蓄電素子
【課題】圧力調整装置の機能の低下を長期間にわたって抑制することができる蓄電素子を得る。
【解決手段】蓄電素子1は、電解液が含浸された蓄電素子本体2と、蓄電素子本体2を密封する外装体3と、外装体3に設けられた圧力調整装置4とを備えている。圧力調整装置4は、複数のガス放出機構部10,11を有している。また、圧力調整装置4は、蓄電素子本体2が存在する外装体3の内部空間8からのガスが各ガス放出機構部10,11を順次通ることにより内部空間8から外部空間9へのガスの放出を許容し、かつ外部空間9から内部空間8へのガスの進入を各ガス放出機構部10,11で阻止する。各ガス放出機構部10,11間には、ガス放出機構部10,11で個別に仕切られた緩衝空間12が形成されている。
【解決手段】蓄電素子1は、電解液が含浸された蓄電素子本体2と、蓄電素子本体2を密封する外装体3と、外装体3に設けられた圧力調整装置4とを備えている。圧力調整装置4は、複数のガス放出機構部10,11を有している。また、圧力調整装置4は、蓄電素子本体2が存在する外装体3の内部空間8からのガスが各ガス放出機構部10,11を順次通ることにより内部空間8から外部空間9へのガスの放出を許容し、かつ外部空間9から内部空間8へのガスの進入を各ガス放出機構部10,11で阻止する。各ガス放出機構部10,11間には、ガス放出機構部10,11で個別に仕切られた緩衝空間12が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電解液が含浸された蓄電素子本体を密封する外装体に圧力調整装置設けられた蓄電素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、正極と、負極と、正極及び負極間に挟まれたセパレータとを含む蓄電素子エレメントを電解液に含浸させた状態で外装体に収納した蓄電素子である。電気二重層キャパシタは、電気二重層コンデンサ、スーパーキャパシタ、ウルトラキャパシタ、電気化学キャパシタ等と称される場合があり、単にキャパシタと称される場合も多い。電気二重層キャパシタとリチウムイオン二次電池とのハイブリッドであるリチウムイオンキャパシタでは、活性炭等の電気二重層キャパシタの電極材料を正極に使用し、リチウムイオンを吸蔵放出可能なリチウムイオン二次電池の電極材料を負極に使用する場合が多いが、正極の一部にリチウムイオン電池の電極材料を使用するリチウムイオンキャパシタも存在している。また、炭素材料を正極に使用することにより、炭素材料表面の電気二重層容量と炭素内部への陽イオンの吸蔵放出による容量とを用いるハイブリッドキャパシタ等も存在している。
【0003】
上記のような電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ、ハイブリッドキャパシタのような蓄電素子では、電解液が使用されているので、アルミラミネートシート等のガスバリア性能を持つ外装材で蓄電素子エレメントを密閉封口することにより、電解液が外部に漏れないようにするとともに、水や酸素等のガスが外部から外装材内へ進入することを防いでいる。一方、上記の蓄電素子では、比表面積が大きな電極材料が使用されているので、反応面積が大きくなり、蓄電素子を長期間使用すると、例えば電解液の分解や、電極材料に吸着された不純物の分解等により、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、エチレン等のガスが発生する。従って、上記の蓄電素子では、外装材内でのガスの発生により、外装材の変形や外装材内の圧力増加の問題が生じる。また、通常の使用環境ではガスの発生が問題にならない場合でも、大電流の充放電を繰り返すと蓄電素子の内部抵抗により発熱して蓄電素子が高温になる場合もある。さらに、高電圧環境下での蓄電素子の使用によっても、外装材内でのガスの発生が促進される。
【0004】
従来、外装材の変形や外装材内の圧力増加を抑制するために、外装材に通気孔を設け、外装材の内側から通気孔を覆った状態でガス放出弁を取り付けた蓄電素子が提案されている。ガス放出弁は、外装材の内部からのガスを通気孔を通して外部へ放出するとともに、外装材の外部から内部への酸素や水分等の進入を阻止する(例えば特許文献1及び2参照)。
【0005】
また、従来、外装材に開口部を設け、外装材の内部のガスを外部へ放出可能なガス抜きベントを開口部に嵌めることにより、外装材の内圧の異常上昇を防止するようにした蓄電素子も提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−128199号公報
【特許文献2】特開2008−153282号公報
【特許文献3】特開2003−297700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜3に示されている蓄電素子では、外装材に取り付けられたガス放出弁やガス抜きベントのすべてが外気に接しているので、高湿度環境下ではガス放出弁内やガス抜きベント内のそれぞれに結露水が蓄積されやすくなってしまう。これにより、ガス放出弁やガス抜きベントのそれぞれについて、外装材内への酸素や水分等の進入を阻止する機能が低下するおそれがある。また、ガス放出弁やガス抜きベントに金属部品が使用されている場合には、金属部品の腐食によるガス放出弁やガス抜きベントの機能低下も考えられ、ゴム等の部品を用いた場合でも脆化等による機能低下が考えられる。また、外装材の内部で発生するガスには電解液の気化成分も含まれる場合があり、蓄電素子の内部と外部でガス成分が異なるため、外装材の内部と外部で密閉に適した素材を選択する必要がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、圧力調整装置の機能の低下を長期間にわたって抑制することができる蓄電素子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る蓄電素子は、電解液が含浸された蓄電素子本体、蓄電素子本体を密封する外装体、及び外装体の内側に設けられた第1のガス放出機構部と、外装体の外側に設けられた第2のガス放出機構部とを有し、外装体に設けられ、蓄電素子本体が存在する外装体の内部空間からのガスが各ガス放出機構部を順次通ることにより内部空間から外部空間へのガスの放出を許容し、かつ外部空間から内部空間へのガスの進入を各ガス放出機構部で阻止する圧力調整装置を備え、各ガス放出機構部間には、ガス放出機構部で個別に仕切られた緩衝空間が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る蓄電素子では、第1のガス放出機構部が外装体の内側に設けられているとともに、第2のガス放出機構部が外装体の外側に設けられ、内部空間からのガスが各ガス放出機構部を順次通ることにより、内部空間から外部空間へのガスの放出が許容され、外部空間から内部空間へのガスの進入が各ガス放出機構部のそれぞれで阻止されるようになっており、各ガス放出機構部間には、ガス放出機構部で仕切られた緩衝空間が形成されているので、各ガス放出機構部のいずれかの機能が劣化したとしても、劣化していないガス放出機構部により内部空間へのガスの進入を阻止することができ、内部空間のガスと外部空間のガスもしくは水分の遮断に適した圧力調整装置を得ることができる。また、少なくともいずれかのガス放出機構部が外気との接触を避けて配置されるので、外気との接触を避けて配置されたガス放出機構部内で結露水が生じにくくなり、そのガス放出機構部の機能の劣化を抑制することができる。これにより、外部空間から圧力調整装置を通って内部空間にガスが進入することを長期間にわたって阻止することができ、圧力調整装置の機能の低下を長期間にわたって抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1による蓄電素子を示す断面図である。
【図2】図1のII-II線に沿った断面図である。
【図3】図2の圧力調整装置を示す拡大断面図である。
【図4】図3の圧力調整装置を示す分解斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態2による蓄電素子の圧力調整装置を示す断面図である。
【図6】図5の圧力調整装置を示す分解斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態3による蓄電素子を示す正面図である。
【図8】図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【図9】図7の外装体を構成する2枚のシートの熱融着部分を示す正面図である。
【図10】図8の圧力調整装置を示す拡大断面図である。
【図11】この発明の実施の形態4による蓄電素子を示す斜視図である。
【図12】図11の圧力調整装置を示す分解斜視図である。
【図13】図11のXIII-XIII線に沿った断面図である。
【図14】この発明の実施の形態5による蓄電素子を示す斜視図である。
【図15】図14の圧力調整装置を示す分解斜視図である。
【図16】図14のXVI-XVI線に沿った断面図である。
【図17】温度85℃で相対湿度85%RHの環境(実験環境)に0V放電状態の蓄電素子を1000時間置いた場合の電解液への水分混入量と、同じ実験環境に2V充電状態の蓄電素子を1000時間置いた場合の電解液への水分混入量とを、実施例1〜5及び比較例1のそれぞれで比較して示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による蓄電素子を示す断面図である。また、図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。図において、蓄電素子1は、充電及び放電が行われる略平板状の蓄電素子本体(蓄電素子エレメント)2と、蓄電素子本体2を内包して密封する外装体3と、外装体3に設けられ、外装体3の内圧を調整する圧力調整装置4とを有している。
【0013】
蓄電素子本体2には、蓄電素子本体2と外部機器との電気的接続を行うための金属製(アルミニウムや銅等)の正極集電端子5及び負極集電端子6が接続されている。正極集電端子5及び負極集電端子6は、外装体3の上端部から外装体3外に導出されている。この例では、正極集電端子5及び負極集電端子6のそれぞれがアルミニウム製の板とされている。
【0014】
蓄電素子本体2は、正極集電端子5が接続された正極(電極)と、負極集電端子6が接続された負極(電極)と、正極及び負極間に挟まれたセパレータとを有している(いずれも図示せず)。蓄電素子本体2は、正極、負極及びセパレータを合わせたものを、積層したり、巻回したり、あるいは折りたたんだりすることによって構成されている。
【0015】
正極は、正極集電箔と、正極集電箔及びセパレータ間に介在する正極活物質層とを有している。正極活物質層は、正極活物質及び導電助剤をバインダにより結着させた層である。負極は、負極集電箔と、負極集電箔及びセパレータ間に介在する負極活物質層とを有している。負極活物質層は、負極活物質及び導電助剤をバインダにより結着させた層である。セパレータは、電子絶縁性を持つ多孔性の膜である。
【0016】
蓄電素子1が電気二重層キャパシタである場合には、賦活処理した比表面積500m2/g〜2500m2/g程度の活性炭が正極活物質及び負極活物質として用いられ、アセチレンブラック等の電子伝導性の高い炭素材料の微粉末が導電助剤として用いられる。また、バインダとしては、例えばゴム系バインダやポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が用いられる。さらに、正極集電箔及び負極集電箔としては、例えばアルミニウム金属箔等が用いられる。セパレータとしては、例えばセルロースやポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス、無機粉体(アルミナやシリカ等)等で作られる多孔膜が単独又は混合で用いられる。
【0017】
蓄電素子本体2には、電解液が含浸されている。蓄電素子本体2の充電及び放電は、正極と負極との間で電解液中のイオンや電子が移動することにより行われる。蓄電素子本体2の充電及び放電が行われると、例えば水素、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、エチレン等のガスが蓄電素子本体2から発生する。外装体3の内圧は、蓄電素子本体2からのガスの発生により上昇する。
【0018】
外装体3は、液体及び気体の透過を阻止する密閉容器となっている。即ち、外装体3は、電解液を外部に漏出させない耐漏液性能と、外部からの水分や酸素等のガスの通過を防ぐガスバリア性能とを有している。この例では、外装体3が変形可能な袋とされている。
【0019】
外装体3としては、例えばアルミラミネートシート等が用いられる。外装体3に用いられるアルミラミネートシートは、アルミニウム金属箔の一方の面にナイロン層が重ねられ、他方の面にポリプロピレン層が重ねられたシートである。また、アルミラミネートシートのナイロン層が重ねられた側の面が外装体3の外面となり、アルミラミネートシートのポリプロピレン層が重ねられた側の面が外装体3の内面となる。さらに、外装体3は、互いに重ねられた2枚のアルミラミネートシートの外縁部を熱融着することにより作製されている。蓄電素子本体2は、アルミラミネートシートの熱融着により外装体3の内部に密封される。
【0020】
アルミラミネートシートのアルミニウム金属箔からみて外装体3の外面側に重ねられる層としては、ナイロン層等のポリアミド層の代わりに、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類や、ポリプロピレン(PP)等の樹脂の層を用いてもよいし、互いに異なる樹脂の層を複数積層した積層部を用いてもよい。アルミラミネートシートのアルミニウム金属箔からみて外装体3の内面側に重ねられる層としては、ポリプロピレン層の代わりに、ポリエチレン(PE)やエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等の熱可塑性樹脂の層を用いてもよい。また、フッ化水素保護層や水分トラップ層を中間層として含むアルミラミネートシートを外装体3に用いてもよい。
【0021】
なお、この例では、外装体3を構成する部材としてアルミラミネートシートが用いられているが、電解液の漏出を防止し、かつガスバリア性能を持つ部材であればよく、例えばステンレス金属箔のラミネートシートや金属蒸着フィルム等により外装体3を構成してもよい。また、アルミニウムやステンレス等の金属単体で外装体3を構成してもよいし、PPやPE、PET等の樹脂単体で外装体3を構成してもよい。さらに、金属と樹脂との複合層を持つ部材で外装体3を構成してもよい。
【0022】
正極集電端子5及び負極集電端子6のそれぞれが導出される外装体3の外縁部では、正極集電端子5及び負極集電端子6のそれぞれと外装体3の内側の樹脂層とが熱融着等により接合されているが、金属と樹脂との接合強度が弱いので、酸等で変性させて金属との接合強度を向上させた金属融着性樹脂部材が、正極集電端子5及び負極集電端子6のそれぞれと外装体3の内側の樹脂層との間に介在している。金属融着性樹脂部材の材質としては、外装体3の内側の樹脂層に接合しやすい材質が選択されている。これにより、正極集電端子5及び負極集電端子6のそれぞれと外装体3との接合強度の向上が図られている。
【0023】
外装体3には、貫通口である通気口7が設けられている。圧力調整装置4は、通気口7を覆った状態で外装体3に取り付けられている。また、圧力調整装置4は、蓄電素子本体2が存在する外装体3の内部空間8と外装体3の外部空間9との間に介在している。圧力調整装置4は、外装体3の内部空間8から外装体3の外部空間9へのガス(水素や二酸化炭素等)の放出を許容しながら、外装体3の外部空間9から外装体3の内部空間8へのガス(酸素や水分等)の進入を阻止することにより、外装体3の内部空間8の圧力(外装体3の内圧)を調整する。
【0024】
図3は、図2の圧力調整装置4を示す拡大断面図である。また、図4は、図3の圧力調整装置4を示す分解斜視図である。図において、圧力調整装置4は、外装体3の内側(内部空間8側)から通気口7を覆う第1のガス放出機構部10と、外装体3の外側(外部空間9側)から通気口7を覆う第2のガス放出機構部11とを有している。即ち、圧力調整装置4は、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11により2重構造とされた圧力調整装置となっている。また、圧力調整装置4は、内部空間8からのガスが第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11を順次通ることにより内部空間8から外部空間9へのガスの放出を許容し、かつ外部空間9から内部空間8へのガスの進入を第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11のそれぞれで阻止する。第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11のそれぞれのガス放出メカニズムは、互いに異なっている。また、第1のガス放出機構部10と第2のガス放出機構部11とが独立しているため、第1のガス放出機構部10は内部空間8で発生したガスを遮断しやすい材料を使用し、第2のガス放出機構部11は外気及び水分を遮断しやすい材料を使用している。これにより、圧力調整装置4の密閉性の向上が図られている。即ち、第1及び第2のガス放出機構部10,11にそれぞれ適切なガス放出機構部を選定することで、より密閉性の良好な圧力調整装置4となっている。
【0025】
第1のガス放出機構部10と第2のガス放出機構部11との間には、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11で仕切られた緩衝空間12が形成されている。緩衝空間12には、通気口7の内側の空間が含まれている。第1のガス放出機構部10は外装体3の内部空間8と緩衝空間12との間に配置され、第2のガス放出機構部11は外装体3の外部空間9と緩衝空間12との間に配置されている。従って、第2のガス放出機構部11は外気に接した状態で配置され、第1のガス放出機構部10は外気との接触を避けて配置されている。
【0026】
第1のガス放出機構部10は、内部空間8から緩衝空間12へのガスの通過(即ち、内部空間8から外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容し、かつ緩衝空間12から内部空間8へのガスの通過(即ち、外部空間9から内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する逆止機能を持つガス放出機構部である。
【0027】
また、第1のガス放出機構部10は、複数の弁筐体通気孔13が設けられた筐体14と、各弁筐体通気孔13をまとめて塞ぐ気液分離膜15と、筐体14内に設けられ、各弁筐体通気孔13を開閉可能な板状のガス放出弁16と、筐体14内に設けられ、各弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を付勢する押さえばね(押さえ部材)17とを有している。
【0028】
筐体14は、外装体3の内面に取り付けられた板状の筐体蓋18と、筐体蓋18に固定され、通気口7を覆う椀状の筐体本体19とを有している。各弁筐体通気孔13は、筐体本体19に設けられている。
【0029】
筐体蓋18には、通気口7の内側の空間と筐体本体19の内側の空間とを連通する開口部20が設けられている。筐体蓋18は、熱融着や接着剤等により外装体3の内面に固定されている。筐体本体19は、熱融着や接着剤等により筐体蓋18に固定されている。緩衝空間12は、通気口7の内側の空間に加えて、開口部20の内側の空間、及び筐体本体19の内側の空間も含んでいる。
【0030】
筐体蓋18及び筐体本体19のそれぞれの材料としては、形状を維持可能な材料であればよく、例えばガス放出弁16を構成する樹脂材料や金属材料等が用いられる。筐体蓋18と筐体本体19とが熱融着により互いに固定される場合には、筐体蓋18及び筐体本体19を同じ材料で構成することにより、筐体蓋18と筐体本体19との接合強度の向上が図られる。筐体蓋18が外装体3の内面に熱融着により固定される場合には、外装体3の内層及び筐体蓋18を同じ材料で構成することにより、筐体蓋18と外装体3との接合強度の向上が図られる。
【0031】
気液分離膜15は、蓄電素子本体2が存在する内部空間8に面した状態で筐体本体19の外面に貼られることにより各弁筐体通気孔13をまとめて塞いでいる。また、気液分離膜15は、複数の微細空孔が設けられた多孔性の膜(多孔膜)とされている。これにより、気液分離膜15は、複数の微細空孔を通してガスの透過を許容するとともに、電解液等の液体の透過を阻止する。蓄電素子本体2から発生したガスにより外装体3の内部空間8の圧力が上昇すると、外装体3内のガスが気液分離膜15を透過して各弁筐体通気孔13内に進入し、各弁筐体通気孔13内の空間の圧力が内部空間8の圧力に応じて上昇する。
【0032】
気液分離膜15としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やパーフルオロアルコキシエチレン(PFA)、PP等により構成される多孔膜が用いられる。気液分離膜15は、電解液に対して接触角90度以上を示し、かつ撥油性を有する多孔膜とされている。これにより、気液分離膜15は、安定した気液分離機能を維持することができる。気液分離膜15に設けられた各微細空孔の平均径(平均孔径)としては、0.03μm〜5μm程度が好ましく、さらに好ましくは0.1μm〜1μmとするのがよい。平均孔径が5μmよりも大きくなると、内部空間8の圧力が上昇した場合に、内部空間8の電解液が気液分離膜15を透過する可能性が生じてくる。また、平均孔径が0.03μmよりも小さくなると、ガスが気液分離膜15を透過するのに時間がかかりすぎ、内部空間8の圧力が高くなりすぎるおそれがある。
【0033】
気液分離膜15の電解液を透過する耐圧は、圧力調整装置4が外部空間9へガスの放出を許容するときの内部空間8の圧力よりも高く設定されている。例えば、減圧環境下に蓄電素子1が置かれる場合には、気液分離膜15の電解液を透過する耐圧が100kPa程度に設定される。
【0034】
ガス放出弁16は、筐体本体19の内面に対して接離することにより各弁筐体通気孔13を開閉する。また、ガス放出弁16は、押さえばね17の付勢力で筐体本体19の内面に押し付けられることにより、各弁筐体通気孔13を閉じる。
【0035】
また、ガス放出弁16は、ガス放出弁16の押さえばね17に押されていない部分が筐体本体19の内面から離れる方向へ弾性変形することにより各弁筐体通気孔13を開くようになっていてもよいし、押さえばね17の付勢力に逆らって筐体本体19の内面から離れる方向へ変位されることにより各弁筐体通気孔13を開くようになっていてもよい。
【0036】
内部空間8の圧力が低い通常の状態では、押さえばね17の付勢力で筐体本体19の内面に押し付けられたガス放出弁16によって各弁筐体通気孔13が閉じている。この状態では、各弁筐体通気孔13内と緩衝空間12との間でのガスの移動が阻止されている。内部空間8の圧力が上昇して各弁筐体通気孔13内の圧力が所定値を超えると、各弁筐体通気孔13内のガスによってガス放出弁16が押されて、ガス放出弁16が弾性変形したり変位したりする。これにより、筐体本体19の内面とガス放出弁16との間に隙間が生じて弁筐体通気孔13が開き、弁筐体通気孔13内から緩衝空間12へのガスの通過が許容される。また、緩衝空間12へのガスの放出により各弁筐体通気孔13内の圧力が下がると、押さえばね17の付勢力により、各弁筐体通気孔13を閉じる位置にガス放出弁16の位置が戻される。これにより、各弁筐体通気孔13内と緩衝空間12との間でのガスの移動が再び阻止される。
【0037】
即ち、第1のガス放出機構部10は、内部空間8の圧力が低い通常の状態では、内部空間8と緩衝空間12との間のガスの移動を阻止し、内部空間8の圧力が上昇すると、緩衝空間12から内部空間8へのガスの通過(即ち、内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止しながら、内部空間8から緩衝空間12へのガスの通過(即ち、外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容する。また、第1のガス放出機構部10は、内部空間8から緩衝空間12へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)にも内部空間8へのガスの進入を阻止する復元可能な逆止弁装置とされている。
【0038】
各弁筐体通気孔13を弾性変形により開閉するガス放出弁16の材料としては、例えばフッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム等の比較的高い弾性を持つゴムが用いられる。また、各弁筐体通気孔13を変位により開閉するガス放出弁16の材料としては、例えばPP、PET、PE、PEN、PTFE等の熱可塑性樹脂フィルムや、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂、アルミニウムやステンレス等の金属等、比較的低い弾性を持つ材料が用いられる。
【0039】
筐体本体19の内面とガス放出弁16との間には、ガス放出弁16が各弁筐体通気孔13を閉じているときに筐体本体19とガス放出弁16との間の隙間を密閉する液状のシール剤22が介在している。これにより、内部空間8の密閉性の向上が図られる。特に、ガス放出弁16が弾性の低い材料により構成されている場合には、筐体本体19の内面とガス放出弁16との間にシール剤22を介在させるのが有効である。なお、ガス放出弁16を構成する材料が筐体本体19との密閉性の高い材料であって、内部空間8の密閉性が確保される場合には、シール剤22はなくてもよい。
【0040】
シール剤22としては、例えばシリコーンオイル、フッ素オイル、炭化水素オイル等のオイルやシリコーングリース等が用いられる。例えばシール剤22をシリコーンオイルとした場合には、25℃でのシール剤22の動粘度が50mm2/s以上であることが好ましく、シール剤22の動粘度が1000mm2/s以上であるとさらに好ましい。また、シール剤22の動粘度が高くなるほど成分の揮発量が少なくなるので、150℃の高温環境下で1日保持しても成分揮発量が全体の1%以下となる動粘度の高いシリコーンオイルをシール剤22とするのが好ましい。
【0041】
押さえばね17は、ガス放出弁16と筐体蓋18との間で縮められた状態で弾性反発力を発生している。押さえばね17は、弾性反発力をガス放出弁16に与えることにより筐体本体19の内面に向けてガス放出弁16を付勢している。この例では、押さえばね17がコイル状のばねとされている。押さえばね17を構成する材料としては、例えばばね鋼、りん青銅、ベリリウム銅、ステンレス鋼等の金属や、ゴム、合成樹脂等が用いられる。なお、押さえばね17の形状は、押さえ部材21が弾性を有していればコイル状である必要はなく、例えばブロック状や板状等であってもよい。
【0042】
第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12から外部空間9へのガスの通過(即ち、内部空間8から外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容し、かつ外部空間9から緩衝空間12へのガスの通過(即ち、外部空間9から内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する逆止機能を持つガス放出機構部である。
【0043】
第2のガス放出機構部11は、開口部23が設けられた円形のフィルム状の筐体24と、開口部23を覆った状態で筐体24に重ねて貼り付けられた円形のフィルム状のガス放出弁25と、ガス放出弁25の一部に重ねて貼り付けられた一対の補強部材26とを有している。
【0044】
外装体3の外面には、筐体24の裏面(下面)の全体が熱融着や接着剤等により取り付けられている。開口部23の内径は、通気口7の内径よりも大きくなっている。開口部23の位置は、筐体24の厚さ方向について通気口7と重なる位置となっている。筐体24を構成する材料としては、例えば第1のガス放出機構部10の筐体14を構成する材料等が用いられる。緩衝空間12は、開口部23の内側の空間を含んでいる。
【0045】
筐体24の表面(上面)には、開口部23上を通って筐体24の外周部に達するガス通路域27が設定されている。ガス放出弁25は、ガス通路域27を避けて筐体24に塗布された接着剤28により筐体24の表面に貼り付けられている。また、ガス放出弁25は、弾性変形可能な材料により構成されている。ガス放出弁25を構成する材料としては、第1のガス放出機構部10のガス放出弁16を構成する材料等が用いられる。
【0046】
ガス通路域27には、液状のシール剤29が存在している。ガス通路域27における筐体24の表面とガス放出弁25との間の隙間は、液状のシール剤29により密閉される。シール剤29としては、例えば第1のガス放出機構部10のシール剤22と同様のものが用いられる。また、第2のガス放出機構部11の液状のシール剤29は、外気に接する場合があるため、耐水性、耐酸化性の高い素材を使用するのが好ましく、フッ素変成したシリコーンオイルや、フッ素系オイルを使用することで、より長期的なシール性が期待できる。
【0047】
各補強部材26は、筐体24の厚さ方向に沿って第2のガス放出機構部11を見たときに、接着剤28が塗布された位置と同位置に配置されている。即ち、各補強部材26は、筐体24の厚さ方向に沿って第2のガス放出機構部11を見たときに、ガス通路域27を避けて配置されている。各補強部材26を構成する材料としては、例えば第1のガス放出機構部10の筐体14を構成する材料等が用いられる。ガス放出弁25は、各補強部材26が貼り付けられた部分で曲がりにくく(弾性変形しにくく)、各補強部材26から外れた部分で曲がりやすく(弾性変形しやすく)なっている。
【0048】
緩衝空間12の圧力が低い通常の状態では、ガス通路域27でのガス放出弁25と筐体24との間の隙間がシール剤29により密閉されている。この状態では、緩衝空間12と外部空間9との間でのガスの移動が阻止されている。緩衝空間12の圧力が上昇して所定値を超えると、各補強部材26の貼り付けられていないガス放出弁25の部分が緩衝空間12内のガスに押されて湾曲する。これにより、ガス通路域27でガス放出弁25と筐体24との間に隙間が生じる。これにより、緩衝空間12から外部空間9へのガスの通過(即ち、外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)が許容される。また、外部空間9へのガスの放出により緩衝空間12の圧力が下がると、ガス放出弁25の弾性復元力により、ガス放出弁25の変形が戻り、ガス放出弁25と筐体24との間の隙間がシール剤29により密閉された状態に戻る。これにより、緩衝空間12と外部空間9との間でのガスの移動が再び阻止される。
【0049】
即ち、第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12の圧力が低い通常の状態では、緩衝空間12と外部空間9との間のガスの移動を阻止し、緩衝空間12の圧力が上昇すると、外部空間9から緩衝空間12へのガスの通過(即ち、内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止しながら、緩衝空間12から外部空間9へのガスの通過(即ち、外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容する。また、第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12から外部空間9へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)にも内部空間8へのガスの進入を阻止する復元可能な逆止弁装置とされている。
【0050】
次に、動作について説明する。蓄電素子1では、蓄電素子本体2に対する充電及び放電が繰り返されると残存水分や不純物による副反応等により、蓄電素子本体2からガスが発生し、外装体3の内部空間8の圧力が次第に上昇する。各弁筐体通気孔13内の圧力も、外装体3の内部空間8のガスが気液分離膜15を透過することにより、内部空間8の圧力に応じて次第に上昇する。
【0051】
各弁筐体通気孔13内の圧力が所定値を超えると、各弁筐体通気孔13内のガスが、押さえばね17の付勢力に逆らってガス放出弁16を押し上げ、各弁筐体通気孔13内から緩衝空間12へガスが通される。緩衝空間12へのガスの放出により内部空間8の圧力が下がると、ガス放出弁16の変位が元に戻り、各弁筐体通気孔13がガス放出弁16によって再び閉じる。
【0052】
この後、緩衝空間12へのガスの進入により緩衝空間12の圧力が所定値を超えると、ガス放出弁25の一部が緩衝空間12内のガスに押されて湾曲し、ガス放出弁25と筐体24との間に隙間が生じる。これにより、緩衝空間12から外部空間9へガスが放出される。
【0053】
この後、外部空間9へのガスの放出により緩衝空間12の圧力が下がると、ガス放出弁25の変形が元に戻り、ガス放出弁25と筐体24との間の隙間がシール剤29により密閉される。
【0054】
通常、蓄電素子1を長期間使用すると、外気に接する第2のガス放出機構部11の機能が、外気を避けて配置された第1のガス放出機構部10の機能よりも劣化しやすい。従って、第2のガス放出機構部11の機能が劣化して外部空間9から緩衝空間12へガスが進入した場合であっても、第1のガス放出機構部10により緩衝空間12から内部空間8へのガスの進入が阻止される。また、外気に接する第2のガス放出機構部11には、水分に対して耐久性を有する素材を使用することで、第2のガス放出機構部11の耐久性を向上させることができる。一方、第1のガス放出機構部10には、内部のガス及び電解液の蒸気に対して耐久性を有する素材を使用することで、第1のガス放出機構部10の耐久性を向上させることができる。特に第1のガス放出機構部10のガス放出弁16に電解液耐性を有する材料を使用し、第2ガス放出機構部11のガス放出弁25に耐水性の材料を使用することで、長期的に密閉性及び逆止機能を維持できる。以上より、複数のガス放出機構部10,11のうち、内部空間8に配置されるガス放出機構部10のガス放出弁16と、外部空間に配置されるガス放出機構部11のガス放出弁25とを、互いに異なる素材で形成し、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11のそれぞれに適した素材を使用することで、長期に渡って圧力調整装置4の信頼性を確保できる。
【0055】
このような蓄電素子1では、内部空間8からのガスが第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11を順次通ることにより、内部空間8から外部空間9へのガスの放出が許容され、外部空間9から内部空間8へのガスの進入が第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11のそれぞれで阻止されるようになっており、第1のガス放出機構部10と第2のガス放出機構部11との間には、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11で仕切られた緩衝空間12が形成されているので、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11のいずれかの機能が劣化したとしても、劣化していないガス放出機構部により内部空間8へのガスの進入を阻止することができる。また、第1のガス放出機構部10が外気を避けて配置されているので、第1のガス放出機構部10内で結露水を生じにくくすることができ、第1のガス放出機構部10の機能の劣化を抑制することができる。これにより、外部空間9から圧力調整装置4を通って内部空間8にガスが進入することを長期間にわたって阻止することができ、圧力調整装置4の機能の低下を長期間にわたって抑制することができる。
【0056】
また、ガス放出弁16,25と筐体14,24との間に介在するシール剤22,29の動粘度は、50mm2/s以上であるので、ガス放出弁16,25と筐体14,24との間の隙間の密閉状態をより確実にすることができ、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11のそれぞれの機能の信頼性の向上を図ることができる。
【0057】
また、第2のガス放出機構部11は、外装体3に設けられた通気口7を外装体3の外側から覆っているので、第1のガス放出機構部10へのガスの進入を容易に阻止することができる。また、第2のガス放出機構部11の機能が劣化して交換が必要になった場合であっても、劣化した第2のガス放出機構部11と新たな第2のガス放出機構部11とを容易に交換することができる。
【0058】
なお、上記の例では、筐体蓋18が外装体3の内面に固定され、筐体本体19が筐体蓋18に固定されているが、筐体蓋18を筐体本体19の内側に固定して、筐体本体19を外装体3の内面に固定するようにしてもよい。
【0059】
また、上記の例では、第2のガス放出機構部11が気液分離膜を有していないが、第2のガス放出機構部11が気液分離膜を有していてもよい。
【0060】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2による蓄電素子の圧力調整装置を示す断面図である。また、図6は、図5の圧力調整装置を示す分解斜視図である。図において、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11は、内部空間8から外部空間9へ放出する方向へのガスの通過を許容し、かつ外部空間9から内部空間8へ進入する方向へのガスの通過を阻止する逆止機能をそれぞれ持つガス放出機構部である。
【0061】
第1のガス放出機構部10は、実施の形態1の第1のガス放出機構部10と同様に、内部空間8から緩衝空間12へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)にも内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を維持する復元可能な逆止弁装置とされている。これに対して、第2のガス放出機構部11は、実施の形態1の第2のガス放出機構部11と異なり、緩衝空間12から外部空間9へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)に緩衝空間12へのガスの進入(即ち、内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置とされている。
【0062】
第1のガス放出機構部10は、複数の弁筐体通気孔13が設けられた椀状の筐体14と、各弁筐体通気孔13をまとめて覆う気液分離膜15と、筐体14内に設けられ、各弁筐体通気孔13を開閉可能な板状のガス放出弁16と、筐体14内に設けられ、各弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を付勢する押さえ部材17と、筐体14と気液分離膜15との間に介在し、筐体14と気液分離膜15との間に弁内空間31を形成する環状のスペーサ32とを有している。
【0063】
筐体14は、実施の形態1のような筐体蓋18を有しておらず、通気口7を覆った状態で熱融着や接着剤等により外装体3の内面に取り付けられている。筐体14の内面には、筐体14の径方向内側へ突出する突起部33が筐体14の全周に亘って設けられている。筐体14を構成する材料は、実施の形態1の筐体14の材料と同様である。
【0064】
筐体14には、気液分離膜15の外周部のみが貼り付けられている。気液分離膜15の外周部を除く部分は、スペーサ32によって筐体14から離れて配置されている。これにより、気液分離膜15の外周部を除く部分と筐体14との間には、弁内空間31が形成されている。これにより、気液分離膜15が液状のシール剤22で濡れにくくなり、気液分離膜15のガス透過特性が維持される。特に、気液分離膜15のオイル(例えばシリコーンオイル)に対する接触角が90度以上であり、気液分離膜15が撥油性を示さない場合には、気液分離膜15がオイルに濡れると気液分離膜15のガス透過特性が大きく劣化してしまうので、気液分離膜15のガス透過特性の劣化がより確実に抑制される。また、内部空間8の圧力が上昇して電解液が気液分離膜15を透過した場合であっても、弁内空間31に電解液が溜まることにより気液分離膜15のガスの透過経路が確保され、気液分離膜15のガス透過特性の劣化が抑制される。気液分離膜15としては、実施の形態1の気液分離膜15と同様の膜が用いられている。
【0065】
スペーサ32は、各弁筐体通気孔13が設けられている領域を囲むように配置されている。スペーサ32の材料としては、例えばゴムや樹脂等が用いられる。この例では、スペーサ32がO−リングとされている。ガス放出弁16の構成は、実施の形態1のガス放出弁16の構成と同様である。
【0066】
押さえ部材17は、筐体14の突起部33に係合する係合板部34と、係合板部34からガス放出弁16に向かって突出する複数の押付部35とを有している。押さえ部材17は、係合板部34を突起部33に係合させた状態で各押付部35をガス放出弁16に押し付けることにより、各弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を付勢する。押さえ部材17としては、例えばゴムや熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属等で成型された成型体が用いられる。第1のガス放出機構部10の他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0067】
第2のガス放出機構部11は、通気口7を覆った状態で外装体3の外側から外装体3の外面に貼り付けられた円形のフィルム状のガス放出弁25と、ガス放出弁25の一部に重ねて貼り付けられた一対の補強部材26とを有している。
【0068】
外装体3の外面には、ガス放出弁25の裏面(下面)の全体が接着剤により貼り付けられている。ガス放出弁25の裏面の接着剤が塗布される部分は、少なくとも通気口7の周囲を全周にわたって囲む部分とされる。ガス放出弁25を構成する材料としては、第1のガス放出機構部10のガス放出弁16を構成する材料等が用いられる。
【0069】
各補強部材26は、通気口7の位置を避けてガス放出弁25上に貼り付けられている。各補強部材26を構成する材料としては、例えば第1のガス放出機構部10の筐体14を構成する材料等が用いられる。ガス放出弁16は、各補強部材26が貼り付けられた部分で曲がりにくく(弾性変形しにくく)、各補強部材26から外れた部分で曲がりやすく(弾性変形しやすく)なっている。
【0070】
緩衝空間12の圧力が上昇して所定値を超えると、ガス放出弁16が緩衝空間12内のガスに押されることにより、各補強部材26が貼り付けられていないガス放出弁16の部分が外装体3の外面から剥離する。ガス放出弁16の外装体3の外面からの剥離により、ガス放出弁16と外装体3との間にガスの抜け道が生じ、緩衝空間12のガスが外部空間9へ放出される。外部空間9へのガスの放出により緩衝空間12の圧力が下がっても、ガス放出弁16は元の位置に戻ることはなく、ガスの抜け道が塞がることはない。即ち、第2のガス放出機構部11では、外部空間9へ放出する方向へガスが通された後に、緩衝空間12(内部空間8)へのガスの進入を阻止する機能が失われる。他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0071】
このような蓄電素子では、第1のガス放出機構部10が、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後にも内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を維持する復元可能な逆止弁装置とされ、第2のガス放出機構部11が、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後に内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置とされているので、破裂弁装置である第2のガス放出機構部11が動作するまでは、内部空間8の密閉性を高く維持することができる。即ち、通常、破裂弁装置による密閉性は逆止弁装置による密閉性よりも高いので、第2のガス放出機構部11を破裂弁装置とすることにより、第2のガス放出機構部11が動作するまでの内部空間8の密閉性を高くすることができる。
【0072】
また、破裂弁装置である第2のガス放出機構部11が外装体3の外側から外装体3の外面に取り付けられているので、動作した後の第2のガス放出機構部11の修復を容易にすることができる。
【0073】
また、筐体14と気液分離膜15との間に弁内空間31を形成するスペーサ32が筐体14と気液分離膜15との間に介在しているので、シール剤22で濡れることによる気液分離膜15のガス透過特性の劣化を抑制することができる。
【0074】
実施の形態3.
図7は、この発明の実施の形態3による蓄電素子を示す正面図である。また、図8は、図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。図において、外装体3は、蓄電素子本体2を収容する外装体本体3aと、外装体本体3aから突出し、圧力調整装置4が設けられた外装体突出部3bとを有している。
【0075】
外装体3は、幅の狭い突出部を持つ2枚のシート(例えばアルミラミネートシート等)を重ね合わせ、各シートの外縁部を熱融着することにより作製されている。外装体3では、各シートの突出部が重なった部分が外装体突出部3bとなっている。通気口7は、外装体突出部3bに設けられている。
【0076】
ここで、図9は、図7の外装体3を構成する2枚のシートの熱融着部分を示す正面図である。図9に示すように、熱融着部分41は、外装体本体3a及び外装体突出部3bのそれぞれの外縁部に形成されている。圧力調整装置4は、外装体突出部3bにおける熱融着部分41の内側に設けられている。
【0077】
圧力調整装置4は、図8に示すように、蓄電素子本体2が存在する内部空間8と外装体3の外部空間9との間に配置されている。また、圧力調整装置4は、外装体3の内部空間8から外装体3の外部空間9へのガスの放出を許容しながら、外装体3の外部空間9から外装体3の内部空間8へのガスの進入を阻止することにより、外装体3の内部空間8の圧力を調整する。
【0078】
図10は、図8の圧力調整装置4を示す拡大断面図である。図において、圧力調整装置4は、外装体3の内側(内部空間8側)から通気口7を覆う第1のガス放出機構部10と、外装体3の外側(外部空間9側)から通気口7を覆う第2のガス放出機構部11と、外装体3の内側に配置され、第1のガス放出機構部10よりも蓄電素子本体2に近い位置に配置された第3のガス放出機構部42とを有している。即ち、圧力調整装置4は、第1のガス放出機構部10、第2のガス放出機構部11及び第3のガス放出機構部42により3重構造とされた圧力調整装置となっている。圧力調整装置4は、内部空間8からのガスが第3のガス放出機構部42、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11を順次通ることにより内部空間8から外部空間9へのガスの放出を許容し、かつ外部空間9から内部空間8へのガスの進入を第1〜第3のガス放出機構部10,11,42のそれぞれで阻止する。
【0079】
第1のガス放出機構部10と第2のガス放出機構部11との間には、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11で仕切られた緩衝空間12が形成されている。第3のガス放出機構部42と第1のガス放出機構部10との間には、第3のガス放出機構部42及び第1のガス放出機構部10で仕切られた緩衝空間43が形成されている。第2のガス放出機構部11は外部空間9と緩衝空間12との間に配置され、第1のガス放出機構部10は緩衝空間12と緩衝空間43との間に配置され、第3のガス放出機構部42は緩衝空間43と内部空間8との間に配置されている。従って、第2のガス放出機構部11は外気に接した状態で配置され、第1及び第3のガス放出機構部10,42は外気との接触を避けて配置されている。
【0080】
第1のガス放出機構部10は、緩衝空間43から緩衝空間12へのガスの通過(即ち、内部空間8から外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容し、かつ緩衝空間12から緩衝空間43へのガスの通過(即ち、外部空間9から内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する逆止機能を持つガス放出機構部である。また、第1のガス放出機構部10は、緩衝空間43から緩衝空間12へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)にも緩衝空間43へのガスの進入(即ち、内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する復元可能な逆止弁装置とされている。
【0081】
第1のガス放出機構部10の気液分離膜15と筐体本体19との間には、気液分離膜15と筐体本体19との間に弁内空間31を形成する環状のスペーサ32が介在している。気液分離膜15の外周部は、筐体本体19に熱融着により接合されている。気液分離膜15の外周部を除く部分は、スペーサ32により筐体本体19から離れた状態が維持されている。これにより、電解液が気液分離膜15を透過した場合であっても、電解液が弁内空間31に溜まり、気液分離膜15のガスの透過経路が確保される。
【0082】
筐体本体19の内面とガス放出弁16との間には、ガス放出弁16が弁筐体通気孔13を閉じているときに筐体本体19とガス放出弁16との間の隙間を密閉する環状のシール部材44が介在している。筐体本体19とガス放出弁16との間の隙間の密閉は、ガス放出弁16がシール部材44を介して筐体本体19の内面に押し付けられることにより保たれる。シール部材44としては、例えばゴム製や樹脂製のO−リング等が用いられる。第1のガス放出機構部10の他の構成は、実施の形態1の第1のガス放出機構部10の構成と同様である。
【0083】
第2のガス放出機構部11の構成は、実施の形態1の第2のガス放出機構部11の構成と同様である。従って、第2のガス放出機構部11は、第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12から外部空間9へのガスの通過(即ち、内部空間8から外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容し、かつ外部空間9から緩衝空間12へのガスの通過(即ち、外部空間9から内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する逆止機能を持つガス放出機構部である。また、第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12から外部空間9へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)にも内部空間8へのガスの進入を阻止する復元可能な逆止弁装置とされている。
【0084】
第3のガス放出機構部42は、内部空間8から緩衝空間43へのガスの通過(即ち、内部空間8から外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容し、かつ緩衝空間43から内部空間8へのガスの通過(即ち、外部空間9から内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する逆止機能を持つガス放出機構部である。また、第3のガス放出機構部42は、内部空間8から緩衝空間43へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)に緩衝空間43(内部空間8)へのガスの進入を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置とされている。
【0085】
第3のガス放出機構部42は、外装体3間に挟まれた状態で内部空間8と緩衝空間43との間を仕切るガス放出弁45を有している。ガス放出弁45は、ガス放出弁45を挟む外装体3のそれぞれの内面に熱融着や接着剤等により貼り付けられている。ガス放出弁45は、図9に示すように、外装体突出部3bの根元に配置されている。外装体3内の空間は、ガス放出弁45により緩衝空間43と内部空間8とに分割されている。ガス放出弁45と外装体3の内面との接合強度は、外装体3の耐圧強度よりも低く設定されている。従って、ガス放出弁45は、外装体3の内部空間8の圧力が上昇したときに、外装体3が破損するよりも先に外装体3の内面から剥離するようになっている。ガス放出弁45を構成する材料としては、例えば第2のガス放出機構部11のガス放出弁25を構成する材料等が用いられ、樹脂やゴム、金属等が用いられる。
【0086】
第3のガス放出機構部42のガス放出弁45と外装体3の内面とを熱融着により接合する場合には、ガス放出弁45と外装体3との間に介在物を介在させてもよい。介在物の材料としては、例えばエチレンに酢酸ビニルを共重合させたエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等の易接着性樹脂が挙げられる。一般に異種材料の熱融着による接合は困難であるが、ガス放出弁45と外装体3との間にEVAの介在物を介在させることで熱融着が可能となる。具体的には、PE樹脂にPP樹脂をブレンドしたフィルムをガス放出弁45とし、PP樹脂層を外装体3の内層とした例が挙げられる。外装体3の内層材及びガス放出弁45の材料のそれぞれとEVAとの界面の熱融着強度は、外装体3の耐圧強度よりも弱くなる。
【0087】
内部空間8の圧力が上昇すると、外装体3が膨れて、外装体3の内面が、第3のガス放出機構部42のガス放出弁45から離れる方向への圧力を受ける。内部空間8の圧力がさらに上昇して所定値を超えると、外装体3の内面がガス放出弁45から剥離する。外装体3の内面がガス放出弁45から剥離すると、ガス放出弁45と外装体3との間に隙間が生じ、生じた隙間を通して内部空間8と緩衝空間43とが互いに連通する。これにより、内部空間8から緩衝空間43へ(即ち、外部空間9へ放出する方向へ)ガスが通され、内部空間8の圧力が下がる。ガス放出弁45は、内部空間8の圧力が下がっても、外装体3の内面に再び貼り付くことはない。従って、ガス放出弁45と外装体3との間の隙間が塞がることはない。即ち、第3のガス放出機構部42では、外部空間9へ放出する方向へガスが通された後に、内部空間8へのガスの進入を阻止する機能が失われる。他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0088】
このような蓄電素子1では、第3のガス放出機構部42が第1のガス放出機構部10よりも蓄電素子本体2に近い位置に配置されており、第1のガス放出機構部10と第3のガス放出機構部42との間に緩衝空間43が形成されているので、第1〜第3のガス放出機構部10,11,42により圧力調整装置4を3重構造の圧力調整装置とすることができる。これにより、外気との接触を避けて配置されたガス放出機構部の数を増加させることができ、圧力調整装置4の機能の低下をさらに長期間にわたって抑制することができる。また、第3のガス放出機構部42が、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後に内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置とされているので、第3のガス放出機構部42が動作するまでの内部空間8の密閉性を高く維持することができる。
【0089】
実施の形態4.
図11は、この発明の実施の形態4による蓄電素子を示す斜視図である。また、図12は、図11の圧力調整装置を示す分解斜視図である。さらに、図13は、図11のXIII-XIII線に沿った断面図である。
【0090】
図において、第1のガス放出機構部10は、実施の形態1の第1のガス放出機構部10と同様に、内部空間8から緩衝空間12へガスを放出した後にも内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を維持する復元可能な逆止弁装置とされている。これに対して、第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12から外部空間9へガスを放出した後に緩衝空間12へのガスの進入を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置とされている。
【0091】
第1のガス放出機構部10は、弁筐体通気孔13が設けられた筐体14と、弁筐体通気孔13を覆う気液分離膜15と、筐体14内に設けられ、各弁筐体通気孔13を開閉可能な板状のガス放出弁16と、筐体14内に設けられ、弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を付勢する押さえ部材17と、筐体14に設けられ、押さえ部材17を筐体14内に保持する外れ止め蓋51とを有している。
【0092】
外装体3は、金属製の容器とされている。外装体3に開けられた通気口7の内周部には、雌ねじ部が設けられている。筐体14は、弁筐体通気孔13が設けられた筐体本体部52と、筐体本体部52から突出し、通気口7の雌ねじ部に螺合する雄ねじ部が外周部に設けられた円筒状の取付用突起部53とを有している。筐体14は、取付用突起部53が通気口7に螺合されることにより、外装体3の内面に取り付けられている。外装体3の内面と筐体本体部52との間には、O−リング(シール部材)54が介在している。これにより、外装体3の内面と筐体14との間がシールされている。
【0093】
ここで、筐体14を構成する材料は、実施の形態1の筐体14の材料と同様でありプラスチック材料や金属材料が用いられる。外装体3を構成する材料は、100kPa以上に内圧が上昇しても破壊されることなく、それ自体で形状が維持できる材料とされている。外装体3を構成する材料としては、例えばステンレスやアルミニウムなどの金属材料や、プラスチック材料が用いられている。
【0094】
気液分離膜15は、その外周部のみが筐体本体部52に貼り付けられている。気液分離膜15の外周部を除く部分は、筐体14から離れて配置されている。これにより、気液分離膜15の外周部を除く部分と筐体本体部52との間には、弁内空間31が形成されている。また、内部空間8の圧力が上昇して電解液が気液分離膜15を透過した場合であっても、弁内空間31に電解液が溜まることにより気液分離膜15のガスの透過経路が確保され、気液分離膜15のガス透過特性の劣化が抑制される。気液分離膜15としては、実施の形態1の気液分離膜15と同様の膜が用いられている。
【0095】
外れ止め蓋51は、筐体本体部52の内面に設けられた窪みに外周部が嵌め込まれた状態で、筐体本体部52の内側の空間に保持されている。筐体14の内側の空間は、外れ止め蓋51で仕切られている。外れ止め蓋51には、筐体14内で外れ止め蓋51により仕切られた両側の空間を連通する開口部20が設けられている。緩衝空間12は、通気口7、筐体本体部52及び取付用突起部53のそれぞれの内側の空間を含んでいる。外れ止め蓋51を構成する材料としては、実施の形態1の筐体蓋18を構成する材料と同様のものが用いられる。この例では、外れ止め蓋51を構成する材料が硬質ゴムとされている。
【0096】
押さえ部材(押さえばね)17は、外れ止め蓋51とガス放出弁16との間に縮められた状態で配置されている。これにより、押さえ部材17は、外れ止め蓋51で押さえられた状態で、筐体14の内側の弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を押さえている。この例では、押さえ部材17がばねとされている。また、ガス放出弁16を構成する材料としては、ゴム等が用いられている。
【0097】
第2のガス放出機構部11は、通気口7を覆った状態で外装体3の外側から外装体3の外面に溶接により取り付けられたガス放出弁25を有しており、外装体3を密閉している。ガス放出弁25は、他の部分よりも厚さが薄くされた薄肉部25aを有する金属箔とされている。ガス放出弁25の薄肉部には、破裂の起点となる十字形の窪み部(破裂起点部)55が設けられている。薄肉部25a及び破裂起点部55は、金属箔のプレス成型により形成されている。破裂起点部55の形状は、十字形に限定されず、破裂起点部55が破裂の起点となるのであればどのような形状であってもよい。
【0098】
緩衝空間12の圧力が上昇して所定値を超えると、ガス放出弁25の破裂起点部54を起点にガス放出弁25が破られて、緩衝空間12のガスが外部空間9へ放出される。外部空間9へのガスの放出により緩衝空間12の圧力が下がっても、ガス放出弁25は元に戻ることはなく、ガスの抜け道が塞がることはない。即ち、第2のガス放出機構部11では、外部空間9へ放出する方向へガスが通された後に、緩衝空間12(内部空間8)へのガスの進入を阻止する機能が失われる。他の動作は、実施の形態2と同様である。
【0099】
このような蓄電素子1では、第1のガス放出機構部10が、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後にも内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を維持する復元可能な逆止弁装置とされ、第2のガス放出機構部11が、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後に内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置とされているので、破裂弁装置である第2のガス放出機構部11が動作するまでは、内部空間8の密閉性を高く維持することができる。即ち、通常、破裂弁装置による密閉性は逆止弁装置による密閉性よりも高いので、第2のガス放出機構部11を破裂弁装置とすることにより、第2のガス放出機構部11が動作するまでの内部空間8の密閉性を高くすることができる。
【0100】
また、破裂弁装置である第2のガス放出機構部11が外装体3の外側から外装体3の外面に取り付けられているので、動作した後の第2のガス放出機構部11の修復が可能である。
【0101】
実施の形態5.
図14は、この発明の実施の形態5による蓄電素子を示す斜視図である。また、図15は、図14の圧力調整装置を示す分解斜視図である。さらに、図16は、図14のXVI-XVI線に沿った断面図である。
【0102】
図において、第1のガス放出機構部10は、内部空間8から緩衝空間12へガスを放出した後にも内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を維持する復元可能な逆止弁装置とされている。第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12から外部空間9へガスを放出した後にも緩衝空間12へのガスの進入を阻止する機能を維持する復元可能な逆止弁装置とされている。
【0103】
第1のガス放出機構部10は、弁筐体通気孔13が設けられ外装体3の外側から通気口7に一部が挿入された筐体14と、外装体3と筐体14との間に介在するパッキン(密閉部材)61と、外装体3の内側に設けられ、弁筐体通気孔13を覆う気液分離膜15と、筐体14内に設けられ、弁筐体通気孔13を開閉可能な球状のガス放出弁16と、筐体14内に設けられ、弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を付勢する押さえ部材17と、筐体14内に設けられ、押さえ部材17を筐体14内に保持する外れ止め蓋51とを有している。従って、第1のガス放出機構部10は、一部が外装体3の内側に設けられ、残りの部分が外装体3の外側に設けられている。
【0104】
パッキン61を構成する材料としては、例えば樹脂又はゴム等が用いられている。パッキン61は、円筒部と、円筒部の一端部から外側へ鋭角に張り出したシールリップ部61aと、円筒部の他端部から外側へ垂直に張り出した係止部61bとを有している。パッキン61は、シールリップ部61a及び係止部61bで外装体3を挟んだ状態で通気口7に嵌められる。パッキン61が通気口7に嵌められた状態では、シールリップ部61aが外装体3の内面に接触して電解液の流出が防止されている。
【0105】
筐体14は、外装体3の外側に配置される筐体本体部62と、筐体本体部62から突出し、パッキン61を介して通気口7内に挿入される円筒状の取付用突起部63とを有している。弁筐体通気孔13は、取付用突起部63に設けられている。取付用突起部63の外周部には、通気口7の内周部に設けられた雌ねじ部にパッキン61を介して螺合される雄ねじ部が設けられている。
【0106】
筐体14は、通気口7に嵌められたパッキン61内に取付用突起部63をねじ込むことにより外装体3に取り付けられている。パッキン61は、取付用突起部63の雄ねじ部及び通気口7の雌ねじ部により弾性変形して外装体3と筐体14との隙間を埋めることにより、外装体3と筐体14との間を密閉している。また、外装体3の外面と筐体本体部62との間には、外装体3の外面と筐体本体部62との隙間を密閉するO−リング(シール部材)64が介在している。即ち、外装体3と筐体14との隙間は、パッキン61及びO−リング64により二重にシールされている。これにより、外装体3と筐体14との隙間から内部空間8の電解液やガスが漏れることが遮断される。
【0107】
ここで、筐体14を構成する材料は、実施の形態1の筐体14の材料と同様でありプラスチック材料や金属材料が用いられる。外装体3を構成する材料は、100kPa以上に内圧が上昇しても破壊されることなく、それ自体で形状が維持できる材料とされている。外装体3を構成する材料としては、例えばステンレスやアルミなどの金属材料や、プラスチック材料が用いられている。
【0108】
気液分離膜15は、外周部のみがパッキン61に熱融着で貼り付けられている。気液分離膜15の外周部を除く部分は、筐体14から離れて配置されている。これにより、気液分離膜15の外周部を除く部分と筐体14の取付用突起部63との間には、弁内空間31が形成されている。また、内部空間8の圧力が上昇して電解液が気液分離膜15を透過した場合であっても、弁内空間31に電解液が溜まることにより気液分離膜15のガスの透過経路が確保され、気液分離膜15のガス透過特性の劣化が抑制される。気液分離膜15としては、実施の形態1の気液分離膜15と同様の膜が用いられている。
【0109】
外れ止め蓋51は、筐体本体部62の内面に設けられた窪みに外周部が嵌め込まれた状態で、筐体本体部62の内側の空間に保持されている。筐体14の内側の空間は、外れ止め蓋51で仕切られている。外れ止め蓋51には、筐体14内で外れ止め蓋51により仕切られた両側の空間を連通する開口部20が設けられている。外れ止め蓋51を構成する材料としては、実施の形態1の筐体蓋18を構成する材料と同様のものが用いられる。この例では、外れ止め蓋51を構成する材料が硬質ゴムとされている。
【0110】
押さえ部材(押さえばね)17は、外れ止め蓋51とガス放出弁16との間に縮められた状態で配置されている。これにより、押さえ部材17は、外れ止め蓋51で押さえられた状態で、筐体14の内側の弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を押さえている。この例では、押さえ部材17がばねとされている。また、ガス放出弁16を構成する材料としては、ゴム等が用いられている。
【0111】
第2のガス放出機構部11の構成は、実施の形態1の第2のガス放出機構部11の構成と同様である。第2のガス放出機構部11の筐体24は、筐体本体部62に取り付けられている。また、第2のガス放出機構部11は、外装体3の外側から弁筐体通気孔13を覆った状態で筐体本体部62に取り付けられている。即ち、第2のガス放出機構部11は、外装体3の外側に設けられた第1のガス放出機構部10の部分に、弁筐体通気孔13を覆った状態で取り付けられている。緩衝空間12は、筐体24の開口部23、筐体本体部62及び取付用突起部63のそれぞれの内側の空間を含んでいる。
【0112】
なお、実施の形態2及び3では、気液分離膜15と筐体14との間にスペーサ32が介在しているが、実施の形態1のように、気液分離膜15のガス透過特性が維持されるのであれば、スペーサ32はなくてもよい。
【0113】
また、実施の形態1では、気液分離膜15が筐体14に直接貼り付けられているが、実施の形態1の気液分離膜15と筐体14との間にスペーサを介在させて、気液分離膜15と筐体14との間に弁内空間を形成してもよい。
【0114】
第1のガス放出機構部10の構成は、逆止機能を有するガス放出機構部の構成であればよく、実施の形態1〜5の構成に限定されるものではない。また、実施の形態1、3及び5の第2のガス放出機構部11の構成は、逆止機能を有するガス放出機構部の構成であればよく、実施の形態1、3、5の構成に限定されるものではない。さらに、実施の形態2及び4の第2のガス放出機構部11の構成は、一度ガスを放出するとガスの進入を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置の構成であればよく、実施の形態2及び4の構成に限定されるものではない。
【0115】
また、実施の形態3の圧力調整装置4では、第1〜第3のガス放出機構部10,11,42により3重構造の圧力調整装置とされているが、複数のガス放出機構部により4重構造以上の圧力調整装置としてもよい。
【0116】
また、実施の形態1〜3では、外装体3に設けられた通気口7が第2のガス放出機構部11により外装体3の外側から覆われているが、圧力調整装置4が複数のガス放出機構部により2重構造以上となっていれば、通気口7が外装体3の外部空間9に露出していてもよい。
【0117】
以下、実施の形態1〜5のそれぞれに対応する実施例1〜5と、実施例1〜5と比較するための比較例1とについて説明する。なお、実施例1〜5及び比較例1の蓄電素子は、電気二重層キャパシタとされている。
【0118】
実施例1.
実施の形態1に対応する実施例1の蓄電素子1では、内層の材料にPP樹脂を用い、外層の材料にナイロンを用いたアルミラミネートフィルムにより外装体3を形成した。
【0119】
実施例1の第1のガス放出機構部10では、ガス放出弁16の材料にエチレンプロピレンゴムを、押さえばね17にコイル状のばね鋼を、筐体蓋18の材料にPP樹脂を、筐体本体19の材料にPP樹脂を、液状のシール剤22にメチルフェニルシリコーンオイルをそれぞれ用いた。また、シール剤22に用いられるメチルフェニルシリコーンオイルの動粘度を50mm2/sとした。
【0120】
また、実施例1の第1のガス放出機構部10では、緩衝空間12と内部空間8との差圧が20kPaになると弁筐体通気孔13が開くように設計した。気液分離膜15としては、平均孔径が0.2μmのPTFE多孔フィルムを用いた。これにより、気液分離膜15に対する電解液の透過圧力は100kPaとなった。
【0121】
実施例1の第2のガス放出機構部11では、筐体24の材料にPET樹脂を、ガス放出弁25にPETフィルムを、補強部材26の材料にPET樹脂を、液状のシール剤29にメチルフェニルシリコーンオイルをそれぞれ用いた。また、シール剤29に用いられるメチルフェニルシリコーンオイルの動粘度を1000mm2/sとした。また、実施例1の第2のガス放出機構部11では、緩衝空間12の圧力が外部空間9よりも5kPa高くなると動作するように設計した。
【0122】
蓄電素子本体2は、セルロース製のセパレータと、アルミ集電箔に活性炭を塗布した電極を扁平形に巻回することにより作製した。また、四級アンモニウム塩をプロピレンカーボネートに溶解して作製した電解液を蓄電素子本体2に含浸させた状態で、蓄電素子本体2を外装体3内に内包して密封することにより実施例1の蓄電素子1を作製した。
【0123】
実施例2.
実施の形態2に対応する実施例2の第1のガス放出機構部10では、ガス放出弁16にPETフィルム、押さえ部材17の材料にPP樹脂、筐体14の材料にPP樹脂、液状のシール剤22にメチルフェニルシリコーンオイルをそれぞれ用いた。また、シール剤22に用いられるメチルフェニルシリコーンオイルの動粘度を1000mm2/sとした。
【0124】
また、実施例2の第1のガス放出機構部10では、緩衝空間12と内部空間8との差圧が10kPaになると弁筐体通気孔13が開くように設計した。気液分離膜15としては、平均孔径が0.1μmのPTFE多孔フィルムを用いた。これにより、気液分離膜15に対する電解液の透過圧力は150kPaとなった。
【0125】
実施例2の第2のガス放出機構部11では、ガス放出弁25に円板状のアルミニウム箔、補強部材26の材料にPET樹脂を用いた。また、実施例2の第2のガス放出機構部11では、緩衝空間12の圧力が外部空間9よりも20kPa高くなると動作するように設計した。その他の構成は実施例1と同様とした。
【0126】
実施例3.
実施の形態3に対応する実施例3の第3のガス放出機構部42では、PP樹脂及びPE樹脂をブレンドしたフィルムをガス放出弁45に用いた。また、外装体3のPP樹脂で構成された内層とガス放出弁45とを熱融着により接合することにより、第3のガス放出機構部42を構成した。また、実施例3の第3のガス放出機構部42では、内部空間8と緩衝空間43との差圧が10kPaになると、ガス放出弁45が外装体3の内面から剥離して開放されるように設計した。
【0127】
実施例3の第1のガス放出機構部10では、ガス放出弁16にSUS(ステンレス)板を用いた。また、実施例3の第1のガス放出機構部10では、緩衝空間12と内部空間8との差圧が30kPaになると弁筐体通気孔13が開くように設計した。実施例3の第1のガス放出機構部10の他の構成は、実施例1の第1のガス放出機構部10の構成と同様である。
【0128】
実施例3の第2のガス放出機構部11では、緩衝空間12の圧力が外部空間9よりも10kPa高くなると動作するように設計した。実施例3の第2のガス放出機構部11の他の構成は、実施例1の第2のガス放出機構部11の構成と同様である。その他の構成も実施例1と同様である。
【0129】
実施例4.
実施の形態4に対応する実施例4の第1のガス放出機構部10では、ガス放出弁16の材料にフッ素ゴム板を用いた。押さえ部材17にコイル状のばね鋼を、外れ止め蓋51の材料にPP樹脂を、筐体14の材料にPP樹脂を、液状のシール剤22にメチルフェニルシリコーンオイルをそれぞれ用いた。また、シール剤22に用いられるメチルフェニルシリコーンオイルの動粘度を3000mm2/sとした。
【0130】
また、実施例4の第1のガス放出機構部10では、緩衝空間12と内部空間8との差圧が50kPaになると弁筐体通気孔13が開くように設計した。気液分離膜15としては、平均孔径が0.1μmのPTFE多孔フィルムを用い、インパルスウェルダーを用いた熱融着により気液分離膜15と筐体本体14を接合した。Oーリング44には、フッ素ゴムを使用した。筐体14は、取付用突起部52の外周部に設けた雄ねじ部を通気口7の内周部に設けた雌ねじ部に螺合することにより、外装体3に固定した。
【0131】
実施例4の外装体3にはステンレス容器を使用し、第2のガス放出機構部11のガス放出弁25にはステンレス箔を使用した。ガス放出弁25は、外装体3に溶接により接合した。破裂弁であるガス放出弁25は、緩衝空間12の圧力が外部空間9よりも200kPaだけ高くなると薄く加工した薄肉部25aで破裂するように設計した。
【0132】
蓄電素子本体2は、セルロース製のセパレータと、アルミ集電箔に活性炭を塗布した電極を扁平形に巻回することにより作製した。また、四級アンモニウム塩をプロピレンカーボネートに溶解して作製した電解液を蓄電素子本体2に含浸させた状態で、蓄電素子本体2を外装体3内に内包して密封することにより実施例4の蓄電素子1を作製した。
【0133】
実施例5.
実施の形態5に対応する実施例5の第1のガス放出機構部10では、ガス放出弁16の材料にフッ素ゴムボールを用いた。また、押さえ部材17にコイル状のばね鋼を、外れ止め蓋51の材料にPP樹脂を、筐体14の材料にステンレスを、パッキン61の材料にPTFE樹脂をそれぞれ使用した。
【0134】
また、実施例5の第1のガス放出機構部10では、緩衝空間12と内部空間8との差圧が20kPaになると弁筐体通気孔13が開くように設計した。気液分離膜15としては、平均孔径が0.1μmのPTFE多孔フィルムを用い、インパルスウェルダーを用いた熱融着により気液分離膜15とパッキン61とを接合した。Oーリング64の材料には、ブチルゴムを使用した。筐体14は、取付用突起部62の雄ねじ部を通気口7の雌ねじ部にパッキン61を介して螺合することにより、外装体3に固定した。このとき、パッキン61が外装体3と取付用突起部62との間で弾性変形して密着し、外装体3内の密閉性が確保される。
【0135】
実施例5の第2のガス放出機構部11では、筐体24の材料にPET樹脂を、ガス放出弁25にアルミラミネートフィルムを、補強部材26の材料にPET樹脂を、液状のシール剤29にメチルフェニルシリコーンオイルをそれぞれ用いた。また、シール剤29に用いられるメチルフェニルシリコーンオイルの動粘度を3000mm2/sとした。また、実施例5の第2のガス放出機構部11では、緩衝空間12の圧力が外部空間9よりも10kPa高くなると動作するように設計した。その他の構成は実施例4と同様とした。
【0136】
比較例1.
比較例1としては、実施例2の蓄電素子1のうち、圧力調整装置4が第1のガス放出機構部10のみを有するものを用いた。
【0137】
比較例1の蓄電素子では、内層の材料にPP樹脂を用い、外層の材料にナイロンを用いたアルミラミネートフィルムにより外装体3を形成した。
【0138】
比較例1の第1のガス放出機構部10では、筐体14の材料にPP樹脂、ガス放出弁16にPETフィルム、押さえ部材17の材料にPP樹脂、液状のシール剤22にシリコーンオイルをそれぞれ用いた。また、シール剤22に用いられるシリコーンオイルの動粘度を1mm2/sとした。
【0139】
また、比較例1の第1のガス放出機構部10では、緩衝空間12と内部空間8との差圧が5kPaになると弁筐体通気孔13が開くように設計した。比較例1の気液分離膜15としては、平均孔径が0.1μmのPTFE多孔フィルムを用いた。これにより、気液分離膜15に対する電解液の透過圧力は150kPaとなった。
【0140】
比較例1の蓄電素子本体2は、セルロース製のセパレータと、アルミ集電箔に活性炭を塗布した電極を扁平形に巻回することにより作製した。また、四級アンモニウム塩をプロピレンカーボネートに溶解して作製した100gの電解液を蓄電素子本体2に含浸させた状態で、蓄電素子本体2を外装体3内に内包して密封することにより比較例1の蓄電素子を作製した。
【0141】
次に、温度85℃で相対湿度85%RHの環境(実験環境)に、実施例1〜5及び比較例1のそれぞれの蓄電素子(電気二重層キャパシタ)を0V放電状態で1000時間置いた後、実施例1〜5及び比較例1のそれぞれの蓄電素子について電解液への水分の混入量を測定した。また、温度85℃で相対湿度85%RHの環境(実験環境)に、実施例1〜5及び比較例1のそれぞれの蓄電素子(電気二重層キャパシタ)を2V充電状態で1000時間置いた後、実施例1〜5及び比較例1のそれぞれの蓄電素子について電解液への水分の混入量を測定した。
【0142】
電解液への水分の混入量は、カールフィッシャ水分計(MKA−520:京都電子製)で電解液中の水分濃度を測定し、測定した水分濃度と電解液重量とに基づいて算出した。電解液の実験前の水分量は、16ppmであった。
【0143】
図17は、温度85℃で相対湿度85%RHの環境(実験環境)に0V放電状態の蓄電素子を1000時間置いた場合の電解液への水分混入量と、同じ実験環境に2V充電状態の蓄電素子を1000時間置いた場合の電解液への水分混入量とを、実施例1〜5及び比較例1のそれぞれで比較して示す表である。図11に示すように、電解液への水分混入量は、実施例1〜5の蓄電素子のほうが比較例1の蓄電素子よりも少なくなっていることが分かる。即ち、実施例1〜5の蓄電素子では、比較例1の蓄電素子よりも、電解液への水分の混入が抑制されていることが分かる。これにより、実施例1〜5の蓄電素子では、比較例1の蓄電素子よりも、圧力調整装置4の機能の低下が長期間にわたって抑制されることが確認された。
【符号の説明】
【0144】
1 蓄電素子、2 蓄電素子本体、3 外装体、4 圧力調整装置、5 正極集電端子、6 負極集電端子、7 通気口(貫通口)、8 内部空間、9 外部空間、10 第1のガス放出機構部、11 第2のガス放出機構部、12 緩衝空間、13 弁筐体通気孔、14,24 筐体、15 気液分離膜、16,25,45 ガス放出弁、17 押さえばね(押さえ部材)、18 筐体蓋、19 筐体本体、20,23 開口部、21 押さえ部材、22,29 シール剤、26 補強部材、27 ガス通路域、28 接着剤、31 弁内空間、32 スペーサ、33 突起部、34 板部、35 押付部、41 熱融着部、42 第3のガス放出機構部、43 緩衝空間、51 外れ止め蓋、52,62 筐体本体部、53,63 取付用突起部、54,64 O−リング(シール部材)、55 破裂起点部、61 パッキン。
【技術分野】
【0001】
この発明は、電解液が含浸された蓄電素子本体を密封する外装体に圧力調整装置設けられた蓄電素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、正極と、負極と、正極及び負極間に挟まれたセパレータとを含む蓄電素子エレメントを電解液に含浸させた状態で外装体に収納した蓄電素子である。電気二重層キャパシタは、電気二重層コンデンサ、スーパーキャパシタ、ウルトラキャパシタ、電気化学キャパシタ等と称される場合があり、単にキャパシタと称される場合も多い。電気二重層キャパシタとリチウムイオン二次電池とのハイブリッドであるリチウムイオンキャパシタでは、活性炭等の電気二重層キャパシタの電極材料を正極に使用し、リチウムイオンを吸蔵放出可能なリチウムイオン二次電池の電極材料を負極に使用する場合が多いが、正極の一部にリチウムイオン電池の電極材料を使用するリチウムイオンキャパシタも存在している。また、炭素材料を正極に使用することにより、炭素材料表面の電気二重層容量と炭素内部への陽イオンの吸蔵放出による容量とを用いるハイブリッドキャパシタ等も存在している。
【0003】
上記のような電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ、ハイブリッドキャパシタのような蓄電素子では、電解液が使用されているので、アルミラミネートシート等のガスバリア性能を持つ外装材で蓄電素子エレメントを密閉封口することにより、電解液が外部に漏れないようにするとともに、水や酸素等のガスが外部から外装材内へ進入することを防いでいる。一方、上記の蓄電素子では、比表面積が大きな電極材料が使用されているので、反応面積が大きくなり、蓄電素子を長期間使用すると、例えば電解液の分解や、電極材料に吸着された不純物の分解等により、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、エチレン等のガスが発生する。従って、上記の蓄電素子では、外装材内でのガスの発生により、外装材の変形や外装材内の圧力増加の問題が生じる。また、通常の使用環境ではガスの発生が問題にならない場合でも、大電流の充放電を繰り返すと蓄電素子の内部抵抗により発熱して蓄電素子が高温になる場合もある。さらに、高電圧環境下での蓄電素子の使用によっても、外装材内でのガスの発生が促進される。
【0004】
従来、外装材の変形や外装材内の圧力増加を抑制するために、外装材に通気孔を設け、外装材の内側から通気孔を覆った状態でガス放出弁を取り付けた蓄電素子が提案されている。ガス放出弁は、外装材の内部からのガスを通気孔を通して外部へ放出するとともに、外装材の外部から内部への酸素や水分等の進入を阻止する(例えば特許文献1及び2参照)。
【0005】
また、従来、外装材に開口部を設け、外装材の内部のガスを外部へ放出可能なガス抜きベントを開口部に嵌めることにより、外装材の内圧の異常上昇を防止するようにした蓄電素子も提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−128199号公報
【特許文献2】特開2008−153282号公報
【特許文献3】特開2003−297700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜3に示されている蓄電素子では、外装材に取り付けられたガス放出弁やガス抜きベントのすべてが外気に接しているので、高湿度環境下ではガス放出弁内やガス抜きベント内のそれぞれに結露水が蓄積されやすくなってしまう。これにより、ガス放出弁やガス抜きベントのそれぞれについて、外装材内への酸素や水分等の進入を阻止する機能が低下するおそれがある。また、ガス放出弁やガス抜きベントに金属部品が使用されている場合には、金属部品の腐食によるガス放出弁やガス抜きベントの機能低下も考えられ、ゴム等の部品を用いた場合でも脆化等による機能低下が考えられる。また、外装材の内部で発生するガスには電解液の気化成分も含まれる場合があり、蓄電素子の内部と外部でガス成分が異なるため、外装材の内部と外部で密閉に適した素材を選択する必要がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、圧力調整装置の機能の低下を長期間にわたって抑制することができる蓄電素子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る蓄電素子は、電解液が含浸された蓄電素子本体、蓄電素子本体を密封する外装体、及び外装体の内側に設けられた第1のガス放出機構部と、外装体の外側に設けられた第2のガス放出機構部とを有し、外装体に設けられ、蓄電素子本体が存在する外装体の内部空間からのガスが各ガス放出機構部を順次通ることにより内部空間から外部空間へのガスの放出を許容し、かつ外部空間から内部空間へのガスの進入を各ガス放出機構部で阻止する圧力調整装置を備え、各ガス放出機構部間には、ガス放出機構部で個別に仕切られた緩衝空間が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る蓄電素子では、第1のガス放出機構部が外装体の内側に設けられているとともに、第2のガス放出機構部が外装体の外側に設けられ、内部空間からのガスが各ガス放出機構部を順次通ることにより、内部空間から外部空間へのガスの放出が許容され、外部空間から内部空間へのガスの進入が各ガス放出機構部のそれぞれで阻止されるようになっており、各ガス放出機構部間には、ガス放出機構部で仕切られた緩衝空間が形成されているので、各ガス放出機構部のいずれかの機能が劣化したとしても、劣化していないガス放出機構部により内部空間へのガスの進入を阻止することができ、内部空間のガスと外部空間のガスもしくは水分の遮断に適した圧力調整装置を得ることができる。また、少なくともいずれかのガス放出機構部が外気との接触を避けて配置されるので、外気との接触を避けて配置されたガス放出機構部内で結露水が生じにくくなり、そのガス放出機構部の機能の劣化を抑制することができる。これにより、外部空間から圧力調整装置を通って内部空間にガスが進入することを長期間にわたって阻止することができ、圧力調整装置の機能の低下を長期間にわたって抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1による蓄電素子を示す断面図である。
【図2】図1のII-II線に沿った断面図である。
【図3】図2の圧力調整装置を示す拡大断面図である。
【図4】図3の圧力調整装置を示す分解斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態2による蓄電素子の圧力調整装置を示す断面図である。
【図6】図5の圧力調整装置を示す分解斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態3による蓄電素子を示す正面図である。
【図8】図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【図9】図7の外装体を構成する2枚のシートの熱融着部分を示す正面図である。
【図10】図8の圧力調整装置を示す拡大断面図である。
【図11】この発明の実施の形態4による蓄電素子を示す斜視図である。
【図12】図11の圧力調整装置を示す分解斜視図である。
【図13】図11のXIII-XIII線に沿った断面図である。
【図14】この発明の実施の形態5による蓄電素子を示す斜視図である。
【図15】図14の圧力調整装置を示す分解斜視図である。
【図16】図14のXVI-XVI線に沿った断面図である。
【図17】温度85℃で相対湿度85%RHの環境(実験環境)に0V放電状態の蓄電素子を1000時間置いた場合の電解液への水分混入量と、同じ実験環境に2V充電状態の蓄電素子を1000時間置いた場合の電解液への水分混入量とを、実施例1〜5及び比較例1のそれぞれで比較して示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による蓄電素子を示す断面図である。また、図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。図において、蓄電素子1は、充電及び放電が行われる略平板状の蓄電素子本体(蓄電素子エレメント)2と、蓄電素子本体2を内包して密封する外装体3と、外装体3に設けられ、外装体3の内圧を調整する圧力調整装置4とを有している。
【0013】
蓄電素子本体2には、蓄電素子本体2と外部機器との電気的接続を行うための金属製(アルミニウムや銅等)の正極集電端子5及び負極集電端子6が接続されている。正極集電端子5及び負極集電端子6は、外装体3の上端部から外装体3外に導出されている。この例では、正極集電端子5及び負極集電端子6のそれぞれがアルミニウム製の板とされている。
【0014】
蓄電素子本体2は、正極集電端子5が接続された正極(電極)と、負極集電端子6が接続された負極(電極)と、正極及び負極間に挟まれたセパレータとを有している(いずれも図示せず)。蓄電素子本体2は、正極、負極及びセパレータを合わせたものを、積層したり、巻回したり、あるいは折りたたんだりすることによって構成されている。
【0015】
正極は、正極集電箔と、正極集電箔及びセパレータ間に介在する正極活物質層とを有している。正極活物質層は、正極活物質及び導電助剤をバインダにより結着させた層である。負極は、負極集電箔と、負極集電箔及びセパレータ間に介在する負極活物質層とを有している。負極活物質層は、負極活物質及び導電助剤をバインダにより結着させた層である。セパレータは、電子絶縁性を持つ多孔性の膜である。
【0016】
蓄電素子1が電気二重層キャパシタである場合には、賦活処理した比表面積500m2/g〜2500m2/g程度の活性炭が正極活物質及び負極活物質として用いられ、アセチレンブラック等の電子伝導性の高い炭素材料の微粉末が導電助剤として用いられる。また、バインダとしては、例えばゴム系バインダやポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が用いられる。さらに、正極集電箔及び負極集電箔としては、例えばアルミニウム金属箔等が用いられる。セパレータとしては、例えばセルロースやポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス、無機粉体(アルミナやシリカ等)等で作られる多孔膜が単独又は混合で用いられる。
【0017】
蓄電素子本体2には、電解液が含浸されている。蓄電素子本体2の充電及び放電は、正極と負極との間で電解液中のイオンや電子が移動することにより行われる。蓄電素子本体2の充電及び放電が行われると、例えば水素、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、エチレン等のガスが蓄電素子本体2から発生する。外装体3の内圧は、蓄電素子本体2からのガスの発生により上昇する。
【0018】
外装体3は、液体及び気体の透過を阻止する密閉容器となっている。即ち、外装体3は、電解液を外部に漏出させない耐漏液性能と、外部からの水分や酸素等のガスの通過を防ぐガスバリア性能とを有している。この例では、外装体3が変形可能な袋とされている。
【0019】
外装体3としては、例えばアルミラミネートシート等が用いられる。外装体3に用いられるアルミラミネートシートは、アルミニウム金属箔の一方の面にナイロン層が重ねられ、他方の面にポリプロピレン層が重ねられたシートである。また、アルミラミネートシートのナイロン層が重ねられた側の面が外装体3の外面となり、アルミラミネートシートのポリプロピレン層が重ねられた側の面が外装体3の内面となる。さらに、外装体3は、互いに重ねられた2枚のアルミラミネートシートの外縁部を熱融着することにより作製されている。蓄電素子本体2は、アルミラミネートシートの熱融着により外装体3の内部に密封される。
【0020】
アルミラミネートシートのアルミニウム金属箔からみて外装体3の外面側に重ねられる層としては、ナイロン層等のポリアミド層の代わりに、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類や、ポリプロピレン(PP)等の樹脂の層を用いてもよいし、互いに異なる樹脂の層を複数積層した積層部を用いてもよい。アルミラミネートシートのアルミニウム金属箔からみて外装体3の内面側に重ねられる層としては、ポリプロピレン層の代わりに、ポリエチレン(PE)やエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等の熱可塑性樹脂の層を用いてもよい。また、フッ化水素保護層や水分トラップ層を中間層として含むアルミラミネートシートを外装体3に用いてもよい。
【0021】
なお、この例では、外装体3を構成する部材としてアルミラミネートシートが用いられているが、電解液の漏出を防止し、かつガスバリア性能を持つ部材であればよく、例えばステンレス金属箔のラミネートシートや金属蒸着フィルム等により外装体3を構成してもよい。また、アルミニウムやステンレス等の金属単体で外装体3を構成してもよいし、PPやPE、PET等の樹脂単体で外装体3を構成してもよい。さらに、金属と樹脂との複合層を持つ部材で外装体3を構成してもよい。
【0022】
正極集電端子5及び負極集電端子6のそれぞれが導出される外装体3の外縁部では、正極集電端子5及び負極集電端子6のそれぞれと外装体3の内側の樹脂層とが熱融着等により接合されているが、金属と樹脂との接合強度が弱いので、酸等で変性させて金属との接合強度を向上させた金属融着性樹脂部材が、正極集電端子5及び負極集電端子6のそれぞれと外装体3の内側の樹脂層との間に介在している。金属融着性樹脂部材の材質としては、外装体3の内側の樹脂層に接合しやすい材質が選択されている。これにより、正極集電端子5及び負極集電端子6のそれぞれと外装体3との接合強度の向上が図られている。
【0023】
外装体3には、貫通口である通気口7が設けられている。圧力調整装置4は、通気口7を覆った状態で外装体3に取り付けられている。また、圧力調整装置4は、蓄電素子本体2が存在する外装体3の内部空間8と外装体3の外部空間9との間に介在している。圧力調整装置4は、外装体3の内部空間8から外装体3の外部空間9へのガス(水素や二酸化炭素等)の放出を許容しながら、外装体3の外部空間9から外装体3の内部空間8へのガス(酸素や水分等)の進入を阻止することにより、外装体3の内部空間8の圧力(外装体3の内圧)を調整する。
【0024】
図3は、図2の圧力調整装置4を示す拡大断面図である。また、図4は、図3の圧力調整装置4を示す分解斜視図である。図において、圧力調整装置4は、外装体3の内側(内部空間8側)から通気口7を覆う第1のガス放出機構部10と、外装体3の外側(外部空間9側)から通気口7を覆う第2のガス放出機構部11とを有している。即ち、圧力調整装置4は、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11により2重構造とされた圧力調整装置となっている。また、圧力調整装置4は、内部空間8からのガスが第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11を順次通ることにより内部空間8から外部空間9へのガスの放出を許容し、かつ外部空間9から内部空間8へのガスの進入を第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11のそれぞれで阻止する。第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11のそれぞれのガス放出メカニズムは、互いに異なっている。また、第1のガス放出機構部10と第2のガス放出機構部11とが独立しているため、第1のガス放出機構部10は内部空間8で発生したガスを遮断しやすい材料を使用し、第2のガス放出機構部11は外気及び水分を遮断しやすい材料を使用している。これにより、圧力調整装置4の密閉性の向上が図られている。即ち、第1及び第2のガス放出機構部10,11にそれぞれ適切なガス放出機構部を選定することで、より密閉性の良好な圧力調整装置4となっている。
【0025】
第1のガス放出機構部10と第2のガス放出機構部11との間には、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11で仕切られた緩衝空間12が形成されている。緩衝空間12には、通気口7の内側の空間が含まれている。第1のガス放出機構部10は外装体3の内部空間8と緩衝空間12との間に配置され、第2のガス放出機構部11は外装体3の外部空間9と緩衝空間12との間に配置されている。従って、第2のガス放出機構部11は外気に接した状態で配置され、第1のガス放出機構部10は外気との接触を避けて配置されている。
【0026】
第1のガス放出機構部10は、内部空間8から緩衝空間12へのガスの通過(即ち、内部空間8から外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容し、かつ緩衝空間12から内部空間8へのガスの通過(即ち、外部空間9から内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する逆止機能を持つガス放出機構部である。
【0027】
また、第1のガス放出機構部10は、複数の弁筐体通気孔13が設けられた筐体14と、各弁筐体通気孔13をまとめて塞ぐ気液分離膜15と、筐体14内に設けられ、各弁筐体通気孔13を開閉可能な板状のガス放出弁16と、筐体14内に設けられ、各弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を付勢する押さえばね(押さえ部材)17とを有している。
【0028】
筐体14は、外装体3の内面に取り付けられた板状の筐体蓋18と、筐体蓋18に固定され、通気口7を覆う椀状の筐体本体19とを有している。各弁筐体通気孔13は、筐体本体19に設けられている。
【0029】
筐体蓋18には、通気口7の内側の空間と筐体本体19の内側の空間とを連通する開口部20が設けられている。筐体蓋18は、熱融着や接着剤等により外装体3の内面に固定されている。筐体本体19は、熱融着や接着剤等により筐体蓋18に固定されている。緩衝空間12は、通気口7の内側の空間に加えて、開口部20の内側の空間、及び筐体本体19の内側の空間も含んでいる。
【0030】
筐体蓋18及び筐体本体19のそれぞれの材料としては、形状を維持可能な材料であればよく、例えばガス放出弁16を構成する樹脂材料や金属材料等が用いられる。筐体蓋18と筐体本体19とが熱融着により互いに固定される場合には、筐体蓋18及び筐体本体19を同じ材料で構成することにより、筐体蓋18と筐体本体19との接合強度の向上が図られる。筐体蓋18が外装体3の内面に熱融着により固定される場合には、外装体3の内層及び筐体蓋18を同じ材料で構成することにより、筐体蓋18と外装体3との接合強度の向上が図られる。
【0031】
気液分離膜15は、蓄電素子本体2が存在する内部空間8に面した状態で筐体本体19の外面に貼られることにより各弁筐体通気孔13をまとめて塞いでいる。また、気液分離膜15は、複数の微細空孔が設けられた多孔性の膜(多孔膜)とされている。これにより、気液分離膜15は、複数の微細空孔を通してガスの透過を許容するとともに、電解液等の液体の透過を阻止する。蓄電素子本体2から発生したガスにより外装体3の内部空間8の圧力が上昇すると、外装体3内のガスが気液分離膜15を透過して各弁筐体通気孔13内に進入し、各弁筐体通気孔13内の空間の圧力が内部空間8の圧力に応じて上昇する。
【0032】
気液分離膜15としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やパーフルオロアルコキシエチレン(PFA)、PP等により構成される多孔膜が用いられる。気液分離膜15は、電解液に対して接触角90度以上を示し、かつ撥油性を有する多孔膜とされている。これにより、気液分離膜15は、安定した気液分離機能を維持することができる。気液分離膜15に設けられた各微細空孔の平均径(平均孔径)としては、0.03μm〜5μm程度が好ましく、さらに好ましくは0.1μm〜1μmとするのがよい。平均孔径が5μmよりも大きくなると、内部空間8の圧力が上昇した場合に、内部空間8の電解液が気液分離膜15を透過する可能性が生じてくる。また、平均孔径が0.03μmよりも小さくなると、ガスが気液分離膜15を透過するのに時間がかかりすぎ、内部空間8の圧力が高くなりすぎるおそれがある。
【0033】
気液分離膜15の電解液を透過する耐圧は、圧力調整装置4が外部空間9へガスの放出を許容するときの内部空間8の圧力よりも高く設定されている。例えば、減圧環境下に蓄電素子1が置かれる場合には、気液分離膜15の電解液を透過する耐圧が100kPa程度に設定される。
【0034】
ガス放出弁16は、筐体本体19の内面に対して接離することにより各弁筐体通気孔13を開閉する。また、ガス放出弁16は、押さえばね17の付勢力で筐体本体19の内面に押し付けられることにより、各弁筐体通気孔13を閉じる。
【0035】
また、ガス放出弁16は、ガス放出弁16の押さえばね17に押されていない部分が筐体本体19の内面から離れる方向へ弾性変形することにより各弁筐体通気孔13を開くようになっていてもよいし、押さえばね17の付勢力に逆らって筐体本体19の内面から離れる方向へ変位されることにより各弁筐体通気孔13を開くようになっていてもよい。
【0036】
内部空間8の圧力が低い通常の状態では、押さえばね17の付勢力で筐体本体19の内面に押し付けられたガス放出弁16によって各弁筐体通気孔13が閉じている。この状態では、各弁筐体通気孔13内と緩衝空間12との間でのガスの移動が阻止されている。内部空間8の圧力が上昇して各弁筐体通気孔13内の圧力が所定値を超えると、各弁筐体通気孔13内のガスによってガス放出弁16が押されて、ガス放出弁16が弾性変形したり変位したりする。これにより、筐体本体19の内面とガス放出弁16との間に隙間が生じて弁筐体通気孔13が開き、弁筐体通気孔13内から緩衝空間12へのガスの通過が許容される。また、緩衝空間12へのガスの放出により各弁筐体通気孔13内の圧力が下がると、押さえばね17の付勢力により、各弁筐体通気孔13を閉じる位置にガス放出弁16の位置が戻される。これにより、各弁筐体通気孔13内と緩衝空間12との間でのガスの移動が再び阻止される。
【0037】
即ち、第1のガス放出機構部10は、内部空間8の圧力が低い通常の状態では、内部空間8と緩衝空間12との間のガスの移動を阻止し、内部空間8の圧力が上昇すると、緩衝空間12から内部空間8へのガスの通過(即ち、内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止しながら、内部空間8から緩衝空間12へのガスの通過(即ち、外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容する。また、第1のガス放出機構部10は、内部空間8から緩衝空間12へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)にも内部空間8へのガスの進入を阻止する復元可能な逆止弁装置とされている。
【0038】
各弁筐体通気孔13を弾性変形により開閉するガス放出弁16の材料としては、例えばフッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム等の比較的高い弾性を持つゴムが用いられる。また、各弁筐体通気孔13を変位により開閉するガス放出弁16の材料としては、例えばPP、PET、PE、PEN、PTFE等の熱可塑性樹脂フィルムや、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂、アルミニウムやステンレス等の金属等、比較的低い弾性を持つ材料が用いられる。
【0039】
筐体本体19の内面とガス放出弁16との間には、ガス放出弁16が各弁筐体通気孔13を閉じているときに筐体本体19とガス放出弁16との間の隙間を密閉する液状のシール剤22が介在している。これにより、内部空間8の密閉性の向上が図られる。特に、ガス放出弁16が弾性の低い材料により構成されている場合には、筐体本体19の内面とガス放出弁16との間にシール剤22を介在させるのが有効である。なお、ガス放出弁16を構成する材料が筐体本体19との密閉性の高い材料であって、内部空間8の密閉性が確保される場合には、シール剤22はなくてもよい。
【0040】
シール剤22としては、例えばシリコーンオイル、フッ素オイル、炭化水素オイル等のオイルやシリコーングリース等が用いられる。例えばシール剤22をシリコーンオイルとした場合には、25℃でのシール剤22の動粘度が50mm2/s以上であることが好ましく、シール剤22の動粘度が1000mm2/s以上であるとさらに好ましい。また、シール剤22の動粘度が高くなるほど成分の揮発量が少なくなるので、150℃の高温環境下で1日保持しても成分揮発量が全体の1%以下となる動粘度の高いシリコーンオイルをシール剤22とするのが好ましい。
【0041】
押さえばね17は、ガス放出弁16と筐体蓋18との間で縮められた状態で弾性反発力を発生している。押さえばね17は、弾性反発力をガス放出弁16に与えることにより筐体本体19の内面に向けてガス放出弁16を付勢している。この例では、押さえばね17がコイル状のばねとされている。押さえばね17を構成する材料としては、例えばばね鋼、りん青銅、ベリリウム銅、ステンレス鋼等の金属や、ゴム、合成樹脂等が用いられる。なお、押さえばね17の形状は、押さえ部材21が弾性を有していればコイル状である必要はなく、例えばブロック状や板状等であってもよい。
【0042】
第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12から外部空間9へのガスの通過(即ち、内部空間8から外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容し、かつ外部空間9から緩衝空間12へのガスの通過(即ち、外部空間9から内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する逆止機能を持つガス放出機構部である。
【0043】
第2のガス放出機構部11は、開口部23が設けられた円形のフィルム状の筐体24と、開口部23を覆った状態で筐体24に重ねて貼り付けられた円形のフィルム状のガス放出弁25と、ガス放出弁25の一部に重ねて貼り付けられた一対の補強部材26とを有している。
【0044】
外装体3の外面には、筐体24の裏面(下面)の全体が熱融着や接着剤等により取り付けられている。開口部23の内径は、通気口7の内径よりも大きくなっている。開口部23の位置は、筐体24の厚さ方向について通気口7と重なる位置となっている。筐体24を構成する材料としては、例えば第1のガス放出機構部10の筐体14を構成する材料等が用いられる。緩衝空間12は、開口部23の内側の空間を含んでいる。
【0045】
筐体24の表面(上面)には、開口部23上を通って筐体24の外周部に達するガス通路域27が設定されている。ガス放出弁25は、ガス通路域27を避けて筐体24に塗布された接着剤28により筐体24の表面に貼り付けられている。また、ガス放出弁25は、弾性変形可能な材料により構成されている。ガス放出弁25を構成する材料としては、第1のガス放出機構部10のガス放出弁16を構成する材料等が用いられる。
【0046】
ガス通路域27には、液状のシール剤29が存在している。ガス通路域27における筐体24の表面とガス放出弁25との間の隙間は、液状のシール剤29により密閉される。シール剤29としては、例えば第1のガス放出機構部10のシール剤22と同様のものが用いられる。また、第2のガス放出機構部11の液状のシール剤29は、外気に接する場合があるため、耐水性、耐酸化性の高い素材を使用するのが好ましく、フッ素変成したシリコーンオイルや、フッ素系オイルを使用することで、より長期的なシール性が期待できる。
【0047】
各補強部材26は、筐体24の厚さ方向に沿って第2のガス放出機構部11を見たときに、接着剤28が塗布された位置と同位置に配置されている。即ち、各補強部材26は、筐体24の厚さ方向に沿って第2のガス放出機構部11を見たときに、ガス通路域27を避けて配置されている。各補強部材26を構成する材料としては、例えば第1のガス放出機構部10の筐体14を構成する材料等が用いられる。ガス放出弁25は、各補強部材26が貼り付けられた部分で曲がりにくく(弾性変形しにくく)、各補強部材26から外れた部分で曲がりやすく(弾性変形しやすく)なっている。
【0048】
緩衝空間12の圧力が低い通常の状態では、ガス通路域27でのガス放出弁25と筐体24との間の隙間がシール剤29により密閉されている。この状態では、緩衝空間12と外部空間9との間でのガスの移動が阻止されている。緩衝空間12の圧力が上昇して所定値を超えると、各補強部材26の貼り付けられていないガス放出弁25の部分が緩衝空間12内のガスに押されて湾曲する。これにより、ガス通路域27でガス放出弁25と筐体24との間に隙間が生じる。これにより、緩衝空間12から外部空間9へのガスの通過(即ち、外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)が許容される。また、外部空間9へのガスの放出により緩衝空間12の圧力が下がると、ガス放出弁25の弾性復元力により、ガス放出弁25の変形が戻り、ガス放出弁25と筐体24との間の隙間がシール剤29により密閉された状態に戻る。これにより、緩衝空間12と外部空間9との間でのガスの移動が再び阻止される。
【0049】
即ち、第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12の圧力が低い通常の状態では、緩衝空間12と外部空間9との間のガスの移動を阻止し、緩衝空間12の圧力が上昇すると、外部空間9から緩衝空間12へのガスの通過(即ち、内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止しながら、緩衝空間12から外部空間9へのガスの通過(即ち、外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容する。また、第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12から外部空間9へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)にも内部空間8へのガスの進入を阻止する復元可能な逆止弁装置とされている。
【0050】
次に、動作について説明する。蓄電素子1では、蓄電素子本体2に対する充電及び放電が繰り返されると残存水分や不純物による副反応等により、蓄電素子本体2からガスが発生し、外装体3の内部空間8の圧力が次第に上昇する。各弁筐体通気孔13内の圧力も、外装体3の内部空間8のガスが気液分離膜15を透過することにより、内部空間8の圧力に応じて次第に上昇する。
【0051】
各弁筐体通気孔13内の圧力が所定値を超えると、各弁筐体通気孔13内のガスが、押さえばね17の付勢力に逆らってガス放出弁16を押し上げ、各弁筐体通気孔13内から緩衝空間12へガスが通される。緩衝空間12へのガスの放出により内部空間8の圧力が下がると、ガス放出弁16の変位が元に戻り、各弁筐体通気孔13がガス放出弁16によって再び閉じる。
【0052】
この後、緩衝空間12へのガスの進入により緩衝空間12の圧力が所定値を超えると、ガス放出弁25の一部が緩衝空間12内のガスに押されて湾曲し、ガス放出弁25と筐体24との間に隙間が生じる。これにより、緩衝空間12から外部空間9へガスが放出される。
【0053】
この後、外部空間9へのガスの放出により緩衝空間12の圧力が下がると、ガス放出弁25の変形が元に戻り、ガス放出弁25と筐体24との間の隙間がシール剤29により密閉される。
【0054】
通常、蓄電素子1を長期間使用すると、外気に接する第2のガス放出機構部11の機能が、外気を避けて配置された第1のガス放出機構部10の機能よりも劣化しやすい。従って、第2のガス放出機構部11の機能が劣化して外部空間9から緩衝空間12へガスが進入した場合であっても、第1のガス放出機構部10により緩衝空間12から内部空間8へのガスの進入が阻止される。また、外気に接する第2のガス放出機構部11には、水分に対して耐久性を有する素材を使用することで、第2のガス放出機構部11の耐久性を向上させることができる。一方、第1のガス放出機構部10には、内部のガス及び電解液の蒸気に対して耐久性を有する素材を使用することで、第1のガス放出機構部10の耐久性を向上させることができる。特に第1のガス放出機構部10のガス放出弁16に電解液耐性を有する材料を使用し、第2ガス放出機構部11のガス放出弁25に耐水性の材料を使用することで、長期的に密閉性及び逆止機能を維持できる。以上より、複数のガス放出機構部10,11のうち、内部空間8に配置されるガス放出機構部10のガス放出弁16と、外部空間に配置されるガス放出機構部11のガス放出弁25とを、互いに異なる素材で形成し、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11のそれぞれに適した素材を使用することで、長期に渡って圧力調整装置4の信頼性を確保できる。
【0055】
このような蓄電素子1では、内部空間8からのガスが第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11を順次通ることにより、内部空間8から外部空間9へのガスの放出が許容され、外部空間9から内部空間8へのガスの進入が第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11のそれぞれで阻止されるようになっており、第1のガス放出機構部10と第2のガス放出機構部11との間には、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11で仕切られた緩衝空間12が形成されているので、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11のいずれかの機能が劣化したとしても、劣化していないガス放出機構部により内部空間8へのガスの進入を阻止することができる。また、第1のガス放出機構部10が外気を避けて配置されているので、第1のガス放出機構部10内で結露水を生じにくくすることができ、第1のガス放出機構部10の機能の劣化を抑制することができる。これにより、外部空間9から圧力調整装置4を通って内部空間8にガスが進入することを長期間にわたって阻止することができ、圧力調整装置4の機能の低下を長期間にわたって抑制することができる。
【0056】
また、ガス放出弁16,25と筐体14,24との間に介在するシール剤22,29の動粘度は、50mm2/s以上であるので、ガス放出弁16,25と筐体14,24との間の隙間の密閉状態をより確実にすることができ、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11のそれぞれの機能の信頼性の向上を図ることができる。
【0057】
また、第2のガス放出機構部11は、外装体3に設けられた通気口7を外装体3の外側から覆っているので、第1のガス放出機構部10へのガスの進入を容易に阻止することができる。また、第2のガス放出機構部11の機能が劣化して交換が必要になった場合であっても、劣化した第2のガス放出機構部11と新たな第2のガス放出機構部11とを容易に交換することができる。
【0058】
なお、上記の例では、筐体蓋18が外装体3の内面に固定され、筐体本体19が筐体蓋18に固定されているが、筐体蓋18を筐体本体19の内側に固定して、筐体本体19を外装体3の内面に固定するようにしてもよい。
【0059】
また、上記の例では、第2のガス放出機構部11が気液分離膜を有していないが、第2のガス放出機構部11が気液分離膜を有していてもよい。
【0060】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2による蓄電素子の圧力調整装置を示す断面図である。また、図6は、図5の圧力調整装置を示す分解斜視図である。図において、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11は、内部空間8から外部空間9へ放出する方向へのガスの通過を許容し、かつ外部空間9から内部空間8へ進入する方向へのガスの通過を阻止する逆止機能をそれぞれ持つガス放出機構部である。
【0061】
第1のガス放出機構部10は、実施の形態1の第1のガス放出機構部10と同様に、内部空間8から緩衝空間12へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)にも内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を維持する復元可能な逆止弁装置とされている。これに対して、第2のガス放出機構部11は、実施の形態1の第2のガス放出機構部11と異なり、緩衝空間12から外部空間9へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)に緩衝空間12へのガスの進入(即ち、内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置とされている。
【0062】
第1のガス放出機構部10は、複数の弁筐体通気孔13が設けられた椀状の筐体14と、各弁筐体通気孔13をまとめて覆う気液分離膜15と、筐体14内に設けられ、各弁筐体通気孔13を開閉可能な板状のガス放出弁16と、筐体14内に設けられ、各弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を付勢する押さえ部材17と、筐体14と気液分離膜15との間に介在し、筐体14と気液分離膜15との間に弁内空間31を形成する環状のスペーサ32とを有している。
【0063】
筐体14は、実施の形態1のような筐体蓋18を有しておらず、通気口7を覆った状態で熱融着や接着剤等により外装体3の内面に取り付けられている。筐体14の内面には、筐体14の径方向内側へ突出する突起部33が筐体14の全周に亘って設けられている。筐体14を構成する材料は、実施の形態1の筐体14の材料と同様である。
【0064】
筐体14には、気液分離膜15の外周部のみが貼り付けられている。気液分離膜15の外周部を除く部分は、スペーサ32によって筐体14から離れて配置されている。これにより、気液分離膜15の外周部を除く部分と筐体14との間には、弁内空間31が形成されている。これにより、気液分離膜15が液状のシール剤22で濡れにくくなり、気液分離膜15のガス透過特性が維持される。特に、気液分離膜15のオイル(例えばシリコーンオイル)に対する接触角が90度以上であり、気液分離膜15が撥油性を示さない場合には、気液分離膜15がオイルに濡れると気液分離膜15のガス透過特性が大きく劣化してしまうので、気液分離膜15のガス透過特性の劣化がより確実に抑制される。また、内部空間8の圧力が上昇して電解液が気液分離膜15を透過した場合であっても、弁内空間31に電解液が溜まることにより気液分離膜15のガスの透過経路が確保され、気液分離膜15のガス透過特性の劣化が抑制される。気液分離膜15としては、実施の形態1の気液分離膜15と同様の膜が用いられている。
【0065】
スペーサ32は、各弁筐体通気孔13が設けられている領域を囲むように配置されている。スペーサ32の材料としては、例えばゴムや樹脂等が用いられる。この例では、スペーサ32がO−リングとされている。ガス放出弁16の構成は、実施の形態1のガス放出弁16の構成と同様である。
【0066】
押さえ部材17は、筐体14の突起部33に係合する係合板部34と、係合板部34からガス放出弁16に向かって突出する複数の押付部35とを有している。押さえ部材17は、係合板部34を突起部33に係合させた状態で各押付部35をガス放出弁16に押し付けることにより、各弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を付勢する。押さえ部材17としては、例えばゴムや熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属等で成型された成型体が用いられる。第1のガス放出機構部10の他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0067】
第2のガス放出機構部11は、通気口7を覆った状態で外装体3の外側から外装体3の外面に貼り付けられた円形のフィルム状のガス放出弁25と、ガス放出弁25の一部に重ねて貼り付けられた一対の補強部材26とを有している。
【0068】
外装体3の外面には、ガス放出弁25の裏面(下面)の全体が接着剤により貼り付けられている。ガス放出弁25の裏面の接着剤が塗布される部分は、少なくとも通気口7の周囲を全周にわたって囲む部分とされる。ガス放出弁25を構成する材料としては、第1のガス放出機構部10のガス放出弁16を構成する材料等が用いられる。
【0069】
各補強部材26は、通気口7の位置を避けてガス放出弁25上に貼り付けられている。各補強部材26を構成する材料としては、例えば第1のガス放出機構部10の筐体14を構成する材料等が用いられる。ガス放出弁16は、各補強部材26が貼り付けられた部分で曲がりにくく(弾性変形しにくく)、各補強部材26から外れた部分で曲がりやすく(弾性変形しやすく)なっている。
【0070】
緩衝空間12の圧力が上昇して所定値を超えると、ガス放出弁16が緩衝空間12内のガスに押されることにより、各補強部材26が貼り付けられていないガス放出弁16の部分が外装体3の外面から剥離する。ガス放出弁16の外装体3の外面からの剥離により、ガス放出弁16と外装体3との間にガスの抜け道が生じ、緩衝空間12のガスが外部空間9へ放出される。外部空間9へのガスの放出により緩衝空間12の圧力が下がっても、ガス放出弁16は元の位置に戻ることはなく、ガスの抜け道が塞がることはない。即ち、第2のガス放出機構部11では、外部空間9へ放出する方向へガスが通された後に、緩衝空間12(内部空間8)へのガスの進入を阻止する機能が失われる。他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0071】
このような蓄電素子では、第1のガス放出機構部10が、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後にも内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を維持する復元可能な逆止弁装置とされ、第2のガス放出機構部11が、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後に内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置とされているので、破裂弁装置である第2のガス放出機構部11が動作するまでは、内部空間8の密閉性を高く維持することができる。即ち、通常、破裂弁装置による密閉性は逆止弁装置による密閉性よりも高いので、第2のガス放出機構部11を破裂弁装置とすることにより、第2のガス放出機構部11が動作するまでの内部空間8の密閉性を高くすることができる。
【0072】
また、破裂弁装置である第2のガス放出機構部11が外装体3の外側から外装体3の外面に取り付けられているので、動作した後の第2のガス放出機構部11の修復を容易にすることができる。
【0073】
また、筐体14と気液分離膜15との間に弁内空間31を形成するスペーサ32が筐体14と気液分離膜15との間に介在しているので、シール剤22で濡れることによる気液分離膜15のガス透過特性の劣化を抑制することができる。
【0074】
実施の形態3.
図7は、この発明の実施の形態3による蓄電素子を示す正面図である。また、図8は、図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。図において、外装体3は、蓄電素子本体2を収容する外装体本体3aと、外装体本体3aから突出し、圧力調整装置4が設けられた外装体突出部3bとを有している。
【0075】
外装体3は、幅の狭い突出部を持つ2枚のシート(例えばアルミラミネートシート等)を重ね合わせ、各シートの外縁部を熱融着することにより作製されている。外装体3では、各シートの突出部が重なった部分が外装体突出部3bとなっている。通気口7は、外装体突出部3bに設けられている。
【0076】
ここで、図9は、図7の外装体3を構成する2枚のシートの熱融着部分を示す正面図である。図9に示すように、熱融着部分41は、外装体本体3a及び外装体突出部3bのそれぞれの外縁部に形成されている。圧力調整装置4は、外装体突出部3bにおける熱融着部分41の内側に設けられている。
【0077】
圧力調整装置4は、図8に示すように、蓄電素子本体2が存在する内部空間8と外装体3の外部空間9との間に配置されている。また、圧力調整装置4は、外装体3の内部空間8から外装体3の外部空間9へのガスの放出を許容しながら、外装体3の外部空間9から外装体3の内部空間8へのガスの進入を阻止することにより、外装体3の内部空間8の圧力を調整する。
【0078】
図10は、図8の圧力調整装置4を示す拡大断面図である。図において、圧力調整装置4は、外装体3の内側(内部空間8側)から通気口7を覆う第1のガス放出機構部10と、外装体3の外側(外部空間9側)から通気口7を覆う第2のガス放出機構部11と、外装体3の内側に配置され、第1のガス放出機構部10よりも蓄電素子本体2に近い位置に配置された第3のガス放出機構部42とを有している。即ち、圧力調整装置4は、第1のガス放出機構部10、第2のガス放出機構部11及び第3のガス放出機構部42により3重構造とされた圧力調整装置となっている。圧力調整装置4は、内部空間8からのガスが第3のガス放出機構部42、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11を順次通ることにより内部空間8から外部空間9へのガスの放出を許容し、かつ外部空間9から内部空間8へのガスの進入を第1〜第3のガス放出機構部10,11,42のそれぞれで阻止する。
【0079】
第1のガス放出機構部10と第2のガス放出機構部11との間には、第1のガス放出機構部10及び第2のガス放出機構部11で仕切られた緩衝空間12が形成されている。第3のガス放出機構部42と第1のガス放出機構部10との間には、第3のガス放出機構部42及び第1のガス放出機構部10で仕切られた緩衝空間43が形成されている。第2のガス放出機構部11は外部空間9と緩衝空間12との間に配置され、第1のガス放出機構部10は緩衝空間12と緩衝空間43との間に配置され、第3のガス放出機構部42は緩衝空間43と内部空間8との間に配置されている。従って、第2のガス放出機構部11は外気に接した状態で配置され、第1及び第3のガス放出機構部10,42は外気との接触を避けて配置されている。
【0080】
第1のガス放出機構部10は、緩衝空間43から緩衝空間12へのガスの通過(即ち、内部空間8から外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容し、かつ緩衝空間12から緩衝空間43へのガスの通過(即ち、外部空間9から内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する逆止機能を持つガス放出機構部である。また、第1のガス放出機構部10は、緩衝空間43から緩衝空間12へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)にも緩衝空間43へのガスの進入(即ち、内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する復元可能な逆止弁装置とされている。
【0081】
第1のガス放出機構部10の気液分離膜15と筐体本体19との間には、気液分離膜15と筐体本体19との間に弁内空間31を形成する環状のスペーサ32が介在している。気液分離膜15の外周部は、筐体本体19に熱融着により接合されている。気液分離膜15の外周部を除く部分は、スペーサ32により筐体本体19から離れた状態が維持されている。これにより、電解液が気液分離膜15を透過した場合であっても、電解液が弁内空間31に溜まり、気液分離膜15のガスの透過経路が確保される。
【0082】
筐体本体19の内面とガス放出弁16との間には、ガス放出弁16が弁筐体通気孔13を閉じているときに筐体本体19とガス放出弁16との間の隙間を密閉する環状のシール部材44が介在している。筐体本体19とガス放出弁16との間の隙間の密閉は、ガス放出弁16がシール部材44を介して筐体本体19の内面に押し付けられることにより保たれる。シール部材44としては、例えばゴム製や樹脂製のO−リング等が用いられる。第1のガス放出機構部10の他の構成は、実施の形態1の第1のガス放出機構部10の構成と同様である。
【0083】
第2のガス放出機構部11の構成は、実施の形態1の第2のガス放出機構部11の構成と同様である。従って、第2のガス放出機構部11は、第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12から外部空間9へのガスの通過(即ち、内部空間8から外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容し、かつ外部空間9から緩衝空間12へのガスの通過(即ち、外部空間9から内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する逆止機能を持つガス放出機構部である。また、第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12から外部空間9へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)にも内部空間8へのガスの進入を阻止する復元可能な逆止弁装置とされている。
【0084】
第3のガス放出機構部42は、内部空間8から緩衝空間43へのガスの通過(即ち、内部空間8から外部空間9へ放出する方向へのガスの通過)を許容し、かつ緩衝空間43から内部空間8へのガスの通過(即ち、外部空間9から内部空間8へ進入する方向へのガスの通過)を阻止する逆止機能を持つガス放出機構部である。また、第3のガス放出機構部42は、内部空間8から緩衝空間43へガスを放出した後(即ち、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後)に緩衝空間43(内部空間8)へのガスの進入を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置とされている。
【0085】
第3のガス放出機構部42は、外装体3間に挟まれた状態で内部空間8と緩衝空間43との間を仕切るガス放出弁45を有している。ガス放出弁45は、ガス放出弁45を挟む外装体3のそれぞれの内面に熱融着や接着剤等により貼り付けられている。ガス放出弁45は、図9に示すように、外装体突出部3bの根元に配置されている。外装体3内の空間は、ガス放出弁45により緩衝空間43と内部空間8とに分割されている。ガス放出弁45と外装体3の内面との接合強度は、外装体3の耐圧強度よりも低く設定されている。従って、ガス放出弁45は、外装体3の内部空間8の圧力が上昇したときに、外装体3が破損するよりも先に外装体3の内面から剥離するようになっている。ガス放出弁45を構成する材料としては、例えば第2のガス放出機構部11のガス放出弁25を構成する材料等が用いられ、樹脂やゴム、金属等が用いられる。
【0086】
第3のガス放出機構部42のガス放出弁45と外装体3の内面とを熱融着により接合する場合には、ガス放出弁45と外装体3との間に介在物を介在させてもよい。介在物の材料としては、例えばエチレンに酢酸ビニルを共重合させたエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等の易接着性樹脂が挙げられる。一般に異種材料の熱融着による接合は困難であるが、ガス放出弁45と外装体3との間にEVAの介在物を介在させることで熱融着が可能となる。具体的には、PE樹脂にPP樹脂をブレンドしたフィルムをガス放出弁45とし、PP樹脂層を外装体3の内層とした例が挙げられる。外装体3の内層材及びガス放出弁45の材料のそれぞれとEVAとの界面の熱融着強度は、外装体3の耐圧強度よりも弱くなる。
【0087】
内部空間8の圧力が上昇すると、外装体3が膨れて、外装体3の内面が、第3のガス放出機構部42のガス放出弁45から離れる方向への圧力を受ける。内部空間8の圧力がさらに上昇して所定値を超えると、外装体3の内面がガス放出弁45から剥離する。外装体3の内面がガス放出弁45から剥離すると、ガス放出弁45と外装体3との間に隙間が生じ、生じた隙間を通して内部空間8と緩衝空間43とが互いに連通する。これにより、内部空間8から緩衝空間43へ(即ち、外部空間9へ放出する方向へ)ガスが通され、内部空間8の圧力が下がる。ガス放出弁45は、内部空間8の圧力が下がっても、外装体3の内面に再び貼り付くことはない。従って、ガス放出弁45と外装体3との間の隙間が塞がることはない。即ち、第3のガス放出機構部42では、外部空間9へ放出する方向へガスが通された後に、内部空間8へのガスの進入を阻止する機能が失われる。他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0088】
このような蓄電素子1では、第3のガス放出機構部42が第1のガス放出機構部10よりも蓄電素子本体2に近い位置に配置されており、第1のガス放出機構部10と第3のガス放出機構部42との間に緩衝空間43が形成されているので、第1〜第3のガス放出機構部10,11,42により圧力調整装置4を3重構造の圧力調整装置とすることができる。これにより、外気との接触を避けて配置されたガス放出機構部の数を増加させることができ、圧力調整装置4の機能の低下をさらに長期間にわたって抑制することができる。また、第3のガス放出機構部42が、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後に内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置とされているので、第3のガス放出機構部42が動作するまでの内部空間8の密閉性を高く維持することができる。
【0089】
実施の形態4.
図11は、この発明の実施の形態4による蓄電素子を示す斜視図である。また、図12は、図11の圧力調整装置を示す分解斜視図である。さらに、図13は、図11のXIII-XIII線に沿った断面図である。
【0090】
図において、第1のガス放出機構部10は、実施の形態1の第1のガス放出機構部10と同様に、内部空間8から緩衝空間12へガスを放出した後にも内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を維持する復元可能な逆止弁装置とされている。これに対して、第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12から外部空間9へガスを放出した後に緩衝空間12へのガスの進入を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置とされている。
【0091】
第1のガス放出機構部10は、弁筐体通気孔13が設けられた筐体14と、弁筐体通気孔13を覆う気液分離膜15と、筐体14内に設けられ、各弁筐体通気孔13を開閉可能な板状のガス放出弁16と、筐体14内に設けられ、弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を付勢する押さえ部材17と、筐体14に設けられ、押さえ部材17を筐体14内に保持する外れ止め蓋51とを有している。
【0092】
外装体3は、金属製の容器とされている。外装体3に開けられた通気口7の内周部には、雌ねじ部が設けられている。筐体14は、弁筐体通気孔13が設けられた筐体本体部52と、筐体本体部52から突出し、通気口7の雌ねじ部に螺合する雄ねじ部が外周部に設けられた円筒状の取付用突起部53とを有している。筐体14は、取付用突起部53が通気口7に螺合されることにより、外装体3の内面に取り付けられている。外装体3の内面と筐体本体部52との間には、O−リング(シール部材)54が介在している。これにより、外装体3の内面と筐体14との間がシールされている。
【0093】
ここで、筐体14を構成する材料は、実施の形態1の筐体14の材料と同様でありプラスチック材料や金属材料が用いられる。外装体3を構成する材料は、100kPa以上に内圧が上昇しても破壊されることなく、それ自体で形状が維持できる材料とされている。外装体3を構成する材料としては、例えばステンレスやアルミニウムなどの金属材料や、プラスチック材料が用いられている。
【0094】
気液分離膜15は、その外周部のみが筐体本体部52に貼り付けられている。気液分離膜15の外周部を除く部分は、筐体14から離れて配置されている。これにより、気液分離膜15の外周部を除く部分と筐体本体部52との間には、弁内空間31が形成されている。また、内部空間8の圧力が上昇して電解液が気液分離膜15を透過した場合であっても、弁内空間31に電解液が溜まることにより気液分離膜15のガスの透過経路が確保され、気液分離膜15のガス透過特性の劣化が抑制される。気液分離膜15としては、実施の形態1の気液分離膜15と同様の膜が用いられている。
【0095】
外れ止め蓋51は、筐体本体部52の内面に設けられた窪みに外周部が嵌め込まれた状態で、筐体本体部52の内側の空間に保持されている。筐体14の内側の空間は、外れ止め蓋51で仕切られている。外れ止め蓋51には、筐体14内で外れ止め蓋51により仕切られた両側の空間を連通する開口部20が設けられている。緩衝空間12は、通気口7、筐体本体部52及び取付用突起部53のそれぞれの内側の空間を含んでいる。外れ止め蓋51を構成する材料としては、実施の形態1の筐体蓋18を構成する材料と同様のものが用いられる。この例では、外れ止め蓋51を構成する材料が硬質ゴムとされている。
【0096】
押さえ部材(押さえばね)17は、外れ止め蓋51とガス放出弁16との間に縮められた状態で配置されている。これにより、押さえ部材17は、外れ止め蓋51で押さえられた状態で、筐体14の内側の弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を押さえている。この例では、押さえ部材17がばねとされている。また、ガス放出弁16を構成する材料としては、ゴム等が用いられている。
【0097】
第2のガス放出機構部11は、通気口7を覆った状態で外装体3の外側から外装体3の外面に溶接により取り付けられたガス放出弁25を有しており、外装体3を密閉している。ガス放出弁25は、他の部分よりも厚さが薄くされた薄肉部25aを有する金属箔とされている。ガス放出弁25の薄肉部には、破裂の起点となる十字形の窪み部(破裂起点部)55が設けられている。薄肉部25a及び破裂起点部55は、金属箔のプレス成型により形成されている。破裂起点部55の形状は、十字形に限定されず、破裂起点部55が破裂の起点となるのであればどのような形状であってもよい。
【0098】
緩衝空間12の圧力が上昇して所定値を超えると、ガス放出弁25の破裂起点部54を起点にガス放出弁25が破られて、緩衝空間12のガスが外部空間9へ放出される。外部空間9へのガスの放出により緩衝空間12の圧力が下がっても、ガス放出弁25は元に戻ることはなく、ガスの抜け道が塞がることはない。即ち、第2のガス放出機構部11では、外部空間9へ放出する方向へガスが通された後に、緩衝空間12(内部空間8)へのガスの進入を阻止する機能が失われる。他の動作は、実施の形態2と同様である。
【0099】
このような蓄電素子1では、第1のガス放出機構部10が、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後にも内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を維持する復元可能な逆止弁装置とされ、第2のガス放出機構部11が、外部空間9へ放出する方向へガスを通した後に内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置とされているので、破裂弁装置である第2のガス放出機構部11が動作するまでは、内部空間8の密閉性を高く維持することができる。即ち、通常、破裂弁装置による密閉性は逆止弁装置による密閉性よりも高いので、第2のガス放出機構部11を破裂弁装置とすることにより、第2のガス放出機構部11が動作するまでの内部空間8の密閉性を高くすることができる。
【0100】
また、破裂弁装置である第2のガス放出機構部11が外装体3の外側から外装体3の外面に取り付けられているので、動作した後の第2のガス放出機構部11の修復が可能である。
【0101】
実施の形態5.
図14は、この発明の実施の形態5による蓄電素子を示す斜視図である。また、図15は、図14の圧力調整装置を示す分解斜視図である。さらに、図16は、図14のXVI-XVI線に沿った断面図である。
【0102】
図において、第1のガス放出機構部10は、内部空間8から緩衝空間12へガスを放出した後にも内部空間8へのガスの進入を阻止する機能を維持する復元可能な逆止弁装置とされている。第2のガス放出機構部11は、緩衝空間12から外部空間9へガスを放出した後にも緩衝空間12へのガスの進入を阻止する機能を維持する復元可能な逆止弁装置とされている。
【0103】
第1のガス放出機構部10は、弁筐体通気孔13が設けられ外装体3の外側から通気口7に一部が挿入された筐体14と、外装体3と筐体14との間に介在するパッキン(密閉部材)61と、外装体3の内側に設けられ、弁筐体通気孔13を覆う気液分離膜15と、筐体14内に設けられ、弁筐体通気孔13を開閉可能な球状のガス放出弁16と、筐体14内に設けられ、弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を付勢する押さえ部材17と、筐体14内に設けられ、押さえ部材17を筐体14内に保持する外れ止め蓋51とを有している。従って、第1のガス放出機構部10は、一部が外装体3の内側に設けられ、残りの部分が外装体3の外側に設けられている。
【0104】
パッキン61を構成する材料としては、例えば樹脂又はゴム等が用いられている。パッキン61は、円筒部と、円筒部の一端部から外側へ鋭角に張り出したシールリップ部61aと、円筒部の他端部から外側へ垂直に張り出した係止部61bとを有している。パッキン61は、シールリップ部61a及び係止部61bで外装体3を挟んだ状態で通気口7に嵌められる。パッキン61が通気口7に嵌められた状態では、シールリップ部61aが外装体3の内面に接触して電解液の流出が防止されている。
【0105】
筐体14は、外装体3の外側に配置される筐体本体部62と、筐体本体部62から突出し、パッキン61を介して通気口7内に挿入される円筒状の取付用突起部63とを有している。弁筐体通気孔13は、取付用突起部63に設けられている。取付用突起部63の外周部には、通気口7の内周部に設けられた雌ねじ部にパッキン61を介して螺合される雄ねじ部が設けられている。
【0106】
筐体14は、通気口7に嵌められたパッキン61内に取付用突起部63をねじ込むことにより外装体3に取り付けられている。パッキン61は、取付用突起部63の雄ねじ部及び通気口7の雌ねじ部により弾性変形して外装体3と筐体14との隙間を埋めることにより、外装体3と筐体14との間を密閉している。また、外装体3の外面と筐体本体部62との間には、外装体3の外面と筐体本体部62との隙間を密閉するO−リング(シール部材)64が介在している。即ち、外装体3と筐体14との隙間は、パッキン61及びO−リング64により二重にシールされている。これにより、外装体3と筐体14との隙間から内部空間8の電解液やガスが漏れることが遮断される。
【0107】
ここで、筐体14を構成する材料は、実施の形態1の筐体14の材料と同様でありプラスチック材料や金属材料が用いられる。外装体3を構成する材料は、100kPa以上に内圧が上昇しても破壊されることなく、それ自体で形状が維持できる材料とされている。外装体3を構成する材料としては、例えばステンレスやアルミなどの金属材料や、プラスチック材料が用いられている。
【0108】
気液分離膜15は、外周部のみがパッキン61に熱融着で貼り付けられている。気液分離膜15の外周部を除く部分は、筐体14から離れて配置されている。これにより、気液分離膜15の外周部を除く部分と筐体14の取付用突起部63との間には、弁内空間31が形成されている。また、内部空間8の圧力が上昇して電解液が気液分離膜15を透過した場合であっても、弁内空間31に電解液が溜まることにより気液分離膜15のガスの透過経路が確保され、気液分離膜15のガス透過特性の劣化が抑制される。気液分離膜15としては、実施の形態1の気液分離膜15と同様の膜が用いられている。
【0109】
外れ止め蓋51は、筐体本体部62の内面に設けられた窪みに外周部が嵌め込まれた状態で、筐体本体部62の内側の空間に保持されている。筐体14の内側の空間は、外れ止め蓋51で仕切られている。外れ止め蓋51には、筐体14内で外れ止め蓋51により仕切られた両側の空間を連通する開口部20が設けられている。外れ止め蓋51を構成する材料としては、実施の形態1の筐体蓋18を構成する材料と同様のものが用いられる。この例では、外れ止め蓋51を構成する材料が硬質ゴムとされている。
【0110】
押さえ部材(押さえばね)17は、外れ止め蓋51とガス放出弁16との間に縮められた状態で配置されている。これにより、押さえ部材17は、外れ止め蓋51で押さえられた状態で、筐体14の内側の弁筐体通気孔13を閉じる方向へガス放出弁16を押さえている。この例では、押さえ部材17がばねとされている。また、ガス放出弁16を構成する材料としては、ゴム等が用いられている。
【0111】
第2のガス放出機構部11の構成は、実施の形態1の第2のガス放出機構部11の構成と同様である。第2のガス放出機構部11の筐体24は、筐体本体部62に取り付けられている。また、第2のガス放出機構部11は、外装体3の外側から弁筐体通気孔13を覆った状態で筐体本体部62に取り付けられている。即ち、第2のガス放出機構部11は、外装体3の外側に設けられた第1のガス放出機構部10の部分に、弁筐体通気孔13を覆った状態で取り付けられている。緩衝空間12は、筐体24の開口部23、筐体本体部62及び取付用突起部63のそれぞれの内側の空間を含んでいる。
【0112】
なお、実施の形態2及び3では、気液分離膜15と筐体14との間にスペーサ32が介在しているが、実施の形態1のように、気液分離膜15のガス透過特性が維持されるのであれば、スペーサ32はなくてもよい。
【0113】
また、実施の形態1では、気液分離膜15が筐体14に直接貼り付けられているが、実施の形態1の気液分離膜15と筐体14との間にスペーサを介在させて、気液分離膜15と筐体14との間に弁内空間を形成してもよい。
【0114】
第1のガス放出機構部10の構成は、逆止機能を有するガス放出機構部の構成であればよく、実施の形態1〜5の構成に限定されるものではない。また、実施の形態1、3及び5の第2のガス放出機構部11の構成は、逆止機能を有するガス放出機構部の構成であればよく、実施の形態1、3、5の構成に限定されるものではない。さらに、実施の形態2及び4の第2のガス放出機構部11の構成は、一度ガスを放出するとガスの進入を阻止する機能を失う復元不可能な破裂弁装置の構成であればよく、実施の形態2及び4の構成に限定されるものではない。
【0115】
また、実施の形態3の圧力調整装置4では、第1〜第3のガス放出機構部10,11,42により3重構造の圧力調整装置とされているが、複数のガス放出機構部により4重構造以上の圧力調整装置としてもよい。
【0116】
また、実施の形態1〜3では、外装体3に設けられた通気口7が第2のガス放出機構部11により外装体3の外側から覆われているが、圧力調整装置4が複数のガス放出機構部により2重構造以上となっていれば、通気口7が外装体3の外部空間9に露出していてもよい。
【0117】
以下、実施の形態1〜5のそれぞれに対応する実施例1〜5と、実施例1〜5と比較するための比較例1とについて説明する。なお、実施例1〜5及び比較例1の蓄電素子は、電気二重層キャパシタとされている。
【0118】
実施例1.
実施の形態1に対応する実施例1の蓄電素子1では、内層の材料にPP樹脂を用い、外層の材料にナイロンを用いたアルミラミネートフィルムにより外装体3を形成した。
【0119】
実施例1の第1のガス放出機構部10では、ガス放出弁16の材料にエチレンプロピレンゴムを、押さえばね17にコイル状のばね鋼を、筐体蓋18の材料にPP樹脂を、筐体本体19の材料にPP樹脂を、液状のシール剤22にメチルフェニルシリコーンオイルをそれぞれ用いた。また、シール剤22に用いられるメチルフェニルシリコーンオイルの動粘度を50mm2/sとした。
【0120】
また、実施例1の第1のガス放出機構部10では、緩衝空間12と内部空間8との差圧が20kPaになると弁筐体通気孔13が開くように設計した。気液分離膜15としては、平均孔径が0.2μmのPTFE多孔フィルムを用いた。これにより、気液分離膜15に対する電解液の透過圧力は100kPaとなった。
【0121】
実施例1の第2のガス放出機構部11では、筐体24の材料にPET樹脂を、ガス放出弁25にPETフィルムを、補強部材26の材料にPET樹脂を、液状のシール剤29にメチルフェニルシリコーンオイルをそれぞれ用いた。また、シール剤29に用いられるメチルフェニルシリコーンオイルの動粘度を1000mm2/sとした。また、実施例1の第2のガス放出機構部11では、緩衝空間12の圧力が外部空間9よりも5kPa高くなると動作するように設計した。
【0122】
蓄電素子本体2は、セルロース製のセパレータと、アルミ集電箔に活性炭を塗布した電極を扁平形に巻回することにより作製した。また、四級アンモニウム塩をプロピレンカーボネートに溶解して作製した電解液を蓄電素子本体2に含浸させた状態で、蓄電素子本体2を外装体3内に内包して密封することにより実施例1の蓄電素子1を作製した。
【0123】
実施例2.
実施の形態2に対応する実施例2の第1のガス放出機構部10では、ガス放出弁16にPETフィルム、押さえ部材17の材料にPP樹脂、筐体14の材料にPP樹脂、液状のシール剤22にメチルフェニルシリコーンオイルをそれぞれ用いた。また、シール剤22に用いられるメチルフェニルシリコーンオイルの動粘度を1000mm2/sとした。
【0124】
また、実施例2の第1のガス放出機構部10では、緩衝空間12と内部空間8との差圧が10kPaになると弁筐体通気孔13が開くように設計した。気液分離膜15としては、平均孔径が0.1μmのPTFE多孔フィルムを用いた。これにより、気液分離膜15に対する電解液の透過圧力は150kPaとなった。
【0125】
実施例2の第2のガス放出機構部11では、ガス放出弁25に円板状のアルミニウム箔、補強部材26の材料にPET樹脂を用いた。また、実施例2の第2のガス放出機構部11では、緩衝空間12の圧力が外部空間9よりも20kPa高くなると動作するように設計した。その他の構成は実施例1と同様とした。
【0126】
実施例3.
実施の形態3に対応する実施例3の第3のガス放出機構部42では、PP樹脂及びPE樹脂をブレンドしたフィルムをガス放出弁45に用いた。また、外装体3のPP樹脂で構成された内層とガス放出弁45とを熱融着により接合することにより、第3のガス放出機構部42を構成した。また、実施例3の第3のガス放出機構部42では、内部空間8と緩衝空間43との差圧が10kPaになると、ガス放出弁45が外装体3の内面から剥離して開放されるように設計した。
【0127】
実施例3の第1のガス放出機構部10では、ガス放出弁16にSUS(ステンレス)板を用いた。また、実施例3の第1のガス放出機構部10では、緩衝空間12と内部空間8との差圧が30kPaになると弁筐体通気孔13が開くように設計した。実施例3の第1のガス放出機構部10の他の構成は、実施例1の第1のガス放出機構部10の構成と同様である。
【0128】
実施例3の第2のガス放出機構部11では、緩衝空間12の圧力が外部空間9よりも10kPa高くなると動作するように設計した。実施例3の第2のガス放出機構部11の他の構成は、実施例1の第2のガス放出機構部11の構成と同様である。その他の構成も実施例1と同様である。
【0129】
実施例4.
実施の形態4に対応する実施例4の第1のガス放出機構部10では、ガス放出弁16の材料にフッ素ゴム板を用いた。押さえ部材17にコイル状のばね鋼を、外れ止め蓋51の材料にPP樹脂を、筐体14の材料にPP樹脂を、液状のシール剤22にメチルフェニルシリコーンオイルをそれぞれ用いた。また、シール剤22に用いられるメチルフェニルシリコーンオイルの動粘度を3000mm2/sとした。
【0130】
また、実施例4の第1のガス放出機構部10では、緩衝空間12と内部空間8との差圧が50kPaになると弁筐体通気孔13が開くように設計した。気液分離膜15としては、平均孔径が0.1μmのPTFE多孔フィルムを用い、インパルスウェルダーを用いた熱融着により気液分離膜15と筐体本体14を接合した。Oーリング44には、フッ素ゴムを使用した。筐体14は、取付用突起部52の外周部に設けた雄ねじ部を通気口7の内周部に設けた雌ねじ部に螺合することにより、外装体3に固定した。
【0131】
実施例4の外装体3にはステンレス容器を使用し、第2のガス放出機構部11のガス放出弁25にはステンレス箔を使用した。ガス放出弁25は、外装体3に溶接により接合した。破裂弁であるガス放出弁25は、緩衝空間12の圧力が外部空間9よりも200kPaだけ高くなると薄く加工した薄肉部25aで破裂するように設計した。
【0132】
蓄電素子本体2は、セルロース製のセパレータと、アルミ集電箔に活性炭を塗布した電極を扁平形に巻回することにより作製した。また、四級アンモニウム塩をプロピレンカーボネートに溶解して作製した電解液を蓄電素子本体2に含浸させた状態で、蓄電素子本体2を外装体3内に内包して密封することにより実施例4の蓄電素子1を作製した。
【0133】
実施例5.
実施の形態5に対応する実施例5の第1のガス放出機構部10では、ガス放出弁16の材料にフッ素ゴムボールを用いた。また、押さえ部材17にコイル状のばね鋼を、外れ止め蓋51の材料にPP樹脂を、筐体14の材料にステンレスを、パッキン61の材料にPTFE樹脂をそれぞれ使用した。
【0134】
また、実施例5の第1のガス放出機構部10では、緩衝空間12と内部空間8との差圧が20kPaになると弁筐体通気孔13が開くように設計した。気液分離膜15としては、平均孔径が0.1μmのPTFE多孔フィルムを用い、インパルスウェルダーを用いた熱融着により気液分離膜15とパッキン61とを接合した。Oーリング64の材料には、ブチルゴムを使用した。筐体14は、取付用突起部62の雄ねじ部を通気口7の雌ねじ部にパッキン61を介して螺合することにより、外装体3に固定した。このとき、パッキン61が外装体3と取付用突起部62との間で弾性変形して密着し、外装体3内の密閉性が確保される。
【0135】
実施例5の第2のガス放出機構部11では、筐体24の材料にPET樹脂を、ガス放出弁25にアルミラミネートフィルムを、補強部材26の材料にPET樹脂を、液状のシール剤29にメチルフェニルシリコーンオイルをそれぞれ用いた。また、シール剤29に用いられるメチルフェニルシリコーンオイルの動粘度を3000mm2/sとした。また、実施例5の第2のガス放出機構部11では、緩衝空間12の圧力が外部空間9よりも10kPa高くなると動作するように設計した。その他の構成は実施例4と同様とした。
【0136】
比較例1.
比較例1としては、実施例2の蓄電素子1のうち、圧力調整装置4が第1のガス放出機構部10のみを有するものを用いた。
【0137】
比較例1の蓄電素子では、内層の材料にPP樹脂を用い、外層の材料にナイロンを用いたアルミラミネートフィルムにより外装体3を形成した。
【0138】
比較例1の第1のガス放出機構部10では、筐体14の材料にPP樹脂、ガス放出弁16にPETフィルム、押さえ部材17の材料にPP樹脂、液状のシール剤22にシリコーンオイルをそれぞれ用いた。また、シール剤22に用いられるシリコーンオイルの動粘度を1mm2/sとした。
【0139】
また、比較例1の第1のガス放出機構部10では、緩衝空間12と内部空間8との差圧が5kPaになると弁筐体通気孔13が開くように設計した。比較例1の気液分離膜15としては、平均孔径が0.1μmのPTFE多孔フィルムを用いた。これにより、気液分離膜15に対する電解液の透過圧力は150kPaとなった。
【0140】
比較例1の蓄電素子本体2は、セルロース製のセパレータと、アルミ集電箔に活性炭を塗布した電極を扁平形に巻回することにより作製した。また、四級アンモニウム塩をプロピレンカーボネートに溶解して作製した100gの電解液を蓄電素子本体2に含浸させた状態で、蓄電素子本体2を外装体3内に内包して密封することにより比較例1の蓄電素子を作製した。
【0141】
次に、温度85℃で相対湿度85%RHの環境(実験環境)に、実施例1〜5及び比較例1のそれぞれの蓄電素子(電気二重層キャパシタ)を0V放電状態で1000時間置いた後、実施例1〜5及び比較例1のそれぞれの蓄電素子について電解液への水分の混入量を測定した。また、温度85℃で相対湿度85%RHの環境(実験環境)に、実施例1〜5及び比較例1のそれぞれの蓄電素子(電気二重層キャパシタ)を2V充電状態で1000時間置いた後、実施例1〜5及び比較例1のそれぞれの蓄電素子について電解液への水分の混入量を測定した。
【0142】
電解液への水分の混入量は、カールフィッシャ水分計(MKA−520:京都電子製)で電解液中の水分濃度を測定し、測定した水分濃度と電解液重量とに基づいて算出した。電解液の実験前の水分量は、16ppmであった。
【0143】
図17は、温度85℃で相対湿度85%RHの環境(実験環境)に0V放電状態の蓄電素子を1000時間置いた場合の電解液への水分混入量と、同じ実験環境に2V充電状態の蓄電素子を1000時間置いた場合の電解液への水分混入量とを、実施例1〜5及び比較例1のそれぞれで比較して示す表である。図11に示すように、電解液への水分混入量は、実施例1〜5の蓄電素子のほうが比較例1の蓄電素子よりも少なくなっていることが分かる。即ち、実施例1〜5の蓄電素子では、比較例1の蓄電素子よりも、電解液への水分の混入が抑制されていることが分かる。これにより、実施例1〜5の蓄電素子では、比較例1の蓄電素子よりも、圧力調整装置4の機能の低下が長期間にわたって抑制されることが確認された。
【符号の説明】
【0144】
1 蓄電素子、2 蓄電素子本体、3 外装体、4 圧力調整装置、5 正極集電端子、6 負極集電端子、7 通気口(貫通口)、8 内部空間、9 外部空間、10 第1のガス放出機構部、11 第2のガス放出機構部、12 緩衝空間、13 弁筐体通気孔、14,24 筐体、15 気液分離膜、16,25,45 ガス放出弁、17 押さえばね(押さえ部材)、18 筐体蓋、19 筐体本体、20,23 開口部、21 押さえ部材、22,29 シール剤、26 補強部材、27 ガス通路域、28 接着剤、31 弁内空間、32 スペーサ、33 突起部、34 板部、35 押付部、41 熱融着部、42 第3のガス放出機構部、43 緩衝空間、51 外れ止め蓋、52,62 筐体本体部、53,63 取付用突起部、54,64 O−リング(シール部材)、55 破裂起点部、61 パッキン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液が含浸された蓄電素子本体、
上記蓄電素子本体を密封する外装体、及び
上記外装体の内側に設けられた第1のガス放出機構部と、上記外装体の外側に設けられた第2のガス放出機構部とを有し、上記蓄電素子本体が存在する上記外装体の内部空間からのガスが各上記ガス放出機構部を順次通ることにより上記内部空間から外部空間へのガスの放出を許容し、かつ上記外部空間から上記内部空間へのガスの進入を各上記ガス放出機構部で阻止する圧力調整装置
を備え、
各上記ガス放出機構部間には、各上記ガス放出機構部で個別に仕切られた緩衝空間が形成されていることを特徴とする蓄電素子。
【請求項2】
上記第1のガス放出機構部は、一部が上記外装体の内側に設けられ、残りの部分は上記外装体の外側に設けられており、
上記第2のガス放出機構部は、上記外装体の外側に設けられた上記第1のガス放出機構部の部分に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
上記第1のガス放出機構部は、上記蓄電素子本体が存在する上記内部空間に面する気液分離膜を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
上記第1のガス放出機構部は、電解液に耐性を持つ材料を使用したガス放出弁を有し、
上記第2のガス放出機構部は、耐水性の材料を使用したガス放出弁を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子。
【請求項5】
上記圧力調整装置は、上記外部空間へ放出する方向へガスを通した後に上記内部空間へのガスの進入を阻止する機能を失う上記ガス放出機構部と、上記外部空間へ放出する方向へガスを通した後にも上記内部空間へのガスの進入を阻止する機能を維持する上記ガス放出機構部とを有していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項1】
電解液が含浸された蓄電素子本体、
上記蓄電素子本体を密封する外装体、及び
上記外装体の内側に設けられた第1のガス放出機構部と、上記外装体の外側に設けられた第2のガス放出機構部とを有し、上記蓄電素子本体が存在する上記外装体の内部空間からのガスが各上記ガス放出機構部を順次通ることにより上記内部空間から外部空間へのガスの放出を許容し、かつ上記外部空間から上記内部空間へのガスの進入を各上記ガス放出機構部で阻止する圧力調整装置
を備え、
各上記ガス放出機構部間には、各上記ガス放出機構部で個別に仕切られた緩衝空間が形成されていることを特徴とする蓄電素子。
【請求項2】
上記第1のガス放出機構部は、一部が上記外装体の内側に設けられ、残りの部分は上記外装体の外側に設けられており、
上記第2のガス放出機構部は、上記外装体の外側に設けられた上記第1のガス放出機構部の部分に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
上記第1のガス放出機構部は、上記蓄電素子本体が存在する上記内部空間に面する気液分離膜を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
上記第1のガス放出機構部は、電解液に耐性を持つ材料を使用したガス放出弁を有し、
上記第2のガス放出機構部は、耐水性の材料を使用したガス放出弁を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子。
【請求項5】
上記圧力調整装置は、上記外部空間へ放出する方向へガスを通した後に上記内部空間へのガスの進入を阻止する機能を失う上記ガス放出機構部と、上記外部空間へ放出する方向へガスを通した後にも上記内部空間へのガスの進入を阻止する機能を維持する上記ガス放出機構部とを有していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−156489(P2012−156489A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252270(P2011−252270)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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