説明

蓄電デバイス及びその製造方法

【課題】電池の製造時から使用時に至る温度履歴に関する情報を十分に得ることができ、不具合が生じた場合の原因究明を円滑に進めることができる蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】本発明の蓄電デバイス1は、素電池2とその素電池2を被覆する樹脂外装材5とを備える。素電池2の表面及び樹脂外装材5の両方には、それぞれ示温部11,12が設けられている。示温部11,12は、設定温度に到達することで色が不可逆的に変化する示温材料からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素電池とその素電池を被覆する樹脂外装材とを備えた蓄電デバイス及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒型リチウム電池に代表されるような蓄電デバイスがよく知られている。この種の電池は、正極缶または負極缶を兼ねる無地の外装缶が露出した状態の電池(素電池)に、樹脂外装材としての電池用外装フィルムを電池周方向に沿って巻回して被覆した構造を有している。
【0003】
また、この種の電池においては、正極と負極とを絶縁するための手段として、両者の界面にガスケットと呼ばれる樹脂部品が配置される。そして、このような樹脂部品には材料ごとに使用温度範囲が定められており、その範囲内で使用する限りその電池について所定の品質が保証される。しかし、電池が使用される温度が当該使用温度範囲よりも高くなると、その温度によっては樹脂材料の劣化が避けられず、その結果として満足な放電性能が得られなくなったり、あるいは電池内部の電解液が漏出したりする等の不具合が生じる可能性がある。
【0004】
しかしながら、想定した温度に対して極端に高い温度で使用されたような場合を除き、一般には使用温度範囲を超える温度にて電池が使用されたか否かの判断は難しく、このことが不具合の発生原因の究明を妨げる理由となっている。
【0005】
このような事情の下、電池表面温度が所定の高温度に上昇することにより色が不可逆的に変化する感熱色素(示温材料)からなる部分を備えたことを特徴とする電池が従来提案されている(例えば特許文献1を参照)。そして、これによれば使用温度範囲を超える温度にて電池が使用されたか否かの判断を比較的簡便にかつ視覚的に把握できるとされている。また、特許文献1記載のものとは技術分野は異なるが、使用温度範囲を超える温度にて使用されたか否かの判断の便宜のために示温材料からなる部分を設けたものがいくつか従来提案されている(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−277061号公報
【特許文献2】特開2004−18620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術の場合、使用に際して使用温度範囲を超える温度に遭遇した場合には、示温材料の色に不可逆的な変化が起こることから、使用時の温度履歴に関する情報をある程度得られるようになっている。
【0008】
ところで、電池が高温に遭遇するのは使用時ばかりでない。即ち、電池の種類によってはその製造時において一時的に使用温度範囲を超える工程が存在することがあり、この場合には上記示温材料の色の変化をみても、どの段階で当該使用温度範囲を超える温度に遭遇したのかを把握することができない。このため、不具合がどの段階で生じたのかを正確に特定できず、原因究明を円滑に進めることができなかった。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池の製造時から使用時に至る温度履歴に関する情報を十分に得ることができ、不具合が生じた場合の原因究明を円滑に進めることができる蓄電デバイス及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段を以下に列挙する。
[1]素電池とその素電池を被覆する樹脂外装材とを備えた蓄電デバイスであって、設定温度に到達することで色が不可逆的に変化する示温材料からなる示温部を前記素電池の表面及び樹脂外装材の両方に設けたことを特徴とする蓄電デバイス。従って、手段1によると、素電池表面の示温部は電池製造段階の途中の工程で設けられたものであるのに対し、樹脂外装材の示温部は電池がほぼ完成した後に設けられたものである。これら2種の示温部の色の変化に基づくことで、電池の製造時から使用時に至る温度履歴に関する情報を、視覚を通じて客観的にかつ十分に得ることが可能となる。ゆえに、不具合が生じた場合の原因究明を円滑に進めることができる蓄電デバイスとすることができる。
【0011】
[2]前記示温材料は示温インクであり、前記示温部は前記示温インクを用いて印刷された印字部であることを特徴とする手段1に記載の蓄電デバイス。従って、手段2によると、通常使用しているインクに代えて示温インクを用いて印刷を行えば足りるので、部品点数の増加や工程数の増加を伴うことがなく、コスト高を未然に防ぐことができる。
【0012】
[3]前記印字部は製造コードを兼ねる印字部であることを特徴とする手段2に記載の蓄電デバイス。従って、手段3によると、製造コードは電池において通常印刷されるものであり、これを示温インクを用いて印刷された印字部とすることにより、電池に関する商品情報の提示のみならず、電池の製造時から使用時に至る温度履歴に関する情報の取得を図ることができる。また、この構成によれば、電池の外観にあまり影響を与えることなく、上記温度履歴に関する情報を得ることができる。
【0013】
[4]前記樹脂外装材には前記素電池を視認可能とする透明窓部が形成されるとともに、前記透明窓部に対応して前記素電池側の示温部が配置され、前記樹脂外装材において前記透明窓部とは異なる位置に、前記樹脂外装材側の示温部が配置されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。従って、手段4によると、透明窓部を設けたことにより、わざわざ樹脂外装材を除去しなくても素電池側の示温部及び樹脂外装材側の示温部の両方が視認可能となる。よって、電池の製造時から使用時に至る温度履歴に関する情報を容易に確認することができる。
【0014】
[5]手段1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記素電池の表面に前記示温部を設ける第1示温部配設工程、前記素電池を放電させる短時間放電工程、前記素電池を前記樹脂外装材で被覆する被覆工程、及び、前記樹脂外装材上に前記示温部を設ける第2示温部配設工程をこの順序で行うことを特徴とする蓄電デバイスの製造方法。従って、手段5によると、電池を放電させる短時間放電工程では発熱を伴うことが知られており、第2示温部配設工程により設けられた樹脂外装材側示温部は、短時間放電工程後の発熱によって色が変化する。これに対し、第1示温部配設工程により設けられた素電池側示温部は、短時間放電工程後に加えて短時間放電工程前の発熱によっても色が変化する。そのため、これら2種の示温部の色の変化に基づくことで、電池の製造時から使用時に至る温度履歴に関する情報を、視覚を通じて客観的にかつ十分に得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上詳述したように、手段1〜5に記載の発明によると、電池の製造時から使用時に至る温度履歴に関する情報を十分に得ることができ、不具合が生じた場合の原因究明を円滑に進めることができる蓄電デバイス及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明を具体化した一実施形態の筒型リチウム電池の製造過程を示す概略斜視図、(b)は完成した筒型リチウム電池を示す概略斜視図、(c)〜(f)は2つの示温部を示す要部拡大断面図。
【図2】上記実施形態の製造方法を説明するためのフローチャート。
【図3】(a)は本発明を具体化した別の実施形態の筒型リチウム電池を示す概略斜視図、(b)は2つの示温部を示す要部拡大断面図。
【図4】本発明を具体化した別の実施形態の筒型リチウム電池を示す概略斜視図。
【図5】(a)は本発明を具体化した一実施形態の集合電池の製造過程を示す概略斜視図、(b)は完成した集合電池を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の蓄電デバイス及びその製造方法を、筒型リチウム電池及びその製造方法に具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
図1(a)、図1(b)に示されるように、この筒型リチウム電池1の構成要素である素電池2は、正極缶を兼ねる無地かつ金属製の外装缶3を備えている。外装缶3の開口部には、図示しない樹脂製のガスケットを介して円盤状の負極端子板4が取り付けられている。外装缶3と負極端子板4とがなす空間内には、発電要素が収容されている。
【0019】
外装缶3の外周面3aには、樹脂外装材としての電池用外装フィルム5が電池周方向に沿って巻回するように被覆されている。本実施形態の外装フィルム5は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリ塩化ビニル(PVC)などの熱収縮性樹脂フィルムを基材とし、基材の表面には電池の型名、電圧、注意書き等の画像が印刷されている。そして本実施形態の場合、素電池2における外装缶3の外周面3aには、示温インクを用いて印刷された素電池側印字部11(素電池側示温部)が設けられている。ここで、本実施形態において使用する示温インクは、示温材料の一種であって感熱インクとも呼ばれるものであり、設定温度に到達することで色が不可逆的に変化する性質を有するインクのことをいう。色の変化が不可逆的なインクを使用する理由は、変色後に温度が下降しても復色しないため、温度履歴確認用に適しているからである。また、本実施形態の素電池側印字部11は、商品番号、製造年月日、使用推奨期限などといった製造コードを兼ねる印字部となっており、図面作成の便宜上「AAABBB」という文字列で表現されている。
【0020】
また、外装フィルム5の表面5aには、示温インクを用いて印刷された樹脂外装材側印字部12(樹脂外装材側示温部)が設けられている。この樹脂外装材側印字部12についても、商品番号、製造年月日、使用推奨期限などといった製造コードを兼ねる印字部となっており、図面作成の便宜上「CCCDDD」という文字列で表現されている。なお、素電池側印字部11及び樹脂外装材側印字部12による記載内容は異なるものであってもよく、同じものであってもよい。また、本実施形態では素電池側印字部11の配設位置に樹脂外装材側印字部12を重ねるようにして配設したが、これらを重ねることなくずらして配設してもよい。
【0021】
次に、本実施形態の筒型リチウム電池1の製造方法を図2のフローチャートに従って説明する。
まず、下記のようにして素電池2を作製した(図2のS1参照)。基本物質構成としては、二酸化マンガン、黒鉛、バインダ(フッ素系バインダ)等からなる正極、リチウム金属またはその合金からなる負極、PP/PEの樹脂を用いて複合繊維としたセパレータ、1MのLiClOを電解質とするPC/DME系の電解液を用いた。これらを正極缶である金属製の外装缶3内に収容した後、外装缶3の開口部に樹脂製のガスケットを配置し、円盤状の負極端子板4を取り付けることで封止を行った。
【0022】
次に、第1示温部配設工程を行い、素電池2の表面に素電池側印字部11を設けた(図2のS2参照)。具体的にいうと、ここでは示温インクとして、アセイ工業株式会社製「WAX示温インク:型番WL−85(反応温度85℃)」を用いた。なお、印刷は従来公知の手法を採用した。素電池側印字部11は製造コードを兼ねる印字部とした。
【0023】
次に、素電池2を放電させる短時間放電工程を行った(図2のS3参照)。この工程は、同時に発熱を伴う工程でもある。ただし、通常の場合、使用温度範囲を超えるような温度に達することはない。
【0024】
次に、被覆工程を行って、素電池2を外装フィルム5で被覆した(図2のS4参照)。具体的には、熱収縮性を有するPET製の外装フィルム5上に素電池2を載置し、外装缶3の外周面3aを全体的に覆うようなかたちで外装フィルム5を巻回した。素電池2の上端面及び下端面については覆われず、ほぼ露出されたままの状態となる。そして、熱収縮炉を用いて外装フィルム5に熱風を作用させ、外装フィルム5を熱収縮させることにより、外装缶3の外周面3aに外装フィルム5を密着させた。なお、熱風を作用させたとき、電池表面温度は瞬間的には70℃〜80℃程度に達する。
【0025】
次に、第2示温部配設工程を行って、外装フィルム5の表面に樹脂外装材側印字部12を設けた(図2のS5参照)。ここでは示温インクとして、アセイ工業株式会社製「WAX示温インク:型番WL−85(反応温度85℃)」、即ち第1示温部配設工程にて使用したものと同じものを用いた。なお、印刷は従来公知の手法を採用した。樹脂外装材側印字部12は製造コードを兼ねる印字部とした。そして、以上の諸工程を経ることで、直径17mmφ、高さ45mmの筒型リチウム電池1を完成させた。
【0026】
このように製造された筒型リチウム電池1に不具合が発生した場合において、その原因を究明する方法について述べる。
【0027】
図1(c)〜(f)は、筒型リチウム電池1における2つの示温部(素電池側印字部11及び樹脂外装材側印字部12)を示している。また、素電池側印字部11及び樹脂外装材側印字部12に関して、ハッチングがなく白抜きで表現されたものは変色が起きていないことを意味する一方、ハッチング付きで表現されたものは変色が起きていることを意味している。なお、図1(c)の筒型リチウム電池1は不具合が発生していない電池を示し、この電池においては2つの示温部は変色していない。
【0028】
一方、図1(d)〜図1(f)の筒型リチウム電池1は、何らかの原因によって不具合が発生している3種の電池を示している。不具合の原因を究明する際には、まず外装フィルム5における樹脂外装材側印字部12を視認検査し、さらに外装フィルム5の一部または全部を剥離して素電池2の表面を露出させて素電池側印字部11を視認検査すればよい。
【0029】
図1(e)の電池においては、2つの示温部のうち、樹脂外装材側印字部12が変色しておらず、素電池側印字部11のみが変色している。よってこの場合には、電池製造工程内のいずれかの段階(通常は被覆工程)で想定外の温度(ここでは85℃超の温度)に遭遇したと推定でき、それが不具合を引き起こした原因であることがわかる。
【0030】
図1(f)の電池においては、樹脂外装材側印字部12についても変色している。よってこの場合には、電池完成後における出荷時あるいは使用時にて想定外の温度(ここでは85℃超の温度)に遭遇したと推定でき、それが不具合を引き起こした原因であることがわかる。
【0031】
図1(d)の電池においては、2つの示温部の両方について変色していない。よってこの場合には、想定外の温度との遭遇が不具合を引き起こした原因ではないと推定され、それ以外の原因があることがわかる。
【0032】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の筒型リチウム電池1では、設定温度である85℃に到達することで色が不可逆的に変化する示温インクからなる示温部11,12を素電池2の表面及び外装フィルム5の表面の両方に設けている。ここで、素電池側示温部11は電池製造段階の途中の工程で設けられたものであるのに対し、樹脂外装材側示温部12は電池がほぼ完成した後に設けられたものである。従って、後者であれば電池製造完了以降の段階で遭遇する高温に反応することができ、前者であればさらに電池製造段階で遭遇する高温にも反応することができる。ゆえに、これら2種の示温部11,12を組み合わせて配置し、それら2種の示温部11,12の色の変化に基づけば、電池の製造時から使用時に至る温度履歴に関する情報を、視覚を通じて客観的にかつ十分に得ることが可能となる。ゆえに、不具合が生じた場合の原因究明を円滑に進めることができる筒型リチウム電池1とすることができる。特に本実施形態の筒型リチウム電池1によれば、不具合の発生原因を3つのパターンのうちのいずれかであると推定することができる。
【0033】
(2)本実施形態では、示温材料として示温インクを用いるとともに、その示温インクを用いた印刷により印字部11,12を設けることとしている。従って、印字部11,12を設けるにあたり、通常使用しているインクに代えて示温インクを用いて印刷を行えば足りるので、部品点数の増加や工程数の増加を伴うことがなく、コスト高を未然に防ぐことができる。
【0034】
(3)本実施形態では、印字部11,12が製造コードを兼ねる印字部となっている。製造コードは電池において通常印刷されるものであり、これを示温インクを用いて印刷された印字部とすることにより、電池に関する商品情報の提示のみならず、電池の製造時から使用時に至る温度履歴に関する情報の取得を図ることができる。また、この構成によれば、電池の外観にあまり影響を与えることなく、上記温度履歴に関する情報を得ることができる。
【0035】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0036】
・上記実施形態の筒型リチウム電池1では、素電池側印字部11の直上位置に樹脂外装材側印字部12が重ねて配設されていた。これに代え、例えば、図3に示す別の実施形態の筒型リチウム電池21のようにしてもよい。この筒型リチウム電池21の場合、外装フィルム5には素電池2を部分的に視認可能とする矩形状の透明窓部22が形成されている。かかる透明窓部22は、例えば、外装フィルム5において部分的に印刷層を除去すること等により形成されたものである。素電池側印字部11は、素電池2の表面において透明窓部22に対応する位置に配置されている。透明窓部22の大きさは、素電池側印字部11の形成領域の大きさに匹敵している。外装フィルム5において透明窓部22とは異なる位置、具体的には透明窓部22の周辺となる位置には、樹脂外装材側印字部12が配置されている。
【0037】
従って、この構成によると、透明窓部22を設けたことにより、常に素電池側印字部11が視認可能となる。そのため、素電池側印字部11を視認検査する際に、わざわざ外装フィルム5の一部または全部を剥離して素電池2の表面を露出させなくても、素電池側印字部11及び樹脂外装材側印字部12の両方が視認可能となる。よって、電池の製造時から使用時に至る温度履歴に関する情報を容易に確認することができる。
【0038】
・上記実施形態では、素電池側印字部11を外装缶3の外周面3aに設けたが、これに限定されず別の位置に設けてもよい。例えば、図4に示す別の実施形態の筒型リチウム電池31では、外装フィルム5から露出している部分、つまり素電池2の上端面外周部(即ち負極端子板4の外周部)に素電池側印字部32を設けている。なお、素電池2の上端面中央部(即ち負極端子板4の中央部)は、端子接触部分なので素電池側印字部32の形成には適していない。従って、この構成であっても、常に素電池側印字部32が視認可能となる。そのため、素電池側印字部32を視認検査する際に、わざわざ外装フィルム5の一部または全部を剥離して素電池2の表面を露出させなくても、また、透明窓部22を設けなくても、素電池側印字部32及び樹脂外装材側印字部12の両方が視認可能となる。よって、電池の製造時から使用時に至る温度履歴に関する情報を容易に確認することができる。
【0039】
・上記実施形態では、本発明の蓄電デバイスを筒型リチウム電池に具体化したが、筒型アルカリ電池などに具体化することができ、さらにはリチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタなどにも具体化することができる。
【0040】
・本発明の蓄電デバイスは、複数個の電池を組み合わせて作製した集合電池として具体化されてもよい。例えば、図5に示す別の実施形態として集合電池41が示されている。この集合電池41は、基本的に上記実施形態の方法で作製した筒型リチウム電池1を2個組み合わせて構成されたものである。ただし、素電池2の表面には素電池側印字部11が配設されている反面、外装フィルム5の表面には樹脂外装材側印字部12は配設されていない。なお、これら2つの筒型リチウム電池1は並列に配置した状態で、別の樹脂外装材である熱収縮性の外装フィルム42によって被覆されている。そしてさらに、被覆された外装フィルム42上には、別の樹脂外装材である外装ラベル43が貼着されている。そして、この外装ラベル43の表面には、上述の示温インクを印刷してなる樹脂外装材側印字部44が配設されている。この樹脂外装材側印字部44は、製造コードを兼ねる印字部となっており、図面作成の便宜上「EEEFFF」という文字列で表現されている。
【0041】
・上記実施形態では、製造コードを兼ねる印字部を設けたが、製造コードとは無関係な印字部を設けてもよい。
【0042】
・上記実施形態では、第1示温部配設工程及び第2示温部配設工程において共通の示温インクを用いるとともに、示温インクの反応温度(設定温度)をともに85℃としたが、目的に応じてこの反応温度を変更してもよい。また、第1示温部配設工程と第2示温部配設工程とで異なる示温インクを用いることにより、両工程で反応温度を異ならせてもよい。
【0043】
次に、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)素電池とその素電池を被覆する樹脂外装材とを備えた蓄電デバイスであって、設定温度に到達することで色が不可逆的に変化する示温材料からなる示温部を、前記素電池を構成する外装缶の外周面及び前記樹脂外装材の表面の両方に設けたことを特徴とする蓄電デバイス。
(2)素電池とその素電池を被覆する樹脂外装材とを備えた蓄電デバイスであって、設定温度に到達することで色が不可逆的に変化する示温材料からなる示温部を、前記素電池の端面外周部及び前記樹脂外装材の表面の両方に設けたことを特徴とする蓄電デバイス。
【符号の説明】
【0044】
1,21,31…蓄電デバイスとしての筒型リチウム電池
2…素電池
5,42…樹脂外装材としての外装フィルム
11…素電池側の示温部としての素電池側印字部
12,44…樹脂外装材側の示温部としての樹脂外装材側印字部
22…透明窓部
41…蓄電デバイスとしての集合電池
43…樹脂外装材としての外装ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素電池とその素電池を被覆する樹脂外装材とを備えた蓄電デバイスであって、設定温度に到達することで色が不可逆的に変化する示温材料からなる示温部を前記素電池の表面及び樹脂外装材の両方に設けたことを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
前記示温材料は示温インクであり、前記示温部は前記示温インクを用いて印刷された印字部であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記印字部は製造コードを兼ねる印字部であることを特徴とする請求項2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記樹脂外装材には前記素電池を視認可能とする透明窓部が形成されるとともに、前記透明窓部に対応して前記素電池側の示温部が配置され、前記樹脂外装材において前記透明窓部とは異なる位置に、前記樹脂外装材側の示温部が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記素電池の表面に前記示温部を設ける第1示温部配設工程、
前記素電池を放電させる短時間放電工程、
前記素電池を前記樹脂外装材で被覆する被覆工程、及び、
前記樹脂外装材上に前記示温部を設ける第2示温部配設工程
をこの順序で行うことを特徴とする蓄電デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−249167(P2011−249167A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121817(P2010−121817)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(503025395)FDKエナジー株式会社 (142)
【Fターム(参考)】