説明

蓋体の開き防止装置

【課題】減速等による内装部材の相対変位により収容ポケットの蓋体が開いてしまうことを防止する。
【解決手段】インストルメントパネルの一部となるコントロールパネル3の下側に蓋付きポケット4が配設され、そのポケットリッド6の全開位置がコントロールパネルと蓋付きポケット4との間に入る位置となるように回動するものにおいて、コントロールパネルに開き防止ブラケット10を設ける。その先端の係止部10aが、通常状態ではポケットリッドの開閉軌跡と干渉しない位置にあるが、大きな減速時にはコントロールパネルのポケットリッドに対する相対的な大きな変位によりポケットリッドの開きを防止する位置に至る。ポケットリッドを開かせる力が作用しても、開いてしまうことを防止して、蓋付きポケットの中の物が外に飛び出してしまうことを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体の開き防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のインストルメントパネルの中央部分にセンターコンソールを設けたものがあり、センターコンソールにあっては、その上部に空調装置の吹き出し口やオーディオ機器などが配置される内装部材(パネル)が配設され、その下部には物入れとしての収容ポケットが配設されているものがある。また、車内の物入れにあっては、貴重品などを入れるためのものとしてロック装置を備えたグローブボックスが設けられている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭61−113977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、センターコンソールに設ける収容ポケットにあっては比較的頻繁に出し入れ可能にする用途として前面を開放したものがあるが、そのような開放ポケットの他に蓋体を設けて外部に対して目隠しできるようにしたものもある。蓋体を設けた収容ポケットの場合には、特にグローブボックスのような強固なロック装置を設ける程ではなく、蓋体を簡単に開閉できるようにして取り扱い性を重視する等している。
【0004】
しかしながら、センターコンソールの上部部分に配設された内装部材にあっては、インストルメントパネルとの位置決め精度確保などから互いに結合されて一体化されている場合には蓋体に比較すると質量が大きく、大きな減速度が生じた場合には、蓋体に対して大きく変位する虞がある。そして、上記蓋体が収容ポケットとその上の内装部材との隙間に入り込む向きに回動して全開状態になるようにされている場合には、内装部材の大きな変位により、その下部により蓋体の上部が押されて、蓋体が開いてしまうことが考えられ、蓋体が開くことにより収容ポケットの中の物が外に飛び出してしまうという虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決して、減速等による内装部材の相対変位により収容ポケットの蓋体が開いてしまうことを防止することを実現するために本発明に於いては、車体に取り付けられた収容ポケット(4)の開口を覆う蓋体(6)が、前記収容ポケット(4)に隣接して配設された内装部材(3)と前記収容ポケット(6)との間に没入する全開位置と前記収容ポケット(4)の開口を覆う全閉位置との2位置間で回動するように設けられ、前記内装部材(3)に前記蓋体(6)を全開方向に対して係止し得る開き防止部材(10)を一体的に設け、前記開き防止部材(10)は、通常状態では前記蓋体(6)の開閉運動と干渉しない位置に配置されると共に、減速等により前記内装部材(3)が前記蓋体(6)に近付く向きに所定量変位した場合に前記蓋体(6)を係止する位置に至るものとした。
【0006】
特に、前記蓋体(6)の質量が、前記内装部材(3)の質量よりも小さいと良い。
【発明の効果】
【0007】
このように本発明によれば、収容ポケットに隣接して内装部材が配設された構造において、収容ポケットの蓋体が収容ポケットと内装部材との間に没入するようにして全開状態になるものの場合に、減速等により蓋体よりも内装部材の方が大きく変位すると、その内装部材に蓋体の上部が押される形で蓋体が開くようになるが、その内装部材の変位により開き防止部材が蓋体の全開方向に対して蓋体を係止し得る位置に至ることにより、蓋体が開いてしまうことを防止して、収容ポケットの中の物が外に飛び出してしまうことを防止できる。
【0008】
特に、蓋体の質量が内装部材の質量よりも小さいことにより、減速等により内装部材の蓋体に対する相対移動を確実に生じさせることができる。そのような条件は、例えば内装部材がインストルメントパネルの一部であることにより大きな質量を有し、蓋体がセンターコンソールに設けられた収容ポケットの蓋という相対的に小さな質量であることにより、何等特別な構造にすることなく上記相対変位を実現でき、減速等によりて蓋体が開いてしまうことを防止し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用された自動車のセンターコンソール1を示す要部斜視図である。センターコンソール1は、運転席と助手席との前方にあるインストルメントパネル2の車幅方向中央部分に配設されており、図ではインストルメントパネル2と一体的に車体に取り付けられる内装部材としてのコントロールパネル3と、コントロールパネル3の下側に配設されかつ互いに積み重ねられた状態に設けられた収容ポケットとしての蓋付きポケット4および開放ポケット5とにより構成されている。すなわち、コントロールパネル3に隣接して蓋付きポケット4が配設されている。
【0010】
図示例のコントロールパネル3にあっては、上部に空調装置の吹き出し口3aが設けられ、その下側部分に複数の搭載機器用の各開口3b・3cが設けられている。例えば、その一つの開口3bには図示されない表示装置が臨み、他の開口3bには図示されないオーディオ機器の操作パネル面が臨むようにされている。なお、コントロールパネル3は、車幅方向両縁部の所定位置に一体的に設けられた複数の結合用耳部3aを介してねじ止めなどによりインストルメントパネル2と一体化されるようになっている。
【0011】
コントロールパネル3の直下に配設される蓋付きポケット4にあっては、図2に併せて示されるように、センターコンソール1の前面に開口する矩形箱状をなし、その開口4aを覆う蓋体としてのポケットリッド6が設けられている。ポケットリッド6は、図2の実線に示されるように蓋付きポケット4の開口4aを覆う全閉位置と、図2の二点鎖線に示されるように蓋付きポケット4およびコントロールパネル3の隙間に没入状態のようになる全開位置との2位置間で回動し得る。
【0012】
図4に示されるように、ポケットリッド6には、その車幅方向両端部にて蓋付きポケット4の両側面にそれぞれ沿うように延出する互いに平行な一対のアーム6aが一体に設けられている。両アーム6aの延出端部が蓋付きポケット4に同軸的に枢支されており、その枢支点を回動中心Cとして図4(a)・(b)の各矢印A・Bに示されるようにポケットリッド6が回動する。
【0013】
なお、アーム6aにはリッド側セクタギア6bが設けられており、蓋付きポケット4にはダンパ7が固設され、かつダンパ7には同軸に結合されたダンパ側セクタギア7aが設けられている。両セクタギア6b・7aは互いに噛み合わされており、さらに両セクタギア6b・7a間にはトグル機構を有するねじりコイルばね8が介装されている。このねじりコイルばね8により、ポケットリッド6は、図4(a)の全閉位置では閉じる向き(矢印Aの向き)にばね付勢され、図4(b)の全開位置では開く向き(矢印Bの向き)にばね付勢されるようになり、車体の振動などに対して各状態を保持し得る。また、ダンパ7により、開閉動作が緩やかに行われるようになり、高級感を出すようにされている。
【0014】
一方、コントロールパネル2の蓋付きポケット4側の下端部には、ポケットリッド6との隙間を隠す目隠し板9が設けられ、さらにコントロールパネル2の下端部であって裏側には開き防止部材としての開き防止ブラケット10が一体的に設けられている。開き防止ブラケット10は、ポケットリッド6の上方にて全閉方向に延出し、その延出端にてポケットリッド6側に折り曲げられた係止部10aを有する形状に形成されている。
【0015】
このように構成された蓋体の開き防止装置の動作要領について以下に示す。通常状態では図2に示されるように、ポケットリッド6は、実線で示される全閉位置と二点鎖線で示される全開位置との2位置間で回動中心Cを枢支点として回動して、蓋付きポケット4の開口4aを選択的に開閉する。この通常状態では、上記した開き防止ブラケット10は、ポケットリッド6の上端の開閉における軌跡Lの外側に位置しており、ポケットリッド6と干渉することがない。
【0016】
次に、例えば大きな減速が生じることによりコントロールパネル3が蓋付きポケット4に対して近付く向きに相対的に大きく変位して図3に示されるようになった場合には、例えばコントロールパネル3に一体的に組み付けられている目隠し板9がコントロールパネル3と共に変位してポケットリッド6の上端部分に衝当する場合がある。その場合には、図3の二点鎖線に示される全閉位置から矢印Cに示されるようにポケットリッド6が全開方向に回動しようとする。
【0017】
それに対して、本発明によれば、上記したようにコントロールパネル3と一体に変位するようにされている開き防止ブラケット10の先端の係止部10aがポケットリッド6の上端の軌跡L内(係止する位置)に入るようになる。これにより、図3の実線に示されるようにポケットリッド6の上端部が開き防止ブラケット10の係止部10aにより係止され、それ以上の回動が防止される。
【0018】
このようにして、コントロールパネル3の大きな相対変位によりポケットリッド6が開く向きの外力を受けても、そのコントロールパネル3に設けた開き防止ブラケット10によりポケットリッド6が開いてしまうことを防止できるため、大きな減速時にポケットリッド6が開いて、蓋付きポケット4の収容物が外に飛び出してしまうことを防止することができる。
【0019】
なお、コントロールパネル3とポケットリッド6(上側容器4)との相対変位量の違いは、コントロールパネル3の質量とポケットリッド6の質量の大きさの違いによる。図示例の場合には、コントロールパネル3がインストルメントパネル2と一体化されていることにより大きな質量を有し、それに対してポケットリッド6の質量は小さく、両者間に減速等による変位に違いが生じ得る。
【0020】
したがって、他の部位に適用する場合には、減速等により蓋体(ポケットリッド6に相当)に作用するように変位する他の部材(コントロールパネル3に相当)の質量を蓋体の質量よりも大きくなるように設定すれば良い。また、各固定部の摩擦抵抗も考慮すると良い。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明にかかる蓋体の開き防止装置は、蓋体に開く方向の外力が作用しても蓋体が開いてしまうことを防止して、収容ポケットの中の物が外に飛び出してしまうことを防止でき、蓋体を設けた装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用された自動車のセンターコンソール1を示す要部斜視図である。
【図2】図1の矢印II−II線に沿ってみた要部拡大側断面図である。
【図3】減速時の状態を示す図2に対応する図である。
【図4】(a)は全閉状態を示す蓋付きポケットの側面図であり、(b)は全開状態を示す蓋付きポケットの側面図である。
【符号の説明】
【0023】
3 コントロールパネル(内装部材)
4 蓋付きポケット(収容ポケット)
6 ポケットリッド(蓋体)
10 開き防止ブラケット(開き防止部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられた収容ポケットの開口を覆う蓋体が、前記収容ポケットに隣接して配設された内装部材と前記収容ポケットとの間に没入する全開位置と前記収容ポケットの開口を覆う全閉位置との2位置間で回動するように設けられ、
前記内装部材に前記蓋体を全開方向に対して係止し得る開き防止部材を一体的に設け、
前記開き防止部材は、通常状態では前記蓋体の開閉運動と干渉しない配置されると共に、減速等により前記内装部材が前記蓋体に近付く向きに所定量変位した場合に前記蓋体を係止する位置に至ることを特徴とする蓋体の開き防止装置。
【請求項2】
前記蓋体の質量が、前記内装部材の質量よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の蓋体の開き防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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