説明

荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法

【課題】描画開始の遅延を抑止する。
【解決手段】荷電粒子ビーム描画装置1は、レイアウトに関するレイアウトデータであってパターンデータ及び複数のパラメータを含むレイアウトデータに対して並列処理を行う並列処理部31と、レイアウトデータの入れ替えに応じて並列処理部31に並列処理を実行させる処理命令部43と、レイアウトデータが入れ替えられた場合、そのレイアウトデータのうちパターンデータ及び並列処理に関するパラメータが不変更であることを検出する不変更検出部32と、不変更検出部32による検出に応じて並列処理部31に並列処理の実行をスキップさせる処理スキップ部33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴って、半導体デバイスに要求される回路線幅は益々微小になってきている。半導体デバイスに所望の回路パターンを形成するためには、リソグラフィ技術が用いられており、このリソグラフィ技術では、マスク(レチクル)と称される原画パターンを用いたパターン転写が行われている。このパターン転写に用いる高精度なマスクを製造するためには、優れた解像度を有する荷電粒子ビーム描画装置が用いられている。
【0003】
この荷電粒子ビーム描画装置では、ユーザが使用したいレイアウトデータをあらかじめ登録しておく必要がある。この登録データの転送時には、同時にフォーマット検査やショット密度計算が行われる(例えば、特許文献1参照)。この処理は、パイプライン処理と呼ばれる並列処理により実行される。なお、一度、並列処理が完了したレイアウトデータに対して再度並列処理を行う場合には、条件に応じていくつかの処理を簡略化し、処理速度(スループット)を向上させることが行われている。
【0004】
また、荷電粒子ビーム描画装置では、登録したレイアウトデータ(実描画JOB)に対して、そのレイアウトデータのうちパターンデータ及び各種のパラメータを入れ替える操作(レイアウト入替操作)がサポートされている。このレイアウト入替操作は描画前調整が開始する直前まで受け付けられており、レイアウト入替操作が行われると、再度フォーマット検査やショット密度計算を行うため、前述の並列処理が実行されることになる。なお、前述の各種パラメータとしては、ジョブコントロールパラメータと呼ばれるパラメータがあり、その各種パラメータの中には、並列処理に関するパラメータも存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−81340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の技術では、レイアウト入替操作に応じて、必ず、レイアウトデータに対する並列処理が実行されることになる。このため、レイアウト入替操作により、パターンデータが変更されておらず、さらに、並列処理に関するパラメータが変更されていないという条件が重なった場合、すなわちレイアウトデータに対する並列処理を実行する必要がない場合でも、その並列処理が実行されてしまう。このように無駄な並列処理が実行されるため、結果として描画開始が遅れることになる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、描画開始の遅延を抑止することができる荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る第1の特徴は、荷電粒子ビーム描画装置において、レイアウトに関するレイアウトデータであってパターンデータ及び複数のパラメータを含むレイアウトデータに対して並列処理を行う並列処理部と、レイアウトデータの入れ替えに応じて並列処理部に並列処理を実行させる処理命令部と、レイアウトデータが入れ替えられた場合、そのレイアウトデータのうちパターンデータ及び並列処理に関するパラメータが不変更であることを検出する不変更検出部と、不変更検出部による検出に応じて、並列処理部に並列処理の実行をスキップさせる処理スキップ部とを備えることである。
【0009】
また、上記第1の特徴に係る荷電粒子ビーム描画装置において、処理命令部は、パターンデータの変更の有無及び並列処理に関するパラメータの変更の有無を示す付加情報を生成し、不変更検出部は、処理命令部により生成された付加情報がパターンデータの変更無及び並列処理に関するパラメータの変更無を示す場合、パターンデータ及び並列処理に関するパラメータが不変更であることを検出することが望ましい。
【0010】
また、上記第1の特徴に係る荷電粒子ビーム描画装置において、処理命令部に並列処理の実行が不要である旨を報知する処理報知部を備えることが望ましい。
【0011】
本発明の実施形態に係る第2の特徴は、荷電粒子ビーム描画方法において、レイアウトに関するレイアウトデータであってパターンデータ及び複数のパラメータを含むレイアウトデータに対して並列処理を行う工程と、レイアウトデータの入れ替えに応じて並列処理を再度行う工程とを有し、並列処理を再度行う工程では、レイアウトデータが入れ替えられた場合、そのレイアウトデータのうちパターンデータ及び並列処理に関するパラメータが不変更であることを検出し、その検出に応じて並列処理の実行をスキップすることである。
【0012】
また、上記第2の特徴に係る荷電粒子ビーム描画方法において、並列処理を再度行う工程では、パターンデータの変更の有無及び並列処理に関するパラメータの変更の有無を示す付加情報を用いて、その付加情報がパターンデータの変更無及び並列処理に関するパラメータの変更無を示す場合、パターンデータ及び並列処理に関するパラメータが不変更であることを検出することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、描画開始の遅延を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の一形態に係る荷電粒子ビーム描画装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す荷電粒子ビーム描画装置が用いるレイアウトデータの概略構成を示す図である。
【図3】図2に示すレイアウトデータ内のパターンデータの概略構成を示す図である。
【図4】図1に示す荷電粒子ビーム描画装置が備えるジョブ制御部及びデータ前処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す荷電粒子ビーム描画装置が行うレイアウト入替処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】レイアウト入替に応じて再度の並列処理を実行した場合とスキップした場合との描画開始時間への影響を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る荷電粒子ビーム描画装置1は、荷電粒子ビームによる描画を行う描画部2と、その描画部2を制御する制御部3とを備えている。この荷電粒子ビーム描画装置1は、荷電粒子ビームとして例えば電子ビームを用いた可変成形型の描画装置の一例である。なお、荷電粒子ビームは電子ビームに限られるものではなく、イオンビームなどの他の荷電粒子ビームであっても良い。
【0017】
描画部2は、描画対象となる試料Wを収容する描画室2aと、その描画室2aに連通する光学鏡筒2bとを有している。描画室2a内には、試料Wを支持するステージ11が設けられている。このステージ11は水平面内で互いに直交するX方向とY方向に移動可能に形成されており、そのステージ11の載置面上には、例えばマスクやブランクなどの試料Wが載置される。また、光学鏡筒2b内には、電子ビームBを出射する電子銃21と、その電子ビームBを集光する照明レンズ22と、ビーム成形用の第1のアパーチャ23と、投影用の投影レンズ24と、ビーム成形用の第1の偏向器25と、ビーム成形用の第2のアパーチャ26と、試料W上にビーム焦点を結ぶ対物レンズ27と、試料Wに対するビームショット位置を制御するための第2の偏向器28とが配置されている。
【0018】
この描画部2では、電子ビームBが電子銃21から出射され、照明レンズ22により第1のアパーチャ23に照射される。この第1のアパーチャ23は例えば矩形状の開口を有している。これにより、電子ビームBが第1のアパーチャ23を通過すると、その電子ビームの断面形状は矩形状に成形され、投影レンズ24により第2のアパーチャ26に投影される。なお、この投影位置は第1の偏向器25により偏向可能であり、投影位置の変更により電子ビームBの形状と寸法を制御することが可能である。その後、第2のアパーチャ26を通過した電子ビームBは、その焦点が対物レンズ27によりステージ11上の試料Wに合わされて照射される。このとき、ステージ11上の試料Wに対する電子ビームBのショット位置は第2の偏向器28により制御される。
【0019】
制御部3は、ユーザにより入力操作される操作部3aと、描画動作全体の制御を行うジョブ制御部3bと、レイアウトデータを前処理するデータ前処理部3cと、その前処理されたレイアウトデータを記憶する第1のデータ記憶部3dと、ショットデータを生成するショットデータ生成部3eと、その生成されたショットデータを記憶する第2のデータ記憶部3fと、前述の描画部2による描画を制御する描画制御部3gと、描画前調整の各種診断を制御する診断制御部3hとを備えている。
【0020】
操作部3aは、ユーザ(利用者)により入力操作される入力部であって、ジョブ登録やレイアウト入替などの様々な入力操作を受け付ける入力部である。この操作部3aとしては、例えば、マウスやキーボードなどの入力デバイスを用いることが可能である。例えば、ユーザは操作部3aを入力操作し、使用したいレイアウトデータを登録したり(レイアウト登録操作)、あるいは、そのレイアウトデータのうちパターンデータや各種パラメータを入れ替えたりする(レイアウト入替操作)。
【0021】
ジョブ制御部3bは、装置内の各部を制御するメイン制御部である。この制御の一つとして、例えばジョブ制御部3bは、操作部3aに対する操作者のレイアウト登録操作に応じて、登録されたレイアウトデータに対する並列処理の実行をデータ前処理部3cに指示し、さらに、操作部3aに対する操作者のレイアウト入替操作に応じて、並列処理の再実行をデータ前処理部3cに指示する。
【0022】
ここで、図2に示すように、レイアウトに関するレイアウトデータD1は、パラメータに関するパラメータデータD2と、パターンに関するパターンデータD3とにより構成されている。例えば、パラメータデータD2はテキスト形式のデータであり、パターンデータD3はバイナリ形式のデータである。
【0023】
パラメータデータD2には、プレートに関するパラメータD2aやレイアウトに関するパラメータD2bなどの各種のパラメータが含まれており、それらのパラメータの中には、並列処理に関するパラメータも存在している。プレートに関するパラメータD2aとしては、例えば、センダーやレジスト名、材質、ALN(アライメント)チャンバのソーキング時間などのジョブコントロールパラメータがある。また、レイアウトに関するパラメータD2bとしては、例えば、レイアウト名やマスクパラメータ、カラムパラメータなどのジョブコントロールパラメータがある。
【0024】
パターンデータD3となる描画データは、図3に示すように、チップ階層CP、そのチップ階層CPよりも下位のフレーム階層FR、そのフレーム階層FRよりも下位のブロック階層BL、そのブロック階層BLよりも下位のセル階層CL、そのセル階層CLよりも下位の図形階層FGに階層化されている。
【0025】
なお、図3の例では、チップ階層CPの要素群(チップ群)の一部であるチップCP1が、フレーム階層FRの要素群(フレーム群)の一部である三個のフレームFR1〜FR3に対応している。また、フレーム階層FRの要素群の一部であるフレームFR2が、ブロック階層BLの要素群(ブロック群)の一部である十八個のブロックBL1〜BL18に対応している。ブロック階層BLの要素群の一部であるブロックBL9が、セル階層CLの要素群(セル群)の一部である四個のセルCL1〜CL4に対応している。セル階層CLの要素群の一部であるCL1が図形階層FGの要素群(図形群)の一部である複数の図形FG1、FG2に対応している。
【0026】
図1に戻り、データ前処理部3cは、レイアウトデータD1を例えばフレームごとに並列処理する並列処理部31を備えており、レイアウトデータD1に対して並列処理を行って次の装置に転送するデータ転送部として機能する。
【0027】
並列処理部31は、レイアウトデータD1を読み込むデータ入力部31aと、読み込んだレイアウトデータD1を一時的に記憶するテンポラリデータ記憶部31bと、レイアウトデータD1に対してフォーマット検査を行うフォーマット検査部31cと、レイアウトデータD1に対してショット密度計算を行うショット密度計算部31dと、フォーマット検査及びショット密度計算済みのレイアウトデータD1を出力するデータ出力部31eとを具備している。
【0028】
この並列処理部31は、データの読み込みから検査及び計算を介して出力までの処理をフレームごとに並列に行う。これにより、処理速度(スループット)を向上させることが可能である。なお、前述の各部は、電気回路などのハードウエアにより構成されても良く、また、各機能を実行するプログラムなどのソフトウエアにより構成されても良く、あるいは、それらの両方の組合せにより構成されても良い。
【0029】
データ入力部31aは、ジョブ制御部3bからの並列処理実行指示に応じてレイアウトデータD1を読み込み、その読み込んだレイアウトデータD1をテンポラリデータ記憶部31bに送信する。なお、レイアウトデータD1は、例えば半導体集積回路などのレイアウトに関するデータ(設計データやCADデータなど)を変換することで得られたデータである。
【0030】
テンポラリデータ記憶部31bは、データ入力部31aから送信されたレイアウトデータD1を一時的に記憶する記憶装置である。このテンポラリデータ記憶部31bとしては、例えば、磁気ディスク装置や半導体ディスク装置(フラッシュメモリ)などを用いることが可能である。
【0031】
フォーマット検査部31cは、テンポラリデータ記憶部31bからレイアウトデータD1を読み出し、フォーマット検査として、例えば、フレームごとにパリティーチェックを行う。この検査結果は必要に応じて保存される。
【0032】
ショット密度計算部31dも、フォーマット検査部31cと同様に、テンポラリデータ記憶部31bからレイアウトデータD1を読み出し、フレームごとにショット密度を算出する。この算出されたショット密度も必要に応じて保存される。
【0033】
データ出力部31eは、フォーマット検査及びショット密度計算済みのフレームごとに、テンポラリデータ記憶部31bから第1のデータ記憶部3dに向けてレイアウトデータD1を出力する。
【0034】
第1のデータ記憶部3dは、データ出力部31eから出力されたフォーマット検査及びショット密度計算済みのレイアウトデータD1を記憶する記憶装置である。この第1のデータ記憶部3dとしては、例えば、磁気ディスク装置や半導体ディスク装置(フラッシュメモリ)などを用いることが可能である。
【0035】
ショットデータ生成部3eは、例えば、フレーム階層FRのフレームを描画単位領域としてショットデータを生成する。このショットデータ生成部3eは、描画単位領域ごとに、セル階層CLの各セル内の図形の形状や大きさ、位置などを決定して、ショットデータを生成し、その生成したショットデータを第2のデータ記憶部3fに送信する。なお、描画単位領域としては、フレームを用いているが、これに限るものではない。
【0036】
第2のデータ記憶部3fは、ショットデータ生成部3eから送信されたショットデータを記憶する記憶装置である。この第2のデータ記憶部3fとしては、例えば、磁気ディスク装置や半導体ディスク装置(フラッシュメモリ)などを用いることが可能である。
【0037】
描画制御部3gは、第2のデータ記憶部3fからショットデータを読み出し、そのショットデータに基づいて描画部2を制御する。詳述すると、描画制御部3gは、読み出したショットデータに基づき、試料Wが載置されたステージ11を例えばX方向に移動させつつ、電子ビームBを偏向によりステージ11上の試料Wの各所定位置にショットする図形描画を行い、その後、ステージ11をY方向にステップ移動させてから前述と同様に図形描画を行い、これを繰り返して試料Wの描画領域に電子ビームBによる描画を行う。
【0038】
診断制御部3hは、ジョブ制御部3bからの描画前調整実行指示に応じて、描画前調整の診断項目一式を実行する制御を行う。詳述すると、診断制御部3hは、診断項目1、診断項目2、診断項目3というように複数の診断項目を順次実行して診断結果を取得する制御を行い、依頼された全ての診断が完了すると、診断完了をジョブ制御部3bに報知する。
【0039】
次に、前述のジョブ制御部3b及びデータ前処理部3cについて詳しく説明する。
【0040】
図4に示すように、ジョブ制御部3bは、描画前調整が開始する直前までレイアウトデータD1の入れ替えを受け付けるレイアウト入替受付部41と、そのレイアウトデータD1の入替が行われたことを検出するレイアウト入替検出部42と、レイアウトデータD1の入れ替えに応じて並列処理部31に並列処理を実行させる処理命令部43とを備えている。なお、これらの各部は、電気回路などのハードウエアにより構成されても良く、また、各機能を実行するプログラムなどのソフトウエアにより構成されても良く、あるいは、それらの両方の組合せにより構成されても良い。
【0041】
レイアウト入替受付部41は、描画前調整が開始する直前までレイアウト入替を可能とするため、最初の並列処理完了時間から描画前調整開始時間までの間、レイアウトデータD1の入れ替えを受け付ける。すなわち、レイアウト入替受付部41は、現在時刻が最初の並列処理完了時間から描画前調整開始時間までの時間範囲内であれば、そのレイアウトデータD1の入れ替え、すなわちそのレイアウトデータD1のうちパターンデータD3や各種パラメータの入れ替えを受け付ける。
【0042】
レイアウト入替検出部42は、現在時刻が最初の並列処理完了時間から描画前調整開始時間までの時間範囲内であり、操作部3aに対するユーザの入力操作によりレイアウトデータD1の入れ替えが行われた場合に、そのレイアウトデータD1の入れ替えを検出する。このレイアウト入替では、ユーザが操作部3aを入力操作し、一度登録されたレイアウトデータD1を他のレイアウトデータに切り替える。このとき、必要に応じて、各種のパラメータの一部も変更される。通常、数百種類のパラメータのうち、変更されるパラメータは数十種類程度であり、他のパラメータは固定されていることが多い。また、変更対象のパラメータはユーザごとにある程度決められていることが多い。
【0043】
処理命令部43は、レイアウト入替検出部42によりレイアウトデータD1の入れ替えが検出されると、レイアウトデータD1に対する並列処理の実行をデータ前処理部3cに指示する。このとき、処理命令部43は、並列処理実行指示に加え、付加情報を生成してデータ前処理部3cに送信する。この付加情報は、レイアウトデータD1のうちパターンデータD3の変更の有無及び並列処理に関するパラメータの変更の有無を示す情報である。このような付加情報は、例えば、レイアウトデータD1の変更差分を取ることにより生成される。
【0044】
データ前処理部3cは、処理命令部43からの並列処理実行指示に応じて並列処理を実行する前述の並列処理部31に加え、レイアウトデータD1内のデータ不変更を検出する不変更検出部32と、並列処理実行が不要である場合にその並列処理をスキップする処理スキップ部33と、さらに、並列処理完了やその実行が不要であることをジョブ制御部3bに報知する処理報知部34とを備えている。なお、これらの各部は、電気回路などのハードウエアにより構成されても良く、また、各機能を実行するプログラムなどのソフトウエアにより構成されても良く、あるいは、それらの両方の組合せにより構成されても良い。
【0045】
不変更検出部32は、処理命令部43から送信された付加情報に基づいてレイアウトデータD1内のデータ不変更、すなわち、パターンデータD3が変更されておらず、並列処理に関するパラメータが変更されていないことを検出する。例えば、付加情報がレイアウトデータD1のうちパターンデータD3の変更無及び並列処理に関するパラメータの変更無を示す場合には、パターンデータD3及び並列処理に関するパラメータが不変更であることを検出することになる。
【0046】
処理スキップ部33は、不変更検出部32によりパターンデータD3及び並列処理に関するパラメータが不変更であることが検出された場合、並列処理を再度実行する必要がないため、その並列処理を並列処理部31にスキップさせる。これにより、不要な並列処理を実行することを防止することが可能となる。
【0047】
処理報知部34は、処理スキップ部33による並列処理のスキップを受けて、並列処理実行が不要である旨をジョブ制御部3bに報知したり、あるいは、並列処理完了に応じて、並列処理が完了した旨をジョブ制御部3bに報知したりする。ジョブ制御部3bはそれらの報知に応じて他の処理を進めることになる。
【0048】
次に、前述の荷電粒子ビーム描画装置1が行うレイアウト入替処理について詳しく説明する。
【0049】
図5に示すように、ジョブ制御部3bでは、レイアウト入替受付部41によりレイアウト入替が可能であるか否かが判断され(ステップS1)、さらに、レイアウト入替検出部42によりレイアウト入替の完了が検出されたか否かが判断される(ステップS2)。
【0050】
前述のステップS1では、現在時刻がレイアウト入替可能時間、すなわち最初の並列処理完了時間から描画前調整開始時間までの時間範囲内であるか否かが判定され、レイアウト入替が可能であるか否かが判断される。例えば、その時間範囲内でユーザは操作部3aを入力操作し、一度登録されたレイアウトデータD1を他のレイアウトデータに切り替える場合がある。このとき、レイアウトデータD1内の各種のパラメータの一部を変更することがある。なお、前述の時間範囲外では、レイアウトデータD1の入れ替えは禁止されている。
【0051】
その後、レイアウト入替が可能であると判断され(ステップS1のYES)、さらに、レイアウト入替の完了が検出されると(ステップS2のYES)、処理命令部43により並列処理実行を指示する命令信号がデータ前処理部3cに送信される(ステップS3)。このとき、その命令信号と共に付加情報も送信される。この付加情報は、パターンデータD3の変更の有無及び並列処理に関するパラメータの変更の有無を示す情報である。
【0052】
なお、ステップS1においてレイアウト入替が可能でないと判断された場合(ステップS1のNO)、あるいは、ステップS2においてレイアウト入替の完了が検出されなかった場合(ステップS2のNO)、例えば、レイアウト入替の取り止めやレイアウト入替の失敗が検出された場合には、処理が終了する。
【0053】
データ前処理部3cでは、ジョブ制御部3bから送信された並列処理実行を指示する命令信号が付加情報と共に受信され(ステップS11)、不変更検出部32により付加情報に基づいて並列処理実行が必要であるか否かが判断される(ステップS12)。
【0054】
このステップS12では、例えば、付加情報がパターンデータD3の変更無及び並列処理に関するパラメータの変更無を示す場合には、パターンデータD3及び並列処理に関するパラメータが不変更であることを検出し、並列処理を再度実行する必要がないと判断する。一方、付加情報がパターンデータD3の変更有及び並列処理に関するパラメータの変更有の両方又はどちらか一方を示す場合には、並列処理を再度実行する必要があると判断する。
【0055】
ステップS12において、並列処理実行が必要であると判断された場合には(ステップS12のYES)、並列処理部31により並列処理が実行され(ステップS13)、並列処理により処理されたレイアウトデータD1が第1のデータ記憶部3dに記憶される(ステップS14)。その後、処理報知部34により並列処理が完了した旨を示す報知信号がジョブ制御部3bに送信される(ステップS15)。
【0056】
一方、ステップS12において、並列処理実行が必要ないと判断された場合には(ステップS12のNO)、処理スキップ部33により並列処理がスキップされ(ステップS16)、さらに、処理報知部34により並列処理が不要である旨を示す報知信号がジョブ制御部3bに送信される(ステップS17)。
【0057】
ジョブ制御部3bでは、データ前処理部3cからの報知信号が受信されると(ステップS4)、現在時刻が描画前調整開始時間であるか否かが判断され(ステップS5)、現在時刻が描画前調整開始時間となるまでその判断が繰り返される(ステップS5のNO)。その後、現在時刻が描画前調整開始時間であると判断されると(ステップS5のYES)、描画前調整を実行する条件がそろい次第、描画前調整実行を指示する命令信号が診断制御部3hに送信される(ステップS6)。
【0058】
診断制御部3hでは、ジョブ制御部3bから送信された命令信号が受信されると、診断項目1、診断項目2、診断項目3というように複数の診断項目を順次実行して診断結果を取得する制御が実行され、依頼された全ての診断が完了すると、診断完了を示す報知信号がジョブ制御部3bに送信される。
【0059】
このようなレイアウト入替処理によれば、現在時刻が描画前調整開始時間前であってレイアウトデータD1が入れ替えられた場合、そのレイアウトデータD1のうちパターンデータD3と並列処理に関するパラメータとの両方が不変更であることが検出されると、並列処理の実行がスキップされる。これにより、パターンデータD3が変更されておらず、さらに、並列処理に関するパラメータ、すなわちジョブコントロールパラメータが変更されていないという条件が重なった場合には、レイアウトデータD1に対する無駄な並列処理の実行を抑えることが可能となる。
【0060】
ここで、例えば、図6に示すように(図6中の上図A1参照)、試料Wは、描画前調整開始時間T1までに試料搬送部から試料出し入れ用のI/O(Input/Output)チャンバに搬送され(ステップS21)、次いで、I/OチャンバからALN(アライメント)チャンバに搬送される(ステップS22)。その後、現在時刻が描画前調整開始時間T1となると、描画前調整が行われ(ステップS23)、描画前調整完了後、試料WがALNチャンバからWチャンバ(前述の描画室2a)に搬送される(ステップS24)。その後、再度の描画前調整が行われ(ステップS25)、描画前調整完了後、描画部2によって荷電粒子ビームによる描画が実行される(ステップS26)。
【0061】
なお、前述のチャンバ間の各搬送は、例えば搬送ロボットにより行われる。また、前述の各描画前調整では、各種の診断(例えば、ビームの照射位置のアライメントやビーム強度調整など)が実行される。このとき、診断項目1、診断項目2、診断項目3というように複数の診断項目が順次実行され、その都度、診断結果が取得される。その後、依頼された全ての診断が完了すると、診断完了が診断制御部3hからジョブ制御部3bに報知され、次の処理が実行されることになる。
【0062】
前述のステップS22において、レイアウトデータD1の入れ替えにより再度の並列処理が実行されると(図6中の中央図A2参照)、その並列処理にかかる時間によっては描画前調整開始時間T1が遅れてしまうことがある。一方、前述のステップS22において、前述のようなレイアウト入替処理により不必要な再度の並列処理がスキップ、すなわち飛ばされて実行されないと(図6中の下図A3参照)、描画前調整開始時間T1が遅れるようなことがなくなるので、描画前調整開始時間T1の遅延を防止することができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば、レイアウトデータD1が入れ替えられた場合、そのレイアウトデータD1のうちパターンデータD3及び並列処理に関するパラメータが不変更であることが検出され、その検出に応じて並列処理の実行がスキップされる。これにより、パターンデータD3が変更されておらず、さらに、並列処理に関するパラメータが変更されていないという条件が重なった場合には、レイアウトデータD1に対する無駄な並列処理の実行を防止することが可能となるので、描画開始の遅延を抑止することができる。
【0064】
また、パターンデータD3の変更の有無及び並列処理に関するパラメータの変更の有無を示す付加情報を生成し、その付加情報がパターンデータD3の変更無及び並列処理に関するパラメータの変更無を示す場合、パターンデータD3及び並列処理に関するパラメータが不変更であることを検出することによって、容易で正確な不変更の検出を実現することができる。
【0065】
また、ジョブ制御部3bの処理命令部43に対して並列処理の実行が不要である旨を報知することによって、処理命令部43は並列処理の実行が不要であることを確実に認識することが可能となる。これにより、処理を次に進めることができ、さらに、何度も同じレイアウトデータD1に対して並列処理の実行を指示するようなことを防止することができる。
【0066】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1 荷電粒子ビーム描画装置
2 描画部
2a 描画室
2b 光学鏡筒
3 制御部
3a 操作部
3b ジョブ制御部
3c データ前処理部
3d 第1のデータ記憶部
3e ショットデータ生成部
3f 第1のデータ記憶部
3g 描画制御部
11 ステージ
21 電子銃
22 照明レンズ
23 第1のアパーチャ
24 投影レンズ
25 第1の偏向器
26 第2のアパーチャ
27 対物レンズ
28 第2の偏向器
31 並列処理部
31a データ入力部
31b テンポラリデータ記憶部
31c フォーマット検査部
31d ショット密度計算部
31e データ出力部
B 電子ビーム
W 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レイアウトに関するレイアウトデータであってパターンデータ及び複数のパラメータを含むレイアウトデータに対して並列処理を行う並列処理部と、
前記レイアウトデータの入れ替えに応じて前記並列処理部に前記並列処理を実行させる処理命令部と、
前記レイアウトデータが入れ替えられた場合、そのレイアウトデータのうち前記パターンデータ及び前記並列処理に関するパラメータが不変更であることを検出する不変更検出部と、
前記不変更検出部による検出に応じて、前記並列処理部に前記並列処理の実行をスキップさせる処理スキップ部と、
を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記処理命令部は、前記パターンデータの変更の有無及び前記並列処理に関するパラメータの変更の有無を示す付加情報を生成し、
前記不変更検出部は、前記処理命令部により生成された前記付加情報が前記パターンデータの変更無及び前記並列処理に関するパラメータの変更無を示す場合、前記パターンデータ及び前記並列処理に関するパラメータが不変更であることを検出することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記処理命令部に前記並列処理の実行が不要である旨を報知する処理報知部を備えることを特徴とすることを特徴とする請求項1又は2記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
レイアウトに関するレイアウトデータであってパターンデータ及び複数のパラメータを含むレイアウトデータに対して並列処理を行う工程と、
前記レイアウトデータの入れ替えに応じて前記並列処理を再度行う工程と、
を有し、
前記並列処理を再度行う工程では、前記レイアウトデータが入れ替えられた場合、そのレイアウトデータのうち前記パターンデータ及び前記並列処理に関するパラメータが不変更であることを検出し、その検出に応じて前記並列処理の実行をスキップすることを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項5】
前記並列処理を再度行う工程では、前記パターンデータの変更の有無及び前記並列処理に関するパラメータの変更の有無を示す付加情報を用いて、その付加情報が前記パターンデータの変更無及び前記並列処理に関するパラメータの変更無を示す場合、前記パターンデータ及び前記並列処理に関するパラメータが不変更であることを検出することを特徴とする請求項4記載の荷電粒子ビーム描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115308(P2013−115308A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261657(P2011−261657)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】