説明

蒸気加減弁の開閉装置

【課題】蒸気加減弁の開閉装置を提供すること。
【解決手段】水蒸気によって回転する蒸気タービン37と、蒸気タービン37に導かれる蒸気量を調節するための蒸気加減弁31と、蒸気タービン37を通過した水蒸気を冷却して復水を生成する復水器5と、を備える蒸気駆動システムにおける蒸気加減弁31の開閉を制御する開閉装置55であって、蒸気タービン37の回転によって駆動され、復水を吸い込んで吐出可能な水圧ポンプ38と、水圧ポンプ38から吐出された加圧水によって蒸気加減弁31を開閉する水圧駆動アクチュエータと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気加減弁の開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、火力発電や原子力発電では、水を蒸発させて生成した水蒸気を利用して蒸気タービンを回転させている。蒸気タービンの上流には蒸気加減弁が配設され、蒸気タービンを通過する水蒸気の量を調節することによって蒸気タービンの回転数を一定に制御している。
【0003】
特許文献1には、油圧又は電気を利用して開閉される蒸気加減弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−219322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような蒸気加減弁では、油圧を利用して蒸気加減弁を開閉するためには油圧回路を設ける必要がある。また、電気モータを利用して蒸気加減弁を開閉するためには電気が必要である。このように、蒸気加減弁を開閉するためには蒸気以外に他のエネルギが必要であった。
【0006】
そこで、本発明では、蒸気以外の他のエネルギを必要とせずに開閉可能な蒸気加減弁の開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水蒸気によって回転する蒸気タービンと、前記蒸気タービンに導かれる蒸気量を調節するための蒸気加減弁と、前記蒸気タービンを通過した水蒸気を冷却して復水を生成する復水器と、を備える蒸気駆動システムにおける前記蒸気加減弁の開閉を制御する開閉装置であって、前記蒸気タービンの回転によって駆動され、前記復水を吸い込んで吐出可能な水圧ポンプと、前記水圧ポンプから吐出された加圧水によって前記蒸気加減弁を開閉する水圧駆動アクチュエータと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、復水を加圧して吐出する水圧ポンプは、蒸気タービンの回転によって駆動され、水圧ポンプから吐出された加圧水によって蒸気加減弁は開閉される。
【0009】
したがって、蒸気以外の他のエネルギを必要とせずに開閉可能な蒸気加減弁の開閉装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る発電システムの構成図である。
【図2】図1における蒸気加減弁の開閉装置の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態に係る蒸気加減弁13,31の開閉を制御する開閉装置70,55を備える発電システム100について説明する。本実施形態では、発電システム100は火力発電システムであるが、原子力発電システムにも適用可能である。この発電システム100が蒸気駆動システムに該当する。
【0012】
まず、図1を参照しながら発電システム100全体の構成を説明する。
【0013】
発電システム100は、化石燃料を燃焼させたときに発生する熱によって水を蒸発させるボイラ1と、水が蒸発して生成された水蒸気によって回転する蒸気タービン7と、蒸気タービン7の回転を利用して発電を行う発電機6とを備える。
【0014】
ボイラ1は、燃料貯蔵タンク(図示省略)に貯蔵された石油,LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス),石炭などの化石燃料を燃焼させ、燃焼による熱を利用して水を蒸発させる。ボイラ1で生成された水蒸気は、水蒸気を遮断可能な蒸気止弁2が設けられた流路8を通じて、後述する蒸気加減弁13に送られる。水蒸気は、蒸気加減弁13で加減調節され、流路9を通じて蒸気タービン7へと供給される。
【0015】
蒸気タービン7は、ボイラ1で生成された水蒸気を利用して回転する。蒸気タービン7の回転軸には、発電機6の回転軸が連結される。蒸気タービン7の下流には、水蒸気を冷却するための復水器5が設けられる。この蒸気タービン7が発電用蒸気タービンに該当する。
【0016】
発電機6は、回転軸が回転することによって発電する。発電システム100の通常運転時には、発電機6の回転軸の回転数は、発電する電気の周波数を一定にするために所定の回転数に保たれる。
【0017】
復水器5は、高温の水蒸気を冷却して復水にするために設けられる。復水器5に送られた水蒸気は、海水や河川の水などが循環する冷却装置(図示省略)によって冷却されて復水になる。
【0018】
復水器5で生成された復水は、復水ポンプ4によって加圧された後、給水ポンプ3によって更に加圧され、再びボイラ1へと給水される。
【0019】
以上のように、液体と気体との間で相変態を繰り返しながら循環する水によって、発電システム100は発電を行う。
【0020】
ボイラ1から蒸気タービン7へと供給され発電に供された水蒸気の一部は、流路30を通じて蒸気加減弁31へと送られる。蒸気加減弁31を通過した水蒸気は、補器を駆動するための蒸気タービン37に供給される。この蒸気タービン37が補器用蒸気タービンに該当する。
【0021】
蒸気タービン37へと供給される水蒸気は、従来は復水器5に送られて復水されていたものである。よって、従来復水器5で冷却されて利用されていなかった熱エネルギを利用するため、エネルギの有効活用が可能である。蒸気タービン7を通過した水蒸気の一部を蒸気タービン7に供給するのではなく、蒸気タービン7よりも上流の流路8又は流路9から分岐させ、蒸気タービン7に供給される前の水蒸気の一部を蒸気タービン37に供給してもよい。
【0022】
次に、主に図2を参照しながら蒸気加減弁31の開閉装置55について説明する。
【0023】
蒸気加減弁31は、圧力室51に供給される加圧水の水圧によって開閉制御されるバルブである。蒸気加減弁31では、開口面積が拡縮することによって通過可能な水蒸気の量が調節される。蒸気加減弁31は、蒸気タービン37の回転速度を一定に調節するために設けられる。この蒸気加減弁31が補器用蒸気加減弁に該当する。
【0024】
蒸気加減弁31は、水蒸気の流路を開閉可能なバルブ本体31aと、ピストン50aが内部を軸方向に摺動する水圧シリンダ50と、水圧シリンダ50の駆動をバルブ本体31aに伝達するためのリンク機構53とを備える。
【0025】
水圧シリンダ50は、内部を摺動するピストン50aと、ピストン50aに固定され一体となって進退するロッド52とを備える。この水圧シリンダ50が、水圧駆動アクチュエータに該当する。
【0026】
水圧シリンダ50の内部は、ピストン50aによって圧力室51と背圧室に区画されている。背圧室には圧力室51の容積を収縮する方向に付勢する付勢部材としてのばねが収装されている。水圧シリンダ50のピストン50aは、圧力室51の内部圧力とばね力との釣り合いによって軸方向に摺動する。
【0027】
リンク機構53は、梃子の原理を利用してバルブ本体31aを開閉するために必要な力を小さくしている。
【0028】
蒸気加減弁31は、圧力室51に加圧水が供給されてピストン50aが圧力室51を拡張する方向へ移動すると、リンク機構53を介して開状態になる。逆に、圧力室51の加圧水が排出されてピストン50aが圧力室51を収縮する方向へ移動すると、リンク機構53を介して閉状態になる。発電システム100の起動時には、圧力室51に加圧水が供給されていないので、蒸気加減弁31は閉状態である。
【0029】
蒸気加減弁31を通過した水蒸気は、流路32を通じて蒸気タービン37へと送られる。蒸気タービン37を回転させた水蒸気は、流路34を通じて復水器5へと送られる。蒸気タービン37には、水を吸い上げて吐出する水圧ポンプ38の回転軸が連結される。
【0030】
蒸気タービン37の回転数は、回転数検知器33によって検知され、電気信号としてコントローラ54に伝達される。ここで、蒸気タービン37の回転数は、水圧ポンプ38の回転数と等価である。
【0031】
コントローラ54は、電磁式切換弁41,45,及び水圧サーボ弁49の制御を行うものであり、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAMなどをROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって電磁式切換弁41,45,及び水圧サーボ弁49の制御が実現される。
【0032】
水圧ポンプ38は、流路35を通じて復水器5に接続され、復水器5に溜められた復水を吸い込んで吐出する。水圧ポンプ38から吐出された加圧水は、発電システム100の起動時に使用される起動ライン42と、蒸気加減弁31を駆動するための駆動ライン44と、他の水圧機器へと加圧水を供給するための供給ライン46と、水圧の過剰な上昇を防止するためのリターンライン48とに分岐して送出される。
【0033】
駆動ライン44は、蒸気加減弁31を開閉するために設けられる。駆動ライン44へと流入した加圧水は、加圧水の逆流を防止するためのチェック弁43と、加圧水の供給量を調節するための水圧サーボ弁49とを通過して水圧シリンダ50の圧力室51へと送られる。
【0034】
水圧サーボ弁49は、水圧ポンプ38から吐出された加圧水が圧力室51へと供給される量を調節するための電磁式切換弁である。水圧サーボ弁49は、ストレートポジション49a、クローズドポジション49b、及びクロスポジション49cとを備え、コントローラ54からの指令によって切り換えられる。
【0035】
コントローラ54からの指令によって水圧サーボ弁49が切り換えられると、圧力室51の内部の加圧水の量が増減する。
【0036】
水圧サーボ弁49がストレートポジション49aに切り換えられると、水圧ポンプ38から吐出された加圧水が圧力室51へと供給される。これにより、ピストン50aが圧力室51を拡張する方向に移動し、蒸気加減弁31の開口面積は徐々に拡大され、やがて全開状態になる。
【0037】
蒸気加減弁31の開口面積が拡大されると、蒸気加減弁31を通過可能な水蒸気の量が増大する。よって、蒸気タービン37へと供給される水蒸気の量が増大し、蒸気タービン37の回転数は上昇する。
【0038】
水圧サーボ弁49がクローズドポジション49bに切り換えられると、圧力室51内部の加圧水は出入りしない。つまり、水圧ポンプ38から吐出された加圧水は圧力室51へは供給されず、圧力室51内部の加圧水は排出されない。これにより、ピストン50aは移動しないため、蒸気加減弁31は水圧サーボ弁49がクローズドポジション49bに切り換えられる直前の位置に保たれる。
【0039】
蒸気加減弁31の開口面積は変化しないため、蒸気加減弁31を通過可能な水蒸気の量は変化しない。よって、蒸気タービン37へと供給される水蒸気の量は変化せず、蒸気タービン37の回転数は変化しない。
【0040】
水圧サーボ弁49がクロスポジション49cに切り換えられると、圧力室51内部の加圧水は、流路36を通じて復水器5へと還流される。このとき、水圧ポンプ38からの駆動ライン44と圧力室51とは水圧サーボ弁49によって遮断されているため、水圧ポンプ38から吐出された加圧水は圧力室51へは供給されない。これにより、ばねで押されるピストン50aが圧力室51を収縮する方向に移動し、蒸気加減弁31の開口面積は徐々に縮小され、やがて全閉状態になる。
【0041】
蒸気加減弁31の開口面積が縮小されると、蒸気加減弁31を通過可能な水蒸気の量が縮小する。よって、蒸気タービン37へと供給される水蒸気の量が減少し、蒸気タービン37の回転数は下降する。
【0042】
起動ライン42は、発電システム100を起動するために設けられる。起動ライン42へと流入した加圧水は、加圧水の逆流を防止するためのチェック弁39を通過してアキュムレータ40へと送られる。
【0043】
アキュムレータ40には、水圧ポンプ38の通常運転時に加圧水が貯留される。アキュムレータ40に貯留された加圧水は、発電システム100の起動時に利用される。発電システム100の起動時には、未だ蒸気タービン37が回転しておらず、水圧ポンプ38は作動していないためである。アキュムレータ40の下流には、電磁式切換弁41が配設される。
【0044】
電磁式切換弁41は、2ポート2ポジションの開閉弁である。電磁式切換弁41が閉状態のときには、アキュムレータ40に貯留された水は流出しない。電磁式切換弁41が開状態になると、アキュムレータ40に貯留された加圧水が駆動ライン44へと流出する。そのため、アキュムレータ40に貯留された加圧水を、水圧シリンダ50の圧力室51へと供給することが可能である。
【0045】
供給ライン46は、水圧ポンプ38から吐出された加圧水を他のアクチュエータなどの機器へと供給するために設けられる。供給ライン46には、電磁式切換弁45が配設される。
【0046】
電磁式切換弁45は、他の水圧機器へと加圧水を供給するときに開状態にされる。本実施形態では、蒸気タービン7へと供給される水蒸気の量を加減するための蒸気加減弁13へと加圧水を供給している。
【0047】
リターンライン48は、水圧回路内の水圧を一定に保つために設けられる。リターンライン48には、リターンライン48の内部圧力が所定の値まで上昇すると開状態になるリリーフ弁47が配設される。つまり、リリーフ弁47が設けられることによって、水圧ポンプ38から吐出された加圧水の圧力が過剰に上昇することが防止され、水圧回路内の水圧を一定に保つことが可能である。
【0048】
以下、主に図1を参照しながら蒸気加減弁13の開閉装置70について説明する。
【0049】
蒸気加減弁13は、圧力室67に供給される水の水圧によって開閉制御されるバルブである。蒸気加減弁13では、開口面積が拡縮することによって通過可能な水蒸気の量が調節される。蒸気加減弁13は、蒸気タービン7の回転速度を一定に調節するために設けられる。この蒸気加減弁13が発電用蒸気加減弁に該当する。
【0050】
本実施形態では、補器用の蒸気タービン37によって駆動される水圧ポンプ38から吐出された加圧水が、蒸気加減弁13を開閉するために供給される。しかし、発電用の蒸気タービン7によって駆動される水圧ポンプを設け、その水圧ポンプから吐出された加圧水によって蒸気加減弁13を開閉させてもよい。
【0051】
蒸気加減弁13は、水蒸気の流路を開閉可能なバルブ本体13aと、ピストン66aが内部を軸方向に摺動する水圧シリンダ66と、水圧シリンダ66の駆動をバルブ本体13aに伝達するためのリンク機構12とを備える。
【0052】
水圧シリンダ66は、内部を摺動するピストン66aと、ピストン66aに固定され一体となって進退するロッド68とを備える。この水圧シリンダ66が、水圧駆動アクチュエータに該当する。
【0053】
水圧シリンダ66の内部は、ピストン66aによって圧力室67と背圧室に区画されている。背圧室には圧力室67の容積を収縮する方向に付勢する付勢部材としてのばねが収装されている。水圧シリンダ66のピストン66aは、圧力室67の内部圧力とばね力との釣り合いによって軸方向に摺動する。
【0054】
リンク機構12は、梃子の原理を利用してバルブ本体13aを開閉するために必要な力を小さくしている。
【0055】
蒸気加減弁13は、圧力室67に加圧水が供給されてピストン66aが圧力室67を拡張する方向へ移動すると、リンク機構12を介して開状態になる。逆に、圧力室67の加圧水が排出されてピストン66aが圧力室67を収縮する方向へ移動すると、リンク機構12を介して閉状態になる。発電システム100の起動時には、圧力室67に加圧水が供給されていないので、蒸気加減弁13は閉状態である。
【0056】
蒸気加減弁13の上流には、ボイラ1によって生成された水蒸気の圧力を検出するための蒸気圧力検出器10が設けられる。蒸気圧力検出器10によって検出された水蒸気の圧力は、電気信号としてコントローラ54へと伝達される。
【0057】
蒸気圧力検出器10によって検出された水蒸気の圧力が低下した時には、蒸気タービン7へと供給される水蒸気の量を減少させないために、蒸気加減弁13の開口面積を増大させる必要がある。逆に、蒸気圧力検出器10によって検出された水蒸気の圧力が上昇した時には、蒸気タービン7へと供給される水蒸気の量を増大させないために、蒸気加減弁13の開口面積を減少させる必要がある。
【0058】
コントローラ54は、蒸気加減弁31の開閉装置55の制御だけではなく、蒸気加減弁13の開閉装置70の制御も行う。図1では、開閉装置55と開閉装置70とのコントローラが別々に示されているが、実際は一体として設けられる。しかし、コントローラ54を一体に設けないで、蒸気加減弁13,31の開閉装置70,55を制御するそれぞれのコントローラを個別に設ける構成であってもよい。
【0059】
水圧サーボ弁65は、水圧ポンプ38から吐出され電磁式切換弁45を通過して供給された加圧水が圧力室67へと供給される量を調節するための電磁式切換弁である。水圧サーボ弁65は、ストレートポジション65a、クローズドポジション65b、及びクロスポジション65cとを備える。
【0060】
コントローラ54からの指令によって水圧サーボ弁65が切り換えられると、圧力室67の内部の加圧水の量が増減する。
【0061】
水圧サーボ弁65がストレートポジション65aに切り換えられると、水圧ポンプ38から吐出された加圧水が圧力室67へと供給される。これにより、ピストン66aが圧力室67を拡張する方向に移動して蒸気加減弁13の開口面積は徐々に拡大され、やがて全開状態になる。
【0062】
蒸気加減弁13の開口面積が拡大されると、蒸気加減弁13を通過可能な水蒸気の量が増大する。よって、蒸気タービン7へと供給される水蒸気の量が増大し、ボイラ1で生成された水蒸気の圧力が低下しても蒸気タービン7の回転数は一定に保たれる。
【0063】
水圧サーボ弁65がクローズドポジション65bに切り換えられると、圧力室67内部の加圧水は出入りしない。つまり、水圧ポンプ38から吐出された加圧水は圧力室67へは供給されず、圧力室67内部の加圧水は排出されない。これにより、ピストン66aは移動しないため、蒸気加減弁13は水圧サーボ弁65がクローズドポジション65bに切り換えられる直前の位置に保たれる。
【0064】
蒸気加減弁13の開口面積は変化しないため、蒸気加減弁13を通過可能な水蒸気の量は変化しない。よって、蒸気タービン7へと供給される水蒸気の量は変化せず、蒸気タービン7の回転数は変化しない。
【0065】
水圧サーボ弁65がクロスポジション65cに切り換えられると、圧力室67内部の加圧水は、流路69を通じて復水器5へと流出する。流路69は、図示しないが復水器5へと接続されている。このとき、水圧ポンプ38からの供給ライン46と圧力室67とは水圧サーボ弁65によって遮断されているため、水圧ポンプ38から吐出された加圧水は圧力室67へは供給されない。これにより、ばねで押されるピストン66aが圧力室67を収縮する方向に移動し、蒸気加減弁13の開口面積は徐々に縮小され、やがて全閉状態になる。
【0066】
蒸気加減弁13の開口面積が縮小されると、蒸気加減弁13を通過可能な水蒸気の量が減少する。よって、蒸気タービン7へと供給される水蒸気の量が減少し、ボイラ1で生成された水蒸気の圧力が上昇しても蒸気タービン7の回転数は一定に保たれる。
【0067】
水圧ポンプ38から吐出され供給ライン46へと流入した加圧水の一部は、加圧水の逆流を防止するためのチェック弁60を通過してアキュムレータ61へと送られる。
【0068】
アキュムレータ61は、電磁式切換弁45から水圧サーボ弁65への流路と並列に設けられる起動ライン63に配設される。アキュムレータ61には、水圧ポンプ38の通常運転時に加圧水が貯留される。アキュムレータ61に貯留された加圧水は、発電システム100の起動時に利用される。発電システム100の起動時には、未だ蒸気タービン37が回転しておらず、水圧ポンプ38は作動していないためである。アキュムレータ61の下流には、電磁式切換弁62が配設される。
【0069】
電磁式切換弁62は、2ポート2ポジションの開閉弁である。電磁式切換弁62が閉状態のときには、アキュムレータ61に貯留された水は流出しない。電磁式切換弁62が開状態になると、アキュムレータ61に貯留された加圧水は、圧力室67に接続された流路へと流出する。そのため、アキュムレータ61に貯留された加圧水を、水圧シリンダ66の圧力室67へと供給することが可能である。
【0070】
電磁式切換弁62の下流の供給ライン46から分岐して形成された流路には、電磁式切換弁71が設けられる。
【0071】
電磁式切換弁71は、更に他の水圧機器へと加圧水を供給するときに用いられる。電磁式切換弁71の下流に、発電システム100を備える発電所における他の水圧機器を接続すれば、水圧ポンプ38から吐出される加圧水によって駆動することができる。水圧ポンプ38は、従来復水器5で冷却されて利用されていなかった熱エネルギを利用するものであるため、エネルギの有効活用が可能である。
【0072】
以下、発電システム100の作用について説明する。
【0073】
まず、発電システム100の起動時について説明する。
【0074】
発電システム100を起動するために、ボイラ1を起動して水蒸気を発生させる。このとき、蒸気タービン37は回転していないため、水圧ポンプ38は未だ作動していない。そこで、以下の手順でアキュムレータ40,61に貯留された加圧水を使用して蒸気加減弁13,31を開状態にする。
【0075】
まず、アキュムレータ61に貯留された加圧水を使用するために電磁式切換弁62を開状態にする。このとき、他の電磁式切換弁41,45,及び71は閉状態である。
【0076】
アキュムレータ61に貯留された加圧水は、水圧サーボ弁65によって量を調節されながら水圧シリンダ66の圧力室67へと供給される。このとき、チェック弁60,64によって加圧水の逆流が防止されるため、アキュムレータ61に貯留された加圧水は圧力室67へのみ供給される。
【0077】
圧力室67へと加圧水が供給されると、ピストン66aが圧力室67を拡張する方向へ移動することによって蒸気加減弁13が開状態になる。これにより、ボイラ1で発生した水蒸気の流路が開けて、水蒸気は蒸気タービン7へと供給される。
【0078】
蒸気タービン7へと水蒸気が供給されると、蒸気タービン7は回転を開始する。これにより、発電機6の回転軸が回転させられて発電を開始する。
【0079】
充分な量の水蒸気が蒸気タービン7に供給されたら、次に、電磁式切換弁41を開状態にする。このとき、電磁式切換弁45,71は閉状態のままである。
【0080】
電磁式切換弁41が開状態にされると、アキュムレータ40に貯留されていた加圧水が起動ライン42から駆動ライン44に供給され、水圧サーボ弁49によって量を調節されながら水圧シリンダ50の圧力室51へと供給される。このとき、チェック弁39,43によって加圧水の逆流が防止されるため、アキュムレータ40に貯留された加圧水は圧力室51へのみ供給される。
【0081】
圧力室51へと加圧水が供給されると、ピストン50aが圧力室51を拡張する方向へ移動することによって蒸気加減弁31は開状態になる。これにより、蒸気タービン7から流路30を通じて流れる水蒸気の流路が開けて、水蒸気は蒸気タービン37へと供給される。
【0082】
蒸気タービン37へと水蒸気が供給されると、蒸気タービン37は回転を開始する。これにより、水圧ポンプ38が起動して加圧水を吐出し始める。
【0083】
水圧ポンプ38が通常運転状態になったら、次に、電磁式切換弁41及び62を閉状態にする。これにより、アキュムレータ40,61からの起動ライン42,63は閉じられ、アキュムレータ40,61には水圧ポンプ38から吐出された加圧水が再び貯留される。
【0084】
以上で発電システム100の起動は完了し、蒸気加減弁13を制御して発電出力をコントロールしながら通常運転を行うことが可能である。
【0085】
以上より、発電システム100の起動時には水圧ポンプ38が未だ作動していないが、アキュムレータ40,61に貯留された加圧水を使用することによって、発電システム100の起動が可能である。
【0086】
次に、発電システム100の通常運転時について説明する。
【0087】
ボイラ1で生成された水蒸気が蒸気タービン7へと供給され、蒸気タービン7は回転する。蒸気タービン7の回転によって発電機6の回転軸が回転させられ、発電機は発電を行う。蒸気圧力検出器10で検出した蒸気タービン7への水蒸気の供給圧力が一定に保たれているときは、コントローラ54の指令によって水圧サーボ弁65はクローズドポジション65bに保たれる。
【0088】
ここで、蒸気タービン7に供給される水蒸気の圧力が低下すると、蒸気タービン7の回転数の低下を防止するために、コントローラ54からの指令によって水圧サーボ弁65がストレートポジション65aに切り換えられる。
【0089】
水圧サーボ弁65がストレートポジション65aに切り換えられると、水圧ポンプ38から吐出された加圧水が、水圧シリンダ66の圧力室67へと供給される。ピストン66aは圧力室67を拡張する方向へ移動し、ロッド68の進出がリンク機構12を介してバルブ本体13aを開方向へと移動させる。よって、蒸気加減弁13の開口面積は増大する。
【0090】
蒸気加減弁13の開口面積が増大すると、蒸気加減弁13を通過可能な水蒸気の量は増大し、蒸気タービン7へと供給される水蒸気の量は増大する。したがって、ボイラ1で生成された水蒸気の圧力が低下しても蒸気タービン7の回転数は一定に保たれる。
【0091】
逆に、蒸気タービン7に供給される水蒸気の圧力が上昇すると、蒸気タービン7の回転数の上昇を防止するために、コントローラ54からの指令によって水圧サーボ弁65がクロスポジション65cに切り換えられる。
【0092】
水圧サーボ弁65がクロスポジション65cに切り換えられると、圧力室67の内部の加圧水は復水器5へと排出され、水圧ポンプ38から吐出された加圧水は、水圧シリンダ66の圧力室67へと供給されない。ピストン66aは圧力室67を収縮する方向へ移動し、ロッド68の後退がリンク機構12を介してバルブ本体13aを閉方向へと移動させる。よって、蒸気加減弁13の開口面積は減少する。
【0093】
蒸気加減弁13の開口面積が減少すると、蒸気加減弁13を通過可能な水蒸気の量は減少し、蒸気タービン7へと供給される水蒸気の量は減少する。したがって、ボイラ1で生成された水蒸気の圧力が上昇しても蒸気タービン7の回転数は一定に保たれる。
【0094】
以上のように、蒸気圧力検出器10で検出したボイラ1から供給される水蒸気の圧力に応じて、コントローラ54は水圧サーボ弁65を制御する。これにより、蒸気加減弁13の開口面積を調節して蒸気タービン7を所定の回転数に保ちながら発電システム100は運転を続ける。
【0095】
また、発電システム100の運転時には、蒸気タービン7へと供給された水蒸気の一部は流路30を通じて蒸気タービン37へと供給され、蒸気タービン37を回転させる。蒸気タービン37の回転によって水圧ポンプ38が駆動され、水圧ポンプ38は復水器5に溜められた復水を吸い込んで、加圧水を吐出する。回転数検知器33で検知した蒸気タービン37の回転数が一定であり、水圧ポンプ38からの吐出流量が一定であるときには、コントローラ54の指令によって水圧サーボ弁49はクローズドポジション49bに保たれる。
【0096】
ここで、蒸気タービン37に供給される水蒸気の量が減少し、蒸気タービン37の回転数が低下すると、コントローラ54からの指令によって水圧サーボ弁49がストレートポジション49aに切り換えられる。
【0097】
水圧サーボ弁49がストレートポジション49aに切り換えられると、水圧ポンプ38から吐出された加圧水が、水圧シリンダ50の圧力室51へと供給される。ピストン50aは圧力室51を拡張する方向へと移動し、ロッド52の進出がリンク機構53を介してバルブ本体31aを開方向へと移動させる。よって、蒸気加減弁31の開口面積は増大する。
【0098】
蒸気加減弁31の開口面積が増大すると、蒸気加減弁31を通過可能な水蒸気の量は増大し、蒸気タービン37へと供給される水蒸気の量は増大する。したがって、蒸気タービン37の回転数は上昇する。
【0099】
逆に、蒸気タービン37に供給される水蒸気の量が増大し、蒸気タービン37の回転数が上昇すると、コントローラ54からの指令によって水圧サーボ弁49がクロスポジション49cに切り換えられる。
【0100】
水圧サーボ弁49がクロスポジション49cに切り換えられると、圧力室51の内部の加圧水は復水器5へと排出され、水圧ポンプ38から吐出された加圧水は、水圧シリンダ50の圧力室51へと供給されない。ピストン50aは圧力室67を収縮する方向へと移動し、ロッド52の後退がリンク機構53を介してバルブ本体31aを閉方向へと移動させる。よって、蒸気加減弁31の開口面積は減少する。
【0101】
蒸気加減弁31の開口面積が減少すると、蒸気加減弁31を通過可能な水蒸気の量は減少し、蒸気タービン37へと供給される水蒸気の量は減少する。したがって、蒸気タービン37の回転数は下降する。
【0102】
以上のように、回転数検知器33で検出した蒸気タービン37の回転数に応じて、コントローラ54は水圧サーボ弁49を制御する。これにより、蒸気加減弁31の開口面積を調節して蒸気タービン37の回転数を所定の値に保ち、水圧ポンプ38からの吐出流量を一定に保っている。
【0103】
従来の発電システムでは、蒸気加減弁を油圧制御によって開閉していた。油圧回路を設けることで油漏れによる環境汚染のおそれがあり、また、作動油を使用することによる防火対策,防爆対策が必要であった。
【0104】
これに対して発電システム100では、水を吐出するための水圧ポンプ38は、蒸気タービン37の回転によって駆動され、水圧ポンプ38から吐出された加圧水によって蒸気加減弁13,31は開閉される。したがって、蒸気加減弁13,31は、蒸気以外に油圧や電気など他のエネルギを必要とせずに開閉可能である。
【0105】
油圧回路が設けられない発電システム100では、油漏れによる環境汚染のおそれは無く、油圧回路を設けることに伴う防火対策,防爆対策の必要も無い。
【0106】
また、油圧によって蒸気加減弁の開閉を行う従来の発電システムにおいては、油圧ポンプを駆動するために使用される電動モータの駆動に電力が必要であり、作動油を冷却するための冷却装置が必要であった。
【0107】
これに対して発電システム100では、水圧ポンプ38が自ら吐出した加圧水によって蒸気加減弁13,31を開閉制御し、蒸気タービン37の回転数即ち水圧ポンプ38の回転数を制御する。よって、消費電力を極めて低く抑えることができる。作動水は、復水器5によって生成された復水を利用するため、冷却装置を別途設ける必要は無く、発電システム100の小型化が図れる。
【0108】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0109】
水を吐出するための水圧ポンプ38は、蒸気タービン37の回転によって駆動され、水圧ポンプ38から吐出された加圧水によって蒸気加減弁13,31は開閉される。したがって、蒸気加減弁13,31は、蒸気以外に油圧や電気など他のエネルギを必要とせずに開閉可能である。
【0110】
また、蒸気加減弁13,31を開状態にするための加圧水を貯留するアキュムレータ40,61を設け、水圧ポンプ38の通常運転時には、アキュムレータ40,61に加圧水を貯留している。よって、水圧ポンプ38が未だ作動していない発電システム100の起動時においても、アキュムレータ40,61に貯留された加圧水を使用することによって、発電システム100の起動が可能である。
【0111】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0112】
例えば、開閉装置55,70は、水を駆動媒体としているが、これに限らず空気を駆動媒体としても同様の駆動操作が可能である。空気を駆動媒体とする場合には、水圧ポンプ38に代えて空気圧縮機を使用し、水圧サーボ弁49,65、アキュムレータ40,61、及び水圧シリンダ50,66、などに代えて空圧機器を使用する。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に係る蒸気加減弁の開閉装置は、火力発電システムや原子力発電システムをはじめとして、ごみ焼却プラント、鉄鋼、化学プラントなどから発生する蒸気を利用するシステムにも利用できる。
【符号の説明】
【0114】
100 発電システム
1 ボイラ
5 復水器
6 発電機
7 蒸気タービン
13 蒸気加減弁
31 蒸気加減弁
37 蒸気タービン
38 水圧ポンプ
40 アキュムレータ
49 水圧サーボ弁
50 水圧シリンダ
54 コントローラ
55 開閉装置
61 アキュムレータ
65 水圧サーボ弁
66 水圧シリンダ
70 開閉装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気によって回転する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンに導かれる蒸気量を調節するための蒸気加減弁と、
前記蒸気タービンを通過した水蒸気を冷却して復水を生成する復水器と、を備える蒸気駆動システムにおける前記蒸気加減弁の開閉を制御する開閉装置であって、
前記蒸気タービンの回転によって駆動され、前記復水を吸い込んで吐出可能な水圧ポンプと、
前記水圧ポンプから吐出された加圧水によって作動し、前記蒸気加減弁を開閉する水圧駆動アクチュエータと、を備えることを特徴とする蒸気加減弁の開閉装置。
【請求項2】
前記蒸気タービンは、補器を駆動するための補器用蒸気タービンであり、
前記蒸気駆動システムは、発電するための発電用蒸気タービンを備え、
前記補器用蒸気タービンは、前記発電用蒸気タービンを通過した水蒸気の一部が供給されて回転することを特徴とする請求項1に記載の蒸気加減弁の開閉装置。
【請求項3】
前記蒸気加減弁は、前記補器用蒸気タービンに導かれる蒸気量を調節するための補器用蒸気加減弁であり、
前記蒸気駆動システムは、前記発電用蒸気タービンに導かれる蒸気量を調節するための発電用蒸気加減弁を備え、
前記発電用蒸気加減弁は、前記前記水圧ポンプから吐出された加圧水によって作動する水圧駆動アクチュエータによって開閉され、
前記水圧ポンプから吐出された加圧水は、前記発電用蒸気加減弁を開閉する前記水圧駆動アクチュエータと、前記補器用蒸気加減弁を開閉する前記水圧駆動アクチュエータとに供給されることを特徴とする請求項2に記載の蒸気加減弁の開閉装置。
【請求項4】
前記水圧駆動アクチュエータを始動するための加圧水を貯留可能なアキュムレータを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の蒸気加減弁の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−261397(P2010−261397A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113838(P2009−113838)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】