説明

蓄電池管理装置

【課題】各単セル間に温度ばらつきが生じた場合でも、最適な充放電制御が可能となるような蓄電池の状態を出力できる蓄電池管理装置を提供することにある。
【解決手段】複数の温度センサ20により、蓄電池10の温度を計測する。計測手段30は、蓄電池10の電圧及び電流を計測する。演算手段100の最高最低温度選択手段102は、温度センサ20が計測した温度値から、最高温度と最低温度を求める。許容電力演算手段104は、蓄電池10の電圧電流に基づいて、最高温度及び最低温度に対する蓄電池10の最大許容充放電電力若しくは最大許容充放電電流を求める。制限手段120は、電圧電流計測手段によって計測された蓄電池の電圧が、上限電圧又は下限電圧に近い場合に、演算手段が求めた最大許容充放電電力若しくは最大許容充放電電流を小さく制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛電池,ニッケル水素電池,リチウムイオン電池などの蓄電池の状態を管理する蓄電池管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、鉛電池,ニッケル水素電池,リチウムイオン電池などの蓄電池が搭載される。エンジン始動や電装品,ハイブリッド自動車或いは電気自動車が走行する際に必要となる電力供給等は、これらの蓄電池によって賄われる。
【0003】
車両に搭載される蓄電池は広い温度範囲で使用され、蓄電池はその温度に応じた最大の許容電力を有する。この最大許容電力を超えて蓄電池の充放電を行うと、過充電・過放電となる可能性がある。一般的に、低温状態の蓄電池が持つ最大許容電力は小さく、高温状態の蓄電池が持つ最大許容電力は大きいものである。また、高温状態では最大許容電力は大きいが、高温状態での蓄電池の使用は蓄電池の劣化を促進させる。充電状態(SOC)に関して述べると、蓄電池の充電状態SOCが高いほど最大許容充電電力が小さく、最大許容放電電力が大きいものである。また、蓄電池の充電状態SOCが低いほど最大許容放電電力が小さく、許容充電電力が大きいものである。蓄電池を安全に、最適に使用するためには低温から高温、或いは低充電状態SOCから高充電状態SOCなど、蓄電池のあらゆる状態に応じて最大許容電力を超えない範囲内において充放電制御を行う必要がある。
【0004】
そこで、従来は、例えば、特開2003−219510号公報に記載のように、電池の温度が所定温度以下または所定温度以上のときに、充電電力上限値,放電電力上限値を常温時に比して小さくするように定め、充放電電力上限値以下になるように充電電力や放電電力を定め、電池の充電制御を行うものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−219510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ハイブリッド自動車や電気自動車で用いる蓄電池は、単セルを複数組み合わせた組み電池が一般的に用いられる。組み電池が備える複数の単セル間で温度ばらつきが発生し、各単セルで最大許容電力が異なってくる。また、単セルの充電状態ばらつきが発生し、各単セルで最大許容電力が異なってくる。
【0007】
本発明の目的は、各単セル間に温度ばらつきが生じた場合でも、最適な充放電制御が可能となるような蓄電池の状態を出力できる蓄電池管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、充放電可能な蓄電池の電圧及び電流を計測する電圧電流計測手段と、前記電圧電流計測手段が計測した前記蓄電池の電圧電流に基づいて、前記蓄電池の最大許容充放電電力若しくは最大許容充放電電流を求める演算手段と、前記電圧電流計測手段によって計測された前記蓄電池の電圧が、上限電圧又は下限電圧に近い場合に、前記演算手段が求めた前記最大許容充放電電力若しくは前記最大許容充放電電流を小さく制限する制限手段と、を備えるようにしたものである。
かかる構成により、各単セル間に温度ばらつきが生じた場合でも、最適な充放電制御が可能となるような蓄電池の状態を出力できるものとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各単セル間に温度ばらつきが生じた場合でも、最適な充放電制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態による蓄電池管理装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】蓄電池の等価回路を示す回路図である。
【図3】蓄電池の等価インピーダンスの説明図である。
【図4】充電状態SOCと最大許容放電電力や最大許容充電電力の関係の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による蓄電池管理装置に用いる温度保護手段の制限特性図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による蓄電池管理装置の選択手段の動作説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による蓄電池管理装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施形態による蓄電池管理装置に用いる制限手段の動作説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態による蓄電池管理装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第4の実施形態による蓄電池管理装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第5の実施形態による蓄電池管理装置のシステム構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図6を用いて、本発明の第1の実施形態による蓄電池管理装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による蓄電池管理装置のシステム構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による蓄電池管理装置のシステム構成を示すブロック図である。
【0012】
蓄電池10は、充放電可能な蓄電デバイスであり、例えば、鉛電池,ニッケル水素電池,リチウムイオン電池,電気二重層キャパシタなどからなる。蓄電池10は、複数個の単セルから構成されている。ハイブリッド自動車又は電気自動車で用いられる蓄電池10は、ニッケル水素電池又はリチウムイオン電池などの単セルを複数直列又は並列に組み合わせて用いるのが一般的である。例えば、蓄電池10の出力電圧として400Vが必要な場合、これを満たすだけの単セルを直列接続することで、所定の出力電圧を得ることができる。また、蓄電池10は、空冷等により冷却される。
【0013】
蓄電池10は、複数個の温度センサを備える。ここでは、4個の温度センサ20x1,20x2,20n1,20n2を備えた場合を例に挙げる。温度センサ20x1,20x2,20n1,20n2は、熱電対或いはサーミスタなどからなる。蓄電池10がの熱解析を行うことで、最高温度部位及び最低温度部位を知ることができる。温度センサ20x1,20x2は、最高温度部位付近に少し離して配置され、最高温度を検出する。温度センサ20n1,20n2は、最低温度部位付近に配置され、最低温度を検出する。最高温度を検出するための温度センサ及び最低温度を検出するための温度センサはそれぞれ1個でもよいものであるが、単セルの個体差を考えると、2個以上の温度センサを最高温度部位付近及び最低温度部位付近に配置することで、信頼性を向上することができる。蓄電池が備える全ての単セルに温度センサを設置してもよいものである。
【0014】
計測手段30は、電圧センサ32と電流センサ34とを備えている。計測手段30は、蓄電池10の無負荷時又は充放電時の電圧V及び充放電時に流出入する電流Iを計測し、演算手段に送信する。
【0015】
演算手段100は、最高最低温度選択手段102と、許容電力演算手段104と、温度保護手段106とを備えている。最高最低温度選択手段102は、温度センサ20x1,20x2が検出した温度Tmax1,Tmax2の内、高い方の温度を最高温度Tmaxとして選択し出力する。また、最高最低温度選択手段102は、温度センサ20n1,20n2が検出した温度Tmin1,Tmin2の内、低い方の温度を最低温度Tminとして選択し出力する。
【0016】
許容電力演算手段104は、最高最低温度選択手段102によって選択された最高温度Tmax及び最低温度Tminのそれぞれに対して、許容充電電力Pcmax1((=Pcmax(Tmax))及びPcmax(Tmin))及び許容放電電力Pdmax1((=Pdmax(Tmax))及びPdmax(Tmin))を求める。
【0017】
ここで、図2〜図4を用いて、許容電力演算手段104による許容充電電力Pcmax1及び許容放電電力Pdmax1の求め方について説明する。
図2は、蓄電池10の等価回路を示す回路図である。図3は、蓄電池10の等価インピーダンスの説明図である。図4は、充電状態SOCと最大許容放電電力や最大許容充電電力の関係の説明図である。図5は、温度保護手段106の制限特性図である。
【0018】
図2において、蓄電池10は、起電力OCVと、内部抵抗Rと、インピーダンスZとキャパシタンス成分Cの並列接続対との直列接続で表される。
【0019】
蓄電池10に電流Iを印加すると、蓄電池10の端子間電圧CCVは、以下の式(1)で表される。

CCV=OCV+IR+Vp …(1)

ここで、Vpは分極電圧であり、インピーダンスZとキャパシタンス成分Cの並列接続対の電圧に相当する。
【0020】
起電力OCVは、蓄電池10が充放電を行っていないときの開放電圧であるが、蓄電池10が充放電されている状況では、起電力OCVを直接測定することが不可能である。このため、式(2)の様に、端子間電圧CCVからIRドロップと分極電圧Vpを差し引いて起電力OCVを求める。

OCV=CCV−IR−Vp …(2)

内部抵抗Rと分極電圧Vpは、演算手段100の内部或いは外部に設置された記憶装置に格納される蓄電池10の特性情報である。特性情報は、蓄電池10の温度又は充電状態SOCなど、あらゆる状態に応じて共通する一つの値を用いても良く、蓄電池10の温度又は充電状態SOCなど、蓄電池10の状態に応じて値を持たせてもよいものである。蓄電池10の状態に応じて特性情報を持たせれば、より精度の高い起電力OCVを得ることができる。電流値Iは、計測手段30によって取得される無負荷時又は充放電時の電流値である。端子間電圧CCVとIとRと分極電圧Vpとを用いて、式(2)により、起電力OCVが算出されると、以下の式(3),式(4)によって蓄電池10が現在許容することが可能な最大充電電流値Icmax、最大放電電流値Idmaxを求めることができる。

Icmax=(Vupper−OCV)/Rz …(3)

Idnax=(OCV−Vlower)/Rz …(4)

ここで、Rzは図2における内部抵抗R,インピーダンスZ,キャパシタンス成分Cの等価インピーダンスであり、Vupperは蓄電池10の上限電圧、Vlowerは下限電圧である。
【0021】
図3に示すように、等価インピーダンスRzは、蓄電池10の温度又は充電状態SOCに応じて値が異なるので、蓄電池10の温度又は充電状態SOCに応じて等価インピーダンスRzを持たせて使い分ければ、より精度の高い最大許容電流を得ることができる。最大充電電力Pcmax及び最大放電電力Pdmaxは、以下の式(5),式(6)から求めることができる。

Pcmax=Icmax×Vupper …(5)

Pdmax=Idmax×Vlower …(6)

図4に示すように、算出された最大許容放電電力Pdmaxは低充電状態SOCで小さく、高充電状態SOCでは大きい。また、最大許容充電電力Pcmaxは低充電状態SOCで大きく、高充電状態SOCでは小さくなる。さらに、温度が低い場合は式(3)及び式(4)の等価インピーダンスRzが大きくなるために最大許容電力が小さく、温度が高い場合は等価インピーダンスRzが小さくなるために最大許容電力は大きくなる。
【0022】
許容電力演算手段104は、最高温度Tmaxに対する許容充電電力Pcmax(Tmax)及び許容放電電力Pdmax(Tmax)を算出し、また、最低温度Tminに対する許容充電電力Pcmax(Tmin)及び許容放電電力Pdmax(Tmin)を算出する。
【0023】
温度保護手段106は、温度が所定温度T1以上になると、許容充電電力や許容放電電力を制限するものである。
【0024】
図5は、温度保護手段106の制限特性図である。図5に示すように、温度保護手段106は、蓄電池10の温度が所定温度T1以上になると、許容充電電力や許容放電電力に掛ける係数kを1よりも小さくして、許容充電電力Pcmax2や許容放電電力Pdmax2として出力する。
【0025】
選択手段110は、演算手段100によって求められた複数の許容充電電力及び複数の許容放電電力の内、小さい方の値を出力する。例えば、温度保護手段106の係数kが1として説明すると、許容電力演算手段104が算出した許容充電電力Pcmax(Tmax)及び許容充電電力Pcmax(Tmin)の内、小さい方の値を、許容充電電力Pcmaxとして上位システムに出力する。また、許容電力演算手段104が算出した許容放電電力Pdmax(Tmax)及び許容放電電力Pdmax(Tmin)の内、小さい方の値を、許容放電電力Pdmaxとして上位システムに出力する。
【0026】
上位システムは、選択手段110から与えられた許容充電電力Pcmaxの情報に基づいて、この許容充電電力Pcmax以下で、蓄電池10に充電するように蓄電池10を使用し、また、許容放電電力Pdmaxの情報に基づいて、この許容放電電力Pdmax以下で、蓄電池10に蓄電された電力を放電して使用するように、蓄電池10を充放電制御する。
【0027】
ここで、図6を用いて、選択手段110の動作について説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態による蓄電池管理装置の選択手段の動作説明図である。なお、ここでは、許容充電電力Pcmaxについてのみ示している。
【0028】
常温の蓄電池10が周囲温度が高い環境下に置かれると、次第に蓄電池10の温度は上昇する。従って、最高温度Tmax及び最低温度Tminも上昇する。その結果、許容電力演算手段104が算出した許容充電電力Pcmax(Tmax)及び許容充電電力Pcmax(Tmin)も次第に上昇する。しかしながら、例えば、時刻t1において、最高温度Tmaxが、図5に示した所定温度T1以上になると、温度保護手段106は、許容充電電力Pcmax(Tmax)を制限して、次第に下降する。時刻t2において、許容充電電力Pcmax(Tmax)と許容充電電力Pcmax(Tmin)が等しくなり、以後、許容充電電力Pcmax(Tmax)が許容充電電力Pcmax(Tmin)よりも小さくなるとする。
【0029】
このような状態において、選択手段110は、時刻t2までは、許容充電電力Pcmax(Tmin)を選択して上位システムに出力し、時刻t2以降は許容充電電力Pcmax(Tmax)を選択して上位システムに出力する。
【0030】
演算手段100及び選択手段110は、記憶装置やCPUなどで構成されるコントローラや計算機システム、或いはマイクロコンピュータによって構成される。演算手段100や選択手段110としては、情報を入力して演算を行い演算した結果を出力することが可能な手段であればどのような構成のものでも用いることができる。計測手段30と、演算手段100と、選択手段110とは、同一デバイス上に構成されるマイクロコンピュータとして実現しても良く、計測手段30と演算手段100と選択手段110を合わせて蓄電池10の内部に設置することも可能である。
【0031】
また、演算手段100が、式(3)及び式(4)に示される最大充電電流Idmax及び最大放電電流Idmaxを出力し、選択手段110は、演算手段100が算出した最低温度,最高温度に対する最大許容電流(最大充電電流Idmax,最大放電電流Idmax)に対して、それぞれ、小さい方の値を選択して、上位システムに出力するようにしてもよいものである。
【0032】
さらに、選択手段110の機能を、上位システムに持たせることも可能である。すなわち、演算手段100は、最低温度,最高温度に対する最大許容電力若しくは最大許容電流を上位システムに出力し、上位システムが、受け取った最低温度,最高温度に対する最大許容電力若しくは最大許容電流の中から、小さいほうを選択して蓄電池10の充放電を行うことも可能である。
【0033】
以上説明したように、本実施形態では、演算手段100により最低温度及び最高温度に対する最大許容電力又は最大許容電流を演算し、選択手段110により、小さいほうを採用することにより、最も小さい最大許容電力又は最大許容電流を持つ単セルに合わせて組み電池の充放電管理を行うことができるので、複数の単セルを組み合わせた組み電池の、温度ばらつきを考慮に入れた最適な充放電管理を行うことが可能となる。
【0034】
次に、図7及び図8を用いて、本発明の第2の実施形態による蓄電池管理装置の構成及び動作について説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態による蓄電池管理装置のシステム構成を示すブロック図である。図8は、本発明の第2の実施形態による蓄電池管理装置に用いる制限手段の動作説明図である。なお、図7において、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0035】
本実施形態では、図1に示した実施形態の構成に加えて、演算手段100と選択手段110の間に、制限手段120を備えている。
【0036】
演算手段100は、最高温度及び最低温度に対する許容充電電力Pcmax2(最高温度Tmaxに対する許容充電電力Pcmax(Tmax)、最低温度Tminに対する許容充電電力Pcmax(Tmin))、及び最高温度及び最低温度に対する許容放電電力Pdmax2(最高温度Tmaxに対する許容放電電力Pdmax(Tmax)、最低温度Tminに対する許容放電電力Pdmax(Tmin))を出力する。
【0037】
制限手段120は、演算手段100が演算した蓄電池10の最大許容電力(許容充電電力Pcmax2,許容放電電力Pdmax2)と、計測手段30によって計測された蓄電池10の電池電圧Vとを受信する。制限手段120は、電池電圧Vが上限電圧に近い場合は最大許容充電電力を制限し、下限電圧に近い場合は最大許容放電電力を小さく制限する機能を有する。
【0038】
すなわち、図8(A)に示すように、制限手段120は、電池電圧Vが第1の閾値電圧Vth1を超えると1以下になり、上限電圧Vupperに達すると0となる充電係数Kcgを備えている。また、図8(B)に示すように、電池電圧が閾値Vth2より下回ると1以下となり、下限電圧Vminに達すると0となる放電係数Kdcを備えている。制限手段120は、充電係数Kcg及び放電係数Kdcを用いて、以下の式(7),式(8)により、最大許容電力を求める。

Pcmax3=Kcg×Pcmax2 …(7)

Pdmax3=Kdc×Pdmax2 …(8)

さらに、選択手段110は、制限手段120が出力する許容充電電力Pcmax3(Tmax)及び許容充電電力Pcmax3(Tmin)の内、小さい方の値を、許容充電電力Pcmaxとして上位システムに出力する。また、許容放電電力Pdmax3(Tmax)及び許容放電電力Pdmax3(Tmin)の内、小さい方の値を、許容放電電力Pdmaxとして上位システムに出力する。
【0039】
制限手段120が行う処理により、上限電圧或いは下限電圧に近い場合は最大許容電力を小さく制限して上位システムに送信し、蓄電池10を使用させる。また、制限手段120が行う処理は、演算手段100が演算する最大許容電流についても適用可能である。
【0040】
制限手段120は、演算手段100とは独立した記憶装置或いはCPUなどで構成されるコントローラ,計算機システム,マイクロプロセッサなどで前述した処理を実行させて実現しても良く、演算手段100が行う演算の一部として実現してもよいものである。
【0041】
本実施形態では、演算手段100及び選択手段110により、複数の単セルを組み合わせた組み電池の、温度ばらつきを考慮に入れた最適な充放電管理を行うことが可能となる。
【0042】
また、制限手段120により、蓄電池10の過充電・過放電を防止して充放電管理を行うことができる。
【0043】
次に、図9を用いて、本発明の第3の実施形態による蓄電池管理装置の構成及び動作について説明する。
図9は、本発明の第3の実施形態による蓄電池管理装置のシステム構成を示すブロック図である。なお、図9において、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0044】
一般的に、単セルを複数組み合わせた組み電池が備える単セルは、SOC(充電状態)ばらつきが発生する。高SOCの蓄電池は、最大許容充電電力が小さく、最大許容放電電力が大きい。低充電状態SOCの蓄電池は、最大許容充電電力が大きく、最大許容放電電力が小さい。従って、本実施形態では、組み電池の充放電管理を行う場合、充電状態SOCのばらつきを考慮に入れた制御を行えるようにする。
【0045】
計測手段30Aは、電圧センサ32Aと電流センサ34とを備えている。計測手段30Aが備える電流センサ34は、蓄電池10を構成する各単セル毎に電圧電流を検出し、蓄電池10の中の各単セルの無負荷時又は充放電時の電圧v(n)を取得する。蓄電池10の全体としての充放電時に流出入する電流Iを出力する。蓄電池10が、96個の単セルを直列に接続して構成されている場合では、電圧v(n)は、96個分出力する。なお、電圧に関しては、各単セル毎の電圧でなく、2つ以上の単セルの電圧を出力するものであってもよいものである。また、複数の単セルで構成された蓄電池10を複数直列接続して蓄電池とする場合には、各蓄電池毎の電圧を計測するようにしてもよいものである。
【0046】
演算手段100Aは、最高最低温度選択手段102と、温度保護手段106に加えて、許容電力演算手段104Aと、最高最低電圧選択手段108を備えている。最高最低電圧選択手段108は、計測手段30Aが出力する電圧v(n)の中から、最高電圧vmaxと最低電圧vminを選択して、許容電力演算手段104Aに出力する。
【0047】
許容電力演算手段104Aは、最高電圧vmaxに基づいて、蓄電池全体としての最高電圧Vmaxを求める。すなわち、単セルの電圧vmaxに、蓄電池内の単セルの個数(例えば、96個)を掛けて、蓄電池全体としての最高電圧Vmaxを求める。また、許容電力演算手段104Aは、最低電圧vminに基づいて、蓄電池全体としての最低電圧Vminを求める。
【0048】
演算手段100Aは、最低電圧Vmin及び最高電圧Vmaxを、式(1)における端子間電圧CCVとして、式(2)〜式(6)により、最低電圧Vminに対する最大許容充電電力Pcmax(Vmin)と、最大許容放電電力Pdmax(Vmin)と、最大電圧Vmaxに対する最大許容充電電力Pcmax(Vmax)と、最大許容放電電力Pdmax(Vmax)とを算出する。演算手段100Aは、最大許容充電電力Pcmax1’(Pcmax(Vmin)及びPcmax(Vmax))と、最大許容放電電力Pdmax1’(Pdmax(Vmin)及びPdmax(Vmax))を温度保護手段106に出力する。ここで、最低電圧Vminで求めた最大許容放電電力Pdmax(Vmin)は小さく、最大許容充電電力Pcmax(Vmin)は大きくなる。最高電圧Vmaxで求めた最大許容放電電力Pdmax(Vmax)は大きく、最大許容充電電力Pcmax(Vmax)は小さくなる。
【0049】
温度保護手段106は、蓄電池10の温度が所定温度より高い場合には、最大許容充電電力Pcmax1’と、最大許容放電電力Pdmax1’を制限して、それぞれ、最大許容充電電力Pcmax2’と、最大許容放電電力Pdmax2として選択手段110に出力する。
【0050】
選択手段110は、入力した最大許容電力Pcmax2’,Pdmax2のうち、最大許容放電電力及び最大許容充電電力の小さいほうを採用して外部の上位システムに送信する。上位システムは、受信した最大許容電力に基づいて蓄電池10を使用する。また、選択手段110が行う処理は、演算手段100が演算する最大許容電流についても適用可能である。
【0051】
本実施形態のように、単セルの充電状態SOCに基づいて、蓄電池10の充放電管理を行うことによって、蓄電池10が備える複数の単セルの充電状態SOCばらつきを考慮に入れた充放電管理を行うことが可能となる。
【0052】
次に、図10を用いて、本発明の第4の実施形態による蓄電池管理装置の構成及び動作について説明する。
図10は、本発明の第4の実施形態による蓄電池管理装置のシステム構成を示すブロック図である。なお、図10において、図9と同一符号は、同一部分を示している。
【0053】
本実施形態では、図9に示した構成に加えて、図8にて説明した制限手段120を備えている。制限手段120以外の動作は、図9にて説明したものと同様であり、制限手段120の動作は、図8にて説明したものと同様である。
【0054】
計測手段30Bは、図1の計測手段30と、図9の計測手段30Aの両方の機能を備えている。したがって、計測手段30Bは、蓄電池10の全体としての無負荷時又は充放電時の電圧V及び充放電時に流出入する電流Iを出力する。また、計測手段30Bは、蓄電池10を構成する各単セル毎に電圧電流を検出し、蓄電池10の中の各単セルの無負荷時又は充放電時の電圧v(n)を出力する。
【0055】
したがって、本実施形態では、単セルの充電状態SOCに基づいて、蓄電池10の充放電管理を行うことによって、蓄電池10が備える複数の単セルの充電状態SOCばらつきを考慮に入れた充放電管理を行うことが可能となる。
【0056】
また、制限手段120により、蓄電池10の過充電・過放電を防止して充放電管理を行うことができる。制限手段120の演算で用いる電圧は、蓄電池10の全体としての無負荷時又は充放電時の電圧を使用してもよく、単セルから求めた最高電圧Vmaxを用いて最大許容充電電力を、最低電圧Vminを用いて最大許容放電電力を制限するものでもよいものである。最高電圧で最大許容充電電力を、最低電圧で最大許容放電電力を制限することにより、より確実に過充電,過放電を防止することができる。
【0057】
次に、図11を用いて、本発明の第5の実施形態による蓄電池管理装置の構成及び動作について説明する。
図11は、本発明の第5の実施形態による蓄電池管理装置のシステム構成を示すブロック図である。なお、図11において、図7及び図10と同一符号は、同一部分を示している。
【0058】
本実施形態は、図7に示した構成と、図10に示した構成の両方を備えたものである。
【0059】
演算手段100Bは、最高最低温度選択手段102と、許容電力演算手段104と、温度保護手段106と、許容電力演算手段104Aと、最高最低電圧選択手段108とを備えている。演算手段100Bは、最高温度Tmax及び最低温度Tminに対する許容充電電力Pcmax2((=Pcmax(Tmax))及びPcmax(Tmin))と、最高温度Tmax及び最低温度Tminに対する許容放電電力Pdmax2((=Pdmax(Tmax))及びPdmax(Tmin))と、最大電圧Vmax及び最低電圧Vminに対する最大許容充電電力Pcmax2’((=Pcmax(Vmax))及びPcmax(Vmin))と、最大電圧Vmax及び最低電圧Vminに対するに対する最大許容放電電力Pdmax2’((=Pdmax(Vmax))及びPdmax(Vmin))とを出力する。
【0060】
本実施形態では、演算手段100B及び選択手段110により、複数の単セルを組み合わせた組み電池の、温度ばらつきを考慮に入れた最適な充放電管理を行うことが可能となる。
【0061】
また、演算手段100Bは、単セルの充電状態SOCに基づいて、蓄電池10の充放電管理を行うことによって、蓄電池10が備える複数の単セルの充電状態SOCばらつきを考慮に入れた充放電管理を行うことが可能となる。
【0062】
さらに、制限手段120により、蓄電池10の過充電・過放電を防止して充放電管理を行うことができる。
【0063】
以上説明したように、本発明の各実施形態は、単セルを複数組み合わせた組み電池を備える電源システムヘの車用を目的としており、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両に限定されることなく幅広く利用可能である。
【0064】
本発明では、温度ばらつき又は電池電圧を考慮に入れて最大許容電力を求め、充放電管理を行うことができるので、複数の単セルを備える組み電池を安全に、最適に一括管理を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
10…蓄電池
20…温度センサ
30…計測手段
100…演算手段
102…最高最低温度選択手段
104…許容電力演算手段
106…温度保護手段
108…最高最低電圧選択手段
110…選択手段
120…制限手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な蓄電池の電圧及び電流を計測する電圧電流計測手段と、
前記電圧電流計測手段が計測した前記蓄電池の電圧電流に基づいて、前記蓄電池の最大許容充放電電力若しくは最大許容充放電電流を求める演算手段と、
前記電圧電流計測手段によって計測された前記蓄電池の電圧が、上限電圧又は下限電圧に近い場合に、前記演算手段が求めた前記最大許容充放電電力若しくは前記最大許容充放電電流を小さく制限する制限手段と、を備えた、
ことを特徴とする蓄電池管理装置。
【請求項2】
請求項1記載の蓄電池管理装置において、
前記制限手段は、前記上限電圧よりも小さい第1閾値電圧を越えると1よりも小さくなり、前記上限電圧に達成すると0となる充電係数と、前記下限電圧よりも大きい第2閾値電圧を下回ると1よりも小さくなり、前記下限電圧に達成すると0となる放電係数と、を備え、
前記電圧電流計測手段によって計測された前記蓄電池の電圧が前記第1閾値電圧を超えた場合或いは前記第2閾値電圧を下回った場合、前記充電係数或いは放電係数を求め、前記最大許容充電電力若しくは前記最大許容充電電流或いは前記最大許容放電電力若しくは前記最大許容放電電流に乗じて、前記最大許容充電電力若しくは前記最大許容充電電流或いは前記最大許容放電電力若しくは前記最大許容放電電流を小さく制限する、
ことを特徴とする蓄電管理装置。
【請求項3】
充放電可能な蓄電池の電圧及び電流を計測する電圧電流計測手段と、
前記電圧電流計測手段が計測した前記蓄電池の電圧電流に基づいて、前記蓄電池の最大許容充放電電力若しくは最大許容充放電電流を求める演算手段と、
前記電圧電流計測手段によって計測された前記蓄電池の電圧が、上限電圧又は下限電圧に近い場合に、前記演算手段が求めた前記最大許容充放電電力若しくは前記最大許容充放電電流を制限する制限手段と、を備えた、
ことを特徴とする蓄電池管理装置。
【請求項4】
請求項3記載の蓄電池管理装置において、
前記制限手段は、前記電圧電流計測手段によって計測された前記蓄電池の電圧が予め定めた第1の閾値を超えた場合、前記演算手段が求めた前記最高温度及び前記最低温度に対する前記最大許容充電電力若しくは最大許容充電電流に対する制限を開始し、前記蓄電池の電圧が前記第1の閾値より大きい上限電圧に到達した場合は前記最大許容充電電力若しくは最大許容充電電流が0となるように制限し、
又は、前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値より下回った場合に、前記演算手段が求めた前記最高温度及び前記最低温度に対する前記最大許容充電電力若しくは最大許容充電電流に対する制限を開始し、前記蓄電池の電圧が前記第2の閾値より小さい下限電圧に到達した場合は前記最大許容充電電力若しくは最大許容充電電流が0となるように制限することを特徴とする蓄電池管理装置。
【請求項5】
請求項3記載の蓄電池管理装置において、
前記制限手段は、前記上限電圧よりも小さい第1閾値電圧を越えると1よりも小さくなり、前記上限電圧に達成すると0となる充電係数と、前記下限電圧よりも大きい第2閾値電圧を下回ると1よりも小さくなり、前記下限電圧に達成すると0となる放電係数と、を備え、
前記電圧電流計測手段によって計測された前記蓄電池の電圧が前記第1閾値電圧を超えた場合或いは前記第2閾値電圧を下回った場合、前記充電係数或いは放電係数を求め、前記最大許容充電電力若しくは前記最大許容充電電流或いは前記最大許容放電電力若しくは前記最大許容放電電流に乗じて、前記最大許容充電電力若しくは前記最大許容充電電流或いは前記最大許容放電電力若しくは前記最大許容放電電流を小さく制限する、
ことを特徴とする蓄電管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−110221(P2012−110221A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270936(P2011−270936)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【分割の表示】特願2005−362733(P2005−362733)の分割
【原出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】