説明

蓄熱性塗料、その塗料を使用した蓄熱性塗膜形成方法、及びその方法による蓄熱性塗膜形成物品

【課題】 蓄熱性に優れた塗料を提供する。
【解決手段】架橋性樹脂塗料(A)固形分100重量部に対して、示差走査型熱量計で測定された融解潜熱量30J/g以上であるマイクロカプセル(B)1〜100重量部含有してなることを特徴とする蓄熱性塗料及び基材表面に上記の蓄熱性塗料を塗装し、次いで塗膜を硬化させる蓄熱性塗膜形成方法及び該蓄熱性塗膜の上層及び/又は下層に遮熱性塗膜を形成してなる複層塗膜である蓄熱性塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な蓄熱性塗料、その塗料を使用した蓄熱性塗膜形成方法、及びその方法による蓄熱性塗膜形成物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄熱用マイクロカプセルを用いて太陽光などの自然の熱エネルギーを、住宅用暖房に用いて省エネルギー化を図ることは知られている(特許文献1参照)。
【0003】
該蓄熱用マイクロカプセルは、層転移自在な化合物を主成分とする芯物質の周囲に、熱可塑性樹脂を主成分とするカプセル壁を形成してなるものであって、このものはスラリー状態のものは、このもの単独、もしくはこのものに(ポリ)エチレングリコール、凍結材、防腐剤、増粘剤、顔料、分散剤などを配合したものを多孔質に担持させ乾燥させ賦形したり、このものを粉体に分離し成形法により賦形したり、組成物として他の物質に添加されて蓄熱材として使用できることが記載されている。
【0004】
しかしながら、このような蓄熱用マイクロカプセルを多孔質に担持させる方法は、耐久性が十分でないこと、成形法により賦形する方法は、カプセル壁を加熱融着により成形させるのでカプセルが壊れたりして成形品の性能が低下すること、また、添加して使用する場合には性能が十分でないといった問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−69438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、人が快適と感じる温度になる様に適度に調温できる蓄熱、放熱性に優れた塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる蓄熱性塗料は、架橋性樹脂塗料(A)固形分100重量部に対して、蓄熱用マイクロカプセル(B)1〜100重量部含有してなることを特徴とする。蓄熱用マイクロカプセル(B)が配合される塗料が架橋性樹脂塗料なので耐久性が優れる。
本発明に係わる蓄熱性塗料は、蓄熱用マイクロカプセル(B)、示差走査型熱量計で測定された融解潜熱量30J/g以上である。この塗料を屋根に適用した場合の効果について記載すると、該蓄熱用マイクロカプセルの融解潜熱量を30J/g以上とすることにより、太陽光線による熱線によりマイクロカプセル中の芯成分が融解し、そしてその融解熱に相当する熱を吸収し外部からの熱を遮断するので、夏場における室内などの温度が上昇するのを防止することができ、そして温度が下がることにより融解熱に相当する熱を放出し、室内の温度を一定に保つといった効果が顕著である。
【0008】
本発明に係わる蓄熱性塗料は、更に遮熱材(C)を含有してなる。該遮熱材によりより効果的に蓄熱性を発揮することができる。
【0009】
本発明に係わる蓄熱性塗膜形成方法は、基材表面に上記の蓄熱性塗料を塗装し、次いで塗膜を硬化させることを特徴とする。硬化性塗膜が形成できるので、特に屋外においても長期間蓄熱性を保持することができ耐久性が優れる。
【0010】
本発明に係わる蓄熱性塗膜形成方法は、上記蓄熱性塗膜の上層及び/又は下層に遮熱性塗膜を形成してなる複層塗膜である。該遮熱性塗膜によりより効果的に蓄熱性を発揮することができる。
【0011】
本発明に係わる蓄熱性塗膜形成物品は、上記蓄熱性塗料によって形成された蓄熱性硬化塗膜を有すること、及び上記蓄熱性塗膜形成方法によって形成された蓄熱性硬化塗膜を有することを特徴とする。蓄熱性塗膜形成物品は、長期間蓄熱性を保持することができ耐久性が優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明塗料は、架橋性樹脂塗料(A)固形分100重量部に対して、蓄熱用マイクロカプセル(B)1〜100重量部含有してなるものである。
【0013】
架橋性樹脂塗料(A):
架橋性樹脂塗料(A)の形態は、架橋性樹脂を使用した粉体塗料、架橋性樹脂の液状樹脂を使用した無溶剤型塗料(架橋性もしくは非架橋性の樹脂をラジカル重合性モノマーに溶解もしくは分散した無溶剤型塗料も含む)、架橋性樹脂を水に溶解もしくは分散した水性塗料、及び架橋性樹脂を有機溶剤に溶解もしくは分散した有機溶剤型塗料(非水分散型塗料も含む)等のいずれの形態であっても構わない。
【0014】
アミノ硬化性樹脂塗料:
該塗料としては、例えば、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂などの基体樹脂と、架橋剤としてのアミノ樹脂からなる組成物があげられる。
【0015】
アクリル樹脂及びビニル樹脂としては、カルボキシル基含有重合性単量体(必要に応じて使用できる、特に水性塗料として使用する場合に配合される)、水酸基含有重合性単量体及びその他の重合性単量体を共重合せしめて得られる、10〜200mgKOH/g、好ましくは25〜70mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有するものが使用できる。
【0016】
カルボキシル基含有重合性単量体は1分子中にカルボキシル基と重合性不飽和結合を有する化合物であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸などがあげられる。水酸基含有重合性単量体は1分子中に水酸基と重合性不飽和結合を有する化合物であり、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素原子数1〜8個のヒドロキシアルキルエステルなどがあげられる。その他の重合性単量体は、カルボキシル基含有重合性単量体及び水酸基含有重合性単量体と共重合可能な、1分子中に重合性不飽和結合を有する化合物であり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アクリル酸デシル等の(メタ)アクリル酸の炭素原子数1〜24個のアルキル又はシクロアルキルエステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等の官能性(メタ)アクリルアミド;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリルアミド、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ビニル単量体;スチレン、ビニルトルエン、プロピオン酸ビニル、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、ビニルプロピオネート、ビニルピバレート、ベオバモノマー(シェル化学製品)等のビニル単量体などがあげられる。上記アクリル樹脂又はビニル樹脂は一般に5000〜40000の範囲内の数平均分子量を有することができる。
【0017】
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価アルコール及び多塩基酸をエステル化反応させてなるポリエステル樹脂が挙げられる。
【0018】
多価アルコールは1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどがあげられる。多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物などがあげられる。さらに、これらの多価アルコールと多塩基酸のエステル化反応において、必要に応じて、アルコール成分の一部として一価アルコール、グリシジル基を有するモノエポキシ化合物を使用し及び/又は酸成分の一部として安息香酸やt−ブチル安息香酸などの一塩基酸を使用することができる。また、ポリエステル樹脂は、ヒマシ油、桐油、サフラワー油、大豆油、アマニ油、トール油、ヤシ油などの油成分又はそれらの脂肪酸で変性されたポリエステル樹脂も包含される。これらのポリエステル樹脂は一般に500〜10000の範囲内の数平均分子量を有することができる。
【0019】
ポリエステル樹脂は10〜200mgKOH/g、好ましくは25〜70mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することができる。
【0020】
アミノ樹脂架橋剤は加熱により基体樹脂と反応して三次元の硬化した塗膜を形成する。かかるアミノ樹脂として、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素、ジシアンジアミドなどとホルムアルデヒドとの縮合又は共縮合によって得られるものがあげられ、さらにこのものを炭素数1〜8のアルコール類で変性したものやカルボキシル基含有アミノ樹脂等も使用することができる。これらのアミノ樹脂は、通常、アミノ基1当量に対してホルムアルデヒド約0.5〜約2当量をpH調節剤(例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、アミン類)を使用し、アルカリ性又は酸性にてそれ自体既知の方法により反応させることによって製造することができる。
【0021】
アミノ硬化性樹脂塗料を有機溶剤系として使用する場合には、上記した樹脂を有機溶剤に溶解もしくは分散することにより得られる。有機溶剤としては、例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、メチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系の溶媒等を使用できる。
【0022】
また、水性として使用する場合には、酸モノマーにより酸基を導入した(通常、5〜300mgKOH/g、好ましくは100mgKOH/gの範囲内の酸価)アクリル樹脂やポリエステル樹脂を中和剤で中和した樹脂を水に溶解もしくは分散することにより得られる。
【0023】
中和剤としては、例えば、アンモニア又はトリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどのアミン類又は水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などの塩基性物質を用いて中和し、この後、適当な固形分にするため水および必要に応じ水と相溶性のある有機溶剤を添加し、水希釈される。
【0024】
また、上記した以外に水性アクリル樹脂は、例えば、イオン性又は非イオン性の低分子又は高分子界面活性物質、水溶性樹脂などを分散安定剤として用い、上記の重合性単量体を水性媒体中でそれ自体既知の方法で乳化重合することによって製造することができる。
【0025】
アミノ樹脂の配合割合(固形分換算)は、水酸基含有樹脂固形分100重量部に対して約10〜200重量部、好ましくは20〜100重量部の範囲である。
【0026】
イソシアネート硬化性樹脂塗料:
該塗料としては、例えば、水酸基などの架橋性官能基を有する、上記したと同様のアクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂などの基体樹脂と、架橋剤としての(ブロック)ポリイソシアネート化合物からなる組成物があげられる。
【0027】
ポリイソシアネート化合物としてはフリーのイソシアネート化合物であってもよいし、ブロックされたイソシアネート化合物でもよい。フリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、もしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、キシレンジイソシアネート、もしくはイソホロンジイソシアネート等の環状脂肪族ジイソシアネート類、トリレンジイソシアネートもしくは4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類等の有機ジイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ジイソシアネートの過剰量と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上掲した各有機ジイソシアネート同志の重合体、更にはイソシアネート・ビゥレット体等が挙げられるが、それらの代表的な市販品の例としては「バーノックD−750、−800、DN−950、−970もしくは15−455」(以上、大日本インキ化学工業(株)製品)、「ディスモジュールL、N、HL、もしくはN3390」(西ドイツ国バイエル社製品)、「タケネートD−102、−202、−110もしくは−123N」(武田薬品工業(株)製品)、「コロネートEH、L、HLもしくは203」(日本ポリウレタン工業(株)製品)又は「デゥラネート24A−90CX」(旭化成工業(株)製品)等が挙げられる。ブロックされたイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、上記、フリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物をオキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、マロン酸エステル、メルカプタン等の公知のブロック剤でブロックしたものが挙げられる。これらの代表的な市販品の例としては「バーノックD−550」(大日本インキ化学工業(株)製品)、「タケネートB−815−N」(武田薬品工業(株)製品)、「アディトールVXL−80」(西ドイツ国ヘキスト社製品)又は「コロネート2507」[(日本ポリウレタン工業(株)製品)等が挙げられる。
【0028】
上記(ブロック)ポリイソシアネート化合物架橋剤の配合割合は、塗膜が硬化し十分な性能を有するように配合すればよいが、水酸基含有樹脂/架橋剤の比率は重量比で80/20〜50/50の範囲がよい。
【0029】
該塗料は、上記した樹脂を上記した有機溶剤に溶解もしくは分散することにより得られる有機溶剤系塗料として使用することができる。また、酸モノマーにより酸基を導入した(通常、5〜300mgKOH/g、好ましくは100mgKOH/gの範囲内の酸価)アクリル樹脂やポリエステル樹脂の酸基を上記中和剤で中和した樹脂を水に溶解もしくは分散することにより得られる水性塗料として使用することができる。
【0030】
酸エポキシ硬化性樹脂塗料:
該塗料としては、例えば、エポキシ樹脂基体と、架橋剤としてのポリカルボン酸化合物からなる組成物があげられる。
【0031】
該エポキシ樹脂としては、例えば、従来から公知の1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂[例えば、エポキシ基を含有するラジカル重合性モノマー(例えば、(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート)、グリシジル(メタ)アクリレート等)の単独ラジカル重合体、該モノマーとその他のラジカル重合性モノマー(例えば(メタ)アクリル酸の炭素数1〜24のアルキル又はシクロアルキルエステル、スチレン等)との共重合体、エポリードGT300(ダイセル化学工業(株)社製、商品名、3官能脂環式エポキシ樹脂)、エポリードGT400(ダイセル化学工業(株)社製、商品名、4官能脂環式エポキシ樹脂)、EHPE(ダイセル化学工業(株)社製、商品名、3官能脂環式エポキシ樹脂)、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ε−カプロラクタム変性ビスフェノール型エポキシ樹脂、ポリビニルシクロヘキセンジエポキサイド等]をポリカルボン酸で変性してなるものが挙げられる。
【0032】
ポリカルボン酸としては、例えば、ポリカルボン酸樹脂(アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等)、ポリカルボン酸化合物(例えば、アジピン酸、セバシン酸、フタール酸等)等が挙げられる。
【0033】
該エポキシ樹脂は、数平均分子量約500〜20000、特に700〜10000の範囲が好ましい。また、1分子中に平均2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。
【0034】
該酸エポキシ硬化性樹脂塗料は、上記有機溶剤に溶解もしくは分散して有機溶剤系塗料として、またカルボキシル基を上記した上記中和剤で中和したものを水分散した水性塗料として使用することができる。
【0035】
また、該塗料に必要に応じて下記加水分解性シラン化合物や樹脂を配合して使用することができる。
【0036】
加水分解性シラン硬化性樹脂塗料:
該塗料としては、加水分解性シラン基及び/又はヒドロキシシラン基含有化合物は1分子中に少なくとも2個の加水分解性シラン基又はヒドロキシシラン基、又は少なくとも1個以上の加水分解性シラン基及びヒドロキシシラン基を含むシラン化合物を含有する塗料である。シラン化合物としては、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン等のジアルコキシシラン類;トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン等のトリアルコキシシラン類;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン等のビニルシラン類;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン類;γーメルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等のその他のシラン類、これらのシラン化合物の縮合物及びビニルシラン類のラジカル(共)重合体等が包含される。
【0037】
該加水分解性シラン硬化性樹脂塗料は、上記有機溶剤に溶解もしくは分散して有機溶剤系塗料として、またそのままもしくは共重合体中にカルボキシル基を導入(上記したカルボキシル基含有不飽和モノマーを使用したもの)し導入したカルボキシル基を上記した中和剤で中和したものを水分散した水性塗料として使用することができる。
【0038】
水酸基エポキシ基硬化性樹脂塗料:
該塗料としては、水酸基を有する樹脂と脂環式骨格および/または有橋脂環式骨格にエポキシ基が直接結合した構造のエポキシ基含有官能基を1分子あたり平均2個以上、好ましくは3個以上有するエポキシ樹脂を硬化性樹脂成分として含有する塗料である。
【0039】
水酸基を有する樹脂としては、例えば、上記アミノ硬化性樹脂塗料に記載した水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂などの基体樹脂以外に、例えば、アルカノールアミンにより導入された水酸基や、エポキシド化合物中に導入されたカプロラクトンの開環物、エポキシ樹脂(ビスフェノールーエピクロルヒドリン反応物等)中の2級水酸基などがあげられる。
【0040】
水酸基の含有量は、水酸基当量で20〜5,000、特に100〜1,000の範囲内が好ましく、特に第1級水酸基当量は200〜1,000の範囲内にあることが望ましい。水酸基を有する樹脂はカチオン性基を有することができる。このカチオン性基により水性化が可能となる。このカチオン性基は、例えば、エポキシ基とカチオン化剤(アミン化合物等)との反応により形成できる。
【0041】
エポキシ樹脂成分における該エポキシ基含有官能基は、脂環式骨格および/または有橋脂環式骨格とエポキシ基とからなり、脂環式骨格は、4〜10員、好ましくは5〜6員の飽和炭素環式環または該環が2個以上縮合した縮合環を含有し、また、有橋脂環式骨格は、上記単環式または多環式環を構成する炭素原子2個の間に直鎖状もしくは分岐鎖状のC1−6(好ましくはC1−4)アルキレン基〔例えば−CH2−、−CH2CH2−、−CH(CH)−、−CH2(CH)CH2−、−C(CH) 2−、−CH(C2)CH2−など〕の橋(エンドメチレン、エンドエチレンなど)が結合した環を含有するものである。エポキシ当量は通常、100〜2,000、好ましくは150〜500、さらに好ましくは150〜250の範囲内にあることができ、また、数平均分子量は通常400〜100,000、好ましくは700〜50,000、さらに好ましくは700〜30,000の範囲内にあるのが適当である。このようなエポキシ基含有官能基を1分子中に2個以上有するエポキシ樹脂[(B)成分]は、例えば、特公昭56−8016号公報、特開昭57−47365号公報、特開昭60−166675号公報、特開昭63−221121号公報、特開昭63−234028号公報などの文献に記載されており、それ自体既知のものを使用することができる。
【0042】
ヒドラジン硬化性樹脂塗料:
該塗料としては、1分子中にヒドラジド基(−CO−NH−NH )を2個以上含有するポリヒドラジド化合物とカルボニル基含有化合物との反応により架橋構造を作る塗料である。
【0043】
ポリヒドラジド化合物の代表的な具体例としては、例えば、カルボジヒドラジド等のジヒドラジド、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、エイコ酸二酸ジヒドラジドなどのC2〜40個の脂肪族カルボン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジド、ピロメリト酸トリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジドなどの芳香族ポリヒドラジド、及びマレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジヒドラジド、ビスセミカルバジド、ポリアクリル酸ポリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジ/カルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインなどのその他のポリヒドラジドなどが挙げられる。
【0044】
ポリヒドラジド化合物の配合割合は、カルボニル基含有化合物の有するカルボニル基に対して0.1〜2当量、好ましくは0.2〜1当量の範囲である。
【0045】
カルボニル基含有化合物は下記カルボニル基含有不飽和モノマーの重合体や必要に応じて上記したその他のラジカル重合反応が可能な不飽和モノマーとの共重合体が使用できる。
【0046】
カルボニル基含有不飽和モノマーは、1分子中に少なくとも1個のケト基又はアルデヒド基と1個のラジカル重合可能な二重結合を有するモノマー、即ち重合可能なモノオレフィン性不飽和のアルデヒド化合物及びケト化合物である。代表的な具体例としては、例えば、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、ホルミルスチロール、(メタ)アクリルアミドピバリンアルデヒド、ダイアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ビニルアルキルケトンなどが挙げられる。これらの中でもダイアセトン(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0047】
酸化重合型硬化性樹脂塗料:
該塗料としては、従来から空気酸化重合により架橋する不飽和脂肪酸を硬化成分として含有する塗料である。該塗料のヨウ素価は35〜90の範囲が好ましい。ヨウ素価はJIS K−0070の方法で測定する。ヨウ素価が30よりも少ないと、酸化重合能力が不十分になり、硬化性が悪くなる。逆にヨウ素価が100を超えると、塗料の貯蔵安定性が悪くなる。
【0048】
不飽和脂肪酸としては、天然または合成系の不飽和脂肪酸がいずれも使用でき、例えば、桐油、アマニ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、サフラワー油、トール油、大豆油、ヤシ油から得られる不飽和脂肪酸が挙げられる。上記脂肪酸は、1種または2種以上を同時に使用してよい。
【0049】
該不飽和脂肪酸を使用した塗料の種類としては、例えば、アルキド樹脂、エポキシ変性アルキド樹脂等が挙げられる。
【0050】
アルキド樹脂としては、例えば、上記乾性油もしくは半乾性油を少なくとも1種類以上の多価アルコールと良く攪拌しながら200〜250℃、10〜100分保持して得られる。必要によっては、その後多塩基酸、多価アルコール等を加えた後200〜250℃で反応させて得られる低分子量のアルキド樹脂であっても良い。
【0051】
使用できる多価アルコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、数平均分子量150〜6000なるポリエチレングリコール或いはポリプロピレングリコール、又それ等のモノアルキルエーテル、ネオペンチルグリコール、ジエチルプロパンジオール、エチルブチルプロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレングリコール付加体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0052】
また多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、安息香酸、アルキル安息香酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、フマール酸等の一価及び多価カルボン酸が挙げられる。これ等の1種及び数種混合して任意の割合にて使用することができる。
【0053】
エポキシ変性アルキド樹脂はエポキシ樹脂と脂肪酸から従来公知の方法で得る。例えば、エポキシ樹脂と脂肪酸を、適当な溶媒(例えば、トルエン、キシレン等)中、縮合触媒を用いて、必要に応じて不活性ガス(例えば、窒素ガス等)雰囲気下において、150〜250℃で、所望の酸価となるまで反応させることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、「エピコート828」、「エピコート1001」、「エピコート1002」、「エピコート1004」、「エピコート1007」および「エピコート1009」(いずれもシェル社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂);「エポトートYD−128」、「エポトートYD−011」、「エポトートYD−012」、「エポトートYD−014」、「エポトートYD−017」および「エポトートYD−019」(東都化成社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂);「エポトートST−5700」(東都化成社製、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂)および「エポトートYDF−2004」(東都化成社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)等の市販のエポキシ樹脂が使用できる。上記エポキシ樹脂は、1種または2種以上を同時に使用してよい。
【0054】
上記エポキシエステル樹脂を、エチレン性不飽和モノマーと反応させて、アクリル変性エポキシエステル樹脂を得たものも使用できる。エチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸およびイタコン酸等の不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸エステル類、並びにそれらの混合物が挙げられる。上記アクリル系モノマー類の内、少なくとも1つがカルボン酸基を包含していることを必須とし、アクリル系モノマー1種または2種以上をスチレンと混合して使用する。
【0055】
酸化重合型硬化性樹脂塗料は有機溶剤系、無溶剤系、水系のいずれの形態であっても構わない。
【0056】
使用出来る乾燥剤としては、特に限定はない。例えばオレイン酸等の脂肪族カルボン酸、ナフテン酸等の脂環族カルボン酸を担体としたコバルト塩、マンガン塩、ジルコニュウム塩、カルシュウム塩、鐵塩、鉛塩等の金属石鹸や当該化合物をアニオン乳化剤、カチオン乳化剤、ノニオン乳化剤等を添加して水性化を施したものや、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジメチルパラトルイジン等の第3級アミンを挙げることができる。これらを単独又は併用して使用することができる。
【0057】
またその添加量に特に制限はないが、0.003〜0.5重量%の範囲が好ましい。0.003重量%(金属分)以下ではその効果が認められず、0.5重量%(金属分)以上使用すれば耐水性が悪くなる等の欠点がある。より好ましい使用量は0.05〜0.4重量%(金属分)の範囲である。
【0058】
光(熱)ラジカル重合型樹脂塗料:
該塗料としては、光又は熱によりラジカル重合反応を生じる不飽和樹脂に必要に応じて紫外線重合開始剤、過酸化触媒、光増感色素を配合したものが使用できる。
不飽和樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、スピラン樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂にラジカル重合性不飽和基が導入された樹脂である。ラジカル重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基やマレイン酸による基などが包含される。
不飽和樹脂の代表例としては、例えば、ウレタン樹脂アクリレート、アクリル樹脂アクリレート、アクリル樹脂マレート、アルキド樹脂アクリレート、ポリエステル樹脂アクリレート、ポリエステル樹脂マレート、フッ素樹脂アクリレート、スピラン樹脂アクリレート、ポリエーテル樹脂アクリレート、エポキシ樹脂アクリレートなどが挙げられる。
【0059】
紫外線重合開始剤としては、従来から公知のものが使用できる。
【0060】
具体的には、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−ter−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−ter−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシフェノキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリンプロパン−1などのアセトフェノン系化合物、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テルなどのベンゾイン系化合物、ジメチルベンジルケタ−ル、アシロホスフィンオキシドなどが挙げられる。これらの中でも、アセトフェノン系化合物が好ましい。
【0061】
上記した紫外線重合開始剤の配合割合は、不飽和樹脂合計量100重量部当たり、通常、約0.1〜10重量部配合することが好ましい。
【0062】
更に、上記した紫外線重合開始剤による光架橋反応を促進させるために光重合促進剤を配合することができる。具体的には、例えば、トリエチルアミン、トリエタノ−ルアミン、2−ジメチルアミノエタノ−ルなどの第3級アミン類、トリフェニルホスフィンなどのアルキルホスフィン類、β−チオグリコ−ルなどのチオ−ル類などが挙げられる。
光増感剤としては、従来から公知の光増感色素を使用することができる。このものとしては、例えば、チオキサンテン系、キサンテン系、ケトン系、チオピリリウム塩系、ベーススチリル系、メロシアニン系、3ー置換クマリン系、3.4ー置換クマリン系、シアニン系、アクリジン系、チアジン系、フェノチアジン系、アントラセン系、コロネン系、ベンズアントラセン系、ペリレン系、メロシアニン系、ケトクマリン系、フマリン系、ボレート系等の色素が挙げられる。これらのものは1種もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。ボレート系光増感色素としては、例えば、特開平5-241338号公報、特開平7-5685号公報及び特開平7-225474号公報等に記載のものが挙げられる。
【0063】
また、光線の照射源としては、従来から使用されているもの、例えば、電子線、超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等の各光源により得られる光源等が挙げられる。熱線としては、例えば半導体レーザー(830nm)、YAGレーザー(1.06μm)、赤外線等が挙げられる。
【0064】
光(熱)カチオン重合型樹脂塗料:
該塗料としては、光カチオン重合性化合物が、光カチオン重合開始剤、光増感剤のもとで光を照射して架橋または重合反応によって高分子量化する塗料である。
【0065】
光(熱)カチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、スチレン類、ビニル化合物、ビニルエーテル類、スピロオルソエステル類、ビシクロオルソエステル類、スピロオルソカーボナート類、環状エーテル類、ラクトン類、オキサゾリン類、アジリジン類、シクロシロキサン類、ケタール類、環状酸無水物類、ラクタム類、アルコキシシラン化合物類およびアリールジアルデヒド類などがあげられる。
【0066】
エポキシ化合物としては、従来、公知の芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などがあげられる。
【0067】
芳香族エポキシ化合物の例としては、フェニルグリシジルエーテルなどの単官能エポキシ化合物や、少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテルであって、例えばビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物またはビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル類、ノボラック型エポキシ樹脂類(例えば、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂等)、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0068】
脂環式エポキシ化合物としては、4−ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、ノルボルネンモノエポキサイド、リモネンモノエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、2,2−ビス〔4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル〕ヘキサフルオロプロパン、BHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製、脂環式エポキシ樹脂(軟化点71℃)などがあげられる。
【0069】
脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールモノグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンモノグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグルシジルエーテル、アリルグルシジルエーテル、2−エチルヘキシルグルシジルエーテルなどがあげられる。
【0070】
スチレン類としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレンなどがあげられる。ビニル化合物としては、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドンなどがあげられる。
【0071】
ビニルエーテル類としては、例えばn−(またはiso−、t−)ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングルコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングルコールジビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルグリコール、ネオペンチルグリコールモノビニルグリコール、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジグリセロールトリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、2,2−ビス(4−シクロヘキサノール)プロパンジビニルエーテル、2,2−ビス(4−シクロヘキサノール)トリフルオロプロパンジビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、アリルビニルエーテルなどのアルケニルビニルエーテル類、エチニルビニルエーテル、1−メチル−2−プロペニルビニルエーテルなどのアルキニルビニルエーテル類、4−ビニルエーテルスチレン、ハイドロキノンジビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、フェノキシエチレンビニルエーテル、p−ブロモフェノキシエチレンビニルエーテルなどのアリールビニルエーテル類、1,4−ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、N−m−クロロフェニルジエタノールアミンジビニルエーテル、m−フェニレンビス(エチレングリコール)ジビニルエーテルなどのアラルキルジビニルエーテル類、ウレタンポリビニルエーテル(例えば、ALLIED−SIGNAL社製、VECtomer2010)などをあげることができる。
【0072】
スピロオルソエステル類としては、1,4,6−トリオキサスピロ(4,4)ノナン、2−メチル−1,4,6−トリオキサスピロ(4,4)ノナン、1,4,6−トリオキサスピロ(4,5)デカンなどが、ビシクロオルソエステル類としては、1−フェニル−4−エチル−2,6,7−トリオキサビシクロ(2,2,2)オクタン、1−エチル−4−ヒドロキシメチル−2,6,7−トリオキサビシクロ(2,2,2)オクタンなどが、スピロオルソカーボネート類としては、1,5,7,11−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、3,9−ジベンジル−1,5,7,11−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどのような環状エーテル類があげられる。
【0073】
環状エーテル類としては、オキセタン、フェニルオキセタンなどのオキセタン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのテトラヒドロフラン類、テトラヒドロビラン、3−プロピルテトラヒドロビランなどのテトラヒドロビラン類およびトリメチレンオキサイド、s−トリオキサンなどがあげられる。ラクトン類としては、β−プロピオラクトン、γ−ブチルラクトン、δ−カプロラクトン、δ−バレロラクトンなどがあげられる。オキサゾリン類としては、オキサゾリン、2−フェニルオキサゾリン、2−デシルオキサゾリンなどがあげられる。
【0074】
アジリジン類としては、アジリジン、N−エチルアジリジンなどがあげられる。シクロシロキサン類としては、ヘキサメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリフェニルトリメチルシクロトリシロキサンなどがあげられる。ケタール類としては、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン、2−フェニル−1,3−ジオキサン、2,2−ジオクチル−1,3−ジ オキソランなどがあげられる。環状酸無水物類としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸などが、ラクタム類としては、β−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−カプロラクタムなどがあげられる。またアリールジアルデヒド類としては1,2−ベンゼンジカルボキシアルデヒド、1,2−ナフタレンジアルデヒドなどがあげられる。
これらの光カチオン重合性化合物100重量部に対して光増感剤は0.01〜10重量部の範囲で用いるのが望ましく、好ましくは0.1〜5重量部の範囲が望ましい。光増感剤が0.01重量部未満になると硬化性が低下し、一方10重量部を超えると値段が高くなったり耐水性等の塗膜性能が低下したりするので好ましくない。
【0075】
光カチオン重合開始剤としては、従来から公知のものを使用することができる。開始剤としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩等が好ましいものとして挙げられる。具体的には、商品名として例えば、サイラキュアUVI−6970、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6950(以上、米国ユニオンカーバイド社製、商品名)、イルガキュア261(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、SP−150、SP−170(以上、旭電化工業株式会社製、商品名)、CG−24−61(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、DAICAT−II(ダイセル化学工業社製、商品名)、CI−2734、CI−2758、CI−2855(以上、日本曹達社製、商品名)、PI−2074(ローヌプーラン社製、商品名、ペンタフルオロフェニルボレートトルイルクミルヨードニウム塩)、FFC509(3M社製、商品名)、BBI102(ミドリ化学社製、商品名)等が挙げられる。
【0076】
光カチオン重合剤はこれらの光カチオン重合性化合物100重量部当り、0.01〜20重量部の範囲で用いるのが望ましく、好ましくは0.1〜10重量部の範囲が望ましい。光カチオン重合開始剤が0.01重量部未満になると硬化性が低下し、一方20重量部を超えると値段が高くなったり耐水性等の塗膜性能が低下したりするので好ましくない。
【0077】
活性エネルギー線に使用される光源としては、例えば特に制限なしに超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、ケミカルランプ灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、タングステン灯等やアルゴンレーザー(488nm)、YAGーSHGレーザー(532nm)、UVレーザー(351〜364nm)に発振線を持つレーザーも使用できる。熱線としては、例えば半導体レーザー(830nm)、YAGレーザー(1.06μm)、赤外線等が挙げられる。
蓄熱用マイクロカプセル(B):
該蓄熱マイクロカプセル(B)は、相転移自在な有機化合物を主成分とする芯物質の周囲が、カプセル壁樹脂膜で形成されたものである。
該芯物質としては、相転移に伴う潜熱を利用して熱を蓄える目的で用いられる。例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪酸、アルコール等が挙げられ、種類は特に限定されないが、特に住宅用の保温材として使用する場合、室温付近で相転移を起こす有機化合物、即ち、0℃以上50℃未満の融点を持つ脂肪族炭化水素を使用することが好ましく、具体例として、例えば、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、ドコサン、テトラデカン、ペンタデカン等が挙げられる。これらの炭化水素は、炭素数の増加と共に融点が上昇するため、目的に応じた融点を有する炭化水素を選択したり、2種以上の炭化水素を混合して使用することが可能である。上記有機化合物には、マイクロカプセルの熱伝導性、比重を調節する目的で、カーボン、金属粉、アルコール等が添加されても良い。
【0078】
カプセル壁樹脂膜で使用される樹脂としては、従来から公知の樹脂を特に制限なしに使用することができる。具体的には、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリシロキサン、ポリエステル、アミノプラスト樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、セラック、ポリエチレン、ポリカ−ボネートなどが挙げられる。これらの中でも、特にポリアクリル酸エステル、ポリシロキサン、メラミン樹脂、ポリエステルなどが耐候性などの性能に優れることからこのものを使用することが好ましい。
【0079】
本発明において用いられる蓄熱用マイクロカプセル(B)の製法は、合成反応を利用した界面重合法やin−situ法などの化学的製法、水溶液からの相分離法又は有機溶液からの相分離法によるコアセルベーション法やエマルションの界面の沈降法を利用したマイクロカプセル化法などの物理化学的製法、スプレードライング法などの機械的製法などの従来から公知のマイクロカプセル化法、酵母菌を用いた手法(特開昭63−88033号公報等)を使用することができる。
本発明において用いられる蓄熱用マイクロカプセル(B)は、平均粒子径が0.01〜3000μm、好ましくは0.1〜1000μm、更に好ましくは0.1〜10μmである。該平均粒子径は、蓄熱用マイクロカプセルを水媒体中に分散させ、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA−910、堀場製作所社製)を用いて測定した。得られた値は、個数平均によって算定された値である。
【0080】
本発明において用いられる蓄熱用マイクロカプセル(B)の好適なものについて、以下に具体的に説明する。
【0081】
1、カプセル壁膜として、ポリアクリル酸エステルを使用した合成反応を利用したマイクロカプセル化(界面重合法)について
該マイクロカプセル化は、例えば、相転移自在な有機化合物を主成分とする芯成分とカプセル壁の形成に用いられるラジカル重合性モノマーの混合物を、水中に乳化懸濁し、油滴中のモノマーをラジカル重合することによって得られる。
【0082】
ポリ(メタ)アクリレートの重合に用いられる(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の極性基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、必要に応じてその他の重合性モノマー、例えば、スチレン及びα‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン、p‐クロロスチレン等のスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
更に、カプセル壁の機械的強度を改善する目的で、必要に応じて多官能性モノマーが添加されてもよい。上記多官能性モノマーとしては、特に限定はされないが、例えば、ジ(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1, 6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、トリ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、その他の多官能性モノマーとしては、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート等のジもしくはトリアリル化合物、ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等が挙げられ、これらは単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
上記懸濁重合法では、分散剤及び重合開始剤が用いられる。
【0084】
上記分散剤は、上記潜熱貯蔵材とモノマーの混合乳化懸濁液の分散安定性を向上させ、重合を効率的に行う目的で添加され、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、セルロース系分散剤、ゼラチン等が挙げられる。特に望ましくはアニオン系界面活性剤であり、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
上記重合開始剤としては、油溶性のフリーラジカルを発生する化合物、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキシジカーボネート、α−クミルパーオキシネオデカノエート等の有機系過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
【0085】
2、カプセル壁膜として、オルガノシロキサンを使用した合成反応を利用したマイクロカプセル化(界面重合法)について
マイクロカプセル化は、相転移自在な有機化合物を主成分とする芯成分とカプセル壁の形成に用いられるオルガノシロキサンの混合物を、水中に乳化懸濁し、油滴中のモノマーを重合することによって得られる。
オルガノシロキサンとしては、特に限定されないが、3員環以上の環状オルガノシロキサンが重合操作上好ましく、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。このポリオルガノシロキサンを主成分とするカプセル壁の役割は、上記芯物質の表面を三次元的に覆い、この芯物質の流出を防止することである。
上記のポリオルガノシロキサンには、カプセル壁の機械的強度を改善する目的で、必要に応じて、多官能性シロキサンやラジカル重合性モノマーが添加されてもよい。上記多官能性シロキサンとしては、特に限定されないが、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
上記ラジカル重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸等の極性基含有ビニルモノマー、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
また、上記ラジカル重合性モノマーが添加される際には、必要に応じてシランカップリング剤が添加されても良い。このシランカップリング剤としは、特に限定されないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0088】
蓄熱用マイクロカプセルの製造方法は、特に限定されず、例えば、相転移自在な有機化合物を主成分とする芯物質と、カプセル壁の形成に用いられるオルガノシロキサンとの混合物を、水中に乳化懸濁し、油滴中のオルガノシロキサンを重縮合又は開環重合する懸濁重合法によって得ることができる。
【0089】
3、カプセル壁膜として、メラミン−ホルムアルデヒドを使用して合成反応を行ったマイクロカプセル化(界面重合法)について
該マイクロカプセル化は、例えば、アミノプラスト樹脂の原料を水に溶解し、PH及び反応温度を調整しながらメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を製造し、次いでこのものと相転移自在な有機化合物を主成分とする芯物質とを混合し、更にメラミン−ホルムアルデヒドを縮合させることにより製造される。
アミノプラスト樹脂の原料としては、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン等のメラミン及び37%ホルムアルデヒド水溶液が挙げられる。
また、分散剤として、スチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液を使用することが好ましい。
【0090】
該蓄熱用マイクロカプセル(B)は、示差走査型熱量計で測定された融解潜熱量30J/g(測定融点温度0〜60℃)以上である。
【0091】
本発明塗料は、架橋性樹脂塗料(A)固形分100重量部に対して、蓄熱用マイクロカプセル(B)1〜100重量部、好ましくは2〜80重量部である。蓄熱用マイクロカプセル(B)が1重量部未満になると蓄熱性が劣り、一方、100重量部を越えると塗膜外観(平滑性、光沢など)が劣ったり、耐水性、耐候性などの塗膜性能が劣る。
【0092】
遮熱材(C):
該遮熱材(C)としては、波長範囲700〜2400nmの電磁波に対し、少くとも40%以上の反射率を有する遮熱材が好ましい。
【0093】
通常この範囲の波長は、熱線として作用する可視光の長波長部分、近赤外線、中近外線の短波長部分に相当する。700nm未満の波長帯は、可視光と紫外線域であり、熱線としての作用が比較的少ない部分である。又、2400nmを越え25000nm迄の波長帯の電磁波は熱線として作用するが、一般に高温物体の熱放射中に含まれる電磁波としては、エネルギー強度があまり高くなく問題とならない。
【0094】
反射率は、遮熱材と架橋性樹脂とからなる塗膜を波長範囲700〜2400nm領域における反射率をもとに、JIS A5759に記載の方法、又は日立製作所社製の分光光度計U―3500スペクトロフォトメータにて計測することができる。測定条件は、スキャンスピード:600nm/分、サンプリング間隔:自動設定、スリット(可視):固定2mm、スリット(近赤外):自動制御、Pbs感度:2、ホトマル電圧:自動制御、標準板:硫酸バリウムとした。
【0095】
遮熱材として、着色顔料、金属粉末、金属以外の微細粒子などが挙げられる。
【0096】
着色顔料として、具体的には、二酸化チタン(チタンCR97(石原チタン工業社製)等の白色顔料、ダイピロキサイドカラーブラック9590、ダイピロキサイドカラーブラウン9290(大日精化工業社製)、FastogenSuper Black MX(大日本インキ化学工業社製)、パリオゲン Schwarz S0084(BASF社製)、パリオトールブラック L0080(BASF社製)等の黒色顔料、ダイピロキサイドカラーブルー9453(大日精化工業社製)、Fastogen Blue 5485(大日本インキ化学工業社製)、Fastogen Blue RS(大日本インキ化学工業社製)、シアニンブルー5240KB(大日精化工業社製)等の青色顔料、トダカラー120ED(戸田工業社製)、Fastogen Super Magenta RH(大日本インキ化学工業社製)、Fastogen Red 7100Y(大日本インキ化学工業社製)、ルビクロンレッド400RG(大日本インキ化学工業社製)等の赤色顔料、Symuler Fast Yellow 4192(大日本インキ化学工業社製)、シコパールイエロー L−1110(BASF社製)等の青色顔料、ダイピロキサイドカラーグリーン9310(大日精化工業社製)、ファーストゲングリーン2YK(大日本インキ化学工業社製)、リオノールグリーン6YKP−N(東洋インキ製造社製)等の緑色顔料等を挙げることができる。
【0097】
金属粉末として、具体的には、(鱗片状)アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、鉛粉、亜鉛末、リン化鉄、パール状金属コーティング雲母粉等を挙げることができる。
また、上記以外にも、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、マイカ粉、セラミック粉末、ガラスビーズ、中空ガラスビーズなどが挙げられる。
【0098】
本発明の塗料には、更に必要に応じて従来から塗料に配合される添加剤、例えば、上記以外の蓄熱剤(例えば、ポリブタジェンなど)、上記以外の着色顔料、上記遮熱材以外の体質顔料、上記遮熱材以外のメタリック顔料、着色パール顔料、流動性調整剤、ハジキ防止剤、垂れ止め防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、つや消し剤、艶出し剤、防腐剤、硬化促進剤、硬化触媒、擦り傷防止剤、消泡剤等を特に制限なしに使用することができる。
【0099】
遮熱材(C)を配合する場合には、その配合割合は、使用する材料によって適宜決めれば良いが、架橋性樹脂塗料(A)固形分100重量部に対して、一般的には遮熱材(C)1〜200重量部、好ましくは2〜100重量部である。遮熱材(C)が1重量部未満になると蓄熱性が低下したり、一方、100重量部を越えると塗膜外観(平滑性、光沢など)が低下したり、耐水性、耐候性などの塗膜性能が低下したりする。
【0100】
本発明塗膜形成方法は、上記した蓄熱性塗料を塗装し、次いで塗膜を硬化させる方法である。
【0101】
塗装される被塗物としては、特に制限されずに、例えば、工場、住宅、物置、畜舎等の建築物の内外装材料、保温便座、浴室床保温、浴槽保温等の産業資材材料、自動車、車両、船舶、航空機等の輸送材料、家電製品、精密機器等のその他の材料などが挙げられる。
【0102】
塗装は、従来から公知の塗装方法、例えば、刷毛、ローラー、ロールコーター、スピンコーター、カーテンロールコーター、スプレー、静電塗装、浸漬塗装、流し塗り、電着塗装、シルク印刷等の手段により塗布することができる。
【0103】
塗膜の乾燥(硬化)は、塗料の種類に応じて適宜決めれば良い。
塗装膜厚は、通常、約1μm〜約5000μm、特に約2μm〜約1000μmの範囲内が好ましい。
【0104】
本発明の複層塗膜は、蓄熱性塗膜の上層及び/又は下層に遮熱性塗膜を形成してなるものである。具体的には、上記被塗物に必要に応じて下塗り塗装や中塗り塗装を行った塗装物表面に、遮熱性下塗り塗料を用いて形成した下塗り遮熱性塗膜/本発明蓄熱性塗料を用いて形成した蓄熱性塗膜/遮熱性上塗り塗料を用いて形成した上塗り遮熱性塗膜、遮熱性下塗り塗料を用いて形成した下塗り遮熱性塗膜/本発明蓄熱性塗料を用いて形成した蓄熱性塗膜、本発明蓄熱性塗料を用いて形成した蓄熱性塗膜/遮熱性上塗り塗料を用いて形成した上塗り遮熱性塗膜などの複層塗膜が挙げられる。
【0105】
上記した遮熱性下塗り塗料及び下塗り塗料は、例えば、上記した架橋性樹脂塗料(A)に上記した遮熱材(C)を配合したものが使用できる。
【0106】
遮熱材(C)の配合割合は、使用する材料によって適宜決めれば良いが、架橋性樹脂塗料(A)固形分100重量部に対して、遮熱材(C)1〜200重量部、好ましくは2〜100重量部である。遮熱材(C)が1重量部未満になると遮熱性が低下したり、一方、100重量部を越えると塗膜外観(平滑性、光沢など)が低下したり、耐水性、耐候性などの塗膜性能が低下したりする。
【0107】
下塗り及び上塗り塗料の塗装は、従来から公知の塗装方法、例えば、刷毛、ローラー、ロールコーター、スピンコーター、カーテンロールコーター、スプレー、静電塗装、浸漬塗装、流し塗り、電着塗装、シルク印刷等の手段により塗布することができる。
【0108】
塗膜の乾燥(硬化)は、塗料の種類に応じて適宜決めれば良い。
塗装膜厚は、通常、約1μm〜約5000μm、特に約2μm〜約1000μmの範囲内が好ましい。
本発明物品は、上記蓄熱性塗料及び上記塗膜形成方法によって形成された蓄熱性硬化塗膜を有する塗装物品である。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を掲げて本発明を詳細に説明する。なお実施例及び比較例中の「部」及び「%」は重量基準である。また、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0110】
実施例
マイクロカプセルAの製造例
50℃にて融解させた所定量の脂肪族炭化水素(SCP−0018 日本精鑞社製、パラフィンワックス、融点18.7℃、融解熱231J/g)50g、カプセル壁形成用モノマー(メタクリル酸3g、メチルメタクリレート47g、トリメチロールプロパントリアクリレート1g)、開始剤(2,2‘−アゾイソブチリニトリル0.5g)を混合、撹拌し、ついでイオン交換水(全使用量の60重量%)、分散剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10重量%水溶液)1.5gを添加、撹拌して乳化モノマー液を調製した。一方、重合器に残りのイオン交換水(全使用量の40重量%)を入れ、10分間攪拌した後、上記乳化モノマー液を一括に添加した。 槽内を窒素置換した後に重合槽を80℃まで昇温し重合を開始した。30分で重合を終了し、その後1時間の熟成期間を行った後、重合槽を室温まで冷却した。固形分濃度約50重量%、平均粒径約3μmのマイクロカプセルスラリーAを得た。
【0111】
また、このスラリーを乾燥してマイクロカプセル粉末Aを得た。
【0112】
マイクロカプセルBの製造例
50℃にて融解させた所定量の脂肪族炭化水素(SCP−0018 日本精鑞社製、パラフィンワックス、融点18.7℃、融解熱231J/g)50g及びカプセル壁形成用モノマー(オクタメチルシクロテトラシロキサン38g、テトラエトキシシラン1g、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン1g、n−ブチルアクリレート9.5、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.5gを混合・撹拌し、次にイオン交換水(全使用量の60重量%)及び分散剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10重量%水溶液)1.5を添加、撹拌して乳化モノマー液を調製した。一方、重合器に残りのイオン交換水、及び重合開始剤を入れ、10分間攪拌した後、上記乳化モノマー液を一括で添加した。重合槽を90℃まで昇温して重合を開始して、3時間で重合を終了し、重合槽を室温まで冷却した後、12時間の熟成期間を置いた。得られた蓄熱用マイクロカプセルを含むスラリーは、固形分濃度約50重量%、平均粒子径約3μmのマイクロカプセルスラリーBを得た。
【0113】
また、このスラリーを乾燥してマイクロカプセル粉末Bを得た。
【0114】
マイクロカプセルCの製造例
メラミン粉末5gに37%ホルムアルデヒド水溶液6.5gと水10gを加え、pHを8に調製した後、約70℃まで加熱しメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を得た。
pHを4.5に調整した5%のスチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100g中に、相変化を伴う化合物としてパラフィン(融点約32℃、融解熱49.5J/g)80gを激しく攪拌しながら添加し、粒子径が2.6μmになるまで乳化を行なった。
上記乳化液に上記メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液全量を添加し70℃で2時間攪拌を施した後、pHを9に調整してカプセル化を終了した。得られたマイクロカプセルの体積平均粒子径は2.8μmのマイクロカプセルスラリーCを得た。
【0115】
また、このスラリーを乾燥してマイクロカプセル粉末Cを得た。
【0116】
実施例1
レタンPG−80白色(関西ペイント株社製、商品名、イソシアネ−ト硬化型アクリル樹脂塗料)固形分100部に対して上記したマイクロカプセル粉末Aを80部(固形分)配合して実施例1の塗料を製造した。
【0117】
得られた塗料を乾燥膜厚500μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し80℃で20分間乾燥をおこなった。
【0118】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。レタンPG−80白色(関西ペイント株社製、商品名、イソシアネ−ト硬化型アクリル樹脂塗料)のみで製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である18℃付近での保温時間が長くなった。
【0119】
得られた実施例1で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。
【0120】
実施例2
窒素ガスを還流した清浄な容器に、亜麻仁油300部、大豆油250部、D・グリセリン20.5部、ペンタエリスリトール78.1部 水酸化リチウム0.05部を仕込み攪拌し乍ら250℃に1時間保持した後、200℃に冷却し、ペンタエリスリトール50部、無水フタル酸300部を仕込み230℃に昇温し、酸価30になるまで4〜5時間反応した後、150℃に冷却し無水フタル酸27部を加えて2時間攪拌後、nーブチルセロソルブ465部、トリエチルアミン75部を加えて良く攪拌し不揮発分65%の樹脂液を得た。
【0121】
得られた樹脂液固形分100部に対して上記したマイクロカプセル粉末Aを80部(固形分)配合して実施例2の塗料を製造した。
【0122】
得られた塗料を乾燥膜厚500μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し80℃で20分間乾燥をおこなった。
【0123】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。マイクロカプセル粉末Aを配合しない塗料で製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である18℃付近での保温時間が長くなった。
【0124】
得られた実施例2で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。
【0125】
実施例3
ソフレックス1630クリア−(関西ペイント株式会社、商品名、メラミン硬化型アクリル樹脂系クリア−)固形分100部に対して上記したマイクロカプセル粉末Aを80部(固形分)配合して実施例3の塗料を製造した。
【0126】
得られた塗料を乾燥膜厚500μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し120℃で20分間乾燥をおこなった。
【0127】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。マイクロカプセル粉末Aを配合しない塗料で製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である18℃付近での保温時間が長くなった。
【0128】
得られた実施例3で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。
【0129】
実施例4
KINO#400クリア−(関西ペイント株式会社、商品名、酸エポキシ硬化型アクリル樹脂系クリア−)固形分100部に対して上記したマイクロカプセル粉末Aを80部(固形分)配合して実施例4の塗料を製造した。
【0130】
得られた塗料を乾燥膜厚500μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し140℃で20分間乾燥をおこなった。
【0131】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。マイクロカプセル粉末Aを配合しない塗料で製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である18℃付近での保温時間が長くなった。
【0132】
得られた実施例4で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。
【0133】
実施例5
窒素ガスを還流した清浄な容器に、トルエン85部を仕込み110℃に加熱した後、スチレン10部、メチルメタクリレ−ト20部、イソブチルメタクリレ−ト65部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5部の混合液に重合開始剤2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を2部溶解させた溶液を約3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で2時間放置し、トルエンを15部を加えて反応を終了し、冷却して不揮発分50%の粘稠な加水分解性シラン硬化性アクリル樹脂溶液を得た。
【0134】
得られた樹脂溶液固形分100部に対して上記したマイクロカプセルA粉末を80部(固形分)配合して実施例5の塗料を製造した。
【0135】
得られた塗料を乾燥膜厚500μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し140℃で20分間乾燥をおこなった。
【0136】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。マイクロカプセル粉末Aを配合しない塗料で製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である18℃付近での保温時間が長くなった。
【0137】
得られた実施例5で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。
【0138】
実施例6
清浄な容器に、脱イオン水242部、Newcol 707SF(第1工業製薬株式会社、商品名、固形分30%)2.4部を加え、窒素置換後、80℃に保つ。下記組成のプレエマルションを滴下する直前に0.7部の加硫酸アンモニウムを加え、プレエマルションを3時間にわたって滴下した。
脱イオン水 352部
ダイアセトンアクリルアミド 33部
アクリル酸 3.3部
スチレン 134部
メチルメタクリレ−ト 255部
2−エチルヘキシルアクリレ−ト 147部
n−ブチルアクリレ−ト 98部
Newcol 707SF 64.5部
過硫酸アンモニウム 1.3部
滴下終了後30分より、30分間0.7部の過硫酸アンモニウムを7部を脱イオン水に溶かした溶液を滴下し、さらに2時間80℃に保って不揮発分51%のヒドラジン硬化型アクリルエマルションを得た。
【0139】
このヒドラジン硬化型アクリルエマルション溶液に、架橋剤としてアジピン酸ジヒドラジドをアンモニア水でpHを8〜9に調整後、カルボニル基1当量に対してヒドラジド基0.3当量混合してエマルション製造した。
【0140】
得られたエマルション固形分100部に対して上記したマイクロカプセルスラリーAを80部(固形分)配合して実施例6の塗料を製造した。
【0141】
得られた塗料を乾燥膜厚500μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し120℃で20分間乾燥をおこなった。
【0142】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。マイクロカプセル粉末Aを配合しない塗料で製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である18℃付近での保温時間が長くなった。
【0143】
得られた実施例6で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。
【0144】
実施例7
窒素ガスを還流した清浄な容器に、トルエン85部を仕込み110℃に加熱した後、スチレン20部、メチルメタクリレ−ト20部、n−ブチルメタクリレ−ト30部、グリシジルメタクリレ−ト30部および重合開始剤2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)4部溶解させた溶液を約3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で5時間放置し、アクリル酸15部、ハイドロキノンモノメチルエ−テル0.05部およびテトラエチルアンモニウムブロマイド0.2部を仕込み、空気を吹き込みながら110℃で5時間反応し、酸価がほとんど0になったことを確認し、トルエンを35部を加えて反応を終了し、冷却して不揮発分50%の粘稠なラジカル硬化性アクリル樹脂溶液を得た。
【0145】
この樹脂溶液のDSC測定によるガラス転移温度は37℃、GPC(ゲルパ−ミッションクロマトグラフ)測定による数平均分子量は5000で、1分子中の不飽和基の平均含有個数は9.0個だった。
【0146】
次いで、得られた樹脂溶液固形分100部に対して上記したマイクロカプセル粉末Aを80部配合して実施例7の塗料を製造した。
【0147】
得られた塗料を乾燥膜厚500μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し1000mj/cm2の条件で紫外線を照射した。
【0148】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。マイクロカプセル粉末Aを配合しない塗料で製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である18℃付近での保温時間が長くなった。
【0149】
得られた実施例7で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。
【0150】
実施例8
実施例7のラジカル硬化性アクリル樹脂溶液100部に「パ−ブチルZ」(日本油脂社、商品名、過酸化物)2部を混合した溶液固形分100部に対して上記したマイクロカプセル粉末Aを80部配合して実施例8の塗料を製造した。
【0151】
得られた塗料を乾燥膜厚500μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し1000mj/cm2の条件で紫外線を照射した。
【0152】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。マイクロカプセル粉末Aを配合しない塗料で製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である18℃付近での保温時間が長くなった。
【0153】
得られた実施例8で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。
【0154】
実施例9
窒素ガスを還流した清浄な容器に、トルエン85部を仕込み110℃に加熱した後、3.4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレ−ト40部、メチルメタクリレ−ト20部、n−ブチルメタクリレ−ト40部の混合液に重合開始剤2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を2部溶解させた溶液を約3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で2時間放置し、トルエンを15部を加えて反応を終了し、冷却して不揮発分50%の粘稠なカチオン硬化性アクリル樹脂溶液を得た。
この樹脂溶液のDSC測定によるガラス転移温度は34℃、GPC(ゲルパ−ミッションクロマトグラフ)測定による数平均分子量は8000で、1分子中のエポキシ基個数は17.6だった。
【0155】
得られた樹脂溶液100部に「サイラキュアUVI−6990」(ユニオンカ−バイド社製、光カチオン・ラジカル重合開始剤)0.5部、上記したマイクロカプセル粉末Aを80部配合して実施例9の塗料を製造した。
【0156】
得られた塗料を乾燥膜厚500μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し1000mj/cm2の条件で紫外線を照射した。
【0157】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。マイクロカプセル粉末Aを配合しない塗料で製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である18℃付近での保温時間が長くなった。
【0158】
得られた実施例9で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。
【0159】
実施例10
実施例9で使用したカチオン硬化性アクリル樹脂溶液100部に「サンエイドSI−80L」(日本油脂社、商品名、過酸化物)2部、上記したマイクロカプセル粉末Aを80部配合して実施例10の塗料を製造した。
【0160】
得られた塗料を乾燥膜厚500μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し80℃20分の条件で加熱した。
【0161】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。マイクロカプセル粉末Aを配合しない塗料で製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である18℃付近での保温時間が長くなった。
【0162】
得られた実施例10で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。
【0163】
実施例11
ソフレックス1630クリア−(関西ペイント株式会社、商品名、メラミン硬化型アクリル樹脂系クリア−)固形分100部に対して上記したマイクロカプセル粉末Bを80部(固形分)配合して実施例11の塗料を製造した。
【0164】
得られた塗料を乾燥膜厚500μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し120℃で20分間乾燥をおこなった。
【0165】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。マイクロカプセル粉末Bを配合しない塗料で製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である18℃付近での保温時間が長くなった。
【0166】
得られた実施例11で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。
【0167】
実施例12
ソフレックス1630クリア−(関西ペイント株式会社、商品名、メラミン硬化型アクリル樹脂系クリア−)固形分100部に対して上記したマイクロカプセル粉末Cを80部(固形分)配合して実施例12の塗料を製造した。
【0168】
得られた塗料を乾燥膜厚500μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し120℃で20分間乾燥をおこなった。
【0169】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。マイクロカプセル粉末Cを配合しない塗料で製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である32℃付近での保温時間が長くなった。
【0170】
得られた実施例12で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。
【0171】
実施例13
ソフレックス1630クリア−(関西ペイント株式会社、商品名、メラミン硬化型アクリル樹脂系クリア−)固形分100部に対してチタンCR97(石原チタン工業株式会社製、商品名)50gを分散したものを下塗り遮蔽性塗料とした。
【0172】
ソフレックス1630クリア−(関西ペイント株式会社、商品名、メラミン硬化型アクリル樹脂系クリア−)固形分100部に対して上記したマイクロカプセル粉末Aを80部(固形分)配合して実施例13用の蓄熱塗料を製造した。
【0173】
得られた下塗り遮蔽性塗料を乾燥膜厚50μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し120℃で20分間乾燥をおこなった(この塗膜の反射率は78%であった。)。次いで、蓄熱性塗料を乾燥膜厚500μmになるように遮蔽性塗膜表面に塗装し120℃で20分間乾燥をおこなった。
【0174】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。マイクロカプセル粉末Cを配合しない塗料で製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である32℃付近での保温時間が長くなった。
【0175】
得られた実施例13で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。
【0176】
実施例14
ソフレックス1630クリア−(関西ペイント株式会社、商品名、メラミン硬化型アクリル樹脂系クリア−)固形分100部に対してチタンCR97(石原チタン工業株式会社製、商品名)50gを分散したものを上塗り遮蔽性塗料(この塗膜の反射率は78%であった。)とした。
【0177】
ソフレックス1630クリア−(関西ペイント株式会社、商品名、メラミン硬化型アクリル樹脂系クリア−)固形分100部に対して上記したマイクロカプセル粉末Aを10部(固形分)配合して実施例14用の蓄熱塗料を製造した。
【0178】
ソフレックス1630クリア−(関西ペイント株式会社、商品名、メラミン硬化型アクリル樹脂系クリア−)固形分100部に対して、鱗片状アルミニウム顔料10gを分散したものを下塗り遮蔽性塗料(この塗膜の反射率は99%であった。)とした。
【0179】
上記下塗り遮蔽性塗料を乾燥膜厚50μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し120℃で20分間乾燥をおこなった。次いで、蓄熱性塗料を乾燥膜厚500μmになるように遮蔽性塗膜表面に塗装し120℃で20分間乾燥をおこない、次いで上塗り遮蔽性塗料を乾燥膜厚50μmになるように厚み0.12mmのアルミ容器外面に塗装し120℃で20分間乾燥をおこなった。
【0180】
5℃の雰囲気下において、80℃に暖めた後の塗膜の冷却速度を評価した。マイクロカプセル粉末Cを配合しない塗料で製造した容器に比べて、蓄熱作用により、融解温度である32℃付近での保温時間が長くなった。
【0181】
得られた実施例14で得られた容器はシワ、フクレ、アワ、光沢低下、剥がれ、ワレ等の欠陥がなく外観良好であった。また、40℃上水に20日間浸漬した後、剥がれ、フクレ、光沢低下等の欠陥異常の有無を調べた結果、いずれも異常がなく良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性樹脂塗料(A)固形分100重量部に対して、蓄熱用マイクロカプセル(B)1〜100重量部含有してなることを特徴とする蓄熱性塗料。
【請求項2】
該蓄熱用マイクロカプセル(B)が、示差走査型熱量計で測定された融解潜熱量30J/g以上である請求項1に記載の蓄熱性塗料。
【請求項3】
蓄熱性塗料として、更に遮熱材(C)を含有してなる請求項1に記載の蓄熱性塗料。
【請求項4】
基材表面に、請求項1、2又は3に記載の蓄熱性塗料を塗装し、次いで塗膜を硬化させることを特徴とする蓄熱性塗膜形成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄熱性塗膜の上層及び/又は下層に遮熱性塗膜を形成してなる複層塗膜である請求項4に記載の蓄熱性塗膜形成方法。
【請求項6】
請求項1、2又は3に記載の蓄熱性塗料によって形成された蓄熱性硬化塗膜を有することを特徴とする蓄熱性塗膜形成物品。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の蓄熱性塗膜形成方法によって形成された蓄熱性硬化塗膜を有することを特徴とする蓄熱性塗膜形成物品。

【公開番号】特開2006−45347(P2006−45347A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228085(P2004−228085)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】