説明

薄型デジタルカメラ及びデジタルカメラの撮像機構

【課題】 撮影時の画質への影響が少なく、光軸方向の厚みを薄くできる撮像機構20を提供する。
【解決手段】 ローパスフィルター23を可動枠に固定し、撮像素子10の周囲を固定枠にて囲い、可動枠を固定枠に対して移動可能に取り付け、撮像時はローパスフィルター23を撮像素子10から離し、非撮像時はローパスフィルター23を撮像素子10の近くに位置させる撮像機構20とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラに関するものであり、尚詳しくは、薄型デジタルカメラ及び薄型デジタルカメラに適した撮像素子周辺の取付け機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、デジタルカメラや監視用又は観察用のテレビカメラなどは、撮像素子として二次元CCDデバイスを用いたカメラが多く使用されている。
このようなCCD撮像素子は、今日、300万画素や500万画素の高画素数とされるものがあり、図18に示すように、CCDデバイス11の前面にカバーガラス15を封止ガラスとして有するものであって、アルミ細線又は金線などのボンディングワイヤー17によりCCDデバイス11の回路とパッケージ本体13の外周面に設けた接点ピンなどの端子が接続され、カバーガラス15の周縁とパッケージ本体13との間隙を接着剤19で密閉して気密構造のCCD撮像素子10とされるものである。
【0003】
そして、デジタルカメラや監視用テレビカメラなどは、前記の撮像素子10を枠体で覆うと共に、オプティカルローパスフィルター(以下単に「ローパスフィルター」と言う)をCCD撮像素子10の前方に配置した撮像機構とし、この撮像機構をレンズ光学系の後方に配置しているものである。
【0004】
この撮像機構は、図19に示すように、撮像素子10を囲むように覆う枠体27を設け、撮像素子10の前方に方形のゴムリング25を配置し、このゴムリング25の上にローパスフィルター23を配置し、ローパスフィルター23を枠体27の透孔29に合わせて枠体27によりローパスフィルター23を押さえるようにしてゴムリング25によりローパスフィルター23と撮像素子10との間に間隙を設けてローパスフィルター23を撮像素子10の前面に固定しているものである。
【0005】
このように、デジタルカメラや監視用テレビカメラなどに組み込まれる撮像機構20は、撮像素子10の表面とローパスフィルター23との間に間隙を設けて閉鎖空間とし、塵芥が撮像素子10のカバーガラス15に付着することがないようにすると共に、塵芥がローパスフィルター23の表面に付着したとき、このローパスフィルター23の表面に付着した塵芥の影がCCDデバイス11の特定の画素に明確に映り込まないようにしている。
【0006】
なお、ローパスフィルター23を光軸と直行する方向に移動させ、ローパスフィルター23に付着した塵芥の影がCCDデバイス11の特定の画素に映り込まないようにすることも提案されている(例えば特許文献1)。
また、デジタルカメラを小型化するために、レンズ鏡筒81を沈胴式とすると共に、非撮影時はローパスフィルター23と撮像素子10とをズームレンズに接近させ、撮影時には撮像素子10とローパスフィルター23とをズームレンズと所要距離とし、撮像素子10とローパスフィルター23とを含む撮像機構20とレンズとの距離を調整可能としつつデジタルカメラを薄型とすることも提案されている(例えば特許文献2)
【特許文献1】特開2002−010137号公報
【特許文献1】特開2002−314855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
デジタルカメラや監視用テレビカメラなどでは、今日、カメラの小型化の要望が強く、光学系や回路素子などの小型化・密集化に種々の工夫がされている。
そして、これらのカメラでは、撮像機構の小型化や薄型化も望まれているも、ローパスフィルターと撮像素子との距離を小さくするとローパスフィルターに付着した塵芥の影が撮像素子で撮影した画像に映り込み、画質を低下させるため、ローパスフィルターに付着する塵芥による画質低下を防止しつつ撮像機構の薄型化ひいてはカメラの薄型化が望まれていた。
【0008】
本発明は、この要望に答え、画質への影響が少なく、光軸方向の厚みを薄くできる撮像機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ローパスフィルター(23)を可動枠に固定し、撮像素子(10)の周囲を固定枠にて囲い、可動枠を固定枠に対して移動可能に取り付け、撮像時はローパスフィルター(23)を撮像素子(10)から離し、非撮像時はローパスフィルター(23)を撮像素子(10)の光軸方向に後退させる撮像機構(20)とするものである。
【0010】
このように、ローパスフィルター(23)と撮像素子(10)との距離を可変とすることにより、撮影時はローパスフィルター(23)を撮像素子(10)から離し、非撮影時はローパスフィルター(23)を撮像素子(10)の光軸方向に後退させて撮像機構(20)の厚みを薄くできる。
【0011】
なお、ローパスフィルター(23)及び可動枠の移動は、撮像素子(10)の光軸に沿って移動させることが好ましい。
そして、可動枠は固定枠に対して摺動可能とされて撮像素子(10)の周囲を固定枠と可動枠とで囲むように配置するものである。
このように、可動枠と固定枠を摺動可能として撮像素子(10)を囲めば、可動枠の内側を閉鎖した空間として撮像素子(10)の表面に塵芥が付着することを防止できる。
【0012】
さらに、固定枠の内側に溝部(26)を形成し、この溝部(26)に可動枠の後方を挿入して可動枠を挟むようにして摺動させることがある。
なお、可動枠は2つの可動部に分けて相互に摺動させて固定枠に対して移動可能とすることが好ましい。
【0013】
また、可動枠と可動枠との摺動は、一方の可動枠の後端に外方への鍔部を設け、他方の可動枠の前端に突起を設け、突起の内周及び鍔部の外周を他の可動枠に摺接させて鍔部と突起とを係合可能とすることが好ましい。
【0014】
さらに、方形の可動枠及び固定枠の四辺を各々2枚のリンク板を介して接続することにより可動枠と固定枠を接続し、四隅にリンク板の端部を覆うカバー部を設けることがある。
このように、リンク板とカバー部とにより固定枠の周囲を囲むことにより可動部内に塵芥を入れないようにすることができる。
【0015】
また、弾性体(30)により可動枠を固定枠方向に又は固定枠から離す方向に付勢しておくことがある。
そして、固定枠と可動枠とするスライド枠体(51)とを傾斜面で対向させて配置し、可動枠を撮像素子の光軸と交わる方向に移動させ、傾斜面に沿って光軸方向に移動させるようにすることもある。
このように、傾斜面を対向させると、間隙を開けずに横にずらして厚みを変化させることができる。
【0016】
さらに、固定枠と可動枠との間に透孔部分を中央に有する複数枚のスライド板(55)を配置することがある。
そして、スライド板(55)の透孔部分はローパスフィルター(23)よりも大きく、透孔部分の周囲における移動方向の幅はスライド板(55)の移動幅よりも広くすることが好ましい。
【0017】
このように、スライド板(55)の透孔部分の周囲に移動幅よりも広い幅を持たせれば、各スライド板(55)をずらせたときに撮像素子(10)の前方をスライド板(55)の重なりで覆うことができる。
また、スライド枠体(51)は撮像素子(10)の光軸方向と交わる方向に弾性体(30)により付勢しておくことが好ましい。
【0018】
そして、本発明は、レンズ鏡筒(81)の駆動と連動して可動枠を光軸方向又は光軸と交わる方向に移動させるデジタルカメラ(80)とするものである。
このように、レンズ鏡筒(81)と連動して可動枠を移動させると、カメラ(80)の撮影時と非撮影時で可動枠即ちローパスフィルター(23)の位置を変化させることができる。
【0019】
そして、沈胴式のレンズ鏡筒(81)の後方にレンズの光軸と撮像素子(10)の光軸を一致させて撮像機構(20)を配置するデジタルカメラ(80)とするものである。
また、ローパスフィルター(23)を支持する可動枠を弾性体(30)により前方へ付勢し、レンズ鏡筒(81)により可動枠を押し下げられるようにしたデジタルカメラ(80)とすることが好ましい。
【0020】
そして、レンズ鏡筒(81)の駆動機構と連動する可動枠駆動機構を設け、可動枠を光軸方向又は光軸と交差する方向に移動させるデジタルカメラ(80)とすることがある。
尚、ローパスフィルター(23)を支持する可動枠を弾性体(30)により撮像素子(10)の方向へ付勢し、レンズ鏡筒(81)を迫り出すとき、可動枠を前方に引き出す駆動機構を設けることもあり、可動枠とするスライド枠体(51)を駆動機構により移動させることもある。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、ローパスフィルターを固定する可動枠を撮像素子の周囲を囲む固定枠に対して移動可能としているため、撮像素子を動作させない非撮影時はローパスフィルターを撮像素子の光軸方向に後退させて撮像機構を薄くし、撮像素子を使用して撮影を行うときはローパスフィルターを撮像素子から離した位置に合わせてローパスフィルターに付着する塵芥などによる画質の低下を防止することができる。
【0022】
また、ローパスフィルターが固定された可動枠を移動可能とした撮像機構を内蔵し、レンズ鏡筒の動きと連動する可動枠駆動機構を有するデジタルカメラは、レンズ鏡筒を迫り出させたカメラ使用時はローパスフィルターを撮像素子から離して位置させるように可動枠を移動させてローパスフィルターに付着した塵芥などによる影響の少ない画像データを形成し、カメラの非使用時はローパスフィルターを撮像素子の近くに位置させるように可動枠を移動させて撮像機構を薄くすることによってレンズ鏡筒の後退量を大きくし、カメラを薄くすることができる。
【0023】
そして、弾性体により可動枠を前方に付勢し、レンズ鏡筒により可動枠を後退させるようにしたデジタルカメラは、構造を単純としつつカメラを薄くすることが容易にできるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係るデジタルカメラ80の実施の形態は、撮像素子10の周囲に固定枠部22を配置し、固定枠部22に対して光軸方向に摺動可能とした可動枠部35を設け、可動枠部35の中央に設けた透孔窓39にローパスフィルター23を固定してローパスフィルター23を撮像素子10の光軸方向に移動可能とし、弾性体30により可動枠部35を撮像素子10と離す方向に付勢した撮像機構20とし、撮像素子10の光軸をレンズ光学系の光軸と一致させてレンズの後方に撮像機構20を配置し、沈胴式のレンズ鏡筒81が後退したとき、レンズ鏡筒81の後端により可動枠部35を後退させる構造としたデジタルカメラ80とするものである。
【実施例】
【0025】
本発明に係るデジタルカメラの実施例は、図1及び図2に示すように、カメラ80の上部に電源ボタン89やシャッターボタン87を有し、カメラ80の前面にファインダ窓83やストロボ発光窓85、更に、沈胴式のレンズ鏡筒81を有するデジタルカメラ80である。
【0026】
そして、電源ボタン89を操作してカメラ80の機能を停止させた非撮影時は、図1に示したようにレンズ鏡筒81をボディーに収納し、電源ボタン89を操作して撮影準備状態とすると、カメラボディに内蔵しているモータを作動させて減速歯車やウォームスクリューなどを組み込んだ駆動機構により、図2に示したようにレンズ鏡筒81を迫り出させるデジタルカメラ80としているものである。
【0027】
このデジタルカメラ80は、レンズの光軸と撮像素子10の光軸とを一致させてレンズの後方に撮像素子10を配置するように撮像機構20を組み込んでおり、この撮像機構20は、図3に示すように、可動枠とされる可動枠部35と固定枠である固定枠部22とにより撮像素子10を囲むと共に、可動枠部35にローパスフィルター23を固定することにより撮像素子10の前方にローパスフィルター23を配置しているものである。
【0028】
この撮像機構20は、図4及び図5に示すように、固定枠板21の中央に撮像素子10を固定し、固定枠板21から撮像素子10の周囲を囲むように方形の筒状とした固定枠部22を突出させている。
【0029】
そして、固定枠部22の内側には内枠部24を設け、固定枠部22と内枠部24とにより固定枠部22の内側周辺に溝部26を形成し、この溝部26に可動枠部35の側壁37を挿入して可動枠部35を摺動可能に支持するものである。
【0030】
さらに、可動枠部35の中央に形成された透孔窓39の内側にローパスフィルター23を固定し、可動枠である可動枠部35の上面に可動枠支持板31を取り付け、この可動枠支持板31の両側に突出させた腕部33と固定枠板21との間に弾性体30を設けてローパスフィルター23を撮像素子10から離す方向に付勢しているものである。
【0031】
従って、この撮像機構20は、可動枠部35や可動枠支持板31又は可動枠支持板31の腕部33を前方(図面の上方)から押圧すると、図5に示すように、ローパスフィルター23を撮像素子10に近接させて厚みを薄くすることができる。
【0032】
また、可動枠部35における透孔窓39の内側にローパスフィルター23を密着させて固定しており、可動枠部35の周囲側壁37の後方を固定枠部22の内側に形成した溝部26に挿入して摺動可能としているものであるから、可動枠部35の内部空間を閉鎖した空間としており、塵芥が可動枠部35の内側に侵入し難く、塵芥が撮像素子10の表面に設けたカバーガラス15などに付着することを阻止しているものである。
【0033】
さらに、固定枠である固定枠部22の内側に溝部26を形成し、この溝部26に可動枠である可動枠部35の後方を挿入して可動枠を挟むようにして摺動させているため、塵芥の侵入をより少なくすることができる。
【0034】
そして、他の実施例としては、図6に示すように、可動枠部35を2つに分けるものである。
この実施例も、図7に示すように、固定枠板21の中央に撮像素子10を固定し、撮像素子10の周囲に円筒状の内枠部24を設けると共に、内枠部24の周囲に溝部26を形成するように内枠部24の外周を囲む円筒状の固定枠部22を固定枠板21に取り付けるものである。
【0035】
この固定枠部22の上端内側には、固定枠部22の内側に突出する固定突起部27を形成しており、固定突起部27の内側に摺接する円筒状の第2可動枠45を設け、第2可動枠45の下端外周には第2可動枠45の下端から外方に突出する第2鍔部49を形成し、この第2鍔部49の外周を固定枠部22の内周に摺接させるものである。
【0036】
さらに、第2可動枠45の上端には、内側に突出する第2突起47を設け、この第2突起47の内側に摺接する円筒状の第1可動枠41を設け、第1可動枠41の下端外周には第1可動枠41の下端から外方に突出する第1鍔部43を形成し、この第1鍔部43の外周を第2可動枠45の内周に摺接させるものとし、第1可動枠41の中央に設けた透孔窓39の内側にローパスフィルター23を固定するものである。
【0037】
また、第1可動枠41の上面には、可動枠支持板31を取り付け、可動枠支持板31から側方に突出した腕部33と固定枠板21との間に弾性体30を配置して第1可動枠41などを前方に付勢するものである。
【0038】
この第2の実施例は、前記の第1の実施例と比較し、ローパスフィルター23の光軸方向の移動量を大きくしつつ撮像機構20を薄くすることが容易に可能とすることができるものである。
さらに、固定枠である固定枠部22の内側に溝部26を形成し、この溝部26に可動枠である第2可動枠45の後方を挿入して可動枠を挟むようにして摺動させているため、第1の実施例と同様に、塵芥の侵入をより少なくすることができる。
【0039】
そして、第1可動枠41と第2可動枠45との摺動は、第1鍔部43と第2突起47とを設け、第2突起47の内周及び第1鍔部43の外周を他の可動枠に摺接させているため、可動枠の繋ぎ部分からの塵芥の侵入を少なくすることができ、且つ、第1鍔部43と第2突起47とを係合させて第1可動枠41を常に第2可動枠45に内挿した状態として移動させることができる。
【0040】
また、他の実施例としては、図9及び図10に示すように、固定枠部22の前方に可動枠である可動枠部35を配置し、固定枠部22と可動枠部35とをその周囲4方に設けた第1リンク板61と第2リンク板63とにより接続するものである。
即ち、固定枠板21の中央に撮像素子10を固定し、この撮像素子10を囲む方形の固定枠部22を固定枠板21に設けることは他の実施例と同様である。
【0041】
そして、この固定枠部22の辺の長さと等しい長さを有する板状の第2リンク板63を固定回転軸67により固定枠部22の4辺に各々回転可能に取り付け、各第2リンク板63の他辺には固定回転軸67と平行としたリンク軸66により第1リンク板61を各々第2リンク板63に対して回転可能に取り付けるものである。
【0042】
この各第2リンク板63も各第1リンク板61と同一長さにして略同一幅とし、第1リンク板61の他辺にはリンク軸66と平行な可動回転軸65を設けて第1リンク板61を可動枠部35の4辺に各々回転可能に取り付けるものである。
【0043】
この可動枠部35は、固定枠部22と同一外形とする4辺を有し、中央に透孔窓39を有して透孔窓39の内側にローパスフィルター23を固定するものであり、固定枠部22の4隅の角部には脇カバー部38を有するものである。
【0044】
この脇カバー部38は、可動枠部35の上端から固定枠部22の厚みに近い高さだけ可動枠部35よりも下方に突出する高さとして各隅角部から可動枠部35の各辺を延長するように設けられ、各辺を挟む2つの脇カバー部38の対向する内面は第1リンク板61及び第2リンク板63の端面に摺接するようにしているものである。
【0045】
また、可動枠部35の前面には可動枠支持板31を取り付け、可動枠支持板31から突出させた腕部33と固定枠板21との間に弾性体30を設けて可動枠部35を前方に付勢するものである。
【0046】
従って、この撮像機構20では固定枠部22と可動枠部35の4辺を各々第1リンク板61と第2リンク板63とにより接続し、固定枠部22及び可動枠部35の4隅は第1リンク板61及び第2リンク板63の端部に摺接する脇カバー部38を設けているため、固定枠部22と可動枠部35との間の各辺を第1リンク板61及び第2リンク板63で覆い、隣り合う各第1リンク板61相互間及び第2リンク板63相互間の間隙を脇カバー部38で塞ぐようにすることができる。
【0047】
このため、弾性体30により付勢して可動枠部35と固定枠部22との間隔が固定枠部22の厚みよりも僅かに小さな幅となる位置まで可動枠部35を前方に移動させると、図10に示したように、脇カバー部38の下端が固定枠部22の上端近くとなって図9に示したように固定枠部22や可動枠部35の四隅の間隙を塞ぎ、固定枠部22や可動枠部35の四辺を各々第1リンク板61及び第2リンク板63で覆って撮像素子10の前方空間を閉鎖空間としてローパスフィルター23と撮像素子10との距離を保つことができる。
【0048】
そして、可動枠部35の前方から外力が加わると、図11及び図12に示すように、可動枠部35が固定枠部22と接触するように可動枠部35が後退し、撮像機構20の厚みを薄くすることができる。
【0049】
このように、方形の可動枠である可動枠部35及び固定枠である固定枠部22の四辺を各々2枚のリンク板を介して可動枠と固定枠を接続し、四隅にリンク板の端部を覆うカバー部を設けてリンク板とカバー部とにより固定枠の周囲を囲むことにより、可動枠の内部に塵芥を入れないようにすることができる。
【0050】
このように、可動枠部35及びローパスフィルター23を撮像素子10の光軸方向に沿って移動可能としてローパスフィルター23を支持する可動枠を弾性体30により前方へ付勢した撮像機構20のは、レンズ鏡筒81をカメラ80に収納するときにローパスフィルター23を固定した可動枠を後退させることができ、単純な機構でレンズ鏡筒81を収納するとき、即ち非撮影時にローパスフィルター23を後退させることができ、容易にデジタルカメラ80の厚みを薄くすることができる。
【0051】
なお、前記各実施例は、腕部33と固定枠支持板との間に配置した弾性体30により可動枠支持板31を前方へ付勢し、レンズ鏡筒81の後端により可動枠支持板31又は腕部33を押圧させて可動枠支持板31を後退させるようにしているも、弾性体30により可動枠支持板31を後方に付勢し、レンズ鏡筒81の迫り出しに合わせ、レンズ鏡筒81の駆動機構と連動して可動枠支持板31や可動枠部35を前方に引き出す駆動機構を付加することもある。
【0052】
このように、レンズ鏡筒81と連動して可動枠を引き出すようにすれば、レンズ鏡筒81をカメラボディから迫り出させるときにローパスフィルター23を固定した可動枠を前進させることができ、撮影時には確実にローパスフィルター23と撮像素子10との間に充分な間隙を形成することができる。
【0053】
更に、他の実施例としては、図13及び図14に示すように、固定枠部22の上に可動枠としてのスライド枠体51を設け、スライド枠体51と固定枠部22との間に複数枚のスライド板55を設けるものである。
【0054】
この撮像機構20も、固定枠板21の中央に撮像素子10を固定し、撮像素子10の周囲を囲むように方形の固定枠部22を設けるものであり、この固定枠部22の上面を、図14に示したように傾斜させた傾斜面とするものである。
【0055】
そして、この固定枠部22と略同一大きさとするとともに中央に透孔部分を有するスライド板55を固定枠部22の上方に重ねるものであり、図13に示したように固定枠部22の一側にはスライドストッパー部58を形成し、このスライドストッパー部58の上面は鋸歯状に段部を形成して位置決め段部59とし、位置決め段部59の各段差間の間隔を等間隔とすると共に、その段差をスライド板55の厚さと一致させているものである。
【0056】
また、各スライド板55における側面の端部には、スライドストッパー部58に乗る第1突起部56を設け、且つ、このスライド板55の対角位置となる隅角部には、図15に示すように、スライド板55から僅かに側方に突出する第2突起部57を設けるものである。
【0057】
従って、この同一形状とされる複数枚のスライド板55を重ねた状態で、図15に示したように、各第2突起部57を固定枠部22から上方に突出させた係止部54に当接して各スライド板55の端部を合わせると、図14に示したように、撮像素子10の前方に全てのスライド板55を貫通する透孔部分が形成されるものである。
【0058】
また、スライド枠体51は、スライド板55と略同一平面形状とし、下端面を固定枠部22の上面と平行に傾斜させた傾斜面としつつスライド枠体51の上面を固定枠板21と平行な水平状態とするものである。
【0059】
更に、スライド板55に設けた第1突起部56と重ねるようにスライド枠体51から側方に第1突出部52を大きく突出させ、第2突起部57と略同様に突出する第2突出部53を第1突出部52と対角の位置に有し、スライド枠体51の中央に設けた透孔窓39の内側にローパスフィルター23を固定するものである。
【0060】
なお、第1突出部52の側方には弾性体30を配置し、第2突出部53を係止部54に押し付けるようにスライド枠体51を付勢しており、また、各スライド板55とスライド板55との接触面及びスライド板55とスライド枠体51との接触面には、図面には示していないが、一方の面に溝部を設け、この溝部はスライドストッパー部58と平行として位置決め段部59の段差と段差との間隔に応じた長さとし、この溝部に挿入される突起を他方のスライド板55における接触面に設けるものである。
【0061】
従って、スライド枠体51を固定枠部22の方向に押圧したとき又は側方に力を加えたときは、図16及び図17に示すように、各スライド板55及びスライド枠体51が側方にずれると共に固定枠部22の前面の傾斜に沿って固定枠板21に接近するように移動する。
【0062】
このとき、スライド板55の接触面に設けた図示していない溝部に挿入された突起が溝部の端部に当接され、順次、隣り合うスライド板55を確実に移動させ、図16に示したように各スライド板55は第1突起部56を位置決め段部59の段差部分に当接して所定位置で停止する。
【0063】
なお、各スライド板55の大きさと各スライド板55の透孔部分の大きさ、即ち透孔部分の周囲の幅を位置決め段部59の段差と段差との間隔よりも広く設けておくことにより、図16及び図17に示したように、順次ずれたスライド板55の透孔部分周囲の重なりによって撮像素子10の前方を覆うことができ、撮像素子10の表面に塵芥が付着することを阻止しつつ撮像機構20の厚みを薄くすることができる。
【0064】
従って、沈胴式のレンズ鏡筒81を収納及び迫り出させる駆動機構に連動してスライド枠部を光軸と交わる方向に移動させる移動機構を設けることにより、レンズ鏡筒81の動きと合わせてスライド枠体51を撮像素子10の前方から移動させてスライド板55の透孔部周辺により撮像素子10の前面を覆い、塵芥が撮像素子10表面に付着することを防止し、また、スライド枠体51に固定したローパスフィルター23を撮像素子10から離した位置で撮像素子10の前方に位置させ、撮像素子10の前方空間を固定枠部22と固定枠部22の前方に重ねたスライド板55及びスライド枠体51とスライド枠体51に固定したローパスフィルター23により閉鎖することができる。
【0065】
このように、固定枠と可動枠とするスライド枠体51とを傾斜した対向面を相対させて配置し、固定枠と可動枠との間に透孔部分を中央に有する複数枚のスライド板55を配置することにより、傾斜した対向面を相対させると、間隙を開けずに横にずらして厚みを変化させることができる。
【0066】
上述のように、本発明の実施例に係る撮像機構20は、ローパスフィルター23を可動枠に固定し、撮像素子10の周囲を固定枠にて囲い、可動枠を固定枠に対して移動可能に取り付け、撮像時はローパスフィルター23を撮像素子10から離し、非撮像時はローパスフィルター23を撮像素子10の近くに位置させる撮像機構20とするものであるから、ローパスフィルター23と撮像素子10との距離を可変とすることにより、撮影時はローパスフィルター23を離し、非撮影時はローパスフィルター23を後退させて撮像機構20の厚みを薄くできる。
【0067】
そして、可動枠は固定枠に対して摺動可能として撮像素子10の周囲を囲むように配置することにより、撮像素子10の表面に塵芥が付着することを防止できる。
このように、各実施例に示した撮像機構20は、可動枠支持板31又は可動枠支持板31から延設した腕部33を前方からレンズ鏡筒81により、又は他の機構を付加して可動枠を後退させると、カメラ80の非撮影時には撮像機構20を薄くし、レンズ鏡筒81を前進させて撮影を行うときはローパスフィルター23と撮像素子10との距離を大きくしてローパスフィルター23に付着する塵芥の影がCCDデバイス11に映り込んで画質を低下させることを防止できる。
【0068】
また、前述の各実施例は、弾性体30により可動枠支持板31やスライド枠体51を一方向に付勢しているも、弾性体30を省略し、レンズ鏡筒81の駆動機構と連動する可動枠駆動機構を設け、可動枠を光軸方向又は光軸と交差する方向に移動させるデジタルカメラ80とすることがある。
【0069】
このように、レンズ鏡筒81と連動して可動枠を移動させると、カメラ80の撮影時と非撮影時で可動枠即ちローパスフィルター23の位置を変化させることができ、撮像機構20の厚み、ひいてはデジタルカメラ80の厚みを薄くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、二次元CCDなどの撮像素子を用いたデジタルカメラを容易に薄型とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る撮像機構を内蔵するデジタルカメラの一例を示すカメラの外観図。
【図2】本発明に係る撮像機構を内蔵するデジタルカメラの撮影可能の状態を示す外観図。
【図3】本発明に係る撮像機構の一実施例の外観を示す模式図。
【図4】本発明に係る撮像機構の撮影可能状態を示す断面図。
【図5】本発明に係る撮像機構の非撮影時状態を示す断面図。
【図6】本発明に係る撮像機構の第2の実施例の外観を示す模式図。
【図7】本発明に係る撮像機構の第2の実施例における撮影可能状態を示す断面図。
【図8】本発明に係る撮像機構の第2の実施例における非撮影時状態を示す断面図。
【図9】本発明に係る撮像機構の第3の実施例における撮影可能状態の外観を示す模式図。
【図10】本発明に係る撮像機構の第3の実施例における撮影可能状態を示す断面図。
【図11】本発明に係る撮像機構の第3の実施例における非撮影時状態を示す断面図。
【図12】本発明に係る撮像機構の第3の実施例における非撮影時状態の外観を示す模式図。
【図13】本発明に係る撮像機構の第4の実施例における撮影可能状態の外観を示す模式図。
【図14】本発明に係る撮像機構の第4の実施例における撮影可能状態を示す断面図。
【図15】本発明に係る撮像機構の第4の実施例における撮影可能状態の外観を示す模式図。
【図16】本発明に係る撮像機構の第4の実施例における非撮影時状態の外観を示す模式図。
【図17】本発明に係る撮像機構の第4の実施例における非撮影時状態を示す断面図。
【図18】二次元CCDデバイスを組み込んだ撮像素子の一例を示す断面図。
【図19】従来の撮像素子を組み込んだ撮像機構の一例を示す断面図。
【符号の説明】
【0072】
10 撮像素子
11 CCDデバイス 13 パッケージ本体
15 カバーガラス 17 ボンディングワイヤー
19 接着剤
20 撮像機構
21 固定枠板 22 固定枠部
23 ローパスフィルター 24 内枠部
25 ゴムリング 26 溝部
27 固定突起部 29 透孔
30 弾性体
31 可動枠支持板 33 腕部
35 可動枠部 37 可動枠部側壁
38 脇カバー部 39 透孔窓
41 第1可動枠 43 第1鍔部
45 第2可動枠 47 第2突起
49 第2鍔部
51 スライド枠体 52 第1突出部
53 第2突出部 54 係止部
55 スライド板 56 第1突起部
57 第2突起部 58 スライドストッパー部
59 位置決め段部 61 第1リンク板
63 第2リンク板 65 可動回転軸
66 リンク軸 67 固定回転軸
80 デジタルカメラ
81 レンズ鏡筒 83 ファインダ窓
85 ストロボ発光窓 87 シャッターボタン
89 電源ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローパスフィルターが透孔窓に固定された可動枠を有し、且つ、撮像素子の周囲を囲む固定枠を有し、可動枠が固定枠に対して撮像素子の光軸方向に移動可能に取り付られ、非撮像時はローパスフィルターを撮像素子の光軸方向へ後退可能としたことを特徴とする撮像機構。
【請求項2】
前記ローパスフィルターが固定された可動枠は、光軸方向に沿って移動することを特徴とする請求項1に記載された撮像機構。
【請求項3】
前記可動枠は前記固定枠に対して摺動可能であって、可動枠と固定枠とにより撮像素子の周囲を囲んでいることを特徴とする請求項2に記載された撮像機構。
【請求項4】
前記固定枠の内側に溝部を有し、この溝部に前記可動枠の後方が挿入されて可動枠の両側を挟むようにして摺動させることを特徴とする請求項3に記載された撮像機構。
【請求項5】
前記可動枠が第1可動枠と第2可動枠により構成され、第1可動枠と第2可動枠とが相互に摺動可能とされて固定枠に対して移動することを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れかに記載された撮像機構。
【請求項6】
前記第1可動枠は後端に外方への鍔部を有し、第2可動枠は前端に内方への突起を有して第1可動枠が第2可動枠に内挿されていることを特徴とする請求項5に記載された撮像機構。
【請求項7】
前記可動枠及び前記固定枠の外形が方形であって、この可動枠及び固定枠の四辺に各々リンク板が回動可能に固定され、2枚のリンク板を介して可動枠と固定枠が接続され、可動枠の四隅にリンク板の端部を覆うカバー部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された撮像機構。
【請求項8】
弾性体を有し、この弾性体により可動枠を固定枠に近接させる方向に又は固定枠から離す方向に付勢いることを特徴とする請求項2乃至請求項7の何れかに記載された撮像機構。
【請求項9】
前記固定枠と前記ローパスフィルターが固定された可動枠してのスライド枠体とが撮像素子の光軸に対する傾斜面を対向させて配置され、可動枠を光軸と交わる方向に移動するとき、傾斜面に沿って可動枠が移動してローパスフィルターを光軸方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載された撮像機構。
【請求項10】
前記固定枠と可動枠してのスライド枠体との間に透孔部分を有するスライド板の複数枚が挿入されていることを特徴とする請求項9に記載された撮像機構。
【請求項11】
前記スライド板の透孔部分がローパスフィルターよりも大きく、透孔部分の周囲は移動方向における幅がスライド板の移動幅よりも広いことを特徴とする請求項10に記載された撮像機構。
【請求項12】
前記可動枠としてのスライド枠体は、弾性体により撮像素子の光軸方向と交わる方向に付勢されていることを特徴とする請求項9乃至請求項11の何れかに記載された撮像機構。
【請求項13】
ローパスフィルターが可動枠に固定され、且つ、撮像素子の周囲を囲う固定枠を有し、可動枠を固定枠に対して移動可能に取り付けた撮像機構を内蔵し、レンズ鏡筒の駆動に連動して可動枠を光軸方向又は光軸と交わる方向に移動させることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項14】
沈胴式のレンズ鏡筒を有し、レンズの光軸と撮像機構における撮像素子の光軸とを一致させて撮像機構をレンズ鏡筒の後方に配置していることを特徴とする請求項13に記載されたデジタルカメラ。
【請求項15】
前記ローパスフィルターが固定された可動枠が弾性体により前方へ付勢され、レンズ鏡筒の後退時にレンズ鏡筒によって可動枠が撮像素子の方向へ押圧されて後退することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載されたデジタルカメラ。
【請求項16】
レンズ鏡筒の駆動機構と連動する可動枠駆動機構を有し、可動枠駆動機構により可動枠を光軸方向又は光軸と交わる方向に移動させることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載されたデジタルカメラ。
【請求項17】
前記ローパスフィルターを支持する可動枠が弾性体により撮像素子方向へ付勢され、レンズ鏡筒を迫り出すとき、可動枠を前方に引き出す駆動機構を有することを特徴とする請求項13又は請求項14並びに請求項16の何れかに記載されたデジタルカメラ。
【請求項18】
前記ローパスフィルターを支持する可動枠が弾性体により撮像素子の光軸方向と交わる方向へ付勢され、レンズ鏡筒を迫り出すとき、可動枠に固定されたローパスフィルターを撮像素子の前方に位置させる駆動機構を有することを特徴とする請求項13又は請求項14並びに請求項16の何れかに記載されたデジタルカメラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−217186(P2006−217186A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27033(P2005−27033)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】