説明

蒸発燃料処理装置

【課題】蓄熱材一体型ハニカム吸着体における吸着材と蓄熱材との間の熱の授受性能を向上し、吸着材の吸着・脱離性能を向上することのできる蒸発燃料処理装置を提供する。
【解決手段】蒸発燃料処理装置30は、ハニカム構造の蓄熱材一体型ハニカム吸着体10と、副ケース体36と、両保持部材54,56とを備える。蓄熱材一体型ハニカム吸着体10は、蒸発燃料を吸着及び脱離可能な吸着材、及び、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材を有する。副ケース体36は、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10を、該ハニカム吸着体10の多数の通気孔12内に蒸発燃料を含むガスを流通可能に収容する。両保持部材54,56は、副ケース体36と蓄熱材一体型ハニカム吸着体10との間を断熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車両に搭載される蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材をバインダを用いて成型して成型蓄熱材とし、該成型蓄熱材と吸着材とをバインダを用いて成型して得られるキャニスタ用潜熱蓄熱型吸着材が記載されている。このキャニスタ用潜熱蓄熱型吸着材は、例えばペレット(円柱状、球状)、ディスク、ブロック、ハニカム等の形状であり、その平均粒子径が0.5〜4mm程度である(段落[0058]参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−68693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の記載のキャニスタ用潜熱蓄熱型吸着材は、粒状であって、キャニスタのケーシング内に充填されるものを対象としている。このような潜熱蓄熱型吸着材では、ケーシングに充填された状態における吸着材と蓄熱材との間の熱の授受性能が低く、吸着材の吸着・脱離性能が低いという問題点があった。
本発明が解決しようとする課題は、蓄熱材一体型ハニカム吸着体における吸着材と蓄熱材との間の熱の授受性能を向上し、吸着材の吸着・脱離性能を向上することのできる蒸発燃料処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、特許請求の範囲の欄に記載された構成を要旨とする蒸発燃料処理装置により解決することができる。
すなわち、特許請求の範囲の請求項1に記載された蒸発燃料処理装置によると、蓄熱材一体型ハニカム吸着体とケーシングとの間が断熱部材により断熱される。これにより、両者間の熱の授受が遮断される。したがって、蓄熱材一体型ハニカム吸着体における吸着材と蓄熱材との間の熱の授受性能を向上し、吸着材の吸着・脱離性能を向上することができる。
【0006】
また、特許請求の範囲の請求項2に記載された蒸発燃料処理装置によると、断熱部材が弾性を有する。したがって、蓄熱材一体型ハニカム吸着体がケーシングに対して断熱部材を利用して弾性的に保持されるため、蓄熱材一体型ハニカム吸着体の振動、衝撃等の外力による欠損を防止することができる。
【0007】
また、特許請求の範囲の請求項3に記載された蒸発燃料処理装置によると、蓄熱材一体型ハニカム吸着体とケーシングとの対向周面間がシール部材によりシールされる。これにより、蓄熱材一体型ハニカム吸着体とケーシングとの対向周面間を蒸発燃料を含むガスが通り抜けることが阻止されるため、蒸発燃料を含むガスが蓄熱材一体型ハニカム吸着体の多数の通気孔内に全面的に通過される。したがって、蓄熱材一体型ハニカム吸着体における吸着材と蓄熱材との間の熱の授受性能を向上し、吸着材の吸着・脱離性能を向上することができる。
【0008】
また、特許請求の範囲の請求項4に記載された蒸発燃料処理装置によると、シール部材が弾性を有する。したがって、蓄熱材一体型ハニカム吸着体がケーシングに対してシール部材を利用して弾性的に保持されるため、蓄熱材一体型ハニカム吸着体の振動、衝撃等の外力による欠損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
【実施例】
【0010】
[実施例1]
本発明の実施例1を説明する。本実施例の蒸発燃料処理装置は、車両に搭載されるものである。説明の都合上、蒸発燃料処理装置に用いられる蓄熱材一体型ハニカム吸着体について説明した後、蒸発燃料処理装置を説明することにする。なお、図1は蓄熱材一体型ハニカム吸着体を示す斜視図である。
図1に示すように、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10は、円柱状をなしかつ軸方向に延びる多数の通気孔12を有するハニカム構造をなしている。蓄熱材一体型ハニカム吸着体10は、次の製造方法1又は製造方法2によって製造される。なお、図2は蓄熱材一体型ハニカム吸着体の製造方法1を示す模式図、図3は同じく製造方法2を示す模式図である。
【0011】
[製造方法1]
図2に示すように、粉末状あるいは顆粒状の蓄熱材14が用意される。この蓄熱材14は、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質15をマイクロカプセル16に封入したものである。マイクロカプセル16内に封入される相変化物質15としては、固体−液体間の相変化に伴って潜熱の吸収及び放出を生じうる化合物であればよい。相変化物質15は温度が融点以下で固体となり、融点以上で液体となる物質である。また、本実施例では、相変化物質15として、融点が18℃のヘキサデカンをマイクロカプセル16内に封入した蓄熱材14と、相変化物質15として融点が32℃のノナデカンをマイクロカプセル16内に封入した蓄熱材14とが併用される。また、マイクロカプセル16の材料としては、樹脂材料、例えばメラミン樹脂が用いられている。また、蓄熱材14の平均粒子径14dは、例えば、約3.5μmである。
【0012】
前記蓄熱材14は、バインダ18と混合してスラリーとし、そのスラリーを造粒機により成形することにより、蓄熱材14がバインダ18で被覆された成型蓄熱材20が形成される。このとき、バインダ18としては、熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂が用いられる。また、成型蓄熱材20の平均粒子径20dは、例えば、φ5,5〜6.5μmである。
【0013】
次に、前記成型蓄熱材20と吸着材22を混錬してスラリーとし、そのスラリーを押出成型機等により押出成形することにより、ハニカム構造の蓄熱材一体型ハニカム吸着体10(符号、Aを付す)が形成される。このとき、吸着材22としては、蒸発燃料を吸着及び脱離可能な粉末状の活性炭が用いられる。このとき、成型蓄熱材20のバインダ18により蓄熱材14と吸着材22とが結合される。
【0014】
[製造方法2]
図3に示すように、前記製造方法1と同様、相変化物質15をマイクロカプセル16に封入した蓄熱材14とバインダ18を混合してスラリーとし、そのスラリーを造粒機により成形することにより、成型蓄熱材20が形成される。
【0015】
一方、ハニカム構造のハニカム吸着体24が用意される。ハニカム吸着体24は、吸着材とバインダとセラミック等の熱容量の高い材料とを混錬してスラリーとし、そのスラリーを押出成型機等により成形することにより形成されている。この吸着材としては、蒸発燃料を吸着及び脱離可能な粉末状の活性炭が用いられる。また、ハニカム吸着体24は、単品で取り扱える大きさを有する。
【0016】
そして、ハニカム吸着体24の外周面、両端面及び通気孔12の内壁面に対して前記成型蓄熱材20が塗布されることにより、ハニカム構造の蓄熱材一体型ハニカム吸着体10(符号、Bを付す)とされる。この成型蓄熱材20(B)は、ハニカム吸着体24に対して吸着材22による蒸発燃料の吸着性能及び離脱性能をほとんど損なうことがないように塗布されるものとする。このとき、成型蓄熱材20のバインダ18により蓄熱材14とハニカム吸着体24とが結合される。
【0017】
前記製造方法1により製造された蓄熱材一体型ハニカム吸着体10(A)、及び、前記製造方法2により製造された蓄熱材一体型ハニカム吸着体10(B)は、いずれも蒸発燃料を吸着及び脱離可能な吸着材、及び、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質15をマイクロカプセル16に封入した蓄熱材14(図2及び図3参照)を有する。
【0018】
次に、蒸発燃料処理装置を説明する。なお、図4は蒸発燃料処理装置を一部破断して示す側面図である。
図4に示すように、蒸発燃料処理装置30は、ケース32を備える。ケース32は、その主体をなす主ケース体34と、その主ケース体34と別体をなす副ケース体36と、主ケース体34と副ケース体36とを連通する連通管38とにより構成されている。なお、説明の都合上、ケース32の上下左右は、図4における上下左右に準じるものとする。
【0019】
前記主ケース体34は、中空ボックス状に形成されている。主ケース体34は、上面を閉鎖しかつ下面を開口するケース本体40と、ケース本体40の下面開口部を閉鎖する蓋板41とにより構成されている。主ケース体34の上面には、タンクポート43、パージポート44及び接続ポート45が設けられている。タンクポート43には、燃料タンクの気相部に連通する蒸発燃料ガス通路(図示しない)が接続される。燃料タンク内で発生した蒸発燃料を含むガス(「蒸発燃料ガス」という)は、蒸発燃料ガス通路及びタンクポート43を介して主ケース体34内に導入される。なお、蒸発燃料ガスは、蒸発燃料(主に炭化水素化合物)と空気との混合気からなる。
【0020】
前記パージポート44には、エンジンの吸気管に連通するパージ通路(図示しない)が接続される。そのパージ通路の途中にはパージ制御弁(図示しない)が設けられており、パージ制御弁をエンジン運転中に制御装置(図示しない)により制御することにより、蒸発燃料の脱離に係るパージ制御が行われるようになっている。また、前記接続ポート45には、前記連通管38の一端部が接続されている。
【0021】
前記主ケース体34内には、図示はしないが、活性炭からなる粒状の吸着材が充填されている。吸着材は、タンクポート43から主ケース体34内に導入された蒸発燃料ガスに含まれる蒸発燃料を脱離可能に吸着するものであり、造粒炭、破砕炭等により構成されている。
【0022】
前記副ケース体36は、中空円筒状のケース筒部47と、そのケース筒部47の上面開口部を閉鎖する蓋板部48とを有している。蓋板部48には、副ケース体36内に連通する接続ポート50が設けられている。接続ポート50には、前記連通管38の他端部が接続されている。これにより、主ケース体34内と副ケース体36内とが連通管38を介して連通されている。また、副ケース体36の下端部には、口径を小さくする大気ポート51が設けられている。大気ポート51には、大気側に連通する大気通路(図示しない)が接続される。また、副ケース体36の下端部には、大気ポート51の周辺部を取り囲むカバー筒部52が設けられている。また、副ケース体36は、前記主ケース体34の側面に装着されている。また、ケース筒部47は、大気ポート51側の内径より蓋板41側の内径を大きくする緩やかなテーパ状に形成されている。ケース筒部47内に、前記蓄熱材一体型ハニカム吸着体10が収容されている。なお、副ケース体36は、本明細書でいう「ケーシング」に相当する。
【0023】
前記副ケース体36のケース筒部47内には、前記蓄熱材一体型ハニカム吸着体10が一対の保持部材54,56により弾性的に保持されている。なお、下側に配置された第1の保持部材54は、前記大気ポート51の上端部に設けられた通気性を有するフィルター58に対して近接又は当接されている。また、上側に配置された第2の保持部材56上には、リング状をなす押さえ部材60が同心状に載置されている。また、蓋板部48は、押さえ部材60上にコイルスプリングからなる押さえスプリング62を同心状に配置した後、ケース筒部47の上面開口部に対して溶着、接着等により装着されている。押さえスプリング62は、押さえ部材60を介して、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10を弾性的に押圧している。なお、両保持部材54,56による蓄熱材一体型ハニカム吸着体10の保持構造については後で説明する。
【0024】
次に、前記蒸発燃料処理装置30(図4参照)の動作について説明する。燃料タンク内で発生した蒸発燃料ガスは、タンクポート43を介して主ケース体34内に導入される。その蒸発燃料ガスは、主ケース体34内の吸着材の相互間の隙間を通り抜けた後、接続ポート45、連通管38、接続ポート50を経由して、副ケース体36内に流入する。その蒸発燃料ガスは、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10の多数の通気孔12(図1参照)内を通り抜けた後、大気ポート51から大気側へ放出される。その際、蒸発燃料ガス中の蒸発燃料は、主ケース体34内の吸着材に吸着され、残りが副ケース体36内の蓄熱材一体型ハニカム吸着体10に吸着される。これにより、最終的には、燃料成分を含まない空気が大気ポート51から大気側へ放出される。また、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10において吸着材22に蒸発燃料が吸着されることにより、吸着材22の温度が上昇するが、吸着材22と蓄熱材14との間の熱の授受により吸着材22の温度上昇が抑制されるため、吸着材22の吸着性能が向上される。
【0025】
一方、エンジン運転中のパージ制御の際、図示しない制御装置によりパージ制御弁が開放されると、吸気管内の負圧がパージポート44を介して主ケース体34内に導入されることにより、大気中の空気が副ケース体36の大気ポート51から副ケース体36内に吸入される。その空気は、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10の多数の通気孔12内を通り抜け、連通管38を経由して、主ケース体34内の吸着材の相互間の隙間を通り抜けた後、パージポート44から吸気管内へパージされる。その際、吸着材22及び蓄熱材一体型ハニカム吸着体10から蒸発燃料が脱離されて吸気管内に流入される。また、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10において吸着材22から蒸発燃料が離脱されることにより、吸着材22の温度が低下するが、吸着材22と蓄熱材14との間の熱の授受により吸着材22の温度低下が抑制されるため、吸着材22の離脱性能が向上される。
【0026】
次に、前記蒸発燃料処理装置30における蓄熱材一体型ハニカム吸着体10の保持構造について説明する。なお、図5は図4のV部を示す断面図、図6は図4のVI部を示す断面図である。また、第1の保持部材54と第2の保持部材56とは基本的には同一構成であるから、第1の保持部材54について説明し、第2の保持部材56については第1の保持部材54と同一部位に同一符号を付すことによりその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0027】
図5に示すように、第1の保持部材54は、円環状に形成されている。第1の保持部材54は、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10の外周面に接触する外周面保持部64、及び、該蓄熱材一体型ハニカム吸着体10の端面に接触する端面保持部65を有する断面L字状に形成されている。また、保持部材54の内周部には、前記蓄熱材一体型ハニカム吸着体10の外周面と端面とのなす隅角部分に対応する断面L字状の逃がし凹部66が設けられている。逃がし凹部66は、保持部材54の全周に亘って連続している。また、外周面保持部64の自由端部(図5において上端部)には、テーパ円筒状のリップシール部67が形成されている。リップシール部67は、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10の挿入方向と反対方向(図5において上方)へ向かって外径を次第に大きくするリップ状に形成されている。また、第1の保持部材54は、ゴム状弾性材により形成されており、弾性及び断熱性を有する。
【0028】
また、第2の保持部材56は、前記蓄熱材一体型ハニカム吸着体10を間にして前記第1の保持部材54と上下対称状をなすように配置されている(図5及び図6参照)。また、第2の保持部材56のリップシール部67は、外周面保持部64の外周面から、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10の挿入方向と反対方向(図6において上方)へ向かって外径を次第に大きくするテーパ状に形成されている。
【0029】
次に、前記副ケース体36のケース筒部47内に前記蓄熱材一体型ハニカム吸着体10を挿入するに際して、該蓄熱材一体型ハニカム吸着体10の挿入側(図4において下側)の端部には、第1の保持部材54が弾性的に嵌着される(図5参照)。また、該蓄熱材一体型ハニカム吸着体10の挿入側と反対側(図4において上側)の端部には、第2の保持部材54が弾性的に嵌着される(図6参照)。
【0030】
前記両保持部材54,56を装着した蓄熱材一体型ハニカム吸着体10は、前記副ケース体36のケース筒部47内に対して、前記蓋板部48の取付けに先立って挿入される。すると、図5に示すように、第1の保持部材54の外周面保持部64の外周面とケース筒部47の内周面との間に隙間が形成される状態で、リップシール部67の大径側端部がケース筒部47の内周面に弾性的に接触する。また、図6に示すように、第2の保持部材54の外周面保持部64の外周面とケース筒部47の内周面との間に隙間が形成される状態で、リップシール部67の大径側端部がケース筒部47の内周面に弾性的に接触する。これにより、ケース筒部47内に蓄熱材一体型ハニカム吸着体10が両保持部材54,56を介して弾性的に保持される。これとともに、ケース筒部47と蓄熱材一体型ハニカム吸着体10との対向周面間が両保持部材54,56によって弾性的にシールされる。なお、第1の保持部材54の端面保持部65は、前記フィルター58に対して近接又は当接される(図5参照)。また、第2の保持部材56の端面保持部65上に前記押さえ部材60の下端面が当接される(図6参照)。なお、第1の保持部材及び第2の保持部材は、本明細書でいう「断熱部材」、「シール部材」に相当する。
【0031】
前記した蒸発燃料処理装置30によると、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10と副ケース体36(詳しくはケース筒部47)との間が断熱部材である両保持部材54,56により断熱される。これにより、両者間の熱の授受が遮断される。したがって、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10における吸着材22と蓄熱材14との間の熱の授受性能を向上し、吸着材22の吸着・脱離性能を向上することができる。
【0032】
また、両保持部材54,56が弾性を有する。したがって、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10が副ケース体36のケース筒部(ケーシング)47に対して両保持部材54,56を介して弾性的に保持されるため、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10の振動、衝撃等の外力による欠損を防止することができる。
【0033】
また、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10と副ケース体36のケース筒部(ケーシング)47との対向周面間がシール部材である両保持部材54,56によりシールされる。これにより、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10と副ケース体36のケース筒部(ケーシング)47との対向周面間を蒸発燃料ガスが通り抜けることが阻止される。このため、蒸発燃料ガスが蓄熱材一体型ハニカム吸着体10の多数の通気孔12内に全面的に通過される。したがって、蓄熱材一体型ハニカム吸着体10における吸着材22と蓄熱材14との間の熱の授受性能を向上し、吸着材22の吸着・脱離性能を向上することができる。
【0034】
[実施例2]
本発明の実施例2を説明する。本実施例は、前記実施例1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。なお、図7は蒸発燃料処理装置30を一部破断して示す側面図である。
図7に示すように、本実施例の蒸発燃料処理装置(符号、110を付す)は、前記実施例1(図4参照)における副ケース体36及び連通管38を省略し、前記主ケース体34のケース本体40における接続ポート45を含む側部に、前記実施例1における副ケース体36のケース筒部47と同一構成をなすケース筒部47(同一符号を付す)が形成されている。大気ポート51及びカバー筒部52はケース本体40の上面側に向けられ、また、ケース筒部47の開口側(蓋板部48側)の端部は、蓋板41に対して所定の間隔を隔てて開口されている。したがって、ケース筒部47内は、蓋板41側の隙間を介してケース本体40内と連通している。このケース筒部47内に、前記実施例1と同様、前記蓄熱材一体型ハニカム吸着体10が収容されかつ両保持部材54,56を介して弾性的に保持されている。なお、主ケース体34は、本明細書でいう「ケーシング」に相当する。
【0035】
前記ケース筒部47の下方寄りの中央部内には、前記実施例1における押さえ部材60に代えて、多孔を有する押さえ部材112が装着されている。押さえ部材112は、前記押さえ部材60と同様、第2の保持部材56の端面保持部65(図6参照)に当接している。さらに、ケース筒部47の下面開口部には、通気性を有する押圧プレート114がそれぞれ水平状態で上下動可能に嵌合されている。押圧プレート114と蓋板41との間には、各押圧プレート114を弾性的に押し上げるコイルスプリングからなる押上げスプリング115が介在されている。また、押さえ部材112と押圧プレート114との間には、活性炭からなる粒状の吸着材118が充填されている。なお、押圧プレート114上には、通気性を有するフィルター116が重合されている。
【0036】
[実施例3]
本発明の実施例3を説明する。本実施例は、前記実施例1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。なお、図8は蒸発燃料処理装置を示す構成図である。
図8に示すように、本実施例の蒸発燃料処理装置(符号、120を付す)は、エンジンの吸気管122におけるスロットルバルブ124の上流側の吸気通路内に、前記実施例1と同様、前記蓄熱材一体型ハニカム吸着体10が収容されかつ両保持部材54,56を介して弾性的に保持されている。吸気管122の上流側端部にはエアクリーナ126が配置されている。また、吸気管122のエンジン側端部には、インジェクタ(燃料噴射弁)128が配置されている。本実施例の蓄熱材一体型ハニカム吸着体10は、エンジン停止時において、インジェクタ128のノズルから漏れ出る蒸発燃料を吸着し、その蒸発燃料がエンジン運転時の吸気負圧により離脱される。なお、吸気管122は、本明細書でいう「ケーシング」に相当する。
【0037】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、両保持部材54,56は、少なくとも断熱性あるいはシール性のみ有するものであればよい。また、保持部材54,56は、2個に限らず、1個あるいは3個以上設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1に係る蓄熱材一体型ハニカム吸着体を示す斜視図である。
【図2】蓄熱材一体型ハニカム吸着体の製造方法1を示す模式図である。
【図3】蓄熱材一体型ハニカム吸着体の製造方法2を示す模式図である。
【図4】蒸発燃料処理装置を一部破断して示す側面図である。
【図5】図4のV部を示す断面図である。
【図6】図4のVI部を示す断面図である。
【図7】実施例2に係る蒸発燃料処理装置を一部破断して示す側面図である。
【図8】実施例3に係る蒸発燃料処理装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0039】
10 蓄熱材一体型ハニカム吸着体
12 通気孔
14 蓄熱材
15 相変化物質
16 マイクロカプセル
22 吸着材
30 蒸発燃料処理装置
34 主ケース体
36 副ケース体
54,56 保持部材(断熱部材、シール部材)
110 蒸発燃料処理装置
120 蒸発燃料処理装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発燃料を吸着及び脱離可能な吸着材、及び、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材を有するハニカム構造の蓄熱材一体型ハニカム吸着体と、
前記蓄熱材一体型ハニカム吸着体を、該ハニカム吸着体の多数の通気孔内に蒸発燃料を含むガスを流通可能に収容するケーシングと、
前記ケーシングと前記蓄熱材一体型ハニカム吸着体との間を断熱する断熱部材と
を備えたことを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸発燃料処理装置であって、
前記断熱部材が弾性を有することを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
蒸発燃料を吸着及び脱離可能な吸着材、及び、温度変化に応じて潜熱の吸収及び放出を生じる相変化物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材を有するハニカム構造の蓄熱材一体型ハニカム吸着体と、
前記蓄熱材一体型ハニカム吸着体を、該ハニカム吸着体の多数の通気孔内に蒸発燃料を含むガスを流通可能に収容するケーシングと、
前記蓄熱材一体型ハニカム吸着体と前記ケーシングとの対向周面間をシールするシール部材と
を備えたことを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蒸発燃料処理装置であって、
前記シール部材が弾性を有することを特徴とする蒸発燃料処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−127080(P2010−127080A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299316(P2008−299316)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】