説明

荷電粒子線装置及びそれを用いた画像取得方法

【課題】
半導体装置等の微少寸法(CD値)を計測するのに用いられる荷電粒子線装置において,試料への電子ビームのランディング角がばらつきことに起因するCD値ばらつきを低減する方法,及び,装置間の電子ビームランディング角の差違に起因する機差を低減する方法を提供する。
【解決手段】
結晶異方性エッチングの技術により作製した各面のなす角が既知の多面体構造物が視野内に複数含まれるように配置した較正用サンプルを用い,各多面体構造物の画像上での幾何学的な変形をもとに,視野内の各位置のビームランディング角を算出し,視野内の各位置のビームランディング角が等しくするビーム制御パラメータを予め登録しておき,寸法計測を行う際は,計測対象パターンの視野内での位置に応じて,上記登録したビーム制御パラメータを適用することにより,等しいビームランディング角にて,計測用の画像を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の回路パターン等の微少な寸法を計測する荷電粒子線装置に関する。特に,試料に対する電子ビームのランディング角度を計測して調整し画像を取得する方法とその荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程でのパターン寸法管理には,走査電子顕微鏡(SEM)を半導体専用に特化した測長SEMが用いられている。図2に測長SEMの原理を示す。電子銃から放出された一次電子ビームは収束レンズで細く絞られ,走査コイルにより試料上を2次元的に走査される。電子ビーム照射によって試料から発生した二次電子を検出器で捕らえることで,電子線像が得られる。二次電子はパターンエッジ部でより多く発生するため,電子線像は,パターンエッジに相当する部分が明るい画像となる。走査像の倍率は,CRT上の走査幅(一定)と,試料上の電子ビームの走査幅(可変)の比で任意に変えられる。測長SEMでは走査像で寸法を計測する場所を指定し,その部分の信号波形を用いて倍率より演算して寸法を測定する。
【0003】
信号波形を用いた自動寸法計測方法は種々の方法が提案されているが,代表的な方法である「しきい値法」を図3に示す。図に示すような台形形状の断面を持つパターンでは,パターン側壁に相当する部分の信号量が大きな信号波形となる。左右の信号量が大きい部分を,それぞれ左ホワイトバンド(左WB),右ホワイトバンド(右WB)と記すことにする。しきい値法は,左右WBそれぞれで,Max値,Min値を求め,これらからしきい値を算出し,しきい値を信号波形が横切るポジションをエッジ位置として検出し,左右エッジ間の距離を寸法(CD値)とするものである。
【0004】
図4に一般的な自動寸法計測のシーケンスを示す。ウェーハを搬入し(ステップ101),寸法計測箇所付近にステージを移動し(ステップ102),10000倍程度の低倍で画像を撮像する(ステップ103)。登録画像をテンプレートとするパターン認識により,寸法計測箇所の正確な位置を求める(ステップ104)。求めた位置を中心とするより狭い範囲に一次電子ビームの走査範囲を限定することにより(ステップ105),150000倍程度の高倍の画像を撮像し(ステップ106),寸法を計測する(ステップ108)。ステージ移動を行わず,一次電子ビームの走査位置を変えることで画像撮像位置を変更する上記の動作をイメージシフトと呼ぶことにする。最初から高倍の画像を撮像せずに,低倍の画像を撮像した後にイメージシフトにより高倍の画像を撮像するのは,一般に,ステージの停止精度の不足から,高倍画像内に計測対象パターンを含めるのが困難難だからである。
半導体パターンの微細化により,測長SEMの計測精度に対する要求は年々厳しさを増しており,従来からの装置単体の計測再現性に対する要求に加え,その処理能力と半導体生産量との関係から複数台の装置が併用されることが多いことから,装置間の計測寸法差(機差)低減も重要な課題となっている。
【0005】
SEMに関連して、一次電子ビームの収差を補正することに関しては特許文献1に、また、電子ビームのランディング角を計算により求める方法は,例えば,View2004ビジョン技術の実利用ワークショップ講演論文集p.48〜p.53の「測長SEMにおけるビームチルト角キャリブレーション技術の開発」に開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−127930号公報
【非特許文献1】「測長SEMにおけるビームチルト角キャリブレーション技術の開発」:View2004ビジョン技術:実利用ワークショップ講演論文集pp48〜53
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記,背景技術ではイメージシフトを行って高倍画像を取得しているが,このイメージシフト量はステージ停止位置によって変化する。一般に,イメージシフトを行うと,電子ビームが僅かながらチルトする。発明者らが検討した光学系においては,図5のように光学系の視野中心の座標を(0,0)とすると,座標(x,y)におけるx方向のビームチルト角φx,y方向のビームチルト角φyは,数2のように書き表される。図5に示した数1のように,チルト角は視野中心からの距離rに比例して増加する。Pは比例定数,Qは回転を表す定数である。dx,dyは光学系の視野中心のオフセットである。ステージ停止位置は一定精度内でばらつくため,それに伴ってイメージシフト量が変動し,それが試料に対するビームのランディング角の変動を招く。
【0008】
図6は電子ビームのランディング角度とCD値との関係を示す模式図である。ここで,電子ビームのランディング角をφ,試料の側壁傾斜角をθとする。ここで,θは垂直を0°とした場合の角度である。図6(a)はφ=0の場合,(b)はφ<θの場合,(c)はφ>θの場合である。(a)におけるCD値をCDa,(b)におけるCD値をCDb,(c)におけるCD値をCDcとすると,CDaとCDbは等しいが,CDcはこれらよりも大きい。これは,(b)では左WB幅の減少分=右WB幅の増加分であるのに対し,(c)では,左WB幅の減少分<右WB幅の増加分だからである。
【0009】
同じ対象物を複数回計測した場合,イメージシフト量が毎回変化すれば,CD値も毎回変化するため,計測再現性が低下する。また,図5では,座標(0,0)におけるビームチルト角が0°であると仮定したが,実際には0°とは限らず,その値も装置によって異なる。A装置,B装置の座標(0,0)におけるビームチルト角をφa,φbとし,同じ対象物をA装置,B装置で計測して,計測結果を比較することを考える。計測再現性が0ではないので,1回の計測結果をもって機差とするのはナンセンスであるが,多数回計測した平均値の差を機差とみなすとしても,φa≠φbであれば機差が生じるのは明らかである。
【0010】
本発明の第1の目的は,電子ビームのランディング角ばらつき起因のCD値ばらつきを減少させることで,計測再現性が高い電子顕微鏡装置を提供することにある。また,本発明の第2の目的は,装置間の電子ビームランディング角の差違を減少させるような較正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記,第1の目的を達成するため,本発明は,(a)に示す較正を実施した後に,(b)に示す計測を実施する。
(a)較正:結晶異方性エッチングの技術により作製した各面のなす角が既知の多面体構造物が視野内に複数含まれるように配置した較正用サンプルを用い,各多面体構造物の画像上での幾何学的な変形をもとに,視野内の各位置のビームランディング角を算出し,視野内の各位置のビームランディング角が等しくするビーム制御パラメータを予め登録する。
(b)計測:計測対象パターンの視野内での位置に応じて,上記登録したビーム制御パラメータを適用することにより,等しいビームランディング角にて,計測用の画像を取得する。
【0012】
また,第2の目的を達成するため,本発明は,上記(a)の較正,及び(b)の計測を各装置にて行うようにする。
【発明の効果】
【0013】
上記(a)の較正を実施した後に,(b)の計測を実施することにより,イメージシフト量によらずビームランディング角が等しくなるため,ビームランディング角のばらつきによって生じていたCD値のばらつきをなくすことが可能となる。
また,上記(a)の較正と(b)の計測を各装置にて実施することにより,実質的に各装置のビームランディング角が等しくなるため,置間の電子ビームランディング角の差違によって生じていた機差をなくすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は,各種の荷電粒子線装置(SEM,FIB等)に適用可能であるが,以下の実施例では代表としてSEMを対象に説明する。
【0015】
図1に本発明に係る,イメージシフト量によらずビームランディング角を垂直にするための較正,及び,計測のフローチャートを示す(ぞれぞれ,図1(a),(b))。
【0016】
はじめに,図1(a)を参照して,較正の方法200について説明する。
【0017】
最初に,較正用のウェーハをSEMの内部に搬入してステージ上に載置する(ステップ201)。較正用のウェーハとしては,結晶異方性エッチングの技術により作製した多面体構造物が多数配列されたサンプルを用いる。多面体としては,例えば,凹または凸のピラミッド形状(四角錐)が望ましい。以下の説明では各構造物をピラミッドと呼ぶことにする。図7(a)に凹型ピラミッド,(b)は凸型ピラミッドである。結晶異方性エッチング技術とは,単結晶に特定のエッチング溶液(エッチャント)を作用させた場合に結晶面ごとにエッチング速度が異なることを利用して,結晶面を基準とした,三角山や段差構造を製作する技術である。結晶面に相当する側面(図7においては4個の側面)の互いになす角が決まっている。通常の半導体プロセスによるパターニングに比べて形状精度が高いのが特徴である。
【0018】
次に校正用のウェハを載置したステージを移動させ(ステップ202),図8(a)のように画面上に複数のピラミッドが含まれるような低倍率にて画像を取得する(ステップ203)。次に,取得した画像上の各ピラミッドの位置をパターン認識にて求め記憶する(ステップ204)。すなわち,図8(b)のように,各ピラミッドの画像上での位置を求めた後,画像の撮像倍率に応じてnm単位の位置に変換して記憶する。
【0019】
次に,先に記憶したピラミッドの位置に応じて,電子ビームの偏向範囲を対象ピラミッド周辺に限定し(イメージシフト:ステップ205),高倍率の画像を撮像する(ステップ206)。電子ビームのランディング角が垂直であれば,ピラミッドの像は図9(a)のようになり,電子ビームのランディング角が傾いていれば図9(b)のようになる。画像処理により稜線,及び,ピラミッド底面のエッジ線を検出し,ピラミッド稜線の交点のx方向のずれΔx,y方向のずれΔyを求める。Δxはx方向のビームランディング角の変化φxに,Δyはy方向のビームランディング角の変化φyを反映する。先に述べたようにピラミッド側面がなす角は既知なので,Δx,Δyからφx,φyを算出することが可能である(ステップ207)。
【0020】
較正用のウェーハとして,結晶異方性エッチングの技術で作製したウェーハを用いるのは,側面のなす角が定まっているため,立体形状の別手段(AFMなど)での計測が不要,よって,手間がかからないこと,及び,別の誤差要因が入り込まないという点で有利だからである。そして,ピラミッド形状を用いるのは,一つのピラミッドを観察することによって,x方向の電子ビームランディング角φx,と,y方向の電子ビームランディング角φyの両方が算出できるという点で有利だからである。
【0021】
電子ビームのランディング角の具体的な計算は,例えば,非特許文献1のView2004ビジョン技術の実利用ワークショップ講演論文集p.48〜p.53の「測長SEMにおけるビームチルト角キャリブレーション技術の開発」に報告されている手法を適用することができる。
【0022】
以上のビームランディング角の計算を,ステップ203で撮像した低倍画像上に含まれていた全ピラミッドについて繰り返す(ステップ208)。以上により,視野上の各位置(x,y)対ビームランディング角の関係が得られる。
【0023】
次に,以上のようにして得られた,ピラミッドの個数分の位置(x,y)対ビームランディング角の関係から,最小2乗法などにより,図5におけるパラメータP,Q,dx,dyを求める(ステップ209)。
【0024】
次に,ステップ209にて得られた,位置(x,y)対ビームランディング角の関係を用い,ビームランディング角を垂直に維持して位置を制御するような,対物レンズに対するビームの入射条件,及び,対物レンズへの入射条件変化によって生じる収差を補正するための,集束レンズの設定条件を登録する(ステップ210)。該収差補正には,特許文献1の特開2004−127930号公報に開示されている技術が適用可能である。
【0025】
この特開2004−127930号公報で開示されている電子顕微鏡の概略構成を図10に示す。陰極1と第一陽極2の間には,コンピュータ40で制御される高圧制御電源20により電圧が印加され,所定のエミッション電流で一次電子線4が陰極1から引き出される。陰極1と第二陽極3の間には,コンピュータ40で制御される高圧制御電源20により加速電圧が印加され,陰極1から放出された一次電子線4が加速されて後段のレンズ系に進行する。一次電子線4は,レンズ制御電源21で制御された集束レンズ5で集束され,絞り板8で一次電子線の不要な領域が除去された後に,レンズ制御電源22で制御された集束レンズ6,および対物レンズ制御電源23で制御された対物レンズ7により,試料10に微小スポットとして集束される。一次電子線4は,走査コイル制御電源24によって制御される走査コイル9で試料10上を二次元的に走査される。
【0026】
一次電子線の照射で試料10から発生した二次電子等の二次信号12は,対物レンズ7の上部に進行した後,二次信号分離用の直交電磁界発生装置11により,一次電子と分離されて二次信号検出器13に検出される。二次信号検出器13で検出された信号は,信号増幅器14で増幅された後,画像メモリ25に転送されて像表示装置26に試料像として表示される。走査コイル9と同じ位置に2段の偏向コイル51が配置されており,傾斜制御電源31によって対物レンズの物点が偏向支点となるように,対物レンズに入射する一次電子線4の位置を二次元的に制御できる。こうして,対物レンズの光軸に対してビームを傾斜させることができる。
【0027】
集束レンズ6の付近に非点収差補正コイル53が配置されており,ビーム傾斜条件に連動して非点補正電源33で制御される。集束レンズ6と絞り板8の間には2段の偏向コイル52が配置されており,集束レンズ6の物点が偏向の支点となるように,収差制御電源32によって集束レンズ6に入射する一次電子線4の位置を二次元的に制御できる。偏向コイル51には,対物レンズの物点が偏向支点となる一次電子線位置制御信号に加えて,一次電子線の試料上での照射位置を二次元的に制御できる制御信号も流すことができ,ビーム傾斜条件に連動して照射位置のずれを補正できる。試料ステージ15は,試料を少なくとも一次電子線と垂直な面内の2方向(X方向,Y方向)に試料10を移動することができる。入力装置42からは,画像の取り込み条件(走査速度,加速電圧など)やビーム傾斜条件(傾斜方向や傾斜角度)の指定,および画像の出力や記憶装置41への保存などを指定することができる。偏向コイル52(以下,この偏向コイル52を収差制御コイルという)により,集束レンズ6の物点が偏向支点となるように一次ビーム4を偏向すると,ビーム傾斜時と同じ性質の収差を集束レンズ6で発生させることができる。
【0028】
対物レンズ7が作る収差をキャンセルするような,集束レンズ6の条件が存在する。対物レンズ7によるビーム傾斜角度は,偏向コイル51(以下,この偏向コイル51をビーム傾斜角制御コイルという)の電流に比例し,また,集束レンズ6によるビーム傾斜角度は,収差制御コイル52の電流に比例するので,上記の収差キャンセルする条件を満たすよう,ビーム傾斜角制御電源31と,収差制御電源32をコンピュータ40により制御すれば良い。
【0029】
以上の説明では,図1(a)のステップ202〜209を1回実施したが,精度を向上させるため,1回目終了後にステップ202に戻り,撮像箇所をウェーハ上の別の位置に移動して,同様の処理をN回繰り返し,イメージシフト量と電子ビームランディング角の関係を表す式の係数は,各回で算出した係数を平均して求めるようにしても良い。
【0030】
続いて,図1(b)を参照して計測方法300について説明する。
【0031】
計測対象パターンを含む広い領域を低倍率で撮像(ステップ301)し,パターン認識により計測対象パターンの位置を求める(ステップ302)までは,背景技術にて説明した図3と同様である。続くステップ303では,計測対象パターンの位置(x,y)に応じて,ステップ210で登録した,ビームランディング角を垂直に維持して位置を制御するような,対物レンズに対するビームの入射条件,及び,対物レンズへの入射条件を読み出して,それらの条件を設定する(ステップ304)。その上で,電子ビームの偏向範囲を計測対象パターン周辺に限定し(イメージシフト:ステップ305),高倍率の画像を撮像し(ステップ306),寸法計測を行う(ステップ307)。
【0032】
以上が,本発明の基本的な実施例である。本実施例によれば,イメージシフト量によらずビームランディング角が垂直となるため,ビームランディング角のばらつきによって生じていたCD値のばらつきをなくすことが可能となる。
【0033】
次に、図13を用いて、装置間での電子ビームランディング角の差違を減少させる構成を説明する。図13に示すように、同一の較正用ウェーハを用いて,図1(a)の較正を各装置にて実施すれば,実質的に各装置のビームランディング角が等しくなり,装置間の電子ビームランディング角の差違によって生じていた機差をなくすことができる。ここで,同一の較正用ウェーハを用いるのは,結晶異方性エッチングの技術により作製したピラミッド形状は,4個の側面のなす角は保証されているが,側面と底面がなす角は保証されていないからである。図14(a)のように,ピラミッドの中心軸とウェーハ面が垂直になるのが理想的であるが,単結晶インゴットからのウェーハスライス角度によっては,図14(b)のようになることもあり得る。ビームランディング角の変化と,図13(b)の状況とを撮像画像から区別することは難しいため,装置間の電子ビームランディング角の差違をなくすためには同一の較正用ウェーハを使用することが望ましい。
〔変形例1〕
図11に第1の変形例に係る,較正のフローチャート200’と計測のフローチャート300’を示す(ぞれぞれ,図11(a),(b))。図11(a)および(b)のフローチャートにおいて、図1のフローチャートと同じ番号の箇所は、図1で説明したのと同じ処理を行う。上記に説明した実施例では、較正のフロー200におけるステップ209において,図5におけるパラメータP,Q,dx,dyを求めたが,本変形例1では,単純に視野上の各ピラミッドの位置(x,y)にて計算したビームランディング角を記述したテーブルを作成する(ステップ209’)。そして,各位置ごとに,必要なビーム制御パラメータ(対物レンズに対するビームの入射条件,及び,収差を補正するための,集束レンズの設定条件)を記述したテーブルを作成し,これを登録する(ステップ210’)。
【0034】
各位置におけるビームランディング角の計測誤差を低減するため,着目するピラミッド(i,j)におけるビームランディング角φx(i,j),φy(i,j)を,近接するピラミッドにおけるビームランディング角との平均(数2),あるいは,近接するピラミッドにおけるビームランディング角のメジアン(数3)によって求めるようにしても良い。
【0035】
【数2】

【0036】
【数3】

計測のフロー300’におけるステップ303’においては,ステップ210’で登録した,対物レンズに対するビームの入射条件,及び,収差を補正するための,集束レンズの設定条件を記述したテーブルを読み出す。テーブル上の該条件は,較正に用いたピラミッドの位置刻みにしかデータがないため,補間により,計測対象パターンの位置(x,y)に応じた電子ビーム制御パラメータ制御を求める。以降の処理(ステップ304〜307)は実施例1と共通である。
【0037】
本実施例も,実施例1と同様,イメージシフト量によらずビームランディング角が垂直となるため,ビームランディング角のばらつきによって生じていたCD値のばらつきをなくすことが可能となる。実施例1では,視野上の位置(x,y)とビームランディング角が関係式で記述できる場合を対象としたが,本実施例にはその制約はなく,より汎用的といえる。
〔変形例2〕
図12に変形例2に係る,較正のフローチャート400と計測のフローチャート500を示す(ぞれぞれ,図12(a),(b))。上記した実施例及び変形例1は,イメージシフト量によらずビームランディング角を垂直にすることを意図した実施例であるが,イメージシフト量によらず,所定のビームランディング角による傾斜像取得を意図したのが本実施例である。図12(a)および(b)のフローチャートにおいて、図1のフローチャートと同じ番号の箇所は、図1で説明したのと同じ処理を行う。
【0038】
較正のフロー400では,低倍率画像を取得するステップ203の前に,ビームチルト角を設定するステップ401が加わる。計測のフロー500でも,低倍率画像を取得するステップ301の前に,ビームチルト角を設定するステップ501が加わる。本実施例によれば,イメージシフト量によらずビームランディング角が所望のチルト角となるため,ビームランディング角のばらつきによって生じていたCD値,あるいは傾斜像から得られる他の特徴量のばらつきをなくすことが可能となる。
〔変形例3〕
ビームランディング角較正用試料上の多面体構造物のバリエーションについて述べる。
【0039】
較正用試料における多面体構造物として,上記実施例では,結晶異方性エッチングの技術により作製したピラミッド形状を用いた。一つの構造物を観察することで,x方向の電子ビームランディング角φxとy方向の電子ビームランディング角φyの両方が算出できる形状は,ピラミッド形状には限らない。例えば,図15(a)のように,異方性エッチングを途中で停止することにより作製される,ピラミッドの頂上が平らな形状でもよい。例えば,図15(b)の線分1601〜1604をそれぞれ延長し,その交点から図7(b)の頂点Q0に相当する仮想的な頂点Q’0を求めることによって,ピラミッド形状と同様にビームランディング角の変化を求めることができる。
【0040】
図15(a)にはピラミッドの頂上が平らな形状の例を示したが、頂上が丸まっている場合であっても同様に処理することができる。
〔変形例4〕
較正用試料上のピラミッドの大きさと配置について述べる。
【0041】
ピラミッドの大きさは,図1,図11のステップ206の高倍画像撮像時に画像内におさまる大きさである必要がある。一方,ビームランディング角をより高精度に求めるためには,ビームランディング角が変化したときの幾何学変形,すなわち,図9(b)のΔx,Δyが大きい方が有利である。異方性エッチングで作製したピラミッドでは,Δx,Δyはピラミッドのサイズに比例するので,精度を得るにはピラミッドは大きい方が有利である。
【0042】
ピラミッドの配置は,視野内のビームランディング角計測点をより多くするには,図1,図11のステップ203の低倍画像撮像時に,なるべく多くのピラミッドが含まれることが望ましい。このためには,ピラミッドの間隔は狭い方がよい。しかし,同一サイズのピラミッドが同一ピッチで並んでいると,ピラミッドの特定が難しいという問題がある。異方性エッチングにより作製したピラミッドは均一性が高いものの,特に,図12に示す第3の実施例においては,各装置で同一の較正用ウェーハを用いるのみならず,同一ウェーハ上の同一ピラミッド群を用いる方が,装置間の電子ビームランディング角の差異をなくすには有利である。
【0043】
低倍画像撮像時の撮像範囲が10ミクロン程度,高倍率撮像時の撮像範囲が1ミクロン程度とすると,図16のように,ピラミッドのサイズは1ミクロン程度,ピッチは1ミクロン強とし,周辺と異なるピッチで配列した部分を設けるなどして,ピラミッドが特定できる配置が望ましい。
【0044】
あるいは,周辺と異なるピッチで配列した部分を設ける代わりに,周辺とサイズあるいは形状の異なるピラミッドを配置するようにしてもよい。
〔変形例5〕
較正用試料の形態及び利用形態について述べる。
【0045】
較正用の試料としては,ウェーハの形態の他,図17(a)のごとく,試料ステージ15上にあるホルダ703に,ビームランディング角較正用試料の小片705を取り付ける形態でも良い。試料ステージ上に,これ以外に,非点収差自動調整用の試料706,倍率較正用の試料707も合わせて取り付け,図17(b)に示す光学系調整の一連のシーケンスを定期的に実行すれば,SEMの状態を常に最良の状態に保つのに好都合である。
〔変形例6〕
ビームランディング角較正のためのユーザインターフェースについて述べる。
【0046】
図1(a)に示すフローを自動実行するためには,ウェーハ上のショットの大きさや並び,較正用パターンの位置,加速電圧,ビーム電流,倍率等の撮像条件を指定したファイルを予め作成しておく必要がある。
【0047】
図18に,較正に用いるピラミッドを指定するGUI画面の例を示す。172にて加速電圧を指定,173にてビーム電流を指定,174にて倍率を指定,176にてフレーム加算数を指定して低倍画像171を撮像する。175は倍率調整用のボタンである。低倍画像上で,177の矩形,あるいは178のクロスマークによって,使用するピラミッドを指定する。図では左上の3個ピラミッドがクロスマークにより指定されている。ここで指定されたピラミッドの高倍画像を順次撮像するが,180は撮像順序を指定したものであり,この番号がピラミッドの番号を兼ねる。画像撮像条件と,高倍撮像を行うピラミッドの指定が終了したら,登録ボタン181にて情報を保存する。図18に示した例では、全ての撮像条件を同一画面上で設定する構成を示したが、これらの設定項目は必ずしも同一の画面上とは限らず、いくつかの画面に分けて実施しても良い。
【0048】
182はビームランディング角の計測のみ(図1のステップ201〜208)を行うか,ビーム制御パラメータの更新まで(図1のステップ201〜210)行うかを選択するボタンである。
【0049】
図19に,ビームランディング角較正の結果を確認するためのGUI画面の例を示す。190はビームランディング角の全体状況をユーザが把握するための図示画面であり,破線191の交点が各ピラミッドの位置に相当し,矢印192はビームランディング角をベクトル表示したものである(図では一部しか記述いていない)。矢印の長さはビームランディング角の大小を,矢印の向きはビームランディング角の向きを示す。例えば,y方向のビームランディング角が0°であれば,矢印は横向きとなる。ボタン193,194を切り替えることで,較正前後の結果を比較することができる。195は較正前後のビームランディング角の表示画面である。ピラミッド番号は,図18の180で指定した番号である。図18ではピラミッドが64個あるので,全ピラミッドを計測対象として指定したならば,ピラミッド番号は1〜64となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例1にかかる較正および計測のフローチャートである。
【図2】従来の測長SEMの原理を示す図である。
【図3】信号波形を用いた自動寸法計測であるしきい値法を説明する図である。
【図4】一般的な自動寸法計測のシーケンスを示す図である。
【図5】視野上の位置とビームチルト角の関係を示す図である。
【図6】電子ビームのランディング角度とCD値との関係を示す模式図である。
【図7】較正用試料上の多面体構造物の一例として,凹型,凸型のピラミッドを示す図である。
【図8】較正の1ステップの説明図である。
【図9】ピラミッドの幾何学変形を説明する図である。
【図10】電子顕微鏡の概略構成図である。
【図11】本発明の実施例2にかかる較正および計測のフローチャートである。
【図12】本発明の実施例3にかかる較正および計測のフローチャートである。
【図13】本発明の実施例4の概念図である。
【図14】ピラミッドの中心軸のずれを説明する図である。
【図15】較正用試料上の多面体構造物の別の例を示す図である。
【図16】較正用試料上の望ましいピラミッドの配置例を示す図である。
【図17】較正用試料の別の形態を示す図である。
【図18】ビームランディング角較正を自動実行するための条件設定用GUIの例を示す図である。
【図19】ビームランディング較正の結果を確認するためのGUI画面の例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1…陰極,2…第一陽極,3…第二陽極,4…一次電子線,5…第一集束レンズ,6…第二集束レンズ,7…対物レンズ,8…絞り板,9…走査コイル,10…試料,11…二次信号分離用直交電磁界(ExB)発生器,12…二次信号,13…二次信号用検出器,14…信号増幅器,15…試料ステージ,20…高圧制御電源,21…第一集束レンズ制御電源,22…第二集束レンズ制御電源,23…対物レンズ制御電源,24…走査コイル制御電源,25…画像メモリ,26…像表示装置,31…ビーム傾斜角制御電源,32…収差制御電源,33…非点補正電源,40…コンピュータ,41…記憶装置,42…入力装置,51…ビーム傾斜角制御コイル,52…収差制御コイル,53…非点収差補正コイル,703…較正用試料ホルダ,705…較正用試料,706…非点収差自動調整用試料,707…倍率較正用試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線装置を用いて試料を撮像する方法であって、
形状が既知の多面体のパターンが形成された試験試料に荷電粒子線を照射し走査して該試験試料から発生する2次荷電粒子を検出することにより該試験試料を撮像し、
該撮像して得た前記試験試料のパターンの画像から前記荷電粒子線の前期試験試料表面へのビームランディング角を算出し、
該算出したビームランディング角の情報に基づいて該ビームランディング角が所望の角度になるような前記荷電粒子線の制御量を求め、
該求めた制御量に基づいて前記荷電粒子線を制御しながら表面にパターンが形成された試料に照射し走査して該試料を撮像する
ことを特徴とする荷電粒子線装置を用いた撮像方法。
【請求項2】
荷電粒子線装置を用いて試料を撮像する方法であって、
形状が既知の多面体のパターンが形成された試験試料に荷電粒子線を照射し走査して該試験試料から発生する2次荷電粒子を検出することにより該試験試料を撮像し、
該撮像して得た前記形状が既知の多面体のパターンが形成された試験試料の画像から前記荷電粒子線の照射位置と複数の方向のビームランディング角との関係を求め、
該求めた荷電粒子線の照射位置と複数の方向のビームランディング角との関係に基づいて前記荷電粒子線を制御しながら表面にパターンが形成された試料に照射し走査して該試料を撮像する
ことを特徴とする荷電粒子線装置を用いた撮像方法。
【請求項3】
前記試験試料の形状が既知の多面体のパターンが、四角錐または四角錐台または上面が曲面でほぼ四角錐の形状を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の荷電粒子線装置を用いた撮像方法。
【請求項4】
前記試験試料には形状が既知の多面体のパターンが複数形成されており、前記試験試料の複数の多面体のパターンの画像から前記荷電粒子線のビームランディング角を制御するための制御量を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の荷電粒子線装置を用いた撮像方法。
【請求項5】
前記荷電粒子線を制御しながら表面にパターンが形成された試料に照射し走査して該試料を撮像して得た画像を用いて前記表面にパターンが形成された試料の該パターンの寸法を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の荷電粒子線装置を用いた撮像方法。
【請求項6】
平面内で移動可能なテーブル手段と、
該テーブル手段に載置した試料に集束させた荷電粒子線を照射して走査する荷電粒子線照射手段と、
該荷電粒子線照射手段により荷電粒子さんが照射された前記試料から発生した二次荷電粒子を検出する検出手段と、
該検出手段で検出した前記二次荷電粒子の検出信号を処理して前記試料の画像を取得する信号処理手段と、
該信号処理手段で処理して得た前記試料の画像を表示する表示手段と
前記テーブル手段と前記荷電粒子線照射手段と前記検出手段と前記信号処理手段と前記表示手段とを制御する制御手段と
を備えた荷電粒子線装置であって、
前記信号処理手段は、前記テーブル手段に載置した形状が既知の多面体のパターンが形成された試験試料に前記荷電粒子線照射手段で荷電粒子線を照射して走査することにより前記検出手段で検出された二次荷電粒子の検出信号を処理して前記荷電粒子線照射手段で前記試料に照射する荷電粒子線のビームランディング角の情報を得、前記制御手段は、前記信号処理手段で得た荷電粒子線のビームランディング角の情報に基づいて前記荷電粒子線照射手段を制御して前記荷電粒子線のビームランディング角を所望の角度の設定することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
試料に集束させた荷電粒子線を照射して走査する荷電粒子線照射手段と、
該荷電粒子線照射手段により荷電粒子さんが照射された前記試料から発生した二次荷電粒子を検出して前記試料の画像を取得する画像取得手段と、
該画像取得手段で取得した画像を処理する画像処理手段と、
前記画像取得手段で取得した前記試料の画像を表示する表示手段と
前記荷電粒子線照射手段と前記画像取得手段と前記画像処理手段と前記表示手段とを制御する制御手段と
を備えた荷電粒子線装置であって、
前記画像処理手段は、形状が既知の多面体のパターンが形成された試験試料に前記荷電粒子線照射手段で荷電粒子線を照射し走査して前記画像取得手段で取得された画像を処理することにより前記荷電粒子線の照射位置と複数の方向のビームランディング角の関係の情報を得、前記制御手段は、前記画像処理手段で得た荷電粒子線の照射位置と複数の方向のビームランディング角の関係の情報に基づいて前記荷電粒子線照射手段を制御することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
前記試験試料として四角錐または四角錐台または上面が曲面でほぼ四角錐の形状が既知の多面体のパターンが複数形成された試料を用いることを特徴とする請求項6または7に記載の荷電粒子線装置。
【請求項9】
前記信号処理手段で処理して得た表面にパターンが形成された試料の画像を用いて該パターンの寸法を求めるパターン寸法算出手段を更に備えたことを特徴とする請求項6記載の荷電粒子線装置。
【請求項10】
前記画像処理手段は、表面にパターンが形成された試料を用いて前記画像取得手段で取得した画像を処理して該試料のパターンの寸法を求めることを特徴とする請求項7記載の荷電粒子線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−187538(P2007−187538A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5482(P2006−5482)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】