説明

薄型高周波コイルおよび製造方法

【課題】高周波用コイルにおいて、従来のリッツ線を用い巻回しているが、リッツ線の構造から薄型、占積率の向上が極めて困難で電子、電気機器、およびワイヤレス電源等に有効に活用出来ない等の問題が顕在していた。
【解決手段】複数本の単独融着細導線をコイルの幅方向、またはコイル幅方向に対し垂直方向に配置しそれぞれの導線の繰り出しに合せテンションコントロールしながら整列巻コイルにすることにより占積率の高い薄型高周波コイルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高周波回路に使用するコイルは、周波数が高くなるに従い導線の表皮効果による損失が大きくなるため、一般的に細線を多数本より合せたリッツ線を用い、巻回し高周波用コイルとして使用している。リッツ線は細線を複数本より合わせる為リッツ線の外径仕上り寸法が同一面積の導線より太くなり、コイルの厚さを薄く巻回する事が出来なく、薄型機器への対応が出来ない等の問題が有った。本発明は細線を1列、または複数列で高周波コイルの幅方向、および垂直方向に並べ同時に円盤状に巻回する事により、薄型化が可能となる。当該導線は細線を複数本使用しているため、表皮効果が極めて小さく高周波用として適した薄型高周波コイルの提供、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波コイルはリッツ線を用いているため、複数本の導線がより合わさることにより、リッツ線外径寸法が太くなりコイルの厚さを薄くすることが出来なかった。また複数本並列に並べたパラ線は並べた導線を一体化する為に、接着固定をする接着用樹脂が用いられるため仕上り寸法が大きくなり、更に巻回も制限され結果として占積率が低下する等の問題があった。
【0003】
また薄く巻回する為にコイルに対し垂直及び幅方向に細線を並べて巻回してもそれぞれの導線の繰り出し長さが異なり薄く整列に捲くことは極めて難しく整列捲き薄型高周波コイルを提供することが出来ない等の問題が顕在している。
【0004】
例えば特許文献1では、高周波コイルを提供するために、絶縁皮膜導線を複数本より合せ、または束ねてなるリッツ線を複数本扁平状に編んで高周波用コイル用として提供するとあるが、特許文献1の提案では高周波用導線仕上りサイズは、太くなり薄型高周波コイル製作には適さなく機器の薄型には適用できないと言う欠点を有している。
【0005】
また特許文献2では、平面内で平行に接合した複数本の平行線がその幅方向に巻回される高周波用コイルが提案されているが、幅方向に巻回するため薄型とはならず、筒型形状になるため薄型の電気・電子機器には使用できない、またワイヤレス電源用途の場合効率が極めて悪いという大きな欠点を有している。
【0006】
本発明は、複数本の融着細導線の幅方向、垂直方向の組合せ、及び供給方法を巻回状態に同期することで複数本の融着細導線単線を用いた整列捲き薄型高周波コイルを完成した。薄型である為電気・電子機器の小型化及びワイヤレス電源等に使用する場合磁気回路の伝播効率を大幅に改善することが出来る等の特徴ある高周波コイルを提供するものである。
【0007】
【特許文献1】特開2002−358840
【特許文献2】実開平6−29117
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、コイルを高周波用にするため導線の表皮効果を極力小さくする為に、細い導線を複数本束ねたリッツ線を用い高周波用コイルとして巻回する方法があるが、リッツ線自体の占積率が極めて低く高周波用コイルとして占積率を高くする事が不可能で小型化、薄型化に大きな問題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するために、コイルの幅方向に融着細導線を単独で複数本配置し、またはコイル幅方向に対し垂直方向に複数本配置し巻回することで整列巻きコイルが提供でき、複数本と同一断面積の単一導線で巻いたコイルに比較し高周波での特性が著しく改善できた高周波コイルを容易に提供することにある。
【0010】
更に、コイルの幅方向と直角な方向に単独で複数本配置し、それぞれの融着細導線を個別にテンションコントロールし回数する事によって、コイルの幅の薄い整列捲きの高周波用コイルが容易に提供できる。
【0011】
またコイルの幅方向及び幅方向に直角な方向に単独でそれぞれ複数本配置し、それぞれの融着細導線を個別にテンションコントロールし巻回する事によって、複数列の占積率の高い整列巻き薄型高周波用コイルが容易に提供できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の薄型高周波用コイルは、融着細導線を単独でそれぞれの導線のテンションをコントロールする事によって整列巻きが容易にでき、占積率の高いコイルとする事が出来る。本発明の薄型高周波用コイルは、その厚さが極めて薄い為電子、電気機器の小型薄型化が出来、またワイヤレス電源用にあっては電磁誘導距離が狭く出来るため、電磁誘導損失が小さく電磁エネルギーを効率よく伝えることができるため、電子、電気機器の性能向上に極めて有効な薄型高周波用コイルを提供することにある。
【0013】
更に融着細導線配列をコイル幅方向及び垂直方向に配置する導線の本数を変えることによって、高周波用コイルとして要求される特性に合致させる事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の薄型高周波用コイルは、単独の融着細導線をコイル幅方向またはコイル垂直方向に配列、更に前記方向を合わせた単独の融着細導線それぞれの繰り出しに合せテンションコントロールをすることによって複数列、複数段の整列捲きが可能となる。また巻取り直前に複数本の融着導線を加熱融着することにより容易に整列巻が出来、さらに占積率も向上する等の利点がある。単独の融着細導線をコイル幅方向またはコイル垂直方向に配列、更に前記方向を合わせて巻回することによって薄型で占積率の高い薄型高周波用コイルが提供できる。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の薄型高周波コイル1の立体図を示す。1は融着導線、2は引出しリード線、3はコイル巻線方向を示す。
【0016】
図2は、本発明の薄型高周波コイル1の断面図を示す。4は融着層、5は絶縁層、6は導線、7はコイルの幅方向、8はコイル幅に対して垂直方向を示す。
【0017】
図3は、本発明の薄型高周波コイル2の立体図を示す。9は融着導線、10は引出しリード線、11はコイル巻線方向を示す。
【0018】
図4は、本発明の薄型高周波コイル2の断面図を示す。12は融着層、13は絶縁層、14は導線、15はコイルの幅方向、16はコイル幅に対して垂直方向を示す。
【0019】
図5は本発明の薄型高周波コイル3の立体図を示す。17は融着導線、18は引出しリード線、19はコイルの巻線方向を示す。
【0020】
図6は本発明の薄型高周波用コイル3の断面図を示す。20は融着層、21は絶縁層、22は導線、23はコイルの幅方向、24はコイル幅に対して垂直方向を示す。
【0021】
図7は従来の高周波用コイルの立体図を示す。25はリッツ線、26は引出しリード線、27はコイルの巻線方向を示す。
【0022】
図8は従来の高周波コイルの断面図を示す。28はリッツ線、29は融着層、30は絶縁層、31は導体、32はコイルの幅方向、33はコイル幅に対して垂直方向を示す。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の薄型高周波コイルは単体融着細導線を薄型で整列捲きする事により占積率が高く、更にコイルの幅が薄いと言う利点を活かし電子・電機機器の薄型化、またワイヤレス電源等においては薄型化が可能となり磁気回路を狭く出来る等の利点があり磁気損失小さく出来る為効率が極めて高く省エネルギータイプのワイヤレス電源等の性能向上に大きく貢献する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の薄型高周波コイル1の立体図
【図2】本発明の薄型高周波コイル1の断面図
【図3】本発明の薄型高周波コイル2の立体図
【図4】本発明の薄型高周波コイル2の断面図
【図5】本発明の薄型高周波コイル3の立体図
【図6】本発明の薄型高周波コイル3の断面図
【図7】従来の高周波用コイルの立体図
【図8】従来の高周波用コイルの断面図
【符号の説明】
【0025】
1、9、17 融着導線
2、10、18 引出しリード線
3、11、19、27 コイル巻線方向
4、12、20、29 融着層
5、13、21、30 絶縁層
6、14、22、31 導体
7、15、23、32 コイルの幅方向
8、16、24、33 コイル幅に対して垂直方向
25、28 リッツ線
26 引出しリード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの幅方向に対し垂直方向に融着細導線を複数本配置、またはコイル幅方向に融着細導線を複数本配置し複数本の融着細導線を同時に円盤状に巻回し融着固定したことを特徴とする薄型高周波コイル。
【請求項2】
コイルの幅方向に融着細導線を複数本配置され、更に融着細導線を複数層配置し同時に円盤状に巻回し融着固定したことを特徴とする薄型高周波コイル。
【請求項3】
薄型高周波コイルにあって巻上げ時、巻芯側と巻芯から離れた位置の供給導線長さを円周長さに合せ、同期供給する事を特徴として巻回する請求項1、2の薄型高周波コイルの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−270403(P2008−270403A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109128(P2007−109128)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000132574)株式会社セルコ (18)
【Fターム(参考)】