説明

薄型分析用具

本発明は、試薬部(33)が配置され、かつ試料液を保持するための反応空間(6)を備えた分析用具(1)に関する。試薬部(33)は、反応空間(6)に試料液が保持されたときに溶解するように構成されている。反応空間(6)の一部は、互いに対面する第1および第2面(31c,5a)によって規定されており、第1および第2面(31c,5a)の対面距離(H1)が45μm以下に設定されている。対面距離(H1)は、たとえば第1または第2電極(31,32)の上面(31c,32c)から、第2板材(5)における当該電極(31、32)の上面(31c,32c)に対面する部分(5a)までの最小距離とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、血液などの試料液中の特定成分(たとえばグルコースやコレステロール)の濃度を分析する際に使用される分析用具に関する。
【背景技術】
糖尿病患者にとっては、血糖値を管理するために日頃から自己の血糖値を把握しておくことは重要である。その一方、頻繁に医療機関に足を運ぶのが煩わしいことから、患者自身が簡易に血糖値の測定を行え、しかも出先などでも血糖値の測定を手軽に行えるように、手のひらに納まるようなサイズの携帯型の簡易血糖値測定装置が用いられている。このような血糖値測定装置を用いての血糖値測定は、酵素反応場を提供するグルコースセンサを血糖値測定装置に装着し、グルコースセンサに対して血液(検体)を供給することにより行われている。
グルコースセンサとしては、アンペロメトリー法やクーロメトリー法に代表される電気化学的手法を利用して、簡易血糖値測定装置においてグルコース濃度を測定できるように構成されたものがある。この種のグルコースセンサは、たとえば1対の電極(作用極および対極)と、試薬層と、この試薬層を内部に収容したキャピラリと、を備えたものとして構成されている。
アンペロメトリー法を採用する場合には、たとえば作用極および対極は同一平面状に横並びして、あるいは互いに対向して配置され、クーロメトリー法を採用する場合には、一般に、作用極および対極は対向するようにして配置される。試薬層は、酸化還元酵素および電子伝達物質を含んだものとして構成されるが、酸化還元酵素としてはGODが、電子伝達物質としてはフェリシアン化カリウムが汎用されている。このようなグルコースセンサでは、キャピラリを利用して試薬層に検体が供給されたときに、酸化還元酵素によって、たとえばグルコースの酸化反応が触媒される一方で、電子伝達物質の還元反応が触媒される。
グルコースセンサに対する血液の供給は、一般に、測定者の皮膚を切開して血液を出液させ、この血液をグルコースセンサに導入することにより行われている。この方法では、血液採取に対する測定者への負担を小さくする観点からは、採取すべき血液量が少ないほうが好ましい。そのため、検体量の低減のために様々な改良が検討されている(たとえば日本国特表2000−509507号公報および米国特許出願公開第2002/0092612号明細書参照)。
日本国特表2000−509507号公報には、クーロメトリー法を利用して少ないサンプル量でグルコース濃度を測定できるように、作用極および対極を対向配置し、かつ電極間の離間距離を50μm以下としたグルコースセンサが開示されている。このグルコースセンサでは、使用すべき血液量を少なくすることはできるが、クーロメトリー法は殆ど全てのグルコースを反応させる方法であるため、測定時間が著しく長くなってしまうといった問題がある。
これに対して、米国特許出願公開第2002/0092612号明細書には、サンプル量を1.5μL以下と少なくしつつも、測定時間を10秒と短くしたグルコースセンサが開示されている。このグルコースセンサでは、基板とカバーとの間に、作用極、対極および試薬層を配置したキャビティが形成されており、基板とカバーとの間の距離が200μm以下とされている。このグルコースセンサでは、試薬層は、たとえばグルコースオキシダーゼおよびフェリシアン化物を含んだ状態で作用極の表面に固定化され、非水溶性とされている。
しかしながら、米国特許出願公開第2002/0092612号明細書に開示されたグルコースセンサにおいても、測定時間の短縮が十分であるとは言い難く、また測定精度の面において未だ改善の余地がある。
【発明の開示】
本発明は、測定時間を短く維持しつつも、微量の試料液によって精度良く濃度測定を行えるようにすることを目的としている。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意検討した結果、従来のグルコースセンサにおいて測定時間を短くすることができない原因の1つが試薬層の構成にあることに着目し、本発明をするに至った。
すなわち、従来のグルコースセンサの試薬層では、試薬層を作用極の表面に固定化しているために、グルコースとグルコースオキシダーゼとの反応が作用極の表面においてのみ生じ、グルコースとグルコースオキシダーゼの反応に時間を要して測定時間が長くなる。このような不具合を解消するためには、試薬層を試料液(血液)によって溶解しやすい構成とすることが考えられる。この場合、電子伝達物質が試料液(血液)中を拡散することとなるため、電子伝達物質の拡散に影響を与える因子、たとえば試料液の固体成分(血液における血球成分など)の割合の影響、あるいは試料液の温度の影響を排除する必要が生じる。また、フェリシアン化物のように血液に対する溶解性が比較的に小さいものを用いると、溶解時間が長くなって測定時間が長くなる。
本発明者はさらに、測定精度をさらに向上させるためには、次に説明する点を改善することが望ましいとの知見も得ている。すなわち、第1に、フェリシアン化物のように血液に対する溶解性が比較的に小さいものを用いると、溶解性のバラツキに起因して測定精度が悪化する虞がある。また、フェリシアン化物は保存安定性が悪く、保存時において容易に還元体へと移行するため、この点においても測定精度が低下することが懸念される。第2に、グルコースオキシダーゼは、グルコースとの反応速度が比較的に小さい(Km(ミカエリス定数)が大きい)ため、グルコースオキシダーゼを使用することは測定時間を短縮する上では好ましくない。
以上の事情に鑑み、本発明においては、試料液を保持するための反応空間を備えた分析用具であって、上記反応空間には、試料液が保持されたときに溶解する試薬部が配置されており、上記反応空間の一部は、互いに対面する第1および第2面によって規定されており、かつ上記第1および第2面の対面距離が45μm以下に設定されている、薄型分析用具が提供される。対面距離は、好ましくは25〜45μmの範囲とされる。
本発明の薄型分析用具は、たとえば互いに対向した状態で間隔を隔てて配置され、かつ反応空間を規定する第1および第2板材を備えたものとして構成される。この場合、第1および第2面は、たとえば第1および第2板材の厚み方向に直交する方向に広がりをもつ面とされる。
本発明の薄型分析用具は、たとえば第1板材の一面に設けられ、かつ少なくとも一部が反応空間に臨むとともに、試料液に電圧を印加するために利用される第1および第2電極を備えたものとして構成される。この場合、対面距離は、第1または第2電極の上面(たとえば第1面に相当)から、第2板材における当該電極の上面に対面する部分(たとえば第2面に相当)までの最小距離として定義される。
本発明の薄型分析用具は、第1板材に設けられた第1電極と、第1電極に対面するように第2板材に設けられ、かつ第1電極とともに試料液に電圧を印加するために利用される第2電極と、を備えたものとして構成してもよい。この場合、対面距離は、第1電極の上面(たとえば第1面に相当)と第2電極の上面(たとえば第2面に相当)との間における最小距離として定義される。
反応空間は、たとえば毛細管力により試料を移動させることができるように構成される。
試薬部は、たとえば電子伝達物質および酸化還元酵素を含んだものとして構成される。
電子伝達物質としては、Ru化合物を用いるのが好ましい。Ru化合物としては、下記化学式(1)で示されるものを使用することができる。
[Ru(NHX]n+ ・・・(1)
化学式(1)においては、Xとしては、NH、ハロゲンイオン、CN、ピリジン、ニコチンアミド、あるいはHOが挙げられるが、XはNHまたはハロゲンイオンであるのが好ましい。化学式(1)におけるn+は、Xの種類により決定される酸化型Ru(III)錯体の価数を表している。
酸化還元酵素としては、分析対象成分がグルコースである場合には、グルコース脱水素活性を有するGDHを使用するのが好ましい。GDHとしては、FADを補欠因子とするグルコース脱水素酵素(αGDH)を使用するのが好ましい。GDHとしてはさらに、αGDHにチトクロムCが結合したGDH(CyGDH)を使用するのが好ましい。CyGDHおよびαGDHとしては、国際公開第WO02/36779号パンフレットに開示されているものが挙げられる。GDHとしては、ブルクホルデリア属に属する微生物に由来のものを使用するのが好ましいが、CyGDHやαGDHと同じFADおよびチトクロムCをもつ他属の微生物に由来のGDHを使用することもできる。他属の例としてRalstonia属あるいはPseudomonas属の中で病原性を持つグラム陰性菌が挙げられる。
たとえばαGDHは、グルコース脱水素活性を有するサブユニットとして、還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約60kDaであるGDH活性タンパク質(αサブユニット)を含んだものである。一方、CyGDHは、αサブユニットと、還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約43kDaである電子伝達タンパク質(チトクロムC)と、をサブユニットとして含むものである。αGDHやCyGDHとしては、αサブユニットやチトクロムC以外のサブユニットをさらに有するものを使用することもできる。
CyGDHは、たとえばブルクホルデリア・セパシアに属する微生物が菌体外に分泌した酵素を精製し、あるいは当該菌体の菌体内酵素を精製することにより得ることができる。一方、αGDHは、たとえばブルクホルデリア・セパシアに属する微生物から採取したαGDHをコードする遺伝子が移入された形質転換体を形成し、この形質転換体から外部に分泌された酵素を精製し、あるいは当該形質転換体の菌体内酵素を精製することにより得ることができる。
ブルクホルデリア・セパシアに属する微生物としては、たとえばブルクホルデリア・セパシアKS1株を使用することができる。このKS1株は、平成12年9月25日に独立特許法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に微生物受託番号第FERM BP−7306として寄託されている。
試料液としては、たとえば血液、尿、唾液およびこれらの調整液などの生化学的試料が挙げられ、分析対象成分としては、たとえばグルコース、コレステロール、乳酸およびアスコルビン酸が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係るバイオセンサの全体斜視図である。
図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。
図3は、図1に示したバイオセンサの分解斜視図である。
図4は、図1ないし図3に示したバイオセンサを濃度測定装置に装着した状態を示すものであり、バイオセンサについては平面図で、濃度測定装置についてはブロック図で示したものである。
図5Aおよび図5Bは、バイオセンサの作用を説明するためのものであり、バイオセンサの要部断面図である。
図6Aおよび図6Bは、バイオセンサの他の例を示す断面図である。
図7は、本案バイオセンサ1に対する血液のヘマトクリット値の影響を示すグラフである。
図8は、本案バイオセンサ2に対する血液のヘマトクリット値の影響を示すグラフである。
図9は、比較バイオセンサ1に対する血液のヘマトクリット値の影響を示すグラフである。
図10は、本案バイオセンサ1に対する血液の温度の影響を示すグラフである。
図11は、本案バイオセンサ2に対する血液の温度の影響を示すグラフである。
図12は、比較バイオセンサ1に対する血液の温度の影響を示すグラフである。
図13は、本案バイオセンサ1に対する測定レンジの評価結果を示すグラフである。
図14は、本案バイオセンサ3に対する再現性を、応答電流値のタイムコースとして評価した結果を示すグラフである。
図15は、本案バイオセンサ4に対する再現性を、応答電流値のタイムコースとして評価した結果を示すグラフである。
図16は、比較バイオセンサ2に対する再現性を、応答電流値のタイムコースとして評価した結果を示すグラフである。
図17は、本案バイオセンサ3,4および比較バイオセンサ2に対する再現性を、C.V.のタイムコースとして評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。本実施の形態においては、血糖値を測定するように構成されたグルコースセンサを例にとって説明するが、本発明は、血糖値を測定する場合に限定されず、血液中の他の成分あるいは血液以外の試料液を分析する分析用具に対しても適用することができる。
図1ないし図3に示したグルコースセンサ1は、濃度測定装置2に装着して使用するものであり(図4参照)、長矩形状の基板3に対して、スペーサ4を介してカバー5を積層した形態を有している。このグルコースセンサ1においては、各要素3〜5により反応空間6が規定されている。この反応空間6は、矩形断面を有する柱状の空間として規定されており、開口部(導入口)61から導入された試料液を毛細管力を利用して移動させ、かつ導入された試料液を保持することができる。
スペーサ4は、基板3の上面30からカバー5の下面5aまでの距離、すなわち反応空間6の高さ寸法を規定するためのものである。このスペーサ4には、先端部が開放したスリット41が形成されている。スリット41は、反応空間6の幅寸法を規定するためのものであり、スリット41における先端の開放部は、反応空間6の内部に試料液を導入するための導入口61を構成するためのものである。
カバー5は、排気口51を有している。排気口51は、反応空間6の内部の気体を外部に排出するためのものであり、反応空間6の内部と連通している。したがって、導入口61を介して反応空間6内に試料液が導入された場合には、反応空間6において生じる毛細管力により、試料液がカバー5に形成された排気口51に向けて反応空間6の内部を移動する。
図3によく表れているように、基板3の上面30には、作用極31、対極32および試薬部33が形成されている。作用極31および対極32は、全体として基板3の長手方向に延びている。作用極31および対極32の端部31a,32aは、基板3の短手方向に延び、かつ長手方向に並んでいる。一方、作用極31および対極32の端部31b,32bは、後述する濃度測定装置2の第1および第2端子20a,20b(図4参照)と接触させるための端子部を構成している。
作用極31および対極32は、たとえばスクリーン印刷、メッキ、あるいはスパッタリングにより、厚み寸法D(図2参照)が20μm以下にされている。好ましくは、作用極31および対極32の厚み寸法Dは、1〜10μmに設定される。作用極31の上面31cからカバー5の下面5aまでの対面距離H1(図2参照)は、45μm以下、好ましくは25〜45μmに設定されている。これは、対面距離H1が不当に大きいと、後述するように血液の温度やヘマトクリット値の影響を受け易い反面、対面距離H1が不当に小さいと、反応空間6の内部において血液を適切に移動させることができなくなるからである。
試薬部33は、たとえばメディエータ(電子伝達物質)および相対的に少量の酸化還元酵素を含む固体状に形成されており、図2および図3によく表れているように、作用極31および対極32の端部31a,32aどうしを橋渡すようにして設けられている。この試薬部33は、血液に対して容易に溶解するものとされている。したがって、反応空間6に血液を導入した場合には、メディエータ、酸化還元酵素およびグルコースを含む液相反応系が構築される。この液相反応系においては、作用極31の上面31cのみならず、反応空間6における広範囲にわたってグルコースの酸化反応と、メディエータの還元反応が生じる。したがって、作用極の表面にメディエータや酸化還元酵素を固定化する場合に比べて、より短時間でより多くのグルコースを酸化させることができる。これにより、測定時間の短縮を図ることができるようになる。
メディエータとしては、Ru化合物を使用するのが好ましい。Ru化合物としては、たとえばRu錯体が挙げられる。Ru錯体としては、電子伝達体として機能すればその配位子の種類は特に限定されないが、試薬部33に酸化型の状態で含ませるのが好ましく、たとえば酸化型が下記化学式(2)で示されるものが使用される。
[Ru(NHX]n+ ・・・(2)
化学式(2)におけるXとしては、NH、ハロゲンイオン、CN、ピリジン、ニコチンアミド、あるいはHOが挙げられるが、NHまたはハロゲンイオンが好ましい。一方、化学式におけるn+はXの種類により決定される酸化型(III)錯体の価数を表している。
Ru錯体は、還元型(II)が不安定なために通常は酸化型(III)として存在する。そのため、グルコースセンサ1の試薬部33にRu錯体を混在させた状態で光や水に曝露されたとしても、メディエータが容易に還元してしまうことはない。そのため、メディエータの曝露に起因して測定誤差が生じることを抑制することができるようになる。また、Ru錯体は結晶化しにくく、微粉末状態を適切に維持することができるといった特性を有している。そのため、Ru錯体を用いれば、保存時に試薬部33の溶解性が悪化することもない。さらには、Ru錯体とαGDHやCyGDHとの組み合わせについていえば、Ru錯体の電子伝達速度が大きいために測定時間を短くすることができるといった利点がある。
一方、酸化還元酵素としては、上述したαGDHまたはCyGDHを使用するのが好ましい。これらの酵素は、グルコースオキシダーゼに比べてグルコースに対する反応速度が大きいといった利点がある。この点からも、測定時間の短縮を図ることができるようになる。
図4に示したように、濃度測定装置2は、第1および第2端子20a,20b、電圧印加部21、電流値測定部22、検知部23、制御部24、演算部25および表示部26を備えている。
第1および第2端子20a,20bは、濃度測定装置2に対してグルコースセンサ1を装着した場合に、グルコースセンサ1における作用極31および対極32の端部31b,32bに接触させるためのものである。
電圧印加部21は、第1および第2端子20a,20bを介して、グルコースセンサ1の作用極31と対極32との間に電圧を印加する際に利用される。電圧印加部21としては、たとえば乾電池または充電池などの直流電源が使用される。
電流値測定部22は、作用極31および対極32間への電圧印加時における作用極31とメディエータとの間の電子の授受量を、応答電流値として測定するためのものである。
検知部23は、濃度測定装置2にグルコースセンサ1を装着した後において、電流値測定部22によって測定された電流値に基づいて、試薬部33(図1ないし図3参照)に試料液が供給されたか否かを確認するためのものである。
制御部24は、電圧印加部21を制御し、作用極31および対極32の間に電圧が印加される状態(閉回路)と印加されない状態(開回路)とを選択するものである。
演算部25は、電流値測定部22により測定された応答電流値に応じて、グルコース濃度の演算を行うものである。演算部25は、たとえばグルコース濃度をアンペロメトリックな手法により演算できるように構成されている。アンペロメトリックな手法を用いれば、クーロメトリックな手法を採用するよりも、短時間で濃度測定を行うことができる。
検知部23、制御部24、および演算部25のそれぞれは、たとえばCPUおよびROMやRAMなどのメモリにより構成されるが、検知部23、制御部24、および演算部25の全てを、1つのCPUに対して複数のメモリを接続することにより構成することも可能である。
表示部26は、演算部25による演算結果の他、たとえばエラーである旨や操作手順などを表示するためのものであり、たとえば液晶表示装置により構成される。
次に、グルコースセンサ1および濃度測定装置2を用いたグルコース濃度の測定の手順について説明する。
図4に良く表れているように、まずグルコースセンサ1を濃度測定装置2に装着する。そうすると、グルコースセンサ1の作用極31および対極32の端部31b,32bが濃度測定装置2の第1および第2端子20a,20bに接触する。この状態では、第1および第2端子20a,20bを介して、作用極31および対極32の間への電圧の印加が可能とされている。実際の測定においては、濃度測定装置2にグルコースセンサ1を装着した時点から、作用極31と対極32との間に定電圧が印加される。Ru錯体は、低電圧でメディエーションを起こすため、Ru錯体を用いる場合には、作用極31および対極32の間に印加する定電圧は、たとえば100〜500mVの範囲に設定される。本実施の形態では、作用極31および対極32の間への定電圧の印加は、グルコース濃度を演算するための応答電流値が測定されるまでは継続して行われているものとする。
次いで、グルコースセンサ1の導入口61を介して反応空間6に血液を導入する。血液は、毛細管力により導入口61からカバー5に形成された排気口51に向けて反応空間6内を進行する。その過程においては、血液が試薬部33を溶解させる。
一方、試薬部33に血液が供給されれば、酸化還元酵素によりグルコースがグルコノラクトンに酸化されるとともにメディエータが還元型とされる。なお、グルコノラクトンは非酵素的にグルコン酸となる。
還元型のメディエータは、作用極31および対極32の端部31b,32bを介して作用極31および対極32に定電圧を印加した状態では、作用極の端部31a側に移動し、この端部31aに電子を放出して酸化型のメディエータとなる。したがって、電圧印加部21により作用極31および対極32間に定電圧を印加した状態では、還元型メディエータから付与された電子量が作用極31および第1端子20aを介して電流値測定部22において応答電流として測定される。この応答電流値は、電圧印加によって試薬部33を移動した還元型のメディエータに由来する電子量に相関するものであり、いわゆる拡散電流と呼ばれるものである。
一方、電流値測定部22において測定された応答電流値は、検知部23においてモニタリングされており、応答電流値が閾値を越えた時点で、検知部23は試薬部33に血液が供給され、試薬部33が溶解したことを検知する。検知部23において血液が供給されたことが検知された場合には、この検知から一定時間経過したか否かが検知部23により判断される。
検知部23において一定時間が経過したと判断された場合には、電流値測定部22において応答電流値を測定し、この応答電流値に基づいて、演算部25においてグルコース濃度が演算される。グルコース濃度の演算は、応答電流値を電圧値に換算した後に、この電圧値を、予め作成しておいた電圧値とグルコース濃度との関係を示す検量線に当てはめることにより演算される。演算部25における演算結果は、たとえば表示部26において表示される。
作用極31に接触している還元型のメディエータは、即座に作用極31に対して電子を放出して酸化型となるが、作用極31から一定距離離れた還元型のメディエータであっても、作用極31に対して電子を放出して酸化型となる。以下、作用極31に対して還元型のメディエータが電子を放出可能な領域を電子放出領域、作用極31に対して還元型のメディエータが電子を放出することができない領域を非電子放出領域ということとする。
後述する実施例から推測できるように、電子放出領域における作用極の表面からの距離は、45μmよりも小さくなることはない。したがって、図5Aに示したように、作用極31の上面31cからカバー5の下面5aまでの対面距離H1が比較的に大きい場合、たとえば対面距離H1が50μm以上の場合には、作用極31の直上においては、電子放出領域70の上方に非電子放出領域71が存在することとなる。
これに対して、本願のグルコースセンサ1のように、作用極31の上面31cからカバー5の下面5aまでの対面距離H1が45μm以下に設定されている場合には、図5Bに示したように、電子放出領域70における作用極31の直上に位置する部分の厚み寸法(以下、単に「電子放出領域70の厚み寸法」という)が対面距離H1に一致し、この電子放出領域70の厚み寸法は、図5Aに示した場合と同等かもしくはそれよりも小さくなる。
このように、対面距離H1が大きい場合(図5A参照)と小さい場合(図5B参照)とでは、作用極31の直上における様子が異なったものとなる。その結果、後述する本発明の実施例からも推測できるように、対面距離H1の大小により、還元型メディエータが消費される様子が異なったものとなる。
ここで、電圧非印加状態において、電子放出領域に存在する還元型のメディエータ(以下、「非拡散メディエータ」という)の濃度と、非電子放出領域に存在する還元型のメディエータ(以下、「拡散メディエータ」という)の濃度とが同一である系を考える。
図5Aに示した対面距離H1が大きいケースでは、電子放出領域70(点線で囲まれた部分)の厚み寸法が大きいために、電圧印加時に非拡散メディエータの全てが酸化されるわけではない。したがって、非拡散メディエータが一定量ずつ消費され、これに起因して電子放出領域70と非電子放出領域71との間に還元型メディエータの濃度差が生じる。これにより、電子放出領域70に対しては、その上方および側方から、拡散メディエータが拡散してくる。その後は、電子放出領域70に存在する還元型メディエータの酸化、および電子放出領域70に対する拡散メディエータの拡散が重畳的に生じる。このため、対面距離H1が大きいケースでは、大きく分けて、初期は非拡散メディエータの消費、中期は非拡散メディエータおよび拡散メディエータの消費、後期は拡散メディエータの消費というプロセスを経ることとなる。
ここで、拡散メディエータの拡散速度は、電子放出領域70と非電子放出領域71との間における還元型メディエータの濃度差に加えて、拡散媒体(血液)の温度や移動抵抗(血液のヘマトクリット値)の影響を受ける。したがって、対面距離H1が大きいケースでは、血液の温度やヘマトクリット値の影響が経時的に徐々に大きくなる。
これに対して、対面距離H1が小さいケース(図5B参照)では、電子放出領域70の厚み寸法が小さいために、初期において非拡散メディエータが殆ど全て消費され、次いで電子放出領域への拡散メディエータの拡散および消費が生じる。このため、対面距離H1が小さいケースでは、大きく分けて、初期は非拡散メディエータの消費、後期は拡散メディエータの消費というプロセスを経ることとなる。したがって、対面距離H1が小さいケースでは、血液の温度やヘマトクリット値の影響を受けにくい段階と、それらの影響を大きく受ける段階とに分かれることになる。
対面距離H1が電子放出領域の厚み寸法と一致するケースでは、電子放出領域に対する拡散メディエータの拡散は、電子放出領域の側方のみから行われる。そのため、対面距離H1が電子放出領域の厚み寸法よりも大きく、電子放出領域の側方および上方から拡散メディエータが拡散してくる場合に比べれば、対面距離H1が小さい場合には、拡散メディエータの拡散速度などが、測定電流値に与える影響は小さいといえる。とくに、血液の温度やヘマトクリット値の影響を受けにくい段階においては、拡散メディエータの挙動が測定電流値に与える影響は小さい。したがって、対面距離H1を電子放出領域の厚み寸法と同程度、もしくはそれよりも小さくすれば、血液の温度やヘマトクリット値の影響を受けにくく、電圧印加開始からの短い時間範囲(測定時間が短い範囲)における再現性が良好なものとなる。
本発明に係るグルコースセンサは、上述した実施の形態には限定されず、種々に設計変更可能である。たとえば作用極31および対極32は、少なくとも一部が反応空間6の内部に臨んでいればよく、たとえば図6Aおよび図6Bに示した構成を採用することもできる。
図6Aに示したグルコースセンサ1′は、基板3′に凹部35′,36′を形成し、この凹部35′,36′に作用極31′および対極32′を埋設形成したものである。
作用極31′および対極32′の上面31c′,32c′は、図示したように基板3′の上面30′と面一となるようにしてもよく、また面一でなくてもよい。
このグルコースセンサ1′では、対面距離H1′は、作用極31′の上面31c′からカバー5′の下面5a′までの距離として定義され、作用極31′および対極32′の上面31c′,32c′が基板3′の上面30′と面一の場合には、対面距離H1′は、基板3′とカバー5′との間の距離H2′に一致する。
一方、図6Bに示したグルコースセンサ1″は、基板3″に作用極31″を形成し、カバー5″に対極32″を形成したものである。もちろん、基板に対極を形成し、カバーに作用極を形成してもよい。
このグルコースセンサ1″では、対面距離H1″は、作用極31″の上面31c″と対極32″の上面32c″との間の距離として定義される。
本発明は、スペーサによって反応空間の高さ寸法が規定された分析用具に限らず、反応空間となるべき凹部が形成された基板に対して、カバーを接合した構成の分析用具に対しても適用することができる。
【実施例】
以下においては、本発明に係るグルコースセンサが、応答電流値の測定において、血液中の血球や温度による影響が小さく、短時間で精度良くグルコース濃度を測定することができることについて、実施例1〜4を通して実証する。
[グルコースセンサの作成]
実施例1〜4においては、図1ないし図3に示したのと同様な構成のグルコースセンサを用いて評価した。各実施例において用いたグルコースセンサは、反応空間6の長さ寸法L(図2参照)、幅寸法W(図1参照)、作用極31および対極32の厚さ寸法D(図2参照)を、それぞれ3.4mm、1.5mm、10μmとした。グルコースセンサにおける対面距離H1、基板3とカバー5との間の距離H2(図2参照)、および試薬部33の構成については、下記表1に示した通りとした。


本案グルコースセンサ1,2および比較グルコースセンサ1については、試薬部33を、電子伝達層および酵素含有層からなる2層構造とした。電子伝達層は、基板3上に電子伝達物質を含む第1材料液を0.4μL塗布した後に第1材料液を送風乾燥(30℃、10%Rh)することにより形成した。酵素含有層は、電子伝達層上に、酸化還元酵素を含む第2材料液を0.3μL塗布した後に第2材料液を送風乾燥(30℃、10%Rh)することにより形成した。
第1材料液は、下記表2に▲1▼〜▲4▼で示した材料をその番号通りの順序で混合した混合液を、1〜3日放置した後、この混合液に電子伝達物質を添加することにより調製した。電子伝達物質としては、[Ru(NH]Cl(同仁化学研究所「LM722」)を使用した。

表2などにおいて、SWNはルーセンタイトSWNの略号であり、CHAPSは3−[(3−cholamidopropyl)dimethylammonio]propanesulfonic acidの略号であり、ACESはN−(2−acetamido)−2−aminoethanesulfonic acidの略号である。SWNとしては、コープケミカル(株)製「3150」を使用し、CHAPSとしては同仁化学研究所製「KC062」を使用し、ACESとしては同仁化学研究所製「ED067」を使用した。なお、ACES溶液はpHが7.5となるように調製した。
一方、第2材料液は、酸化還元酵素を0.1%CHAPSに溶解させることにより調製した。酸化還元酵素としては、CyGDH(グルコース脱水素活性が800U/mg)を使用した。CyGDHについては、上述した通りである。
これに対して、本案グルコースセンサ3,4および比較グルコースセンサ2については、試薬部33を、フェリシアン化カリウムとフェロシアン化カリウムが共存する構成とした。これは、酸化還元酵素の触媒能、その他の要因の影響を除外し、純粋に、対面距離H1の高さが再現性に与える影響を判断するためである。より具体的には、試薬部33は、基板3上に材料液を保持させることにより液相として形成した。材料液としては、フェリシアン化カリウムが20mM、フェロシアン化カリウムが24mM、塩化カリウムが1.5Mとなるように調製されたものを用いた。
実施例1(ヘマトクリット値の影響の検討)
本実施例においては、本案グルコースセンサ1,2および比較グルコースセンサ1を用いて、ヘマトクリット(Hct)値が応答電流値に与える影響を評価した。
この評価においては、血液としては、グルコース濃度が412mg/dL、Hct値が19%、42%、あるいは69%のいずれかのものを用いた。
作用極31と対極32との間への電圧印加は、印加電圧値を200mVとして血液の供給と同時に開始し、応答電流値は、電圧印加の開始から5sec、7sec、および10sec後に測定した。各Hct値の血液については、5回ずつ応答電流値を測定した。
応答電流値の測定結果は、本案グルコースセンサ1については図7に、本案グルコースセンサ2については図8に、比較グルコースセンサ1については図9にそれぞれ示した。また、図7〜図9においては、横軸を時間(sec)、縦軸をBias(%)として示してある。Bias(%)は、Hct値が42%のときの応答電流値を基準とし、この基準値に対するずれ量を示すものであり、各図においては、Bias(%)は5回の測定の平均値として示してある。
図7〜図9を比較すれば分かるように、電圧印加時間の如何に拘わらず、対面距離H1が小さいほどBiasが小さくなる傾向にある。したがって、対面距離H1が小さいほど、血液のHct値の影響が小さくなる傾向が伺える。
実施例2(温度の影響)
本実施例においては、本案グルコースセンサ1,2および比較グルコースセンサ1を用いて、血液の温度が応答電流値に与える影響を評価した。
この評価においては、血液としては、Hct値が42%、グルコース濃度が100.0mg/dL、422.0mg/dL、あるいは636.0mg/dLのいずれかで、温度が5℃、25℃あるいは45℃に調製されたものを用いた。
作用極31と対極32との間への電圧印加は、印加電圧値を200mVとして血液の供給開始から行い、応答電流値は、電圧印加開始から5sec後に測定した。各グルコース濃度の血液については、5回ずつ応答電流値を測定した。
応答電流値の測定結果は、本案グルコースセンサ1については図10に、本案グルコースセンサ2については図11に、比較グルコースセンサ1については図12にそれぞれ示した。また、図10〜図12においては、横軸を温度(℃)、縦軸をBias(%)として各グルコース濃度について個別に示した。ここで、Bias(%)は、温度が25℃のときの応答電流値を基準とし、この基準に対するずれ量を示すものであり、各図においては、Bias(%)は5回の測定の平均値として示してある。
図10〜図12を比較すれば分かるように、グルコース濃度および電圧印加時間の如何に拘わらず、対面距離H1が小さいほどBiasが小さくなる傾向にある。したがって、対面距離H1が小さいほど、血液の温度の影響が小さくなる傾向が伺える。
実施例3(測定レンジの評価)
本実施例では、本案グルコースセンサ1を用いて、測定レンジを評価した。測定レンジは、グルコース濃度と応答電流値との関係(直線性)により評価した。
この評価においては、血液としては、Hct値が42%、グルコース濃度が0mg/dL、100mg/dL、200mg/dL、400mg/dL、610mg/dL、805mg/dLあるいは980mg/dLのものを用いた。作用極31と対極32との間への電圧印加は、印加電圧値を200mVとして血液の供給開始から行い、応答電流値は、電圧印加の開始から3sec後に測定した。各グルコース濃度の血液については、10回ずつ応答電流値を測定した。
応答電流値の測定結果は、図13に示した。ただし、図13においては、応答電流値(μA)は、10回の測定の平均値として示してある。
図13から分かるように、本案グルコースセンサ1では、グルコース濃度が0〜1000mg/dLの範囲で高い直線性を示しており、グルコース濃度が比較的に大きい場合(600mg/dL以上)であっても、適切にグルコース濃度を測定できるといえる。したがって、本案グルコースセンサ1のように、酸化還元酵素としてCyGDHを、メディエータとしてRu錯体を使用すれば、対面距離H1を小さくして設定しても、3秒程度の短い測定時間で、0〜1000mg/dLの範囲にあるグルコースの濃度を適切に測定できるといえる。
実施例4(再現性の評価)
本実施例では、本案グルコースセンサ3,4および比較グルコースセンサ2を用いて、複数回の応答電流値の測定のタイムコースおよび相対標準偏差C.V.(%)のタイムコースに基づいて、応答電流値の再現性を評価した。
この評価においては、血液としてHct値が42%、グルコース濃度が412mg/dLのものを用いた。作用極31と対極32との間への電圧印加は、印加電圧値を200mVとして血液の供給開始から5秒後に開始し、応答電流値は、電圧印加の開始から、50msec毎に経時的に測定した。
タイムコースの測定結果については、図14〜図16に示した。これらの図においては、5回分の測定の応答電流値のタイムコースを同時に示してあり、図14は本案グルコースセンサ3、図15は本案グルコースセンサ4、図16は比較グルコースセンサ2を用いたときの結果をそれぞれ示している。一方、図17には、C.V.(%)のタイムコースを示した。このタイムコースは、応答電流値のタイムコースを得るための5回の応答電流値の測定に基づいて作成した。
図14〜図16から分かるように、本案グルコースセンサ3,4では、比較グルコースセンサ2と同様に応答電流値のタイムコースに殆どバラツキが見られず、複数回の測定において良好な再現性が得られた。一方、図17から分かるように、本案グルコースセンサ3では、電圧印加開始初期、すなわち電圧印加開始から0.5〜3.0(sec)の時間範囲において、本案グルコースセンサ4や比較グルコースセンサ2に比べてC.V.が小さく、C.V.値が概ね2.5%以下と小さくなっている。本案グルコースセンサ4では、電圧印加開始から3.0〜7.0(sec)の時間範囲において、比較グルコースセンサ2に比べてC.V.が小さく、C.V.値が概ね2.5%以下と小さくなっている。これらの結果から分かるように、対面距離H1が小さく設定すれば、電圧印加開始から短い時間範囲において、再現性が良好なものとなっている。したがって、再現性の観点からは、対面距離H1を小さく設定したグルコースセンサは、短い測定時間に適したものであるといえる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】



【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液を保持するための反応空間を備えた分析用具であって、
上記反応空間には、試料液が保持されたときに溶解する試薬部が配置されており、
上記反応空間の一部は、互いに対面する第1および第2面によって規定されており、かつ上記第1および第2面の対面距離が45μm以下に設定されている、薄型分析用具。
【請求項2】
互いに対向した状態で間隔を隔てて配置され、かつ上記反応空間を規定する第1および第2板材を備えており、
上記第1および第2面は、上記第1および第2板材の厚み方向に直交する方向に広がりをもつ面である、請求項1に記載の薄型分析用具。
【請求項3】
上記第1板材の一面に設けられ、かつ少なくとも一部が上記反応空間に臨むとともに、試料液に電圧を印加するために利用される第1および第2電極をさらに備えており、
上記対面距離は、上記第1または第2電極の上面から、上記第2板材における当該電極の上面に対面する部分までの最小距離である、請求項2に記載の薄型分析用具。
【請求項4】
上記対面距離は、25〜45μmの範囲である、請求項3に記載の薄型分析用具。
【請求項5】
上記第1板材に設けられた第1電極と、上記第1電極に対面するように上記第2板材に設けられ、かつ上記第1電極とともに試料液に電圧を印加するために利用される第2電極と、をさらに備えており、
上記対面距離は、上記第1電極と上記第2電極との間における最小距離である、請求項2に記載の薄型分析用具。
【請求項6】
上記対面距離は、25〜45μmの範囲である、請求項5に記載の薄型分析用具。
【請求項7】
上記反応空間は、毛細管力により試料を移動させるように構成されている、請求項1に記載の薄型分析用具。
【請求項8】
上記試薬部は、電子伝達物質および酸化還元酵素を含んでいる、請求項1に記載の薄型分析用具。
【請求項9】
上記電子伝達物質は、Ru化合物である、請求項8に記載の薄型分析用具。
【請求項10】
上記Ru化合物は、下記化学式(1)で示されるものである、請求項9に記載の薄型分析用具。
[Ru(NHX]n+ ・・・(1)
上記化学式(1)においては、Xは、NH、ハロゲンイオン、CN、ピリジン、ニコチンアミド、あるいはHOであり、n+はXの種類により決定される酸化型Ru(III)錯体の価数を表している。
【請求項11】
上記化学式(1)におけるXは、NHまたはハロゲンイオンである、請求項10に記載の薄型分析用具。
【請求項12】
上記酸化還元酵素は、グルコース脱水素活性を有するものである、請求項8に記載の薄型分析用具。
【請求項13】
上記酸化還元酵素は、ブルクホルデリア属に属する微生物に由来のグルコース脱水素酵素である、請求項12に記載の薄型分析用具。
【請求項14】
上記酸化還元酵素は、グルコース脱水素活性を有し、かつ還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約60kDaであるαサブユニットを有している、請求項13に記載の薄型分析用具。
【請求項15】
上記酸化還元酵素は、還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約43kDaであるチトクロムCを有している、請求項14に記載の薄型分析用具。
【請求項16】
上記電子伝達物質は、Ru化合物であり、
上記酸化還元酵素は、ブルクホルデリア属に属する微生物に由来のグルコース脱水素酵素である、請求項8に記載の薄型分析用具。
【請求項17】
上記Ru化合物は、下記化学式(2)で示されるものであり、
上記酸化還元酵素は、グルコース脱水素活性を有し、かつ還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約60kDaであるαサブユニットと、還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約43kDaであるチトクロムCと、を有している、請求項16に記載の薄型分析用具。
[Ru(NHX]n+ ・・・(2)
上記化学式(2)においては、Xは、NH、ハロゲンイオン、CN、ピリジン、ニコチンアミド、あるいはHOであり、n+はXの種類により決定される酸化型Ru(III)錯体の価数を表している。
【請求項18】
試料液として、血液、尿、唾液、あるいはこれらの調整液などの生化学的試料を使用し、グルコース、コレステロール、乳酸、あるいはアスコルビン酸を分析できるように構成されている、請求項1に記載の薄型分析用具。

【国際公開番号】WO2004/061444
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564495(P2004−564495)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016132
【国際出願日】平成15年12月16日(2003.12.16)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】