説明

蒲鉾様または豆腐様食品の製造法

【課題】 牛乳および乳製品を主成分とし比較的簡単容易に栄養価の高い蒲鉾様または豆腐様食品を得ると共に、牛乳の消費拡大に役だつ方法を提供しようとするものである。
【解決手段】 牛乳を清浄化後、これにホエーたん白質を添加し、さらに組織改良剤として粉末コーンスターチ、乳化剤および重合リン酸塩を適量加えて均質化し、完全溶解したものを形成箱に充填密封後、加熱殺菌して凝固させることを特徴とする蒲鉾様または豆腐様食品の製造法。さらに脱脂粉乳を加えても良い。またホエーたん白質に代え、鶏卵卵白粉または全卵粉を配合しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳を清浄化後、これにホエーたん白質を添加し、または同上の牛乳に脱脂粉乳を混合したものにホエーたん白質を添加し、または同上の牛乳に脱脂粉乳と鶏卵卵白を添加し、さらに適量の組織改良剤を加えて均質化する。三つの発明からなり、牛乳の全成分を有効に利用する蒲鉾様または豆腐様食品の製造法に関するものである。
【0002】
このような牛乳を用いた蒲鉾様または豆腐様食品は、加熱して固形化したものであるから、従来の蒲鉾や大豆豆腐と同様に煮つけもの、鍋物、汁物、すき焼、油でのあげ物、その他の加熱調理用として、むしろ蒲鉾や豆腐よりも利用範囲の広い食品となるものである。ここで言う蒲鉾様または豆腐様食品とは、前述の通り牛乳を清浄化後、これにホエーたん白質を添加し、または同上の牛乳に脱脂粉乳を混合したものにホエーたん白質を添加し、または同上の牛乳に脱脂粉乳と鶏卵卵白を添加し、さらに適量の組織改良剤を加えて均質化し製品化するときに、この牛乳以外の凝固剤の配分量を変えることにより、硬さや食感を蒲鉾様または豆腐様に容易に変化させることができる。これにより牛乳を主成分とした、加熱を要する様々な和食料理の食材としても使用することが可能になった。
【0003】
周知のように、最近我国における加工乳消費の減少にともない、脱脂粉乳の在庫過剰が大きな問題となり、牛乳の消費拡大が強く望まれている。この発明は、このような現状に鑑み、牛乳および乳製品を主成分とし比較的簡単容易に栄養価の高い蒲鉾様または豆腐様食品を得ると共に、牛乳の消費拡大に役だつ方法を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0004】
従来から牛乳蒲鉾や牛乳豆腐またはミルク入り豆腐と言われるものが知られているが、例えば牛乳蒲鉾と称するものは、蒲鉾の原材料である魚のすり身に牛乳を一部分加えて蒸すかあるいは焼いたものである。また牛乳豆腐は豆乳に牛乳または粉乳を一部分、重量比で5〜10%加えたものを凝固させて製品化するものである。そのほかに、牛乳に有機酸を加えてたん白質および脂肪を凝固させ、ろ過して得られたものを圧搾する製品もある。前者においては牛乳蒲鉾も牛乳豆腐も本格的な牛乳を用いた蒲鉾様食品や豆腐様食品とは言いがたいものであった。また後者では、牛乳成分の一部分のみを利用したもので、たん白質および脂肪以外の有効成分が排出されてしまうので実用的ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在まで、牛乳および牛乳成分のみで蒲鉾様食品または豆腐様食品が製造されなかったのは、牛乳たん白質の主成分であるカゼインは、加熱しても容易に凝固しない性質があり、また凝固剤を加えて加熱しても、大豆たん白質と異なって均一なゲルを形成しがたく、ホエー分離という現象が生じるため、技術的に非常に困難であったからである。
【0006】
従来、牛乳または粉乳溶解液にスターチをはじめ各種糊剤を加えるか、またはホエーたん白質あるいはカゼインを増加させて乳酸発酵または酸を加えてカゼインのゲル組織を強固にしてホエー分離を抑制する方法、さらにはグルコノデルタラクトンと必要に応じて酸を加えてヨーグルト様組織にする方法などが発明されているが、このようにして得られた製品は、糊料あるいは酸性ゲル化であるために、比較的低温ではゲル化しているが、加熱によって分散状となるか、またはカゼインを主体とした沈殿物を形成するため、加熱調理食品には利用できないものである。
【0007】
例えば、牛乳に脱脂粉乳を5〜10%加えてたん白質含量を高め、これに硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトンの適量を加え、さらに各種濃厚化剤として、ガム質、寒天、ゼラチン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、スターチ、プロピレングライコールアルギネート、アルギン酸ソーダ、カラギーナンなどを単一または2〜3種の組み合わせで原材料に対して0.5〜2%加えて加熱後冷却して固形化させた場合、調理材料として加熱したときにはすべて溶解分散する。なお、硫酸カルシウムおよびグルコノデルタラクトンを凝固剤として使用した場合多少苦味または酸味があり製品として味覚に問題があった。また、たん白質含量が12〜16%と非常に高く、とくにホエーたん白質が全たん白質中60〜70%を占めている牛初乳に酸を加えるとゲル状になるが、これを加熱すると全体が均一なゲルとはならず、たん白質が脂肪を包含した状態で凝固沈殿する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、この点について種々研究した結果、加熱凝固性をもち、しかも均一なゲル形成能を有するたん白質として、ホエーたん白質を分離して牛乳に加え、さらに組織改良剤としてコーンスターチ、乳化剤HLB2〜5および14以上のものの2種類、および重合リン酸塩のテトラポリリン酸またはヘキサメタリン酸、を適量添加して加熱することによって均一なゲルが形成されるという知見を得た。この場合、牛乳に加えるホエーたん白質の下限量は牛乳に対し重量比9%で、これ以下では良好な食品が得られなかった。上限量は、コスト高となるが多いほど良好な蒲鉾様または豆腐様食品が得られた。
【0009】
またホエーたん白質のかわりに卵白を用いても同様な製品を得ることができることもわかった。なお、牛乳中にはたん白質が約3%しか含まれていないので、たん白質含量を高めるため脱脂粉乳を一部加えた場合には、ゲル組織が一層強固になつた。
【0010】
上述したように本発明は、牛乳とホエーたん白質、牛乳と脱脂粉乳およびホエーたん白質、または牛乳と脱脂粉乳および卵白を混合したものに組織改良剤としてコーンスターチ、乳化剤HLB2〜5および14以上のものの2種類、および重合リン酸塩のテトラポリリン酸またはヘキサメタリン酸を添加して均質化、加熱凝固させるものであるから、牛乳成分のすべてを有効に利用することができ後掲の表から明らかなように、蒲鉾あるいは大豆豆腐に比較して栄養価が高く、とくにたん白質、カルシウム、カリウム、ビタミンBが豊富に含有された蒲鉾様または豆腐様食品を提供することができると共に、牛乳の消費に新たな分野を開拓するもので、きわめて有益な発明である。尚、本発明で言う、蒲鉾様または豆腐様食品とは、主成分である牛乳をゲル状に凝固させるための凝固剤として、ホエーたん白質、あるいはホエーたん白質と脱脂粉乳、あるいは脱脂粉乳と卵白粉、さらに適量の組織改良剤を加えて均質化するときの、牛乳以外の凝固剤の配合量により硬さや食感を蒲鉾様または豆腐様に容易に変えることができることである。例えば主原料の牛乳に対し一定量の凝固剤を添加した場合、蒲鉾様食品になる。またこの一定量の凝固剤を約半分添加した場合は豆腐様食品になる。後記実施例で詳しく記載するが、実施例1、実施例2、実施例3では、蒲鉾様食品となる。また実施例4、実施例5、実施例6では豆腐様食品となる。それぞれの用途に合わせた加熱調理に利用できる。さらには蒲鉾様食品を製造するための凝固剤の添加量を多少多め、約1,5倍にするとナチュラルチーズ様食品になる。また同様に豆腐様食品を製造するための凝固剤の添加量を少なめにし、約7割添加するとプリン様の製品になる。
【実施例】
【0011】
以下に本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0012】
牛乳 100ml
ホエーたん白質 20g
コーンスターチ 2g
乳化剤 0.3g
重合リン酸塩 0.03g
牛乳を清浄化後、40〜45℃に加温したものにホエーたん白質、コーンスターチ、乳化剤、重合リン酸塩を加え、攪はん溶解後均質化したものを、形成箱に充填密封し、90℃で20〜30分加熱した後、冷却して蒲鉾様製品を得る。
【実施例2】
【0013】
牛乳 100ml
ホエーたん白質 10g
脱脂粉乳 10g
コーンスターチ 2g
乳化剤 0.3g
重合リン酸塩 0.03g
実施例1と同様に処理して製品を得る。この場合、ホエーたん白質の下限量は牛乳に対し重量比8%である。
【実施例3】
【0014】
牛乳 100ml
脱脂粉乳 10g
卵白粉末、又は全卵粉 10g
コーンスターチ 2g
乳化剤 0.3g
重合リン酸塩 0.03g
実施例1と同様に処理して製品を得る。この場合、卵白粉末又は全卵粉の下限量は牛乳に対し、重量比8%である。
【実施例4】
【0015】
牛乳 100ml
ホエーたん白質 10g
コーンスターチ 1g
乳化剤 0.3g
重合リン酸塩 0.03g
牛乳を清浄化後、40〜45℃に加温したものにホエーたん白質、コーンスターチ、乳化剤、重合リン酸塩を加え、攪はん溶解後均質化したものを、形成箱に充填密封し、90℃で20〜30分加熱した後、冷却して豆腐様製品を得る。
【実施例5】
【0016】
牛乳 100ml
ホエーたん白質 5g
脱脂粉乳 5g
コーンスターチ 1g
乳化剤 0.3g
重合リン酸塩 0.03g
実施例1と同様に処理して製品を得る。この場合、ホエーたん白質の下限量は牛乳に対し重量比4%である。
【実施例6】
【0017】
牛乳 100ml
脱脂粉乳 5g
卵白粉末、又は全卵粉 5g
コーンスターチ 1g
乳化剤 0.3g
重合リン酸塩 0.03g
実施例1と同様に処理して製品を得る。この場合、卵白粉末又は全卵粉の下限量は牛乳に対し、重量比4%である。
【0018】
次に上述の実施例によって得られた蒲鉾様食品または豆腐様食品の成分組成を、蒲鉾、大豆豆腐と比較して表に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
また、上述の蒲鉾様食品または豆腐様食品を冷蔵庫内、庫内温度+10℃±1℃に保存した場合の細菌検査の結果を示す。
【0021】
【表2】

【0022】
同表から明らかなように冷蔵庫では1ヶ月以上保存しても細菌の増殖はほとんど認められず、風味も異常なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛乳を清浄化後、これにホエーたん白質を添加し、さらに組織改良剤として粉末コーンスターチ、乳化剤HLB2〜5および14以上のものの2種類、および重合リン酸塩のテトラポリリン酸またはヘキサメタリン酸、を適量加えて均質化し、完全溶解したものを形成箱に充填密封後、加熱殺菌して凝固させることを特徴とする蒲鉾様または豆腐様食品の製造法。
【請求項2】
牛乳を清浄化後、これにホエーたん白質と脱脂粉乳を添加し、さらに組織改良剤としてコーンスターチ、乳化剤HLB2〜5および14以上のものの2種類、および重合リン酸塩のテトラポリリン酸またはヘキサメタリン酸、を適量加えて均質化し、完全溶解したものを形成箱に充填密封後、加熱して凝固させることを特徴とする蒲鉾様または豆腐様食品の製造方法。
【請求項3】
牛乳を清浄化後、これに脱脂粉乳と鶏卵卵白を添加し、さらに組織改良剤としてコーンスターチ、乳化剤HLB2〜5および14以上のものの2種類、および重合リン酸塩のテトラポリリン酸またはヘキサメタリン酸、を適量加えて均質化し、完全溶解したものを形成箱に充填密封後、加熱殺菌して凝固させることを特徴とする蒲鉾様または豆腐様食品の製造法。

【公開番号】特開2006−345847(P2006−345847A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206173(P2005−206173)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(394013781)
【出願人】(594145965)
【Fターム(参考)】