説明

蓄電デバイス

【課題】蓄電デバイスの製造を自動化する場合においても蓄電デバイスの正極と負極のリード端子部の識別を容易に行うことが可能な蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】蓄電デバイス1は、蓄電要素を収容する外装体10と、この蓄電要素の正極と負極のそれぞれに電気的に接続され、外装体10から突出した正極リード端子11および負極リード端子12とを備える。外装体10、正極リード端子11および負極リード端子12からなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の部材には、光が通過可能な少なくとも一つの貫通孔10a、11a、12aが予め定められた位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リチウムイオン二次電池、リチウム二次電池、ポリマー二次電池、電気二重層キャパシタなどの蓄電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえば、ラミネートフィルムからなる外装体に蓄電要素を収容した形態を有する非水電解質電池では、外装体から外部に導出されて突出した形態で正極と負極のリード端子が形成されている。このような正極端子と負極端子の両者の判別をするために、リード端子の外部導出部の根元の位置に+印、−印のマークが印字されている。しかしながら、マークが印字されていない面が上向きとされている場合、向きが統一されずにリード端子が生産ラインに供給される場合などには、正極端子と負極端子の両者の区別を目視によって行うことは困難であるという問題がある。
【0003】
そこで、非水電解質電池のリード端子の正極と負極の判断を容易かつ確実に行うことができるようにした非水電解質電池が、たとえば、特開2004−79240号公報(以下、特許文献1という)で提案されている。
【0004】
図5は、特許文献1で提案された非水電解質電池の一例を示す斜視図である。
【0005】
図5に示す非水電解質電池110では、電池を構成する電池本体、すなわち蓄電要素100が、ラミネートフィルムからなる外装体200内に密着封入されている。外装体200において蓄電要素100の外形状に対応する内形状を有する突出部500内に蓄電要素100が収容され、ラミネートフィルムによって被覆されている。外装体200の封着部300から、蓄電要素100の正極に接続された一方のリード端子400aと、負極に接続されたリード端子400bが外装体200から導出されて突出している。
【0006】
上記のように構成された非水電解質電池110において、図5に示すように、たとえば、正極リード端子400aの長さLaを負極リード端子400bの長さLbよりも長くしている。このようにリード端子部の長さを異ならせることによって、電池の正極端子と負極端子を判別しやすくしている。また、特許文献1では、リード端子部の長さ以外に、幅や厚みを異ならせることによって、電池の正極と負極のリード端子を判別しやすくしている。
【特許文献1】特開2004−79240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された非水電解質電池では、目視によって正極と負極のリード端子の識別を行っている。特許文献1に開示された非水電解質電池では、正極リード端子と負極リード端子の相違を目視によって容易に識別することができるようにするためには、正極リード端子と負極リード端子との間でリード端子部の長さ、幅、厚みの差が大きくなるようにリード端子部を設計する必要がある。
【0008】
しかしながら、目視によって正極リード端子と負極リード端子の識別を行うことは、たとえば、複数の電池を組み合わせた組電池の製造を自動化する場合には、適していない。また、リード端子部の長さ、幅、厚みを異ならせると、蓄電要素の正極と負極のそれぞれにリード端子部材を溶着する際にも、異なる治具を設計する必要があるという問題がある。
【0009】
そこで、この発明の目的は、蓄電デバイスの製造を自動化する場合においても蓄電デバイスの正極と負極のリード端子部の識別を容易に行うことが可能な蓄電デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従った蓄電デバイスは、蓄電要素を収容する外装体と、この蓄電要素の正極と負極のそれぞれに電気的に接続され、外装体から突出した正極リード端子および負極リード端子とを備える。外装体、正極リード端子および負極リード端子からなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の部材には、光が通過可能な少なくとも一つの貫通孔が予め定められた位置に形成されている。
【0011】
この発明の蓄電デバイスにおいては、外装体、正極リード端子および負極リード端子からなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の部材には、光が通過可能な少なくとも一つの貫通孔が予め定められた位置に形成されているので、蓄電デバイスを複数個、並べたとき、または重ねたときに、外装体、正極リード端子および負極リード端子のうち、少なくともいずれか一つ以上の部材に形成された貫通孔が整列しているかどうかを、目視することによって確認することができるだけでなく、光学センサー等の光学機器を用いて光を貫通孔に通過させることによって確認することができる。このようにして貫通孔が整列しているかどうかを確認することにより、作業者が正極リード端子と負極リード端子を容易に識別することができる。これにより、組電池の製造等において蓄電デバイスの製造を自動化する場合でも、蓄電デバイスの正極と負極のリード端子部の識別を容易に行うことが可能となる。その結果、この識別方法を充放電装置に用いる治具に適用することによって、蓄電デバイスの正極と負極が逆に接続されるのを防止することができる。
【0012】
この発明の蓄電デバイスにおいて、貫通孔の直径が0.5mm以上であることが好ましい。
【0013】
このように貫通孔の直径が0.5mm以上であれば、容易に光を貫通孔に通過させることができる。
【0014】
また、この発明の蓄電デバイスにおいて、正極リード端子には第1の貫通孔が形成され、負極リード端子には第2の貫通孔が形成され、第1の貫通孔と第2の貫通孔は、当該蓄電デバイスの中心線または中心に対して非対称の位置に形成されていることが好ましい。
【0015】
このように正極リード端子の第1の貫通孔と負極リード端子の第2の貫通孔が当該蓄電デバイスの中心線または中心に対して非対称の位置に形成されていれば、蓄電デバイスを複数個、並べたとき、または重ねたときに、第1の貫通孔または第2の貫通孔が整列しているかどうかを、第1の貫通孔と第2の貫通孔を混同することがなく、目視することによって確認することができるだけでなく、光学センサー等の光学機器を用いて光を貫通孔に通過させることによって確認することができる。これにより、作業者は、並んだ、または重ねられた複数の蓄電デバイスが正しく整列しているかどうかを容易に確認することができるので、正極リード端子と負極リード端子を混同することがなく、正極リード端子と負極リード端子を容易に識別することができる。その結果、正極と負極が逆に接続されるのを防止することができる。
【0016】
このとき、正極リード端子は、互いに対向する外装体の両側部のうち一方の側部から突出しており、負極リード端子は、互いに対向する外装体の両側部のうち他方の側部から突出しており、第1の貫通孔と第2の貫通孔は、当該蓄電デバイスの中心線と中心に対して非対称の位置に形成されていることが好ましい。
【0017】
このように互いに対向する外装体の両側部から正極リード端子と負極リード端子が突出している蓄電デバイスの場合には、第1の貫通孔と第2の貫通孔は、当該蓄電デバイスの中心線と中心に対して非対称の位置に形成されていれば、蓄電デバイスを複数個、並べたとき、または重ねたときに、複数の第1の貫通孔が整列しているかどうかを、または複数の第2の貫通孔が整列しているかどうかを、第1の貫通孔と第2の貫通孔を混同することがなく、目視することによって確認することができるだけでなく、光学センサー等の光学機器を用いて光を貫通孔に通過させることによって確認することができる。これにより、作業者は、並んだ、または重ねられた複数の蓄電デバイスが正しく整列しているかどうかを容易に確認することができるので、正極リード端子と負極リード端子を混同することがなく、正極リード端子と負極リード端子を容易に識別することができる。その結果、正極と負極が逆に接続されるのを防止することができる。
【0018】
また、このとき、正極リード端子と負極リード端子は、それぞれ、互いに対向する外装体の両側部のうち一方側部から突出しており、第1の貫通孔と第2の貫通孔は、当該蓄電デバイスの中心線に対して非対称の位置に形成されていることが好ましい。
【0019】
このように互いに対向する外装体の両側部のうち一方側部から正極リード端子と負極リード端子が突出している蓄電デバイスの場合には、第1の貫通孔と第2の貫通孔は、当該蓄電デバイスの中心線に対して非対称の位置に形成されていれば、蓄電デバイスを複数個、並べたとき、または重ねたときに、複数の第1の貫通孔が整列しているかどうかを、または複数の第2の貫通孔が整列しているかどうかを、第1の貫通孔と第2の貫通孔を混同することがなく、目視することによって確認することができるだけでなく、光学センサー等の光学機器を用いて光を貫通孔に通過させることによって確認することができる。これにより、作業者は、並んだ、または重ねられた複数の蓄電デバイスが正しく整列しているかどうかを容易に確認することができるので、正極リード端子と負極リード端子を混同することがなく、正極リード端子と負極リード端子を容易に識別することができる。その結果、正極と負極が逆に接続されるのを防止することができる。
【0020】
なお、この発明の蓄電デバイスは、正極リード端子と負極リード端子が、同一の金属またはその合金から形成されている場合に適用されるのが好ましい。
【0021】
この場合、目視による正極リード端子と負極リード端子の識別が困難になるが、本発明の蓄電デバイスによれば、蓄電デバイスを複数個、並べたとき、または重ねたときに、外装体、正極リード端子および負極リード端子のうち、少なくともいずれか一つ以上の部材に形成された貫通孔が整列しているかどうかを、光学センサー等の光学機器を用いて光を貫通孔に通過させることによって確認することができる。このようにして貫通孔が整列しているかどうかを確認することにより、作業者が光学センサー等の光学機器を用いた自動化された識別手法により、正極リード端子と負極リード端子を容易に識別することができる。これにより、組電池の製造等において蓄電デバイスの製造を自動化する場合でも、蓄電デバイスの正極と負極のリード端子部の識別を容易に行うことが可能となる。その結果、この識別方法を充放電装置に用いる治具に適用することによって、蓄電デバイスの正極と負極が逆に接続されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のようにこの発明によれば、組電池の製造等において蓄電デバイスの製造を自動化する場合でも、光学センサー等の光学機器を用いて光を貫通孔に通過させることによって蓄電デバイスの正極と負極のリード端子部の識別を容易に行うことが可能となるので、この識別方法を充放電装置に用いる治具に適用することによって、蓄電デバイスの正極と負極が逆に接続されるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(実施形態1)
図1は、この発明の実施形態1として複数の蓄電デバイスを正しく整列させて重ねた状態を示す斜視図である。図2は、この発明の実施形態1として複数の蓄電デバイスを重ねた際に一つの蓄電デバイスが逆向きに重ねられた状態を示す斜視図である。
【0025】
図1と図2に示すように、4個の蓄電デバイス1が積み重ねられている。各蓄電デバイス1は、蓄電要素を収容する外装体10と、蓄電要素の正極と負極のそれぞれに電気的に接続され、外装体10から突出した正極リード端子11および負極リード端子12とを備える。蓄電要素は、たとえば、リチウム金属酸化物からなる活物質が付着された正極部材と、セパレータ部材と、チタン酸リチウムからなる活物質が付着された負極部材とが積層または巻回されることによって構成されている。外装体10は、たとえば、ナイロン(登録商標)からなる外面層とアルミニウム箔からなる中間層とポリプロピレンからなる内面層との三層構造を有する上下二枚のラミネートフィルムから形成される。正極リード端子11と負極リード端子12は、たとえば、同一のアルミニウムまたはその合金から形成されている。外装体10の中央部において突出している部分に蓄電要素が収容され、外装体10の外周部において二枚のラミネートフィルムの溶着部分から正極リード端子11と負極リード端子12が導出されて突出している。
【0026】
この実施形態1では、正極リード端子11は、互いに対向する外装体10の両側部のうち一方の側部から突出しており、負極リード端子12は、互いに対向する外装体の両側部のうち他方の側部から突出している。
【0027】
各外装体10の溶着部分には一つの貫通孔10aが形成されている。この貫通孔10aは、外装体10の外周部分で隅部に形成されている。各正極リード端子11には一つの貫通孔11aが形成されている。この貫通孔11aは、蓄電デバイス1の平面視における中心線C1からずれた位置で、あるいは正極リード端子11の平面上における中心線C1からずれた位置で、中心線C1に相対的に近い位置に形成されている。各負極リード端子12には一つの貫通孔12aが形成されている。この貫通孔12aは、蓄電デバイス1の平面視における中心線C1からずれた位置で、あるいは負極リード端子12の平面上における中心線C1からずれた位置で、中心線C1から相対的に遠い位置で、たとえば、中心線C1から離れた端部に形成されている。これらの貫通孔10a、11aおよび12aは、光が通過可能な大きさを有し、たとえば、直径が0.5mm以上であることが好ましい。
【0028】
なお、この実施形態1では、外装体10、正極リード端子11および負極リード端子12のそれぞれの部材に、一つの貫通孔が予め定められた位置に形成されているが、二つ以上の貫通孔が各部材に形成されていてもよい。また、外装体10、正極リード端子11および負極リード端子12のうち、少なくとも一つ以上の部材に、一つの貫通孔が予め定められた位置に形成されていてもよく、二つ以上の貫通孔が形成されていてもよい。
【0029】
図1では、4個の蓄電デバイス1が正しく整列されて重ねられているので、貫通孔10a、11aおよび12aのそれぞれが整列している。このため、たとえば、光学センサー等の光学機器を用いて、負極リード端子12の貫通孔12aに、矢印Pで示すように光を通過させようとすると、最上部の蓄電デバイス1から最下部の蓄電デバイス1まで光が通過するので、光学センサーによって光を検知することができる。なお、貫通孔10a、11aおよび12aのそれぞれが整列していることは目視によっても確認することができる。
【0030】
これに対して、図2では、下から二つ目の蓄電デバイス1が左右逆に重ねられているので、貫通孔10a、11aおよび12aのそれぞれは整列していない。このため、たとえば、負極リード端子12の貫通孔12aに矢印Pで示すように光を通過させようとすると、下から二つ目の蓄電デバイス1で光が遮断されてしまうので、光学センサーによって光を検知することができない。なお、貫通孔10a、11aおよび12aのそれぞれが整列していないことは目視によっても確認することができる。
【0031】
したがって、この発明の実施形態1の蓄電デバイスにおいては、外装体10、正極リード端子11および負極リード端子12には、矢印Pで示すように光が通過可能な少なくとも一つの貫通孔10a、11aおよび12aが予め定められた位置に形成されているので、蓄電デバイス1を複数個、並べたとき、または重ねたときに、外装体10、正極リード端子11および負極リード端子12に形成された貫通孔10a、11aおよび12aのいずれかが整列しているかどうかを、目視することによって確認することができるだけでなく、光学センサー等の光学機器を用いて光を貫通孔10a、11aおよび12aのいずれかに通過させることによって確認することができる。このようにして貫通孔10a、11aおよび12aのいずれかが整列しているかどうかを確認することにより、作業者が正極リード端子11と負極リード端子12を容易に識別することができる。これにより、組電池の製造等において蓄電デバイスの製造を自動化する場合でも、蓄電デバイスの正極と負極のリード端子部の識別を容易に行うことが可能となる。その結果、この識別方法を充放電装置に用いる治具に適用することによって、蓄電デバイスの正極と負極が逆に接続されるのを防止することができる。
【0032】
特に、多数の蓄電デバイスを充放電装置に接続する際に蓄電デバイスの正極と負極が逆に接続されるのを防止することができる。蓄電デバイスを積み重ねて組電池を構成する際には、光学センサー等の光学機器を用いた自動化された識別方法によって、蓄電デバイスの向きを確認することができるので、組電池の充電中に正極と負極が逆に接続された単電池が過放電される、または組電池の放電中に正極と負極が逆に接続された単電池が過充電される、という不具合を回避することが可能となる。
【0033】
また、この実施形態1では、正極リード端子11には第1の貫通孔として貫通孔11aが形成され、負極リード端子12には第2の貫通孔として貫通孔12aが形成され、貫通孔11aと貫通孔12aは、図1に示すように当該蓄電デバイス1の平面視における中心線C2に対して、また当該蓄電デバイス1の平面視における中心線C1と中心線C2の交点である中心Cに対して、非対称の位置に形成されていることが好ましい。当該蓄電デバイス1の平面視における中心線C2に対して、または当該蓄電デバイス1の平面視における中心線C1と中心線C2の交点である中心Cに対して、対称の位置に形成されていれば、蓄電デバイス1が上下逆に、または左右逆に積み重ねられた場合に、貫通孔11aと貫通孔12aが同じ位置に配置されることになり、正極リード端子11と負極リード端子12が混同されてしまう虞がある。
【0034】
したがって、正極リード端子11の貫通孔11aと負極リード端子12の貫通孔12aが当該蓄電デバイス1の中心線C2と中心Cに対して非対称の位置に形成されていれば、蓄電デバイス1を複数個、並べたとき、または重ねたときに、複数の貫通孔11aが整列しているかどうかを、または複数の貫通孔12aが整列しているかどうかを、貫通孔11aと貫通孔12aを混同することなく、目視することによって確認することができるだけでなく、光学センサー等の光学機器を用いて光を貫通孔に通過させることによって確認することができる。これにより、作業者は、並んだ、または重ねられた複数の蓄電デバイス1が正しく整列しているかどうかを容易に確認することができるので、正極リード端子11と負極リード端子12を混同することがなく、正極リード端子11と負極リード端子12を容易に識別することができる。その結果、正極と負極が逆に接続されるのを防止することができる。
【0035】
なお、実施形態1では、図1に示すように、正極リード端子11は、互いに対向する外装体10の両側部のうち一方の側部から突出しており、負極リード端子12は、互いに対向する外装体10の両側部のうち他方の側部から突出している。この場合、貫通孔11aと貫通孔12aは、当該蓄電デバイス1の中心線C2と中心Cに対して非対称の位置に形成されていることが好ましい。
【0036】
(実施形態2)
図3は、この発明の実施形態2として複数の蓄電デバイスを正しく整列させて重ねた状態を示す斜視図である。図4は、この発明の実施形態2として複数の蓄電デバイスを重ねた際に一つの蓄電デバイスが逆向きに重ねられた状態を示す斜視図である。
【0037】
図3と図4に示すように、4個の蓄電デバイス1が積み重ねられている。各蓄電デバイス2は、蓄電要素を収容する外装体20と、蓄電要素の正極と負極のそれぞれに電気的に接続され、外装体20から突出した正極リード端子21および負極リード端子22とを備える。
【0038】
実施形態2では、図3に示すように、正極リード端子21と負極リード端子22は、それぞれ、互いに対向する外装体10の両側部のうち一方側部から突出している。
【0039】
各外装体20の溶着部分には一つの貫通孔20aが形成されている。この貫通孔20aは、外装体20の外周部分で隅部に形成されている。各正極リード端子21には一つの貫通孔21aが形成されている。この貫通孔21aは、たとえば、正極リード端子21の前方端部分に形成されている。各負極リード端子22には一つの貫通孔22aが形成されている。この貫通孔22aは、たとえば、外装体20に近い負極リード端子22の後方端部分、すなわち根元部分に形成されている。
【0040】
なお、実施形態2の蓄電デバイス2の他の構成は実施形態1と同様である。
【0041】
図3では、4個の蓄電デバイス1が正しく整列されて重ねられているので、貫通孔20a、21aおよび22aのそれぞれが整列している。このため、たとえば、光学センサー等の光学機器を用いて、外装体20の貫通孔20aに、矢印Pで示すように光を通過させようとすると、最上部の蓄電デバイス2から最下部の蓄電デバイス2まで光が通過するので、光学センサーによって光を検知することができる。なお、貫通孔20a、21aおよび22aのそれぞれが整列していることは目視によっても確認することができる。
【0042】
これに対して、図4では、上から二つ目の蓄電デバイス1が上下逆に重ねられているので、貫通孔20a、21aおよび22aのそれぞれは整列していない。このため、たとえば、外装体20の貫通孔20aに矢印で示すように光を通過させようとすると、上から二つ目の蓄電デバイス2で光が遮断されてしまうので、光学センサーによって光を検知することができない。なお、貫通孔20a、21aおよび22aのそれぞれが整列していないことは目視によっても確認することができる。
【0043】
したがって、この発明の実施形態2の蓄電デバイスにおいても、上述した実施形態1と同様の作用効果を達成することができる。
【0044】
また、この実施形態2では、正極リード端子21には第1の貫通孔として貫通孔21aが形成され、負極リード端子22には第2の貫通孔として貫通孔22aが形成され、貫通孔21aと貫通孔22aは、図3に示すように当該蓄電デバイス2の平面視における中心線C3に対して非対称の位置に形成されていることが好ましい。当該蓄電デバイス2の平面視における中心線C3に対して対称の位置に形成されていれば、蓄電デバイス2が上下逆に積み重ねられた場合に、貫通孔21aと貫通孔22aが同じ位置に配置されることになり、正極リード端子21と負極リード端子22が混同されてしまう虞がある。
【0045】
したがって、互いに対向する外装体20の両側部のうち一方側部から正極リード端子21と負極リード端子22が突出している蓄電デバイス2の場合には、第1の貫通孔としての貫通孔21aと第2の貫通孔としての貫通孔22aは、当該蓄電デバイス2の中心線に対して非対称の位置に形成されていれば、蓄電デバイス2を複数個、並べたとき、または重ねたときに、複数の貫通孔21aが整列しているかどうかを、または複数の貫通孔22aが整列しているかどうかを、貫通孔21aと貫通孔22aを混同することがなく、目視することによって確認することができるだけでなく、光学センサー等の光学機器を用いて光を貫通孔に通過させることによって確認することができる。これにより、作業者は、並んだ、または重ねられた複数の蓄電デバイス2が正しく整列しているかどうかを容易に確認することができるので、正極リード端子21と負極リード端子22を混同することがなく、正極リード端子21と負極リード端子22を容易に識別することができる。その結果、正極と負極が逆に接続されるのを防止することができる。
【0046】
なお、実施形態1、2のように、正極リード端子11、21と負極リード端子12、22がアルミニウムまたはその合金等の同一の金属またはその合金から形成されている蓄電デバイス1、2の場合に適用されるのが好ましい。
【0047】
この場合、目視による正極リード端子11、21と負極リード端子12、22の識別が困難になるが、本発明の蓄電デバイス1、2によれば、蓄電デバイス1、2を複数個、並べたとき、または重ねたときに、外装体10、20、正極リード端子11、21および負極リード端子12、22のうち、少なくともいずれか一つ以上の部材に形成された貫通孔が整列しているかどうかを、光学センサー等の光学機器を用いて光を貫通孔に通過させることによって確認することができる。このようにして貫通孔が整列しているかどうかを確認することにより、作業者が光学センサー等の光学機器を用いた自動化された識別手法により、正極リード端子11、21と負極リード端子12、22を容易に識別することができる。これにより、組電池の製造等において蓄電デバイスの製造を自動化する場合でも、蓄電デバイスの正極と負極のリード端子部の識別を容易に行うことが可能となる。その結果、この識別方法を充放電装置に用いる治具に適用することによって、蓄電デバイスの正極と負極が逆に接続されるのを防止することができる。
【0048】
(実施形態3)
図6は、この発明の実施形態3として単一の蓄電デバイスを示す平面図である。
【0049】
実施形態2と実施形態3の相違点は、図3と図4で示される実施形態2の蓄電デバイス2では、外装体20の外周部において二枚のラミネートフィルムの溶着部分から正極リード端子21と負極リード端子22を導出して外装体20から突出させているのに対し、図6で示される実施形態3の蓄電デバイス3では、外装体30のラミネートフィルムの溶着部分とは異なる位置に貫通孔33aを設け、リベット等の接続部材34(接続部材34は正極リード端子および負極リード端子と電気的に接続されてその一部を構成する)を貫通孔33aに挿通することにより正極リード端子31および負極リード端子32を固定し、外装体30の主平面に沿って正極リード端子31および負極リード端子32を延在させている点である。
【0050】
なお、溶着部分に形成される貫通孔30aや正極リード端子31および負極リード端子32に形成される貫通孔31a、32aは、実施形態2における貫通孔20a、21a、22aと同様の機能を有する。したがって、この発明の実施形態3の蓄電デバイス3においても、上述した実施形態2と同様の作用効果を達成することができる。
【0051】
上記の構造は正極リード端子31および負極リード端子32に比較的分厚い部材を使用してもラミネートの溶着部分のシール性には影響しない。したがって、他の実施形態と同様に複数の蓄電デバイス3を整列させて重ねた場合に、正極リード端子31および負極リード端子32の折れ曲がり等による識別不良を防止することができる。さらに比較的分厚い正極リード端子31および負極リード端子32は、蓄電デバイスとして大電流用途に適しているという利点も有している。
【0052】
(その他の実施形態)
上述したこの発明の実施形態においては、外装体は、ナイロン(登録商標)からなる外面層とアルミニウム箔からなる中間層とポリプロピレンからなる内面層との三層構造を有するラミネートフィルムを用いているが、金属缶を用いた外装体でもよい。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものであることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
この発明の利用することにより、組電池の製造等において蓄電デバイスの製造を自動化する場合でも、光学センサー等の光学機器を用いて光を貫通孔に通過させることによって蓄電デバイスの正極と負極のリード端子部の識別を容易に行うことが可能となるので、この識別方法を充放電装置に用いる治具に適用することによって、蓄電デバイスの正極と負極が逆に接続されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施形態1として複数の蓄電デバイスを正しく整列させて重ねた状態を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施形態1として複数の蓄電デバイスを重ねた際に一つの蓄電デバイスが逆向きに重ねられた状態を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施形態2として複数の蓄電デバイスを正しく整列させて重ねた状態を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施形態2として複数の蓄電デバイスを重ねた際に一つの蓄電デバイスが逆向きに重ねられた状態を示す斜視図である。
【図5】特許文献1で提案された非水電解質電池の一例を示す斜視図である。
【図6】この発明の実施形態3として単一の蓄電デバイスを示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1,2,3:蓄電デバイス、10,20,30:外装体、11,21,31:正極リード端子、12,22,32:負極リード端子、10a,11a,12a,20a,21a,22a,30a,31a,32a:貫通孔、34:接続部材。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電要素を収容する外装体と、
前記蓄電要素の正極と負極のそれぞれに電気的に接続され、前記外装体から突出した正極リード端子および負極リード端子とを備え、
前記外装体、前記正極リード端子および前記負極リード端子からなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の部材には、光が通過可能な少なくとも一つの貫通孔が予め定められた位置に形成されている、蓄電デバイス。
【請求項2】
前記貫通孔の直径が0.5mm以上である、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記正極リード端子には第1の貫通孔が形成され、前記負極リード端子には第2の貫通孔が形成され、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔は、当該蓄電デバイスの中心線または中心に対して非対称の位置に形成されている、請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記正極リード端子は、互いに対向する前記外装体の両側部のうち一方の側部から突出しており、前記負極リード端子は、互いに対向する前記外装体の両側部のうち他方の側部から突出しており、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔は、当該蓄電デバイスの中心線と中心に対して非対称の位置に形成されている、請求項3に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記正極リード端子と前記負極リード端子は、それぞれ、互いに対向する前記外装体の両側部のうち一方側部から突出しており、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔は、当該蓄電デバイスの中心線に対して非対称の位置に形成されている、請求項3に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記正極リード端子と前記負極リード端子は、同一の金属またはその合金から形成されている、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−283342(P2009−283342A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135316(P2008−135316)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】