説明

薄層基材用キャリア材

【課題】薄膜基材をキャリア材に貼付した状態で、加工工程や搬送工程等に使用した場合であっても、シワやキズ等の発生、形状の維持ができないという不具合が生じない、作業性に優れた薄膜基材用キャリア材を提供する。
【解決手段】厚さが、50〜150μmのポリエステル系樹脂から形成される支持体、及び、前記支持体の少なくとも片面に粘着剤層が形成されることを特徴とする薄層基材用キャリア材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定厚みの特定樹脂から形成される支持体、及び、粘着剤層を有する薄層基材用キャリア材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル、液晶ディスプレイパネル、有機ELパネル、エレクトロクロミックパネル、電子ペーパー素子などにおいて、プラスチックフィルム上に透明電極を設けてなるフィルム基板を用いた素子の需要が増加しつつある。
【0003】
透明電極の材料として、現在、ITO薄膜(In・Sn複合酸化物)が主流であり、前記ITO薄膜を含む薄膜基材の厚さは、年々薄くなる傾向にある。
【0004】
このような中で、ITO薄膜等の光学部材に対して、加工工程や搬送工程等において、キズや汚れ等を防止する目的で、表面保護フィルム等が貼り合わされて使用されている。たとえば、特許文献1には、光学部材に薄手の表面保護フィルムを貼付して使用されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−304317
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記ITO薄膜等の薄膜基材の厚さが薄くなるにつれ、薄膜基材自体のコシがなくなり、例えば、ITO薄膜に、支持体(基材)と粘着剤層から形成される保護フィルム(キャリア材)を貼付して、加工工程や搬送工程等で使用すると、シワの発生や、形状の維持ができず、また、キズ等が発生するなど、不具合の発生が問題となっている。また、前記薄膜基材のコシがないことにより、作業性も大幅に落ちるという問題も生じている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、薄膜基材をキャリア材に貼付した状態で、加工工程や搬送工程等に使用した場合であっても、シワやキズ等の発生がなく、薄膜基材の形状を維持することができ、作業性に優れた薄膜基材用キャリア材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討したところ、本発明の薄層基材用キャリア材を用いることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の薄層基材用キャリア材は、厚さが、50〜150μmのポリエステル系樹脂から形成される支持体、及び、前記支持体の少なくとも片面に粘着剤層が形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明の薄層基材用キャリア材は、前記支持体の第1の方向における破断強度、及び、前記第1の方向と垂直に交わる第2の方向における破断強度の合計が、300〜700N/10mmであることが好ましい。
【0011】
本発明の薄層基材用キャリア材は、前記粘着剤層の初期粘着力(23℃×30分後)が、0.5N/25mm以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の薄層基材用キャリア材は、前記支持体が、ポリエチレンテレフタレートを含有することが好ましい。
【0013】
本発明の薄層基材用キャリア材は、前記薄層基材が、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0014】
本発明の薄層基材用キャリア材は、前記薄層基材が、光学デバイス用基材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の薄層基材用キャリア材は、特定の厚みを有する特定樹脂から形成される支持体を使用することにより、薄膜基材をキャリア材に貼付した状態で、加工工程や搬送工程等に使用した場合であっても、シワやキズ等の発生がなく、薄膜基材自体の形状を維持することができ、作業性に優れたキャリア材となり、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】薄層基材用キャリア材の上面に、ITOフィルムを貼付した状態図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明の薄層基材用キャリア材は、厚さが、50〜150μmのポリエステル系樹脂から形成される支持体、及び、前記支持体の少なくとも片面に粘着剤層が形成されることを特徴とする。
【0019】
本発明における粘着剤層は、アクリル系、合成ゴム系、ゴム系、シリコーン系等のいずれの粘着剤を使用することもでき、特に制限されないが、透明性、耐熱性などの観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
【0020】
前記アクリル系粘着剤の原料としては、炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを構成成分として含有することが好ましい。前記(メタ)アクリル系モノマーを使用することは、取り扱いの容易性等の点から、有用である。
【0021】
本発明における炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることができるが、炭素数4〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーがより好ましい。たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどが好適に用いられる。中でも特に、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらの(メタ)アクリル系モノマーは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0022】
前記炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーの配合量は、モノマー成分中、50重量%以上が好ましく、60〜100重量%がより好ましく、70〜98重量%が更に好ましい。
【0023】
前記炭素数が1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移点や剥離性を調整するための重合性モノマーなどを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。また、これらのモノマーは単独で用いても良いし組み合わせて用いても良いが、モノマー成分(全体)中の配合量としては、その他の重合性モノマーは、50重量%以下が好ましく、0〜40重量%がより好ましく、0〜30重量%がさらに好ましい。
【0024】
前記その他の重合性モノマーとしては、たとえば、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマー等、架橋化基点として働く官能基を有するモノマー成分を適宜用いることができる。これらのモノマー成分は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
前記ヒドロキシル基含有モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4―ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどがあげられる。
【0026】
前記スルホン酸基含有モノマーとしては、たとえば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などがあげられる。
【0027】
前記リン酸基含有モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートがあげられる。
【0028】
前記シアノ基含有モノマーとしては、たとえば、アクリロニトリルなどがあげられる。
【0029】
前記ビニルエステルモノマーとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどがあげられる。
【0030】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレンなどがあげられる。
【0031】
前記カルボキシル基含有モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などがあげられる。
【0032】
前記酸無水物基含有モノマーとしては、たとえば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などがあげられる。
【0033】
前記アミド基含有モノマーとしては、たとえば、アクリルアミド、ジエチルアクリルアミドなどがあげられる。
【0034】
前記アミノ基含有モノマーとしては、たとえば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0035】
前記エポキシ基含有モノマーとしては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0036】
前記ビニルエーテルモノマーとしては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどがあげられる。
【0037】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が10万〜500万が好ましく、より好ましくは20万〜400万、特に好ましくは30万〜300万である。重量平均分子量が10万より小さい場合は、被着体である薄層基材(光学デバイス用基材など)への濡れ性の向上により、剥離時の粘着力が大きくなるため、剥離工程(再剥離)での被着体損傷の原因になることがあり、また、粘着剤層の凝集力が小さくなることにより糊残りを生じる傾向がある。一方、重量平均分子量が500万を超える場合は、ポリマーの流動性が低下し、被着体である薄層基材への濡れが不十分となり、被着体と薄層基材用キャリア材の粘着剤層との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。
【0038】
また、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、前記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)としては、0℃以下(通常−100℃以上)が好ましく、−10℃以下がより好ましく、−20℃以下が更に好ましく、−30℃以下が特に好ましい。ガラス転移温度が0℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく、被着体である薄層基材への濡れが不十分となり、被着体と薄層基材用キャリア材の粘着剤層との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。なお、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調整することができる。
【0039】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の方法により重合でき、作業性等の観点から、溶液重合がより好ましい。また、得られるポリマーは、ホモポリマーやランダムコポリマー、ブロックコポリマーなどいずれでもよい。
【0040】
本発明において用いられる粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマーの構成単位、構成比率、架橋剤の選択および配合比率等を適宜調節して、(メタ)アクリル系ポリマーを適宜架橋することにより、耐熱性にすぐれたものとなる。
【0041】
本発明に用いられる架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、および金属キレート化合物等が用いられる。中でも、主に適度な凝集力を得る観点から、イソシアネート化合物やエポキシ化合物が特に好ましく用いられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
前記イソシアネート化合物としては、たとえば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートL、日本ポリウレタン工業社製)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートHL、日本ポリウレタン工業社製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名コロネートHX、日本ポリウレタン工業社製)などのイソシアネート付加物などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
前記エポキシ化合物としては、たとえば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名TETRAD−X、三菱瓦斯化学社製)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン(商品名TETRAD−C、三菱瓦斯化学社製)などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
前記メラミン系樹脂としてはヘキサメチロールメラミン等があげられる。アジリジン誘導体としては、たとえば、市販品としての商品名HDU(相互薬工社製)、商品名TAZM(相互薬工社製)、商品名TAZO(相互薬工社製)等があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0045】
前記金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、鉄、スズ、チタン、ニッケルなど、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、乳酸エチルなどがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0046】
また、本発明において、架橋剤として、放射線反応性不飽和結合を2個以上有す多官能モノマーを配合することができる。かかる場合には、放射線などを照射することにより(メタ)アクリル系ポリマーを架橋させる。一分子中に放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーとしては、たとえば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルベンジル基などの放射線の照射で架橋処理(硬化)することができる1種または2種以上の放射線反応性を2個以上有す多官能モノマーがあげられる。また、前記多官能モノマーとしては、一般的には放射線反応性不飽和結合が10個以下のものが好適に用いられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0047】
前記多官能モノマーの具体例としては、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビスアクリルアミドなどあげられる。
【0048】
本発明に用いられる架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部(固形分)に対し、1〜30重量部含有されていることが好ましく、2〜25重量部含有されていることがより好ましい。配合量が5重量部よりも少ない場合、架橋剤による架橋形成が不十分となり、粘着剤層の凝集力が小さくなって、十分な耐熱性が得られない場合もあり、また糊残りの原因となる傾向がある。一方、配合量が30重量部を超える場合、粘着剤層の凝集力が大きく、流動性が低下し、被着体である薄層基材に対して、濡れが不十分となって、被着体と粘着剤層との間に発生するフクレの原因となる傾向があり、好ましくない。また、これらの架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
放射線としては、例えば、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、X線、電子線などがあげられるが、制御性および取り扱い性の良さ、コストの点から紫外線が好適に用いられる。より好ましくは、波長200〜400nmの紫外線が用いられる。紫外線は、高圧水銀灯、マイクロ波励起型ランプ、ケミカルランプなどの適宜光源を用いて照射することができる。なお、放射線として紫外線を用いる場合にはアクリル粘着剤に光重合開始剤を配合する。
【0050】
光重合開始剤としては、放射線反応性成分の種類に応じ、その重合反応の引金となり得る適当な波長の紫外線を照射することによりラジカルもしくはカチオンを生成する物質であればよい。
【0051】
光ラジカル重合開始剤として、たとえば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、o−ベンゾイル安息香酸メチル−p−ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン等のベンゾイン類、ベンジルジメチルケタール、トリクロルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−4’−イソプロピル−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、p−クロルベンゾフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2−クロルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(エトキシ)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類、ベンジル、ジベンゾスベロン、α−アシルオキシムエステルなどがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0052】
光カチオン重合開始剤として、たとえば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩や、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体などの有機金属錯体類、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナートなどがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。光重合開始剤は、アクリル系ポリマー100重量部に対し、通常0.1〜10重量部配合し、0.2〜7重量部の範囲で配合するのが好ましい。
【0053】
さらに、アミン類などの光開始重合助剤を併用することも可能である。前記光開始助剤としては、たとえば、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルなどがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。重合開始助剤は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、0.05〜10重量部配合するのが好ましく、0.1〜7重量部の範囲で配合するのがより好ましい。
【0054】
さらに、本発明に用いられる粘着剤(層)の原料(粘着剤組成物)には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、低分子量ポリマー、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜配合することができる。
【0055】
一方、本発明において用いられる粘着剤層は、以上のような粘着剤(層)の原料(粘着剤組成物)を架橋してなるものである。また、本発明の薄層基材用キャリア材は、かかる粘着剤層を支持体(基材層)上に形成してなるものである。その際、粘着剤組成物の架橋は、粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を支持体等に転写することも可能である。
【0056】
上述のように任意成分とする光重合開始剤を配合した場合において、前記粘着剤組成物を、薄層基材用キャリア材(被着体)上に直接塗工するか、または支持体(基材層)の片面または両面に塗工した後、光照射することにより粘着剤層を得ることができる。通常は、波長300〜400nmにおける照度が1〜200mW/cmである紫外線を、光量400〜4000mJ/cm程度照射して光重合させることにより粘着剤層が得られる。
【0057】
支持体(基材層)上に粘着剤層を形成する方法は特に問わないが、たとえば、前記粘着剤組成物を支持体に塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を支持体上に形成することにより作製される。その後、粘着剤層の成分移行の調整や架橋反応の調整などを目的として養生をおこなってもよい。また、粘着剤組成物を支持体上に塗布して、薄層基材用キャリア材を作製する際には、支持体上に均一に塗布できるよう、粘着剤組成物中に重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0058】
また、本発明における粘着剤層の形成方法としては、粘着テープ等の製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、たとえば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法などがあげられる。
【0059】
本発明の薄層基材用キャリア材は、上記粘着剤層の厚みが、通常3〜100μm、好ましくは5〜50μm程度になるように作製する。本発明に用いられる支持体(基材層)の少なくとも片面に、上記粘着剤層を塗布等して形成し、フィルム状やシート状、テープ状などの形態としたものである。
【0060】
本発明において使用される前記粘着剤層の初期粘着力(23℃×30分後)としては、0.5N/25mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.01〜0.4N/25mmであり、特に好ましくは、0.02〜0.3N/25mmである。前記範囲内であると、薄層基材用キャリア材を薄層基材から剥離する際に、前記薄層基材の形状が、変形等を生じず、好ましい態様となる。
【0061】
また、本発明において使用される前記粘着剤層の経日粘着力(加熱条件:50℃×48時間(2日)後)としては、0.5N/25mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.01〜0.45N/25mmであり、特に好ましくは、0.02〜0.35N/25mmである。前記範囲内であると、薄層基材用キャリア材を薄層基材から剥離する際に、加熱条件下に曝された後であっても、前記薄層基材の形状が、変形等を生じず、好ましい態様となる。
【0062】
本発明においては、前記薄層基材用キャリア材を構成する支持体として、ポリエステル系樹脂を使用する。前記ポリエステル系樹脂は、強靭性、加工性、透明性等を有するため、これを薄層基材用のキャリア材に使用することにより、作業性・検査性が向上することとなり、好ましい態様となる。
【0063】
前記ポリエステル系樹脂としては、シート状やフィルム状等に形成できるものであれば特に限定されるものでなく、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムが挙げられる。これらのポリエステル系樹脂は単独(ホモポリマー)で使用してもよく、また2種以上を混合・重合(コポリマー等)して使用してもよい。特に、本発明においては、薄層基材用キャリア材として用いるため、支持体として、ポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。ポリエチレンテレフタレートを用いることにより、強靭性、加工性、透明性に優れた薄膜基材用キャリア材となり、作業性が向上し、好ましい態様となる。
【0064】
前記支持体の厚みは、50〜150μmであり、好ましくは60〜140μmであり、特に好ましくは70〜130μmである。前記範囲内であると、薄層基材用キャリア材を、薄層基材に貼付して使用することにより、コシがなく、撓みやすい薄層基材の形状を保持することができ、加工工程や搬送工程等において、シワやキズなどの不具合の発生を防止でき、有用である。
【0065】
また、前記支持体には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの静電防止処理をすることもできる。
【0066】
なお、粘着剤層と支持体間の密着性を向上させるため、支持体の表面にはコロナ処理などを行ってもよい。また、支持体には背面処理を行ってもよい。
【0067】
また、前記支持体の第1の方向における破断強度、及び、前記第1の方向と垂直に交わる第2の方向における破断強度の合計が、300〜700N/10mmであることが好ましく、より好ましくは、300〜650N/10mmであり、特に好ましくは、310〜600N/10mmである。前記範囲内にあると、支持体自体にコシがあり、この支持体を用いた薄層基材用キャリア材を、薄層基材に貼付することで、薄層基材を含めた全体の強度が向上し、加工工程や搬送工程等において、薄層基材の形状の変形(カールなど)を抑制することができ、好ましい態様となる。なお、前記第1の方向とは、支持体の長手方向(MD)であっても、幅方向(TD、すなわち前記MDと直交する方向)であっても構わないが、前記第1の方向が、MD方向である場合には、第2の方向とは、TD方向を指すものとする。
【0068】
本発明の薄層基材用キャリア材は、必要に応じて粘着面を保護する目的で粘着剤表面にセパレーターを貼り合わせることが可能である。セパレーターを構成する基材としては、紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。そのフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0069】
本発明の薄層基材用キャリア材に使用する前記薄層基材としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムや、樹脂フィルムにITO蒸着したもの、ガラス、金属薄膜などからなる基材(例えば、シート状やフィルム状、板状の基材(部材)など)などが挙げられ、特に、樹脂フィルムをあげることができる。
【0070】
また、前記薄層基材としては、光学デバイス用基材(光学部材)であることがより好ましい。ここで、光学デバイス用基材とは、例えば、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)を有する基材(部材)をいう。光学デバイス用基材としては、光学的特性を有する基材であれば、特に限定されないが、例えば、表示装置(液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなど)、入力装置(タッチパネル等)等の機器を構成する基材(部材)又はこれらの機器に用いられる基材(部材)が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルムなど)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護フィルム、プリズム、カラーフィルター、ハードコートフィルム、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材が挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態をも含むものとし、例えば、「偏光板」は「偏光フィルム」、「偏光シート」も含むものとする。これらの光学デバイス用基材は、厚みが薄く、コシがないため、加工工程や搬送工程等において、撓みや形状の変形を生じ易いが、本発明の薄層基材用キャリア材を貼付して使用することにより、形状を保持することができ、不具合の発生を抑制でき、好ましい態様となる。
【0071】
前記薄層基材の厚みとして、50μm以下のものに使用することが好ましく、より好ましくは、40μm以下である。前記範囲内の薄層基材(被着体)に対して、本発明の薄層基材用キャリア材を使用することにより、非常に薄い薄層基材の形状を保持することができ、シワやキズ等の不具合の発生を抑制でき、好ましい態様となる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行い、評価結果については、表1に示した。
【0073】
[実施例1]
<アクリル系ポリマー(A)の調整>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つロフラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート200重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート8重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部、酢酸エチル312重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って約6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(A)溶液(40重量%)を調製した。前記アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は50万、ガラス転移温度(Tg)は−68℃であった。
【0074】
<粘着剤溶液の調整>
上記アクリル系ポリマー(A)溶液(40重量%)を酢酸エチルで20重量%に希釈し、この溶液のアクリルポリマー100重量部(固形分)に対して、架橋剤としてポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、コロネートHX)4.0重量部、架橋触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(1重量%酢酸エチル溶液)0.02重量部を加えて、25℃付近に保って約1分間混合撹拌を行い、アクリル系粘着剤溶液(1)を調製した。
【0075】
<薄層基材用キャリア材の作製>
上記アクリル系粘着剤溶液(1)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材(厚さ75μm、支持体)の片面に塗布し、110℃で3分間加熱して、厚さ15μmの粘着剤層を形成した。次いで、前記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施したPET剥離ライナー(厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼合せ、薄層基材用キャリア材を作製した。
【0076】
[実施例2]
PET基材の厚さを100μmにして使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で薄層基材用キャリア材を作製した。
【0077】
[実施例3]
PET基材の厚さを125μmにして使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で薄層基材用キャリア材を作製した。
【0078】
[比較例1]
PET基材の厚さを38μmにして使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で薄層基材用キャリア材を作製した。
【0079】
[比較例2]
PET基材の代わりに、ポリエチレン(PE)基材(厚さ75μm、愛知プラスチック工業社製、ANE−75)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で薄層基材用キャリア材を作製した。
【0080】
[比較例3]
<ゴム系粘着剤溶液の調整>
天然ゴム系グラフトポリマー(ASIATIC DEVELPOMENT BHD製、MEGAPOLY 30)100重量部、脂肪族系粘着付与剤(日本ゼオン社製、クイントンA-100)35重量部、架橋剤としてポリイソシアネート(ポリウレタン工業社製、ミリオネートMR−200S)4.0重量部を容器に投入し、トルエンにて、10重量%に希釈し、25℃付近に保って約20分間混合撹拌を行い、ゴム系粘着剤溶液(2)を調製した。
【0081】
<薄層基材用キャリア材の作製>
上記ゴム系粘着剤溶液(2)を、ポリエチレン(PE)基材(厚さ75μm、愛知プラスチック工業社製、ANE−75)の片面に塗布し、80℃で2分間加熱して、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次いで、前記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施したPET剥離ライナー(厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼合せ、薄層基材用キャリア材を作製した。
【0082】
[実施例4〕
<下塗り剤の原料溶液の調整>
天然ゴム(国際規格RSS-3型)をトルエンで20重量%に希釈し、25℃付近に保って約20時間混合撹拌を行い、下塗り剤の原料溶液(20重量%)を調製した。
【0083】
<下塗り剤の調整>
前記下塗り剤の原料溶液(20重量%)をトルエンにて0.5重量%に希釈し、この溶液の天然ゴム(国際規格RSS-3型)100重量部(固形分換算)に対して、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)75重量部(固形分換算)を加えて、25℃付近に保って約1分間混合撹拌を行い、下塗り剤を調製した。
【0084】
<薄層基材用キャリア材の作製>
PET基材(厚さ125μm)の片面に、前記下塗り剤を塗布し、80℃で1分間加熱して、厚さ0.4μmの下塗り剤層を形成した。その後、下塗り剤層上に、比較例3と同様のゴム系粘着剤溶液(2)を塗布し、80℃で2分間加熱して、厚さ3μmのゴム系の粘着剤層を形成した。次いで、前記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施したPET剥離ライナー(厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼合せ、薄層基材用キャリア材を作製した。
【0085】
<アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)の測定>
作製したポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
【0086】
装置:東ソー社製、HLC−8220GPC
カラム:
サンプルカラム;東ソー社製、TSKguardcolumn Super HZ−H(1本)+TSKgel Super HZM−H(2本)
リファレンスカラム;東ソー社製、TSKgel Super H−RC(1本)
流量:0.6ml/分
注入量:10μl
カラム温度:40℃
溶離液:THF
注入資料農奴:0.2重量%
検出器:示差屈折計
なお、重量平均分子量はポリスチレン換算により算出した。
【0087】
<アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度Tg(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度Tg(℃)として下記の文献値を用い、下記の式により求めた。
【0088】
式:1/(Tg+273)=Σ[W/(Tg+273)]
(式中、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、W(−)は各モノマーの重量分率、Tg(℃)は各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度、nは各モノマーの種類を表す。)
2−エチルヘキシルアクリレート:−70℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート:−15℃
ブチルアクリレート:−55℃
アクリル酸:106℃
なお、文献値として「アクリル樹脂の合成・設計と新用途開発」(中央経営開発センター出版部発行)を参照した。
【0089】
<破断強度>
以下の方法で測定した。すなわち、支持体を長手方向(MD)に沿って、短冊状の試験片(MD試験片)を切り出し、JIS K7127(1999)に準拠して、前記試験片の破壊時の引張応力、及び、チャック間距離を以下の条件で測定した。
【0090】
[測定条件]
測定温度23℃ (23℃×50%RHの条件下に、前記試験片を30分以上保持した後に測定を開始した。)
試験片の幅10mm
引張速度300mm/m
チャック間距離50mm
異なる箇所から切り出した3つの試験片を用いて、前記測定を行い(すなわちn=3)、それらの平均値をMDの破断強度(N/10mm)とした。
また、支持体の幅方向(TD、すなわち前記MDと直交する方向)に沿って、短冊状の試験片(TD試験片)を切り出し、MD試験片と同様にして破断強度を測定した。異なる箇所から切り出した3つの試験片を用いて上記測定を行い、それらの平均値をTDの破断強度(N/10mm)とした。
【0091】
<粘着力測定>
[初期粘着力]
被着体として、幅70mm 、長さ100mmのアクリル板(三菱レイヨン社製、アクリライト)を用意した。薄層基材用キャリア材(粘着シート)を剥離ライナーごとに、幅25mm 、長さ100mmのサイズにカットし、前記剥離ライナーを除去して、粘着面を露出させた。その粘着面を、上記アクリル板にそれぞれ線圧78.5N/cm、0.3m/minの速度で圧着した。これを23℃×50%RHの環境下に30分間放置した後、同環境下で万能引張試験機を用いて剥離速度0.3m/min、剥離角度180°の条件で、アクリル板から薄層基材用キャリア材を剥離し、このときの剥離力を初期粘着力として評価した。
【0092】
[経日粘着力]
被着体として、幅70mm 、長さ100mmのアクリル板(三菱レイヨン社製、アクリライト)を用意した。薄層基材用キャリア材(粘着シート)を剥離ライナーごとに、幅25mm 、長さ100mmのサイズにカットし、前記剥離ライナーを除去して、粘着面を露出させた。その粘着面を、上記アクリル板にそれぞれ圧力0.25MPa、0.3m/minの速度で圧着した。これを50℃の環境下に48時間放置した後、23℃×50%RHの環境下に30分間放置した。その後、万能引張試験機(ミネベア(株)社製、引張圧縮試験機)を用いて剥離速度0.3m/min、剥離角度180°の条件で、アクリル板から薄層基材用キャリア材を剥離し、このときの剥離力を経日粘着力として評価した。
【0093】
<加工面の形状保持確認>
厚さが約25μmのITOフィルム(薄層基材:厚さ25μmのPET基材上に極薄のITO層を形成した。)に、実施例および比較例の薄層基材用キャリア材(粘着シート)を貼り付けた。薄層基材用キャリア材(粘着シート)の上面に、ITOフィルムが貼り付けられた状態で、150℃×60min保持した後、室温(23℃)に戻した後に、目視にて、ITOフィルムを観察し、ITOフィルムにカールがないものを○、あるものを×とした。なお、ITOフィルムが貼り付けられた状態について、図1に示した(一例)。
【0094】
【表1】

【0095】
上記表1の結果より、全ての実施例においては、支持体の厚みを所望の範囲に調整することにより、破断強度(支持体のコシ)や粘着力(粘着力の変化の抑制)に優れ、加工面の形状を保持することができる薄層基材用キャリア材を得られることを確認した。一方、比較例1においては、支持体の厚みを所望の範囲に調整しなかったため、破断強度の合計が小さくなり、コシがなく、加工面の形状も保持することができなかった。また、比較例2及び比較例3においては、支持体の厚みは、実施例1と同様であるが、ポリエステル系樹脂ではなくポリエチレン系樹脂を使用したため、破断強度が小さく、コシがないため、加工面の形状保持が、実施例に比べて劣る結果となった。また、比較例3においては、更に、粘着剤層に粘着力が高いゴム系粘着剤を使用したことで、薄層基材から剥離した際に、薄層基材が変形を生じてしまった。
【符号の説明】
【0096】
1 支持体(PET)
2 粘着剤層
3 ITO層
4 PET基材
10 薄層基材用キャリア材
20 ITOフィルム(薄層基材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが、50〜150μmのポリエステル系樹脂から形成される支持体、及び、前記支持体の少なくとも片面に粘着剤層が形成されることを特徴とする薄層基材用キャリア材。
【請求項2】
前記支持体の第1の方向における破断強度、及び、前記第1の方向と垂直に交わる第2の方向における破断強度の合計が、300〜700N/10mmであることを特徴とする請求項1に記載の薄層基材用キャリア材。
【請求項3】
前記粘着剤層の初期粘着力(23℃×30分後)が、0.5N/25mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄層基材用キャリア材。
【請求項4】
前記支持体が、ポリエチレンテレフタレートを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄層基材用キャリア材。
【請求項5】
前記薄層基材が、樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄層基材用キャリア材。
【請求項6】
前記薄層基材が、光学デバイス用基材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薄層基材用キャリア材。


【図1】
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【公開番号】特開2012−255122(P2012−255122A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130251(P2011−130251)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】