説明

蓄光塗料保護皮膜の接着方法及び蓄光塗料板

【課題】蓄光塗料層に対して強い接着力を確保することができる蓄光塗料保護皮膜の接着方法及び蓄光塗料板を提供する。
【解決手段】蓄光塗料板10は、ベースシート11と、蓄光塗料層12と、接着層13と、透明性基材14とを備え、ベースシート11は、この蓄光塗料板10の土台となるフィルムや紙等であり、蓄光塗料層12は、蓄光顔料及びウレタン塗料等からなり、蓄光顔料は、蛍光物質、燐光物質を含む顔料一般であり、ウレタン塗料は、ウレタン主剤及びウレタン硬化剤からなり、また、蓄光塗料層12に使用するウレタン塗料の組成は、1.00<ウレタン主剤当量/硬化剤当量の範囲とし、より好ましくは、1.05≦ウレタン主剤当量/硬化剤当量≦1.30の範囲とし、接着層13は、エチレン系樹脂等からなり、濡れ性を向上させるため、コロナ処理を施すことが好ましく、透明性基材14は、透明性を有する延伸ポリエステルフィルム等の基材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄光塗料にて印刷された印刷物等を保護するための蓄光塗料保護皮膜の接着方法及び蓄光塗料板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に印刷物を保護する皮膜として、ポリエステルフィルムにエチレンエチルアクリレートやエチレンメチルメタアクリレート共重合樹脂を積層したフィルムが使用され、料理品目を示したメニュー類等の防水や保護目的に広く使用されている。
また、特許文献1は、パウチ基材フィルムの製造方法に関するものであり、アンカーコーティング剤無しで、PETと押出樹脂とを接着させる方法を開示している。
【0003】
しかし、これらの積層フィルムは、印刷物を包み込むように挟み込み、熱をかけて印刷物に接着する構造であるため、印刷面に対する接着強度は、あまり強くない状態で使用されることが多い。
従って、印刷物を片方面、主として上部面からのみ保護する場合には、蓄光塗料層の印刷面に対して接着強度が充分とは言えず、経時的に、積層フィルムが剥離してしまう可能性があった。
【特許文献1】特開平8−309947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、蓄光塗料層に対して強い接着力を確保することができる蓄光塗料保護皮膜の接着方法及び蓄光塗料板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、透明性基材(14)とエチレン系樹脂を含む接着層(13)との少なくとも2層を有する蓄光塗料保護皮膜(20)を、蓄光塗料層(12)に熱接着する蓄光塗料保護皮膜の接着方法であって、前記蓄光塗料層(12)に使用するウレタン塗料の組成を、1.00<ウレタン主剤当量/硬化剤当量の範囲とすること、を特徴とする蓄光塗料保護皮膜の接着方法である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の蓄光塗料保護皮膜の接着方法において、前記ウレタン塗料の組成を、1.05≦ウレタン主剤当量/硬化剤当量≦1.30の範囲とすること、を特徴とする蓄光塗料保護皮膜の接着方法である。
請求項3の発明は、ベースシート(11)と、前記ベースシート(11)上に設けられた蓄光塗料層(12)と、前記蓄光塗料層(12)上に設けられたエチレン系樹脂を含む接着層(13)と、前記接着層(13)上に設けられた透明性基材(14)とを備える蓄光塗料板であって、前記蓄光塗料層(12)に使用するウレタン塗料の組成は、1.00<ウレタン主剤当量/硬化剤当量の範囲であること、を特徴とする蓄光塗料板である。
請求項4の発明は、請求項3に記載の蓄光塗料板において、前記ウレタン塗料の組成は、1.05≦ウレタン主剤当量/硬化剤当量≦1.30の範囲であること、を特徴とする蓄光塗料板である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、蓄光塗料層に使用するウレタン塗料の組成を、1.00<ウレタン主剤当量/硬化剤当量の範囲とすることで、ウレタン主剤が過剰に配合されてウレタンリッチの状態となり、ウレタン成分が残存した状態で蓄光塗料層と接着層とを熱接着することができるので、接着界面の接着力が強化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、蓄光塗料層に対して強い接着力を確保することができる蓄光塗料保護皮膜の接着方法及び蓄光塗料板を提供するという目的を、蓄光塗料層をウレタンリッチの状態にし、その蓄光塗料層と接着層とを熱接着することにより実現する。
【実施例】
【0008】
以下、図面等を参照して、本発明の実施例について、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明による蓄光塗料保護皮膜の接着方法及び蓄光塗料板の実施例を示す図である。
本実施例の蓄光塗料板10は、ベースシート11と、蓄光塗料層12と、接着層13と、透明性基材14等とを備え、下からこの順に積層されている。
【0009】
ベースシート11は、この蓄光塗料板10の土台となるものであり、例えば、フィルムや紙等である。
【0010】
蓄光塗料層12は、蓄光顔料及びウレタン塗料等からなる。
蓄光顔料は、蛍光物質、燐光物質を含む顔料一般であり、特に限定されるものではない。
ウレタン塗料は、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート類から選択されたウレタン主剤と、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレンアジペート等のポリオール類から選択されたウレタン硬化剤からなる二液混合型ウレタン塗料である。
【0011】
また、蓄光塗料層12に使用するウレタン塗料の組成は、1.00<ウレタン主剤当量/硬化剤当量の範囲とし、より好ましくは、1.05≦ウレタン主剤当量/硬化剤当量≦1.30の範囲とする。
ここで、ウレタン塗料の組成とは、ウレタン主剤のイソシアネートモル当量と、硬化剤のポリオールモル当量の比率(当量比)をいい、通常は、同じモル当量で使用されるのが一般的であるが、本実施例では、ウレタン主剤が過剰に配合された状態(ウレタンリッチの状態)となっている。
また、範囲限定している理由は、当該当量比が1.05未満では、過剰イソシアネートが少な過ぎて、接着改良効果はあるものの、十分な接着改良効果が得られないからであり、当該当量比が1.3を超えると、ウレタン塗料の硬化速度が著しく遅延するからである。
【0012】
接着層13は、エチレン系樹脂等からなる。エチレン系樹脂は、低密度ポリエチレン、リニアー低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂類、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−エチルアクリレート、エチレン−メチルアクリレート、エチレン−メチルメタアクリレート等のエチレン−エステル共重合樹脂類、エチレン−アクリル酸、エチレン−メタアクリル酸、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸等のエチレン−酸共重合樹脂類から選ばれた単独、又は、それらのブレンド樹脂類からなる。
また、濡れ性を向上させるため、当該エチレン系樹脂には、コロナ処理を施すことが好ましい。
さらに、コロナ処理によって、38ダイン/cm以上の濡れ張力を有するエチレン系樹脂とすることが好ましい。
【0013】
透明性基材14は、透明性を有する基材であり、接着層13を溶融接着する時の温度に耐え得るものであれば、特に限定されるものではない。延伸ポリエステルフィルム等が一般的に使用される。
【0014】
次に、本実施例による蓄光塗料保護皮膜の接着方法について説明する。
まず、図1(B)に示すように、透明性基材14と接着層13との少なくとも2層を有する積層フィルム(蓄光塗料保護皮膜)20を製造する。
製造方法としては、(1)透明性基材14にアンカー処理を施し、その上に接着層13をラミネートする押出ラミネート法、(2)透明性基材14と、予め別の手段でフィルム化した接着層13とを、反応型接着剤で貼り合わせるドライラミネート法、(3)透明性基材14と、予め別の手段でフィルム化した接着層13とを低密度ポリエチレンでラミネートして貼り合わせるサンドラミネート法等があるが、特に限定されるものではない。
【0015】
ついで、図1(C)に示すように、積層フィルム20の接着層13と蓄光塗料印刷物30の蓄光塗料層12とを熱接着する。
接着方法としては、加熱ロール圧着法、加熱プレス法等があるが、接着層13を加熱溶融し、直ちに圧着できる方法であればよく、特に限定されるものではない。
また、蓄光塗料層12と接着層13との熱接着は、ベースシート11に蓄光塗料層12用のウレタン塗料を塗布して乾燥した後、48時間以内に行なうことが好ましい。48時間を越えると、過剰に配合したウレタン主剤中の未反応イソシアネートが、空気中の水分により反応してしまい、未反応の部分が少なくなってしまうからである。
そして、上述した工程を経て、図1(A)に示すような、蓄光塗料板10が完成する。
【0016】
このように、本実施例によれば、蓄光塗料層12に使用するウレタン塗料の組成を、1.00<ウレタン主剤当量/硬化剤当量の範囲とすることで、ウレタン主剤が過剰に配合されてウレタンリッチの状態となり、ウレタン成分が残存した状態(反応性を保った状態)で蓄光塗料層12と接着層13とを熱接着することができるので、蓄光塗料層12と接着層13との接着界面の接着力が強化される。
【0017】
また、蓄光塗料層12に使用するウレタン塗料の組成を、1.05≦ウレタン主剤当量/硬化剤当量≦1.30の範囲とすることで、十分な接着力強化を図りつつ、ウレタン塗料の硬化速度も遅延させない蓄光塗料板10とすることができる。
【0018】
さらに、接着力の強化が図れるので、蓄光塗料で印刷された蓄光塗料印刷物30を、特に上部面から保護する場合に有効であり、長期間安定して使用することができる。
【0019】
(実験例)
以下、本発明をさらに具体的に説明するが、これらは例示のためのものであり、本発明を限定するものではない。
表1は、本発明による蓄光塗料板の実験例及び比較例を示したものである。
【0020】
【表1】

【0021】
〔積層フィルムの作製〕
50μmの延伸ポリエステルフィルムに、イソシアネート系アンカーコーティング処理を施し、押出ラミネート機により、低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製、スミカセンL705)を310℃にて25μmの厚みで押出ラミネートし、さらに、表1記載の接着層を290℃にて25μm押出ラミネートした。接着層は、コロナ処理機により、濡れ張力が45ダイン/cmとなるよう統一した。濡れ張力を45ダイン/cmとしたのは、処理直後の値が経時によって低下しても、38ダイン/cm程度の値を保てるようにするためである。
【0022】
〔蓄光塗料印刷物の作製〕
50μmの延伸ポリエステルフィルムに、蓄光顔料(根本特殊化学株式会社製)を所定量配合した二液反応型ウレタン主剤(株式会社セイコーアドバンス製)と、ウレタン硬化剤(株式会社セイコーアドバンス製)とを、表1に示した当量比に配合し、スクリーン印刷法により塗布し、60℃、40分の条件にて乾燥した。
【0023】
〔蓄光塗料面への接着〕
当該蓄光塗料印刷物と、当該積層フィルムとを重ね合わせ、加熱圧着機(株式会社パクラル製)により、予熱金属ロール温度130℃、圧着ゴムロール温度110℃にて、5m/分の速度にて、加熱圧着した。
【0024】
〔接着強度の測定〕
得られた試料の接着層と蓄光塗料層との間の180度剥離強度を、接着強度として、同じく表1に示した。
なお、表1の表記は、以下の通りである。
・WH302:エチレンメチルメタアクリレート共重合樹脂、MMA含量15%、住友化学株式会社製、商品名アクリフト
・LX4110:エチレン無水マレイン酸エチルアクリレート共重合樹脂、酸含量3%、アルケマ株式会社製、商品名ボンダイン
・L705:高圧法低密度ポリエチレン、住友化学株式会社製、商品名スミカセン
【0025】
〔結果の考察〕
実験例1〜6は、優れた接着強度を示すのに対して、比較例1、2は接着強度が不十分であった。
また、比較例3は、接着界面の接着強度は良好と思われるが、蓄光塗料の硬化速度が極めて遅く、接着層を重ね合わせる時に、蓄光塗料面が半乾燥状態となる。そのため、蓄光塗料層の凝集破壊強度が低くなり実用的でなかった。
【0026】
この結果、蓄光塗料層に使用するウレタン塗料の組成(当量比)を、1.05≦ウレタン主剤当量/硬化剤当量≦1.30の範囲とすることがより好ましいと分かった。
また、当量比の値が同じであれば(例えば、実験例1、実験例2、実験例3)、接着層にLX4110を含めて酸を含有させた方が、接着強度が高まることが分かった。
さらに、同じ接着層であれば(例えば、実験例4、実験例5、実験例6)、当量比の値を大きくした方が、接着強度が高まることが分かった。
【0027】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
例えば、ベースシート11の両面に蓄光塗料層12を設け、積層フィルム20で両側から保護するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による蓄光塗料保護皮膜の接着方法及び蓄光塗料板の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 蓄光塗料板
11 ベースシート
12 蓄光塗料層
13 接着層
14 透明性基材
20 積層フィルム(蓄光塗料保護皮膜)
30 蓄光塗料印刷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性基材とエチレン系樹脂を含む接着層との少なくとも2層を有する蓄光塗料保護皮膜を、蓄光塗料層に熱接着する蓄光塗料保護皮膜の接着方法であって、
前記蓄光塗料層に使用するウレタン塗料の組成を、
1.00<ウレタン主剤当量/硬化剤当量の範囲とすること、
を特徴とする蓄光塗料保護皮膜の接着方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄光塗料保護皮膜の接着方法において、
前記ウレタン塗料の組成を、
1.05≦ウレタン主剤当量/硬化剤当量≦1.30の範囲とすること、
を特徴とする蓄光塗料保護皮膜の接着方法。
【請求項3】
ベースシートと、
前記ベースシート上に設けられた蓄光塗料層と、
前記蓄光塗料層上に設けられたエチレン系樹脂を含む接着層と、
前記接着層上に設けられた透明性基材とを備える蓄光塗料板であって、
前記蓄光塗料層に使用するウレタン塗料の組成は、
1.00<ウレタン主剤当量/硬化剤当量の範囲であること、
を特徴とする蓄光塗料板。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄光塗料板において、
前記ウレタン塗料の組成は、
1.05≦ウレタン主剤当量/硬化剤当量≦1.30の範囲であること、
を特徴とする蓄光塗料板。

【図1】
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【公開番号】特開2007−119539(P2007−119539A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310701(P2005−310701)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(500443408)株式会社パクラル (1)
【出願人】(594146906)株式会社ラインプラスチック (6)
【出願人】(393021370)第一化成株式会社 (4)
【Fターム(参考)】