説明

薄板片及び薄板片溶接用構造

【課題】 変形を防止すると同時に溶接し易い薄板片、及び隣接する二つの前記薄板片の溶接が容易となる薄板片溶接用構造を提供する。
【解決手段】 薄板片本体と、断面略L字状で、L字の空間部が前記薄板片本体の端部の方向に向くようにかつこの端部の近傍でこの端部に沿うように前記薄板片本体に固定した補強部材とを有する。前記薄板片本体は、孔を有する突起部を有し、前記補強部材は、前記突起部を通す第一の貫通孔を前記補強部材の横部に有し、前記貫通孔に前記突起部を通した後に前記突起部の孔に第一の嵌め込み部材を嵌め込んで前記補強部材を前記薄板片本体に固定したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体燃料(例えばLNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)等)や水等の液体、又は、燃料ガス等の気体を安全に貯蔵するタンク等の構造体の構成要素である薄板片、及び隣接する二つの前記薄板片を溶接するための薄板片溶接用構造に関する。
【背景技術】
【0002】
薄板片を用いた上記のタンク等の構造体は複数の薄板片を溶接により接合することにより形成される。すなわち、タンク等の構造体は薄板片を構成要素とする。
【0003】
特許文献1には、溶接する二つの薄板片の間隔(開先のルート間隔)を調整する溶接用治具(下駄39)が記載されている(特許文献1の図7等を参照)。これにより、薄板片の溶接を容易化できる。
【0004】
【特許文献1】特開平9−285894号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、溶接用治具(下駄39)が記載されているが、薄板片を補強する点については何も開示されていない。薄板片は、表面や裏面の面積に対して厚さが薄いため溶接の際等に、変形して溶接がしにくいという不都合があった。
【0006】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、その目的は、変形を防止すると同時に溶接し易い薄板片、及び隣接する二つの前記薄板片の溶接が容易となる薄板片溶接用構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の薄板片は、薄板片本体と、断面略L字状で、L字の空間部が前記薄板片本体の端部の方向に向くようにかつこの端部の近傍でこの端部に沿うように前記薄板片本体に固定した補強部材とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の薄板片は、請求項1記載の薄板片において、前記薄板片本体は、孔を有する突起部を有し、前記補強部材は、前記突起部を通す第一の貫通孔を前記補強部材の横部に有し、前記貫通孔に前記突起部を通した後に前記突起部の孔に第一の嵌め込み部材を嵌め込んで前記補強部材を前記薄板片本体に固定したことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の薄板片溶接用構造は、隣接する二つの薄板片を溶接するための薄板片溶接用構造であって、隣接する二つの請求項2記載の薄板片と、前記隣接する二つの薄板片がそれぞれ有する前記突起部に対応する位置に第二の貫通孔を有し、この第二の貫通孔を介して前記第一の嵌め込み部材を前記突起部の孔に嵌め込むことにより前記隣接する二つの薄板片がそれぞれ有する前記補強部材の縦部の間で前記隣接する二つの薄板片に固定され、前記第二の貫通孔の内壁面と前記突起部の外側の面又は内側の面との間に第二の嵌め込み部材を嵌め込んで前記隣接する二つの薄板片の間隔を調整可能な溶接用治具と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の薄板片溶接用構造は、隣接する二つの薄板片を溶接するための薄板片溶接用構造であって、隣接する二つの請求項1又は2記載の薄板片と、架橋部及びこの架橋部を支持する支持部を有し、前記隣接する二つの薄板片がそれぞれ有する前記補強部材を跨ぐように前記隣接する二つの薄板片に配置し、前記架橋部の底面に前記補強部材がそれぞれ当接し、前記支持部の内側の面と、前記補強部材の外側の面との間に第三の嵌め込み部材を嵌め込んで前記隣接する二つの薄板片の間隔を調整可能な溶接用治具と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の薄板片によれば、断面略L字状で、L字の空間部が前記薄板片本体の端部の方向に向くようにかつこの端部の近傍でこの端部に沿うように前記薄板片本体に固定した補強部材により薄板片が補強されて薄板片の変形を防止できる。
【0012】
また、請求項2記載の薄板片によれば、補強部材が、L字の空間部が前記薄板片本体の端部の方向に向くようにかつこの端部の近傍でこの端部に沿うように、孔を有する突起部を介して第一の嵌め込み部材を嵌め込んでしっかりと固定され、隣接する二つの薄板片の互いに向き合う端部(開先)の上部に溶接用の作業空間を確保出来るため溶接がし易い。このため、変形を防止すると同時に溶接し易い薄板片が得られる。
【0013】
請求項3記載の薄板片溶接用構造は、隣接する二つの請求項2記載の薄板片と、前記隣接する二つの薄板片がそれぞれ有する前記突起部に対応する位置に第二の貫通孔を有し、この第二の貫通孔を介して前記第一の嵌め込み部材を前記突起部の孔に嵌め込むことにより前記隣接する二つの薄板片がそれぞれ有する前記補強部材の縦部の間で前記隣接する二つの薄板片に固定され、前記第二の貫通孔の内壁面と前記突起部の外側の面又は内側の面との間に第二の嵌め込み部材を嵌め込んで前記隣接する二つの薄板片の間隔を調整可能な溶接用治具と、を有するので、前記溶接用治具の貫通孔の内壁面と前記突起部の外側の面又は内側の面との間に第二の嵌め込み部材を嵌め込んで前記隣接する二つの薄板片の間隔を調整出来、薄板片の間隔の調節が容易に行え、隣接する薄板片の位置合せが容易に出来るので、隣接する二つの薄板片の溶接を容易にすることが出来る。
【0014】
請求項4記載の薄板片溶接用構造は、隣接する二つの薄板片を溶接するための薄板片溶接用構造であって、隣接する二つの請求項1又は2記載の薄板片と、架橋部及びこの架橋部を支持する支持部を有し、前記隣接する二つの薄板片がそれぞれ有する前記補強部材を跨ぐように前記隣接する二つの薄板片に配置し、前記架橋部の底面に前記補強部材がそれぞれ当接し、前記支持部の内側の面と前記補強部材の外側の面との間に第三の嵌め込み部材を嵌め込んで前記隣接する二つの薄板片の間隔を調整可能な溶接用治具と、を有するので、前記支持部の内側の面と前記補強部材の外側の面との間に第三の嵌め込み部材を嵌め込んで前記隣接する二つの薄板片の間隔を調整出来、薄板片の間隔の調節が容易に行え、隣接する薄板片の位置合せが容易に出来るので、隣接する二つの薄板片の溶接を容易にすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態の一例について図面を参照しながら説明する。なお、図面において同様のものや対応するもの、総称できるものについては同じ符号を付して説明する。また、図面において同様のものや対応するもの、総称できるものが複数ある場合、その一部についてのみ符号を付した。なお、本発明は、下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で実施形態に適宜変更を加えることが出来るのはもちろんである。
【0016】
図1は、本発明の一例に係る薄板片を岩盤空洞内で溶接により接合する際の状況を説明する説明図である。
【0017】
本実施形態では、岩盤31内の空洞33に設ける横形円筒タンク35(2点鎖線参照)の部品(すなわち構成要素)である薄板片10について説明する。薄板片10は、タンク(例えば、縦型円筒タンクや球形タンク等の貯槽タンク、外圧・内圧がかかるタンク等)や管等の構造体の薄板片であればよい。
【0018】
架台25を岩盤31内の空洞33に形成する。この架台25の上で薄板片10を溶接により接合して横形円筒タンク35の円筒部を形成する。
【0019】
図2は、本発明の一例に係る薄板片を示す図である。図3は、本発明の一例に係る薄板片を突き合わせた状態の概略断面図である。図3の符号は、12等のように所定のものについては、総称した符号を付した。
【0020】
薄板片10は、薄板片本体11、補強部材12(12a、12b、12c、12dを総称したもの。以下同じ。)、突起部13、第一の嵌め込み部材14を有する。これらは、金属等により形成される。補強部材12、突起部13、第一の嵌め込み部材14等は、薄板片本体11の内面側(円筒タンクを形成した場合の内壁面側)に設けた場合を示している。
【0021】
薄板片本体11は、横形円筒タンク35の部品胴部を例示しているので、矩形で曲面を有し、湾曲している(図3では、薄板片本体11は平面として描いている)。特に、薄板片本体11が円筒部の部品である場合には、円筒の周方向に湾曲する。また、薄板片本体11が球体の殻部の部品である場合には、球体面状に沿って湾曲するように、補強部材12等も薄板片本体11の形状に合わせて湾曲させる。
【0022】
薄板片本体11には、外周の端部111a(111b、111c、又は111d)の近傍でこの端部111a(111b、111c、又は111d)に沿って突起部13を溶接等により着脱可能に設ける。この突起部13は、その側に孔13aを有する。この突起部13は、本実施形態では角駒により構成される。突起部13を着脱可能に設けることにより、薄板片10の溶接後に突起部13を取り外すことができる。
【0023】
角駒は、鋼材で六面直方体を形成し、かつその六面直方体の中央部には、第一の嵌め込み部材14を嵌め込むことができる所要直径寸法の孔13a(ここでは断面円形状に貫通した円筒孔)に対応する。)を設ける。なお、角駒の六面直方体外観形状は、扁平な板形状に形成してもよい。
【0024】
第一の嵌め込み部材14は、本実施形態においてはテーパーピン(例えば略円錐形状(円錐形状を含む)であるがこれに限らず、角矢のような略多角錐形状でもよい。)、すなわち、通称ボロシンにより構成される。第一の嵌め込み部材14は、孔13aに嵌め込まれる(嵌入される)。
【0025】
補強部材12は、例えばアングル材で構成される。補強部材12は、水平な横部122と垂直な縦部124を有する断面略L字状(L字状を含む。)である。補強部材12は、突起部13を通す第一の貫通孔121(121a、121b、121c、121dを総称したもの。以下同じ。)を横部122(122a、122b、122c、122dを総称したもの。以下同じ。)に有する。この第一の貫通孔121は、補強部材12を薄板片本体11に固定する場合に突起部13に対応する位置に設ける。そして、第一の貫通孔121は、突起部13を通すことができる大きさ及び形状になる。
【0026】
第一の貫通孔121に突起部13を通した後に突起部13の孔13aに第一の嵌め込み部材14を着脱可能に嵌め込んで(嵌入して)補強部材12を薄板片本体11の内面側に着脱可能に固定する。このときに、補強部材12の縦部124が薄板片本体11と平行になるように、かつ補強部材12の横部122と縦部124の両壁面の内側に位置するL字の空間部123(123a、123b、123c、123dを総称したもの。以下同じ。)が端部111(111a、111b、111c、111dを総称したもの。以下同じ。)の方向に向くようにする。すなわち、縦部124が薄板片本体11の中側に位置するように補強部材12を薄板片本体11に固定する。第一の貫通孔121に突起部13を通した後に突起部13の孔13aに第一の嵌め込み部材14を着脱可能に嵌め込んで補強部材12を薄板片本体11に着脱可能に固定することにより、補強部材12を薄板片本体11に容易に着脱できる。そして、薄板片本体11に補強部材12を容易に固定することが出来、薄板片10を溶接後に補強部材12を容易に取り外すことができる。なお、補強部材12は、主に溶接時に固定される。薄板片10の搬送時には、必要に応じて補強部材12を固定しなくても良い。補強部材12を薄板片本体11に容易に着脱できる構造とすることにより必要に応じて補強部材12を着脱できる。これにより、薄板片10の搬送時の取り扱いが容易になる。
この補強部材12は、タンク35外部にコンクリートを打設する際の座屈等を防止する補強材、枠ともなる。なお、突起部13をさらに複数列状に設けておけば、補強部材12をさらに追加することもできる。また、補強部材12にあわせて、突起部13を他の薄板片本体11に設ければ、補強部材12を他の薄板片本体11にも用いることが出来、補強部材12の使いまわしができる。
【0027】
補強部材12aは、L字の空間部123aが薄板片本体11の端部111aの方向に向くようにかつこの端部111aの近傍でこの端部111aに沿うように(端部111a(薄板本体11の一辺)と略平行となるように)薄板片本体11に固定される。なお、補強部材12b、12c又は12dについても同様である。この場合、空間部123aは、空間部123b、123c又は123dとなり、端部111aは、端部111b、111c又は111dとなる。このような補強部材12により、薄板片10の搬送時における変形防止(形状維持、曲率保持等)が可能になる。また、薄板片10の溶接時における変形防止(形状維持、曲率保持、歪み防止等)が可能になる。また、補強部材12、突起部13等は溶接時等のタンク(構造体)組立時の補助になり、位置合わせ、軸心合わせ、真円保持等が容易となる。また、補強部材12が断面略L字状となるため、押さえ勝手がよい。
【0028】
L字の空間部123が薄板片本体11の端部111の方向に向くことにより、薄板片10の突合せ部(開先)の上方に空間ができる(図3参照)ので、溶接作業空間を設けることが出来、薄板材11の溶接もし易くなる。
【0029】
補強部材12a(12b、12c、又は12d)は、断面略L字状で、L字の空間部123a(123b、123c、又は123d)が薄板片本体11の端部111a(111b、111c、又は111d)の方向に向くようにかつこの薄板片本体11の端部111a(111b、111c、又は111d)の近傍でこの端部111a(111b、111c、又は111d)に沿うようにして固定されることにより、初めて、変形を防止すると同時に溶接し易い薄板片が得られる。
【0030】
なお、補強部材12は、薄板片本体11の曲面の周方向(補強部材12a、12c参照)及びこの周方向と直角の方向(補強部材12b、12d参照)に設けているが、薄板材10の変形は、主に周方向に起きるため、補強部材12は、薄板片本体11の曲面の周方向(補強部材12a、12c参照)に設ければよい。
【0031】
図4は、本発明に係る第一の薄板片溶接用構造の一例を示す図である。図4の符号は、12等のように所定のものについては、総称した符号を付した。また、断面を表すハッチングも省略した。
【0032】
第一の薄板片溶接用構造は、隣接する二つの薄板片10を溶接するための薄板片溶接用構造である。第一の薄板片溶接用構造は、上記で説明した隣接する二つの薄板片10と、隣接する二つの薄板片10がそれぞれ有する、二つの突起部13に対応する位置に第二の貫通孔401を有し、この第二の貫通孔401を介して第一の嵌め込み部材14を突起部13の孔13aに嵌め込むことにより隣接する二つの薄板片10がそれぞれ有する、補強部材12の二つの縦部124の間で隣接する、二つの薄板片10に固定され、第二の貫通孔401の内壁面401aと突起部13の外側の面13b又は内側の面13cとの間に第二の嵌め込み部材20を嵌め込んで隣接する二つの薄板片10の間隔(開先のルート間隔)を調整可能な溶接用治具40と、を有する。
【0033】
溶接用治具40は、所定の厚さを有する金属の板材等により形成され、所定形状例えば本実施形態のように矩形に形成される。貫通孔401は矩形、円形等に形成される。そして、溶接用治具40の貫通孔401を介して第一の嵌め込み部材14を突起部13の孔13a(図3を参照)に嵌め込むことにより、貫通孔401の内壁面401aが抑えられるので、第一の嵌め込み部材14は、隣接する薄板片10の二つの補強部材12の断面略L字の縦部124の間に固定される。
【0034】
第一の嵌め込み部材14がテーパーピン等により構成される場合には、この第一の嵌め込み部材14を深く嵌め込むことによって、より強固に溶接用治具40が固定され、溶接の際の隣接する互いの薄板片10の高さを容易にあわせることができる。第2の嵌め込み部材20は、例えば四角錘形状の角矢等により構成される。
【0035】
第一の薄板片溶接用構造(薄板片10や溶接用治具40等)は、上記の薄板片10や溶接用治具40上記の構造に形成することで、薄板片10の間隔の調節が容易に行え、隣接する薄板片の位置合せが容易に出来るので、隣接する二つの薄板片の溶接を容易にすることが出来る。この第一の薄板片溶接用構造では、容易に溶接ができるように突起部13を有効利用している。
【0036】
図5は、本発明に係る第二の薄板片溶接用構造の一例を示す図である。図5の符号は、12等のように所定のものについては、総称した符号を付した。
【0037】
第二の薄板片溶接用構造は、隣接する二つの薄板片10を溶接するための薄板片溶接用構造である。第二の薄板片溶接用構造は、隣接する二つの上記の薄板片10と、架橋部50a及びこの架橋部50aを支持する支持部50bを有し、隣接する二つの薄板片10がそれぞれ有する、二つの補強部材12の上方を跨ぐように隣接する二つの薄板片10に配置し、架橋部50aの底面50abに隣接する薄板片10の二つの補強部材12がそれぞれ当接し、支持部50bの内側の面50bbと補強部材12の外側の面124p(縦部124の外側の面124p)との間に第三の嵌め込み部材30を嵌め込んで前記隣接する二つの薄板片10の間隔を調整可能な溶接用治具50と、を有する。
【0038】
2つの補強部材12の縦部124の間隔よりも、支持部50bの間隔の方を長くなる構造に溶接用治具50を形成する。溶接用治具50は、所定の厚さを有する金属の板材等により形成され、所定形状に形成される。
【0039】
溶接用治具50は、支持部50bの高さを補強部材12の縦部124の高さと同程度又は低くして、架橋部50aの底面50abに、隣接する二つの薄板片10の補強部材12の上面124cがそれぞれ当接可能となる構造に形成する。また、二つの支持部50bの高さを同じにし、補強部材12の支持部50bの高さも同じにすることにより、架橋部50aの底面に隣接する薄板片10の補強部材12の上面124cが当接させれば、隣り合う薄板片10の高さをあわせることが出来、これにより溶接が容易となる。
【0040】
第三の嵌め込み部材30は、例えば角矢等により構成され、第三の嵌め込み部材30を嵌め込んでいくにつれて、隣接する薄板片10は近付く。
【0041】
第二の薄板片溶接用構造(薄板片10や溶接用治具50等)は、上記の構造に形成することで、薄板片10の間隔の調節が容易に行え、隣接する薄板片の位置合せが容易に出来るので、隣接する二つの薄板片の溶接を容易にすることが出来る。第二の薄板片溶接用構造では、容易に溶接ができるように補強部材12を有効利用している。
【0042】
なお、溶接用治具50は、架橋部50aの略中央下面に凸部50c有する。凸部50cは、凸部50cの外側50cbの面と、補強部材の内側の面(縦部124の内側の面124q)との間に第三の嵌め込み部材30を嵌め込んで隣接する薄板片10の間隔を調整可能に形成する。これにより、図示はしないが、第三の嵌め込み部材30を嵌め込んでいくにつれて、隣接する薄板片10は遠ざかる。
【0043】
上記、図4及び図5に示した第一、第二の薄板片溶接用構造では、溶接用治具40、50を上記構造に簡単に形成でき、軽量な材料により形成できる。そして、溶接用治具40、50と、第二の嵌め込み部材20又は第三の嵌め込み部材30とにより、溶接時の位置合わせ、肌合わせ、軸心合わせ等ができる。また、溶接時における円筒部の真円の保持、薄板片10の間隔(開先ルート間隔)の微調整が容易となる。さらに、溶接用治具40、50により、溶接時の薄板片10の変形(歪み)等を防止できる。また、上記の薄板片10や第一乃至第二の薄板片溶接用構造によりタンク等を作業性良く構築できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明に係る薄板片及び薄板片溶接用構造は、岩盤空洞内のタンクに限定することなく、地上設置や地下設置のタンクの構成要素である薄板片及び隣接する二つの前記薄板片を溶接するための薄板片溶接用構造に適用することができ、さらに、横形円筒形タンクに限定することなく、縦型円筒タンクや球形タンク等、種々形状の貯槽タンク、外圧・内圧がかかる構築物にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一例に係る薄板片を岩盤空洞内で溶接により接合する際の状況を説明する説明図である。
【図2】本発明の一例に係る薄板片を示す図である。
【図3】本発明の一例に係る薄板片を突き合わせた状態の概略断面図である。
【図4】本発明に係る第一の薄板片溶接用構造の一例を示す図である。
【図5】本発明に係る第二の薄板片溶接用構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
10 薄板片
11 薄板片本体
12 補強部材
13 突起部
13a 孔
13b 外側の面
13c 内側の面
14 第一の嵌め込み部材
20 第二の嵌め込み部材
30 第三の嵌め込み部材
40 溶接用治具
50 溶接用治具
50a 架橋部
50b 支持部
50ab 底面
50bb 内面
121 第一の貫通孔
122 横部
123 空間部
124 縦部
124p 外側の面
124q 内側の面
401 第二の貫通孔
401a 内壁面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板片本体と、断面略L字状で、L字の空間部が前記薄板片本体の端部の方向に向くようにかつこの端部の近傍でこの端部に沿うように前記薄板片本体に固定した補強部材とを有することを特徴とする薄板片。
【請求項2】
請求項1記載の薄板片において、前記薄板片本体は、孔を有する突起部を有し、前記補強部材は、前記突起部を通す第一の貫通孔を前記補強部材の横部に有し、前記貫通孔に前記突起部を通した後に前記突起部の孔に第一の嵌め込み部材を嵌め込んで前記補強部材を前記薄板片本体に固定したことを特徴とする薄板片。
【請求項3】
隣接する二つの薄板片を溶接するための薄板片溶接用構造であって、隣接する二つの請求項2記載の薄板片と、前記隣接する二つの薄板片がそれぞれ有する前記突起部に対応する位置に第二の貫通孔を有し、この第二の貫通孔を介して前記第一の嵌め込み部材を前記突起部の孔に嵌め込むことにより前記隣接する二つの薄板片がそれぞれ有する前記補強部材の縦部の間で前記隣接する二つの薄板片に固定され、前記第二の貫通孔の内壁面と前記突起部の外側の面又は内側の面との間に第二の嵌め込み部材を嵌め込んで前記隣接する二つの薄板片の間隔を調整可能な溶接用治具と、を有することを特徴とする薄板片溶接用構造。
【請求項4】
隣接する二つの薄板片を溶接するための薄板片溶接用構造であって、隣接する二つの請求項1又は2記載の薄板片と、架橋部及びこの架橋部を支持する支持部を有し、前記隣接する二つの薄板片がそれぞれ有する前記補強部材を跨ぐように前記隣接する二つの薄板片に配置し、前記架橋部の底面に前記補強部材がそれぞれ当接し、前記支持部の内側の面と、前記補強部材の外側の面との間に第三の嵌め込み部材を嵌め込んで前記隣接する二つの薄板片の間隔を調整可能な溶接用治具と、を有することを特徴とする薄板片溶接用構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−12010(P2009−12010A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172992(P2007−172992)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000147729)株式会社石井鐵工所 (67)
【Fターム(参考)】