説明

蓋材用ポリプロピレン系多層フィルム及び包装体

【課題】ヒートシール時間を短くできるように改良された蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムを提供することを主要な目的とする。
【解決手段】蓋材用ポリプロピレン系多層フィルム1は、基材層2と中間層3とシール層4を含む少なくとも3層からなる積層フィルムである。基材層2は、実質的にプロピレン単独重合体からなる樹脂で形成される。中間層2はプロピレン系ランダム共重合体からなる樹脂で形成される。シール層4はエチレン系樹脂100重量部に対して、プロピレン系樹脂5〜20重量部を配合してなる樹脂で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムに関し、より特定的には、内面がポリエチレン加工された紙容器に短時間でシールできるように改良された蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムに関する。本発明は、またそのような蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムを蓋材に用いてなる包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装体に要求される性能としては、製造及び流通過程において内容物を保護すると共に、その使用において内容物を容易に取り出せることが必要である。すなわち、密封性と易開封性という相反する機能を兼備することが要求される。従来、ヒートシールによるポリエチレン系包装材に易開封性を付与する手段としては、比較的柔軟なエチレン共重合体、例えばエチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンーアクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレンーブテン共重合体ゴム(EBR)、エチレンープロピレン共重合体ゴム(EPR)やその他ホットメルト接着剤を、コーテイング、貼り合せ、共押し等の方法で、容器又は蓋のシール側に積層して用いることが一般的に知られている。
【0003】
しかし、このような包装材は、ヒートシール時に上記の樹脂類を半融着状態にすることによって易開封性を発現させるものであるが、この融着状態の制御は難しく、微妙なヒートシール条件の差によりそのヒートシール強度が大きく変動する。人の手で容易に開封できる程度にやや低いシール強度にすると、シール不良品の発生率が高くなるために、易開封性を犠牲にするやや高いシール強度にせざるを得ないという欠点がある。また、ポリエチレンと親和性が強くないホットメルト接着剤により易開封性を改良するものもあるが、シール強度、透明性、スリップ性が不十分で、その上、伸びが大きいため開封時のシール部の毛羽立ちによる外観の悪化を招き、さらには、耐熱性が低く、ボイル殺菌処理を必要とする食品包装用には不向であるという欠点がある。
【0004】
このような問題点を解決すべく、特許文献1は、(A)ポリエチレン及び/又はエチレン共重合体よりなるシール層、(B)結晶性プロピレンランダム共重合体20〜80重量%とエチレン系重合体及び/又はエチレンーαーオレフイン共重合体ゴム80〜20重量%とからなる組成物よりなる中間層、及び(C)ポリエチレン又はポリプロピレンよりなる外層との多層構造から成ることを特徴とするポリエチレン系包装材用イージーピール性多層フイルムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−47878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の開示のフィルムは、ヒートシールによって良好なシールが可能であると同時に、手で容易に開封可能な程度のシール強度を得ることができるとある。しかしながら、一方で、ヒートシールの時間を長く要する(実施例では1.5秒間)という課題があった。
【0007】
この発明は上記の課題を解決するためになされたもので、ヒートシール時間を短くできるように改良された蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムを目的とする。
【0008】
この発明の他の目的は、イージーピール性を有する蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムを提供することにある。
【0009】
この発明の他の目的は、製造時、引き取りロール等に巻きつかないよう改良された蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムを提供することにある。
【0010】
この発明の他の目的は、製造時、引き取りロール等に巻きつかず、トラブルなく安定して製造できるように改良された蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、内面がポリエチレン加工された紙容器の蓋材用フィルムであって、基材層/中間層/シール層を含む少なくとも3層からなり、上記基材層は、実質的にプロピレン単独重合体からからなる樹脂で形成され、上記中間層はプロピレン系ランダム共重合体からなる樹脂で形成され、上記シール層はエチレン系樹脂100重量部に対して、プロピレン系樹脂5〜20重量部を配合してなる樹脂で形成されことを特徴とする蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムに係る。
【0012】
上記基材層に用いられる樹脂は、2軸延伸フィルム用ポリプロピレンとして従来公知のプロピレン単独重合体を用いることができるが、アイソタクチック・インデックス(沸騰ーヘプタン不溶成分割合)が75%以上、好ましくは80〜99%のプロピレン単独重合体が好ましい。該プロピレン単独重合体の密度は、密度(ASTM D1505)は、0.90〜0.915g/cmが好ましく、メルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重21.18N)は0.1〜20.0g/10分が好ましく、さらに0.1〜15.0g/10分が好ましい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、微量のエチレン成分を含んでいてもよい。
【0013】
上記中間層に用いられる樹脂としては、プロピレンとα―オレフィンとのランダム共重合体を用いることができる。プロピレン−α−オレフィン共重合体について、共重合体を構成するα−オレフィンの炭素数は、通常2〜20(3を除く)であり、特に、好ましくは、2〜10(3を除く)であることが適当である。α−オレフィンとしては、具体的には、エチレンや、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、へプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、4−メチルペンテン−1、4−メチルへキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を好ましいものとして挙げることができる。これらのモノマーのうち、共重合性や、入手のしやすさの観点から、エチレンや、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、へプテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1が好ましい。特に、エチレン、ブテン−1が好ましい。また、共重合体を構成するα−オレフィンは、2種以上を併用してもよい。例えば、α−オレフィンとしてエチレン及びブテン−1を使用すると、共重合体としてプロピレン−エチレン−ブテン3元共重合体が構成される。共重合体中のα−オレフィンの重合割合は、例えば0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%とすることが適当である。プロピレン−α―オレフィン共重合体のメルトフローレート(以下、MFRと記すことがある。)は0.1〜15.0g/10分の範囲であり、好ましくは、0.5〜10.0g/10分の範囲、さらに好ましくは0.7〜7.0g/10分の範囲である。MFRが0.1g/10分未満である場合、押出機による成形時に吐出不良を起こすことがある。また、MFRが15.0g/10分を超える場合、フィルムの強度を低下させることがある。なおMFRは、JIS K7210に準拠し、230℃、21.18N荷重で測定した値である。
【0014】
上記シール層はエチレン系樹脂100重量部に対して、プロピレン系樹脂5〜20重量部を配合した樹脂組成物を含む。この場合のエチレン系樹脂としては、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー、またはその混合物を例示できる。
【0015】
上記プロピレン系樹脂としては、中間層で用いたプロピレン−α−オレフィン共重合体を好適に用いることができる。
【0016】
樹脂組成物の配合比において、プロピレン系樹脂が5重量部未満であると、シール層面の滑性が悪くなり、製造時、引き取りロール等に巻きつきやすくなる。また、20重量部を越えると、シール性が悪くなる。
【0017】
上記シール層を形成する上記エチレン系樹脂の組成は、シール温度150℃で、シール時間0.5秒で上記紙容器をシールできるように、選ばれている。
【0018】
上記シール層を形成する上記エチレン系樹脂は、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー、またはこれらの混合物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムによれば、シール温度150℃で、シール時間0.5秒でシールできる。また、ピール性を有する。2軸延伸フィルムを製造する際、トラブル発生しないという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムの断面図である。
【図2】実施の形態2に係る包装体の断面図である。
【図3】図2におけるA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0022】
(実施の形態1)
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムの断面図である。
【0024】
(構成)
図1を参照して、蓋材用ポリプロピレン系多層フィルム1は、基材層2と中間層3とシール層4を含む少なくとも3層からなる積層フィルムである。基材層2は、実質的にプロピレン単独重合体からなる樹脂で形成される。具体的には、サンアロマー株式会社製 PC412Aを例示できる。中間層2はプロピレン系ランダム共重合体からなる樹脂で形成される。具体的には、サンアロマー株式会社製 5C30FやPC630Aなどを例示できる。
【0025】
シール層4はエチレン系樹脂100重量部に対して、プロピレン系樹脂5〜20重量部を配合してなる樹脂で形成される。エチレン系樹脂としては、具体的には、三井デュポンポリケミカル株式会社製 CMPS V201、三井デュポンポリケミカル株式会社製 エバフレックス V523、ダウケミカルジャパン株式会社製 アフィニティ KC8852 を用いた。プロピレン系樹脂としては、中間層で用いたプロピレン−α−オレフィン共重合体を用いた。
【0026】
蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムの総厚みは15〜70μmが好ましく、20〜50μmがさらに好ましい。
【0027】
蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムの基材層の厚みは10〜50μmが好ましく、20〜40μmがさらに好ましい。基材層の厚みが10μmよりも薄いとハンドリング性が低下し好ましくない。50μmよりも厚いとシール不良が発生しやすくなり好ましくない。
【0028】
中間層の厚みは1〜10μmが好ましく、2〜7μmがさらに好ましい。中間層の厚みが1μmよりも薄いとフィルムの層間強度が低下し好ましくない。10μmよりも厚いとハンドリング性が低下し好ましくない。
【0029】
シール層の厚みは1〜10μmが好ましく、2〜5μmがさらに好ましい。シール層の厚みが1μmよりも薄いとシール不良が発生しやすく好ましくない。10μmよりも厚いと製造時の成形性が低下し好ましくない。
【0030】
(製造方法)
蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムの製造方法としては、基材層、中間層及びシール層を構成する樹脂をそれぞれの押出機に投入し、加熱・溶融・混練してダイスよりシート状に押出す。次いで延伸温度140〜160℃で、縦方向に3〜5倍延伸し、次いで、160〜180℃で横方向に10倍テンター内で延伸した後、160〜180℃で熱固定することによって形成した。
【実施例】
【0031】
実施例、比較例に使用する樹脂は次のとおりであった。また、配合及び構成は別紙 表1に示す。
PP−1:PC412A(サンアロマー株式会社)
PP−2:PC630A(サンアロマー株式会社)
PP−3:キャタロイ 5C30F(サンアロマー株式会社)
PE−1:アフィニティKC8852(ダウケミカルジャパン株式会社)
PE−2:CMPS V201(三井デュポンポリケミカル株式会社)
【表1】

【0032】
(実施例1)
210℃に調整した基材層用の押出機にPP−1を、200℃に調整した中間層(1)用の押出機にPP−2を、180℃中間層(2)用の押出機にPP−3を、シール層用押出機にPE−1を25重量部、PE−2を75重量部、及びPP−3を10重量部混合した混合物を、それぞれ投入し200℃のダイスより、基材層/中間層/シール層の順に積層したシートを押出し、冷却水を流した引き取りロールにて冷却・固化させた後、140℃で縦方向に5倍、ロール延伸し、次いで165℃のテンター内で横方向に10倍延伸した後、167℃で熱固定して3層の蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムを得た。得られた蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムの総厚みは30μmで、各層の厚みは、基材層が25μm、中間層が2μm、シール層が3μmであった。
【0033】
(実施例2〜実施例4)
実施例1と同様にして、3層の蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムを得た。
【0034】
(比較例1、比較例2)
実施例1と同様にして3層の蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムを得た。
【0035】
(評価)
1)シール評価
内面がポリエチレン加工された紙容器に、得られた二軸延伸フィルムのシール層面を紙容器の口部にシール装置により貼り付ける。
二軸延伸フィルムが紙容器の口に充分な強度をもってシールされており、貼り付いている二軸延伸フィルムを剥がした際に、フィルムが裂けない場合を○、シールの強度が充分でなかったり、剥がす際に裂けた場合を×とした。
(シール条件)
シール装置:エーシンパック社製カップシーラー EPK−半自動OS
シール温度:150℃
シール時間:0.5秒
評価結果は、別紙 表2に示す。
【表2】

2)製造安定性
二軸延伸フィルムを製造する際、トラブルなく安定してフィルムを製造できる場合を○、引き取りロールや縦延伸ロールに巻きついたりするトラブルが発生した場合を×とした。
【0036】
(実施の形態2)
【0037】
図2は、実施の形態1に係る蓋材用ポリプロピレン系多層フィルム1を、内面がポリエチレン膜5で加工された紙容器6の蓋材に用いた包装体の断面図である。紙容器6は、紙基材6aの内面がポリエチレン膜5で被覆されてなる。図3は、図2におけるA部拡大図である。これらの図を参照して、ポリプロピレン系多層フィルム1からなる蓋材は、外側に向けてカール状に形成されたフランジ部を有する紙容器6の該フランジ部にヒートシールにより接着されている。包装される食材は例えば納豆7である。蓋材のシール層4と、紙容器の6の内面に形成されたポリエチレン膜5とが熱でシールされ、内部が密封されている。耐熱性、密封性、易開封性に優れ、剥離界面も美麗であった。
【0038】
なお、上記実施例では被包装品として食材としての納豆を例示したが、この発明はこれに限られるものでなく、広く食品全般に適用できる。
【0039】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムは、耐熱性、密封性、易開封性に優れ、剥離界面も美麗な食品包装体を与える。
【符号の説明】
【0041】
1 蓋材用ポリプロピレン系多層フィルム
2 基材層
3 中間層
4 シール層
5 ポリエチレン膜
6 紙容器
6a 紙基材
7 納豆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面がポリエチレン加工された紙容器の蓋材用フィルムであって、
基材層/中間層/シール層を含む少なくとも3層からなり、
前記基材層は、実質的にプロピレン単独重合体からなる樹脂で形成され、
前記中間層はプロピレン系ランダム共重合体からなる樹脂で形成され、
前記シール層はエチレン系樹脂100重量部に対して、プロピレン系樹脂5〜20重量部を配合してなる樹脂で形成されることを特徴とする蓋材用ポリプロピレン系多層フィルム。
【請求項2】
シール温度150℃で、シール時間0.5秒で前記紙容器をシールできるように、前記シール層を形成する前記エチレン系樹脂の組成を選んでなる、請求項に1記載の蓋材用ポリプロピレン系多層フィルム。
【請求項3】
前記シール層を形成する前記エチレン系樹脂は、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー、またはこれらの混合物である、請求項1又は2に記載の蓋材用ポリプロピレン系多層フィルム。
【請求項4】
請求項1に記載の蓋材用ポリプロピレン系多層フィルムで蓋材が形成されてなる包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−76796(P2012−76796A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223862(P2010−223862)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】