち、第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過できる矩形形状が、X方向に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340の描画領域に描画される。第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過させ、任意形状を作成する方式を可変成形方式(VSB方式)という。
【0004】
上述した電子ビーム描画では、図形の端部においてビーム照射量がレジストを解像させる照射量の閾値となるように各ショットの照射量を設定している。通常、図形端でのショットの照射エネルギーの最大値の半分程度で閾値に達するように設定される。そして、照射量の計算には、照射位置によらず1つの照射量計算式が用いられる。そのため、複数のショットを繋げて構成される図形を描画する場合、各ショットでは図形の端部であるかどうかにかかわらず、照射エネルギーの最大値の半分程度で閾値に達するように照射量が設定される。
【0005】
一方、昨今のパターンの微細化に伴い、描画装置で描画される描画時間が長くなり、その短縮化が要請されている。しかしながら、パターンを寸法通りに描画するためには、計算された照射量をレジストに入射させる必要があり、従来の手法では、描画時間の短縮にも限界があった。
【0006】
ここで、電子ビーム描画の照射量計算式に関連して、近接効果と呼ばれる現象等を補正するために、照射量の演算に用いる基準照射量Dbaseと、近接効果を補正するための後方散乱係数ηといった値を位置に依存して変更して照射量を演算するといった手法も存在する。しかしながら、かかる手法においても用いる照射量計算式自体は同じであり、式内の変数を調整するものである。
【0007】
上述したように、従来、設定される1つの照射量計算式で各ショットの照射量を計算していた。従来の照射量計算式で求めた入射照射量で照射すると、図形端と描画しない場所を除いた全ての領域で、全照射量はレジストの閾値よりも大きくなる。図形端での全照射量がレジストの閾値となるために、図形端近傍での全照射量をレジストの閾値よりも大きくすることは必要となるが、図形端から十分はなれた領域では全照射量が閾値程度でよい。しかし、従来の方法ではそのことを考慮していなかった。そのため、例えば、複数のショットを繋げて構成される図形を描画する場合等に、かかる手法で、図形端からビームの前方散乱半径よりも十分離れた図形内の領域の入射照射量を求めると、かかる領域の照射量はレジストの閾値よりも大きくなる。照射量が大きければその分照射時間も長くなる。このように、図形やその照射位置によっては過剰な照射量が存在し、その分描画時間が必要以上にかかってしまうといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−228503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これに対して、本願発明者は図形端と図形内の領域との間で照射量計算式を分けて用いる手法を提案した(例えば特許文献1参照)が、用いた式での収束時間についてさらなる短縮化が求められていた。
【0010】
上述したように、従来の照射量計算式では、照射量を演算するうえでの収束に時間がかかる場合があり、所定のイタレーション回数で演算した際、まだ収束しきれておらず、照射量の不足を招く場合があり得ることがわかった。しかし、かかる問題に対して従来十分な手法が確立されていなかった。イタレーション回数を増やせばよいが、その分演算時間が長くなり、描画時間に影響するおそれがあった。昨今のパターンの微細化に伴うデータ量の増加に伴い、描画時間を短縮するためにも、照射量演算の演算時間の短縮化が望ましい。
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、照射量を繰り返し演算により求める際に、解の収束をより早めることが可能な装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、
試料の描画領域が仮想分割されたメッシュ状の複数の小領域の小領域毎に、繰り返し演算により当該小領域内にショットする荷電粒子ビームの繰り返し数第n回目の照射量補正係数を算出する照射量係数演算部と、
小領域毎に、第n−1回目の照射量補正係数から、繰り返し数n回目に算出された第n回目の照射量補正係数への変化率を第n回目の変化率として演算する変化率演算部と、
小領域毎に、第n回目の変化率を用いて第n回目の照射量補正係数を補正する補正演算部と、
小領域毎に、補正された第n回目の照射量補正係数を用いて当該小領域内にショットする荷電粒子ビームの照射量を演算する照射量演算部と、
照射量で当該小領域内に所望のパターンを描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、小領域毎に、第n−1回目の照射量補正係数を用いて、当該小領域に荷電粒子ビームを照射した場合に当該小領域を除いた他の複数の小領域に蓄積されるそれぞれの照射量の後方散乱成分係数の合計を示す第n回目の後方散乱成分係数を演算する後方散乱成分関数演算部をさらに備え、
照射量係数演算部は、第n回目の照射量補正係数を算出する際に、第n回目の後方散乱成分係数を用いると好適である。
【0014】
また、照射量係数演算部は、第n回目の照射量補正係数を算出する際に、さらに、当該小領域に荷電粒子ビームを照射した場合に当該小領域に分布する荷電粒子ビームの照射量分布関数値を用いると好適である。
【0015】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、
試料の描画領域が仮想分割されたメッシュ状の複数の小領域の小領域毎に、繰り返し演算により当該小領域内にショットする荷電粒子ビームの繰り返し数第n回目の照射量補正係数を算出する工程と、
小領域毎に、繰り返し数第n−1回目の照射量補正係数から、第n回目の照射量補正係数への変化率を第n回目の変化率として演算する工程と、
小領域毎に、第n回目の変化率を用いて第n回目の照射量補正係数を補正する工程と、
小領域毎に、補正された第n回目の照射量補正係数を用いて当該小領域内にショットする荷電粒子ビームの照射量を演算する工程と、
照射量で当該小領域内に所望のパターンを描画する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、小領域毎に、前記第n−1回目の照射量補正係数を用いて、当該小領域に荷電粒子ビームを照射した場合に当該小領域を除いた他の複数の小領域に蓄積されるそれぞれの照射量の後方散乱成分係数の合計を示す第n回目の後方散乱成分係数を演算する工程をさらに備え、
第n回目の照射量補正係数を算出する際に、第n回目の後方散乱成分係数を用いると好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、照射量を繰り返し演算により求める際に、解の収束をより早め、描画時間を短縮できる。よって、装置のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1における照射量と従来の照射量とを比較して説明するためのビームプロファイルの一例を示す図である。
【図3】実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図4】実施の形態1における面積密度マップの一例を示す図である。
【図5】実施の形態1における図形端・図形内部識別マップの一例を示す図である。
【図6】実施の形態1におけるメッシュ領域の座量の一例を示す図である。
【図7】実施の形態1の照射量補正係数と従来の照射量補正係数との収束速度の違いを示す概念図である。
【図8】実施の形態1の照射量補正係数の収束の仕方を説明するための概念図である。
【図9】実施の形態1と比較するための照射量の一例を示す図である。
【図10】従来の可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0020】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型(VSB型)の描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、ブランキング偏向器(ブランカー)212、ブランキングアパーチャ214、第1の成形アパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2の成形アパーチャ206、対物レンズ207、及び偏向器208が配置されている。描画室103内には、少なくともXY方向に移動可能なXYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画対象となる試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造するための露光用のマスクやシリコンウェハ等が含まれる。マスクにはマスクブランクスが含まれる。
【0021】
制御部160は、制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路120、DAC(デジタル・アナログコンバータ)アンプユニット130(偏向アンプ)、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142を有している。制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路120、及び記憶装置140,142は、図示しないバスを介して互いに接続されている。偏向制御回路120にはDACアンプユニット130が接続されている。DACアンプユニット130は、ブランキング偏向器212に接続されている。
【0022】
偏向制御回路120からDACアンプユニット130に対して、ブランキング制御用のデジタル信号が出力される。そして、DACアンプユニット130では、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として、ブランキング偏向器212に印加する。かかる偏向電圧によって電子ビーム200が偏向させられ、各ショットのビームが形成される。
【0023】
また、制御計算機110内には、面積密度算出部50、識別マップ作成部51、繰り返し回数(n)設定部52、判定部53,54、選択部56、係数d計算部60、後方散乱成分係数bs計算部61、変化率δn計算部62、判定部63、選択部64、係数d’計算部65、判定部66、置換部67、判定部68、加算部69、判定部72、照射量D計算部70、照射時間算出部74、及び描画データ処理部76が配置されている。面積密度算出部50、識別マップ作成部51、繰り返し回数(n)設定部52、判定部53,54、選択部56、係数d計算部60、後方散乱成分係数bs計算部61、変化率δn計算部62、判定部63、選択部64、係数d’計算部65、判定部66、置換部67、判定部68、加算部69、照射量D計算部70、照射時間算出部74、及び描画データ処理部76といった各機能は、プログラムといったソフトウェアで構成されても良い。或いは、電子回路等のハードウェアで構成されてもよい。或いは、これらの組み合わせであってもよい。制御計算機110に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度メモリ112に記憶される。同様に、偏向制御回路120は、プログラムといったソフトウェアで動作させるコンピュータで構成されても、電子回路等のハードウェアで構成されてもよい。或いは、これらの組み合わせであってもよい。ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、偏向器205や偏向器208のための各DACアンプユニットも備えていることは言うまでもない。
【0024】
図2は、図2(a)に示すパターン幅Lの図形パターンを描画する場合に実施の形態1における照射量と従来の照射量とを比較して説明するためのビームプロファイルの一例を示す図である。図2(b)は従来の補正手法による照射量プロファイルを示しており、各ショットの入射照射量は、隣接したショットが無くても各ショット端での全照射量がレジストを解像する照射量閾値Ethとなるように設定されている。そのため各ショットの入射照射量は、レジストを解像する照射量閾値Ethからショットの位置での後方散乱照射量分を引いた値の2倍になるように設定されている。しかし、例えば、図形内部のショット2〜6のような位置では、前方散乱の影響による寸法変動が無視できる程度なので、理想的にはショットされるビームのエネルギー最大値がレジスト解像の閾値Ethまであれば十分である。そこで、実施の形態1では、図2(c)に示すように、かかる図形パターンの内部領域における照射量D2〜D3をレジストが解像する照射量閾値Ehからショット位置での後方散乱照射量分を引いた値に設定する。かかる構成により図形パターンの内部領域2〜6における照射量が小さくなった分、かかるショットの照射時間を短縮できる。以下、具体的に処理フローを説明する。
【0025】
図3は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。図3において、実施の形態1における描画方法は、面積密度算出工程(S102)と、図形端・図形内部識別マップ作成工程(S104)と、繰り返し回数n設定工程(S106)と、判定工程(S108)と、判定工程(S110)と、選択工程(S112)と、d(i,j)計算工程(S114)、δ(i,j)計算工程(S116)と、判定工程(S118)と、判定工程(S119)と、選択工程(S120)と、d’(i,j)計算工程(S122)と、判定工程(S124)と、置換工程(S126)と、判定工程(S128)と、加算工程(S130)と、照射量D計算工程(S132)と、照射時間計算工程(S134)と、描画工程(S136)と、いう一連の工程を実施する。
【0026】
まず、描画装置100外部から描画データが入力され、記憶装置140に記憶される。そして、描画装置100内では、描画データ処理部76が、外部から入力され記憶装置140に記憶された描画データを記憶装置140から読み出し、複数段のデータ変換処理を行う。そして、かかる複数段のデータ変換処理により描画装置固有のショットデータを生成する。そして、かかるショットデータに従って描画処理が行なわれることになる。
【0027】
試料101の描画面は、計算処理単位の描画領域となる複数のフレーム領域に仮想分割される。そして、複数のフレーム領域内のデータ処理が図示しない複数のCPU等によって並列に進められる。先に描画されるフレーム領域側から順に並列処理が行なわれる。
【0028】
また、試料101の描画面は、所定のサイズでメッシュ状のメッシュ領域(小領域の一例)に仮想分割される。メッシュサイズは、電子ビーム200の前方散乱の影響半径よりも大きいサイズとする。例えば、電子ビーム200の前方散乱分布の3σよりも大きくするとよい。また、メッシュサイズは最小ショットサイズよりも大きいサイズとするとよい。
【0029】
面積密度算出工程(S102)として、面積密度算出部50は、描画データをフレーム領域毎に記憶装置140から読み出して、各メッシュ位置におけるメッシュ領域内のパターン面積密度ρを算出する。
【0030】
図4は、実施の形態1における面積密度マップの一例を示す図である。図4において、パターン10が点線で示されている。かかるパターン10により完全に覆われているメッシュ領域では、面積密度が1.0(100%)で示されている。また、パターン10が全く被さっていないメッシュ領域では、面積密度が0(0%)で示されている。そして、パターン10の図形端では、メッシュ領域の一部にかかっているので、その含まれる領域の面積に応じて、それぞれ面積密度が求められる。図4では、メッシュサイズmで格子状に分割されている例を示している。
【0031】
図形端・図形内部識別マップ作成工程(S104)として、識別マップ作成部51は、メッシュ領域毎に、かかる領域が図形端に位置するのか、或いは図形内部に位置するのかを識別する識別マップを作成する。
【0032】
図5は、実施の形態1における図形端・図形内部識別マップの一例を示す図である。図5において、当該メッシュ領域のパターン面積密度ρが100%であり、かつ、当該メッシュ領域を取り囲む周囲のすべてのメッシュ領域が共にパターン面積密度ρが100%である領域を図形内部(「内」で示す)としている。そして、かかる条件に該当しないが面積密度ρが0%ではないメッシュ領域を図形端(「端」で示す)としている。面積密度ρが0%のメッシュ領域は、そもそもパターンが配置されていないので、「空」とする。例えば、図5において、下端の各メッシュ領域では、面積密度が0%なので、いずれも「空」とする。下端から2段目の各メッシュ領域および下端から3段目以降の左右端の各メッシュ領域では、面積密度が0%ではないが100%ではないので、いずれも「端」とする。下端から3段目以降の左右端から内側に2列目の各メッシュ領域は、当該メッシュ領域のパターン面積密度ρは100%であるが、当該メッシュ領域を取り囲むメッシュ領域の中に面積密度ρが100%ではない領域があるので、いずれも「端」とする。同様に、下端から3段目の残りの各メッシュ領域についても、当該メッシュ領域のパターン面積密度ρは100%であるが、当該メッシュ領域を取り囲むメッシュ領域の中に面積密度ρが100%ではない領域があるので、いずれも「端」とする。そして、下端から4段目以降の左右端から内側に3列目の各メッシュ領域は、当該メッシュ領域のパターン面積密度ρ(i,j)が100%であり、かつ、当該メッシュ領域を取り囲む周囲のすべてのメッシュ領域が共にパターン面積密度ρが100%であるので、「内」とする。ここでは、「内」、「端」、及び「空」で示したが、実際の識別マップでは、これらを識別可能な記号或いは情報であればよい。作成された識別マップは、記憶装置142に格納される。
【0033】
繰り返し回数n設定工程(S106)として、n設定部52は、照射量演算を行う際の繰り返し回数(n)を設定する。ここでは、初回のn=1を設定すればよい。以降、フレーム毎、かつ、各フレーム内のメッシュ領域毎に、当該メッシュ領域用に用いる照射量を求めていく。
【0034】
判定工程(S108)として、判定部53は、当該メッシュ領域が図形端メッシュかどうかを判定する。具体的には、判定部53は、メッシュ領域毎に、記憶装置142に格納された識別マップを参照し、当該メッシュ領域が図形端メッシュかどうかを判定する。図形端メッシュの場合は、選択工程(S112)へ進む。図形端メッシュではない場合は、判定工程(S110)へ進む。
【0035】
判定工程(S110)として、判定部54は、当該メッシュ領域が図形内部メッシュかどうかを判定する。具体的には、判定部53は、メッシュ領域毎に、記憶装置142に格納された識別マップを参照し、当該メッシュ領域が図形内部メッシュかどうかを判定する。図形内部メッシュの場合は、選択工程(S112)へ進む。図形内部メッシュではない場合は、判定工程(S124)へ進む。
【0036】
選択工程(S112)として、選択部56は、メッシュ領域毎に、複数の照射量計算式の中から1つを選択する。ここでは、2つの照射量計算式1,2を用いる。図形端に使用する一方の照射量計算式1は次の式(1)で定義される。照射量計算式1,2は予め描画装置100に設定しておけばよい。
【0037】
【数1】

【0038】
式(1)では、照射量補正係数d(i)と、電子ビームの後方散乱係数ηと、電子ビームの後方散乱分布関数g(x)と、後方散乱成分係数bs(i)と、メッシュサイズmとを用いている。また、nは、繰り返し演算回数を示す。iは、メッシュ領域の座標を示すベクトルである。また、g(0)は、分布関数の中心値を示す。言い換えれば、g(0)は、座標iの当該メッシュ領域に電子ビーム200を照射した場合に座標iの当該メッシュ領域に分布する電子ビームの照射量分布関数値となる。
【0039】
また、図形内部に使用する他方の照射量計算式2は次の式(2)で定義される。
【0040】
【数2】

【0041】
また、式(1)及び式(2)における後方散乱成分係数bs(i)は、次の式(3)で定義される。
【0042】
【数3】

【0043】
図6は、実施の形態1におけるメッシュ領域の座量の一例を示す図である。図6に示すように、ベクトルjは、座標iのメッシュ領域を基準とした場合の相対座標を示す。よって、繰り返し計算回数第n回目の後方散乱成分係数bs(i)は、メッシュ領域(i+j)における繰り返し計算回数第n−1回目の照射量補正係数dn−1を用いて、メッシュ領域(i)を除いた他のメッシュ領域(i+j)へ電子ビーム200を照射した場合に生じるメッシュ領域(i)での後方散乱成分係数を示す。
【0044】
ここでは、図形内部と識別されたメッシュ領域については、式(1)を、図形端と識別されたメッシュ領域については、式(2)を選択する。そのため、照射量計算式1で求められる照射量よりも、照射量計算式2で求められる照射量の方が小さくできる。上述したように、前方散乱の影響を無視できる図形内部のショット位置では、理想的には、照射エネルギーの最大値がレジストの解像閾値Ethであればよく、その分、照射エネルギーの最大値を小さくできる。よって、余分な照射量を排除できる。
【0045】
(i,j)計算工程(S114)として、まず、bs計算部61は、式(3)を用いて、メッシュ領域(i+j)における繰り返し計算回数第n−1回目の照射量補正係数dn−1を用いて、メッシュ領域(i)を除いた他のメッシュ領域(i+j)へ電子ビーム200を照射した場合に生じるメッシュ領域(i)での後方散乱成分係数bs(i)を計算する。bs計算部61は、後方散乱成分関数演算部の一例である。続いて、d計算部60は、選択された照射量計算式(1又は2)を用いて、メッシュ領域毎に、繰り返し演算により当該メッシュ領域内にショットする電子ビームの繰り返し数第n回目の照射量補正係数d(i)を算出する。
【0046】
ここでは、bs計算部61が後方散乱成分係数bs(i)の計算を行い、d計算部60が照射量補正係数d(i)の計算を行うといった、計算処理を分けて行う例を示しているが、1つの計算処理の中で同時に行ってもよい。
【0047】
照射量計算式(1又は2)に示すように、d計算部60は、第n回目の照射量補正係数dを算出する際に、第n回目の後方散乱成分係数bs(i)を用いる。また、照射量計算式(1又は2)に示すように、d計算部60は、第n回目の照射量補正係数dを算出する際に、当該メッシュ領域に電子ビーム200を照射した場合に当該メッシュ領域に分布する電子ビームの照射量分布関数値g(0)を用いる。d計算部60は、照射量係数演算部の一例である。ここでは、n=1が設定されているので、照射量補正係数d(i)を算出する。その際、初期値として、図形端のメッシュ領域における照射量補正係数d0(i)=2ρ、図形内部のメッシュ領域における照射量補正係数d(i)=ρとする。ρは、当該メッシュ領域における面積密度の値を示す。
【0048】
δ(i,j)計算工程(S116)として、δ計算部62は、メッシュ領域毎に、第n−1回目の照射量補正係数dn−1から、繰り返し数n回目に算出された第n回目の照射量補正係数dへの変化率を第n回目の変化率δとして演算する。δ計算部62は、変化率演算部の一例である。ここでは、n=1が設定されているので、照射量補正係数δ(i)を算出する。変化率δは、次の式(4)で定義される。
【0049】
【数4】

【0050】
判定工程(S118)として、判定部63は、変化率δが許容値Δより小さいかどうかを判定する。変化率δが許容値Δより小さい場合は、選択工程(S120)へ進む。変化率δが許容値Δより小さくない場合は、判定工程(S119)へ進む。
【0051】
判定工程(S119)として、判定部72は、変化率δが許容値Δより小さくない場合に、当該メッシュ領域が図形端メッシュかどうかを判定する。具体的には、判定部53は、メッシュ領域毎に、記憶装置142に格納された識別マップを参照し、当該メッシュ領域が図形端メッシュかどうかを判定する。
【0052】
選択工程(S120)として、選択部64は、照射量補正係数dを補正するための複数の照射量計算式3〜5の中から1つを選択する。選択部64は、変化率δが許容値Δより小さくなく、かつ、当該メッシュ領域が図形端メッシュの場合、照射量計算式3を選択する。照射量計算式3は次の式(5)で定義される。照射量計算式3〜5は予め描画装置100に設定しておけばよい。
【0053】
【数5】

【0054】
式(5)では、補正された照射量補正係数d’(i)と、変化率δと、後方散乱係数ηと、分布関数g(x)と、後方散乱成分係数bs(i)と、メッシュサイズmとを用いている。また、係数kは、0≦k<1の値をとる。
【0055】
選択部64は、変化率δが許容値Δより小さくなく、かつ、当該メッシュ領域が図形端メッシュではない場合(すなわち、図形内部メッシュの場合)、照射量計算式4を選択する。照射量計算式4は次の式(6)で定義される。
【0056】
【数6】

【0057】
選択部64は、変化率δが許容値Δより小さい場合、照射量計算式5を選択する。照射量計算式5は次の式(7)で定義される。係数αは、0≦α<1の値をとる。
【0058】
【数7】

【0059】
’(i,j)計算工程(S122)として、d’計算部65は、選択された照射量計算式(3,4,或いは5)を用いて、補正された照射量補正係数d’(i)を計算する。照射量計算式(3,4,或いは5)で照射量補正係数dを補正することで、照射量補正係数dの収束を早めることができる。特に、変化率δが許容値Δより小さくない場合に、照射量計算式3,或いは照射量計算式4を用いることで演算式の収束をより早めることができる。このように、照射量計算式3,或いは照射量計算式4を用いる場合、d’計算部65は、メッシュ領域毎に、第n回目の変化率δを用いて第n回目の照射量補正係数dを補正する。d’計算部65は、補正演算部の一例である。
【0060】
判定工程(S124)として、判定部66は、該当フレーム内のすべてのメッシュ領域について上述した計算が終了したかどうかを判定する。そして、すべてのメッシュ領域について終了した場合には、置換工程(S126)へ進む。すべてのメッシュ領域について終了した場合には、判定工程(S108)に戻る。そして、該当フレーム内のすべてのメッシュ領域について上述した計算が終了するまで、判定工程(S108)から判定工程(S124)までの各工程を繰り返す。以上のようにして、n=1について、該当フレーム内のすべてのメッシュ領域の補正された照射量補正係数d’(i)を求める。
【0061】
置換工程(S126)として、置換部67は、補正された照射量補正係数d’(i)を照射量補正係数d(i)に置き換える(設定し直す)。
【0062】
判定工程(S128)として、判定部68は、繰り返し計算回数nが所定の回数kになったかどうかを判定する。繰り返し計算回数nが所定の回数kになった場合には、照射量D計算工程(S132)へと進む。繰り返し計算回数nがまだ所定の回数kになっていない場合には、加算工程(S130)に進む。
【0063】
加算工程(S130)として、加算部69は、現在設定される繰り返し計算回数nに値「1」を加算する。そして、判定工程(S108)に戻る。そして、繰り返し計算回数nが所定の回数kになるまで、判定工程(S108)から加算工程(S130)までの各工程を繰り返す。以上のようにして、n=1,2,・・・,kについて、該当フレーム内のすべてのメッシュ領域における、補正され、かつ補正後の照射量補正係数d’(i)にそれぞれ置き換えられた照射量補正係数d(i)を求める。
【0064】
なお、上述した工程において計算された、後方散乱成分係数bs(i)、照射量補正係数d(i)、照射量補正係数d’(i)、及び変化率δは、その都度、記憶装置142に格納しておけばよい。
【0065】
図7は、実施の形態1の照射量補正係数と従来の照射量補正係数との収束速度の違いを示す概念図である。従来の照射量計算式で照射量補正係数dを繰り返し計算により求める場合を点線で示している。これに対して、実施の形態1では、照射量計算式(3〜5のいずれか)で補正するため、収束速度を速めることができ、より少ない計算回数で照射量計算式の解を真の値に収束させることができる。
【0066】
図8は、実施の形態1の照射量補正係数の収束の仕方を説明するための概念図である。照射量計算式(3〜5のいずれか)で補正しない場合、照射量計算式の解は、点線で示すような収束速度の遅い軌跡をたどることになる。これに対して、照射量計算式(3〜5のいずれか)で補正することで、繰り返し計算を行う際、解を真の値を跨ぎながら徐々に真の値に近づけることができる。
【0067】
図9は、実施の形態1と比較するための照射量の一例を示す図である。図9(a)では、1:1のラインアンドスペースパターン20が示されている。そして、ラインアンドスペースパターン20の隣りに100%の面積密度をもった所謂べたパターン22が示されている。かかるパターンを描画するための照射量を演算する場合、従来の照射量計算式を用いると、図9(b)に示すような照射量プロファイルを得る。図9(b)の下段は後方散乱電子による照射量を、上段には入射照射量を示した。ただし、図形端での入射照射量は実際の値の1/2の値で表現してある。図9(b)に示したように、従来の照射量計算式を用いると、照射量計算式の解が収束する前に計算が終了してしまう場合があるため、得られる照射量が閾値Dthに届かない場合があり得る。特に、図形端部において、発生しやすい傾向にある。これに対して、実施の形態1では、照射量計算式の解をより少ない繰り返し計算回数で収束させることができるので、得られる照射量を閾値Dthに届かせることができる。よって、従来のような得られる照射量が閾値Dthに届かない場合を排除できる。
【0068】
照射量D計算工程(S132)として、D計算部70は、得られた、n=1,2,・・・,kについての、補正され、かつ補正後の照射量補正係数d’(i)にそれぞれ置き換えられた照射量補正係数d(i)と基準照射量Dbasedoseとを用いて、当該メッシュ領域の照射量D(i)を演算する。照射量D(i)は、次の式(8)で定義できる。
【0069】
【数8】

【0070】
このように、D計算部70は、メッシュ領域毎に、補正された第n回目の照射量補正係数d(i)を用いて当該メッシュ領域内にショットする電子ビーム200の照射量D(i)を演算する。D計算部70は、照射量演算部の一例である。
【0071】
照射時間計算工程(S134)として、照射時間算出部74は、各ショットにおける電子ビーム200の照射時間Tを計算する。照射量Dは、照射時間Tと電流密度Jとの積で定義することができるので、照射時間Tは、照射量Dを電流密度Jで除することで求めることができる。算出された照射時間は偏向制御回路120に出力される。
【0072】
描画工程(S134)として、描画部150は、メッシュ領域22毎に、演算された照射量で当該メッシュ領域内に所望のパターンを描画する。具体的には、以下のように動作する。偏向制御回路120は、ショット毎の照射時間を制御するデジタル信号をDACアンプユニット130に出力する。そして、DACアンプユニット130は、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅した上で偏向電圧としてブランキング偏向器212に印加する。
【0073】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、ブランキング偏向器212内を通過する際にブランキング偏向器212によって、ビームONの状態では、ブランキングアパーチャ214を通過するように制御され、ビームOFFの状態では、ビーム全体がブランキングアパーチャ214で遮へいされるように偏向される。ビームOFFの状態からビームONとなり、その後ビームOFFになるまでにブランキングアパーチャ214を通過した電子ビーム200が1回の電子ビームのショットとなる。ブランキング偏向器212は、通過する電子ビーム200の向きを制御して、ビームONの状態とビームOFFの状態とを交互に生成する。例えば、ビームONの状態では電圧を印加せず、ビームOFFの際にブランキング偏向器212に電圧を印加すればよい。かかる各ショットの照射時間Tで試料101に照射される電子ビーム200のショットあたりの照射量が調整されることになる。
【0074】
以上のようにブランキング偏向器212とブランキングアパーチャ214を通過することによって生成された各ショットの電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形例えば長方形の穴を持つ第1の成形アパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形例えば長方形に成形する。そして、第1の成形アパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2の成形アパーチャ206上に投影される。偏向器205によって、かかる第2の成形アパーチャ206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させる(可変成形を行なう)ことができる。かかる可変成形はショット毎に行なわれ、通常ショット毎に異なるビーム形状と寸法に成形される。そして、第2の成形アパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向器208によって偏向され、連続的に移動するXYステージ105に配置された試料の所望する位置に照射される。以上のように、各偏向器によって、電子ビーム200の複数のショットが順に基板となる試料101上へと偏向される。
【0075】
上述した各フレーム20内の計算処理が描画処理の進行に合わせてリアルタイムで順に行われる。
【0076】
以上のように実施の形態1によれば、図形や位置に応じて照射量計算式を使い分けることができる。そのため、演算される照射量自体を制御し、過剰な照射量を抑制できる。さらに、照射量計算式の解を上述した照射量計算式で補正することで、解の収束を早め、演算時間の短縮を図ることができる。また、照射量計算式の解が収束する前に繰り返し計算を終了してしまうことを防止できる。その結果、照射量が不足してしまうリスクを回避できる。その結果、描画時間を短縮して装置のスループットを向上させることができる。
【0077】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。上述した例では、変化率δが許容値Δより小さくない場合に、特に、変化率が大きい照射量計算式3,4を用いて補正したが、これに限るものではない。例えば、繰り返し回数1回目については、変化の大きい照射量計算式3,4を用い、2回目以降は、照射量計算式5を用いて補正するようにしても好適である。
【0078】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0079】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置及び方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0080】
50 面積密度算出部
51 識別マップ作成部
52 n設定部
53,54 判定部
56 選択部
60 d計算部
61 bs計算部
62 δn計算部
63 判定部
64 選択部
65 d’計算部
66 判定部
67 置換部
68 判定部
69 加算部
70 D計算部
72 判定部
74 照射時間算出部
76 描画データ処理部
100 描画装置
101 試料
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
110 制御計算機
112 メモリ
120 偏向制御回路
130 DACアンプユニット
140 記憶装置
150 描画部
160 制御部
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203 第1の成形アパーチャ
204 投影レンズ
205 偏向器
206 第2の成形アパーチャ
207 対物レンズ
208 偏向器
212 ブランキング偏向器
214 ブランキングアパーチャ
330 電子線
340 試料
410 第1のアパーチャ
411 開口
420 第2のアパーチャ
421 可変成形開口
430 荷電粒子ソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の描画領域が仮想分割されたメッシュ状の複数の小領域の小領域毎に、繰り返し演算により当該小領域内にショットする荷電粒子ビームの繰り返し数第n回目の照射量補正係数を算出する照射量係数演算部と、
小領域毎に、第n−1回目の照射量補正係数から、繰り返し数n回目に算出された前記第n回目の照射量補正係数への変化率を第n回目の変化率として演算する変化率演算部と、
小領域毎に、前記第n回目の変化率を用いて前記第n回目の照射量補正係数を補正する補正演算部と、
小領域毎に、補正された前記第n回目の照射量補正係数を用いて当該小領域内にショットする荷電粒子ビームの照射量を演算する照射量演算部と、
前記照射量で当該小領域内に所望のパターンを描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
小領域毎に、前記第n−1回目の照射量補正係数を用いて、当該小領域に荷電粒子ビームを照射した場合に当該小領域を除いた他の複数の小領域に蓄積されるそれぞれの照射量の後方散乱成分係数の合計を示す第n回目の後方散乱成分係数を演算する後方散乱成分関数演算部をさらに備え、
前記照射量係数演算部は、前記第n回目の照射量補正係数を算出する際に、前記第n回目の後方散乱成分係数を用いることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記照射量係数演算部は、前記第n回目の照射量補正係数を算出する際に、さらに、当該小領域に荷電粒子ビームを照射した場合に当該小領域に分布する荷電粒子ビームの照射量分布関数値を用いることを特徴とする請求項2記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
試料の描画領域が仮想分割されたメッシュ状の複数の小領域の小領域毎に、繰り返し演算により当該小領域内にショットする荷電粒子ビームの繰り返し数第n回目の照射量補正係数を算出する工程と、
小領域毎に、繰り返し数第n−1回目の照射量補正係数から、前記第n回目の照射量補正係数への変化率を第n回目の変化率として演算する工程と、
小領域毎に、前記第n回目の変化率を用いて前記第n回目の照射量補正係数を補正する工程と、
小領域毎に、補正された前記第n回目の照射量補正係数を用いて当該小領域内にショットする荷電粒子ビームの照射量を演算する工程と、
前記照射量で当該小領域内に所望のパターンを描画する工程と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項5】
小領域毎に、前記第n−1回目の照射量補正係数を用いて、当該小領域に荷電粒子ビームを照射した場合に当該小領域を除いた他の複数の小領域に蓄積されるそれぞれの照射量の後方散乱成分係数の合計を示す第n回目の後方散乱成分係数を演算する工程をさらに備え、
前記第n回目の照射量補正係数を算出する際に、前記第n回目の後方散乱成分係数を用いることを特徴とする請求項4記載の荷電粒子ビーム描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−115303(P2013−115303A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261561(P2011−261561)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】