説明

蓄電装置およびこれを備える自動車

【課題】衝撃が加わったときに電池セルの損傷を抑制する電池モジュールを提供する。
【解決手段】電池モジュールは、電気を蓄えるための電池セル33と、電池セル33を保持するための電池ホルダ1とを備える。電池モジュールは、支持部材25と、支持部材25に電池ホルダ1を固定するためのボルト51とを備える。電池ホルダ1は、脚部1bを有する。電池ホルダ1は、ボルト51が上下方向に脚部1bに挿入されることにより支持部材25に固定されている。電池ホルダ1は、側方からの衝撃によりボルト51が回動する軌跡と電池セル33とが離れるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置およびこれを備える自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置は、電気を蓄えるための蓄電機器を備える。たとえば、蓄電装置には、蓄電機器としての単一の電池セルを備えるもののほかに、複数の電池セルを備える電池モジュールがある。電池モジュールは、複数の電池セルが拘束部材により一体化されている。電池モジュールは、複数の電池セルを含むために、大きな電流を取り出したり高い電圧を取り出したりすることができる。
【0003】
近年、電動機を駆動源として用いる電気自動車や、電動機とその他の駆動源とを組み合わせたいわゆるハイブリッド電気自動車が実用化されている。電池モジュールは、たとえば、このような自動車に搭載される。蓄電機器としては、たとえば、繰り返し充放電が可能なニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池またはリチウムイオン電池に代表される二次電池などが用いられる。
【0004】
特開2003−346759号公報においては、電池と、電池に接続された導電部材と、導電部材と向かい合うように配置され、変形することにより導電部材に与えられる衝撃を吸収する緩衝部とを備える電池システムが開示されている。
【特許文献1】特開2003−346759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池モジュールにおいては、複数の電池セルとケースとを備えるものがある。ケースは、たとえば、電池セル同士の間に配置されている電池ホルダと両側の端部に配置されているエンドプレートとを含む。電池セルと電池ホルダとが交互に積層され、積層方向の両側の端部にエンドプレートが配置されることにより積層体が構成されている。電池セル、枠部材およびエンドプレートの積層体は、たとえば、拘束部材により一体化されている。この積層体は、ケースを支持するための支持部材にボルトなどによって固定されている。
【0006】
従来の技術の電池モジュールにおいては、電池モジュールの側方から衝撃があったときに、ケースと支持部材とを固定するボルトが回動して、ボルトが電池セルに接触する虞があった。ボルトが電池セルに接触することにより電池セルが損傷する虞があるという問題があった。
【0007】
たとえば、電池モジュールが自動車に搭載された場合において、電池セルのケースとケースを支持するための支持部材とを固定するボルトが上下方向に挿入される場合がある。自動車同士の衝突などにより、側方から衝撃が加わった場合においては、ボルトが移動する。このような場合において、ボルトが電池セルに接触して、電池セルを損傷する虞があるという問題があった。
【0008】
本発明は、衝撃が加わったときに蓄電機器の損傷を抑制する蓄電装置およびこれを備えた自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づく蓄電装置は、電気を蓄えるための蓄電機器と、上記蓄電機器を保持するためのケースとを備える。上記ケースを支持するための支持部材と、上記支持部材に上記ケースを固定するための固定具とを備える。上記固定具は、棒状に形成されている棒状部分を有する。上記ケースは、上記棒状部分の少なくとも一部が上下方向に挿入されることにより上記支持部材に固定されている。上記ケースは、側方からの衝撃により上記固定具が回動する軌跡と上記蓄電機器とが離れているように形成されている。
【0010】
上記発明において好ましくは、上記固定具は、上記ケースの下側から上側に向かって挿入されている。上記固定具は、上端が上記蓄電機器の下端よりも下側に位置するように配置されている。
【0011】
上記発明において好ましくは、上記固定具は、上記ケースの下側から上側に向かって挿入されている。上記固定具は、上端が上記蓄電機器の下端と同じ高さに位置する、または上記下端よりも上側に位置するように配置されている。上記固定具は、上記軌跡と上記蓄電機器とが離れているように、上記蓄電機器の側方に距離をあけて配置されている。
【0012】
上記発明において好ましくは、上記ケースは、電気的に絶縁性を有する材料で形成されている。上記ケースは、上記軌跡と上記蓄電機器との距離のうち最小の距離が、上記固定具と上記蓄電機器との絶縁が保てる距離になるように形成されている。
【0013】
本発明に基づく自動車は、上述の蓄電装置を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、衝撃が加わったときに蓄電機器の損傷を抑制する蓄電装置およびこれを備えた自動車を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
図1から図8を参照して、本発明に基づく実施の形態1における蓄電装置および自動車について説明する。本実施の形態における蓄電装置は、蓄電機器としての電池セルを複数含む電池モジュールである。
【0016】
図1は、本実施の形態における電池モジュールの概略分解斜視図である。本実施の形態における電池モジュールは、自動車に搭載されている。本実施の形態における電池モジュールは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能な2次電池により駆動するモータとを動力源とするハイブリッド自動車に搭載されている。
【0017】
本実施の形態における電池モジュールは、蓄電機器としての電池セル33を備える。電池モジュールは、複数の電池セル33が積層された積層体を備える。複数の電池セル33は、電池セル33の厚み方向に積層されている。矢印89は、電池セル33の積層方向を示す。本実施の形態における電池モジュールは、電池セル33が2列で積層されている。
【0018】
本実施の形態における電池セル33は、平板状に形成されている。電池セル33は、角型の電池セルである。本実施の形態における電池セル33は、リチウムイオン電池を含む。
【0019】
電池モジュールは、電池セル33のケースとしての電池ホルダ1を備える。電池モジュールは、電池セル33のケースとしてのエンドプレート40を備える。本実施の形態における積層体は、電池ホルダ1およびエンドプレート40を含む。積層体は、電池セル33の積層方向において、電池セル33と電池ホルダ1とが交互に積層されている。電池ホルダ1は、電池セル33の積層方向において、互いに隣り合う電池セル33同士の間に配置されている。電池ホルダ1は、電池セル33を挟み込んでいる。
【0020】
電池ホルダ1は、電気的に絶縁性を有する材料から形成されている。電池ホルダ1は、積層方向に隣り合う電池セル33同士の間を電気的に絶縁している。本実施の形態における電池ホルダ1は、樹脂で形成されている。電池ホルダ1は、たとえば、ポリプロピレン(PP)、ナイロン、またはポリブチレンテレフタレート(PBT)等の樹脂材料から形成されている。また、電池ホルダは、各種の充填材、添加剤を含んだ樹脂材料等から形成されていても構わない。
【0021】
エンドプレート40は、積層体の積層方向の両端に配置されている。本実施の形態におけるエンドプレート40は、板状に形成されている。本実施の形態におけるエンドプレート40は、樹脂によって形成されている。エンドプレート40は、電池セル33および電池ホルダ1を、積層方向の両側から挟み込むように配置されている。
【0022】
本実施の形態における電池モジュールは、拘束部材としての拘束バンド42を備える。拘束バンド42は、板状に形成されている。拘束バンド42は、長手方向を有するように形成されている。拘束バンド42は、長手方向が電池セル33の積層方向に延びるように配置されている。本実施の形態における拘束バンド42は、強度が十分に確保できるように厚さおよび幅が調整されている。
【0023】
拘束バンド42は、エンドプレート40同士を互いに締結するように配置されている。拘束バンド42は、リベット50によってエンドプレート40に固定されている。拘束バンド42は、電池セル33を積層方向に拘束するように配置されている。複数の電池ホルダ1および電池セル33は、拘束バンド42によって一体的に保持されている。
【0024】
電池ホルダ1は、排ガス流路部30を有する。排ガス流路部30は、電池セル33から排出されたガスを流通させる排ガス流路を構成している。排ガス流路部30は、凸形状に形成されている。排ガス流路部30は、電池セル33の積層方向に沿って延びている。排ガス流路部30は、内部が空洞になるように形成されている。それぞれの電池ホルダ1の排ガス流路部30は、互いに連通するように配置されている。排ガス流路部30の端部には、排気管31が接続されている。
【0025】
本実施の形態における電池モジュールは、電池セル33を含む積層体を支持するための支持部材25を備える。支持部材25は、板状に形成されている。支持部材25は、複数の挿通穴25aを有する。本実施の形態における電池モジュールは、固定具としてのボルト51を備える。
【0026】
支持部材25の挿通穴25aは、ボルト51を挿通することができるように形成されている。積層体は、矢印91に示すように、支持部材25の表面に載置され、ボルト51により支持部材25に固定される。電池ホルダ1およびエンドプレート40は、ボルト51により支持部材25に固定される。電池モジュールは、支持部材25が車体に固定されている。
【0027】
エンドプレート40は、下側に向かって突出する脚部40bを有する。電池ホルダ1は、下側に向かって突出する脚部1bを有する。拘束バンド42は、矢印97に示す幅方向において、脚部40b同士の間に配置されている。拘束バンド42は、矢印97に示す幅方向において、脚部1b同士の間に配置されている。
【0028】
エンドプレート40の脚部40bの内部には、ボルト51と螺着するインサートナットが配置されている。電池ホルダ1の脚部1bの内部には、ボルト51と螺着するインサートナットが配置されている。
【0029】
図2に、本実施の形態における電池モジュールの端部の概略分解斜視図を示す。図3に本実施の形態における電池モジュールの第1の概略断面図を示す。図3は、図1におけるIII−III線に対応する矢視断面図である。図3は、拘束バンドに沿って切断したときの概略断面図である。
【0030】
図1から図3を参照して、本実施の形態における電池セル33は、端子33aを有する。端子33aは、板状に形成されている。端子33aは、電池セル33の端面から突出するように形成されている。電池ホルダ1は、端子33aが互いに隣り合う電池ホルダ1同士の間から露出するように形成されている。
【0031】
電池セル33は、互いに対向する一対の表面33bを有する。表面33bは、電池セル33の複数の表面のうち最も大きな面積を有する面積最大面である。複数の電池セル33は、それぞれの表面33b同士が互いにほぼ平行になるように形成されている。
【0032】
電池ホルダ1は、ベース部1aを含む。ベース部1aは、リブ21を有する。リブ21は、線状に延びるように形成されている。リブ21は、ベース部1a本体の表面から突出するように形成されている。リブ21は、互いに間隔を空けて複数形成されている。
【0033】
リブ21は、電池セル33を冷却するための冷却通路を形成するために形成されている。リブ21は、電池セル33の表面33bに当接する。電池セル33は、一の電池ホルダ1のリブ21と、対向する電池ホルダ1のベース部1a本体の表面とに押圧されることによって電池セル33の積層方向に挟持されている。
【0034】
電池ホルダ1は、開口部16,17を有する。また、エンドプレート40は、開口部16,17を有する。本実施の形態における開口部16,17は、電池ホルダ1またはエンドプレート40の側面を切欠くことにより形成されている。リブ21同士の間には、冷却風を流通させるための冷却風の流路100が形成されている。流路100は、開口部16,17に連通している。
【0035】
本実施の形態における電池モジュール10は、矢印90に示すように、冷却空気が開口部16から取り込まれ、冷却風の流路100を通って開口部17から排出される。電池セル33は、電池セル33の表面33bに沿って空気が流れることにより冷却される。電池セル33は、流路100を通る空気により冷却される。
【0036】
本実施の形態における積層体は、拘束バンド42の端部に挟み込まれるように固定されている。拘束バンド42は、積層体の上面および下面に配置されている。
【0037】
本実施の形態における拘束バンド42は、リベット50によってエンドプレート40に固定されている。リベット50は、矢印89に示す積層体の積層方向に延びるように配置されている。リベット50は、積層体の積層方向に挿入されている。
【0038】
図4に、本実施の形態における電池モジュールの第2の概略断面図を示す。図4は、図1におけるIV−IV線に対応する矢視断面図である。図4は、エンドプレートの脚部および電池ホルダの脚部に沿って切断したときの概略断面図である。
【0039】
図1から図4を参照して、エンドプレート40は、上下方向のうち下側の端部に形成された脚部40bを有する。また、脚部40bは、矢印97に示す幅方向の両側の端部に形成されている。脚部40bは、エンドプレート40の本体から下側に向かって突出するように形成されている。
【0040】
電池ホルダ1は、エンドプレート40と同様に、上下方向のうち下側の端部に形成された脚部1bを有する。また、脚部1bは、矢印97に示す幅方向の両側の端部に形成されている。脚部1bは、電池ホルダ1の本体から下側に向かって突出するように形成されている。
【0041】
エンドプレート40の脚部40bの内部には、挿入穴40cが形成されている。挿入穴1cの内部には、インサートナット53が配置されている。また、電池ホルダ1の脚部1bの内部には、挿入穴1cが形成されている。挿入穴1cの内部には、インサートナット53が配置されている。それぞれのボルト51は、それぞれのインサートナット53に固定されている。
【0042】
本実施の形態においては、エンドプレート40または電池ホルダ1を樹脂成型した後に挿入穴40c,1cを形成する。形成した挿入穴40c,1cに対して、後からインサートナット53を挿入している。インサートナット53の取付方法としては、この形態に限られず、たとえば、エンドプレートや電池ホルダが樹脂で形成されている場合には、樹脂成型のときにインサートナットを埋込んでも構わない。
【0043】
本実施の形態における固定具としてのボルト51は、棒状部分55を有する。棒状部分55は、ねじ山が形成されている部分である。本実施の形態における電池ホルダ1およびエンドプレート40は、下側から上側に向かってボルト51が挿入されることにより、支持部材25に固定されている。
【0044】
図5に、本実施の形態における電池ホルダの脚部の部分の拡大概略断面図を示す。図5は、電池モジュールの幅方向に平行な面で切断したときの概略断面図である。
【0045】
本実施の形態における電池ホルダ1は、ボルト51の上端が電池セル33の下端よりも下側に位置するように形成されている。電池ホルダ1は、ボルト51の先端51bが、電池セル33の下面33cよりも下側に位置するように形成されている。図5を参照して、本実施の形態における脚部1bの下面と電池セル33の下面33cとの脚部寸法Xは、次の式(1)で表わされる。
【0046】
(脚部寸法X)=(インサートナットの高さc)+(ボルト突出最大寸法e)+(ボルトの先端と挿入穴との間隙f)+(電池ホルダの厚さg)・・・(1)
ここで、「ボルト突出最大寸法」は、ボルトの棒状部分がナットから突出する寸法のうち、製造誤差を考慮した最大の寸法である。ボルト突出最大寸法eは、以下の式(2)で表わされる。
【0047】
(ボルト突出最大寸法e)=(ボルト首下寸法a)−(支持部材の厚さb)−(インサートナットの高さc)+(ボルト最大公差d)・・・(2)
ここで、「ボルト最大公差」とは、ボルトの製造時における公差のうち最大の寸法である。
【0048】
本実施の形態における電池ホルダ1は、矢印92に示すように電池モジュールの側方からの衝撃が加わったときに変形する。電池ホルダ1が変形することにより、矢印93に示すようにボルト51が回動する。ボルト51の回動中心は、たとえば、電池ホルダ1の脚部1bの底面1dとボルト51の中心軸との交点である。
【0049】
電池ホルダ1は、衝撃によりボルト51が回動する軌跡と電池セル33とが離れるように形成されている。このため、側方から衝撃があった場合においても、ボルト51が、電池セル33に接触することを防止することができる。この結果、電池セル33が、ボルト51により損傷を受けることを防止することができる。
【0050】
また、本実施の形態においては、ボルト51は、上端としての先端51bが電池セル33の下端としての下面33cよりも下側に位置するように配置されているため、側方から衝撃があった場合においても、ボルト51が電池セル33に接触することを防止することができる。さらに、固定具としてのボルトを電池セルの真下に配置することができ、電池モジュールの幅方向の長さを小さくすることができる。
【0051】
さらに、本実施の形態においては、側方から衝撃を受けたときに、ボルト51の回動する軌跡と電池セル33との距離が、ボルト51と電池セル33との絶縁が保てる距離になるように形成されている。本実施の形態においては、絶縁物としての電池ホルダ1がボルト51と電池セル33との間に配置されている。電池ホルダ1の厚さgは、電池セル33とボルト51との絶縁を保てる厚さに形成されている。電池ホルダ1の厚さgは、ボルト51が回動する時の軌跡と電池セル33との距離とが最も小さくなったとき、ボルト51と電池セル33との間に介在する電池ホルダ1の厚さである。本実施の形態においては、電池モジュールに対して側方から衝撃が加わったときにも、ボルト51と電池セル33との間の絶縁を保つことができる。また、電池モジュールに対して下側または斜め下側から衝撃が加わったときにおいても、ボルト51と電池セル33との間の絶縁を保つことができる。
【0052】
エンドプレート40の脚部40bにおいても、電池ホルダ1の脚部1bと同様の構成を有するために、同様の作用および効果を得ることができる。
【0053】
図6に、本実施の形態における比較例としての電池ホルダの脚部の拡大概略断面図を示す。図6は、電池モジュールの幅方向に平行な面で切断したときの概略断面図である。
【0054】
比較例としての電池モジュールは、電池ホルダ2を備える。電池ホルダ2は、脚部2bを有する。電池ホルダ2は、脚部2bに挿入穴2cを有する。挿入穴2cの内部には、インサートナット53が配置されている。ボルト51により、電池ホルダ2が支持部材25に固定されている。比較例の電池モジュールにおいては、ボルト51の先端51bが電池セル33の下面33cよりも高い位置になるように形成されている。
【0055】
比較例の電池モジュールにおいては、矢印92に示すように、側方から衝撃が加わった場合においては、ボルト51が回動する。ボルト51は、たとえば、回動中心71を中心にして矢印93に示すように回動する。ここで、比較例におけるボルト51の回動中心71は、電池ホルダ2の脚部2bの底面2dと、ボルト51の中心軸75が交わる点である。
【0056】
比較例の電池モジュールにおいては、ボルト51が回動することにより、ボルト51aに示す位置になる。ボルト51の先端51bが、電池セル33と接触する。すなわち、衝撃によりボルト51が回動する軌跡と電池セル33とが重なるために、ボルト51と電池セル33とが接触する虞がある。この結果、比較例の電池モジュールにおいては、電池セル33が損傷する虞がある。
【0057】
しかしながら、図5を参照して、本実施の形態の電池モジュールにおいては、衝撃によりボルト51が回動する軌跡と電池セル33とが離れているために、ボルト51が電池セル33を損傷することを防止できる。特に、本実施の形態においては、ボルト51の先端51bが電池セル33の下面33cよりも下側に位置するため、側方から衝撃が加わったときに、電池セル33が損傷することを防止することができる。
【0058】
図7に、本実施の形態における第1の自動車の模式断面図を示す。本実施の形態における自動車は、車体61を備える。自動車は、前タイヤ62および後タイヤ63を備える。自動車は、ハンドル64を備える。矢印94に示す向きが自動車の前側である。
【0059】
本実施の形態における電池モジュール10は、支持部材が車体61に固定されている。電池モジュール10は、車体61の後部に配置されている。電池モジュール10は、矢印89に示す電池セルの積層方向が、車体61の前後方向とほぼ平行になるように配置されている。固定具としてのボルト51は、前後方向に並ぶように配置されている。
【0060】
第1の自動車においては、たとえば、矢印95に示すように車体61の側方から衝撃があった場合においては、電池モジュール10の側方から衝撃が加わる。しかしながら、本実施の形態においては、このような衝撃があった場合においても、ボルト51による電池セルの損傷を防止することができる。
【0061】
図8に、本実施の形態における第2の自動車の模式断面図を示す。第2の自動車においては、電池モジュール10は、車体61の後部に配置されている。矢印89に示す電池セルの積層方向が、車体61の幅方向とほぼ平行になるように配置されている。ボルト51は、車体61の幅方向に並ぶように配置されている。
【0062】
第2の自動車においては、たとえば、矢印96に示すように車体61の後方から衝撃があった場合においては、電池モジュール10の側方から衝撃が加わる。しかしながら、本実施の形態においては、このような衝撃があった場合においても、ボルト51による電池セルの損傷を防止することができる。
【0063】
本実施の形態においては、ケースとしてのエンドプレートおよび電池ホルダが、すべてボルトによって支持部材に固定されているが、この形態に限られず、ケースの少なくとも一部が固定具によって支持部材に固定されていれば構わない。
【0064】
本実施の形態においては、固定具としてボルトが配置されているが、この形態に限られず、固定具としては棒状に形成されている部分を含んでいれば構わない。たとえば、樹脂成型のときに、ねじ山が形成された棒部材が電池ホルダの内部に埋込まれていても構わない。
【0065】
また、本実施の形態においては、固定具がケースの下側から挿入されているが、この形態に限らず、固定具はケースの上側から下側に向かって挿入されていても構わない。すなわち、ケースの上側に支持部材が配置され、固定具によってこの支持部材にケースが固定されていても構わない。
【0066】
本実施の形態におけるエンドプレートおよび電池ホルダは、樹脂で形成されているが、この形態に限られず、任意の材質で形成することができる。また、本実施の形態におけるエンドプレートは平板状に形成されているが、この形態に限られず、任意の形状を採用することができる。
【0067】
本実施の形態における電池モジュールは、複数の蓄電機器が2列で積層されているが、この形態に限られず、電池モジュールは、蓄電機器が1列で積層されていても構わない。または、蓄電機器が3列以上で積層されていていも構わない。
【0068】
本実施の形態における蓄電装置は、複数の蓄電機器を含む電池モジュールについて説明を行なったが、この形態に限られず、たとえば、1個の蓄電機器を含む蓄電装置についても本発明を適用することができる。
【0069】
本実施の形態における電池セルは、リチウムイオン電池であるが、この形態に限られず、任意の電池セルを備える電池モジュールに本発明を適用することができる。たとえば、電池セルは、ニッケル水素電池を含んでいてもよい。
【0070】
また、蓄電機器としては、この形態に限られず、電気を蓄える機能を有していればよい。たとえば、蓄電機器は、キャパシタを含んでいてもよい。また、本実施の形態における蓄電機器は、平板状に形成されているが、この形態に限られず、任意の形状の蓄電機器を備える蓄電装置に本発明を適用することができる。
【0071】
本実施の形態においては、2次電池を備えるハイブリッド車両を例に取り上げて説明したが、この形態に限られず、燃料電池と2次電池とを駆動源とする燃料電池ハイブリッド車両(FCHV:Fuel Cell Hybrid Vehicle)または電気自動車(EV:Electric Vehicle)にも本発明を適用することもできる。
【0072】
さらに、本実施の形態においては、自動車に搭載される蓄電装置を例に取り上げて説明したが、この形態に限られず、衝撃を受ける可能性のある任意の蓄電装置に本発明を適用することができる。
【0073】
(実施の形態2)
図9を参照して、本発明に基づく実施の形態2における蓄電装置について説明する。本実施の形態における蓄電装置は、複数の蓄電機器としての電池セルを含む電池モジュールである。本実施の形態においては、ケースの支持部材に固定される部分の構成が実施の形態1と異なる。
【0074】
図9は、本実施の形態における蓄電装置のケースが支持部材に固定される部分の拡大概略断面図である。図9は、電池セルの積層方向に垂直な方向に切断したときの概略断面図である。
【0075】
本実施の形態における電池モジュールは、電池ホルダ4を備える。電池ホルダ4は、底面4dを有する。本実施の形態における電池ホルダ4は、脚部を有さずに、底面4dに挿入穴4cが形成されている。挿入穴4cの内部には、インサートナット54が配置されている。電池ホルダ4は、ボルト52により支持部材25に固定されている。
【0076】
本実施の形態における電池モジュールは、ボルト52の上端としての先端52bが、電池セル33の下端としての下面33cよりも上側に位置するように形成されている。
【0077】
矢印92に示すように、電池モジュールの側方から衝撃があった場合においては、電池ホルダ4が変形して、ボルト52が矢印93に示すように回動する。本実施の形態の電池モジュールにおけるボルト52の回動中心73は、電池ホルダ4の底面4dとボルト52の中心軸75とが交差する点である。
【0078】
ボルト52が、矢印93に示すように回動することにより、ボルト52cの位置になる。ボルト52cの位置は、ボルト52の回動する軌跡と電池セル33との距離が最も小さいときの位置である。
【0079】
本実施の形態における電池モジュールにおいては、ボルト52が回動したときに、ボルト52の軌跡と電池セル33とが離れているように、電池セル33から側方に距離をあけてボルト52が配置されている。本実施の形態における電池モジュールにおいては、側方から衝撃があった場合において、ボルト52が回動して電池セル33と接触することにより、電池セル33が損傷することを抑制できる。
【0080】
また、上記のボルト52が回動する軌跡と電池セルとの距離のうち最小の距離gは、電池セル33とボルト52との電気的な絶縁が保てる距離以上になるように形成されている。この構成により、側方からの衝撃によっても電池セルとボルトとの電気的な絶縁を保つことができる。この電気的な絶縁性を保つための距離は、電池セルの起電力や電池ホルダの絶縁性物質の種類に依存する。
【0081】
固定具が回動するときの回動中心は、上記の電池モジュールの回動中心に限られず、任意の回動中心の蓄電装置に本発明を適用することができる。回動中心は、固定具を挿入している部分の形状等に依存するが、いずれの形状においても本発明を適用することができる。
【0082】
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1と同様であるのでここでは説明を繰返さない。
【0083】
上述のそれぞれの図において、同一または相当する部分には、同一の符号を付している。
【0084】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施の形態1における電池モジュールの概略分解斜視図である。
【図2】実施の形態1における電池モジュールの端部の概略分解斜視図である。
【図3】実施の形態1における電池モジュールの第1の概略断面図である。
【図4】実施の形態1における電池モジュールの第2の概略断面図である。
【図5】実施の形態1における電池ホルダを支持部材に固定する部分の拡大概略断面図である。
【図6】比較例における電池ホルダを支持部材に固定する部分の拡大概略断面図である。
【図7】実施の形態1における第1の自動車の模式断面図である。
【図8】実施の形態1における第2の自動車の模式断面図である。
【図9】実施の形態2における電池モジュールの電池ホルダを支持部材に固定する部分の拡大概略断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1,2,4 電池ホルダ、1a ベース部、1b,2b 脚部、1c,2c,4c 挿入穴、1d,2d,4d 底面、10 電池モジュール、16,17 開口部、21 リブ、22 表面、25 支持部材、25a 挿通穴、30 排ガス流路部、31 排気管、33 電池セル、33a 端子、33b 表面、33c 下面、40 エンドプレート、40b 脚部、40c 挿入穴、42 拘束バンド、50 リベット、51,51a,52,52c ボルト、51b,52b 先端、53,54 インサートナット、55 棒状部分、61 車体、62 前タイヤ、63 後タイヤ、64 ハンドル、71,73 回動中心、75 中心軸、89〜97 矢印、100 流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気を蓄えるための蓄電機器と、
前記蓄電機器を保持するためのケースと、
前記ケースを支持するための支持部材と、
前記支持部材に前記ケースを固定するための固定具と
を備え、
前記固定具は、棒状に形成されている棒状部分を有し、
前記ケースは、前記棒状部分の少なくとも一部が上下方向に挿入されることにより前記支持部材に固定され、
前記ケースは、側方からの衝撃により前記固定具が回動する軌跡と前記蓄電機器とが離れているように形成されている、蓄電装置。
【請求項2】
前記固定具は、前記ケースの下側から上側に向かって挿入され、
前記固定具は、上端が前記蓄電機器の下端よりも下側に位置するように配置されている、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記固定具は、前記ケースの下側から上側に向かって挿入され、
前記固定具は、上端が前記蓄電機器の下端と同じ高さに位置する、または前記下端よりも上側に位置するように配置され、
前記固定具は、前記軌跡と前記蓄電機器とが離れているように、前記蓄電機器の側方に距離をあけて配置されている、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記ケースは、電気的に絶縁性を有する材料で形成され、
前記ケースは、前記軌跡と前記蓄電機器との距離のうち最小の距離が、前記固定具と前記蓄電機器との絶縁が保てる距離になるように形成されている、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の蓄電装置を備える、自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−130374(P2008−130374A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314487(P2006−314487)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000225577)内浜化成株式会社 (21)
【Fターム(参考)】