説明

蓄熱式床暖房装置

【課題】 翌日の暖房に必要な蓄熱量を高精度に算出し、最適な床暖房を効率的に行い、省エネルギー化を図る。
【解決手段】 翌日の外気温を予測し、この予測外気温に基づいて、ヒータ11による床13のコンクリートスラブ21への必要蓄熱量を演算し、この必要蓄熱量による蓄熱をさせるべく、ヒータ11によるコンクリートスラブ21の蓄熱時間を割り出し、この蓄熱時間にてヒータ11を作動させるコントローラ24を設ける。コントローラ24が、過去に測定された年間の外気温データに基づき、翌日の外気温を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータの熱を建築物の床に蓄熱させて床暖房を行う蓄熱式床暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、割安な夜間電力を利用し、床のコンクリートや蓄熱材に熱を蓄え、翌日の昼間に放熱させて暖房を行う経済的で安全かつクリーンな暖房システムである蓄熱式床暖房装置が知られている。
この種の蓄熱式床暖房装置としては、床の温度とともに過去数日分の外気温や室温、蓄熱体温を測定し、これらの測定値から翌日の暖房に必要な蓄熱量を算出し、この算出した蓄熱量の熱を床に蓄熱させるべく床内のヒータによる蓄熱時間を設定しているものがある。
【特許文献1】特開2001−147023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のように、外気温や室温、蓄熱体温を測定するとともに過去数日分の外気温及び室温に基づいて必要蓄熱量を算出する床暖房装置では、過去数日分の外気温のばらつきが大きい場合等には、適切な必要蓄熱量を算出することができず、必要以上に蓄熱したり蓄熱不足を生じたりして、効率的な暖房を行うことができないという問題がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、翌日の暖房に必要な蓄熱量を高精度に算出し、最適な床暖房を効率的に行い、省エネルギー化を図ることが可能な蓄熱式床暖房装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る蓄熱式床暖房装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
第1の発明は、前夜にヒータの熱を建築物の床に蓄熱させ、翌日に前記床の蓄熱により床暖房を行う蓄熱式床暖房装置であって、翌日の外気温を予測し、この予測外気温に基づいて、前記ヒータによる前記床への必要蓄熱量を演算し、この必要蓄熱量による蓄熱をさせるべく、前記ヒータによる前記床の蓄熱時間を割り出し、この蓄熱時間にて前記ヒータを作動させるコントローラを有し、該コントローラは、過去に測定された年間の外気温データに基づき、翌日の外気温を予測することを特徴とする。このように、本発明の蓄熱式床暖房装置によれば、コントローラが、過去に測定された年間の外気温データに基づいて、翌日の外気温を高精度に予測してヒータによる床への必要蓄熱量を演算するので、最適な床暖房を効率的に行うことができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0006】
また、前記コントローラが、各地域毎に測定された年間の外気温データに基づき、翌日の外気温を予測することを特徴とする。このように、地域毎に測定された年間の外気温データを用いるので、翌日の外気温を、地域毎に高精度に予測することができ、さらに最適な床暖房を効率的に行い、省エネルギー化を図ることができる。
【0007】
さらに、前記コントローラが、設定値として入力された翌日の予想最高・最低気温によって、前記外気温データに基づいて求めた翌日の予測外気温を補正することを特徴とする。このように、過去に測定された年間の外気温データに基づいて算出した翌日の外気温を、翌日の予想最高・最低気温によって補正するので、翌日の外気温を、さらに高精度なものとすることができ、さらに最適な床暖房を効率的に行い、省エネルギー化を図ることができる。
【0008】
また、室内空間を空調する空調機を備え、前記コントローラは、前記床の温度に応じ、前記室内空間を所定温度とすべく前記空調機を制御することを特徴とする。このように、室内空間の空調機を併用し、この空調機を床の温度に応じて制御するので、室内空間の室温を、極めて高精度に制御することができ、室内空間を快適な温度に維持することができる。
【0009】
また、前記床の温度は、前記ヒータの温度を測定する温度センサ及び前記室内空間の温度を測定する温度センサの計測結果に基づいて求められることを特徴とする。このように、ヒータの過熱を防止するために設けられる温度センサと、前記室内空間の温度を測定する温度センサにより、床面に新たな温度センサを設置する必要がないので、設備コストを抑えることができる。
【0010】
第2の発明は、前夜にヒータの熱を建築物の床に蓄熱させ、翌日に前記床の蓄熱により床暖房を行う蓄熱式床暖房装置であって、翌日の外気温を予測し、この予測外気温に基づいて、前記ヒータによる前記床への必要蓄熱量を演算し、この必要蓄熱量による蓄熱をさせるべく、前記ヒータによる前記床の蓄熱時間を割り出し、この蓄熱時間にて前記ヒータを作動させるコントローラと、室内空間を空調する空調機とを有し、前記コントローラは、前記床の温度に応じ、前記室内空間を所定温度とすべく前記空調機を制御することを特徴とする。
このように、蓄熱式床暖房装置と空調機とを併用することにより、少ないエネルギーにより、室内温度の暖房を行うことができる。
【0011】
また、前記床の温度は、前記ヒータの温度を測定する温度センサ及び前記室内空間の温度を測定する温度センサの計測結果に基づいて求められることを特徴とする。このように、ヒータの過熱を防止するために設けられる温度センサと、前記室内空間の温度を測定する温度センサにより、床面に新たな温度センサを設置する必要がないので、設備コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蓄熱式床暖房装置によれば、翌日の外気温を高精度に予測してヒータによる床への必要蓄熱量を演算することにより、最適な床暖房を効率的に行い、また、省エネルギー化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る蓄熱式床暖房装置10の構造を示す建物の断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る蓄熱式床暖房装置10は、通電により発熱するヒータ11を備えており、このヒータ11が、建築物12の床13に設置されている。建築物12は、床13の周囲に立設された壁部14及びこの壁部14の上部に設けられた天井15を備えており、これら床13、壁部14及び天井15によって室内空間16が形成されている。
【0015】
ヒータ11は、建築物12の床13を構成するコンクリートスラブ21の下部(下面側)に配設され、このヒータ11が発熱することにより、その熱がコンクリートスラブ21に蓄熱する。ヒータ11の裏面側には、断熱材22が設けられ、ヒータ11の熱が下階へ逃げないようになっている。なお、コンクリートスラブ21の上面には、床材23が敷設されている。
【0016】
蓄熱式床暖房装置10は、コントローラ24を備えており、このコントローラ24によってヒータ11への通電が制御される。このコントローラ24は、空調機25にも接続されており、空調機25は、コントローラ24によって制御される。
また、蓄熱式床暖房装置10は、ヒータ11の温度及び室内空間16内の温度をそれぞれ測定するヒータ温度センサ27及び室内温度センサ28を備えており、これらヒータ温度センサ27及び室内温度センサ28の測定信号がコントローラ24へ送信される。
【0017】
そして、蓄熱式床暖房装置10では、コントローラ24によって前夜の電気料金が安価な時間帯にヒータ11に通電され、このヒータ11の発熱によりコンクリートスラブ21が暖められて蓄熱される。蓄熱された熱は、翌日にコンクリートスラブ21から放熱され、床暖房として室内空間16を暖める。
【0018】
コントローラ24は、図示しない演算部、設定部及び記憶部を備えており、演算部は、設定部にて設定された設定値と記憶部に記憶された気温データとから翌日の暖房に必要となる蓄熱量の蓄熱をすべく、ヒータ11の通電による蓄熱時間を算出する。
つまり、コントローラ24は、ヒータ11の制御をON/OFFすることにより夜間蓄熱量を必要量とするため、次式(1)にてヒータ11の蓄熱時間を算出する。
【0019】
STTIME=(((SVFH±COSVFH−TOUT)×COHL×TMRM±TSFH)/QFH)+CTIME …(1)
ここで、STTIME:蓄熱時間[h]
SVFH :蓄熱用設定室温[℃]
COSVFH:設定室温補正[℃]
TOUT :翌日の日平均外気温度[℃]
COHL :室の熱損失係数[W/m℃]
TMRM :室使用時間[h]
TSFH :残蓄熱量[Wh/m]
QFH :ヒータ容量[W/m]
CTIME :蓄熱時放熱量補正[h]
である。
【0020】
次に、コントローラ24による蓄熱時間の算出の仕方について図を参照して説明する。
図2は蓄熱式床暖房装置10の制御を説明するフローチャート図、図3及び図4はコントローラの記憶部に記憶された気象データを説明するグラフ図、図5は必要蓄熱量と蓄熱時間との関係を示すグラフ図である。
【0021】
〔ステップS1〕
(WEEK:使用状況設定)
まず、コントローラ24は、毎日、蓄熱量算出時刻(例えば、22:00等)になると、以下の処理を開始する。
これに先立って、蓄熱式床暖房装置10の使用者は、コントローラ24による蓄熱量算出時刻までに、翌日の室内空間16の使用予定をコントローラ24に入力しておく。例えば、翌日に室内空間16を使用する場合は、翌日室使用有を選択し、外出などにより室内空間16を使用せず、蓄熱式床暖房装置10の作動が不要の場合は、翌日室使用無を選択する。
なお、蓄熱量算出時刻は、通常、夜間電力開始時刻とする。
【0022】
「ステップS2」
(SVFH:蓄熱用設定室温[℃]の設定)
コントローラ24は、生活時間帯における室気温設定値として、初期値が設定されているので、この値を読み出す。なお、この初期値としては、例えば、22.0℃とされる。
【0023】
〔ステップS3〕
(COSVFH:設定室温補正[℃]の設定)
続いて、コントローラ24に予め設定された設定室温補正値を読み込む。設定室温補正値は、使用者が予め好みに応じて設定しておく。使用者が設定する設定室温補正値の設定項目としては、暖かく(+2℃)、少し暖かく(+1℃)、少し控えめ(−1℃)、控えめ(−2℃)などがある。
設定室温補正値は、ステップS1においてコントローラ24に入力してもよいし、例えば、月に1度など不定期に入力してもよい。
【0024】
〔ステップS4〕
(TOUT:翌日の日平均外気温度[℃]の設定)
コントローラ24は、記憶部に記憶されている翌日の日平均外気温の予測値(翌日の外気温の予測値)を読み込む。翌日の日平均外気温の予測値は、気象予報機関などから得た過去の気象データより求められる。
過去の気象データの日平均外気温は、日変動が大きいため、年周期成分のみを取り出した日平均外気温度変動モデルを作成し、この日平均外気温度変動モデルから翌日の日平均外気温を求める。
日平均外気温度変動モデルは、気象予報機関などから入手した気象データから各日の日平均外気温度を計算し、更にフーリエ級数を用いて日変動を取り除くことにより、以下の近似式(2)として得られる。
【0025】
TOUT=Mm+ΣMxcos(xωt)+ΣNxsin(xωt) …(2)
ここで、tは、計算日の年間通算日数であって、例えば4月1日を0とする。ωは360°/365日である。また、Mx、Nxは、気象データにより決定する係数であり、気象データ毎に予め算出しておく。
【0026】
図3は、東京の日平均気温変動モデル(実線で示す予想値)であり、図3(a)は年間、図3(b)は冬期のものを示す。
また、図4は、各地域の冬期日平均気温変動モデルとして、八戸、青森、秋田、盛岡、一関、仙台、山形、福島の冬期日平均気温変動モデル(実線で示す予想値)を示したものである。
そして、コントローラ24の記憶部には、地域毎の日平均外気温度変動モデル(式(2)によって表される予想値、図3及び図4参照)が記憶されている。
【0027】
そして、コントローラ24は、記憶された地域毎の日平均外気温度変動モデルのなかから、蓄熱式床暖房装置10が設置された地域における日平均外気温度変動モデルを読み出し、更に、コントローラ24に備えられたカレンダー機能から翌日の日付を読み出だす。
そして、コントローラ24は、読み出した日平均外気温度変動モデル(式(2))と翌日の日付(t)から、その地域における翌日の日平均外気温の予測値を得る(ステップS4A、S4B)。
なお、コントローラ24の記憶部には、日平均外気温度変動モデルを予め記憶させておく場合の他、気象予報機関などから入手した気象データをそのまま記憶しておいて、その都度、日平均外気温度変動モデルを求めるようにしてもよい。また、上述したように、複数の地域毎の日平均外気温度変動モデルを記憶しておいてもよいが、蓄熱式床暖房装置10を設置する地域が予め判明している場合には、その地域の日平均外気温度変動モデルのみを記憶させておいてもよい。
【0028】
また、コントローラ24は、得られた翌日の日平均外気温の予測値に対して、さらに、その予測値の精度を向上させるために、COTOUT(翌日の日平均外気温度補正[℃])を行う(ステップS4C)。
この翌日の日平均外気温度補正では、コントローラ24による蓄熱量算出時刻までに、天気予報などから得た翌日の予想最高・最低気温を、使用者がコントローラ24に入力することにより、次式(3)にて日平均外気温度の予想値を補正する。
【0029】
補正日平均外気温度=α×日平均外気温度+(1−α)×0.5×(予想最高気温+予想最低気温) …(3)
なお、αとしては、0〜1の値を入力する。
ここで、α=1:日平均外気温のみから演算する場合
α=0:予想最高・最低気温のみから演算する場合
である。
【0030】
コントローラ24には、1日1回、α=1とするロジックが入力される。そして、コントローラ24は、予想最高・最低気温の入力があった場合のみ、αに所定の規定値を入力して、補正日平均外気温度を算出する。
【0031】
〔ステップS5〕
(COHL:室の熱損失係数[W/m℃]の設定)
適応される建築物12の熱損失係数を計測または計算して予め入力した係数が、コントローラ24にて引き出される。ここで、熱損失係数としては、1.0〜3.5程度を任意設定することが可能である。
【0032】
〔ステップS6〕
(TMRM:室使用時間[h]の設定)
必要な蓄熱量を蓄熱させるためには、室使用時間における熱負荷のみを蓄熱すれば良いため、室使用時間を算出する。コントローラ24の設定部から、室使用終了時刻を任意に入力し、室使用時間を算出する。例えば、室使用時間は、室使用開始時刻を8:00とすると、次のように算出される。
終日使用 :24時間使用
0:00終了 :16時間使用
20:00終了:12時間使用
16:00終了:8時間使用
【0033】
〔ステップS7〕
(QFH:ヒータ容量[W/m]の設定)
適応される建築物12に敷設した蓄熱用のヒータ11の容量として予め入力された設定値が引き出される。なお、コントローラ24では、その設定部にて50〜150[W/m]程度のヒータ容量を任意設定することが可能である。
【0034】
〔ステップS8〕
(TSFH:残蓄熱量[Wh/m]の設定)
蓄熱量算出時刻におけるコンクリートスラブ21内の残蓄熱量をコントローラ24が算出する。残蓄熱量は、次式(4)のように、基準温度を設定室温とし、設定室温とコンクリートスラブ21内の平均温度との差に、コンクリートスラブ21の熱容量を乗じて算出する。
【0035】
残蓄熱量=(蓄熱開始時平均スラブ温度−設定室温)×コンクリート容積比熱×スラブ厚さ …(4)
【0036】
なお、蓄熱量算出時平均スラブ温度は、簡易的にスラブ下表面温度と上表面の平均値とするが、スラブ表面を直接測定する温度センサを持たないため、コントローラ24は、次式(5)にて、蓄熱開始時平均スラブ温度を算出する。
【0037】
蓄熱開始時平均スラブ温度=γ×ヒータ面温度+(1−γ)×室気温 …(5)
なお、γは0〜1の係数である。
【0038】
〔ステップS9〕
(PTL:翌日予想熱負荷[Wh/m]の算出)
上記ステップS1〜S8にて割り出した各項目から、次式(6)にて、翌日の予想熱負荷を算出する。
【0039】
PTL=(SVFH±COSVFH−TOUT)×COHL×TMRM±TSFH …(6)
【0040】
〔ステップS10〕
(STTIME0:補正前蓄熱時間 [h]の算出)
コントローラ24は、次式(7)に示すように、算出した翌日予想熱負荷PTLをヒータ11の容量QFHで除すことにより、蓄熱時間を算出する。
【0041】
STTIME0=PTL/QFH …(7)
【0042】
〔ステップS11〕
(CTIME:蓄熱時放熱量補正[h])
算出した蓄熱時間STTIME0により蓄熱を行った場合、蓄熱終了を深夜電力終了時刻とするため、蓄熱量算出時刻から蓄熱開始時までの間にコンクリートスラブ21から放熱がされてしまう。また、蓄熱中にも放熱が行われてしまうため、コントローラ24は、図5に示すように、コンクリートスラブ21の残蓄熱の放熱の補正CTIME1及び蓄熱中におけるコンクリートスラブ21からの放熱の補正CTIME2を行う。
なお、蓄熱量算出時点から蓄熱開始時点までの放熱量の補正CTIME1及び蓄熱中における放熱量の補正CTIME2は、それぞれ次式(8)、(9)にて行う。
【0043】
CTIME1=β×(STMAX−STTIME)×TSFH/QFH …(8)
CTIME2=β×STTIME×PTL/QFH …(9)
ここで、β:コンクリートスラブ21からの放熱特性に関する係数[m/h]である。
STMAX :最大蓄熱時間[h]である。
CTIME=CTIME1+CTIME2 …(10)
【0044】
〔ステップS12〕
そして、コントローラ24は、上式(10)にて求めた補正時間CTIMEを、次式(11)のように、補正前の蓄熱時間STTIME0に加えることにより、必要な蓄熱時間STTIMEとする。
【0045】
STTIME=STTIME0+CTIME …(11)
【0046】
そして、上記のようにして必要な蓄熱時間STTIMEを算出したコントローラ24は、蓄熱終了時刻から蓄熱時間STTIMEだけ遡った時間(例えば、蓄熱終了時刻が8:00で、蓄熱時間STTIMEが9時間の場合には、前日の23:00)から、深夜で安価な電気を利用してヒータ11へ通電を行う。
これにより、蓄熱終了時刻までに、床暖房に必要な熱が床13のコンクリートスラブ21に蓄えられる。
したがって、翌日は、室内空間16が、床13のコンクリートスラブ21からの放射熱により暖房され、快適な温度に維持される。
【0047】
このように、上記実施形態に係る蓄熱式床暖房装置10によれば、コントローラ24が、過去に測定された年間の外気温データに基づいて、翌日の外気温を高精度に予測してヒータ11による床13のコンクリートスラブ21への必要蓄熱量を演算するので、最適な床暖房を効率的に行うことができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0048】
また、地域毎に測定された年間の外気温データを用いるので、翌日の外気温を、地域毎に高精度に予測することができ、さらに最適な床暖房を効率的に行い、省エネルギー化を図ることができる。
さらに、過去に測定された年間の外気温データに基づいて算出した翌日の外気温を、翌日の予想最高・最低気温によって補正するので、翌日の外気温を、さらに高精度に予想することができ、さらに最適な床暖房を効率的に行い、省エネルギー化を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態の蓄熱式床暖房装置10では、蓄熱したコンクリートスラブ21により床暖房が行われる際に、コントローラ24が、床暖房の温熱環境を考慮して空調機25を制御する。
以下、コントローラ24による空調機25の制御について図を参照して説明する。図6は、空調機の制御を説明するフローチャート図である。
【0050】
〔ステップS21〕
(WEEK:使用状況設定)
コントローラ24の設定部にて、使用者が翌日の室内空間16の使用予定を入力する。例えば、翌日に室内空間16を使用する場合は、翌日室使用有を選択し、外出などにより室内空間16を使用せず、空調機25の作動が不要の場合は、翌日室使用無を選択する。
このステップは、上述したステップS1と共通である。
【0051】
〔ステップS22〕
(SVAC:空調機用設定室温[℃]の設定)
空調機25の制御設定室温を、コントローラ24の設定部にて設定する。ここで、空調機25は、設定値の初期値として例えば22.0℃とされ、使用者は、コントローラ24の設定部にて、任意に設定が可能である。
【0052】
〔ステップS23〕
(COSVAC:補正空調機用設定室温の算出)
コントローラ24は、床暖房による放射効果を考慮した室温を次式(12)にて算出し、空調機25の制御用の室温として空調機25へ出力する。
【0053】
COSVAC=γ´×室温+(1−γ´)×ヒータ面温度 …(12)
ここで、γ´は、補正係数(0〜1)である。
【0054】
そして、算出した補正空調機用設定室温は、空調機ON/OFF発停、現在温度及び設定温度出力切り替えの制御信号としてコントローラ24から空調機25へ出力される。
これにより、空調機25は、コントローラ24からの制御信号によって駆動が制御され、室内空間16が快適な温度に維持される。
【0055】
つまり、コントローラ24は、ヒータ温度センサ27及び室内温度センサ28からの測定信号に基づいて、スラブ表面温度を予測し、この予測したスラブ表面温度に基づいて、室内空間16への放射の影響を考慮して、空調機25を制御する。
具体的には、スラブ温度が高い場合には、空調機25の設定温度を下げ、スラブ温度が低い場合には、空調機25の設定温度を上げる。
【0056】
そして、このように空調機25を制御する蓄熱式床暖房装置10によれば、室内空間16の空調機25を併用し、この空調機25を床13の温度に応じて制御するので、室内空間16の室温を、極めて高精度に制御することができ、室内空間16を快適な温度に維持することができる。
【0057】
なお、上記実施形態における蓄熱式床暖房装置10では、床13を構成するコンクリートスラブ21にヒータ11の熱を蓄熱させたが、蓄熱させる床構造としては、上記の例に限定されない。
図7は、他の床構造を説明する断面図である。
図に示すように、この床31では、コンクリートスラブ32の上面側にヒータ11を配設し、さらに、その上部に、蓄熱材33を配設し、この蓄熱材33の上面に床材34を設けたものである。そして、この床構造の場合は、ヒータ11の熱を蓄熱材33及びコンクリートスラブ32に蓄熱するようになっている。
なお、蓄熱材33は、コンクリートに限らず、熱を蓄える機能を有していれば特に制限はない。
【0058】
なお、図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0059】
例えば、上記蓄熱式床暖房装置10を適応する建築物12としては、一戸建ての住宅であっても、集合住宅やオフィスビルなどでも良い。そして、集合住宅やオフィスビルの場合は、一つのコントローラ24によって各室内空間16の床暖房を集中制御させても良い。
【0060】
また、蓄熱時間を算出するために、ステップS4では、予め記憶部に記憶させた気象データを用い、さらに、使用者が入力した翌日の予想最高・最低気温によって補正して日平均外室温を割り出したが、これら気象データ及び翌日の予想最高・最低気温のデータとしては、例えば、インターネット回線を経由し、気象情報を提供する各種機関等から取り寄せて用いても良いことは勿論である。
また、蓄熱式床暖房装置10を構成するヒータ11としては、電気式は勿論のこと、ガス等の他の熱源により加熱した温水を用いる温水式であっても良い。
【0061】
また、本実施形態においては、翌日の外気温の予測値として、過去の気象データから日平均外気温度(のモデル)を求めたが、日最高外気温度や日最低外気温度(のモデル)を求めてもよい。例えば、日最高外気温度(モデル)を用いた場合には、日平均外気温(モデル)の場合に比べて、蓄熱量は少なくなる。逆に、日最低外気温度(モデル)を用いた場合には、蓄熱量は多くなる。
【0062】
また、空調機25の制御を蓄熱式床暖房装置10とともに行う場合について説明したが、従来の蓄熱式床暖房装置においても、床の温度に応じて室内空間を所定温度とすべく空調機25を制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】蓄熱式床暖房装置の構造を示す建物の断面図である。
【図2】蓄熱式床暖房装置の制御を説明するフローチャート図である。
【図3】気象データを説明するグラフ図である。
【図4】気象データを説明するグラフ図である。
【図5】必要蓄熱量と蓄熱時間との関係を示すグラフ図である。
【図6】空調機の制御を説明するフローチャート図である。
【図7】他の床構造を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0064】
10 蓄熱式床暖房装置
11 ヒータ
12 建築物
13,31 床
16 室内空間
24 コントローラ
25 空調機
27 ヒータ温度センサ
28 室内温度センサ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
前夜にヒータの熱を建築物の床に蓄熱させ、翌日に前記床の蓄熱により床暖房を行う蓄熱式床暖房装置であって、
翌日の外気温を予測し、この予測外気温に基づいて、前記ヒータによる前記床への必要蓄熱量を演算し、この必要蓄熱量による蓄熱をさせるべく、前記ヒータによる前記床の蓄熱時間を割り出し、この蓄熱時間にて前記ヒータを作動させるコントローラを有し、
該コントローラは、過去に測定された年間の外気温データに基づき、翌日の外気温を予測することを特徴とする蓄熱式床暖房装置。
【請求項2】
前記コントローラは、各地域毎に測定された年間の外気温データに基づき、翌日の外気温を予測することを特徴とする請求項1に記載の蓄熱式床暖房装置。
【請求項3】
前記コントローラは、別途入力された翌日の予想最高・最低気温によって、前記翌日予測外気温を補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄熱式床暖房装置。
【請求項4】
室内空間を空調する空調機を備え、前記コントローラは、前記床の温度に応じ、前記室内空間を所定温度とすべく前記空調機を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄熱式床暖房装置。
【請求項5】
前記床の温度は、前記ヒータの温度を測定する温度センサ及び前記室内空間の温度を測定する温度センサの計測結果に基づいて求められることを特徴とする請求項4に記載の蓄熱式床暖房装置。
【請求項6】
前夜にヒータの熱を建築物の床に蓄熱させ、翌日に前記床の蓄熱により床暖房を行う蓄熱式床暖房装置であって、
翌日の外気温を予測し、この予測外気温に基づいて、前記ヒータによる前記床への必要蓄熱量を演算し、この必要蓄熱量による蓄熱をさせるべく、前記ヒータによる前記床の蓄熱時間を割り出し、この蓄熱時間にて前記ヒータを作動させるコントローラと、
室内空間を空調する空調機とを有し、
前記コントローラは、前記床の温度に応じ、前記室内空間を所定温度とすべく前記空調機を制御することを特徴とする蓄熱式床暖房装置。
【請求項7】
前記床の温度は、前記ヒータの温度を測定する温度センサ及び前記室内空間の温度を測定する温度センサの計測結果に基づいて求められることを特徴とする請求項6に記載の蓄熱式床暖房装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−38387(P2006−38387A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221790(P2004−221790)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(800000068)学校法人東京電機大学 (112)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】