説明

蓄電装置

【課題】昇圧時に発生する熱の影響による単セルの充放電性能の劣化を抑制することのできる蓄電装置を提供する。
【解決手段】並列に接続された複数の単セルからなる電池モジュールと、この電池モジュールの出力電圧を所望の電圧に変換するためのDC−DCコンバータとを有する。電池はラミネート形電池よりなり、電池モジュールは外装フィルム周縁部を上下方向から挟む支持部材を有する。更に支持部材は枠部材71,72よりなり、冷却のために穴状の開口部7aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単電池(単セル)からなる電池モジュールを備える蓄電装置に関し、特に、電池モジュールの出力電圧を所望の電圧に変換するためのDC−DCコンバータを備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車など、モータから駆動力を得る自動車に搭載する蓄電装置としては、高出力のモータを駆動するために容量および電圧の大きな蓄電装置が要求される。大容量化および高電圧化を実現した蓄電装置として、複数の単セルを直列に接続した電池モジュールを備えるものが、特開平7−131902号公報(以下、特許文献1と称す)に記載されている。単セルには、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池を用いるケースが近年増えている。
【0003】
ところで、電動車両等のモータの出力は、車種によって異なり、その駆動電圧も異なる。したがって、蓄電装置は、種々の車種に適用するために、出力電圧を所望の電圧に変換することができる構造とすることが望ましい。しかし、特許文献1に記載の蓄電装置においては、出力電圧を変更するためには、直列に接続する単セルの数を変更する必要があり、簡単に所望の電圧を得られる構造にはなっていない。このように特許文献1に記載の蓄電装置は、モータの駆動電圧が異なる種々の車種に適用するという観点において柔軟性に欠ける。
【0004】
そこで、出力電圧を所望の電圧に変換することができる蓄電装置が、特開2000−182676号公報(以下、特許文献2と称す)において提案されている。図1に、この蓄電装置の概略構成を示す。図1を参照すると、蓄電装置は、並列に接続された複数の単セルからなる電池モジュール100と、この電池モジュール100の出力電圧を所望の電圧に昇圧するための昇圧回路200とを備える。昇圧回路200によって、電池モジュール100の出力電圧を所望の出力電圧に昇圧することができるため、種々の車種に適用することが可能である。
【0005】
また、特許文献1に記載されたような複数の単セルを直列に接続した電池モジュールを備える蓄電装置において、単セルにリチウムイオン二次電池を使用した電池モジュールでは、充放電を継続して繰り返すと、セル間の容量が変化し、その結果、一部のセルが過充電や過放電の状態となる。この過充電や過放電の状態の発生を抑制するために、通常は、直列に接続されたセル間の容量バランスを調節するためのセルバランス回路が設けられる。セルバランス回路としては、特開2001−178008号公報(以下、特許文献3と称す)や特開平7−50172号公報(以下、特許文献4と称す)に記載されたものが知られている。
【0006】
図2に、セルバランス回路を有する電池モジュールの構成を示す。図2を参照すると、電池モジュールは、直列に接続された複数の単セル1001〜100n(nは自然数)と、これらセル間の容量バランスを調整するためのセルバランス回路200とを有する。セルバランス回路200は、複数のスイッチ2011〜201nからなるスイッチ回路201と、複数のスイッチ2021〜202nからなるスイッチ回路202と、コンデンサより構成される電圧保持回路203とを有する。
【0007】
各単セル1001〜100n間を接続するラインはそれぞれ、スイッチ2011〜201n-1を介して電圧保持回路203の一方の端子に共通に接続されるとともに、スイッチ2021〜202nを介して電圧保持回路203の他方の端子に共通に接続されている。単セル100nの負極端子に接続されたラインは、スイッチ201nを介して電圧保持回路203の一方の端子に接続されている。単セル1001の正極端子に接続されたラインは、スイッチ2021を介して電圧保持回路203の他方の端子に接続されている。
【0008】
上記の電池モジュールでは、不図示の制御回路により、スイッチ回路201、202の各スイッチのオン・オフを制御することで、各単セル1001〜100n間における容量バランスの調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】2000−182676号公報
【特許文献2】特開2000−182676号公報
【特許文献3】特開2001−178008号公報
【特許文献4】特開平7−50172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、特許文献1に記載されたような複数の単セルを直列に接続した電池モジュールを備える蓄電装置においては、簡単に所望の電圧を得られる構造にはなっていないため、モータの駆動電圧が異なる種々の車種に適用するという観点において柔軟性に欠ける、という第1の問題点がある。
【0011】
加えて、図2に示したようなセルバランス回路を設けた場合において、各スイッチ回路201、202を構成するスイッチは、直列に接続する単セル1001〜100nの数だけ必要となる。このため、数十個から数百個といった多数の単セルを直列に接続した場合には、各スイッチ回路のスイッチの数が多くなり、その結果、セルバランス回路200の規模が大きくなって、電池モジュールが大型化するとともに重くなる、という第2の問題点がある。車載においては、体積が大きくなったり、重くなったりすることは致命的なデメリットとなる。
【0012】
特許文献2に記載されたような昇圧回路を備える蓄電装置においては、第1の問題点を解消することができるものの、以下のような問題がある。
【0013】
図1に示した回路構成において、並列に接続された単セルの出力電圧は、例えば2.5V程度である。昇圧回路200によって電池モジュール100の出力電圧を300V程度に昇圧する場合、昇圧回路200の入力側の配線や電池モジュール100内の配線には、昇圧回路200の出力側の配線に流れる電流の10倍程度の電流(例えば、1000A)が流れる。このように電池と昇圧回路の間の配線部に大電流が流れると、配線部で大量の熱が発生し、その発生した熱が配線から単セルの端子を経由して単セルの内部まで伝わり、単セル内部の電解液が熱劣化して、単セルの充放電性能が劣化することがある。加えて、一般に単セルとして用いられているリチウムイオン二次電池は、熱を放出し難い構造(冷却し難い構造)であるため、熱による充放電性能の劣化がより顕著なものとなる。
【0014】
本発明の第1の目的は、第1の問題を解決し、昇圧時に発生する熱の影響による単セルの充放電性能の劣化を抑制することのできる蓄電装置を提供することにある。
【0015】
本発明の第2の目的は、第2の問題も解決することのできる、低コストで小型の電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の目的を達成するため、本発明の第1の態様は、少なくとも1つの電池と、該電池の出力電圧を所望の電圧まで昇圧するDC−DCコンバータとを有する自動車用蓄電装置において、前記電池がラミネート形リチウムイオン電池より構成されている。
【0017】
ラミネート形リチウムイオン電池は、単セルとして一般に用いられているリチウムイオン二次電池と比べて、放熱性に優れており、配線部からの熱の影響を受け難いという利点を有する。本発明の第1の態様では、このラミネート形リチウムイオン電池の優れた放熱性を利用することで、電池の出力電圧をDC−DCコンバータで300Vといった大きな電圧にまで昇圧する場合に、電池側の配線部(電池とDC−DCコンバータを接続する配線など)で発生する熱の影響により電池の充放電性能が劣化するといった、これまで問題にされていなかった新規な課題を解決する。すなわち、本発明の第1の態様では、電池にラミネート形リチウムイオン電池を用いることで、昇圧時に配線部で発生した熱が電池に伝わっても、電池にて放熱される。よって、熱の影響による電池の充放電性能の劣化を抑制することができる。
【0018】
上記のとおりの本発明の第1の態様によれば、昇圧時に発生する熱の影響による単セルの充放電性能の劣化を抑制することができるので、従来のものと比べて、電力の供給を安定して行うことができ、かつ、電池の寿命も長い、蓄電装置を提供することができる。
【0019】
第2の目的、すなわちセルバランス回路の規模を縮小するという目的を達成するため、本発明の第2の態様は、第1の態様の自動車用蓄電装置において、直列に接続された複数のセルブロックと、前記複数のセルブロックの各ブロック間における容量バランスを調整するセルバランス回路と、をさらに有し、前記複数のセルブロックのそれぞれが、前記電池を複数並列に接続したセルブロックとされている。
【0020】
この構成によれば、セルバランス回路により、直列に接続されたセルブロック間における容量バランスの調整が行われるので、充放電を継続して繰り返した場合に、一部のセルブロックが過充電や過放電の状態となることはない。
【0021】
また、複数の電池を並列に接続したセルブロックにおいては、各電池に均等に電圧が供給されるとともに、各電池から外部への電流の供給も均等に行われる。このように、セルブロック自体が電池間の容量バランスの調整が可能な構成とされている。
【0022】
上記のとおりの本発明の第2の態様によれば、セルバランス回路の規模は、直列に接続するセルブロックの数で決まる。本発明では、DC−DCコンバータを有しているので、その入力側では、電圧を低くすることができ、そのため、セルブロックの数は、DC−DCコンバータを使わない場合に比べて格段に少ないので、セルバランス回路の規模は従来の電池モジュールより小さくすることができる。例えば、従来の電池モジュールにおいて、100個の単セルを直列に接続した場合、セルバランス回路は、直列に接続された100個の単セル間における容量バランスを調整することになる。これに対して、本発明では、例えば2個の単セルを並列に接続してセルブロックを構成すれば、セルバランス回路は、直列に接続された50個のセルブロックにおける容量バランスを調整することになる。この場合のセルバランス回路の規模は、従来の2分の1に削減される。このようにセルバランス回路の規模を大幅に削減することが可能であるので、従来に比べて、小型で、低コストの電池モジュールを提供することができる。
【0023】
第2の目的を達成するため、本発明の第3の態様は、第1の態様の自動車用蓄電装置において、前記電池が複数直列に接続されており、各電池間における容量バランスを調整するセルバランス回路をさらに有する。
【0024】
本発明では、N個の単セルを並列に接続したセルブロックの代わりに、N倍の容量を有する単セルを用いてもよい。本発明の第3の態様では、電圧をN倍にするDC−DCコンバータを用いることにより、所望の電圧に対して入力側の電圧を1/Nにするとともに、N倍の容量を有する単セルを用いることで、直列に接続される単セルの数を従来よりも削減することができ、その分、セルバランス回路の規模を削減することができる。さらにセルに流れる電流がN倍になったとしても、電流増大による熱の影響は放熱性のよいラミネート形電池であるがゆえに低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の蓄電装置の構成を示すブロック図である。
【図2】セルバランス回路を有する従来の電池モジュールの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態である蓄電装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す単セルに適用されるラミネート形電池であるフィルム外装電池の分解斜視図である。
【図5】図3に示す電池モジュールの構成を示す斜視図である。
【図6】図5に示す支持部材の開口部近傍の概略断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態である蓄電装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
図3は、本発明の第1の実施形態である蓄電装置の構成を示すブロック図である。図3を参照すると、蓄電装置は、並列に接続された複数の単セル30からなる電池モジュール10と、この電池モジュール10の出力電圧を所望の電圧に変換するためのDC−DCコンバータ20とから構成されている。DC−DCコンバータ20には、既存の昇圧型のDC−DCコンバータを用いることができる。
【0028】
冷却し易い電池モジュール構造を実現するために、単セル30がラミネート形電池より構成されている。図4は、ラミネート形電池であるフィルム外装電池の分解斜視図である。
【0029】
図4に示すフィルム外装電池1は、複数の正極板および複数の負極板がセパレータを介して積層された構造を有する電極積層体2と、電極積層体2を電解液とともに封止する2枚の外装フィルム4,5と、外装フィルム4,5から先端部を延出させた状態で電極積層体2の正極板および負極板にそれぞれ接続された正極タブ3aおよび負極タブ3bとを有する。
【0030】
外装フィルム4,5は、電極積層体2をその厚み方向(積層方向)両側から挟んで包囲するため、電極積層体2の平面寸法よりも大きな平面寸法を有するものであり、電極積層体2の周囲で重なり合った対向面同士を熱融着することで、電極積層体2が封止される。図4では、外装フィルム4,5の熱融着された領域を、熱融着部6として斜線で示している。各外装フィルム4,5には、電極積層体2を包囲する空間を形成するために、中央領域にカップ部4a,5aを有する。熱融着部6は、このカップ部4a,5aの全周に亘って形成されている。カップ部4a,5aの加工は、深絞り成形によって行うことができる。図2に示す例では、各外装フィルム4,5にカップ部4a,5aを形成しているが、一方の外装フィルムのみにカップ部を形成してもよいし、また、カップ部を形成せずに外装フィルム4,5の柔軟性を利用して電極積層体2を包囲してもよい。
【0031】
外装フィルム4,5としてはラミネートフィルムを好ましく用いることができる。外装フィルム4,5を構成するラミネートフィルムとしては、柔軟性を有しており、かつ電解液が漏洩しないように熱融着によって電極積層体2を封止できるものが用いられる。代表的には、熱融着性樹脂からなる熱融着樹脂層と、金属薄膜などからなる非通気層と、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルやナイロンなどのフィルムからなる保護層とをこの順に積層したものが挙げられる。外装フィルム4,5は、これらのうち少なくとも熱融着樹脂層と非通気層とを有していればよく、保護層は必要に応じて設けられる。電極積層体2を封止するに際しては、熱融着樹脂層を対向させて電極積層体2を包囲する。
【0032】
非通気層を構成する金属薄膜としては、例えば、厚さが10〜100μmのAl、Ti、Ti合金、Fe、ステンレス、Mg合金などの箔を用いることができる。熱融着樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの酸変成物、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル等、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが使用できる。熱融着性樹脂層の厚さは10μm〜200μmが好ましく、より好ましくは30μm〜100μmである。
【0033】
上述したフィルム外装電池は、現在普及しているニッケル水素電池などに比べて、パワー密度が大きく、発熱し難い構造となっており、大電流を供給することができる。このフィルム外装電池の代表例として、ラミネート型マンガン系リチウムイオン電池がある。
【0034】
本実施形態では、単セル30として図4に示したフィルム外装電池を用いることで、冷却し易い構造の電池モジュール10を実現している。具体的には、電池モジュール10は、図5に示すように、複数のフィルム外装電池1を、互いの面(カップ部4a、5aの面)が対向するように間隔を空けて配置した状態で、支持部材7で支持した構造になっている。支持部材7には、各フィルム外装電池1の間に形成される間隙に連通する開口部7aが形成されている。支持部材7の材質としては、正極タブ3aおよび負極タブ3bとの電気的な絶縁を十分に取れる材質、例えば樹脂を用いる。
【0035】
図6に、支持部材7の開口部7a近傍の概略断面構造を模式的に示す。図6を参照すると、支持部材7は、外装フィルム4、5の周縁部を上下方向から挟むことでフィルム外装電池1を支持する一対の枠部材71、72を、複数重ねた構造になっている。フィルム外装電池1を支持する枠部材72と、その下に重ねて配置された、別のフィルム外装電池1を支持する枠部材71との当接面には、それぞれ開口部7aを形成するための切り欠きが設けられている。これら枠部材72と枠部材71を重ねて配置することで、それぞれの当接面に形成された切り欠きにより開口部7aが形成される。この開口部7aを通じて、外部からフィルム外装電池1の間に形成される間隙に空気を送り込むことができる。図6中の矢印は空気の流れを示す。外部から流入した空気がフィルム外装電池1の表面にあたることで、フィルム外装電池1が冷却される。
【0036】
上述した本実施形態の蓄電装置によれば、例えば、DC−DCコンバータ20で電池モジュール10の出力電圧を300V程度に昇圧する場合に、電池モジュール10内の配線に1000A程度の電流が流れて、配線部において大量の熱が発生し、その発生した熱が単セル30に伝わったとしても、開口部7aを通じて外部から流入した空気によって単セル30が冷却されるので、熱の影響により単セルの性能が劣化することを抑制することができる。また、単セル30であるフィルム外装電池1自体も、一般に単セルとして用いられているリチウムイオン二次電池と比較して、放熱性に優れているので、配線部からの熱の影響を受け難い。このように本実施形態の蓄電装置は、放熱性に優れた電池モジュール構造になっているので、従来のものよりも昇圧時に発生する熱による影響を受け難く、より安定した電力の供給が可能である。
【0037】
以上説明した本実施形態の電池モジュールは、本発明の一例であり、その構成は適宜変更することができる。例えば、支持部材7は、図5および図6に示した構成に限定されるものではない。支持部材7は、並列に接続された複数のラミネート形の単セルを、互いの面が対向するように間隔を空けて配置した状態で支持することができ、かつ、各単セルの間に形成される間隙に連通する開口を有するものであれば、どのような構成であってもよい。
【0038】
また、並列に接続する単セルの数も、特に限定されるものではなく、設計に応じて適宜変更可能である。
【0039】
また、ラミネート形電池は、一般に用いられているリチウムイオン二次電池と比べて放熱性がよいことから大電流を流すことができるため、N個の単セルを並列につなぐ代わりに、N倍の容量を有する1つの単セルで電池モジュールを構成してもよい。
【0040】
また、単セルは直列に接続してもよい。
【0041】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態である蓄電装置の構成を示すブロック図である。図7を参照すると、本実施形態の蓄電装置は、直列に接続された複数のセルブロック101〜10n(nは自然数)からなる電池モジュールと、これらセルブロック間の容量バランスを調整するセルバランス回路40と、電池モジュールの出力ラインに設けられたDC−DCコンバータ20とを有する。
【0042】
DC−DCコンバータ20は、直列に接続されたセルブロックの出力電圧を所望の電圧に昇圧または降圧する。このDC−DCコンバータ40により、電池モジュールの出力を所望の電圧に昇圧または降圧することで、所望の出力電圧を得ることができる。
【0043】
セルブロック101〜10nのそれぞれは、並列に接続された複数の単セル30からなる。単セル30は、リチウムイオン二次電池に代表される充電可能な電池である。セルバランス回路40は、複数のスイッチ211〜21nからなるスイッチ回路21と、複数のスイッチ221〜22nからなるスイッチ回路22と、コンデンサより構成される電圧保持回路23とを有する。
【0044】
各セルブロック101〜10n間を接続するラインはそれぞれ、スイッチ211〜21n-1を介して電圧保持回路23の一方の端子に共通に接続されるとともに、スイッチ221〜22nを介して電圧保持回路23の他方の端子に共通に接続されている。セルブロック10nの各単セルの負極端子が共通に接続されたラインは、スイッチ21nを介して電圧保持回路23の一方の端子に接続されている。セルブロック101の各単セルの正極端子が共通に接続されたラインは、スイッチ221を介して電圧保持回路23の他方の端子に接続されている。
【0045】
本実施形態の蓄電装置では、不図示の制御回路が、スイッチ回路21、22の各スイッチのオン・オフを制御することで、セルブロック101〜10n間における容量バランスの調整が行われる。具体的には、セルブロック101と電圧保持回路23を並列接続し、次に、セルブロック102と電圧保持回路23を並列接続するといった具合に、セルブロック101〜10nのそれぞれを電圧保持回路23と並列接続することで、セルブロック101〜10n間における容量バランスを調整する。これにより、充放電を継続して繰り返した場合に、一部のセルブロックが過充電や過放電の状態となることを抑制する。
【0046】
また、各セルブロック101〜10nにおいては、複数の単セル30を並列に接続したことで、各単セル30にほぼ均等に電圧が供給されるとともに、各単セル30からの電流の供給もほぼ均等に行われる。このように、各セルブロック101〜10nは、それ自体が単セル間の容量バランスの調整が可能な構成になっているので、充放電を継続して繰り返しても、単セル間の容量が変化することがなく、一部の単セルが過充電や過放電の状態になることもない。
【0047】
また、セルブロックを構成する並列に接続された単セルについては、セルバランス回路による容量バランスの調整を行う必要がないので、その分、スイッチ回路21、22を構成するスイッチの数を削減することができる。例えば、図2に示した従来の電池モジュールにおいて、100個の単セルを直列に接続した場合は、各スイッチ回路201、202を構成するスイッチの数は、合計で200個(=100×2)となる。これに対して、本実施形態の電池モジュールにおいては、20個の単セルを並列に接続したセルブロックを5個直列に接続した場合、各スイッチ回路21、22を構成するスイッチの数は、合計で10個(=5×2)となる。このように、本実施形態によれば、スイッチの数を大幅に削減することができるので、セルバランス回路40の回路規模を小さくすることができる。また、セルバランス回路は、コンデンサ方式の他に、抵抗またはコイルを用いたものでもよく、使用する抵抗素子のサイズや数、使用するコイル素子のサイズや数、といった観点で、回路規模を小さくできるメリットは同様に得られる。
【0048】
なお、本実施形態の蓄電装置では、単セルを並列に接続したセルブロックを用いるため、全てのセルを直列に接続する従来の電池モジュールに比べて、供給可能な電流量は大きくなる。よって、単セル30には、大電流を供給することのできるラミネート形電池を用いる。ラミネート形電池としては、第1の実施形態で説明したフィルム外装電池を適用することができる。このフィルム外装電池は、現在普及しているニッケル水素電池などに比べて、パワー密度が大きく、発熱し難い構造となっており、大電流を供給することができる。このフィルム外装電池の代表例として、ラミネート型マンガン系リチウムイオン電池がある。本実施形態の蓄電装置において、このようなフィルム外装電池を単セルに用いることで、電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車両の駆動用に好適な蓄電装置を実現することができる。
【0049】
以上説明した本実施形態の電池モジュールは、本発明の一例であり、その構成は適宜変更することができる。例えば、セルブロックを構成する単セル(並列に接続する単セル)の数は、2個以上であればよい。セルブロックの数も、特に限定されるものではなく、2個以上であればよい。
【0050】
また、セルバランス回路の構成も、図1に示した回路構成に限定されるものではなく、他の構成のセルバランス回路を用いてもよい。
【0051】
また、ラミネート形電池は、一般に用いられているリチウムイオン二次電池と比べて、放熱性がよく、大電流を流せるため、N個の単セルを並列に接続したセルブロックの代わりに、N倍の容量を有する単セルを用いてもよい。この場合は、N倍の容量を有する単セルを用いることで、直列に接続される単セルの数を従来よりも削減することができ、その分、セルバランス回路の規模を削減することができる。
【0052】
なお、N個の単セルを並列に接続してなるセルブロックを複数直列に接続した形態においては、単セルを従来のリチウムイオン二次電池で構成してもよい。この構成においても、従来の蓄電装置に比べてセルバランス回路の規模を削減する効果を得られる。
【符号の説明】
【0053】
10 電池モジュール
20 DC−DCコンバータ
30 単セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム外装電池と、
前記フィルム外装電池の外装フィルムの周縁部を上下方向から挟む支持部材と、を備え、
前記支持部材は、前記フィルム外装電池を支持する一対の枠部材同士を重ねた構造を有し、
前記枠部材は、前記フィルム外装電池と当接する面とは反対側の他の枠部材と当接する面に穴状の開口を備え、
前記開口は、前記フィルム外装電池の端子が設けられている辺、または端子が設けられている辺と対向する辺とは異なる辺に配置されることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
直列に接続された複数のセルブロックと、
前記複数のセルブロックの各ブロック間における容量バランスを調整するセルバランス回路と、をさらに有し、
前記複数のセルブロックのそれぞれが、前記フィルム外装電池を複数並列に接続したセルブロックである、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記フィルム外装電池を複数有し、該複数のフィルム外装電池が前記枠部材に固定されている、請求項1に記載の蓄電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−69696(P2013−69696A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−268279(P2012−268279)
【出願日】平成24年12月7日(2012.12.7)
【分割の表示】特願2007−551077(P2007−551077)の分割
【原出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】