説明

蓄電池の電池電圧を測定する方法およびその端子装置

【課題】この発明は、蓄電池の端子に何らの傷を付けずに、しかも簡便で能率的に蓄電池の端子電圧を測定することができるような方法を提供しようとするものである。
【解決手段】蓄電池の端子に接触端子3を押圧して接触させ蓄電池の電池電圧を測定するに当たり、接触端子3を平板状に形成するとともに、接触端子3の両端を押圧力を異ならせた支持部材7で支持し、接触端子3を蓄電池の端子4に偏位して押圧して接触端子を傾斜させることによって接触端子3を横滑りさせる蓄電池の電池電圧を測定する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓄電池の電池電圧を簡便に、しかも誤判定を低減して正しく測定する方法およびその端子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の蓄電池の電池電圧を測定する治具の接触端子は、その先端が鋭角になっていて、蓄電池端子の表面の酸化した皮膜を貫通させて正確な電池電圧を測定するものであった。しかしながら、このような先端が鋭角になった接触端子を用いて蓄電池の電池電圧を測定すると、蓄電池の端子を傷つけるといった問題が指摘されていた。
【0003】
そこでこれまでにも、蓄電池の端子を傷つけないで蓄電池の電圧を測定するものとして、陽極および陰極端子嵌合用テーパ孔を凹設したブロック状接触部材を配設するとともに、これらの一対のブロック状接触部材に一対のリード線を接続した蓄電池の電圧測定用治具が公知である(例えば、実用新案文献1)。
【0004】
[実用新案文献1]公開実用平成3−44675(実用新案登録請求の範囲1)
また接触性能を改善したものとして、パット側の表面に酸化物などの異物が付着した場合に両者の接触が不良となるので、接触子の先端をパット側の傾斜面に圧接させ、さらに傾斜面の傾斜により先端に横方向の移動を生じさせて接触子を段差に当接させて接触子をパットに複数点で接触させるようにしたスプリングコンタクトの接触方法が公知である(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平5−26904(特許請求の範囲2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実用新案文献1の先行技術では、確かに蓄電池の端子を傷つけることは避けられるが、端子表面の酸化膜の除去がなされずに接触不良の問題を解決することは困難であった。また、特許文献1のものでは、蓄電池の端子に傾斜面を形成することができず、この技術を蓄電池に適用することは出来なかった。
【0006】
この発明は、蓄電池の端子に何らの傷を付けずに、しかも簡便で能率的に蓄電池の端子電圧を正確に測定することができるような方法および装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、蓄電池の端子に接触端子を押圧して接触させ蓄電池の電池電圧を測定するに当たり、接触端子を平板状に形成するとともに、接触端子の両端を押圧力を異ならせた支持部材で支持し、接触端子を蓄電池の端子に偏位して押圧して接触端子を傾斜させることによって接触端子を横滑りさせることを特徴とする蓄電池の電池電圧を測定する方法(請求項1)、押圧プレートと、この押圧プレートを押圧する押圧手段と、この押圧プレートの両端に装着された支持部材により取り付けられた接触端子から成り、押圧プレートの一端に装着された支持部材はバネ部材であり、他端は棒部材であり、棒部材の先端は接触端子と長孔を介して取り付けられて、接触端子は押圧プレートと実質的に平行に配置され、押圧手段で押圧プレートを押圧することによってバネ部材が圧縮されて接触端子が傾斜して蓄電池の端子に摺接するようにしたことを特徴とする蓄電池の電池電圧を測定する端子装置(請求項2)および押圧プレートの両側に装着される支持部材として、各々圧縮力が相違するバネ部材とした請求項2記載の蓄電池の電池電圧を測定する端子装置(請求項3)である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、蓄電池の端子電圧を誤判定の少ない状態で測定することができるので蓄電池生産の歩留まりが向上する。また、この発明によれば簡単にしかも能率的に蓄電池の端子電圧を正確に測定することができるので生産効率が向上する。さらに、この発明は簡単な治具で正確な端子電圧が測定できるので、その経済性も大きくアップする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明は、蓄電池の端子に接触端子を押圧して蓄電池の電池電圧を測定する方法で、その概要は図1に示されている。図1に示すように、蓄電池1は図示しないコンベアで電圧測定装置2の下方へ移動されてセットされる。ここで電圧測定装置2は、電圧測定用の接触端子3を下降させて、接触端子3,3の下端が蓄電池の端子4、4と接触した状態として蓄電池の電圧を測定する。図1は接触端子3の下面が蓄電池の陽極および陰極の各端子上面に接触した状態を示したものである。なお、図中、イは接触端子に接続された電圧測定用の接続線である。
【0010】
この状態の詳細は、例えば陽極の端子を例として図2に示されている。図2(A)は、蓄電池1とその上方にある電圧測定装置2の下部を拡大して示し、接続線やその他の部分は省略されている。
【0011】
電圧測定装置2は、その下部にピストン機構を備え、そのピストンロッド5の先端に押圧プレート6が固着されている。押圧プレート6は、その下側の一方端で棒部材7からなる支持部材が連結されている。棒部材7はその下方で接触端子3の一端で長孔8でもって回動及び摺動自在に連結されている。また、前記の押圧プレート6の他端は支持部材としてバネ部材9が介装した芯金10とともに接触端子3の他端と連結されている。バネ部材9はコイルスプリングで押圧プレート6と接触端子3の間で芯金10を中心にして嵌挿されている。芯金10は、その下端が接触端子3にピン11で回転自在に連結されている。芯金10の上端は押圧プレート6を貫通して上端ではストッパー12で抜け止めされている。
【0012】
接触端子3は所定の長さを有する金属平板で、図2(A)は電圧測定装置2が蓄電池1の真下に位置した状態を示したものである。図2(B)は、(A)の状態で電圧測定装置のピストン機構を駆動してロッド5を下降して、電圧測定装置の接触端子3を蓄電池の端子4の上面に接触させた状態を示したものである。この場合、接触端子3の端子4への接触は中央ではなく、バネ部材9の側へ偏位した位置で接触させる。図(C)は、ピストンロッド5をさらに下降させて押圧プレート6と接触端子3との間に装着したバネ部材9を圧縮させた状態を示したものである。この状態となると接触端子3と押圧プレート間の距離は、棒部材7の部分ではこれまでと変わらないのに対し、バネ部材9の部分では押圧力が低いので押圧されて短縮され、その結果接触端子3は図示したように傾斜(図では左下がり。)する。
【0013】
それと同時に、この接触端子3は蓄電池1の端子4の上面を摺接しながら傾斜方向に横滑りを生じる。それに伴って蓄電池の端子上面を擦って端子のこの部分の酸化膜を除去しその結果として接触端子3と蓄電池端子4との電気的接触を良好にするものである。
【0014】
上記の実施例では、接触端子の一方の側にだけバネ部材を装着したが、接触端子の他方の側にも同じようにバネ部材を装着して、両者のバネ圧を相違しても同様な効果をもたらすことができる。即ち、この場合も、同じように接触端子3は傾斜して、接触端子3は蓄電池1の端子4の上面を摺接しながら傾斜方向に横滑りを生じるものである。この実施例では蓄電池の陽極端子の場合について述べたが陰極端子の場合も全く同様である。
【0015】
そして、電池の電圧測定では陽極端子および陰極端子の接続を上記のようにして同時に行い電圧測定を行うことができる。
【0016】
なお、バネ部材としてコイルスプリングの例を示したが、コイルスプリングに代えエアサスペンションのような空気圧を利用しても使用できる。
【実施例】
【0017】
(実施例)
図1および図2に示すようにして蓄電池の電圧を測定した。即ち、接触端子の一方端には棒部材を、他方の端にはバネ部材を装着して接触端子を傾斜させることによって、蓄電池端子の表面の酸化膜を取除いて電池電圧を測定した。接触端子と蓄電池端子との接触点の支点から70mm離れた位置での電圧測定を、圧力1kg/cmとして接触端子の傾きを10度から5度ずつ増して30度まで傾けて測定した。結果は表1の通りであった。なお、試験は各々100個行ってその平均の値を示した。また、従来例との比較も示した。
【表1】

【0018】
表1の結果から、接触端子の傾きが20度以上であれば電圧測定の誤差が生じないことが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の蓄電池の電圧測定方法を示す説明図。
【図2】この発明の蓄電池の電圧測定方法の工程を示す説明図。
【符号の説明】
【0020】
1‥蓄電池、2‥電圧測定装置、3‥接触端子、4‥蓄電子の端子、5‥ピストンロッド、6‥押圧プレート、7‥支持部材としての棒部材、8‥支持部材としてのバネ部材、10‥芯金、11‥ピン、12‥ストッパー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池の端子に接触端子を押圧して接触させ蓄電池の電池電圧を測定するに当たり、接触端子を平板状に形成するとともに、接触端子の両端を押圧力を異ならせた支持部材で支持し、接触端子を蓄電池の端子に偏位して押圧して接触端子を傾斜させることによって接触端子を横滑りさせることを特徴とする蓄電池の電池電圧を測定する方法。
【請求項2】
押圧プレートと、この押圧プレートを押圧する押圧手段と、この押圧プレートの両端に装着された支持部材により取り付けられた接触端子から成り、押圧プレートの一端に装着された支持部材はバネ部材であり、他端は棒部材であり、棒部材の先端は接触端子と長孔を介して取り付けられて、接触端子は押圧プレートと実質的に平行に配置され、押圧手段で押圧プレートを押圧することによってバネ部材が圧縮されて接触端子が傾斜して蓄電池の端子に摺接するようにしたことを特徴とする蓄電池の電池電圧を測定する端子装置。
【請求項3】
押圧プレートの両側に装着される支持部材として、各々圧縮力が相違するバネ部材とした請求項2記載の蓄電池の電池電圧を測定する端子装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−97974(P2009−97974A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269425(P2007−269425)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【Fターム(参考)】