説明

蒸着アルミニウム表面のクロムフリー不動態化方法

基材上の蒸着アルミニウム層を不動態化するための方法であって、その表面上に蒸着アルミニウムを含む基材を提供する工程;上記基材の上記表面を、ヘキサフルオロジルコネートを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物で処理する工程;および上記処理された表面を水でリンスする工程を含む。基材上の蒸着アルミニウム層を不動態化するための方法であって、基材上にアルミニウムの層を蒸着する工程;上記蒸着アルミニウムを有する上記基材を、ヘキサフルオロジルコネートを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物で処理する工程;および上記処理された基材を水でリンスする工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄金属、他の金属および非金属のような基材に付与された蒸着アルミニウム表面の不動態化に関する。より詳細には、本発明は、鋼基材上の蒸着アルミニウムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気めっきされた金属または乾燥性有機コーティングのような次の層の付与前に、金属部のような基材を不動態化するために、クロムが広く用いられてきた。しかしながら、3価クロムから得られた比較的安全な不動態化物でさえ、(a)廃電気電子機器(WEEE)の回収、再利用およびリサイクル、(b)電子機器中の有害物質の使用の制限(RoHS)、および/または(c)自動車、電気器具およびその他の装置を取り扱う使用済み車両(ELV)向けの要求に関する規制と抵触し得る。このように、例としてクロムを用いる場合、3価クロムが6価クロムより安全であっても、両クロム源ともクロム含有物品の形成を生じ、これは重金属でありおよび、特に、上述の規制を受ける。
【0003】
したがって、クロムベースの不動態化物をより有害でない物質で置き換えることが長らく望まれてきた。
【0004】
1つのそのようなより有害でない物質はアルミニウムである。しかしながら、アルミニウムはそれ自体いくぶん活性な金属であり、そして、下にある、鉄のようなより活性のある金属に保護を提供し得る一方で、それ自体が腐食される。さらに、蒸着アルミニウム不動態化層は一般的にかなり薄く、上記アルミニウムの少量の腐食であっても、酸化アルミニウムとその下の基材とが接触し得、よって、上記基材を絶縁および保護する努力を妨げる。容易に理解されるように、もし、不動態化物を提供するために付与された層がそれ自体腐食すれば、所望されるような不動態化物として満足に機能し得ない。
【0005】
したがって、蒸着アルミニウム表面に、改善された不動態化物を提供することが長らく望まれてきたが、この長らく望まれた目標は、多数の試みにもかかわらず未だ達成されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、蒸着アルミニウム表面に、改善された不動態化物を提供するという、長年の課題への解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このように、1つの実施形態では、本発明は、基材上の蒸着アルミニウム層を不動態化するための方法であって:
その表面上に蒸着アルミニウムを含む基材を提供する工程;
上記基材の上記表面を、ヘキサフルオロジルコネートを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物で処理する工程;および
上記処理された表面を水でリンスする工程、を含む方法を含む。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、基材上の蒸着アルミニウム層を不動態化するための方法であって:
基材上にアルミニウムの層を蒸着する工程;
上記蒸着アルミニウムを有する上記基材を、ヘキサフルオロジルコネートを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物で処理する工程;および
上記処理された基材を水でリンスする工程、を含む方法を含む。
【0009】
1つの実施形態では、上述の方法のいずれかにおいて、ヘキサフルオロジルコネートを含む上記クロムフリーの組成物は、マグネシウム塩、ニッケル塩、亜鉛塩またはマグネシウム塩、ニッケル塩および亜鉛塩のいずれか2以上の組み合わせをさらに含む。
【0010】
1つの実施形態では、上述の方法のいずれかにおいて、上記蒸着アルミニウムは、周囲雰囲気での分解温度を有する金属含有前駆体の分解によって上記表面に付与され、上記基材が上記前駆体の上記分解温度より高い温度で維持される一方、上記周囲雰囲気が上記前駆体の上記分解温度より低い温度で維持される。
【0011】
1つの実施形態では、上述の方法のいずれかにおいて、上記蒸着アルミニウムは、化学蒸着、イオン蒸着および物理蒸着の1または2以上の組み合わせによって上記表面に付与される。
【0012】
1つの実施形態では、上述の方法のいずれかにおいて、上記基材は、上記アルミニウムが蒸着された鉄金属を含む。1つの実施形態では、上記鉄金属が鋼である。
【0013】
1つの実施形態では、上述の方法のいずれかにおいて、上記水性のクロムフリーの組成物は、添加亜鉛イオンを含まない。
【0014】
1つの実施形態では、上述の方法のいずれかにおいて、上記水性のクロムフリーの組成物は、添加アルカリ金属イオンを含まない。
【0015】
1つの実施形態では、上述の方法のいずれかにおいて、上記方法は、上記処理されたアルミニウムの層を覆う少なくとも1つのさらなる層を析出させる工程をさらに含み、上記さらなる層が金属層または有機コーティングの1以上を含む。
【0016】
1つの実施形態では、上述の方法のいずれかにおいて、上記ヘキサフルオロジルコネートは、ヘキサフルオロジルコニウム酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸アンモニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸第4級アンモニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸アルカリ金属、ヘキサフルオロジルコニウム酸アルカリ土類金属、またはヘキサフルオロジルコニウム酸遷移金属の1またはいずれか2以上の混合物として提供される。
【0017】
さらなる詳細は、以下の詳細な記載にて提供し、当業者が過度の実験を要することなく、本発明を製造および使用することができる程度に、本発明ならびに本発明を製造および使用する様式および方法が記載された明細書を提供し、ならびに本発明者らによって考慮される、本発明を実施するための最良の形態を明らかにする。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本開示および請求の範囲の全体を通じて、範囲および比率の数値限定は組み合わされ得、そして全ての範囲は、単位増加量にて全ての部分範囲を含むとみなされる。
【0019】
本開示および請求の範囲の全体を通じて、選択肢の列挙にて、本開示は、それぞれ列挙された選択肢と他の列挙中のそれぞれの選択肢とのあらゆる可能性のある組み合わせを含み、よってあらゆる可能性のある選択肢のすべての組み合わせが、本発明の開示の範囲内であるとみなされる。さらに、列挙された選択肢の群のいかなる個々のメンバーも上記列挙から削除されてもよく、そしてそのような削除から生じる全ての部分的組み合わせは、本発明の開示の範囲内である。
【0020】
基材
本発明に従って取り扱われる部分は、代表的には、ファスナー、例えば、ボルト、ねじ、ナット、ほかのタイプの同様の固定要素、ヒンジ、コネクター、フックタイプのファスナーなど、ならびにドア、キャビネット、キッチン、商業、産業および農業のハードウェアおよびフィッティングを含む全ての種類のハードウェア、取り付け具およびフィッティングである。
【0021】
上述に加えて、上記実施形態のいずれかに関して開示された方法工程のいずれかの前に、基材は種々の公知の方法によって洗浄され得る。例えば、基材は脱脂、洗浄、乾燥、酸洗浄などがなされ得る。酸洗浄は、例えば、ミネラル無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、およびフッ化水素酸)を個別にまたは混合物としてのいずれかで使用することによる、任意の周知の酸洗浄方法によって実施され得る。
【0022】
蒸着方法
アルミニウム層が基材上に蒸着される方法は、例えば、化学蒸着(CVD)、イオン蒸着(IVD)、および/または物理蒸着(PVD)の1または2以上の組み合わせを含む、任意の公知の蒸着方法を含み得る。
【0023】
当該分野で知られるように、CVD方法は、例えば、低圧CVD(LPCVD)、プラズマCVD(PECVD)、プラズマアシストCVD(PACVD)、遠隔プラズマ(RPECVD)、原子層CVD(ALCVD)、熱線CVD(HWCVD−触媒CVD(Cat−CVD)または熱フィラメントCVD(HFCVD)としても知られる)、有機金属化学蒸着(MOCVD)、ハイブリッド物理−化学蒸着(HPCVD)、急速熱CVD(RTCVD)、蒸気相エピタキシー(VPE)、および電子サイクロトロン共鳴化学蒸着(ECR・CVD)を含む。
【0024】
IVD方法は、当該分野で周知であり、そして真空約6×10−3トルにて実施され得る。高い負電位が、コーティングされる金属表面に印加される。正に荷電されたアルゴンイオンは連続的にこれらの表面を照射し、コンタミナントおよび水蒸気を取り除く。金属(例えば、アルミニウム)は蒸発され、金属表面上で負電荷によって引きつけられる。1つの実施形態では、(直接)イオンビーム蒸着(IBD)がアルミニウムの蒸着に用いられる。
【0025】
当該分野で知られるように、PVD方法は、例えば、蒸発性蒸着、電子ビーム物理蒸着、スパッタ蒸着、直流アーク蒸着、陰極アーク蒸着、フィルタ陰極アーク(FCA)蒸着、パルスレーザー蒸着、レーザーアブレーションおよびDC/RFプラナマグネトロンスパッタリングを含む。
【0026】
いくつかの蒸着方法に関する追加情報は、例えば、ASM Handbook、Surface Engineering、第5巻、“Vacuum Deposition,Reactive Evaporation,and Gas Evaporation”、ASM International、1999年、第556〜571頁にて見出され得る。
【0027】
CVD、IVDおよび/またはPVDの任意の公知の方法が、基材上にアルミニウムの層を蒸着させるために、本発明に従って使用され得る。さらに、これらの方法のいずれかが、本発明の範囲内のこれらの方法の任意の他の方法と、例えば、順次、組み合わされ得る。
【0028】
1つの実施形態では、蒸着方法は、MOCVD方法であり、例えば、米国特許第7,387,815号公報(“US7387815”)に開示され、この開示はさらなる詳細のために参考にされ得、そして参照によって本明細書中に援用される。US7387815に開示された方法は、金属含有前駆体の分解を通じて、基材上に実質的に純粋なコンフォーマル金属層を析出させる。この析出方法の間、基材が前駆体の分解温度より高い温度にて維持される一方、周囲雰囲気が前駆体の分解温度より低い温度で維持される。前駆体は輸送媒体(例えば、蒸気相)内に分散される。前駆体は、例えば、金属アルキル化合物であり得る。アルミニウムに関して、開示された前駆体は、液体金属アルキル化合物、例えば、トリメチルアルミニウム、水素化ジメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、または式RAl(ここで、R、R、およびRは分岐、直鎖、もしくは環状ヒドロカルビルリガンドまたは水素であり、そしてR、R、およびR中の炭素原子の数はCから約C12まで及ぶ)の他のトリアルキルアルミニウムもしくは水素化ジアルキルアルミニウム分子を含む。選択されたリガンドは、二官能性であり、および2個または3個のアルミニウム原子に結合するもの、例えばブタジエニルまたはイソプレニルをまた含み得る。選択された液体/蒸気前駆体組成物は上述の種のいくつかまたは全ての混合物を含有し得る。
【0029】
US7387815には、好ましくは、上述のようなR、R、およびRは、エチル、イソブチル、および水素から選択され、最も好ましい化合物がトリイソブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムまたはその2つの混合物であることが明示されている。
【0030】
US7387815には、輸送媒体は、約60℃から約200℃を超える範囲の沸点を伴う種々の非反応性溶媒中および約5から約95重量%のアルキルアルミニウム濃度にて、アルキル金属の希釈溶液を含有し得ることが開示されている。
【0031】
US7387815には、所望の温度に基材を加熱するために、電磁誘導またはマイクロ波、UV、もしくはIRエネルギーでの照射によって基材の加熱が誘導される間接的な「非接触」の加熱方法を含む、種々の方法が用いられ得ることがさらに開示されている。代わりの実施形態では、基材内に電流を誘導して熱を生じることによる、電磁誘導のような誘導加熱方法がある。
【0032】
1つの実施形態では、アルミニウムは、US5191099(その開示はさらなる詳細のために参考にされ得、参照によって本明細書中に援用される)に開示されるように、ジメチルエチルアミンアラン、[(CH(CHCH)N]AlH、として蒸着方法に提供される。
【0033】
別の実施形態では、上記アルミニウムは、US5880303(その開示はさらなる詳細のために参考にされ得、そして参照によって本明細書中に援用される)に開示されるように、アミド/アミンアラン錯体、HAl[(R)(R)NCNR](R、R、およびRはそれぞれ独立してHまたはC〜Cアルキルである)として蒸着方法に提供される。
【0034】
他の実施形態では、アルミニウムは、有機金属化合物(例えば、US6121443、US6143357またはUS6500250(その各々の開示はさらなる詳細のために参考にされ得、参照によって本明細書中に援用される)に開示されるもの)として蒸着方法に提供される。
【0035】
基材上の析出アルミニウムの不動態化
基材上の蒸着アルミニウム層を不動態化するための方法は、層および基材をヘキサフルオロジルコネートの塩またはヘキサフルオロジルコネートの塩とともに(a)マグネシウム塩、(b)ニッケル塩、(c)亜鉛塩もしくは(d)マグネシウム塩、ニッケル塩および亜鉛塩のいずれか2以上の組み合わせのどちらかを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物で処理する工程を含む。水性の組成物は、例えば、噴霧、ディッピング、浸漬、大量のバレル処理、ブラッシング、ワイピングまたは固体基材に水性の液体を付与するためのいずれかの他の適切な方法を含む、任意の適切な方法によって、基材に付与され得る。バレルまたは他のバルク装置内のようなバルク加工工程にて、蒸着アルミニウムが付与される場合、1つの実施形態では、本発明に従う方法の続く工程、すなわち、水性の組成物で処理する工程もまた、同じバレルまたはバルク装置中で実施されてもよい。
【0036】
ヘキサフルオロジルコネートは、酸型(HZrF)または塩としてのどちらかにて提供され得、ここでヘキサフルオロジルコネート塩のカチオン部分が、例えば、アンモニウムイオン、第4級アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたは遷移金属イオンの1つ以上であり得る。このように、ヘキサフルオロジルコネートは、ヘキサフルオロジルコニウム酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸アンモニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸第4級アンモニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸アルカリ金属、ヘキサフルオロジルコニウム酸アルカリ土類金属、またはヘキサフルオロジルコニウム酸遷移金属の1または2以上の混合物の形態にて、水性の実質的にクロムフリーの組成物に提供され得る。便宜上、本明細書中にて、ヘキサフルオロジルコネートは単にヘキサフルオロジルコネートと呼ばれ、これは、酸の形態としてまたは1以上の具体的な塩形態として特に具体的に特定されなければ、塩の形態のいずれかだけでなく酸形態をも含むとみなす。1つの実施形態では、第4級アンモニウムイオンは独立して、4つのC〜Cアルキル基を含む。
【0037】
1つの実施形態では、ヘキサフルオロジルコネートを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物は、1リットルあたり約0.001mol(M)から約0.25Mのヘキサフルオロジルコネートを含む。別の実施形態では、水性の組成物は、約0.004Mから約0.1Mのヘキサフルオロジルコネートを含む。別の実施形態では、上記水性の組成物は約0.008Mから約0.05Mのヘキサフルオロジルコネートを含む。別の実施形態では、上記水性の組成物は約0.008Mから約0.012Mのヘキサフルオロジルコネートを含む。別の実施形態では、上記水性の組成物は約0.02M、および1つの実施形態では、約0.0196Mのヘキサフルオロジルコネートを含む。
【0038】
1つの実施形態では、水性の実質的にクロムフリーの組成物が、(a)マグネシウム塩とともにヘキサフルオロジルコネートの塩を含む場合、上記組成物は、1リットルあたり約0.01mol(M)から約1Mの範囲の濃度でマグネシウム塩を含む。別の実施形態では、上記組成物は、1リットルあたり約0.03mol(M)から約0.2Mの範囲の濃度でマグネシウム塩を含む。別の実施形態では、上記組成物は、1リットルあたり約0.05mol(M)から約0.1Mの範囲の濃度でマグネシウム塩を含む。別の実施形態では、上記組成物は、1リットルあたり約0.06mol(M)から約0.08Mの範囲の濃度でマグネシウム塩を含む。別の実施形態では、上記組成物は、1リットルあたり約0.072mol(M)の濃度でマグネシウム塩を含む。
【0039】
上記マグネシウム塩は、いくつかの適切な対イオンとともに提供され得、および1つの実施形態では、硝酸マグネシウムとして提供される。他の適切な対イオンとしては、例えば、硫酸イオン、リン酸イオン、スルホン酸イオン、ホスホン酸イオン、炭酸イオン等が挙げられる。
【0040】
1つの実施形態では、水性の実質的にクロムフリーの組成物が、(b)ニッケル塩とともにヘキサフルオロジルコネートの塩を含む場合、上記組成物は、1リットルあたり約0.008mol(M)から約1Mの範囲の濃度でニッケル塩を含む。別の実施形態では、上記組成物は、1リットルあたり約0.01mol(M)から約0.2Mの範囲の濃度でニッケル塩を含む。別の実施形態では、上記組成物は、1リットルあたり約0.025mol(M)から約0.1Mの範囲の濃度でニッケル塩を含む。別の実施形態では、上記組成物は、1リットルあたり約0.03mol(M)から約0.05Mの範囲の濃度でニッケル塩を含む。別の実施形態では、上記組成物は、1リットルあたり約0.032mol(M)の濃度でニッケル塩を含む。
【0041】
上記ニッケル塩は、いくつかの適切な対イオンとともに提供され得、そして1つの実施形態では、硫酸ニッケルとして提供される。他の適切な対イオンとしては、例えば、硝酸イオン、リン酸イオン、スルホン酸イオン、ホスホン酸イオン、炭酸イオン等が挙げられる。
【0042】
1つの実施形態では、水性の実質的にクロムフリーの組成物が、(c)亜鉛塩とともにヘキサフルオロジルコネートの塩を含む場合、上記組成物は、1リットルあたり約0.001mol(M)から約1Mの範囲の濃度で亜鉛塩を含む。別の実施形態では、上記組成物は、1リットルあたり約0.01mol(M)から約0.2Mの範囲の濃度で亜鉛塩を含む。別の実施形態では、上記組成物は、1リットルあたり約0.02mol(M)から約0.1Mの範囲の濃度で亜鉛塩を含む。別の実施形態では、上記組成物は、1リットルあたり約0.03mol(M)から約0.05Mの範囲の濃度で亜鉛塩を含む。別の実施形態では、上記組成物は、1リットルあたり約0.04mol(M)の濃度で亜鉛塩を含む。亜鉛塩は、通常、2価の亜鉛塩として提供される。
【0043】
上記亜鉛塩は、いくつかの適切な対イオンとともに提供され得、および1つの実施形態では、硫酸亜鉛として提供される。他の適切な対イオンとしては、例えば、酢酸イオン、リン酸イオン、スルホン酸イオン、ホスホン酸イオン、炭酸イオン等が挙げられる。
【0044】
1つの実施形態では、水性の実質的にクロムフリーの組成物が、(d)マグネシウム塩、ニッケル塩および/または亜鉛塩の組み合わせとともにヘキサフルオロジルコネートの塩を含む場合、上記組成物は、上述の範囲内で上記マグネシウム塩、上記ニッケル塩および/または上記亜鉛塩を含む。1つの実施形態では、水性の実質的にクロムフリーの組成物は、マグネシウム塩およびニッケル塩の組み合わせとともにヘキサフルオロジルコネートの塩を含む場合、上記組成物は、約1:20から約20:1の範囲でのマグネシウム対ニッケルの比、またはこの範囲内でのいずれかの比を含む。1つの実施形態では、上記水性の実質的にクロムフリーの組成物が、マグネシウム塩および亜鉛塩の組み合わせとともにヘキサフルオロジルコネートの塩を含む場合、上記組成物は、約1:20から約20:1の範囲でのマグネシウム対亜鉛の比、またはこの範囲内でのいずれかの比を含む。1つの実施形態では、上記水性の実質的にクロムフリーの組成物は、亜鉛塩およびニッケル塩の組み合わせとともにヘキサフルオロジルコネートの塩を含む場合、上記組成物は、約1:20から約20:1の範囲での亜鉛対ニッケルの比、またはこの範囲内でのいずれかの比を含む。ある実施形態では、水性の実質的にクロムフリーの組成物は、マグネシウム塩、ニッケル塩および亜鉛塩の組み合わせとともにヘキサフルオロジルコネートの塩を含む場合、上記組成物は、上述の範囲でのマグネシウム対ニッケル対亜鉛の比、または上記範囲内でのいずれかの比を含む。
【0045】
水性の実質的にクロムフリーの組成物が、マグネシウム塩、ニッケル塩および/または亜鉛塩の組み合わせとともにヘキサフルオロジルコネートの塩を含む場合、ヘキサフルオロジルコネートは、その対イオンとして、マグネシウム、ニッケルまたは亜鉛のいずれか1つとともに提供され得る。
【0046】
ヘキサフルオロジルコネート、マグネシウム、ニッケルおよび亜鉛それぞれの上記の濃度は、独立して適切に選択され、および上記の範囲内で組み合わされ得る。すなわち、ヘキサフルオロジルコネート、マグネシウム塩、ニッケル塩および/または亜鉛塩の濃度のそれぞれ可能な組み合わせは、たとえそれぞれ可能な組み合わせがそのまま引用されていなくても、上記の開示の範囲内に入るとみなされる。したがって、例えば、ヘキサフルオロジルコネートは上記の範囲の上限またはその付近であり得、組み合わされるマグネシウムイオン、ニッケルイオンおよび亜鉛イオンのいずれか1以上は、同等またはそれより低い濃度であり得る。同様に、ヘキサフルオロジルコネートは上記の範囲の下限またはその付近であり得、組み合わされるマグネシウムイオン、ニッケルイオンおよび亜鉛イオンのいずれか1以上は、同等またはそれより高い濃度であり得る。当業者は、これらの可能な組み合わせの全てが本開示の範囲内であることを容易に認識し、理解しおよび導き出し得る。
【0047】
1つの実施形態では、ヘキサフルオロジルコネートの塩またはヘキサフルオロジルコネートの塩とともに(a)マグネシウム塩、(b)ニッケル塩、(c)亜鉛塩もしくは(d)マグネシウム塩、ニッケル塩および亜鉛塩のいずれか2以上の組み合わせのどちらかを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物は、pHを調整する酸または塩基以外の、他の添加成分を実質的に含まない。したがって、1つの実施形態では、ヘキサフルオロジルコネートの塩またはヘキサフルオロジルコネートの塩とともに(a)マグネシウム塩、(b)ニッケル塩、(c)亜鉛塩もしくは(d)マグネシウム塩、ニッケル塩および亜鉛塩のいずれか2以上の組み合わせのどちらかを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物は、添加界面活性剤、他の添加金属イオン(上記のとおりpH調整に関するものを除く)、添加塩またはバッファのような添加物を含まない。したがって、種々の実施形態では、水性の実質的にクロムフリーの組成物は、ヘキサフルオロジルコネートから本質的になり、ヘキサフルオロジルコネートおよびマグネシウム塩から本質的になり、ヘキサフルオロジルコネートおよびニッケル塩から本質的になりもしくはヘキサフルオロジルコネートおよび亜鉛塩から本質的になり、またはヘキサフルオロジルコネートならびにマグネシウム塩、ニッケル塩および亜鉛塩のいずれか2以上の組み合わせから本質的になる。
【0048】
ヘキサフルオロジルコネートの塩もしくはヘキサフルオロジルコネートの塩とともに(a)マグネシウム塩、(b)ニッケル塩、(c)亜鉛塩もしくは(d)マグネシウム塩、ニッケル塩および亜鉛塩のいずれか2以上の組み合わせのどちらかを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物は、蒸着アルミニウム基材へのその付与の間、撹拌されまたはかき混ぜられ、成分の濃度の均一性を維持しおよびそれにより付与処理の均一性を維持する。
【0049】
1つの実施形態では、ヘキサフルオロジルコネートの塩またはヘキサフルオロジルコネートの塩とともに(a)マグネシウム塩、(b)ニッケル塩、(c)亜鉛塩もしくは(d)マグネシウム塩、ニッケル塩および亜鉛塩のいずれか2以上の組み合わせのどちらかを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物は、約2.5から約6の範囲のpHにて維持され、および別の実施形態では、この組成物は約3から約5の範囲のpHにて維持され、および別の実施形態では、この組成物は約4から約4.5のpHにて維持される。
【0050】
1つの実施形態では、ヘキサフルオロジルコネートの塩またはヘキサフルオロジルコネートの塩とともに(a)マグネシウム塩、(b)ニッケル塩、(c)亜鉛塩もしくは(d)マグネシウム塩、ニッケル塩および亜鉛塩のいずれか2以上の組み合わせのどちらかを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物は、約20℃から約160℃に及ぶ温度にて付与され、および別の実施形態では、この組成物は、約40℃から約70℃に及ぶ温度にて付与される。
【0051】
1つの実施形態では、ヘキサフルオロジルコネートの塩またはヘキサフルオロジルコネートの塩とともに(a)マグネシウム塩、(b)ニッケル塩、(c)亜鉛塩もしくは(d)マグネシウム塩、ニッケル塩および亜鉛塩のいずれか2以上の組み合わせのどちらかを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物は、約1分から約10分に及ぶ時間にて付与され、および別の実施形態では、この組成物は、約2分から約6分に及ぶ時間にて付与され、および別の実施形態では、この組成物は、約4分の時間にて付与される。
【0052】
1つの実施形態では、本発明に従って本明細書中に記載される方法のいずれかにおいて、上記方法は、処理されたアルミニウムの層を覆う少なくと別のさらなる層を析出させる方法をさらに含み得、上記さらなる層が金属層または有機コーティングの1以上を含む。上記さらなる金属層は、電気めっき、無電解めっきまたは浸漬めっきのいずれか1以上によって、当該分野で公知のこれらの方法の任意の適切な1つによって析出させ得る。上記さらなる有機コーティングは、例えば、乾燥性有機コーティング、ペンキ、潤滑剤、シール剤、抗腐食材、または当該分野で公知の任意の他の適切な有機コーティングのような、金属品目のためのいずれかの公知のコーティングであり得る。そのような有機コーティングは、噴霧、ブラッシング、ディッピングなどのような、当該分野で公知のいずれかの方法によって付与され得る。
【実施例】
【0053】
以下の実験は、本発明に従って、ヘキサフルオロジルコネートの塩またはヘキサフルオロジルコネートの塩とともに(a)マグネシウム塩、(b)ニッケル塩、(c)亜鉛塩もしくは(d)マグネシウム塩、ニッケル塩および亜鉛塩のいずれか2以上の組み合わせのどちらかを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物が、基材上の蒸着アルミニウムコーティングに関し、従来のCr+3不動態化物よりも優れていることを示す。蒸着アルミニウムファスナーは、現FUZEBOX(登録商標)テクノロジー(情報および概要に関しては、米国特許第7,387,815号公報に記載されている)を使用するAkzo Nobelから得た。この実験は電気化学的腐食技術を使用し、本方法を適用して、蒸着アルミニウムファスナーおよび合金1100アルミニウムの固体片の両方を処理した場合の迅速および正確な腐食率の比較を得る。以下に示すように、異なる金属の基材上の蒸着アルミニウムと固体アルミニウム合金で形成される基材との間で腐食保護に差異がある。
【0054】
(実施例1)
これらの試験のために、2セットのサンプル基材を調製する。FUZEBOX(登録商標)蒸着アルミニウムとファスナーの第1のセットを、1100系アルミニウム合金片の第2のセットとともに試験する。上記1100アルミニウム合金は99%アルミニウムであり、全てのアルミニウム合金中でアルミニウム含有量が最も高く、このため、比較目的のために、FUZEBOX(登録商標)蒸着アルミニウム(実質的に純粋な(例えば、少なくとも99.9%)アルミニウムであると考えられる)に組成が最も近い。
【0055】
セット1=FUZEBOX(登録商標)コーティングファスナー
セット2=1100アルミニウム(1”×3”片)
【0056】
工程サイクル(両セット)
1.ALKALUME(登録商標)143(50g/L、60℃、5分)
2.リンス
3.Alklean AC-2TM(10%、20℃、2分)
4.水リンス
5.Desmutter NF-2TM(80g/L、20℃、1分)
6.水リンス
7.前処理溶液(25℃、5分)
8.脱イオン水リンス
9.オーブン乾燥(100℃、10分)
【0057】
ALKALUME(登録商標)は、マグネシウムおよびアルミニウム基材を洗浄するのに使用する専売組成物である;Alklean AC-2TMは金属基材を洗浄するのに使用する専売組成物である;Desmutter NF-2TMは金属基材をスマット除去するのに使用する専売組成物である;3つとも全て、Atotech USA(ロックヒル、サウスカロライナ州)から入手できる。
【0058】
蒸着アルミニウムおよびアルミニウム片に付与される組成物
1.未処理、上述のように、アルミニウム表面を洗浄するのみ。
2.INTERLOX(登録商標)338
(NHZrF 5g/L(約1.9g/L Zr)
塩化クロム(CrCl・6HO) 7g/L(約1.37g/L Cr)
3.本発明、ヘキサフルオロジルコネートおよびMgイオン
(NHZrF 5.0g/L(約1.9g/L Zr)
Mg(NO・6HO 6.3g/L(約0.75g/L Mg)
4.本発明、ヘキサフルオロジルコネートおよびZnイオン
(NHZrF 5.0g/L(約1.9g/L Zr)
ZnSO・7HO 9.18g/L(約2.1g/L Zn)
5.本発明、ヘキサフルオロジルコネートおよびNiイオン
(NHZrF 5.0g/L(約1.9g/L Zr)
NiSO・6HO 8.43g/L(約1.9g/L Ni)
【0059】
パネルおよびファスナーを上記溶液中で処理した後、Princeton Applied Research製のPowerCORRソフトウェアを備えたPARSTAT 2273定電位電解装置を使用してそれらを評価する。以下は、腐食試験を実施する条件である:
【0060】
セル定義
電解質溶液:5%NaCl(試料ごと都度調製)
作用電極面積:1.000cm
密度(Al)=2.7000g/mL
当量(Al)=9.000グラム
参照電極:Ag、AgCl/KCl(飽和)(0.197V)
スキャン定義
開始電位:−0.250V(開回路に対し)
最終電位:0.250V(開回路に対し)
ステップ高さ:0.5000mV
スキャン速度:2.00mV/秒
ステップ時間:0.250秒
ポイントの数:1001
腐食計算
【0061】
【数1】

【0062】
mpy=1年あたりのミリインチ
corr=腐食電流
*=各試験で与えられるターフェル定数によって決定される係数
A=面積(cm
d=密度(g/cm
0.13=メートルおよび時間換算係数
【0063】
結果を、以下の表に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
上記実施例により示すように、蒸着アルミニウム表面上で、本発明の実施形態に従ったヘキサフルオロジルコネートは、「洗浄のみ」およびINTERLOX(登録商標)338のような3価クロム不動態化物と比較して、より優れた腐食保護を提供し、およびUS2007/0099022にて開示された方法と比較して、匹敵する腐食保護を提供する。
【0066】
(実施例2)
6つの異なる処理および未処理により、FUZEBOX(登録商標)蒸着アルミニウムとファスナーの第2のセットを本実施例にて試験する。本実施例では、試験基材は、Akzo Nobelから得られる6番のFUZEBOX(登録商標)の蒸着アルミニウムコーティングファスナーである。
【0067】
方法順序
1.ALKALUME(登録商標)143(50g/L、60℃、5分)
2.リンス
3.Alklean AC-2TM(10%、20℃、2分)
4.リンス
5.Desmutter NF-2TM(80g/L、20℃、1分)
6.リンス
7.前処理溶液(48℃、5分)
8.DIリンス
9.オーブン乾燥(100℃、10〜15分)
【0068】
蒸着アルミニウムファスナーに付与される組成物
1.未処理、上述のように、蒸着アルミニウム表面を洗浄するのみ。
2.本発明、ヘキサフルオロジルコネートのみ
(NH)ZrF 5.16g/L
3.本発明、ヘキサフルオロジルコネートおよびマグネシウム
(NH)ZrF 5.16g/L
Mg(NO・6HO 6.285g/L
4.本発明、ヘキサフルオロジルコネートおよびニッケル
(NH)ZrF 5.16g/L
NiSO・6HO 8.43g/L
5.本発明、ヘキサフルオロジルコネートおよび亜鉛
(NH)ZrF 5.16g/L
ZnSO・7HO 9.18g/L
6.本発明、ヘキサフルオロジルコネート、マグネシウムおよびニッケル
(NH)ZrF 5.16g/L
Mg(NO・6HO 6.285g/L
NiSO・6HO 8.43g/L
7.本発明、ヘキサフルオロジルコネート、マグネシウムおよび亜鉛
(NH)ZrF 5.16g/L
Mg(NO・6HO 6.285g/L
ZnSO・7HO 9.18g/L
【0069】
パネルおよびファスナーを上記溶液中で処理した後、Princeton Applied Research製のPowerCORRソフトウェアを備えたPARSTAT 2273定電位電解装置を使用してそれらを評価する。以下は、腐食試験を実施する条件である:
【0070】
機器パラメータ
セル定義
電解質溶液:5%NaCl(試料ごと都度調製)
作用電極面積:約1.50cm
密度: Al=2.7000g/mL
Zr=6.52g/mL
当量: Al=9.00グラム
Zr=22.8グラム
参照電極:Ag、AgCl/KCl(飽和)(0.197V)
スキャン定義
開始電位:−0.250V(開回路に対し)
最終電位:0.250V(開回路に対し)
ステップ高さ:0.5000mV
スキャン速度:2.00mV/秒
ステップ時間:0.250秒
ポイントの数:1001
腐食計算
【0071】
【数2】

【0072】
mpy=1年あたりのミリインチ
corr=腐食電流
*は各試験で与えられるターフェル定数によって決定される
A=面積(cm
d=密度(g/cm
0.13=メートルおよび時間換算係数
【0073】
結果
実施例2のサンプルの腐食試験結果を、以下の表に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
上記実施例により示すように、蒸着アルミニウム表面上で、本発明の実施形態に従ったヘキサフルオロジルコネートは、「洗浄のみ」と比較して、より優れた腐食保護を提供する。実施例1の結果との比較によって、実施例2の結果は、本発明が、INTERLOX(登録商標)338によって例示される3価クロム不動態化物よりも実質的に良好に実行し、かつUS2007/0099022にて開示された方法よりも実質的に良好に実行することを示す。
【0076】
なお、本明細書および請求の範囲の全体を通じて、開示された範囲および割合の数値限定が組み合わされ得、そして全ての介在する値を含むとみなす。さらに、全ての数値は、具体的に述べられているか否か問わず、修飾語句「約」によって先行されるとみなす。
【0077】
本発明の原理をある特定の実施形態に関連して説明したが、これは例示目的で提供されるものであり、本明細書を読む際に、これらの種々の変更は、当該分野の当業者に明らかになり得ると理解されるべきである。したがって、本明細書中に開示された発明が、添付の請求の範囲内にあるような変更を包含するように意図されていると理解されるべきである。本発明の範囲は、請求の範囲によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の蒸着アルミニウム層を不動態化するための方法であって:
その表面上に蒸着アルミニウムを含む基材を提供する工程;
該基材の該表面を、ヘキサフルオロジルコネートを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物で処理する工程;および
該処理された表面を水でリンスする工程、
を含む、方法。
【請求項2】
ヘキサフルオロジルコネートを含む前記クロムフリーの組成物が、マグネシウム塩、ニッケル塩、亜鉛塩またはマグネシウム塩、ニッケル塩および亜鉛塩のいずれか2以上の組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蒸着アルミニウムが、周囲雰囲気で分解温度を有する金属含有前駆体の分解によって前記表面に付与され、前記基材が該前駆体の該分解温度より高い温度で維持される一方、該周囲雰囲気が該前駆体の該分解温度より低い温度で維持される、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記蒸着アルミニウムが、化学蒸着、イオン蒸着および物理蒸着の1または2以上の組み合わせによって前記表面に付与される、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記基材が、前記アルミニウムが蒸着された鉄金属を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記鉄金属が鋼である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水性のクロムフリーの組成物が、添加亜鉛イオンを含まない、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記水性のクロムフリーの組成物が、添加アルカリ金属イオンを含まない、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記処理されたアルミニウムの層を覆う少なくとも1つのさらなる層を析出させる工程をさらに含み、該さらなる層が金属層または有機コーティングの1以上を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヘキサフルオロジルコネートが、ヘキサフルオロジルコニウム酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸アンモニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸第4級アンモニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸アルカリ金属、ヘキサフルオロジルコニウム酸アルカリ土類金属、またはヘキサフルオロジルコニウム酸遷移金属の1またはいずれか2以上の混合物として提供される、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
基材上の蒸着アルミニウム層を不動態化するための方法であって:
基材上にアルミニウムの層を蒸着する工程;
該蒸着アルミニウムを有する該基材を、ヘキサフルオロジルコネートを含む水性の実質的にクロムフリーの組成物で処理する工程;および
該処理された基材を水でリンスする工程、
を含む、方法。
【請求項12】
ヘキサフルオロジルコネートを含む前記クロムフリーの組成物が、マグネシウム塩、ニッケル塩、亜鉛塩、またはマグネシウム塩、ニッケル塩および亜鉛塩のいずれか2以上の組み合わせをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記蒸着が、周囲雰囲気で分解温度を有する金属含有前駆体の分解によるものであり、前記基材が該前駆体の該分解温度より高い温度で維持される一方、周囲雰囲気が該前駆体の該分解温度より低い温度で維持される、請求項11または12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記蒸着が、化学蒸着、イオン蒸着および物理蒸着の1または2以上の組み合わせによる、請求項11または12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記基材が鉄金属を含む、請求項11から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記鉄金属が鋼である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記水性のクロムフリーの組成物が添加亜鉛イオンを含まない、請求項11から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記水性のクロムフリーの組成物が添加アルカリ金属イオンを含まない、請求項11から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記処理されたアルミニウムの層を覆う少なくとも1つのさらなる層を析出させる工程をさらに含み、該さらなる層が金属層または有機コーティングの1以上を含む、請求項11から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ヘキサフルオロジルコネートが、ヘキサフルオロジルコニウム酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸アンモニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸第4級アンモニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸アルカリ金属、ヘキサフルオロジルコニウム酸アルカリ土類金属、またはヘキサフルオロジルコニウム酸遷移金属の1またはいずれか2以上の混合物として提供される、請求項11から19のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−520575(P2013−520575A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555073(P2012−555073)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2011/025662
【国際公開番号】WO2011/106304
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(503037583)アトテック・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (55)
【氏名又は名称原語表記】ATOTECH DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】