説明

荷電粒子線露光方法、荷電粒子線露光装置及びデバイス製造方法

【課題】 所望パターンを露光できるラスタースキャン荷電粒子線描画方法を提供する。【解決手段】 荷電粒子線を走査して基板上の複数のピクセルからなるパターンを露光する荷電粒子線描画方法において、前記パターンのエッジに位置するピクセルの露光時間が他のピクセルの露光時間よりも小さくなるように指令値を生成する生成ステップと、前記指令値を直前のピクセルの指令値に基づいて補正する補正ステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体集積回路等の露光に用いられる電子線露光装置、イオンビーム露光装置等の荷電粒子線露光(描画)方法に関するものである。特に、電子線で露光対象であるウエハ上を走査(ラスタースキャン)して描画する電子ビーム描画方法に適している。
【背景技術】
【0002】
従来のラスタースキャン型電子ビーム露光装置を図10に示す。電子源Sが放射する電子ビームは、電子レンズL1によって、電子源Sの像を形成する。その電子源Sの像は、電子レンズL2,L3で構成される縮小電子光学系を介して、ウエハWに縮小投影される。ブランカーBは、電子レンズL1によって形成される電子源Sの像の位置にある静電型偏向器であって、電子ビームをウエハに照射するか、しないかを制御する。すなわち、電子ビームをウエハに照射させない場合、ブランカーBが、電子ビームを偏向させて、縮小電子光学系の瞳上に位置するブランキングアパーチャBAで、電子ビームを遮断するのである。また、電子ビームは、静電型偏向器DEFによってウエハ上を走査される。 次にラスタースキャンでウエハを描画する方法を図11で説明する。例えばパターンとして48nm孤立ラインを描画したい場合、描画領域はピクセル(ピクセルピッチ=16nm)で分割する。そして、偏向器DEFによって電子ビームをX方向に走査しながら、パターン部分のピクセルで、ブランカーBによって電子ビームを照射するように制御している。そして、X方向の走査が終了すると、電子ビームはY方向にステップし、またX方向に走査しながら電子ビームの照射を制御してパターンを描画する。 また、ラインパターンの線幅制御に関し、図12を用いて説明する。図12(a)は、48nm孤立ラインを描画する場合を示している。48nmの線幅を形成するために、3ピクセルを用い、各ピクセルのドーズ(露光時間)は等しい。図12(b)は、45nm孤立ラインを描画する場合を示している。45nmの線幅を形成するために、48nm孤立ラインと同様に3ピクセルを用いているが、ラインのエッジに位置するピクセルのドーズ(露光時間)を他のピクセルと比較して16分の13に減少させている。 すなわち、ラインのエッジに位置するピクセルのドーズを可変にすることにより、そのピクセルがラインパターンに付与する線幅(線幅付与量)を制御して、パターンの線幅を所望のものに形成している。
【特許文献1】特表平7−509589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図13はブランカーBに印加される電圧信号の変化を示す図である。ブランカーBは、電圧が印加されていると、ブランキングアパーチャBAで電子ビームを遮断され、電圧の印加を切ると、電子ビームがブランキングアパーチャBAを通過しピクセルを露光する。そして、電圧の印加を切っている時間を制御してそのピクセルでのドーズ(露光時間)を調整している。図13では、露光時間を2ns、8ns*8、2nsの3段階としたときの指令値に対する実際電圧波形が現れている。ここで問題なのは、最初の2nsの波形と最後の2nsの波形とにおいて、電圧の降下値が異なることによって、対応するピクセルでのラインパターンに付与する線幅(線幅付与量)が異なってしまう。よって、所望のパターンがウエハ上に形成されることが難しいという問題点があった。
本発明の主な目的は、所望の線幅のパターンをウエハ等の基板上に容易に形成することができる荷電粒子線描画方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は前記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のある形態は、荷
電粒子線を走査して基板上の複数のピクセルからなるパターンを露光する荷電粒子線露光方法において、前記パターンのエッジに位置するピクセルの露光時間が他のピクセルの露光時間よりも小さくなるように指令値を生成する生成ステップと、前記指令値を直前のピクセルの指令値に基づいて補正する補正ステップとを有することを特徴とする。前記補正ステップは、例えば補正後の前記指令値によって所望の線幅付与量が得られるように、実行されることを特徴とする。
【0005】
本発明のデバイス製造方法のある形態は、上記いずれかの特徴を有する荷電粒子線描画方法により露光を行う荷電粒子線露光装置を用いてデバイスを製造する。
【0006】
また、本発明は、基板上にパターンを露光する荷電粒子線露光装置において、荷電粒子線を前記基板上に入射させる照射手段と、前記荷電粒子線が前記基板上の複数のピクセルで入射するように、前記荷電粒子線を走査する走査手段と、前記荷電粒子線の露光時間を制御する露光時間制御手段と、前記パターンのエッジに位置するピクセルの露光時間が前記パターンのエッジに位置しないピクセルの露光時間よりも小さくなるように設定するとともに、設定された前記パターンのエッジに位置するピクセルの露光時間をその直前のピクセルの露光時間に基づいて補正する制御手段と、を備えることを特徴としてもよい。
また、本発明は、かかる特徴を有する荷電粒子線露光装置を用いて、基板を露光するステップと、露光された前記基板を現像するステップと、を備えるデバイス製造方法であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように本発明によれば、ラスタースキャン荷電粒子線露光装置において、所望の線幅のパターンを露光できる荷電粒子線描画方法を提供することができる。また、この描画方法により露光を行う荷電粒子線露光装置を用いてデバイスを製造すれば、従来以上に歩留まりの高いデバイスを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る描画方法により露光を行う荷電粒子線露光装置の一例として本実施形態では電子線露光装置の例を示す。なお、本発明は電子線に限らずイオンビームを用いた露光装置にも同様に適用できる。
【実施例1】
【0009】
<電子ビーム露光装置の構成要素の説明>
図1は本発明の実施例1に係る電子線露光装置の要部概略図である。図1において、電子銃(図示せず)で発生した電子線はクロスオーバ像を形成する(以下、このクロスオーバ像を電子源1と記す)。この電子源1から放射される電子ビームは、ビーム整形光学系2を介して、電子源1の像3(SI)を形成する。像SIからの電子ビームは、コリメータレンズ4によって略平行の電子ビームとなる。略平行な電子ビームは複数の開口を有するアパチャ−アレイ5を照明する。
【0010】
アパーチャアレイ5は、複数の開孔を有し、電子ビームを複数の電子ビームに分割する。アパーチャアレイ5で分割された複数の電子ビームは、静電レンズが複数形成された静電レンズアレイ6により、像SIの中間像を形成する。中間像面には、静電型偏向器であるブランカーが複数形成されたブランカーアレイ7が配置されている。
【0011】
中間像面の下流には、2段の対称磁気タブレット・レンズ81,82で構成された縮小電子光学系8があり、複数の中間像がウエハ9上に投影される。このとき、ブランカーアレイ7で偏向された電子ビームは、ブランキングアパーチャBAによって遮断されるため、ウエハ9には照射されない。一方、ブランカーアレイ7で偏向されない電子ビームは、
ブランキングアパーチャBAによって遮断されないため、ウエハ9に照射される。
【0012】
下段のダブレット・レンズ82内には、複数の電子ビームを同時にX,Y方向の所望の位置に変位させるための偏向器10、及び複数の電子ビームのフォーカスを同時に調整するフォーカスコイル12が配置されている。13はウエハ9を搭載し、光軸と直交するXY方向に移動可能なXYステージである。このステージ13上には、ウエハ9を固着するための静電チャック15と電子ビームの形状を測定するための電子ビーム入射側にナイフエッジを有する半導体検出器14が配置されている。
【0013】
<システム構成及び描画方法の説明>
本実施例のシステム構成図を図2に示す。ブランカーアレイ制御回路21は、ブランカーアレイ7を構成する複数のブランカーを個別に制御する回路である。偏向器制御回路22は、偏向器10を制御する回路であり、電子ビーム形状検出回路23は、半導体検出器14からの信号を処理する回路である。フォーカス制御回路24は、フォーカスコイル12の焦点距離を調整することにより縮小電子光学系8の焦点位置を制御する回路である。ステージ駆動制御回路25は、ステージ13の位置を検出する不図示のレーザ干渉計と共同してステージ13を駆動制御する制御回路である。主制御系26は、上記複数の制御回路を制御し、電子ビーム露光装置全体を管理する。
【0014】
図3は本実施例に係る描画方法を説明するための図である。主制御系26は、露光制御データに基づいて、偏向制御回路22に命じ、偏向器10によって、複数の電子ビームを偏向させるとともに、ブランカーアレイ制御回路21に命じ、ウエハ9に露光すべきピクセルに応じた指令値に基づいてブランカーアレイ7のブランカーを個別にon/offさせる。各電子ビームは、図3に示すようにウエハ9上の対応する要素露光領域(EF)をラスタースキャン露光する。各電子ビームの要素露光領域(EF)は、2次元に隣接するように設定されているので、その結果、同時に露光される複数の要素露光領域(EF)で構成されるサブフィールド(SF)が露光される。
【0015】
主制御系26は、サブフィールド(SF1)を露光後、次のサブフィールド(SF2)を露光する為に、偏向制御回路22に命じ、偏向器10によって、複数の電子ビームを偏向させる。この時、偏向によってサブフィールドが変わることにより、各電子ビームが縮小電子光学系8を介して縮小投影される際の収差も変わる。
【0016】
<ブランカー指令値作成の説明>
図4にドーズ変化に対する線幅付与量を求めるためのブランカー指令値を示す。Rタイプは、最後のピクセルのドーズを変化させるブランカー指令値列であり、Lタイプは、最初のピクセルのドーズを変化させるブランカー指令値列である。各指令値列で描画した結果の例を図5に示す。表記された線幅は設計上の線幅であり、実際の線幅は異なるので、描画された各孤立ラインを測定し、ドーズ変化に対する実際の線幅の関係を図6のように求める。横軸は、ドーズを変化させないピクセルのドーズの16分の1を単位としたドーズである。すなわち、設計上は16分の1単位のドーズの変化によって1nmずつ線幅が付与されてほしいのであるが、ドーズによる実際の線幅付与量は、図6の結果より求めた図7に示す値になる。図7に示すように、ドーズによる実際の線幅付与量は、RタイプとLタイプでは異なる。さらに、図7は、縦軸が設計上のドーズ指令値、横軸が設計上の線幅付与量を与えるドーズ指令値となり、ドーズ指令値の補正関係を示す。
【0017】
そこで、実際の線幅付与量が設計上のものと同一になるように、図7より下記のようなRタイプとLタイプ毎のドーズ指令値の補正式を求める。
Rタイプ D1=R(D0) ・・・(式1)
Lタイプ D1=L(D0) ・・・(式2)
D0:設計上のドーズ指令値
D1:補正されたドーズ指令値
ただし、ドーズ指令値は、ドーズを変化させないピクセルのドーズの16分の1を単位とする。
【0018】
次に、図8を用いて、ブランカーの指令値の作成方法について説明する。(ステップ21)では、描画されるパターンに基づいて、ピクセルごとのドーズ指令値を設定する。(ステップ22)では、露光の際、直前に描画されるピクセルのドーズ指令値が1の場合はステップ23に進む。このドーズ指令値が0の場合はステップ24に進む。
(ステップ23)では、式1を用いてドーズ指令値を補正する。(ステップ24)では、式2を用いてドーズ指令値を補正する。
【0019】
図9に上記補正による結果を示す。従来のラスタースキャン型電子ビーム露光装置では、指令値通りにドーズを与えるようにしていたが、実際のドーズはその指令値通りにならない。本実施例では、従来の指令値を補正し、その補正結果に基づいてドーズを与えるようにすることで、実際のドーズが所望の値になる。
【実施例2】
【0020】
(デバイスの生産方法)
次に、上記説明した実施例1に係る電子線露光装置を利用したデバイスの生産方法の例を実施例2として説明する。
【0021】
図14は微小デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造のフローを示す。ステップ1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行なう。ステップ2(EBデータ変換)では設計した回路パターンに基づいて露光装置の露光制御データを作成する。一方、ステップ3(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記用意した露光制御データが入力された露光装置とウエハを用いて、リソグラフィ技術によってウエハ上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ4によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)ではステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行なう。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
【0022】
図15は上記ウエハプロセスの詳細なフローを示す。ステップ11(酸化)ではウエハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)ではウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)ではウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ14(イオン打込み)ではウエハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)ではウエハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では上記説明した露光装置によって回路パターンをウエハに焼付露光する。ステップ17(現像)では露光したウエハを現像する。ステップ18(エッチング)では現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)ではエッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行なうことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0023】
本実施例の製造方法を用いれば、従来は製造が難しかった高集積度の半導体デバイスを低コストに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に係る電子線露光装置の要部概略を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る描画方法を説明するための図である。
【図3】本発明の実施例に係るラスタースキャンによるピクセル強度分布を説明するための図である。
【図4】本発明の実施例に係るドーズ変化に対する線幅付与量を求めるためのブランカー指令値を説明するための図である。
【図5】本発明の実施例に係る各指令値列で描画した結果を説明するための図である。
【図6】本発明の実施例に係るドーズ変化に対する実際の線幅の関係を示す図である。
【図7】本発明の実施例に係るドーズによる実際の線幅付与量を説明するための図である。
【図8】本発明の実施例に係るブランカーの指令値の作成方法を説明するための図である。
【図9】本発明の実施例に係る補正結果を説明するための図である。
【図10】従来のラスタースキャン型電子ビーム露光装置を説明するための図である。
【図11】従来のラスタースキャンによるピクセル強度分布を説明するための図である。
【図12】従来の線幅制御を説明するための図である。
【図13】従来のブランカーの電圧信号を説明するための図である。
【図14】デバイスの製造フローを示す図である。
【図15】ウエハプロセスのフローを示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1:電子源、2:ビーム整形光学系、3:光源像、4:コリメータレンズ、5:アパーチャアレイ、6:静電レンズアレイ、7:ブランカーアレイ、8:縮小電子光学系、9:ウエハ、10:偏向器、12:フォーカスコイル、13:XYステージ、14:半導体検出器、15:静電チャック、81,82:対称磁気タブレット・レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線を走査して基板上の複数のピクセルからなるパターンを露光する荷電粒子線露光方法において、
前記パターンのエッジに位置するピクセルの露光時間が他のピクセルの露光時間よりも小さくなるように指令値を生成する生成ステップと、
前記指令値を直前のピクセルの指令値に基づいて補正する補正ステップとを有することを特徴とする荷電粒子線露光方法。
【請求項2】
前記補正ステップは、補正後の前記指令値によって所望の線幅付与量が得られるように、実行されることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子線露光方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の荷電粒子線露光方法を用いてデバイスを製造することを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項4】
基板上にパターンを露光する荷電粒子線露光装置において、
荷電粒子線を前記基板上に入射させる照射手段と、
前記荷電粒子線が前記基板上の複数のピクセルで入射するように、前記荷電粒子線を走査する走査手段と、
前記荷電粒子線の露光時間を制御する露光時間制御手段と、
前記パターンのエッジに位置するピクセルの露光時間が前記パターンのエッジに位置しないピクセルの露光時間よりも小さくなるように設定するとともに、設定された前記パターンのエッジに位置するピクセルの露光時間をその直前のピクセルの露光時間に基づいて補正する制御手段と、を備えることを特徴とする荷電粒子線露光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の荷電粒子線露光装置を用いて、基板を露光するステップと、
露光された前記基板を現像するステップと、を備えるデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−19437(P2006−19437A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194773(P2004−194773)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】