説明

蒸着装置及びその制御方法

【課題】複数の反応チャンバーを備えた蒸着装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】被蒸着体に第1蒸着物質を蒸着するように設定された第1チャンバーと、被蒸着体に第1蒸着物質と異なる第2蒸着物質を蒸着するように設定された第2チャンバーと、被蒸着体に第1蒸着物質を蒸着するように設定された第3チャンバーと、第1チャンバーから第3チャンバーと連結され、被蒸着体を第1チャンバーから第3チャンバーのうち少なくとも一つのチャンバーに供給するように備えられた搬送チャンバーと、被蒸着体を、搬送チャンバーから、第1チャンバーから第3チャンバーのうち一つのチャンバーへ移送させて蒸着させる制御部と、を備える蒸着装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着装置及びその制御方法に係り、さらに詳細には、複数の反応チャンバーを備えた蒸着装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、情報通信技術の飛躍的な発展と市場の膨脹につれて、ディスプレイ素子として平板表示素子が脚光を浴びている。これらの平板表示素子としては、液晶表示素子(Liquid Crystal Display;LCD)、プラズマディスプレイ素子(Plasma Display Panel;PDP)、有機発光素子(Organic Light Emitting Diodes;以下、OLED)などが主になっている。
【0003】
そのうち、OLEDは速い応答速度、既存のLCDより低い消費電力及び軽量であること、かつ別途のバックライト装置が不要で超薄型に作ることができるという点、高輝度などの非常に優れた長所を持っていて、次世代ディスプレイ素子として脚光を浴びている。
【0004】
これらのOLEDは、基板上に正電極層、有機薄膜層、負電極層を順次被覆し、正極と負極との間に電圧をかけることによって、適当なエネルギーの差が有機薄膜層に形成されて自ら発光する原理である。すなわち、注入される電子と正孔とが再結合して生じる励起エネルギーが光として発生するものである。この時、OLEDは、有機物質のドーパントの量により発生する光の波長が調節できるので、フルカラーの具現が可能である。
【0005】
OLEDの詳細な構造は、基板上に正電極層(Anode)、正孔注入層(HIL;Hole Injection Layer)、正孔輸送層(HTL;Hole Transfer Layer)、発光層(EML;Emission Layer)、電子輸送層(ETL;Eletron Transfer Layer)、電子注入層(EIL;Eletron Injection Layer)及び負電極層(Cathode)が順次積層されて形成される。また、前記発光層(EML)は、赤色発光層(REML)、緑色発光層(GEML)及び青色発光層(BEML)に細分化されて形成され、前記発光層(EML)と電子輸送層(ETL)との間には正孔遮断層(HBL;Hole Blocking Layer)が選択的に形成される。
【0006】
基板にこれらの薄膜を形成する一般的な方法には、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法、化学気相蒸着法(CVD;Chemical Vapor Deposition)などがある。このうち、OLEDの有機膜及び負極の蒸着には、通常真空チャンバー内に基板を装着し、この基板の表面に付着させようとする蒸着材を気化させて、この気化された蒸着材が基板の表面で凝縮して付着される方式の真空蒸着法が主に使われている。
【0007】
OLEDパネルを製造するための蒸着装置は、少なくとも一つのクラスター構造を持つ。
【0008】
ここで、前記クラスターは、被蒸着体の移送のための搬送チャンバーを中心に被蒸着体の蒸着のための複数の反応チャンバーが配される構造を持つ。ここで反応チャンバーそれぞれは、相異なる蒸着層を蒸着させるために他種の蒸着源を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は蒸着装置及びその制御方法に係り、さらに詳細には、複数の反応チャンバーを備えた蒸着装置及びその制御方法を通じて、経済的損失を低減させ、さらに効率的な工程を提供する技術に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、被蒸着体に第1蒸着物質を蒸着するように設定された第1チャンバーと、前記被蒸着体に前記第1蒸着物質と異なる第2蒸着物質を蒸着するように設定された第2チャンバーと、前記被蒸着体に前記第1蒸着物質を蒸着するように設定された第3チャンバーと、前記第1チャンバーから第3チャンバーと連結され、前記被蒸着体を前記第1チャンバーから第3チャンバーのうち少なくとも一つのチャンバーに供給するように備えられた搬送チャンバーと、前記被蒸着体を、前記搬送チャンバーから前記第1チャンバーから第3チャンバーのうち一つのチャンバーへ移送させて蒸着させる制御部と、を備える蒸着装置を開示する。
【0011】
ここで前記制御部は、前記被蒸着体を前記搬送チャンバーから前記第1チャンバーまたは前記第3チャンバーへ選択的に移送させて蒸着させることができる。
【0012】
ここで前記制御部は、前記被蒸着体を前記搬送チャンバーから前記第1チャンバーと前記第3チャンバーとへ順次に移送させて蒸着させることができる。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、被蒸着体に相異なる物質を蒸着するように設定された複数の蒸着チャンバーと、前記蒸着チャンバーのうちいずれか一つと同じ条件で設定された予備チャンバーと、前記被蒸着体を前記蒸着チャンバーまたは前記予備チャンバーのうちいずれか一つへ投入させて蒸着を進める制御部と、を備える蒸着装置を開示する。
【0014】
ここで前記制御部は、前記被蒸着体を前記蒸着チャンバーと前記予備チャンバーとへ順次に投入させて蒸着を進める。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、第3チャンバーを前記第1チャンバーと同じ条件で設定するステップと、第1被蒸着体を第1チャンバーに供給し、第1蒸着物質を蒸着するステップと、前記第1被蒸着体を第2チャンバーに供給し、第1蒸着物質と異なる第2蒸着物質を蒸着するステップと、第2被蒸着体を前記第1チャンバーまたは第3チャンバーに供給し、前記第1蒸着物質を蒸着するステップと、前記第2被蒸着体を第2チャンバーに供給し、前記第1蒸着物質と異なる第2蒸着物質を蒸着するステップと、を含む蒸着装置の制御方法を提供する。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、前記第1被蒸着体を第1チャンバーに供給し、第1蒸着物質を蒸着するステップと、前記第1被蒸着体を第2チャンバーに供給し、第1条着物質と異なる第2蒸着物質を蒸着するステップと、第3チャンバーを前記第1チャンバーと同じ条件で設定するステップと、第2被蒸着体を前記第3チャンバーに供給し、第1蒸着物質を蒸着するステップと、前記第2被蒸着体を前記第2チャンバーに供給し、第2蒸着物質を蒸着するステップと、を含む蒸着装置の制御方法を開示する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、第3チャンバーを前記第1チャンバーと同じ条件で設定するステップと、第1被蒸着体を第1チャンバーに供給し、第1蒸着物質を蒸着するステップと、前記第1被蒸着体を第2チャンバーに供給し、第1物質と異なる第2蒸着物質を蒸着するステップと、第2被蒸着体を前記第1チャンバーまたは第3チャンバーのうち蒸着条件の設定が完了したチャンバーに供給し、第1蒸着物質を蒸着するステップと、前記第2被蒸着体を前記第2チャンバーに供給し、第2蒸着物質を蒸着するステップと、を含む蒸着装置の制御方法を開示する。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、第3チャンバーを前記第1チャンバーと同じ条件で設定するステップと、被蒸着体を前記第1チャンバーに供給し、第1蒸着物質を蒸着するステップと、前記被蒸着体を前記第3チャンバーに供給し、第1蒸着物質を蒸着するステップと、前記被蒸着体を第2チャンバーに供給し、第1蒸着物質と異なる第2蒸着物質を蒸着するステップと、を含む蒸着装置の制御方法を開示する。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、第3チャンバーを前記第1チャンバーと同じ条件で設定するステップと、第1被蒸着体を第1チャンバーに供給し、第1蒸着物質を蒸着するステップと、前記第1被蒸着体を前記第3チャンバーに供給し、第1蒸着物質を蒸着するステップと、前記第1被蒸着体を第2チャンバーに供給し、第1蒸着物質と異なる第2蒸着物質を蒸着するステップと、前記第2被蒸着体を前記第1チャンバー及び第3チャンバーへ順次に供給し、第1蒸着物質を蒸着するステップと、前記第2被蒸着体を第2チャンバーに供給し、第1蒸着物質と異なる第2蒸着物質を蒸着するステップと、を含む蒸着装置の制御方法を提供する。
【0020】
かかる一般的かつ具体的な側面が、装置、方法、コンピュータプログラム、またはいずれかの装置、方法、コンピュータプログラムの組み合わせを使用して行われうる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態によれば、一つの蒸着反応に対して複数の反応チャンバーを備えることによって、一部の反応チャンバーを使用できない状況にあっても、該当クラスターまたは全体ラインが中断しないという長所がある。
【0022】
また複数の反応チャンバーを備えることによって、生産性を極大化できるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による蒸着装置を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による蒸着装置に備えられた反応チャンバーを示す概略図である。
【図3A】本発明の実施形態による蒸着装置の制御方法を示すフローチャートである。
【図3B】本発明の実施形態による蒸着装置の制御方法を示すフローチャートである。
【図4A】本発明の実施形態による蒸着装置の制御方法を示すフローチャートである。
【図4B】本発明の実施形態による蒸着装置の制御方法を示すフローチャートである。
【図4C】本発明の実施形態による蒸着装置の制御方法を示すフローチャートである。
【図5A】本発明の実施形態による蒸着装置の制御方法を示すフローチャートである。
【図5B】本発明の実施形態による蒸着装置の制御方法を示すフローチャートである。
【図5C】本発明の実施形態による蒸着装置の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明による蒸着装置の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明し、添付図面を参照して説明するに当って、同一または対応する構成要素は同じ図面番号を付与し、これについての重なる説明は省略する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による蒸着装置を示した概略図であり、図2は、本発明の蒸着装置に備えられている反応チャンバー6の構造を示す概略図である。
【0026】
本発明による蒸着装置は、図1に示したように、有機発光素子(OLED)を製造するための被蒸着体を供給する被蒸着体供給部1と、この被蒸着体供給部から搬送された被蒸着体を、蒸着装置に記憶された被蒸着体の蒸着プログラムにより各製造工程別に加工処理する複数のクラスター2、3、4とを備えた構造になっている。図1には、第1ないし第3クラスターが図示されているが、クラスターの数はこれに限らない。
【0027】
各クラスターは、搬送チャンバー5、反応チャンバー6、予備チャンバー6aで構成され、各構成要素を総括して制御する制御部(図示せず)を備える。
【0028】
搬送チャンバー5は、クラスター2、3、4の中央部分に位置し、複数の反応チャンバー6と連結される。被蒸着体は搬送チャンバー5を通じて反応チャンバー6に移送され、搬送チャンバー5は、一側の反応チャンバー6上の被蒸着体を他側の反応チャンバー6上に搬送する搬送機構5aを備える。
【0029】
制御部(図示せず)は、前記被蒸着体を前記搬送チャンバー5から複数の反応チャンバー6のうち、いずれか一つに移送させて蒸着させる蒸着装置全体を総括制御する。
【0030】
反応チャンバー6は1クラスター当り一つ以上存在し、搬送チャンバー5の周囲に位置する。反応チャンバー6それぞれは、被蒸着体に相異なる蒸着層を蒸着させるために他種の蒸着源を備えている。すなわち、図1には複数の反応チャンバー6が図示されているが、同じ蒸着源を備える反応チャンバーはない。
【0031】
予備チャンバー6aは反応チャンバー6と同じ構造及び機能を持ち、クラスター当り一つ以上備えられうる。予備チャンバー6aは、反応チャンバー6の間に配され、図示された位置に限定されるものではない。予備チャンバー6aは、複数の反応チャンバー6のうちいずれか一つと同じ条件で設定されており、すなわち、一部の反応チャンバー6と同じ蒸着源を備えて、該当反応チャンバーの役割を代替できるという特徴がある。
【0032】
図2を参照すれば、反応チャンバー6の構造は次の通りである。予備チャンバー6aは、下記の反応チャンバー6と同一または類似した構造を持つので、これについての具体的な説明は省略する。また本発明による反応チャンバーの構造は、図2に示したように、基板支持部が回転する方式を使用できるが、これに限定されず、蒸着源が移動する方式以外に公知の他の構造を採択してもよい。
【0033】
反応チャンバー6の内部は真空に維持され、一側に入口11と他側に出口12とを持つようにすることができ、前記入口11と出口12とを通じて前記反応チャンバー6を貫通するように基板移送手段13が配設されうる。
【0034】
前記基板移送手段13には、それ自体回転自在に基板支持部14が装着され、蒸着物質が蒸着される基板100は、前記基板移送手段13により反応チャンバー6の内部に移送され、基板支持部14により支持されてチャンバー内に装着される。前記基板支持部14は前記基板移送手段13と別途に設置されて、反応チャンバー6の内部に装着させてもよい。
【0035】
反応チャンバー6の内部の前記基板支持部14が配された反対部分には、蒸着物質が収納、加熱されて気化することによって蒸着が行われる蒸着源20が設置される。この蒸着源20は、少なくとも一つ以上設置されうるものであって、蒸着物質を収納する少なくとも一つの蒸着坩堝と、この蒸着坩堝を加熱する別途の加熱手段とを備える。この蒸着源20は、別途の装着台15に設置されうる。
【0036】
一つの蒸着層を形成するための反応チャンバーが一つのみ備えられている場合、任意の反応チャンバーが定期的なメンテナンスを実施するか、誤作動するか、または反応チャンバーに投入される基板の整列状態または速度が不安定であって反応チャンバーを使用できない時には、該当クラスターまたは蒸着装置全体を中断せねばならないという問題点があった。したがって、これによって発生する経済的損失が大きい。
【0037】
これに備えて、本発明による蒸着装置は、1クラスター当り一つ以上の予備チャンバー6aを備えることによって、使用できない反応チャンバー6に代えて蒸着反応を実施できる。したがって、従来の問題点を解決してノンストップ蒸着を行えるという特徴がある。
【0038】
また、一つの蒸着反応に対して一つの反応チャンバー6のみを使用する場合、一定のタクトタイム(tact time)中に生産できるOLEDパネルの数に限界があった。これに備えて、同じタクトタイムであっても生産性を極大化するための方法の提案が急務であった。
【0039】
しかし、本発明の予備チャンバー6aを備えることによって、一定のタクトタイム中に同じ蒸着反応を複数のチャンバーで行えるので、生産性が向上する効果がある。
【0040】
この他にも本発明による蒸着装置は、マスクの保管のためのストックチャンバー7を備えることができる。また、前記被蒸着体供給部1と第1クラスター2との間に被蒸着体の移動を担当する2つの移動用バッファチャンバー8が備えられ、該当クラスターと隣接したクラスターの間に、移動用バッファチャンバー8と被蒸着体の回転を担当する回転用バッファチャンバー9とを備えることができる。
【0041】
図3Aないし図5Cは、本発明の一実施形態による蒸着装置の制御方法を示すフローチャートである。
【0042】
下記表1に記載されたように、aないしe蒸着層を形成するために、それぞれの蒸着源を備えたAないしE反応チャンバーを仮定し、さらにaないしeのうちいずれか一つの蒸着源を備えたV、W、X、Y、Zの予備チャンバーを仮定する。
【0043】
【表1】

【0044】
図3A及び図3Bを参考にすれば、本発明による蒸着装置の制御方法は、予備チャンバーが反応チャンバーに代えて使われることを特徴とする。
【0045】
S301によって第1被蒸着体を準備する。第1被蒸着体は、蒸着が行われる前に洗浄及び加工の前処理過程を経ることができる。
【0046】
S302によって、第1被蒸着体がAチャンバーに投入されてa物質を蒸着させる反応が進められる。S303によって、a物質を含む蒸着層が形成された前記第1被蒸着体がBチャンバーに供給されて、b物質による蒸着層を形成する。S304によって、a蒸着層及びb蒸着層が形成された前記第1被蒸着体がCチャンバーに投入されてc物質が蒸着され、同様に、S305及びS306によって前記第1被蒸着体がDチャンバー及びEチャンバーに投入されてd物質及びe物質が順次蒸着される。
【0047】
S307及びS308によれば、予備チャンバーであるXチャンバーはAチャンバーと同じ蒸着条件で設定され、YチャンバーはCチャンバーと同じ蒸着条件で設定される。この過程は、XチャンバーとYチャンバーとにある不純物を除去して蒸着源を投入し、防着板を入れ替えて蒸着源を昇温させるものである。Aチャンバー及びCチャンバーの場合のように、Xチャンバー及びYチャンバーのような予備チャンバーが備えられるための条件は、反応チャンバーの定期的なメンテナンスが必要な場合、蒸着源が消耗されてメンテナンスが必要な場合など、反応チャンバーの一時的な稼動中止を要する場合がこれに該当する。
【0048】
S309によって、第2被蒸着体を準備する。S310によって、第2被蒸着体をXチャンバーに投入してa物質を蒸着する。S311によって、Aチャンバーは、第2被蒸着体の蒸着工程と関係なく蒸着条件を調節するか、定期的なメンテナンス作業を行え、正規ラインの生産と関係ない基板が投入されることも可能である。
【0049】
S312によれば、a物質が蒸着された第2被蒸着体をBチャンバーに投入してb物質を蒸着する。S313によれば、前記第2被蒸着体はYチャンバーに投入されてc物質を蒸着する。この場合、Cチャンバーは、Aチャンバーと類似してメンテナンス作業を行える。
【0050】
S315及びS316によれば、前記第2被蒸着体は、Dチャンバー及びEチャンバーに順次に投入されてd物質及びe物質が蒸着される。
【0051】
前述したように、特定反応チャンバーを使用できない場合が発生したとき、該当反応チャンバーに代えて予備チャンバーを稼動させ、かつ予備チャンバーに被蒸着体を投入することによって、特定反応チャンバーのメンテナンス作業時に、該当クラスターまたは全体プロセスが中止されねばならなかった問題点を解決し、ノンストップ蒸着ができるという長所がある。
【0052】
図4Aないし図4Cに開示された本発明の他の実施形態による蒸着装置の制御方法は、予備チャンバー及び反応チャンバーが同時に使われて、一枚以上の基板に対する蒸着反応を同時に進めることを特徴とする。
【0053】
S401によって、第1被蒸着体及び第2被蒸着体を準備する。被蒸着体は複数であればよく、その数が2つに限定されるものではない。
【0054】
S402ないしS406によって、予備チャンバーV、W、X、Y、Zチャンバーそれぞれが反応チャンバーA、B、C、D、Eチャンバーに対応するように、蒸着条件を同一に設定する。これにより、aないしe蒸着層を形成できるチャンバーが一つ以上存在可能になる。
【0055】
S407によって、同じ蒸着条件のAチャンバーとVチャンバーとの優先順位を確認する。この時、優先順位は、第1被蒸着体がいかなるチャンバーに投入されるかを決定する条件である。ここで第1被蒸着体は、エンジニアが指定した被蒸着体でもあり、複数の被蒸着体のうち搬送チャンバーに先ず到着した被蒸着体でもありうる。優先順位は、同じ蒸着条件を持つ複数のチャンバーのうち、最初にレディーオン(ready−on)になったチャンバーが高い優先順位を持つこともあり、当業者が指定した特定チャンバーが大きい優先順位を持つこともある。
【0056】
S408によって、Aチャンバーが優先する場合、第1被蒸着体がAチャンバーに投入されてa物質が蒸着される。S409によって、優先順位の低いVチャンバーには第2被蒸着体が投入されてa物質が蒸着される。
【0057】
S410によって、Vチャンバーが優先する場合、第1被蒸着体はVチャンバーに投入されてa物質が蒸着される。S411によって、優先順位の低いAチャンバーには第2被蒸着体が投入されてa物質が蒸着される。
【0058】
S412によって、同じ蒸着条件のBチャンバーとWチャンバーとの優先順位を確認する。S413ないしS414によって、Bチャンバーが優先する場合、第1被蒸着体はBチャンバーに、第2被蒸着体はWチャンバーに投入されて、それぞれb物質が蒸着される。S415ないしS416によって、Wチャンバーが優先する場合、第1被蒸着体はWチャンバーに、第2被蒸着体はBチャンバーに投入されて、それぞれb物質が蒸着される。
【0059】
S417によって、同じ蒸着条件のCチャンバーとXチャンバーとの優先順位を確認し、S418ないしS421によって、優先順位の高いチャンバーに第1被蒸着体を投入してc物質を蒸着する。
【0060】
このような構成は、S422ないしS431に示したように、d物質を備えたDチャンバー及びYチャンバーと、e物質を備えたEチャンバー及びZチャンバーとに対しても同一に適用され、重複する説明は省略する。
【0061】
これにより、本発明によれば、特定蒸着層を形成するためのチャンバーが複数存在することによって、同じタクトタイム中に複数の基板に対して蒸着反応を同時に進めることができて、生産性が向上するという特徴がある。
【0062】
図5Aないし図5Cによる蒸着装置の制御方法は、蒸着層の厚さによって複数の予備チャンバーを反応チャンバーと同時に使用するものである。
【0063】
S501によって、被蒸着体を準備する。
【0064】
S502及びS503によって、予備チャンバーのうちいくつを反応チャンバーと同じ蒸着条件で設定するかを決定する。これは、特定蒸着層の厚さを設定し、前記設定された蒸着層の厚さによって予備チャンバーを設定することが望ましい。一実施形態として、a蒸着層の厚さを従来の厚さより2倍も厚くしようとし、c蒸着層は従来の蒸着層の厚さより3倍も厚く蒸着しようとする場合を示したものである。この場合、XチャンバーをAチャンバーと同じ蒸着条件に設定して、Y及びZチャンバーをCチャンバーと同じ蒸着条件に設定する。
【0065】
ただし、蒸着試料の種類及び蒸着層の厚さに関する例は、前述したところに限定されず、前記実施形態以外にも、予備チャンバーの蒸着源を交換する方式で多様な厚さの蒸着層を形成できる。
【0066】
S504によって、AチャンバーとXチャンバーとの優先順位を確認する。優先順位に関する事項はS407と同一であり、差異点があるならば、一つの被蒸着体がどのチャンバーに先ず投入され、他のチャンバーに後で投入されるか投入順序を定めることであり、これに係わる投入条件はS407と同一であるので、重複する説明は省略する。
【0067】
S505及びS506によって、AチャンバーがXチャンバーに優先する場合、Aチャンバーに被蒸着体を優先投入してa物質を蒸着し、Xチャンバーに被蒸着体を投入してa物質をさらに蒸着する。S507及びS508によって、XチャンバーがAチャンバーに優先する場合、被蒸着体はXチャンバーに先ず投入され、後でAチャンバーに投入される。
【0068】
S509によって、a蒸着層が2倍形成された被蒸着体はBチャンバーへ投入されてb物質が蒸着される。
【0069】
S510ないしS523によって、被蒸着体はC、Y、Zチャンバーのうち優先順位によって順次に各チャンバーに供給されて、3倍厚さのc蒸着層を形成する。
【0070】
最後にS524及びS525によって、被蒸着体はDチャンバー及びEチャンバーに投入されてd及びe物質が蒸着される。
【0071】
また、一つの蒸着反応に対して1つの反応チャンバーのみを使用する場合、蒸着層の厚さを異なって形成するために蒸着時間及び蒸着率を調節した。例えば、蒸着層をさらに厚く形成するために、基板を反応チャンバーに長く留まるようにしつつ、長時間試料を蒸着するか、または蒸着率を上昇させることによって蒸着層の厚さを調節した。しかし、これらの方法はタクトタイムを延ばすことに比べて効率がよくなく、蒸着材の浪費が激しいという問題点があった。
【0072】
本発明は同じ蒸着層を形成するために複数のチャンバーを使用することによって、同じタクトタイムを以って蒸着層の厚さを調節できるので、材料の浪費を低減して生産性を向上させるという長所がある。
【0073】
前記では本発明の望ましい実施形態を参照して説明したが、前述した予備チャンバー及び反応チャンバーの種類、数、または蒸着源の種類、数はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で多様に修正及び変更できる。
【0074】
前述した実施形態以外の多くの実施形態が本発明の特許請求範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、OLEDなどの平板表示素子に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0076】
1 被蒸着体供給部
2 第1クラスター
3 第2クラスター
4 第3クラスター
5 搬送チャンバー
5a 搬送機構
6 反応チャンバー
6a 予備チャンバー
7 ストックチャンバー
8 移動用バッファチャンバー
9 回転用バッファチャンバー
11 入口
12 出口
13 基板移送手段
14 基板支持部
15 装着台
20 蒸着源
100 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被蒸着体に第1蒸着物質を蒸着するように設定された第1チャンバーと、
前記被蒸着体に前記第1蒸着物質と異なる第2蒸着物質を蒸着するように設定された第2チャンバーと、
前記被蒸着体に前記第1蒸着物質を蒸着するように設定された第3チャンバーと、
前記第1から第3チャンバーと連結され、前記被蒸着体を前記第1から第3チャンバーのうち少なくとも一つのチャンバーに供給するように備えられた搬送チャンバーと、
前記被蒸着体を、前記搬送チャンバーから前記第1から第3チャンバーのうち一つのチャンバーへ移送させて蒸着させる制御部と、
を備える蒸着装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記被蒸着体を前記搬送チャンバーから前記第1チャンバーまたは前記第3チャンバーへ選択的に移送させて蒸着させることを特徴とする請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記被蒸着体を前記搬送チャンバーから前記第1チャンバーと前記第3チャンバーとへ順次に移送させて蒸着させることを特徴とする請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項4】
被蒸着体に相異なる物質を蒸着するように設定された複数の蒸着チャンバーと、
前記蒸着チャンバーのうちいずれか一つと同じ条件で設定された予備チャンバーと、
前記被蒸着体を前記蒸着チャンバーまたは予備チャンバーのうちいずれか一つへ投入させて蒸着を進める制御部と、
を備える蒸着装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記被蒸着体を前記蒸着チャンバーと予備チャンバーとへ順次に投入させて蒸着を進めることを特徴とする請求項4に記載の蒸着装置。
【請求項6】
第3チャンバーを第1チャンバーと同じ条件で設定するステップと、
第1被蒸着体を第1チャンバーに供給し、第1蒸着物質を蒸着するステップと、
前記第1被蒸着体を第2チャンバーに供給し、前記第1蒸着物質と異なる第2蒸着物質を蒸着するステップと、
第2被蒸着体を前記第1チャンバーまたは第3チャンバーに供給し、前記第1蒸着物質を蒸着するステップと、
前記第2被蒸着体を第2チャンバーに供給し、前記第1蒸着物質と異なる第2蒸着物質を蒸着するステップと、
を含む蒸着装置の制御方法。
【請求項7】
前記第2被蒸着体は、前記第3チャンバーに供給されて前記第1蒸着物質を蒸着されるものであり、前記第1チャンバーの蒸着条件を調整することをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の蒸着装置の制御方法。
【請求項8】
前記第2被蒸着体は、前記第1チャンバーまたは第3チャンバーのうち蒸着条件の設定が完了したチャンバーに供給されて、前記第1蒸着物質を蒸着するものであることを特徴とする請求項6に記載の蒸着装置の制御方法。
【請求項9】
前記第1被蒸着体を第1チャンバーに供給し、前記第1蒸着物質を蒸着するステップの後に、
前記第1被蒸着体を前記第3チャンバーに供給し、第1蒸着物質を蒸着するステップをさらに含み、
前記第2被蒸着体は、前記第1チャンバー及び第3チャンバーへ順次に供給され、第1蒸着物質を蒸着するものであることを特徴とする請求項6に記載の蒸着装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公開番号】特開2010−280987(P2010−280987A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125725(P2010−125725)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【Fターム(参考)】