説明

蓄電組立体

【課題】発生したガスを適切に排出して蓄電組立体の安全性を向上させる。
【解決手段】蓄電ユニット11は蓄電セル20とセルケース21とによって構成され、セルケース21はケース本体22とケースカバー23とによって構成される。蓄電セル20のセル容器24には、融着幅の広い封止部30aと融着幅の狭いガス排出部30bとが形成される。また、セルケース21には封止部30aに対向する凸部31a,32aとガス排出部30bに対向する凹部31b,32bとが設けられる。これにより、封止部30aは凸部31a,32aによって押圧される一方、ガス排出部30b上には凹部31b,32bによって所定の空間が確保されるため、過充電等によって蓄電セル20内にガスが発生した場合には、封止部30aを封止させながらガス排出部30bだけを剥離させることができ、予め設定された経路から確実にガスを排出することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス排出部が形成されるセル容器を備えた蓄電組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動力源として電動モータのみを搭載するようにした電気自動車や、動力源としてエンジンおよび電動モータを搭載するようにしたハイブリッド自動車が開発されている。電気自動車やハイブリッド自動車にはバッテリやキャパシタ等の蓄電デバイスを直列に接続した蓄電モジュールが搭載されており、これらの蓄電モジュールから電動モータに対して電力が供給されている。
【0003】
ところで、蓄電モジュールに対して過度な電圧が印加された場合や、蓄電モジュールの温度が過度に上昇した場合には、蓄電デバイス内の電解液が分解してガスを発生させてしまうおそれがある。そこで、蓄電デバイスの容器に安全弁等のガス排出部を設けることにより、発生したガスを外部に排出して容器破壊を防止するようにした蓄電デバイスが提案されている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2004−22338号公報
【特許文献2】特開2006−236605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蓄電デバイスの容器に対して単にガス排出部を設けるようにしただけでは、ガス排出部からガスを適切に排出することが困難となるおそれがある。たとえば、特許文献2に記載された蓄電デバイスのように、一対のラミネートフィルムに熱融着処理を施して製造されたセル容器にあっては、セル温度が過度に上昇すると融着部位の封止強度が低下することから、ガス排出部よりも先に封止強度が低下した部位からガスが放出されてしまうおそれがある。このように、想定外の部位からガスが放出された場合には、放出されたガスを収集して適切に処理することが困難となるため、安全面からもガスの放出経路を適切に制御することが重要となっている。
【0005】
本発明の目的は、セル容器内で発生したガスをガス排出部から確実に排出させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓄電組立体は、正極および負極が収容され、外縁に封止部とこれよりも封止強度の低いガス排出部とが形成されるセル容器と、前記セル容器に取り付けられ、前記封止部を押さえて封止状態を保持する凸部が形成される保持部材とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の蓄電組立体は、前記保持部材は前記ガス排出部上に所定の空間を確保する凹部を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の蓄電組立体は、前記保持部材は前記ガス排出部に連通する排気口を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の蓄電組立体は、前記保持部材を加圧して前記凸部を前記封止部に押し付ける加圧板を備え、前記保持部材と前記加圧板との間に加圧力を分散させるバネ部材を組み付けることを特徴とする。
【0010】
本発明の蓄電組立体は、前記セル容器は一対のフィルム材の外縁を接合して形成されることを特徴とする。
【0011】
本発明の蓄電組立体は、前記保持部材によって前記セル容器の外縁が折り曲げられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セル容器に封止部とこれよりも封止強度の低いガス排出部を形成し、このセル容器に対して凸部が形成される保持部材を取り付けるようにしたので、セル容器の封止部を保持部材の凸部によって押さえることができ、封止部の封止状態を保持することが可能となる。これにより、セル容器内でガスが発生した場合には、封止部の封止状態を保ちながらガス排出部だけを剥離させることができるため、予め設定された経路から確実にガスを排出して適切に処理することが可能となり、蓄電組立体の安全性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の一実施の形態である蓄電組立体としての蓄電モジュール10を示す斜視図であり、図2は蓄電モジュール10の構造を示す分解斜視図である。図1および図2に示すように、蓄電モジュール10は、複数の蓄電ユニット11を積層して形成される蓄電積層体12と、この蓄電積層体12の両端に配置される一対のエンドプレート(加圧板)13,14とを有している。また、蓄電ユニット11や一方のエンドプレート13に形成される貫通孔15,13aにはボルト部材16が挿入されており、このボルト部材16の先端部は他方のエンドプレート14に形成されるネジ孔14aに締め付けられている。また、蓄電積層体12とエンドプレート14との間には板バネ部材(バネ部材)17が組み付けられており、蓄電モジュール10の四隅に配置されるボルト部材16の締付力、つまりボルト部材16の締め付けに伴って蓄電ユニット11に作用する加圧力が、挟み込まれた板バネ部材17を介して分散されるようになっている。なお、図示する場合には、蓄電モジュール10の側面に正極端子18や負極端子19が露出した状態となっているが、これらの端子18,19は図示しないバスバー等によって直列に接続された後に図示しないカバー等によって覆われることになる。
【0014】
図3は蓄電ユニット11の構造を示す分解斜視図であり、図4は蓄電セル20の構造を示す分解斜視図である。まず、図3に示すように、蓄電ユニット11は、ラミネート型の蓄電セル20と、この蓄電セル20に取り付けられる保持部材としてのセルケース21とを有しており、セルケース21はケース本体22とケースカバー23とによって構成されている。また、図4に示すように、蓄電セル20は、セル容器24を構成する一対のラミネートフィルム(フィルム材)25を備えており、ラミネートフィルム25内には電極積層ユニット26および電解液が収容されている。この蓄電セル20を製造する際には、電極積層ユニット26を挟み込むように一対のラミネートフィルム25が設置され、ラミネートフィルム25の下辺(外縁)25aおよび側辺(外縁)25bに対して熱融着処理が施される。続いて、袋状となったラミネートフィルム25に対して所定量の電解液が注入された後に、ラミネートフィルム25の上辺(外縁)25cに対して熱融着処理が施され、ラミネートフィルム25の外縁25a〜25cが全周に渡って封止されることになる。なお、電極積層ユニット26はセパレータを介して積層される正極と負極とによって構成されており、正極の集電体にはラミネートフィルム25から突き出る正極端子18が溶接され、負極の集電体にはラミネートフィルム25から突き出る負極端子19が溶接されている。
【0015】
図5は蓄電セル20の封止状態を示す説明図である。図5にハッチングで示すように、ラミネートフィルム25に対して施される熱融着処理により、ラミネートフィルム25の外縁25a〜25cには全周に渡って封止帯30が形成されている。この封止帯30は、上辺25cの両端部、側辺25bおよび下辺25aに渡って形成される封止部30aと、上辺25cのほぼ中央部に形成されるガス排出部30bとによって構成されている。この封止部30aは所定値以上の融着幅で形成される一方、ガス排出部30bは封止部30aよりも狭い融着幅で形成されており、ガス排出部30bの封止強度は封止部30aの封止強度よりも低くなるように設定されている。すなわち、過充電等によって電解液が分解されてガスが発生し、ガスによって蓄電セル20内の圧力が上昇した場合には、封止部30aよりも先にガス排出部30bを剥離させることが可能となり、開口するガス排出部30bからガスを排出してセル容器24の破れを防止することが可能となっている。
【0016】
続いて、セルケース21による蓄電セル20の保持構造について説明する。ここで、図6(A)は蓄電ユニット11を示す正面図であり、図6(B)は(A)のI−I線に沿って蓄電ユニット11を示す断面図であり、図6(C)は(A)のII−II線に沿って蓄電ユニット11を示す断面図である。まず、図3に示すように、ケース本体22およびケースカバー23にはラミネートフィルム25の外縁25a〜25cを押さえる枠部材31,32が設けられており、この枠部材31,32は封止部30aに対向する凸部31a,32aとガス排出部30bに対向する凹部31b,32bとによって構成されている。また、図2、図3および図6(A)に示すように、ケース本体22およびケースカバー23にはそれぞれ排気部33a,33bが形成されており、これらの排気部33a,33bを組み合わせることによってセルケース21には排気口33が形成されている。このようなセルケース21を蓄電セル20に対して組み付けることにより、図6(B)に示すように、ラミネートフィルム25の封止部30aはセルケース21の凸部31a,32aによって押さえられる一方、図6(C)に示すように、ラミネートフィルム25のガス排出部30b上にはセルケース21の凹部31b,32bによって所定の空間が確保された状態となる。さらに、図6(C)に示すように、ラミネートフィルム25のガス排出部30bはセルケース21の排気口33内に配置された状態となっている。
【0017】
ここで、図7はセルケース21によるラミネートフィルム25の押圧状態を示す説明図である。前述したように、セルケース21に設けられる枠部材31,32は、封止部30aに対向する凸部31a,32aとガス排出部30bに対向する凹部31b,32bとによって構成されている。したがって、図1および図2に示すように、蓄電ユニット11を積層してボルト部材16を締め付けたときには、図7にハッチングで示すように、セルケース21の凸部31a,32aによって封止部30aだけが押圧された状態となり、凹部31b,32bによってガス排出部30b上には所定の空間が確保された状態となる。これにより、過充電等によって蓄電セル20内にガスが発生した場合には、封止部30aの封止状態を維持しながらガス排出部30bだけを剥離させることができ、予め設定された経路から確実にガスを排出することが可能となる。すなわち、想定外の経路からガスを排出してしまうことが無いため、確実にガスを収集して処理することができ、蓄電モジュール10の安全性を向上させることが可能となる。
【0018】
しかも、蓄電積層体12とエンドプレート14との間に板バネ部材17を挟み込むようにしたので、ボルト部材16の締め付け力がセルケース21の四隅に集中することがなく、互いに突き当てられた各セルケース21の合わせ面に締め付け力を分散させることが可能となる。これにより、セルケース21の凸部31a,32aによってラミネートフィルム25の封止部30aを押圧する際にも、封止部30aを均一に押さえることができるため、封止部30a全体の封止状態を確実に保持することが可能となる。なお、図示する場合には、1枚の板バネ部材17を挟み込むようにしているが、これに限られることはなく、複数枚の板バネ部材17を挟み込むようにしても良い。
【0019】
続いて、図8は図1のA−A線に沿って蓄電モジュール10を示す断面図である。まず図6(C)に示すように、排気口33の一端側には嵌合凹部33cが形成されており、排気口33の他端側には嵌合凸部33dが形成されている。図8に示すように、複数の蓄電ユニット11を積層して蓄電モジュール10を形成する際には、嵌合凹部33cと嵌合凸部33dとが接続されて蓄電モジュール10内に1本の排気通路34が形成されている。また、一方のエンドプレート13には排気通路34に連通する排気口35が形成されており、この排気口35に対して図示しない排気ダクトが接続されるようになっている。また、図6(A)〜(C)に示すように、ケース本体22は凹状の断面形状を備えており、ケース本体22の凹みにケースカバー23が嵌合する構造となっている。さらに、ケース本体22の凹み部分の高さ寸法はラミネートフィルム25の高さ寸法よりも小さく形成されるため、蓄電セル20をケース本体22とケースカバー23とによって挟んだときには、ラミネートフィルム25の上辺25cおよび下辺25aが一方のエンドプレート13に向けて折り曲げられた状態となっている。
【0020】
このように、蓄電セル20のガス排出部30bに連通する排気口33をセルケース21に形成するとともに、セルケース21を積層する際には排気口33を連結して1本の排気通路34を形成するようにしたので、各蓄電セル20のガス排出部30bから排出されたガスを確実に収集することができ、収集したガスを排気ダクトから外部に放出する等の適切な処理を施すことが可能となる。また、蓄電モジュール10内に排気通路34を形成するようにしたので、蓄電モジュール10の外形を平らに形成して蓄電モジュール10を重ねて設置することが可能となり、蓄電モジュール10を用いたシステムを設計する際の自由度を高めることが可能となる。さらに、蓄電モジュール10内に排気通路34を形成するようにしたので、各蓄電ユニット11からのガスを収集するための排気通路34を別に組み付ける必要が無く、蓄電モジュール10の部品点数を削減することも可能となる。さらに、ラミネートフィルム25の上辺25cを一方のエンドプレート13側、つまり排気通路34の出口に向けて折り曲げるようにしたので、図8に矢印Aで示すように、ガス排出部30bから排出されるガスを排気通路34の流れに沿って滑らかに案内することが可能となる。しかも、ラミネートフィルム25の外縁25a,25cを折り曲げることにより、蓄電モジュール10の外形寸法を小さくすることが可能となり、蓄電モジュール10のエネルギー密度を向上させることも可能となる。
【0021】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、前述の説明では、複数の蓄電ユニット11を積層した蓄電モジュール10に対して本発明を適用しているが、これに限られることはなく、1つの蓄電ユニット11が組み込まれた蓄電モジュールに対して本発明を適用するようにしても良い。また、ラミネートフィルム25を融着する際の融着幅を調整することにより、封止部30aとガス排出部30bとの封止強度を設定するようにしているが、これに限られることはなく、熱融着処理を施す際の処理温度を調整したり、部分的にラミネートフィルム25の材質を変更したりすることにより、封止部30aとガス排出部30bとの封止強度を別個に設定しても良い。さらに、本発明が適用される蓄電モジュール10に組み込む蓄電セル20としては、様々な二次電池やキャパシタを採用することが可能である。例えば、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタ等の蓄電セル20が組み込まれた蓄電モジュール10に対して本発明を有効に適用することが可能である。
【0022】
なお、本発明の蓄電モジュール10は、電気自動車やハイブリッド自動車等の駆動用蓄電源または補助用蓄電源として使用できるだけでなく、例えば、電動自転車や電動車椅子等の駆動用蓄電源、太陽光発電装置や風力発電装置等に用いられる蓄電源、携帯機器や家庭用電気器具等に用いられる蓄電源として好適に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態である蓄電組立体としての蓄電モジュールを示す斜視図である。
【図2】蓄電モジュールの構造を示す分解斜視図である。
【図3】蓄電ユニットの構造を示す分解斜視図である。
【図4】蓄電セルの構造を示す分解斜視図である。
【図5】蓄電セルの封止状態を示す説明図である。
【図6】(A)は蓄電ユニットを示す正面図であり、(B)は(A)のI−I線に沿って蓄電ユニットを示す断面図であり、(C)は(A)のII−II線に沿って蓄電ユニットを示す断面図である。
【図7】セルケースによるラミネートフィルムの押圧状態を示す説明図である。
【図8】図1のA−A線に沿って蓄電モジュールを示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 蓄電モジュール(蓄電組立体)
13 エンドプレート(加圧板)
14 エンドプレート(加圧板)
17 板バネ部材(バネ部材)
21 セルケース(保持部材)
24 セル容器
25 ラミネートフィルム(フィルム材)
25a 下辺(外縁)
25b 側辺(外縁)
25c 上辺(外縁)
30a 封止部
30b ガス排出部
31a 凸部
31b 凹部
32a 凸部
32b 凹部
33 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極が収容され、外縁に封止部とこれよりも封止強度の低いガス排出部とが形成されるセル容器と、
前記セル容器に取り付けられ、前記封止部を押さえて封止状態を保持する凸部が形成される保持部材とを有することを特徴とする蓄電組立体。
【請求項2】
請求項1記載の蓄電組立体において、
前記保持部材は前記ガス排出部上に所定の空間を確保する凹部を備えることを特徴とする蓄電組立体。
【請求項3】
請求項1または2記載の蓄電組立体において、
前記保持部材は前記ガス排出部に連通する排気口を備えることを特徴とする蓄電組立体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電組立体において、
前記保持部材を加圧して前記凸部を前記封止部に押し付ける加圧板を備え、前記保持部材と前記加圧板との間に加圧力を分散させるバネ部材を組み付けることを特徴とする蓄電組立体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電組立体において、
前記セル容器は一対のフィルム材の外縁を接合して形成されることを特徴とする蓄電組立体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電組立体において、
前記保持部材によって前記セル容器の外縁が折り曲げられることを特徴とする蓄電組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−21067(P2009−21067A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181991(P2007−181991)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】