説明

蓄光性成形体、及び蓄光性成形体の製造方法

【課題】耐熱性が高く、かつ、暗時には、明時とは異なったデザインが表出する蓄光性成形体、及び蓄光性成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基材と、前記基材上に形成された第1被膜と、前記基材上に形成された第2被膜とを備える蓄光性成形体であって、前記第1被膜が、明時に光を蓄積して暗時に発光しうる蓄光性顔料と、無鉛ガラス粉末と、有彩色の無機系顔料とを含有する第1組成物からなり、前記第2被膜が、無彩色の無機酸化物と、前記無鉛ガラス粉末と、前記無機系顔料とを含有する第2組成物からなり、前記第1組成物における、前記蓄光性顔料と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率、及び前記第2組成物における、前記無機酸化物と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率をそれぞれ調整することによって、明時において前記第1被膜と前記第2被膜とが同系色であることを特徴とする蓄光性成形体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄光性成形体、及び蓄光性成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
深夜、地下鉄、及び地下街等の暗所において、災害等によって、常時供給されている電力や、バックアップ用の電源から供給される電力等の全ての電力が遮断された場合、避難誘導灯等が発光しなくなる。その結果、大惨事を招くおそれがある。
【0003】
このような事情を鑑みて、明時に光を蓄積して暗時に発光しうる蓄光性顔料を含む蓄光性成形体を、通路や廊下等の壁材や床材等に利用することが検討されている。蓄光性成形体としては、蓄光性顔料が白色であることや、蓄光性顔料とは別に有彩色の無機顔料を含有させると、暗時での蓄光による発光度が低下する傾向があること等から、白色のタイル等の白色の成形体が多かった。しかしながら、そのような白色の成形体を用いた場合、デザインが限定され、意匠性の高い通路や廊下等にすることは困難であった。
【0004】
そこで、カラーの蓄光性成形物としては、例えば、特許文献1に記載のガラス製品等が挙げられる。特許文献1には、低融点ガラス粉末20〜70重量%、蓄光顔料30〜60重量%及び無機顔料0〜20重量%からなる無機質混合粉末に、該混合粉末に対して0〜30重量%の有機ヴィヒクルを混合してなる組成物であって、ガラス素材上に500〜700℃の温度で焼付けることによって暗所で発光する蓄光被膜を形成できるセラミックカラー組成物を焼付けられた蓄光性表面を有するガラス製品が記載されている。
【0005】
また、蓄光性を利用した成形体としては、例えば、特許文献2に記載の残光性表示物等が挙げられる。特許文献2には、りん光体を有する発光部分と非発光部分を含む表面を有し、隣接する発光部分と非発光部分の表面が、少なくともそれらの境界に接する部分を含む領域において互いに同一の色彩を有するようにされていることにより前記りん光体の発光を視認できない環境下ではりん光体による発光部分と非発光部分の区別が実質的にできず、前記りん光体の発光を視認できる環境下とできない環境下で表示内容が変化する表示物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−142882号公報
【特許文献2】特開平10−171388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1によれば、暗所で鮮やかに発色し、その残光性の高い蓄光被膜が形成されており、ファッショナブルで幻想的なデザインが付加できることが開示されている。しかしながら、前記蓄光被膜をガラス製品の表面に形成しただけでは、明時に視認できる形状と暗時に蓄光により確認できる形状とが同じであった。そして、ここでの基材はガラス素材であるが、基材としてタイル素地等を用いたとしても、デザインが限定され、意匠性の高い通路や廊下等にすることは困難であった。
【0008】
また、前記成形体は、災害時等の、電力供給が遮断されて暗所になった場合等の暗時に、単に発光するだけであって、明時と暗時とで表出されるデザインに特に変化がないものであった。すなわち、暗時に、例えば、出口を指し示す情報等を表示することが困難であった。
【0009】
特許文献2によれば、りん光体の発光を認識できない環境下ではまったく認識されなかった表示を、りん光体の発光を認識できる環境下で電気系統等を必要とすることなく表示できるので、美観を保ちつつ非常用の表示を設けたり、表示の変化する意外性を利用した装飾、玩具等を製造するのに有用であることが開示されている。しかしながら、発光部分や非発光部分を構成する層は、りん光体と樹脂とを含む層からなっており、このような層は、耐熱性が低く、燃焼してしまうおそれがあった。そして、このような層が燃焼したときには、有毒性のガスが発生するおそれもあった。よって、特許文献2に記載の表示物は、災害時等に用いるのに適切ではなかった。また、発光部分の輝度を測定する際、約5400ルクスという高輝度の光を照射しており、実際に、災害時に充分に発光するもの、具体的には、例えば、JIS Z9107に準拠する基準を満たすことを目的とするものではなかった。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、耐熱性が高く、かつ、暗時には、明時とは異なったデザインが表出する蓄光性成形体、及び蓄光性成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る蓄光性成形体は、基材と、前記基材上に形成された第1被膜と、前記基材上に形成された第2被膜とを備える蓄光性成形体であって、前記第1被膜が、明時に光を蓄積して暗時に発光しうる蓄光性顔料と、無鉛ガラス粉末と、有彩色の無機系顔料とを含有する第1組成物からなり、前記第2被膜が、無彩色の無機酸化物と、前記無鉛ガラス粉末と、前記無機系顔料とを含有する第2組成物からなり、前記第1組成物における、前記蓄光性顔料と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率、及び前記第2組成物における、前記無機酸化物と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率をそれぞれ調整することによって、明時において前記第1被膜と前記第2被膜とが同系色であることを特徴とするものである。
【0012】
このような構成によれば、前記第1被膜で覆われている領域と前記第2被膜で覆われている領域とが前記基材上に形成されている。そして、前記第1被膜と前記第2被膜とは、明時において同系色であるので、明時には、前記第1被膜で覆われている領域と前記第2被膜で覆われている領域とがほとんど区別できないもの、例えば、1色からなるタイル等の成形体である。これに対して、暗時には、前記蓄光性顔料を含有する第1組成物からなる第1被膜は、発光するので、明時とは異なったデザインが表出する。
【0013】
また、前記無機酸化物等の、前記蓄光性成形体を構成するものが、樹脂等より耐熱性が非常に高く、火等が近接しても、有毒性のガスが発生することがない。
【0014】
以上のことから、耐熱性が高く、かつ、暗時には、明時とは異なったデザインが表出する蓄光性成形体が得られる。
【0015】
また、前記第1組成物が、前記蓄光性顔料と前記無鉛ガラス粉末との合計100質量部に対して、前記蓄光性顔料50〜90質量部、前記無鉛ガラス粉末10〜50質量部、前記無機系顔料0.05〜5質量部含有することが好ましい。このような構成によれば、得られた蓄光性成形体の第1被膜が、明時において、有彩色であり、暗時において、発光するものが得られる。そして、前記第1被膜が、JIS Z9107(2008年4月改定版)準拠の基準、例えば、「JB」基準を満たす残光輝度を発揮することができる。
【0016】
また、前記第1被膜が、JIS Z9107に準拠の基準を満たす残光輝度を発揮することが好ましい。
【0017】
また、前記第1被膜及び前記第2被膜の色をL方式で表したときに、前記第1被膜のL値と前記第2被膜のL値との差(ΔL)、前記第1被膜のa値と前記第2被膜のa値との差(Δa)、及び前記第1被膜のb値と前記第2被膜のb値との差(Δb)が、(ΔL*2+Δa*2+Δb*21/2≦7を満足することが好ましい。具体的には、前記同系色とは、上記関係を満たすことによる。
【0018】
また、前記蓄光性顔料が、アルミン酸ストロンチウム系蓄光顔料であり、前記無機酸化物が、酸化アルミニウム及び酸化ストロンチウムの少なくともいずれかであることが好ましい。このような構成によれば、暗時に良好に発光し、明時に、前記第1被膜と前記第2被膜との色の差が少ない。
【0019】
また、前記無鉛ガラス粉末の融点が、750〜780℃であることが好ましい。このような構成によれば、第1被膜の形成時に、比較的低温で溶融させることができるので、熱によって失活しやすい蓄光性顔料を用いることができる。すなわち、蓄光性顔料の種類にかかわらず、前記蓄光性顔料の失活を抑制できる。よって、暗時により発光できる蓄光性成形体が得られる。
【0020】
また、前記無機系顔料が、陶試紅、新呉須、トルコ青及びプラセオ黄からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記陶試紅と前記新呉須と前記トルコ青と前記プラセオ黄との含有比率を調整することにより、所定の色に調色されたものであることが好ましい。このような構成によれば、明時における色彩として様々な有彩色にすることができる。
【0021】
また、前記第1被膜及び前記第2被膜を覆うように、前記第1被膜及び前記第2被膜の上に形成された透明性保護膜をさらに備え、前記透明性保護膜が、無鉛ガラス粉末を含有する第3組成物からなることが好ましい。このような構成によれば、表面を保護することができる。すなわち、前記蓄光性成形体の、耐久性、耐汚染性、耐薬品性、及び光沢性を高めることができる。
【0022】
また、前記第1被膜及び前記第2被膜と、前記基材との線膨張率の差が、それぞれ5.5×10−6〜7×10−6/℃であることが好ましい。このような構成によれば、前記第1被膜及び前記第2被膜と、前記第1被膜及び前記第2被膜の下層、例えば、前記基材との間の境界面に貫入が発生することを抑制することができる。
【0023】
また、タイル状又はブロック状であって、前記第1被膜及び前記第2被膜が露出するように埋設されることが好ましい。このような構成によれば、壁材や床材等に用いやすく、そのような用途で用いても、上記のような、暗時に発光して、明時とは異なるデザインを表出させるという効果を充分に発揮できる。
【0024】
また、本発明の他の一態様に係る蓄光性成形体の製造方法は、基材上の所定の第1領域に、明時に光を蓄積して暗時に発光しうる蓄光性顔料と、無鉛ガラス粉末と、有彩色の無機系顔料とを含有する液状の第1組成物を塗布する第1塗布工程と、前記基材上の、前記第1領域以外の第2領域に、無彩色の無機酸化物と、前記無鉛ガラス粉末と、前記無機系顔料とを含有する液状の第2組成物を塗布する第2塗布工程と、前記第1組成物及び前記第2組成物を焼成することによって、第1被膜及び第2被膜を形成する第1焼成工程とを備える蓄光性成形体の製造方法であって、前記第1組成物における、前記蓄光性顔料と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率、及び前記第2組成物における、前記無機酸化物と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率をそれぞれ調整することによって、明時において前記第1被膜と前記第2被膜とが同系色であることを特徴とするものである。
【0025】
このような構成によれば、前記第1被膜で覆われている領域と前記第2被膜で覆われている領域とが前記基材上に形成されている。そして、前記第1被膜と前記第2被膜とは、明時において同系色であるので、明時には、前記第1被膜で覆われている領域と前記第2被膜で覆われている領域とが区別できないもの、例えば、1色からなるタイル等の成形体である。これに対して、暗時には、前記蓄光性顔料を含有する第1組成物からなる第1被膜は、発光するので、明時とは異なったデザインが表出する。また、前記蓄光性成形体が、前記無機酸化物等の、樹脂等より耐熱性が非常に高いものから形成される。よって、得られた蓄光性成形体に火等が近接しても、有毒性のガスが発生することがない。
【0026】
以上のことから、耐熱性が高く、かつ、暗時には、明時とは異なったデザインが表出する蓄光性成形体を容易に製造することができる。
【0027】
また、前記第1被膜及び前記第2被膜に、無鉛ガラス粉末を含有する液状の第3組成物を塗布する第3塗布工程と、前記第3組成物を焼成することによって、前記第1被膜及び前記第2被膜を覆うように、前記第1被膜及び前記第2被膜の上に透明性保護膜を形成する第2焼成工程とを備えることが好ましい。このような構成によれば、表面を保護することができる透明性保護膜が形成された蓄光性成形体を製造することができる。
【0028】
また、前記第1塗布工程及び前記第2塗布工程が、それぞれ前記第1組成物及び前記第2組成物を、前記基材上に200〜300μmの厚みとなるように塗布する工程であることが好ましい。このような構成によれば、暗時に前記第1被膜が発光して、明時とは異なるデザインを表出させるという効果が充分に発揮される蓄光性成形体を容易に製造することができる。
【0029】
また、前記第1焼成工程が、それぞれ前記第1組成物及び前記第2組成物を、5〜6時間かけて、780〜810℃まで昇温した後、前記昇温した温度を5〜30分間保持する工程であることが好ましい。このような構成によれば、暗時には、明時とは異なったデザインが表出する蓄光性成形体をより容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、耐熱性が高く、かつ、暗時には、明時とは異なったデザインが表出する蓄光性成形体、及び蓄光性成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】蓄光性成形体11の表面を示す平面図である。
【図2】図1に示す蓄光性成形体11を、切断面線II−IIから見た概略断面図である。
【図3】前記蓄光性成形体の使用態様の一例を説明するための説明図である。
【図4】前記蓄光性成形体の使用態様の他の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の一態様に係る蓄光性成形体は、基材と、前記基材上に形成された第1被膜と、前記基材上に形成された第2被膜とを備える蓄光性成形体であって、前記第1被膜が、明時に光を蓄積して暗時に発光しうる蓄光性顔料と、無鉛ガラス粉末と、有彩色の無機系顔料とを含有する第1組成物からなり、前記第2被膜が、無彩色の無機酸化物と、前記無鉛ガラス粉末と、前記無機系顔料とを含有する第2組成物からなり、前記第1組成物における、前記蓄光性顔料と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率、及び前記第2組成物における、前記無機酸化物と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率をそれぞれ調整することによって、明時において前記第1被膜と前記第2被膜とが同系色であることを特徴とするものである。
【0034】
前記蓄光性成形体11は、具体的には、例えば、図1及び図2に示すような構造のものである。図1は、蓄光性成形体11の表面を示す平面図である。図2は、図1に示す蓄光性成形体11を、切断面線II−IIから見た概略断面図である。前記蓄光性成形体11は、図1に示すように、前記第1被膜で覆われている第1領域12と、前記第2被膜で覆われている第2領域13とを備え、明時において、前記第1領域12と前記第2領域13とは同系色であるのに対して、暗時には、前記第1領域12が発光する。よって、明時には、前記第1領域12と前記第2領域13とを見分けることが困難であるのに対して、暗時には、前記第1領域12と前記第2領域13とが明確に異なり、明時とは異なったデザイン、すなわち、前記第1領域12の形状が表出する蓄光性成形体である。なお、前記蓄光性成形体11は、前記基材21に対して、前記第1被膜22及び前記第2被膜23が覆われている側を表面とし、前記第1被膜22及び前記第2被膜23が覆われていない側を裏面とする。
【0035】
また、前記蓄光性成形体11は、図2に示すように、前記基材21と、前記基材21上に形成された第1被膜22と、前記基材21上に形成された第2被膜23とを備えるものである。そして、前記第1被膜22及び前記第2被膜23を覆うように、前記第1被膜22及び前記第2被膜23の上に透明性保護膜24が形成されたものであってもよいし、形成されていなくてもよい。前記透明性保護膜24を形成することによって、表面を保護することができ、さらに、前記第1被膜22及び前記第2被膜23の表面がざらついている場合であっても、平滑な表面の蓄光性成形体11が得られる。すなわち、特に耐久性、耐汚染性、耐薬品性、及び光沢性等を必要とする場合に、前記透明性保護膜24が形成されていると好ましい。
【0036】
また、前記蓄光性成形体11は、前記基材21と、前記第1被膜22及び前記第2被膜23との間に、白色の基礎釉薬からなる白色層25を備えたものであってもよい。白色層25を備えることによって、前記基材21の色にかかわらず、所望の色の成形体が得られ、さらに、暗時には、明時とは異なったデザインがより明確に表出する、すなわち、前記第1被膜22が残光輝度のより高いものになるという効果を充分に発揮しうる。
【0037】
なお、ここで同系色とは、前記第1被膜及び前記第2被膜の色をL方式で表したときに、前記第1被膜のL値と前記第2被膜のL値との差(ΔL)、前記第1被膜のa値と前記第2被膜のa値との差(Δa)、及び前記第1被膜のb値と前記第2被膜のb値との差(Δb)が、(ΔL*2+Δa*2+Δb*21/2≦7を満足することをいう。なお、(ΔL*2+Δa*2+Δb*21/2で表される値は、色差と呼ばれる。この色差の値が大きすぎると、明時であっても、前記第1被膜で覆われている第1領域12と、前記第2被膜で覆われている第2領域13との違いがわかりやすくなる傾向がある。すなわち、同系色とは言えなくなる傾向がある。なお、ここでのL値、a値、及びb値の各値は、例えば、色差計(スガ試験機株式会社製の分光測色計 SC−T)等を用いて測定することができる。
【0038】
前記第1組成物としては、前記蓄光性顔料と、前記無鉛ガラス粉末と、前記無機系顔料とを含有し、前記第2被膜と同系色の第1被膜を形成することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、前記蓄光性顔料と前記無鉛ガラス粉末との合計100質量部に対して、前記蓄光性顔料50〜90質量部、前記無鉛ガラス粉末10〜50質量部、前記無機系顔料0.05〜5質量部含有したもの等が挙げられる。また、前記蓄光性顔料の含有量としては、前記蓄光性顔料と前記無鉛ガラス粉末との合計100質量部に対して、前述したように、50〜90質量部であることが好ましく、55〜80質量部であることがより好ましい。前記範囲内であると、JIS Z 9107に準拠の基準、例えば、「JB」基準を満たす残光輝度を達成でき、暗所での発光が充分に確保できる。そして、55〜80質量部であると、さらに、前記無機系顔料の含有量が多くても、前記残光輝度を達成することができる。なお、このことについては、後述で詳細に説明する。
【0039】
前記蓄光性顔料としては、蓄光性を発揮する顔料であれば、特に限定されない。ここで蓄光性とは、明時に光を蓄積して暗時に発光しうる性質をいう。より詳細には、前記蓄光性顔料とは、明時に、主として可視光線、紫外線等の光の刺激を受けてエネルギを吸収して、高い電子状態に励起し、その後、暗時、すなわち、光の刺激を停止した状態にすると、基底状態に落ちる際に、その吸収していたエネルギを可視光に変換して、可視光を一定期間徐々に解放、放出し続ける発光現象を示す顔料をいう。前記蓄光性顔料としては、具体的には、例えば、ストロンチウムとアルミニウムとを主成分とするアルミン酸ストロンチウム系蓄光顔料、ストロンチウムとマグネシウムとケイ素とを主成分とする蓄光顔料、及び硫化系蓄光顔料等が挙げられる。この中でも、残光輝度が高い点から、アルミン酸ストロンチウム系蓄光顔料が好ましい。また、アルミン酸ストロンチウム系蓄光顔料としては、例えば、SrAl1425、SrAl等が挙げられ、ストロンチウムとマグネシウムとケイ素とを主成分とする顔料としては、例えば、SrMgSi等が挙げられる。なお、前記アルミン酸ストロンチウム系蓄光顔料としては、黄緑系及び青緑系のもの等があり、ストロンチウムとマグネシウムとケイ素とを主成分とする蓄光顔料としては、青系のもの等がある。より具体的には、SrAl1425は、青緑系蓄光顔料であり、SrAlは、黄緑系蓄光顔料であり、SrMgSiは、青系蓄光顔料である。
【0040】
前記無鉛ガラス粉末としては、特に限定されない。具体的には、例えば、いわゆる無鉛フリットと呼ばれるもの等が挙げられる。この中でも、融点が比較的低い低融点無鉛フリットが、前記第1被膜を形成する際に、前記蓄光性顔料の蓄光性の失活を抑制する点から好ましく用いられる。より具体的には、例えば、融点が750〜780℃のものが挙げられ、例えば、京無鉛フリット等が挙げられる。また、京無鉛フリットとは、より具体的には、例えば、特開平9−100182号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0041】
前記無機系顔料としては、有彩色を有し、前記第1被膜を所定の色にすることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、シアン顔料、マゼンタ顔料、及びイエロー顔料のすくなくとも1種を用い、それらの含有比率を調整することにより、所定の色に調整しうるもの等が挙げられる。前記シアン顔料としては、例えば、新呉須及びトルコ青等が挙げられ、前記マゼンタ顔料としては、例えば、陶試紅等が挙げられ、前記イエロー顔料としては、例えば、プラセオ黄等が挙げられる。
【0042】
前記第2組成物としては、前記無機酸化物と、前記無鉛ガラス粉末と、前記無機系顔料とを含有し、前記第1被膜と同系色の第2被膜を形成することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、前記無機酸化物と、前記無鉛ガラス粉末と、前記無機系顔料との、各含有量が、前記第1被膜と同系色となるように調整されたもの等が挙げられる。より具体的には、例えば、前記無機酸化物と前記無鉛ガラス粉末との合計100質量部に対して、前記無機酸化物40〜70質量部、前記無鉛ガラス粉末60〜30質量部、前記無機系顔料1〜10質量部含有したもの等が挙げられる。すなわち、前記蓄光性顔料の代わりに、前記無機酸化物を含有させたもの等が挙げられる。
【0043】
前記無機酸化物としては、前記蓄光性顔料の代わりに含有して、前記第1被膜と同系色の第2被膜を形成できるものであれば、特に限定されない。なお、前記無機酸化物は、蓄光性を有しても有さなくてもよいが、前記蓄光性顔料とは、蓄光発光色の異なるものである。具体的には、前記蓄光性顔料として、アルミン酸ストロンチウム系蓄光顔料を用いた場合、酸化アルミニウム、及び酸化ストロンチウム等の、800℃以上において変質しない高い耐熱性を有する白色粉末等が挙げられる。この中でも、酸化アルミニウム及び酸化ストロンチウムが、第1被膜との調色が容易な点から好ましい。
【0044】
また、前記無機酸化物の粒子径は、前記蓄光性顔料の粒子径と同程度であることが、前記蓄光性成形体の表面、例えば、前記第1被膜と前記第2被膜との平滑性が高まる点から好ましい。より具体的には、前記無機酸化物及び前記蓄光性顔料の粒子径は、30〜60μmであることが好ましく、その粒子径の差が、20μm以下であることが好ましい。ここでの粒子径は、例えば、メジアン径である。
【0045】
前記無鉛ガラス粉末及び前記無機系顔料としては、特に限定されない。具体的には、例えば、前記第1組成物での前記無鉛ガラス粉末及び前記無機系顔料等が挙げられる。
【0046】
前記基材としては、特に限定されない。具体的には、例えば、前記第1被膜及び前記第2被膜との線膨張率の差が、それぞれ5.5×10−6〜7×10−6/℃であるものが好ましい。より具体的には、例えば、磁器質、半磁器質、基礎釉掛けの素地からなる基材等が挙げられる。このような基材を用いると、前記第1被膜及び前記第2被膜を形成させる際、例えば、焼成・徐冷時に前記第1被膜及び前記第2被膜に貫入が発生することを抑制することができる。
【0047】
前記白色層としては、白色の基礎釉薬からなるものであれば、特に限定されない。この白色層は、いわゆる下絵付工程により形成される層である。また、前記白色層は、前記基材と同様、前記第1被膜及び前記第2被膜との線膨張率の差が、それぞれ5.5×10−6〜7×10−6/℃であるものが好ましい。そうすることによって、前記第1被膜及び前記第2被膜を形成させる際、例えば、焼成・徐冷時に前記第1被膜及び前記第2被膜に貫入が発生することを抑制することができる。
【0048】
前記透明性保護膜としては、特に限定されない。具体的には、例えば、前記第1組成物での前記無鉛ガラス粉末を含有する第3組成物からなるもの等が挙げられる。
【0049】
前記蓄光性成形体は、タイル状又はブロック状であって、前記第1被膜及び前記第2被膜が露出するように埋設される使用態様で用いられることが好ましい。そうすることによって、この蓄光性成形体は、壁材や床材等として用いやすく、そのような用途で用いても、上記のような、暗時に発光して、明時とは異なるデザインを表出させるという効果を充分に発揮できる。
【0050】
上記のような使用態様の具体例としては、例えば、図3や図4に示すものが挙げられる。なお、図3及び図4は、前記蓄光性成形体の使用態様の一例を説明するための説明図である。なお、図3(a)及び図4(a)は、明時を示し、図3(b)及び図4(b)は、暗時を示す。前記蓄光性成形体は、図3及び図4に示すように組み合わせることによっても、明時と暗時とでは、表出されるデザインが異なるように使用することができる。また、図4に示す場合、明時では、単なるデザインであるのに対して、暗時では、方向等の情報を表示することができる。
【0051】
また、前記蓄光性成形体の製造方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、前記基材上の所定の第1領域に、液状の前記第1組成物を塗布する第1塗布工程、前記基材上の、前記第1領域以外の第2領域に、無彩色の無機酸化物と、前記無鉛ガラス粉末と、前記無機系顔料とを含有する液状の第2組成物を塗布する第2塗布工程と、前記第1組成物及び前記第2組成物を焼成することによって、第1被膜及び第2被膜を形成する第1焼成工程とを備えるもの等が挙げられる。その際、前記第1組成物における、前記蓄光性顔料と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率、及び前記第2組成物における、前記無機酸化物と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率をそれぞれ調整することによって、明時において前記第1被膜と前記第2被膜とが同系色となるようにするものである。
【0052】
前記第1塗布工程及び前記第2塗布工程は、特に限定されない。具体的には、例えば、前記第1組成物及び前記第2組成物を、それぞれ前記基材上に200〜300μmの厚みとなるように、筆で塗布する方法、シルク印刷法、刷毛塗り法等によって、塗布する工程等が挙げられる。また、前記第1塗布工程及び前記第2塗布工程の直後には、前記第1組成物及び前記第2組成物の流動性がなくなる程度まで乾燥させることが好ましい。
【0053】
また、前記第1焼成工程としては、具体的には、例えば、それぞれ前記第1組成物及び前記第2組成物を、5〜6時間かけて、780〜810℃まで昇温した後、前記昇温した温度を5〜30分間保持する工程等が挙げられる。
【0054】
そして、前記透明性保護膜を形成する場合は、さらに、前記第1被膜及び前記第2被膜に、無鉛ガラス粉末を含有する液状の第3組成物を塗布する第3塗布工程と、前記第3組成物を焼成することによって、前記第1被膜及び前記第2被膜を覆うように、前記第1被膜及び前記第2被膜の上に透明性保護膜を形成する第2焼成工程とを備えるもの等が挙げられる。
【0055】
前記第3塗布工程は、特に限定されない。具体的には、例えば、前記第3組成物を、前記第1被膜及び前記第2被膜上に、100〜300μmの厚みとなるように、筆で塗布する方法、シルク印刷法、刷毛塗り法等によって、塗布する工程等が挙げられる。
【0056】
また、前記第2焼成工程としては、透明性保護膜が形成できれば、特に限定されない。具体的には、例えば、前記第3組成物を、5〜6時間かけて、780〜810℃まで昇温した後、前記昇温した温度を5〜30分間保持する工程等が挙げられる。
【実施例】
【0057】
[実施例1]
(第1組成物の調製)
青緑系蓄光顔料(SrAl1425)70質量部、京無鉛フリット30質量部、新呉須(株式会社京都イワサキ製)0.55質量部を混合した。その混合物を、スキージオイル(互応化学工業株式会社製のOS−4500)に加え、混練した。その際、固形分濃度が75質量%となるように、スキージオイルを用いた。そして、この混練によって得られたものを、第1組成物とした。
【0058】
(第2組成物の調製)
酸化アルミナ50質量部、京無鉛フリット50質量部、新呉須(株式会社京都イワサキ製)1.65質量部、プラセオ黄(株式会社京都イワサキ製)1質量部を混合した。その混合物を、スキージオイル(互応化学工業株式会社製のOS−4500)に加え、混練した。その際、固形分濃度が75質量%となるように、スキージオイルを用いた。そして、この混練によって得られたものを、第2組成物とした。
【0059】
(蓄光性成形物の製造)
まず、所定の第1領域以外の第2領域をマスクした状態の、白色基礎釉掛けの磁器質タイルに、前記第1組成物を、250μmの厚みとなるようにシルク印刷をした。その後、70℃で15分間、第1組成物を乾燥させた。
【0060】
次に、第1組成物が塗布された磁器質タイルに対して、第1領域をマスクした。そして、所定の第1領域をマスクした状態の、磁器質タイルに、前記第2組成物を、250μmの厚みとなるようにシルク印刷をした。その後、70℃で15分間、第2組成物を乾燥させた。
【0061】
そして、前記第1組成物及び前記第2組成物が塗布された磁器質タイルを、5時間かけて800℃まで昇温した後、前記昇温した温度を10分間保持することによって、前記第1組成物及び前記第2組成物を焼成した。そうすることによって、実施例1に係る蓄光性成形体が得られた。
【0062】
[実施例2]
(第1組成物の調製)
青緑系蓄光顔料(SrAl1425)70質量部、京無鉛フリット30質量部、プラセオ黄(株式会社京都イワサキ製)1.7質量部を混合した。その混合物を、スキージオイル(互応化学工業株式会社製のOS−4500)に加え、混練した。その際、固形分濃度が75質量%となるように、スキージオイルを用いた。そして、この混練によって得られたものを、第1組成物とした。
【0063】
(第2組成物の調製)
酸化アルミナ50質量部、京無鉛フリット50質量部、プラセオ黄(株式会社京都イワサキ製)6.0質量部、トルコ青(株式会社京都イワサキ製)0.25質量部を混合した。その混合物を、スキージオイル(互応化学工業株式会社製のOS−4500)に加え、混練した。その際、固形分濃度が75質量%となるように、スキージオイルを用いた。そして、この混練によって得られたものを、第2組成物とした。
【0064】
(蓄光性成形物の製造)
まず、所定の第1領域以外の第2領域をマスクした状態の、白色基礎釉掛けの磁器質タイルに、前記第1組成物を、230μmの厚みとなるようにシルク印刷をした。その後、70℃で15分間、第1組成物を乾燥させた。
【0065】
次に、第1組成物が塗布された磁器質タイルに対して、第1領域をマスクした。そして、所定の第1領域をマスクした状態の、磁器質タイルに、前記第2組成物を、230μmの厚みとなるようにシルク印刷をした。その後、70℃で15分間、第2組成物を乾燥させた。
【0066】
そして、前記第1組成物及び前記第2組成物が塗布された磁器質タイルを、5時間かけて800℃まで昇温した後、前記昇温した温度を10分間保持することによって、前記第1組成物及び前記第2組成物を焼成した。そうすることによって、実施例2に係る蓄光性成形体が得られた。
【0067】
[評価]
(色差)
このようにして得られた各蓄光性成形体は、色差計(スガ試験機株式会社製の分光測色計 SC−T)を用いて、それぞれ第1領域(第1被膜)及び第2領域(第2被膜)のL値、a値、及びb値を測定し、(ΔL*2+Δa*2+Δb*21/2を算出した。その結果、実施例1に係る蓄光性成形体は、1.6であり、実施例2に係る蓄光性成形体は、4.9であった。すなわち、いずれも、(ΔL*2+Δa*2+Δb*21/2≦7を満たした。
【0068】
(残光輝度)
また、上記のようにして得られた各蓄光性成形体は、JIS Z 9107に準拠の方法により、残光輝度を測定した。具体的には、まず。被測定物(蓄光性成形体)を48時間以上遮光した。その後、D65標準光源を用い、遮光後の被測定物表面に対して45°の角度で、前記被測定物表面の照度が200ルクスとなるように調整した光を、前記被測定物に20分間照射した後、照射をやめ、照射終了後から、10分後、20分後、30分後、60分後の輝度を、輝度計(株式会社トプコン製のBM−5A)を用いて測定した。
【0069】
その結果、実施例1に係る蓄光性成形体は、それぞれ、107mcd/m、57mcd/m、38mcd/m、19mcd/mであった。また、実施例2に係る蓄光性成形体は、それぞれ、115mcd/m、60mcd/m、41mcd/m、20mcd/mであった。
【0070】
なお、JIS Z 9107に準拠の基準(JB基準)は、それぞれ、105mcd/m、50mcd/m、31mcd/m、15mcd/mであり、実施例1及び実施例2に係る蓄光性成形体は、両方ともこの基準を満たしていた。
【0071】
以上のことから、実施例1及び実施例2に係る蓄光性成形体は、ともに明時において第1被膜(第1領域)と第2被膜(第2領域)とが同系色であって、見分けにくく、さらに、第1領域が、暗時において、JIS Z 9107に準拠の基準を満たすことができることがわかった。
【符号の説明】
【0072】
11 蓄光性成形体
12 第1領域
13 第2領域
21 基材
22 第1被膜
23 第2被膜
24 透明性保護膜
25 白色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成された第1被膜と、前記基材上に形成された第2被膜とを備える蓄光性成形体であって、
前記第1被膜が、明時に光を蓄積して暗時に発光しうる蓄光性顔料と、無鉛ガラス粉末と、有彩色の無機系顔料とを含有する第1組成物からなり、
前記第2被膜が、無彩色の無機酸化物と、前記無鉛ガラス粉末と、前記無機系顔料とを含有する第2組成物からなり、
前記第1組成物における、前記蓄光性顔料と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率、及び前記第2組成物における、前記無機酸化物と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率をそれぞれ調整することによって、明時において前記第1被膜と前記第2被膜とが同系色であることを特徴とする蓄光性成形体。
【請求項2】
前記第1組成物が、前記蓄光性顔料と前記無鉛ガラス粉末との合計100質量部に対して、前記蓄光性顔料50〜90質量部、前記無鉛ガラス粉末10〜50質量部、前記無機系顔料0.05〜5質量部含有する請求項1に記載の蓄光性成形体。
【請求項3】
前記第1被膜が、JIS Z9107に準拠の基準を満たす残光輝度を発揮する請求項1又は請求項2に記載の蓄光性成形体。
【請求項4】
前記第1被膜及び前記第2被膜の色をL方式で表したときに、前記第1被膜のL値と前記第2被膜のL値との差(ΔL)、前記第1被膜のa値と前記第2被膜のa値との差(Δa)、及び前記第1被膜のb値と前記第2被膜のb値との差(Δb)が、(ΔL*2+Δa*2+Δb*21/2≦7を満足する請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄光性成形体。
【請求項5】
前記蓄光性顔料が、アルミン酸ストロンチウム系蓄光顔料であり、
前記無機酸化物が、酸化アルミニウム及び酸化ストロンチウムの少なくともいずれかである請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄光性成形体。
【請求項6】
前記無鉛ガラス粉末の融点が、750〜780℃である請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄光性成形体。
【請求項7】
前記無機系顔料が、陶試紅、新呉須、トルコ青、及びプラセオ黄からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記陶試紅と前記新呉須と前記プラセオ黄との含有比率を調整することにより、所定の色に調色されたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の蓄光性成形体。
【請求項8】
前記第1被膜及び前記第2被膜を覆うように、前記第1被膜及び前記第2被膜の上に形成された透明性保護膜をさらに備え、
前記透明性保護膜が、無鉛ガラス粉末を含有する第3組成物からなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の蓄光性成形体。
【請求項9】
前記第1被膜及び前記第2被膜と、前記基材との線膨張率の差が、それぞれ5.5×10−6〜7×10−6/℃である請求項1〜8のいずれか1項に記載の蓄光性成形体。
【請求項10】
タイル状又はブロック状であって、
前記第1被膜及び前記第2被膜が露出するように埋設される請求項1〜9のいずれか1項に記載の蓄光性成形体。
【請求項11】
基材上の所定の第1領域に、明時に光を蓄積して暗時に発光しうる蓄光性顔料と、無鉛ガラス粉末と、有彩色の無機系顔料とを含有する液状の第1組成物を塗布する第1塗布工程と、
前記基材上の、前記第1領域以外の第2領域に、無彩色の無機酸化物と、前記無鉛ガラス粉末と、前記無機系顔料とを含有する液状の第2組成物を塗布する第2塗布工程と、
前記第1組成物及び前記第2組成物を焼成することによって、第1被膜及び第2被膜を形成する第1焼成工程とを備える蓄光性成形体の製造方法であって、
前記第1組成物における、前記蓄光性顔料と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率、及び前記第2組成物における、前記無機酸化物と前記無鉛ガラス粉末と前記無機系顔料との含有比率をそれぞれ調整することによって、明時において前記第1被膜と前記第2被膜とが同系色であることを特徴とする蓄光性成形体の製造方法。
【請求項12】
前記第1被膜及び前記第2被膜に、無鉛ガラス粉末を含有する液状の第3組成物を塗布する第3塗布工程と、
前記第3組成物を焼成することによって、前記第1被膜及び前記第2被膜を覆うように、前記第1被膜及び前記第2被膜の上に透明性保護膜を形成する第2焼成工程とを備える請求項11に記載の蓄光性成形体の製造方法。
【請求項13】
前記第1塗布工程及び前記第2塗布工程が、それぞれ前記第1組成物及び前記第2組成物を、前記基材上に200〜300μmの厚みとなるように塗布する工程である請求項11又は請求項12に記載の蓄光性成形体の製造方法。
【請求項14】
前記第1焼成工程が、それぞれ前記第1組成物及び前記第2組成物を、5〜6時間かけて、780〜810℃まで昇温した後、前記昇温した温度を5〜30分間保持する工程である請求項11〜13のいずれか1項に記載の蓄光性成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−17880(P2011−17880A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162367(P2009−162367)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(509194895)株式会社オーストララジアン ミネラルズ ジャパン (1)
【Fターム(参考)】