説明

蓋材

【課題】本発明は、水または湯を注いで調理する即席ラーメンや即席焼きそば向けの容器に用いるアルミニウム等の金属を含まない蓋材における、従来の欠点を解消し、開封保持性および注水後の再封性に優れた蓋材を提供しようとするものである。
【解決手段】紙基材層とシーラント層を少なくとも有する積層体からなり、1つ以上の剥離用タブを有する蓋材であって、一つの剥離用タブを中心として蓋材の両端から蓋材の中心方向に向かって徐々に接近する2本の表面ハーフカット線が、紙基材層側からシーラント層に達するように設けられており、該2本の表面ハーフカット線の内側のずれた位置に、それぞれの表面ハーフカット線とほぼ並行して、シーラント層側から紙基材層に達する裏面ハーフカット線が設けられていることを特徴とする蓋材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水または湯を注いで調理する即席ラーメンや即席焼きそば向けの容器の蓋材に関し、開封保持性および注水後の再封性に優れた、アルミニウム等の金属を含まない蓋材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シート状蓋材によって密封されているカップ状容器に収容されたラーメン等のインスタント食品は、シート状蓋材を途中まで剥離し、熱湯を注いだ後、剥離した蓋材を再封することにより所定時間の調理を行う。しかし、紙/アルミニウム/シーラント層などのような金属を使用した構成の場合、開封保持性に優れ注湯もスムーズに行うことが出来、さらに蓋材のタブを容器のフランジ部分に折り込む等の動作によりある程度の再封が可能であるが、蓋材にアルミニウムを用いない場合、開封保持性がなく注湯も困難であり、さらに一旦開封した蓋材を再封しようにもタブが折れ曲がりにくく、フランジ部分に折り込めない為、再封性が乏しいという欠点があった。
【0003】
湯を注いで調理する場合は、再封後の蓋上に重りを置くなどの工夫が可能であるが、電子レンジ調理の場合は不可能であり、蓋材の再封時にカップ状容器の開口縁に確実に保持できるようにすることが求められている。
【0004】
これまで、粘着剤による固定や、容器のシュリンクフィルム外装の底部分などにテープを設け、そのテープを利用して固定する方法等が検討されてきた。
しかし前者の方法は、粘着剤の取扱の問題、粘着剤の内容物や容器内面への移行の問題等があり、後者の方法は、シュリンクフィルムからテープが剥がれにくいなどの問題があった。
【0005】
また、蓋材にミシン目を施すことによって剥離時に蓋材の一部を容器フランジ側に残し、再封時にタブを固定することを可能にする方法が提案されている。(特許文献1参照)しかしながら、この方法は、ミシン目により切り離されるタブが細くなってしまうため、開封時にミシン目に沿ってタブを引き上げる際、タブが引きちぎれたり、蓋材を剥がす際、力がうまく伝わらず、開封しにくいなどの問題があった。
【0006】
さらに、蓋材の紙基材側およびシーラント層側の両方向からハーフカットによる切り込みを施すことにより、再封時に蓋を容器に固定することを可能にする係止片を設けた方法が提案されている。(特許文献2参照)
しかしながら、この方法は、ハーフカットの位置制御が困難であり、ハーフカット間隔が規定よりも狭くなった場合は全貫通の切り込みが発生し、バリア性が劣化してしまう可能性がある。一方でハーフカット間隔が規定よりも広くなった場合、紙基材側からハーフカット線を目安に押し込んでも貫通孔が得られない可能性があった。また蓋を再封するために、係止片を押し込むとその部分が孔になってしまい、再封時の密封性が損なわれるという問題もあった。
【0007】
また、蓋材のタブの両側から蓋材の内方へ向かって互いに平行に延在し、内方端の近傍部分が互いに近接する方向に延在している2本の破断線を設けるかあるいは逆に、内方へ向かうにつれて徐々に接近するように延在し、内方端の近傍部分が互いに平行に延在している2本の破断線を設けたことによって開封時の保形性を高めた蓋材が提案されている。(特許文献3参照)
しかしながら、特許文献3に記載された包装容器は、単に開封時の蓋の保形性を高めたも
のであって、蓋の再封止性を図ったものではない。またミシン目の先端を並行にした場合、開封後の先端強度が弱く、開封時にちぎれてしまうなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4213957号公報
【特許文献2】特開2006-131263号公報
【特許文献3】特許第4441088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水または湯を注いで調理する即席ラーメンや即席焼きそば向けの容器に用いるアルミニウム等の金属を含まない蓋材における、従来の欠点を解消し、開封保持性および注水後の再封性に優れた蓋材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、紙基材層とシーラント層を少なくとも有する積層体からなり、1つ以上の剥離用タブを有する蓋材であって、一つの剥離用タブを中心として蓋材の両端から蓋材の中心方向に向かって徐々に接近する2本の表面ハーフカット線が、紙基材層側からシーラント層に達するように設けられており、該2本の表面ハーフカット線の内側のずれた位置に、それぞれの表面ハーフカット線とほぼ並行して、シーラント層側から紙基材層に達する裏面ハーフカット線が設けられていることを特徴とする蓋材である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記表面ハーフカット線とこれにほぼ並行する前記裏面ハーフカット線との間隔が1mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の蓋材である。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記2本の表面ハーフカット線の互いに最も接近した部分における距離が4mm以上20mm以下であり、各表面ハーフカット線はその内方端がそれぞれ前記剥離用タブを中心として再び外方向に曲線を描くように設けられ、該曲線の半径は20mm以上100mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の蓋材である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記積層体が、紙基材層と、プラスチックフィルム層と、シーラント層がこの順序で積層されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓋材である。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、紙基材層とプラスチックフィルム層がポリオレフィン系樹脂によるエクストルージョンラミネート法によって積層されていることを特徴とする請求項4に記載の蓋材である。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、紙基材層の裏面の前記表面ハーフカット線と裏面ハーフカット線の間の部分に剥離ニス層が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓋材である。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、プラスチックフィルム層とポリオレフィン系樹脂層のラミネート強度が0.1N/15mm以上3.0N/15mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の蓋材である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る蓋材は、紙基材層とシーラント層を少なくとも有する積層体からなり、1つ以上の剥離用タブを有する蓋材であって、一つの剥離用タブを中心として蓋材の両端から蓋材の中心方向に向かって徐々に接近する2本の表面ハーフカット線が、紙基材層側からシーラント層に達するように設けられており、該2本の表面ハーフカット線の内側のずれた位置に、それぞれの表面ハーフカット線とほぼ並行して、シーラント層側から紙基材層に達する裏面ハーフカット線が設けられているため、剥離用タブを手で持って引き上げると、表面ハーフカット線と裏面ハーフカット線の間の紙基材層が層内剥離を生じて容易に開封できる。
【0018】
表面ハーフカット線は蓋材の中心方向に向かって徐々に接近する2本の線からなるので、剥離が進むにつれて剥離した蓋材の付け根の部分は徐々に狭くなる。このため剥離した蓋材が戻ろうとする力は弱くなり、蓋材の自重に負けて、開いた状態を保持することができるので、開封保持性に優れている。
【0019】
蓋材には裏面ハーフカット線よりも外側に表面ハーフカット線があるため、剥離した蓋材は、容器に残った蓋材の開口部よりも寸法が大きくなる。このため、剥離した蓋材を開口部に押し込むことにより、確実に再封止することができるため、再封性に優れている。
【0020】
表面ハーフカット線とこれにほぼ並行する前記裏面ハーフカット線との間隔が1mm以上10mm以下であると、表裏面のハーフカット線の位置合わせが容易となり、表裏面のハーフカット線が一致して貫通孔が生じ、ガスバリア性を損なう恐れが少なくなる。また、適度な再封性を発揮し得る。
【0021】
2本の表面ハーフカット線の互いに最も接近した部分における距離が4mm以上20mm以下であると、蓋を開封した時点における蓋の付け根の巾が十分に狭くなるため、蓋の自重によって開いた状態を保持することが可能となり、開封保持性が確保できる。
【0022】
また、2本の表面ハーフカット線が、その内方端がそれぞれ前記剥離用タブを中心として再び外方向に曲線を描くように設けられた場合には、開封動作をスムーズに行うことができる。この場合の曲線の半径は、20mm以上100mm以下であることが好ましい結果を与える。
【0023】
また積層体が、紙基材層と、プラスチックフィルム層と、シーラント層がこの順序で積層されているものである場合には、プラスチックフィルム層として適当な材料を選択することによって蓋材に要求されるさまざまな品質特性に対して、十分に対応することが可能となる。また紙基材層とプラスチックフィルム層との貼合せは、ポリオレフィン系樹脂によるエクストルージョンラミネート法によって積層することが最も効率的である。
【0024】
また紙基材層の裏面の表面ハーフカット線と裏面ハーフカット線の間の部分に剥離ニス層が設けられている場合には、開封面が剥離ニス層表面の界面剥離によるものとなるため、開封がスムーズになり、また開封時の剥離抵抗を調節することが可能である事により、剥離時のしごき効果によってさらなる開封保持性を付与することが出来るようになる。
【0025】
またプラスチックフィルム層とポリオレフィン系樹脂層のラミネート強度が0.1N/15mm以上3.0N/15mm以下である場合には、この界面を開封面とすることにより、快適な開封操作性を安定して確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明に係る蓋材の実施態様を示した平面説明図であり、容器本体に貼着した未開封の状態を示したものである。
【図2】図2は、図1のA−A’断面を示した断面模式図であり、(1)は、蓋材を構成する積層体が紙基材層とシーラント層からなる場合を示す。(2)は、積層体が紙基材層とプラスチックフィルム層とシーラント層からなる場合を示す。(3)は、積層体が紙基材層とポリオレフィン系樹脂層とプラスチックフィルム層とシーラント層からなる場合を示す。
【図3】図3は、図1の蓋材を開封した状態を示した平面模式図である。
【図4】図4は、図3のB−B’断面を示した断面模式図であり、(1)は、蓋材を構成する積層体が紙基材層とシーラント層からなる場合を示す。(2)は、積層体が紙基材層とプラスチックフィルム層とシーラント層からなる場合を示す。(3)は、積層体が紙基材層とポリオレフィン系樹脂層とプラスチックフィルム層とシーラント層からなる場合を示す。
【図5】図5は、図3の一旦開封した蓋材を再封止した状態を示した平面模式図である。
【図6】図6は、図5のC−C’断面を示した断面模式図であり、(1)は、蓋材を構成する積層体が紙基材層とシーラント層からなる場合を示す。(2)は、積層体が紙基材層とプラスチックフィルム層とシーラント層からなる場合を示す。(3)は、積層体が紙基材層とポリオレフィン系樹脂層とプラスチックフィルム層とシーラント層からなる場合を示す。
【図7】図7は、本発明に係る蓋材の他の実施態様を示した平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下図面に従って、本発明に係る蓋材について詳細に説明する。図1は、本発明に係る蓋材の実施態様を示した平面説明図であり、容器本体に貼着した未開封の状態を示したものである。また図2は、図1のA−A’断面を示した断面模式図であり、(1)は、蓋材を構成する積層体が紙基材層とシーラント層からなる場合を示している。また(2)は、積層体が紙基材層とプラスチックフィルム層とシーラント層からなる場合を示している。また(3)は、積層体が紙基材層とポリオレフィン系樹脂層とプラスチックフィルム層とシーラント層からなる場合を示している。
図3は、図1の蓋材を開封した状態を示した平面模式図であり、図5は、図3の一旦開封した蓋材を再封止した状態を示した平面模式図である。
以下図1、図2、図3、図5を適宜参照しながら説明する。
【0028】
本発明に係る蓋材1は、紙基材層11とシーラント層12を少なくとも有する積層体10からなり、1つ以上の剥離用タブ2、2’を有する蓋材であって、一つの剥離用タブ2を中心として蓋材1の両端から蓋材の中心方向に向かって徐々に接近する2本の表面ハーフカット線3が、紙基材層11側からシーラント層12に達するように設けられており、該2本の表面ハーフカット線3の内側のずれた位置に、それぞれの表面ハーフカット線3とほぼ並行して、シーラント層12側から紙基材層11に達する裏面ハーフカット線4が設けられていることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る蓋材1は、トレー状あるいはカップ状の容器本体の上部に設けられたフランジ部に加熱シールにより接着して使用する。
図1の実施態様においては、容器本体(図示せず)は角が丸い長方形であり、蓋材1の4つのコーナー部に剥離用タブ2、2’がついている。これは、最終的に蓋材をすべて除去する段階での利便性を考慮したものである。
【0030】
図1の状態から剥離用タブ2を手で持って上方に引き上げ、蓋材1の剥離を開始すると、表裏面のハーフカット線3、4に沿って蓋の開封が進行する。表裏面のハーフカット線3、4は、ほぼ並行してずれた位置に設けられているので、表裏面のハーフカット線の間の部分は、然るべき層間ないしは層内において剥離することになる。図3に示したように、蓋材1の開封部分6における端部は、表面ハーフカット線3が最外縁となるのに対し、開口部7は裏面ハーフカット線4が最外縁となる。従って、蓋材1の開封部分6の巾は、対応する元の位置の開口部7の巾よりも広いことになる。このため図5に示したように、一旦開封した蓋材1の開封部分6を開口部7に押し込むことにより、再封止が可能となるのである。
【0031】
図1において、表面ハーフカット線3とこれにほぼ並行する裏面ハーフカット線4との間隔wについては、1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上8mm以下がより望ましい。
1mm以下では、後述する蓋材の再封止性を確保することが困難になる他、ハーフカット線が加工精度のばらつきによって本来の位置からずれた場合に表裏面のハーフカット線が一致してしまい、蓋材のバリア性が損なわれる危険性が生じるためである。
【0032】
またwの値が10mmよりも大であると、表裏面のハーフカット線の間隔が広すぎて、開封に要する力が大きくなり過ぎ、開封性が損なわれる可能性がある他、再封止の際に、開口部7に押し込む時の操作性が損なわれる恐れがある。
【0033】
wの値が1mm以上10mm以下であれば、開封性や再封止性が良好であり、3mm以上8mm以下の場合には、特に良い結果が得られる。
【0034】
2本の表面ハーフカット線3の互いに最も接近した部分における距離dについては、4mm以上20mm以下であることが好ましく、5mm以上10mm以下であることがより望ましい。
蓋材1には、アルミニウム箔を使用していないため、一般的に形状保持性が乏しく、折り癖をつけても常に元に戻ろうとする性質がある。剥離用タブ2から開封を開始した蓋材1の開封部分6は、両端が2本の表面ハーフカット線3に沿って開封してゆくが、蓋材の本体部分と繋がった付け根の部分の巾は、2本の表面ハーフカット線3が徐々に接近するように設けられているために、徐々に狭くなっていく。開封した蓋を図3のように折り返すと、付け根の部分が狭くなり、開封部分6の重さに負けて開封したままの状態になる。
この時、dの値が20mm以下であれば、この開封保持性が確保できるが、dの値が4mm未満であると、開封部分がちぎれたり、再封止時の操作性が損なわれる可能性がある。
【0035】
表面ハーフカット線3はその内方端がそれぞれ剥離用タブ2を中心として再び外方向に曲線を描くように設けられ、さらにこの曲線の半径は20mm以上100mm以下である事が好ましく、50mm以上80mm以下であることがより望ましい。
ハーフカット線の内方端が外方向に向かっていることにより、開封後の開封部分6の付け根の近傍部分に強度を持たせることが可能であり、さらに曲線を描くように設計することで、開封動作をスムーズに行うことが出来る。
【0036】
曲線の半径Rとしては20mm以上100mm以下が好ましく、50mm以上80mm以下がより望ましい。20mm未満の場合、端部形状が急であり、開封動作がスムーズでなく、さらに開封時に切れてしまうなどの不具合が発生してしまう恐れがある。また曲線の半径Rが100mmより大である場合、端部幅が広くなるため自重による開封保持性が安定的に得られない可能性がある。
【0037】
本発明に係る蓋材1に用いる積層体10の構成については、図2(1)に示したように
、紙基材層11とシーラント層12からなる構成が最も基本的な構成となる。紙基材層11としては、アート紙、コート紙、上質紙、晒クラフト紙、などが主に使用できるが、特に限定されるものではない。紙坪量について特に規定はないが、50〜250g/mのものが好ましく、80〜150g/mがより望ましい。また、紙基材の表面や裏面に、絵柄や遮光性を付与する印刷を付与してもよい。
【0038】
シーラント層12としては、容器本体のフランジ部5からの剥離性を容易なものとするため、イージーピールシーラントとすることが好ましい。また低温シール性に優れたものが望ましく、シール温度の変化によって、シール強度に大きな変化を生じないものが望ましい。シーラント層12は、内容物充填後に、容器本体のフランジ部5とシールされるが、蓋材への抜き加工自体は、充填時、充填後のいずれでもよく、限定されない。また剥離特性については特に限定されず、凝集剥離タイプ、層間剥離タイプ、界面剥離タイプのいずれのタイプを用いてもよい。
【0039】
シーラント層12の被着体である容器本体のフランジ部5の材質がポリエチレン樹脂(PE)の場合は、ベース樹脂/ブレンド用の熱可塑性樹脂の組合せとしては、ポリエチレン樹脂(PE)/エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、ポリエチレン樹脂(PE)/エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン樹脂(PE)/エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、ポリエチレン樹脂(PE)/エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)の組合せが好ましい。
【0040】
被着体がポリスチレン樹脂(PS)の場合は、ベース樹脂/ブレンド用の熱可塑性樹脂の組合せとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)/ポリブテン樹脂(PB)、ポリエチレン樹脂(PE)+エラストマー+石油樹脂/ポリブテン樹脂(PB)の組合せが好ましい。
【0041】
また被着体がポリプロピレン樹脂(PP)の場合は、ベース樹脂/ブレンド用の熱可塑性樹脂の組合せとしては、ポリプロピレン樹脂(PP)/ポリスチレン樹脂(PS)、ポリプロピレン樹脂(PP)/ポリエチレン樹脂(PE)の組合せが好ましい。また、シーラント層12の厚さとしては、シール強度、加工性を考慮すると、15〜100μmの範囲内であることが好ましく、30〜70μmの範囲内がより好ましい。
【0042】
紙基材層11とシーラント層12の接着方法としては、ウエットラミネート法、ドライラミネート法、ノンソルベントドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、エクストルージョンラミネート法、及びエクストルージョンラミネート法を利用したサンドイッチラミネート法などの公知の方法を使用することができる。なお図2(1)では、接着剤層を省略している。
【0043】
積層体10の層構成が紙基材層11とシーラント層12からなる場合の、開封時の剥離部位は、紙基材層11の層内剥離となる場合が一般的であるが、紙基材層11の裏面の、表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間の部分に剥離ニス層が設けられている場合には、開封時の剥離部位は剥離ニス層と接着剤層との界面剥離となる。
【0044】
剥離ニス層を設けることによって、開封時の剥離強度を最適に設計することが可能となり、開封に適度な重さを持たせることによって、剥離時のしごき効果によって剥離した蓋材に開きぐせをつけることができる。このため開封した蓋材の開封部分の開封保持性が向上する。剥離ニスとしては、各種合成樹脂ワニスにシリコーンオイルやワックス等を添加して、後から塗工する接着剤や合成樹脂ワニスの密着性を減少させる効果を有する公知の剥離ニスが使用できる。
【0045】
積層体10の第二の実施形態としては、図2(2)に示したように、紙基材層11とプラスチックフィルム層13と、シーラント層12がこの順序で積層されている構成をとることができる。
【0046】
プラスチックフィルム層13としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド樹脂(ナイロン−6、ナイロン−66等)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂など、あるいはこれらの共重合体など、耐熱性を有するプラスチックフィルムが使用できる。厚みについて特に規定はないが、10〜300μmのものが好ましく、10〜50μmがより望ましい。また、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤などの添加剤を加えることができ、必要に応じて適宜添加される。なお、これらのプラスチックフィルムの内面に遮光性を付与する印刷、若しくは遮光性材質のフィルムをラミネートしたものを用いても良いし、各種のガスバリア性を有するフィルムや、無機物を蒸着したガスバリア性フィルムでも良い。
【0047】
紙基材層11とプラスチックフィルム層13の接着方法としては、同様にしてウエットラミネート法、ドライラミネート法、ノンソルベントドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、エクストルージョンラミネート法、及びエクストルージョンラミネート法を利用したサンドイッチラミネート法などの公知の方法を使用することができる。なお図2(2)では、接着剤層を省略している。
【0048】
紙基材層11とプラスチックフィルム層13の接着方法として、ポリオレフィン系樹脂によるエクストルージョンラミネート法を用いることは、好ましい方法である。
この場合の積層体の層構成としては、図2(3)に示したように、積層体10が紙基材層11とポリオレフィン系樹脂層14とプラスチックフィルム層13とシーラント層12からなる4層構成となる。なお図では、接着剤層を省略している。
【0049】
ポリオレフィン系樹脂層14に用いるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられるが、取り扱いの面から低密度ポリエチレン(LDPE)の使用がより好ましい。
【0050】
紙基材層11とプラスチックフィルム層13をエクストルージョンラミネート法によりラミネートする際のLDPEの押出し温度としては280℃〜340℃が適しており、280℃より低い場合は製膜性が劣るだけでなく、ポリエチレン自身の表面酸化が不足し、紙基材11とプラスチックフィルム13のラミネート強度の低下を引き起こしてしまう。また、340℃よりも高い温度では樹脂の分解がすすんでしまうため、均一な加工ができないだけでなく、ラミネート強度の低下を引き起こしてしまう。
【0051】
プラスチックフィルム層13とポリオレフィン系樹脂層14のラミネート強度が0.1N/15mm以上3.0N/15mm以下である場合には、この界面を開封面とすることにより、快適な開封操作性を安定して確保することが可能となる。また、剥離時のしごき効果により、開封部分の開封保持性を高めることができる。
【0052】
プラスチックフィルム層13とポリオレフィン系樹脂層14の界面にはアンカーコートを塗布しないことが望ましい。アンカーコートを塗布しないことによりプラスチックフィルム層13とポリオレフィン系樹脂層14間のラミネート強度を0.1N/15mm以上3.0N/15mm以下とすることが可能となる。
【0053】
図4は、図3のB−B’断面を示した断面模式図であり、蓋材を開封して開封部分が除去された状態を示している。(1)〜(3)それぞれの積層体10の層構成による開封時の
剥離部位の違いを表している。図4(1)は、積層体10が、紙基材層11とシーラント層12からなる場合を示している。この場合の剥離部位は、紙基材層11の層内剥離となるのが一般的であるが、既に説明したように、紙基材層11の裏面の、表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間の部分に剥離ニス層が設けられている場合には、開封時の剥離部位は剥離ニス層と接着剤層との界面剥離となる。図4(1)は、後者の場合を示している。
【0054】
図4(2)は、積層体10が、紙基材層11とプラスチックフィルム層13とシーラント層12からなる場合を示している。この場合も剥離部位は、紙基材層11の層内剥離となるのが一般的であるが、同様にして、紙基材層11の裏面の、表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間の部分に剥離ニス層が設けられている場合には、開封時の剥離部位は剥離ニス層と接着剤層との界面剥離となる。図4(2)も、後者の場合を示したものである。
【0055】
図4(3)は、積層体10が、紙基材層11とポリオレフィン系樹脂層14とプラスチックフィルム層13とシーラント層12からなる場合を示している。この場合、各層の接着が完全に行われている場合には、剥離部位は紙基材層11の層内剥離となるが、紙基材層11とプラスチックフィルム層13のラミネート方法をポリオレフィン系樹脂によるエクストルージョンラミネート法によって積層する場合で、なおかつアンカーコートを用いない場合には、図のようにポリオレフィン系樹脂層14とプラスチックフィルム層13の界面剥離とすることができる。
【0056】
表裏面のハーフカット線の切断深さは、表面ハーフカット線3については、紙基材層11からシーラント層12に達する深さとし、裏面ハーフカット線4については、シーラント層12から紙基材層11に達する深さとすることにより、上記のすべての層構成に対して対応することが可能であるが、目的とする剥離部位に応じて、ハーフカット線の切断深さは適宜調節することは差し支えない。
【0057】
例えば、剥離部位が紙基材層11の層内剥離であれば、表面ハーフカット線3の切断深さは、必ずしもシーラント層12に到達する必要はなく、紙基材層11を少し残すような深さでもかまわない。
【0058】
ハーフカット線の切断深さについては、あまり厳密なものではなく、多少切り足りなかったり、切り過ぎたりしても、大きな問題とはならない場合が多い。これは剥離部位が層内の最も弱い部分で剥離するように自動的に決まるからである。
【0059】
図5は、図3の一旦開封した蓋材を再封止した状態を示した平面模式図であり、図6は図5のC−C’断面を示した断面模式図である。既に説明したように、開封部分6の巾は、対応する開口部の巾よりも広いため、開封部分6の両端部を開口部に押し込むことにより、一旦開封した蓋材を再封止することが可能となる。このため、本発明に係る蓋材を用いた容器は、一旦開封して開口部を開き、例えば湯を注いで再封止し、一定時間後に喫食するような食品の容器として好適に使用できるものとなる。
【0060】
図7は、本発明に係る蓋材の他の実施態様を示した平面模式図である。この例では、蓋材1の外形が円形であり、剥離用タブが2箇所である以外は、図1に示した実施態様と本質的には同じである。
【0061】
蓋材形状として、開口部を開口する為の剥離用タブ2以外に、蓋材の剥離を目的とした剥離用タブ2’を少なくとも1つ以上設けても良い。また、図1、図5、図7に示したように、開口部の対角線上に貫通スリット8を付与した剥離用タブ2’を設けても良い。そ
こに開口部の剥離用タブ2を差し込むことにより、開口部を更に安定して保持させることができる。
以下実施例により、本発明に係る蓋材についてさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0062】
紙坪量が105g/mの片アート紙にイージーピール層として、ベース樹脂/ブレンド用の熱可塑性樹脂の組合せからなるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)/ポリブテン樹脂(PB)を組合せた混合樹脂を使用し、エクストルージョンラミネート法により、シーラント層12を設けて積層体を得た。続いて、この巻取り状の積層体を紙側およびシーラント側からそれぞれシーラント層、紙層内部までハーフカットを設け、蓋材形状に抜き加工を実施し、蓋材を得た。この時、表面ハーフカット線3と、裏面ハーフカット線4の間隔wは3mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dは10mm、さらにその曲線が半径Rを60mmになるように設け試作品を得た。
【実施例2】
【0063】
表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wを5mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dを20mm、さらにその曲線の半径Rを80mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして試作品を得た。
【実施例3】
【0064】
坪量が105g/mの紙基材の裏面に、紙側およびシーラント側から設けるハーフカットのずれの位置に、ワックス成分を含む剥離ニスをグラビア印刷にて塗工した。続いて、厚さ12μmのポリエステルフィルム(PET)およびポリスチレン系樹脂を含むイージーピール層をノンソルベントラミネート法によりラミネート加工し、積層体を得た。続いて、この巻取り状の積層体を紙側およびシーラント側からハーフカットを設け、蓋材形状に抜き加工を実施し、蓋材を得た。
この時、表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wは3mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dは10mm、さらにその曲線の半径Rが60mmになるように設け試作品を得た。
【実施例4】
【0065】
表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wを5mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dを20mm、さらにその曲線の半径Rを80mmになるようにした以外は、実施例3と同様にして試作品を得た。
【実施例5】
【0066】
坪量が105g/mの紙基材と厚さ12μmのポリエステルフィルム(PET)を、低密度ポリエチレン樹脂によるエクストルージョンラミネート法により樹脂温度を320℃で押出し、貼り合わせた。さらにPET面にポリスチレン系樹脂を含むイージーピール層を同様にエクストルージョンラミネート法により280℃で押出し、積層体を得た。続いて、この巻取り状の積層体の紙側およびシーラント側からハーフカットを設け、蓋材形状に抜き加工を実施し、蓋材を得た。
表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wを3mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dを10mm、さらにその曲線の半径Rを60mmになるように設け、試作品を得た。
【実施例6】
【0067】
低密度ポリエチレン樹脂の押出し温度を300℃、表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wを5mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dを20mm、さ
らにその曲線の半径Rを80mmになるようにした以外は、実施例5と同様にして試作品を得た。
<比較例1>
【0068】
表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wを3mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dを1mm、さらにその曲線の半径Rを60mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして試作品を得た。
<比較例2>
【0069】
表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wを0.5mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dを20mm、さらにその曲線の半径Rを80mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして試作品を得た。
<比較例3>
【0070】
表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wを3mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dを10mm、さらにその曲線の半径Rを10mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして試作品を得た。
<比較例4>
【0071】
表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wを3mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dを1mm、さらにその曲線の半径Rを60mmになるようにした以外は、実施例3と同様にして試作品を得た。
<比較例5>
【0072】
表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wを0.5mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dを20mm、さらにその曲線の半径Rを80mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして試作品を得た。
<比較例6>
【0073】
表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wを3mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dを10mm、さらにその曲線の半径Rを10mmになるようにした以外は、実施例1と同様にして試作品を得た。
<比較例7>
【0074】
表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wを3mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dを1mm、さらにその曲線の半径Rを60mmになるようにした以外は、実施例5と同様にして試作品を得た。
<比較例8>
【0075】
表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wを0.5mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dを20mm、さらにその曲線の半径Rを80mmになるようにした以外は、実施例5と同様にして試作品を得た。
<比較例9>
【0076】
表面ハーフカット線3と裏面ハーフカット線4の間隔wを3mm、表面ハーフカット線3の近傍部分の距離dを10mm、さらにその曲線の半径Rを10mmになるようにした以外は、実施例5と同様にして試作品を得た。
【0077】
上記各試作品について開封性、および開封保持性の評価を行った結果を表1にまとめた。
【0078】
【表1】

【0079】
表1の結果から分かるように、本発明に係る蓋材は、開封性および開封保持性に優れ、再封止性も良好であった。
【符号の説明】
【0080】
1・・・蓋材
2、2’・・・剥離用タブ
3・・・表面ハーフカット線
4・・・裏面ハーフカット線
5・・・容器本体フランジ部
6・・・開封部分
7・・・開口部
8・・・貫通スリット
w・・・表裏ハーフカット線の間隔
R・・・曲線の半径
d・・・表面ハーフカット線の距離
10・・・積層体
11・・・紙基材層
12・・・シーラント層
13・・・プラスチックフィルム層
14・・・ポリオレフィン系樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材層とシーラント層を少なくとも有する積層体からなり、1つ以上の剥離用タブを有する蓋材であって、一つの剥離用タブを中心として蓋材の両端から蓋材の中心方向に向かって徐々に接近する2本の表面ハーフカット線が、紙基材層側からシーラント層に達するように設けられており、該2本の表面ハーフカット線の内側のずれた位置に、それぞれの表面ハーフカット線とほぼ並行して、シーラント層側から紙基材層に達する裏面ハーフカット線が設けられていることを特徴とする蓋材。
【請求項2】
前記表面ハーフカット線とこれにほぼ並行する前記裏面ハーフカット線との間隔が1mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
前記2本の表面ハーフカット線の互いに最も接近した部分における距離が4mm以上20mm以下であり、各表面ハーフカット線はその内方端がそれぞれ前記剥離用タブを中心として再び外方向に曲線を描くように設けられ、該曲線の半径は20mm以上100mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の蓋材。
【請求項4】
前記積層体は、紙基材層と、プラスチックフィルム層と、シーラント層がこの順序で積層されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓋材。
【請求項5】
紙基材層とプラスチックフィルム層がポリオレフィン系樹脂によるエクストルージョンラミネート法によって積層されていることを特徴とする請求項4に記載の蓋材。
【請求項6】
紙基材層の裏面の前記表面ハーフカット線と裏面ハーフカット線の間の部分に剥離ニス層が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓋材。
【請求項7】
プラスチックフィルム層とポリオレフィン系樹脂層のラミネート強度が0.1N/15mm以上3.0N/15mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の蓋材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−6613(P2012−6613A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142495(P2010−142495)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】